ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第五十八話「のび太の高潔さ。そして、東せつなの行方は?」

――デザリアム戦役の前後になると、どことなくニヒリズム溢れる物言いが増えたプリキュア達。青年期~老年期のび太の物言いが影響を与えたと言え、巡り巡って23世紀の機動兵器の操縦を習得したのである――

 

 

 

――友達を助けるのに、論理的思考はいらないだろう?――

 

のび太はある意味、精神的強さも魅力と言える。のび太はドラえもんたちのみが知る一種のカリスマ性を備えていた。過去、のび太を守るために少なからずの者が命を張った事からもわかるように、損得勘定など抜きに友のために戦い、転生すらも選ぶ姿勢はヒーローやヒロインからも高く評価されている。キュアフェリーチェは彼女を気に入ったのび太の両親によって『養子縁組』がなされ、戸籍上は『野比ことは』として義理の妹となっている関係もあり、プリキュアではもっとも、のび太を理解している。(みらいがそれを本格的に知ったのは肉体再生後のことである)

 

 

――ダイ・アナザー・デイが終わり、束の間の休息が訪れた頃――

 

 

「ご苦労だったな」

 

「まさか、南斗聖拳の使い手が向こうに多いなんてぇ~……。シャイニングドリームになってもボコボコにされまくりで、面目が…」

 

「北斗琉拳や元斗皇拳の使い手と出会わなかっただけでも幸運だったぞ。北斗系は特に厄介だからな」

 

「秘孔の対処法をなんで、竜馬さんが知ってたんだろう?」

 

「彼に聞いてみないとそれはわからんが、秘孔を突かれて動きを封じられては、我々としても対処のしようがないからな」

 

キュアマーチは流竜馬がなぜ、経絡秘孔の事を知っていたのかを怪訝そうにしている。敵の知る経絡秘孔は肉体破壊系では無かった幸運もあり、ドリームたちは殺人を可能にする経絡秘孔の洗礼を受けずに済んだ。如何にプリキュアと言えど、肉体そのものの動きを封じられる経絡秘孔には為す術もないからだ。

 

「しかし、肉体破壊系の経絡秘孔を食らったら、我々とてタダではすまんからな。最悪、肉体の再生をせねばならん」

 

「あるのかな、そんな事」

 

「今後は覚悟しておけ。……流竜馬には聞かなければならんな。それはそうと、先日、接触したんだろう?」

 

「うん。向こうのあたし自身にすごく微妙な顔されたよ。教職目指してたはずが、職業軍人だし。こりゃ、はーちゃんが連れてくる時にバトっちゃうの確定だね」

 

「かれんさんとこまちさんの了承は?」

 

「かれんさんなら、なんとか」

 

この時は水無月かれんから暗に了承を得た段階であったが、のぞみは同位体からものすごく不満を持たれてしまった事が本人の口から語られる。この時の予感は後に現実となる。

 

 

「その時の様子を見てみよう」

 

「え!?」

 

「タイムテレビがあると、こういう時に便利だぞ?」

 

マーチがタイムテレビをつけて調整し終えると、ドリームもびっくりの光景が映し出された。

 

『聞いてみますか?獅子の咆哮を!!ライトニングプラズマ!!』

 

ドリームの同位体に雷光放電を食らわせるフェリーチェ。見かけは現役時代と変わりがないフェリーチェだが、強さに関しては完全に別物。一秒間に一億発のパンチが光の軌跡と共にドリームの同位体を滅多打ちにする。

 

「はーちゃん、雷光放電を撃てたの!?」

 

「知らんかったのか?あの子は閣下に鍛えられているのだ。ライトニングプラズマは当たり前に撃てる。元々、攻撃手段はそれほど持ってないプリキュアだったからな」

 

「待って、ライトニングプラズマって、一億発のパンチだよね?」

 

「ああ。見てみろ」

 

ライトニングプラズマを撃ち込まれたドリームの同位体は『自分に何が起こったのか』理解できぬままに地面に倒れ伏している。

 

「うーん。自分の同位体ながら、かわいそうだなぁ」

 

「一億発のパンチを電撃と共に撃ち込まれたんだ。普通は動けんよ」

 

映像を確認すると、力の差は歴然としていた。光速拳を撃ち込まれたドリームの同位体は電撃と光速拳のダメージで悶絶状態で、まともに動けない。ライトニングプラズマの余波の電流が周囲に散っており、何が起こったのか、常人には理解できない。おそらく、食らったドリーム本人も理解できていないだろう。

 

「あ~~!こりゃ、一発かなぁ…」

 

「いや、辛うじて立ち上がるようだ。そのまま寝ておけば良いものを」

 

「……言えてる」

 

映像を見ている方のドリームは黒江らが『魔改造した』ことはの力を知るため、このコメントであった。黒江達が20年に渡り、鍛えたフェリーチェはもはや黄金聖闘士級に強いのだ。

 

「プリキュア・シューティングスター!!」

 

『お、向こうのお前は反撃で決め技をいきなり出したぞ?』

 

『敗北フラグ立ててどうすんだー!あたし~!ベタすぎる…』

 

「プリキュア・クラッシュイントルード!!」

 

フェリーチェはシューティングスターを20年の特訓で会得した新技で迎え討った。シューティングスターを遥かに上回る速度で飛翔し、火の鳥のようなオーラを纏って突撃した。

 

「あ、これがお前とピーチ、フェリーチェが会得した新技か。どこのテッカマンだ、お前ら」

 

「あ、アハハ…。でも、威力は保証するよ。ダイ・アナザー・デイはとにかく敵が多かったし」

 

映像の中のドリームはこの技で決め技を上回れたばかりか、余計に力の差を見せつけられる結果に終わった。炎の鳥のようなオーラを纏ったフェリーチェがシューティングスターのオーラをかき消したばかりか、同じような技で威力の違いを見せつけられたので、放心状態に陥っている。

 

「みらいちゃんが見たら失神もんだなぁ、これ」

 

「あの子も意外に実力行使するなぁ。向こう側の他のメンバーは誰も手出しできんようだ」

 

「したところで一瞬だしね」

 

「あ、思い出した。イリヤが万一のためにクラスカード渡してたんだ」

 

「あの子はなんつーチートな代物を持たせるのだ…」

 

この時のフェリーチェだが、実はクラスカードをイリヤが護身のために持たせており、いざという時はエクスカリバーをインクルードできるのである。

 

「もし、その世界のエターナルが襲ってきても返り討ちにできるようにだってさ」

 

「反則的な所業だぞ。あの子の魔力なら、宝具のフルポテンシャルを引き出せる」

 

ことはにセイバーのクラスカードを持たせていたイリヤ。その気になれば、ことはの魔力ならば夢幻召喚時にエクスカリバーの最大出力に耐えられるため、一言で言うならばチートである。だが、黒江からは『アーチャーにしろよ。はーちゃんはアタランテじゃん、声の妖精さん的意味で』と不評である。

 

「閣下はこう言われるだろうな。アーチャーにしろと」

 

「言えてる。シンフォギアの子たちからは私達がクラスカードとかで宝具をホイホイ使える事をチートって愚痴られててね。ほら、完全聖遺物の霊格を召喚して実体化させてるじゃん?あれ」

 

「仕方あるまい。聖遺物のコピーか、先史文明の遺物媒介の力と正真正銘の宝具とでは、ポテンシャルが違って当たり前だ」

 

 

マーチもそこはそういう見解のようだ。そして。

 

「お、エターナルが襲って来たようだが?」

 

「うん。奴さんは死にに来たようなもんだね」

 

映像はドリームとフェリーチェの対決が終わった直後にプリキュア5の二年目における敵勢力『エターナル』が漁夫の利を狙って襲撃してきた様子に移った。だが。よく見てみると、フェリーチェはインクルードしたエクスカリバーを構えている。

 

「束ねるは星の息吹、輝ける命の奔流……受けなさい!!約束された勝利の剣(エクスカリバー)――!!」

 

エクスカリバーはフェリーチェの魔力であれば、フルポテンシャルを引き出せるため、アルトリアのそれと遜色ない威力であった。

 

「……うん。奴さんに同情したくなるね。あの威力。オリジナルと同等の威力だもん」

 

「おまけに聖剣としてのカテゴライズならば最強の逸品だからな、あれは。閣下が使って、面倒事に巻き込まれたのは必然だな」

 

「言えてる。先輩、調の姿でぶっ放したっていうし、あの子がパニクるのは分かるよ」

 

エクスカリバーはある意味、聖剣というカテゴライズでは最強の逸品であるため、シンフォギア世界にある種の混乱をもたらすのは必然であった。シンフォギア世界での常識を尽く覆す事を黒江が行い、結果として混乱をもたらしたのも事実だが、ある意味では一部のイベントのフラグをへし折ったのも事実だ。また、調が他の世界と独立した存在となったのは完全に不可抗力であるため、黒江としてもなんとも言えないところだ。

 

「お前とて、他世界の自分自身より強くなっている自覚はあるだろう?マウント取ってるだの言われようと、強くなっているのは事実なのだから、仕方ないが」

 

「あたしも一回、イリヤからカード借りて撃ってるから、ダイ・アナザー・デイん時はツッコまれたよ。まったく、何がマウントだよ。夫婦の井戸端会議とかのほーがマウントの取り合いだよ」

 

ドリームもGウィッチであるため、水準以上の魔力を持っている。その兼ね合いで、イリヤの持つクラスカードの使用は可能である。ミラクルとマジカルのお鉢を奪うようだが、転生先の肉体に魔力がある以上はその力を使うのが筋だ。

 

「おまけに同位体は自分とは別の存在だから、最悪、悪に堕ちた自分を処断したって、別にいいはずなんだよ。かれんさんはそこを気にしすぎてたけど」

 

「かれんさんは融合現象を恐れていたんだろう。平行世界の同一人物に何かがあれば、平行世界の自分も消えるという、な。だが、実際はもっと緩やかなルールなんだぞ」

 

「違う時間軸の切歌同士が会えてるし、あたしも同位体同士で顔合わせたし、かれんさんは心配性なんだよなー」

 

「お前のショーバイの説明が向こうのお前自身の反感を買ったかもしれんぞ?」

 

「え?どうしてさ」

 

「お前は元々、教職志望だったろ?それが今では職業軍人だ。90°はずれてるショーバイをしていると言われても当然だ」

 

マーチも言うように、のぞみは教職志望だったので、ダイ・アナザー・デイ後に予備役に退き、教職につける権利を与えられていたが、前世で教職に幻滅していた事や、次の戦乱が差し迫っている事は聞かされていたため、現役軍人のままでいる事を選んだ。これは扶桑の予備士官制度が機能不全に陥っていたことも関係している。ダイ・アナザー・デイ当時、ドリームは現役当時の夢を叶える機会があったのに、それを選択しなかった事はダイ・アナザー・デイ作戦完了直後は強い非難を浴びたし、出会った自分の同位体に詰め寄られたのだ。

 

『少女期の決意を貫く為に選んだ職業だし、アニメで戦う姿を喜んで見ていながら同じように守り、生き抜く為に戦う者を非難する貴方方に説得力の欠片でも有るのか?戦う者にそのような戯言は通用しない!!』

 

黒江は上官として、公式にそう声明を出している。そもそも、扶桑ではウィッチの素養に覚醒めた時点で初歩の軍事教育が課される事になっていたため、エクスウィッチの士官の仕事場としての『訓練課程の教官職』があったが、日本の文科省などが軍事要素を教育現場から徹底的に排除してしまったため、ダイ・アナザー・デイ途中からは『職を失った教官の現場復帰』もなし崩し的に行われてきたほどである。ただし、参謀に転じた者の現場復帰はやはり、かなりの無茶が生じていく。後に64Fに着任し、死んでいった八木大佐や明樂大佐のように『現場の掌握が上手くいかない』ケースが続出してしまったのも事実だ。また、八木大佐の戦死後、ウィッチの社会的地位が低下した事で、エクスウィッチなどを中心にした扶桑人が『ウィッチの職業差別を助長する政策を一方的に押し付けるな!!』デモを起こし、日本側がその解決と宥めに悩む羽目になるのだ。

 

「ん?テレビがつけっぱなしだぞ」

 

「みらいちゃん、買い物行く時に消し忘れたな?消してくる」

 

リビングにあるテレビがつけっぱなしであったため、ドリームは消しに行くが、ちょうどワイドショーで『扶桑が超甲巡を造った』ことが揶揄されていた。

 

「超甲巡は中途半端、ねぇ」

 

あるコメンテーターが『巡洋艦は安い、使えるに尽きる。これでは単なる中途半端な戦艦だ』と揶揄している様子が放映されている。扶桑では『甲巡では怪異への打撃力が足りないし、高額化した戦艦を使い捨てにできない』という発想で構想が練られ始めたため、カールスラントのポケット戦艦とは当初の運用思想が違うのだ。

 

「あ、田中さんだ。ゲストに出てたんだ」

 

番組のゲストコメンテーターは扶桑の駐留艦隊司令長官であり、元水雷戦隊司令の田中頼三中将であった。

 

「枷があらへんのに何を好き好んで条約型巡洋艦を作らにゃアカンのですか!巡洋艦の機動性に旧式戦艦並の口径の長砲身主砲(31cm砲)、何処が不満じゃ?言うてみぃ?ん?」

 

田中頼三中将はダイ・アナザー・デイでは護衛艦隊司令の任についており、超甲巡『浅間』に座乗していた。作戦後に日本駐留艦隊の司令長官に転じたのだ。

 

 

「戦争にしか使えないじゃないですか、あんなの。巡洋艦に求められるのは戦闘力よりも数なのですよ、中将。コストパフォマンスも悪いし……」

 

「下手な条約型巡洋艦よりは優れていると自負しているがね……?」

 

扶桑は超甲巡にかなりの自信を持っていた。一昔前の弩級戦艦並の長砲身主砲による火力と巡洋艦の機動力を兼ね備え、条約型巡洋艦に代わるものだと。日本側は『巡洋艦は安い、長く使えるに限る』としたが、いくら扶桑といえど、史実アメリカのような大量生産は取れない。用兵上の都合で超甲巡洋艦に行き着いたが、『ポケット戦艦の猿真似』と言われ、扶桑艦政本部はお冠である。リベリオン最新鋭のデモイン級重巡はもはや一昔前の弩級戦艦のサイズに達しているのに、だ。

 

「実際問題、駆逐艦並に小回りが効くなら装甲も大口径砲も要らん、軽巡は条約型巡洋艦を乙巡として運用する事で充足させて、戦艦と帯同したり、強行偵察に投入する強防御な巡洋艦としての能力が期待されてるのが超甲巡なのだ。もはや、今までの条約型サイズでは乙巡の任務にしか着けられないから開発されたのが超甲巡なのだよ。デモイン級を知っとるかね?」

 

デモイン級。扶桑が恐れるリベリオン最新鋭の重巡である。20cm三連装速射砲を備え、高雄型重巡洋艦を超越した防御力を誇る『史上最後の重巡』である。扶桑は改高雄型重巡洋艦を計画し、ダイ・アナザー・デイ直前の頃には、その一部は建造途上にあった。だが、デモイン級の存在が明らかになったことで水雷戦隊の陳腐化が恐れられ、超甲巡の量産に舵が切られたのだ。(阿賀野型軽巡洋艦が陳腐化してしまったこともあって)と、そこで艦政本部代表でゲストに来ていた西島亮二造船少将が解説を買って出る。

 

「えー…。そもそも、ポケット戦艦は航続性能には優れておりますが、火力維持性を含む防御力に些かの問題があるのは否めません。我が方の超甲巡は大和型の線図を一部に流用しましたが、船体や装甲配置は新規で決めたものであります」

 

西島造船少将は大和型をブロック工法で作り上げた功労者であり、扶桑の工数管理の権威であった。設計時間の短縮のために上部構造物配置などは大和型を基本にしたとしつつ、工数管理の名手であるため、扶桑の造船速度が上がったのは彼の功績である。

 

「超甲巡はあくまで巡洋艦の延長で構想されたものであり、戦艦との正面切っての戦闘は想定しておりません。戦艦は大和型とその兄弟に任せればいいだけで…」

 

扶桑は史実日本帝国よりかなりの余裕があるため、大和型を前線に突っ込ませる事を自分からさせられるため、アイオワ級戦艦以上の戦闘艦艇の相手は大和型の血族の役目と割り切っていた。超甲巡は主力戦艦に敵巡洋艦を近づけない事を真の主任務として開発されたが、台頭した空母の護衛も担わされたのは、条約型巡洋艦以上の巨体であるが故のキャパシティの大きさによるものだ。

 

「この造船官が西島亮二造船少将…。大和型の工数管理で歴史に名前を残したっていう…」

 

西島造船少将の専門は工数管理であるが、設計知識がないわけではないし、経験もある。造船官というものは意外に広い見識を持つのだ。彼ら造船官にとっても、『紀伊型戦艦の陳腐化』は予定外だったが、結果として八八艦隊世代からの世代交代が成った事は喜ばしいことである。子供でも分かるように、長門型戦艦と大和型戦艦の同スケールの模型を用意し、戦艦の防御というものを解説し始める西島造船少将。

 

「日本のコメンテーター、黙り込んでる。そりゃ、歴史の教科書の偉人が出てきてるようなもんだしなぁ」

 

ドリームはその番組をついつい見てしまうが、西島造船少将は牧野茂造船少将と並び称される扶桑きっての造船の名手であるため、戦艦や超甲巡と言った砲熕型水上艦の解説にはうってつけである。扶桑が長門を退役させ、紀伊型戦艦の改修をキャンセルした理由も番組で軽く触れられた。

 

「これがリベリオン最新鋭のモンタナ級戦艦であります。我が方の大和型と戦うための重戦艦でして、長門型戦艦では相手にならず、天城型巡洋戦艦の小改正型でしかない紀伊型戦艦も同じでありました。これは紀伊型が撃沈させられる瞬間の航空写真ですが…」

 

紀伊型戦艦。大和型を除けば『最右翼』と言われたはずの竣工から10年以内の軍艦であったが、最新鋭のモンタナ級戦艦にあっけなく装甲を貫かれ、僅か10分足らずの砲戦でネームシップが轟沈させられた。その時の航空写真が公開される。21世紀では宝物な『砲戦でやられた戦艦』の写真だ。

 

「そこまで見せて大丈夫かなぁ。いくら旧式化したとは言え、超弩級戦艦だし」

 

その事を心配するドリームだが、扶桑は主力艦の世代交代を進めているため、紀伊型戦艦は完全に旧式兵器と見なされ、ダイ・アナザー・デイから帰還した尾張以下の三隻は公開されている。戦場の花形が大和型以降の世代に変わった時代、古き良きパゴダマストを持つ八八艦隊世代は記念艦として余生を遅らせたいというのが扶桑/日本人共通の願いであった。

 

「えー、我が扶桑海軍は訓練空母『飛鷹』、『隼鷹』を病院船代わりに日本の皆様の元へ派遣すると、統合参謀本部議長より発表がなされました事をお知らせ申し上げます……」

 

田中頼三がその事を公にする。二空母は北方で任務についていたが、ダイ・アナザー・デイで日本側が軽空母を大量に買い付けた流れを免れ、ウィッチ空母として北方で任務を終え、帰還したところであったのを駆り出されたわけだ。扶桑では普通に現役である氷川丸を普通に契約して使えばよかったが、日本側が驚いて回航を固辞したため、元客船で最大規模の空母を駆り出したのだ。なお、訓練空母と称されたのは、隼鷹型航空母艦の規模では紫電改/流星/彩雲のトリオさえも運用に四苦八苦すると見なされ、一線空母の任を解かれたからだ。

 

「おい、なにをやってい…ん?飛鷹と隼鷹じゃないか?なぜ、テレビにデカデカと写真が?」

 

「病院船代わりにされるんだってさ」

 

「もはや、あれだと一線空母とは見なされなくなったからか?」

 

「たぶん。天山さえも運用に四苦八苦する大きさだしねぇ」

 

「ひゅうがとそんな変わらん大きさだぞ?元は准飛龍型だし、隼鷹型は」

 

日本側は隼鷹と飛鷹を一線空母と見なしていないが、扶桑は所有権が残った唯一の客船改装空母として、大改造を予定しており、買い上げ費用の元を取るつもりであった。もちろん、客船改装空母のため、これ以上の大改造は扶桑内部でも異論が多く、練習空母に格下げされる見込みであった。ヘリ空母改装案もあり、計画は不透明であった。そんな不安定な立ち位置となった同艦級にとって、日本救援は願ってもない大役であり、二艦は臨時病院船という形で、母港であった呉に投錨。史実では連合艦隊の必須航空戦力であった同艦級の派遣は扶桑の航空戦力の余裕ぶりをアピールする機会とされた。ダイ・アナザー・デイ当時に日本郵船は元の橿原丸級貨客船に再改装させようと圧力をかけたが、現場ウィッチの猛反対で潰えた。使い勝手が良かったからだ。もっとも、21世紀では100000トン級クルーズ船が普通に存在するため、戦前期設計の貨客船があったところで見劣りするが。日本国籍の貨客船は21世紀も20年を迎えようとする頃には老朽化しており、その代替品を欲したか、あるいは橿原丸を日本が手元に置きたがったのか。それは定かでない。

 

 

「扶桑もかわいそうにな。大型優秀船建造助成施設が廃止され、有事に空母改装を前提に造らせる事ができなくなり、ウィッチ発進促進装置は工廠で埃をかぶってる」

 

扶桑海軍は空母を有事に改装で得る計画であったが、日本側の手で法が廃止され、せっかく造った軽空母が放出させられるという悲劇に遭い、それらに載せるはずのウィッチ発進促進装置は工廠で埃を被るハメになった。日本側が80000トン級大型空母を志向した事、ジェット戦闘機の運用にウィッチは邪魔と見做され、空母から強襲揚陸艦にウィッチ運用の主体が移った事もあり、ジェット戦闘機のパイロットも兼任できるGウィッチの優遇は現場でも容認されだした。これら日本の急進的な施策に反感を持つウィッチ出身参謀は多かった。

 

「日本は軍事より銃後の福利厚生費に金かけるからなぁ」

 

「しかも疫病で尚更だ。これでは扶桑軍人の反感を買うだけだというのに」

 

キュアマーチ(ラウラ・ボーデヴィッヒ)の言う通り、この時期の急進的な施策は1946年のクーデターを誘発した。日本はクーデターの原因と見なした参謀達を弾圧するが、今度は扶桑の参謀格の軍人の不足を招き、それをカバーするために少なからずの自衛官が参謀として、太平洋戦争に関わることになるのだ。

 

「さて、戻るぞ」

 

「うん」

 

その後、日本の疫病は結果的に扶桑の立場を日本連邦の内部で押し上げる事になったという。また、日本側も扶桑の社会不安を煽ってしまったという負い目があり、太平洋戦争に大量の自衛官を関わせる事になる。

 

 

 

 

 

 

――さて、フェリーチェがアクアとミントを23世紀の世界に連れてくるに当たっては、現地世界のキュアドリームを肉体言語で説得するしかなく、多少の手荒い手段はやむを得なかった。アクアとミントが現地に赴くにあたり、やはり分身を置く方向になり、分身を置いていったが、現地世界のドリームはそのことに不満を顕にし、フェリーチェは説得に手荒い手段を取らざるを得なかった。フェリーチェはその世界を単独で数回は訪れる事になり、相当に手を焼いたわけだ――

 

「うーん、なんか悪いなぁ…」

 

「向こうのお前は相当に駄々をこねおったようだな。今度、はーちゃんになんか奢ってやれ」

 

「う、うん。ところで、ラブちゃんがせつなちゃんの事を気にしてたけど…」

 

「せつなか。アカルンの力があるとは言え、この世界を探し当てるのは『サハラ砂漠で一本の画鋲を探す』ようなものだからな。容易なことではないぞ。この間、閣下らがお前とラブの姿を借りて戦ったろ?それで、お前らの事を探すといっていたらしい。それから探し始めたとしても、すぐには無理だろうな」

 

「なんで?」

 

「世界の間に距離があるからだ。せつながいる世界と23世紀の世界の距離は地球で言えば、日本とブラジルほどの距離らしいから、相当な苦労が伴うはずだ」

 

「わかりやすいような、にくいような」

 

「それにアカルンの力と言えど、ゼウスやアテナの小宇宙による阻害は受けるからな。そう易易とはたどり着けんだろう」

 

「言えてる。テレポートの進路を捻じ曲げるって言うから、聖闘士にでもならないかぎり…」

 

東せつな/キュアパッションはその頃、聖闘士世界にたどり着き、入れ違いに行方不明になった蛇遣い座のシャイナのポジションをしばし担う羽目になり、そこでサンダークロウなどの闘技を身につけ、聖闘士の資格を得る。それは黒江に通達され、黒江も流石に腰を抜かす羽目になる。

 

「案外、聖闘士世界にたどりついて、聖闘士してるかもな」

 

「ハハ、まっさか~」

 

笑い飛ばすドリームだが、それは本当であった。後日、蒼乃美希/キュアベリーが『イーグルトゥフラッシュ』を披露した(これは前世の記憶とのこと)ことで、キュアマーチの冗談が真実味を帯びたからだ。黒江が定期報告を兼ねて、アテナ/城戸沙織に謁見した際にせつなと黒江は出会い、せつなが行方不明になっているシャイナの代理で蛇遣い座の聖闘士になっていた事が明らかになる。その流れで、せつなは黒江に連れられてデザリアム戦役に参加。以後は64Fに属して、プリキュアオールスターズに合流して戦う事になる。

 

 

 

 

 

 

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