のぞみは『成人後に救いがなかった』世界からの転生だった故か、記憶がはっきりしてくると、現役時代そのままの口調に戻ることが増えていった。現役時代の時の素は年相応、あるいはそれより子供っぽさが目立ったからだが、本人がそれを望んでいる節もあった。それも次第に『転生後の生活』に慣れていくにつれ、転生先の肉体の元の年齢(1945年で17歳前後。21世紀では高校生にあたる)寄りに落ち着いていく。心の傷が癒えていく過程で、肉体と魂が同調していったからである。そのため、デザリアム戦役より後と前では、口調などに差異がある。結果的に、教師への転職は叶わなかったが、職業軍人として厚遇される日々を送っていく事になった。教師は時代が進むと、クレーマーに悩まされ、熱血キャラも疎んじられていくので、『割に合わぬ仕事』とはよく言ったもの。ある意味では賢明であった。
扶桑は武人を尊ぶ風潮の強い国であった。それを無理に、戦後日本寄りに矯正しようとしたので、社会構造自体に歪みを生ずる始末となった。日本は華族身分の廃止と、軍人の社会的優遇の廃止なども叫んだが、内政干渉になるので、押し通せずじまいに終わる。また、戦艦や重巡の廃止なども不可能に近いため、結局は『最新型の戦艦や重巡にミサイルを乗せる。機関を蒸気機関から変えれば、スペースは余る』ということであった。扶桑は一足先に近代化に邁進していたが、重巡の整備はおざなりであった。超甲巡を代わりとするつもりであったからだが、日本側に『ノータリン』と断じられ、超甲巡は水雷戦隊の旗艦から『万能の巡洋戦艦』に趣旨変えがなされてしまう。結局、新設計の重巡は超甲巡と大差ない巨体に肥大化してしまうため、乙巡の代わりにしたかっただけでは?と邪推されるのである。
これはデモイン級重巡の登場が確認されたからである。結局、旧来の日本型巡洋艦では戦えない相手だと公表されてしまったため、海軍はまたも、戦闘艦艇の刷新を迫られてしまう。ミサイルの搭載は二次大戦型の駆逐艦では小さすぎるため、駆逐艦も急速に大型化していく事になる。怪異は急速に脅威視されなくなっていくが、それはスーパーロボットの尽力によるものだが、魔女兵科の存在価値を奪うものであった。彼女らがなんと言おうと、怪異の巣がカラになり、直接攻撃を行えるまでになるには、平均で6~7年。その間に、魔女は二、三回の世代交代を挟むが、スーパーロボットはたったの一回の交戦で、巣ごと撃滅できる。その差は明らかであった。最も、その戦果はスーパーロボットの中でも、最強クラスの機体で以て実現したのだが。更に、陸戦魔女は皮肉な事に、空戦と違い、小回りが効いて、実車に近い火力を引き出せるため、後世の戦闘車両にとっても、『歩兵以上の火力をぶん回してくる』厄介な存在として脚光を浴びる。プリキュアらの側面援護にも活躍し、第二世代理論の完全な実用化で、空戦魔女の火力が追いつくまで、我が世の春を謳歌することになる。
また、最強の陸戦魔女と謳われる、エイラの姉『アウロラ』によるプリキュアらへのレクチャーも行われた(数年後、素でパワータイプのウマ娘とも渡り合える豪傑というのが確定する。太平洋戦争期に駐在武官へ転じたエイラいわく、『うちのねーちゃん、クマと縄張り争いしてっから』とのこと)。当然、世代的に対人想定の訓練も積んでいたので、地味に『下手なプリキュアより腕っぷしが立つ』。また、アウロラは酒とタバコを(時代相応に)嗜むため、エイラは『ガキの教育によくねぇぞ』というが、負ければ、国賊、犯罪者予備軍の鼻つまみ者と蔑まれる危険が多い(実際に、日本ではそうだった)軍人にとって、多少の素行の悪さは問題ではない。アウロラが(その戦闘力を買われて)ダイ・アナザー・デイ後も現役に留まるのに対し、エイラはサーニャの退役から程なくして、第一線を退く。これにより、スオムスは軍事的抑止力が大きく弱体化。軍事的事情により、日本連邦のイエスマン化するしかなかった。そんな母国の窮状につき、エイラは仕方がなく、駐在武官という形で、軍に留まるしかなくなるのだった。
ダイ・アナザー・デイはカールスラント、スオムス、ヒスパニア、ロマーニャといった、連合軍の主要構成国の大半の弱体化を引き起こし、人的にも、各国軍に吹き荒れたリストラにより、ダイ・アナザー・デイは日本連邦が地球連邦軍の助力で、単独で防戦する有様であった。ダイ・アナザー・デイに各国軍が正式に参戦する流れは消えたものの、戦後のイニシアチブが日本連邦の手に渡る流れになることを恐れた各国の将官らの指示で、一部の部隊が参加しているが、主力が無力化されたロマーニャは『会議の場にいるだけ』、ヒスパニアは『フランコ将軍の失脚』で、会議の場に尉官が出席せざるをえないほどの混乱中、スオムスも国内の混乱が起こって、会議に大統領が出席不能の有様。ブリタニアは陸軍と空軍の立場が大きく悪化、海軍が会議に出席している始末であった。また、海軍は『モンタナ級とアイオワ級に太刀打ちできる軍艦がほとんどない』のを理由に、日本連邦の連合艦隊の出征の方便と化している。仕方がないが、40cm砲の搭載すら稀であった欧州の艦艇が、太平洋の大海原を疾駆するのを前提に設計された大戦艦と勝負するほうが間違っているのだ。ブリタニアは『お前ら、戦艦をなんだと思ってるんだ??』と不機嫌になったが、大艦巨砲主義も行き着くところまで行き着くと、『単艦で欧州の大艦隊を皆殺しにできる』ほどの戦闘力を持つようになってしまうのだ。その極地たる戦艦富士は、いかなる敵艦の攻撃をもものともせず、唯一、ヒンデンブルクとドイッチュラントのみが互角という戦闘を展開していた。アイオワを一斉射で轟沈せしめ、モンタナも、たった数発で戦闘能力を激減させるという、当時としては破格の力を見せつけていた。
「日本は更に威力の増大を求めてきていますが」
「三文小説のように、一撃で撃沈などは起きんよ。ましてや、史実のフッドは旧式化していたのだ。最新型の軍艦を一撃で撃沈など、よほどの格差がなくてはな」
小沢治三郎は冷静に指揮を執り、敵艦隊と同航戦に打って出た。体力勝負といえる流れであったが、連合艦隊は戦艦を最新型に交換していたため、防御力の敵との格差はない。これは、大衆に日本戦艦の耐久力があれこれとイチャモンをつけられたので、最新型に刷新させたのだが、すべてが『史実の大和型より圧倒的に頑丈』であったので、防衛省は『そこまでやれとは言ってない!』という羽目になった。おまけに、モンタナ級ほどの装甲持ちには、生半端なミサイルは効かないという事実。戦後型軍艦の存在価値に疑問符がついてしまう事になるので、実験段階のミサイルのかなりが極秘裏に搬入され、対艦攻撃に供された。これは史実と違い、ビーム用の防火対策が、結果的にミサイル被弾時の被害軽減に貢献したからで、そもそも、戦後型のミサイルは『重装甲を貫通した上で爆発する』ようにはできていない。そこが戦中までの徹甲爆弾と違う点である。戦艦が絶えて久しい世界のミサイルは、新戦艦世代の戦艦には有効ではない。結局、フォークランド紛争で示された(とされる)『現代艦は被弾すれば、一巻の終わり』という言論を補強してしまう形になった。扶桑の新戦艦が(実は宇宙戦艦ヤマトを基準に設計されたため)頑丈過ぎたためで、そこも、21世紀型艦艇の不幸であった。
「敵艦隊の頭を抑える。艦長」
「ハッ。全艦、面舵いっぱーい!」
と、連合艦隊は被弾こそ多いものの、頑強な装甲で攻撃に耐えている。大和型の弱点を大型化と構造変更で潰したと公称しているわけであるが、扶桑の新戦艦は異様な頑強さであった。史実の鋼材なら、とうにズタボロになっているはずの弾数を被弾していながら、細かな艤装品以外は壊れていないし、火災も起こしていない。そのことから、地球連邦軍(21世紀には『超文明』と説明されている)のテクノロジーが導入されたことは明らかであった。それは主砲口径が常軌を逸していることで半ば証明されており、防衛関係者のみの暗黙の了解であった。
プリキュア達の中には、現役時代とかけ離れた戦闘を披露する者もいた。この時期では、フェリーチェがその代表であったが、キュアハートも中々であった。この時期は黒江から渡された『ビームダガー』(ガンダムピクシー用の武器をダウンサイジングした試作品)を使っていた。これは浄化に重点が置かれた世代のプリキュアである故の弱点であるため、黒江が護身用に渡したものであった。後々にわかる『前世』の影響も作用したか、キュアハートは近接戦闘では、この時期のプリキュアの中では無類の強さを見せた。
「まったく、統合戦争ん時の戦闘用ロボットまで使うなんて。どうせ、某国の制作っしょ?」
統合戦争の前期で使用されたという、等身大の戦闘ロボット。その後の時代では使われていないが、それは同士討ち(督戦)も前提にしていたプログラミングのせいであったことであった。巧妙に製造元がわからないようにされているが、旧共産圏のどこかで制作されたのがわかる形状であった(共産圏の戦車に通ずる意匠があるため)。ティターンズからすれば、博物館行きの代物なはずだが、この時代の軍隊には有効と判断されたのだろう。この時代の銃では破壊できない装甲を持つため、ビームダガーは有効な手段であった。また、プリキュア化の恩恵で、無茶な態勢からの斬りかかりも可能であったことから、往時のガンダムピクシーを思わせる立ち回りを見せた。
「まったく、ガンダムピクシーってのが一年戦争でいたって言うけど、ダガーで立ち回るのは限界あるんだよな」
キュアハートもご丁寧に、二刀流で『舞うような』動きを見せる。直前に、黒江が地球連邦軍のアーカイブにあった『ガンダムピクシーの戦闘映像(一年戦争のもの)』を見せており、それを参考にしたのである。既にミノフスキードライブの段階に到達している地球連邦軍にとって、ガンダムピクシーの存在は過去のものであり、現存するかは(一年戦争後に陸軍が書類を破棄したせいで)不明だという。だが、ビームダガーなどのデータは残っており、最大で五機が制作され、そのうちの三機が投入され、生還したのは一機のみだという。地上戦が下火になっていったこと、ピクシーの『グフやイフリート、ケンプファーへの優位性の薄さ』を理由に、戦中に再生産されず、まさに時代の徒花となった。また、白兵戦特化型は時代の要求に合わず、ジム・ストライカーにしろ、グリプス戦役以降の時期に後継機は確認されていない。MS同士の白兵戦の頻度がその後の時代に下がったからだとされる。また、一年戦争と違い、ルナチタニウム系の装甲のアドバンテージが薄れたからだともされる。
「とはいえ、やってみせないと、あたしは飯の種を無くすからな。戦車道でいつまで食えるかわからないし」
逸見エリカとして、戦車道に勤しむことができるのは、最短であと五年。その後の事は考えていない。一生、戦車道で食べていけるのは、一握りのトップエリート。戦車道で名を挙げたと言っても、戦車道は下火に近く、黒森峰=エリートの時代もまもなく終わるため、彼女は(逸見エリカとしての自我が消えたわけではないので)生活の絡む切実な事情から、プリキュアスターズに復帰。二足の草鞋を履く関係で、不在が多いものの、常に安定した戦闘力を発揮できるという強みがある。そのことから、プリキュアスターズの席次では、上位に位置する。ただし、逸見エリカとしての気の荒さは自分でも問題だと認識しているので、プリキュアとして振る舞っている時は抑えているという。そこも苦労が伴うところである。とはいえ、みほ(キュアロゼッタ)との関係は微妙なところであり、嫌味を言った後に大会で負け、その後に覚醒したため、実に気まずい。前世で戦友であり、幼なじみであった間柄である分、覚醒前の言動で気まずくなってしまったわけで、そこも彼女の気苦労であった。
「今度、スーパーヒーローの映像でも見ようっと」
と、元から護身術を身に着けていた故に、この時点でののぞみよりも、体力の配分への思考などで一日の長があることがわかる。無人兵器相手に一暴れしておいて、まだまだと感じるあたり、向上心があるというところがわかる。プリキュアたちは現役時代通りの能力では『行き詰まる』事を、南斗聖拳の猛者たちは示したことになる。
地球連邦軍の参陣により、ダイ・アナザー・デイの戦局は動いた。特務MS師団の投入により、ティターンズはMSを出し控えるようになり、リベリオン合衆国の部隊を使い捨て同然に差し向ける程度の行動に留めていた。怪異もスーパーヒーローらとスーパーロボット軍団の前には物の数ではなく、むしろ、戦闘の半分はティターンズ残党の背後に控える『バダン帝国』、漁夫の利を狙う『クライシス帝国』との戦闘であった。宇宙刑事たち、仮面ライダー達、スーパー戦隊らはそれを睨んでの来訪であった。プリキュア達はそれらとの戦闘は(この時点では)難しかったが、他のヒーローらから武器を借りて対応した。キュアフェリーチェらはこの時期、まさにその方法を用いることとなった。
「只今戻りました」
「ご苦労。ほれ、サンバルカンから借りといたぞ。バルカンスティック。日本刀に変形させてある」
「ありがとうございます」
フェリーチェは黒江のもとに戻るなり、バルカンスティック(日本刀に変形させた)を受け取る。予備品であるが、切れ味は改良で上がったという。
「フェリーチェ……」
「ドリーム。この間以来ですね」
「どうして、のび太くんのところに?」
「私のいた世界が滅ぼされたのです。私たち三人がアレキサンドライトスタイルになっても太刀打ちできないほどの。この機会に、改めてお話します。長くなりますが」
と、フェリーチェはかいつまんで説明した。時間にして、30分以上に及ぶ長さであった。
「みらいちゃん、知ったら怒るよ……?」
「みらいに言えませんよ。この姿で、のび太の布団に潜り込んだ……なんて」
「リコちゃんは知ってるんだ……」
「蘇生が先になったから、僕が話したよ。ミューズも協力してくれた。彼女にも言われたよ。たぶん、僕をぶん殴るだろうね」
「みらいは、私やリコと数年は離れ離れでしたからね。私が中・高・大を『誰かの養子』として卒業したなんて聞いたら、単独で変身しかねませんよ」
「しかも、僕の親父の養子だから、戸籍上は僕の妹ってことだし。」
「しかも、この姿で大学は通しましたから」
「よく、話題になんなかったね?」
「話題にはなりましたよ。町内レベルで。ですが、2011年前後の時点では、私は公的には『存在していない』ので」
「あ、昔聞いたっけ。確か……」
「ええ。私たちが活動していたのは、2016年のことです。2011年では、スイートがデビューしたかどうかってところですから」
フェリーチェは公的には、『2016年の後半にデビューしたプリキュア』であるが、フェリーチェ自身はのび太の世界では、『ふたりはプリキュア』の放映前後から本格的に活動を始めている。元々が超常的な存在であった故に、外見は変化しないが、ドラえもん世界では、プリキュアの姿で、普通に買い物をしたり、自治会の活動などに性を出している。
「あたしも、この世界での実家には戻れそうにないから、のび太くんちに厄介になるよ。でもさ。みらいちゃん、怒りそうだよ?」
「その時はみらいを止めてくれますか?」
「みらいちゃんは単独で変身しないから、まだ良かったよ。ピンで変身できてたら、本気にならないと止められないもんなぁ」
「僕がギャグ漫画の登場人物じゃなかったら、普通に全治数ヶ月くらいの大怪我を負わせられるよ、たぶん」
「メタい発言だねぇ」
「まぁ、ギャグ漫画ってのは、メタフィクションな台詞多いから。大長編はシリアスよりだけど。みらいちゃんは直に目覚めるはずだよ。肉体の再生は80%を超えたし、魂の定着に必要な措置も終わる。意識が目覚めれば、肉体も目覚めると思う。ものすごく医学的には不味いけど、魔法つかいプリキュアを死なせるわけにはいかなかったし、あるマジンガーの暴走に巻き込まれたようなものだしね。ただ、マホウ界もナシマホウ界もすべてが滅ぼされたからね。よく魔法が残ったよ。そして、フェリーチェも」
「ええ……そのマジンガーの気まぐれだと思いますが、私の力も及ばない魔神でした……。それに対抗できる力を、私は求めてきたのです」
フェリーチェは自身が消滅を免れた理由は今いち理解が追いついていないようだが、マジンガーZEROと再び対峙した場合に、太刀打ちできるだけの力を求めてきた事を明言した。
「そのマジンガーって……どんなバケモノなの?」
「ある世界線の兜十蔵博士が生み出してしまった『邪神』に等しい魔神だよ。生半端な力では、抗うことも敵わない。グレートマジンガーが手も足も出なくて、グレンダイザーでも、抵抗が難しいレベル。力で対抗するには、マジンカイザーと真ゲッターロボクラスの超性能が必要なくらい。だから、魔法つかいプリキュアの力じゃ、手も足も出なかったんだ」
マジンガーZEROのことは、この時に初めて、キュアドリームに伝えられた。アレキサンドライトスタイルの魔法つかいプリキュアのあらゆる攻撃をものともせず、あのグレートマジンガーの抵抗を意に介さず、宇宙の王者の異名を持つグレンダイザーすらも、三下同然に扱うほどの存在。まともに戦うには、真ゲッターロボやマジンカイザーレベルの超性能が必要だと断じられた存在。フェリーチェほどのプリキュアが、20年近くの雌伏に甘んずるしかなかったほどの力の差。
「だから、20年近く、雌伏の時を過ごしてきたのです」
「……そのマジンガーの対策は?」
「時間をかけて準備してるけど、強すぎるんだ。グレートマジンガーの超合金ニューZもベニヤ板も同然に粉砕できる。ブレストファイヤーでマントルを露出させるくらいの高熱を出してくるときてる。因果律に干渉できるから、魔法も無意味だ」
ZEROを力で倒すのは、この時点で不可能に近いと見なされていた。因果律操作に踏み込むほどの力であるためで、それを無効化する『反因果律操作兵器』の開発も進められているが……。
「だから、僕とドラえもんも悩んでるんだ。あまりに強いからね」
「……」
「みらいが聞いたら、腰を抜かしますよ。私一人で20年近くを過ごしてきたなんて」
「初めて会った時、僕は小学生でね。それが結婚して、倅もいる身になったよ」
歳月の長さを窺わせる発言。ドリームはなんとも言えない気持ちになる。フェリーチェは元々、超常的な存在でもあったので、超常性をほとんど失った後でも、外見の加齢は起きない。だが、のび太たちは普通に歳を重ねるため、いつしか、のび太も自分の子を持つ年齢になってしまった。その関係で、素の『花海ことは』として活動することは減っている。
「今じゃ、倅の面倒も頼むようになったよ。倅も直に幼稚園だから、楽になると思うが」
のび太は2015年前後にノビスケを儲ける。そのため、かつてののび太と同じ年頃になるのは、2020年代のことだ。ノビスケの場合、結婚するのは、一族の中では晩婚である『2045年』のあたり。その頃に30歳前後である。これはスポーツ選手になった関係上、30歳まで結婚はしないことを決めていたからだと、後世に残る本人の手記で明らかになっている。
「問題はのび太も言ったように、学生時代の主だったイベントを(知らない間に)済ませていたことです。一悶着は覚悟しないと……下手したら、リコ無しで変身して、のび太を入院させてしまうかと……」
「色々な要因で、それがありえるからなぁ、みらいちゃんは。その時は止めるよ」
実際、みらいはこの後の蘇生後、ことはのことが納得いかず、モフルンとリコの制止を振り切り、なんと、単独でキュアミラクルになり、のび太の胸倉をつかみ上げようとするが、事態を予期していたのび太の要請で、部屋に待機していたキュアドリームとキュアメロディがどうにか諌める。みらいも(最終決戦からの空白期間の間に、高校を卒業し、大学の二年生になってしまった過去があるので)それなりにトラウマがあるわけで、大人になっても、喧嘩に弱い(有事の際にはそれなりに強いが、普段は弱いのには変わりない)のび太が殴られれば、全治数週間の怪我は確実。(ただし、ジャイアンに日頃から殴られ続けたためか、異様に頑丈な体にはなっているという)結果的に、キュアミラクルはキュアドリームと、(デザリアム戦役の大喧嘩を入れて)都合、二回も拳を交えることになるわけだ。そのうちの一回はお互いの最強フォームで『月の地形を変え、たまたま通りかかったジオン残党が地獄を見る』レベルとなるのだ。
「お願い。下手したら、みらいちゃんの怒りのパワーで全治数週間の怪我になりそうだし」
「むしろ、プリキュアにボコボコにされて、その程度で済むのはオカシイって……」
と、のび太は(ことはの義兄となった関係で)この後、大怪我を覚悟していた。
「お医者さんカバンを用意しとくよ」
「高級モデルで頼んだ」
ドラえもんは(子供の頃から、のび太は大怪我をしやすい運の無さであったので)お医者さんカバンを常備していたが、プリキュアに殴られた場合(のび太が備えるギャグ漫画補正で、大喧嘩で済むとはいえ)を想定する必要があることから、高級モデルを買うらしい(普段のお医者さんカバンは簡易メディカルキットに近い位置づけらしい)。
「僕がこの年齢になったあたりだと、社会的な問題も色々でてきてるから、救急救命講習を受けといたほうがいいと思う。インターネットで、まことしやかに囁かれてることもあるし」
「昔、教師時代に講習は受けたことは受けたけど、普段使うもんでもなかったからなぁ。先輩は自衛隊で?」
「念のため、医官になった友人にも習ったよ。お前もやっとけ。2010年代以降は気候変動のせいもあるのか、昔より、道端で心臓発作を起こす例も増えたからな。お前らなら、男性が救命措置をするよりも、遥かに穏便に事が済む」
「昔(前世のこと)、ネットでその手のニュースを見ましたけど、ありえますかね…?」
「あるだろ。特に、のび太が20代終わりになってからは、夏は35℃超えるのがザラだぞ。自衛隊の友人に聞いた話だと、誰も助けないで放置された結果、後々で問題になったっていうからな…」
2010年代以降に社会問題になったのは、『訴えられるリスクを警戒し、道端で誰かが倒れても、応急措置を取らない』風潮が強まったことで、2010年代半ばの時期はそれが最も問題になった頃。個人主義が強まった弊害でもあった。黒江はそれを聞いていたため、21世紀に現れる自動体外式除細動器の講習も取り入れるつもりであった。プリキュア達であれば、後で揉め事になることもないからで、魔法で助けると、いくらプリキュアでも、普通に大騒ぎになるため、フェリーチェも講習を受けている。
「それに、自動体外式除細動器がバッテリー切れなんてこともあったから、俺なんて、自前で電流起こして、救命したことある。俺なら、普通に医学的効果がある電流を起こせるしな」
黒江の場合、自衛隊のあちらこちらに信奉者なりがいたり、自衛隊での同期が除隊後に家業の病院を継いだケースも出てきているため、ある程度の医学知識も持っている。故に、自動体外式除細動器の発する電流の大きさを把握している。
「ある年の休暇中のことだ。暇つぶしに出たマラソン大会で、前を走っていた高齢ランナーが心臓発作を起こした事があってな。運営が自動体外式除細動器を持ってきたが、その時からずいぶん前に買ったきりの個体で、バッテリーの寿命が来てやがってな。緊急事態だから、加減したライトニングボルトをぶっ放った。それでランナーを蘇生させたよ」
これも異能の平時における活用方法である。中小の地方自治体だと、自動体外式除細動器を『買ったきり』で更新されずに、使用期限を迎えていることもザラなことである。
「お前たちの力なら、普通に救命措置で済むだろうが、電気を操れれば、機械より正確に電気ショックを与えられる。覚えておいて損はないぞ」
「受け直さないと…。大昔(前世)に受けたきりだし。最後はいつだっけ……」
「佐渡先生、場合によっては雪さんが教えてくれるだろう。俺が先方に連絡入れとくから、この戦線がカタついたら、講習を受けておけ。芳佳やジョゼとかが、いつでもいるわけじゃないしな」
と、異能は戦闘以外にも活用方法はある事を教えると同時に、通常の救命措置等の講習も受けさせる黒江。治癒魔法持ちの仲間が常にいるわけではないからで、理に適う考えであった。