――蒼き流星。その能力を黒江とガイちゃんは会得していた。ガイちゃんは蒼き流星となり、戦場を貫いたわけだが、本来はまったく別系統のロボットの切り札であるため、キュアフォーチュンからは大いにツッコまれる――
「ち、ちょっとー!?どういう事よ!?」
「うるさいぞ、フォーチュン」
「だって、スーパー系の子がリアル系の技を!?」
「スーパーもリアルもあるものか!人の身で再現するのに大した違いなど有りはせん!」
マカロンの態度は北郷としての冷静沈着なものであるため、現役時代からかけ離れた口調である。転生の兼ね合いという奴だ。なお、北郷家は武徳会と講道館(剣道と柔道の総本山)の統括理事を歴任してきた武門の名家であるため、退役少将の父親からはプリキュア化は快く思われていないという。
「流石、現役の大佐」
「扶桑海の時に黒江くんと智子くんがあれこれしまくっていたから、耐性がついてな。敏子や加藤くんは胃潰瘍になったと思うぞ、ミューズ」
「そりゃ、転生した後のフリーダムさは止められないもんね」
「ドリームに足りんのは、あのフリーダムさだろうな」
「ボクやアヤカなんて、自由気ままに振る舞ってるからね。別にいいじゃない。チートと言われようと、結果的に世界は守ってんだからさ」
ミューズはその辺りはアストルフォとしての経験もあり、チート上等の考えであるらしい。黒江もそれと同じ考えであり、平行世界を引っ掻き回したという批判をよそに、結果的には行った先の世界の道筋をいい方向に変えている。
「スーパーヒーローなんて、一つや二つチートが無きゃ成立しませんわ。私やガイちゃんはそれが前提でロボットガールズなのですけどね」
「うるさいやつはいるのだ、ゲッちゃん」
「では、少々、私もチートを使わせてもらいますわ。斬!魔!!光ぉぉぉ!」
ゲッちゃんは俗に言う『波動拳』や『かめはめ波』のフォームでゲッター斬の技『斬魔光』を放つ。そして。
『おまけの合わせ風車!!』
ゲッター斬の火斬刀(形状は薙刀)を二本召喚し、トマホークブーメランを行う。和風のトマホークブーメラン。その名も合わせ風車だ。ある意味、普通のトマホークブーメランより物騒なものをブーメランにしているとも言え、ゲッちゃんの裾野の広さが分かる。
「さあて、アレを使わせてもらいますわ。暗黒乱舞!!」
ゲッちゃんは竜馬のワイルドなパーソナリティの影響を受けているため、格闘になると余計に怖い戦法である。拳で兵士の顔を潰す、鼻をえぐり取るなど、隼人の影響もかなり強い。
『ゲッター影分身!!』
マッハ5にまで加速する。これはゲッター紫電版のゲッタービジョンで、ゲッターライガーのマッハスペシャルより速い。そして、ゲッター號の『ソードトマホーク』を召喚し、剣の柄を使って跳躍し、火斬刀とソードトマホークを更に合体させ、影分身の速度を活かし、刀と剣を一つの大剣にしての回転斬りを行う。これがゲッちゃんが開眼した攻撃である。
「わぁ~。かっこいい~…」
見惚れるキュアホイップ。彼女は歴代と違い、こうした攻撃手段はないからだろう。
「ガイちゃんがブイマキシマムを使った以上、ボクも作品の垣根を超えよう!」
キュアミューズはセイバー属性がある自分の英霊としての適性を活かし、なんと断空剣を召喚する。
「って、貴方!なんでそれなんですの!?」
「だって、天空剣はボクの領分じゃないし」
ミューズは断空剣を両手で構える。すると、エネルギーが迸り、雷が走る。
『愛の心にて、悪しき空間を断つ!!断空光牙剣!!おぉぉ――っ!!やぁってやるぜ!!……ってね』
ノリが良いのか、断空光牙剣の口上も再現してみせる。断空光牙剣は剣を振り下ろす時に超高出力レーザーが発振される仕組みで、ムゲ帝王すら一刀両断したダンクーガ最強の大技である。ダンクーガの場合は藤原忍の野生が極限まで研ぎ澄まされた場合のみ単独で発動可能だが、この場合はキュアミューズの力で再現したわけだ。
「どうです、キュアホイップ?」
「ボクたちの隠し玉は?」
「皆さん、すごいです~!あんな大技を軽々……」
「これがあたしたちの力さ……。自分の持つ基礎スペックだけに頼ってないし、基になったロボの作品間の垣根なんて超えてやるのさ」
「大丈夫ですの?」
「V-MAXはかなり体力使うからね…だけど、敵はビビってる」
ゲッちゃんに肩を借り、一同の下に戻ってきたガイちゃん。超高速で機動するのと引き換えにかなりのスタミナを使う行為であるため、息切れを起こしている。
「ふむ……。やはり、君でもかなりのスタミナを消費してしまうようだな」
「リスクは高いけど、やる価値はあったよ。お前たちの先輩のお株を奪うようだけどね」
「ああ。しかし、君があれを使えるとはな」
「あーやと特訓したのさ。おかげでできるようになったんだ」
「ドリームが聞いたら羨ましがるわよ?あの子、突進技がアイデンティティだから」
「それは言えてるな。直にGフォースの特科部隊が制圧射撃を始める。ここは退くよ」
最近の連合軍は砲兵部隊(自走砲部隊含む)が到着するまではGウィッチが暴れて注意を引きつけ、砲兵の到着後に鉄の暴風に例えられるような猛攻撃を加え、敵を撤退に追い込むという戦術で陸戦の花形である機甲兵器の最新型や新型火砲が『然るべき数になる』時間を稼いでいた。仕方ないが、日本やドイツの想定はあくまで『冷戦後の時代で主流の非対称戦』であって『第二次大戦型の国家総力戦』ではなかった。その齟齬が連合軍を結果として、深刻な兵器不足に追いやったのである。一同の退避を見届けた砲兵部隊(Gフォースの自走砲部隊)が砲撃を始める。96式自走120mm迫撃砲や99式自走155mmりゅう弾砲と言った熟れた自走砲、19式装輪自走155mmりゅう弾砲という貴重な新型装輪式自走砲も試験的に投入された。この当時の標準的な機甲装備では至近弾だけで軽く横転させられるか、大破するだけの威力を持つ破格の大口径砲での制圧射撃であった。
「ふう。砲兵の配置まで時間稼ぎに成功したようだな。」
「自衛隊も贅沢になったなぁ」
「黒江くんの話だと、連合軍のお偉方が『総理大臣や大統領の前で白黒つけようか?』と防衛省の背広組を恫喝したんだと。連中、疫病のせいでこの世界への干渉に興味が失せたから、物資や人員の供給をする代わりに疫病の救援を頼んできた。これを貸しにするために駐留部隊は救援活動をしているがね」
「やれやれ。上は前線の苦労を知らず、か。いつの時代も…」
「こちら特有の事情など、日本の大衆は分からんよ。大衆は手前勝手な言い分で政治や軍隊を振り回すからな。私達の特権は日本の自衛隊の表立っての追加派遣が向こうの感情的にほぼ『不可能』である事、日本側にとっては扶桑の軍事力が新領(学園都市が起こした戦争で得た極東ロシア地域のこと)の治安維持にうってつけだった事、新領と扶桑の豊富な財源を使える様になって、向こうの経済が奇跡的に持ち直した事を天秤にかけて、政治的に妥協した末の結果さ」
「世知辛い世の中ですわね、どこの世界も」
「自衛隊に戦死者がちょこっと出ただけで、マスメディア連中は鬼の首を取ったように叩くからね。だから、あーやや、あたしらみたいな一騎当千の力を持ってる連中は防衛省にとっては渡りに船なのさ。プリキュアなんてのは、特にな」
「子供や若者に人気があるものね、私達。ドリームは嬉しがってるようだけど、どこか影があるような…」
「あーやとドラえもんの調べだと、あのガキンチョはどうも、前世の後半生で立て続けに不幸が重なったみたいなんだ。そのトラウマもあって、自分が必要にされる事を求めてる節がある。プリキュアとして戦うことで自分の存在意義を見出すってね。家庭を持ったはいいけど、多忙だったせいでガキにグレられたトラウマが強いんだよ、たぶん。戦うことで、あのガキンチョの心は均衡をどうにか保ってるけれど、大切な誰かに何かあれば、すぐに壊れちまうんだろうな」
「ラブリーが心配してたわ。今のドリームは昔の自分みたいだって」
「あいつは前世のトラウマで『プリキュアとして周りに必要にされる』目的が手段化しちまってるんだろう。しかも、それに本人が気づいてないと来てる。ああいう自覚のない『トラウマ持ち』は厄介なんだよな」
「どうして?」
「トラウマで理性のタガが外れやすくなってるから、ちょっとしたことでブチ切れちまう。あーやとドラえもんはそれを心配してるのさ」
「ボクも同感だね。ドリームは『誰かに必要にされること』を求めるあまりに、自分でも気が付かない内にワーカーホリックになってる。アヤカはその対策を考えてるところだよ」
一同は帰還途中に様々な話題を出し合う。特にキュアドリーム/夢原のぞみのトラウマは娘(長女)に母親としての自分を否定された事で『周りに求められているのは、一介の母親としての自分ではなく、プリキュア戦士としての自分であるのでは?』とする思考に行き着いてしまった前世の後半生に由来するため、闇は相当に根深い事が確認されたという話題は一同に暗い影を落とす。黒江達のように『過去生は過去生』と割り切ることが出来ずにいるのぞみはある意味、『自分の心に生まれた闇に侵されやすい事を自覚していないか、敢えて意識しないようにしている』存在と言える。
「面と向かって言えないの?」
「難儀なんだよ、そこが。本人はりんに何か起こる事を頑なに否定しようとして、パニック状態になったこともある。ボク達も扱いに困ってるんだ。このケースは精神的なことだから、転生したココにも助けを仰いでるとこさ」
ミューズがいうように、のぞみは概ね安定した精神状態だが、りんに何か起こるという仮定にすら強い拒否反応を示すなど、前世のトラウマによる心の傷の一端を垣間見せている。のび太壮年期に彼の養子となった『転生した小々田コージ(ココ)とも連絡を取って、メンタルサポートに気を配っている。黒江は自身に二重人格の経験があるため、特にのぞみの精神面を気遣っている。
「だから、この戦いが終わったら、のび太のところへ行かせることになったんだ。あそこに行けば、のぞみも精神的な安寧が得られるだろうしね」
「それがいいだろう。メンタルヘルスの心配は厄介な問題だからな」
「のび太は?」
「自分の子孫と電話で役割分担の事を話しあってたよ。23世紀にいる子孫の一人がそろそろ成人なんだって」
「のび太くんは21世紀の人間だからな。23世紀では色々動きにくいんだろう」
「確かに。死んだ後の時代だからね。Mr.東郷は別だけど」
「彼はある意味で死を超えているからな。彼は?」
「この間は数百人のウィッチが乗った列車を湖に落として、その八割方をぶっ殺したそうだし、派手にやってるよ。彼はいるだけで抑止力になるからね」
「やるなぁ。これでサボタージュも終わりそうだな」
「懸念されたウィッチ同士の空戦も陸戦も起きていない上、怪異はスーパーロボット軍団に完璧に抑えこまれてるからな。おまけにこの戦いの損害も、リベリオンなら数年で回復させられるだろうから、怪異が抑えこまれた場合、ウィッチ部隊を大規模に維持する意義はない。ここ10年か20年は冬の時代になるだろうな」
「この世界は怪異がいたから、世界大戦が起きなかった。だけど、怪異が抑えこまれた場合はその歪みがすぐに表面化する。それだけさ、マカロン」
「ウィッチの雇用はMAT主体になるし、軍隊は当分は不人気になるだろうな」
「社会的ステイタスを満たす手段でなければ、軍隊はそういう位置づけだよ。日本が優遇政策を取りやめさせてるから、『割にあわない』事になれば、軍隊に好き好んで入ろうとは思わないよ」
これから新規志願数の低下に悩む時代を迎える扶桑皇国。太平洋戦線が控えている時代に新規志願数が確保困難なのは、有事の軍組織としては致命傷になりかねない。扶桑海事変の再映画化が持ち上がるのはダイ・アナザー・デイ後の事であり、如何に軍部が志願の確保になりふり構わずに奔走していたかがわかる。サボタージュでウィッチの軍での存在意義に疑義が呈され、カールスラントでは大規模リストラが敢行され始めている。日本連邦も15歳以下のウィッチは原則として、高等工科学校で再教育の方針と定められたため、設立間近だった507統合戦闘航空団が『死産』に終わり、ハッセ(ハンナ・ウィンド)の就くはずのポストがなくなり、スオムスで彼女の人事が宙に浮いてしまうなど、連合軍としても大いに弊害が出てしまった。また、強大なリベリオン軍から国土を防衛する名目でシャム(タイ)がウィッチを供出しない方針に転換した事はスオムスには大誤算であった。いらん子中隊の代替・後継ポジションを狙った507が死産に終わり、日本連邦から智子の一件での政治的報復が示唆されたことで軍事的発言力を大きく損ねたばかりか、同位国のフィンランドからも咎められ、マンネルヘイムの政治生命が危うくなるなど、踏んだり蹴ったりである。ウィッチの世代交代期を迎えていた時代、21世紀世界の介入はウィッチの新陳代謝という意味では多大な悪影響をもたらしたわけだ。扶桑は太平洋戦線へ向けて、Rウィッチ化で隊長~中堅幹部になるベテランの頭数を維持しつつ、一部のトップエースが変異した存在たる『Gウィッチ』をウィッチの要と位置づけていく。その運用部隊としての位置づけが『64F』となっていくわけだが、『最有力の装備と人員を独占しながら、中央の指揮下でない』事は参謀格の軍人の反感を招く。そして、彼らの選んだ一つの策略が参謀格の軍人の第二の粛清人事を招く。それ以後、扶桑生え抜き参謀は根本的に近代指揮幕僚課程を履修した次世代の参謀たちが育つまでの間、冬の時代を迎えるのだ。(日本の軍隊への露骨な職業差別意識に反発した事が結果的に自分達の首を絞めたわけだ)64Fは参謀格の軍人の反発を抑えるためにも、1948年以後は最前線に常に投入され通しになるため、同隊員の福利厚生費は軍の全部隊でもっともかかると、財務当局を泣かせることになる。(長期休暇は有事には隊規模で取れなくなるため、隊の中枢を担う幹部たちは新選組隊員を兼ねるか、各部隊中隊長級以上を占めるようになる)
「ああ、敏子か?そうか。天誅組の投入は見送られたか」
『ああ。今、参謀本部から通達が来てな。天誅組は育成途上であり、投入は時期尚早と』
『交代要員はどうするつもりだ?』
『付近のサボタージュしてる部隊から幹部を根こそぎ引き抜けとさ』
「参謀本部も場当たり的対応をしてくれたものだ。それはもうしとるよ。だが、他部隊を機能不全にするわけにはいかんよ」
『だが、上は構わんと言ってきてる。サボタージュをした部隊の登録抹消も辞さんそうだ』
「脅しか。サボタージュを辞める部隊も生じ始めとるのだぞ?」
『悠長なことをやってはおれんそうだ。ウィッチの軍事的意義が無くなったと判断されれば、ウィッチの雇用は軍からいっぺんに消え失せる。カールスラントのような社会的失敗は犯すわけにはいかんと』
「カールスラントは部内の派閥抗争こそ一掃されたが、引き換えに世情不安だ。我々はそれは避けなくてはならん。とは言え、我々におんぶにだっこではな」
『サボタージュした者には作戦の後に懲罰人事が検討されている。竹井くんや加藤には気の毒だが、それが上の決定だ』
「我々だけで戦線を支えろと?」
『通常部隊を好きにして良いから、とにかく成果を出して、日本の財務当局を納得させろとのご達しだ。付近の機甲師団、歩兵師団と航空部隊にはお前らへの協力指令を出しているそうだから、こき使ってやれ。孤軍奮闘するお前らへの侘びと思え』
「その代わりに我々がどういう機材を使おうが、補給を独自にしても文句を言わんように…」
『評議会も承認済みだ。好きにしろ。疫病で日本も扶桑軍にかまけているほど暇でなくなったからな』
「そうでなければ割に合わんよ」
『勲章と記章はこちらが押し切った。瑞宝章はこちらでは文官の勲章だし、もらえる機会が高官まで勤めた後では、多くの将兵には縁遠い話だし、故郷で派手に出征式を行ったウィッチも多いからな。外聞的に勲章と記章はなにかかしら与えんとならん』
江藤敏子が通信越しに伝えた事は政治的妥協の産物だった。日本の政治家の多くは『防衛記念章の授与と瑞宝章の特別授与を行い、前時代的な金鵄勲章は正式に廃止すべき』と主張していたが、金鵄勲章は扶桑の唯一無二の軍事勲章であり、どこかの国に敗戦したわけでもないのに、自分から軍事勲章を廃止する意味はない(代替の勲章に瑞宝章を充てがうのは、扶桑にとってははた迷惑だった)。日本だけの都合で連邦は運営されているわけでもないため、日本政府は防衛省の背広組をすぐに説得できたが、野党の政治家達がこの問題最大の敵であった。彼らの一部が強硬にこの『金鵄勲章廃止論』を主張したために、結局、問題の根本的解決は作戦完了後に扶桑の皇室が動くまで持ち越される事になり、扶桑軍は現地で感状を乱発せざるを得なかった。『感状の価値が下がる』という声もあったが、外国兵が勲章を与えられるのに、扶桑が褒章を与えないのでは、軍隊の沽券に関わるため、感状は重宝された。特に個人感状は64Fが独占して与えられる事になる。サボタージュした部隊は結果的にそれまでの名誉の剥奪同然の扱いで遇されたため、それに憤慨した本土の一部若手将校らの決起を促したのも事実だ。
「敏子、これからどうなると思うか」
『わからん。だが、組織に日本の手が入るだろうから、これからはこれまでの扶桑軍隊の慣習は多くが消えていくだろう。寂しいが、そろそろ『変革の時』だと言うのはわかる。だが、前世のような性急な改革ではなく、時間をかけての緩やかな変化を望むよ、私は』
「お前らしい」
マカロンは北郷として、江藤に接する。江藤は性急な改革を望まず、10年単位の時間をかけての穏やかな変革をしていく事を望むが、日本側が急激な変革を所望したことで1946年にクーデターが起き、1948年に参謀格の中堅~若手軍人の策謀が繰り広げられる事になるなど、64Fを取り巻く環境はけして順風満帆ではない。江藤の願いと裏腹に、この時代は扶桑軍人同士の骨肉の争いが続くのである。ダイ・アナザー・デイは後世、『扶桑軍にある日本軍との共通項が減らされていく流れが始まる分水嶺』とされる。その変革の象徴が黒江たちとされた点で、事変直後の時期に彼女らを弾圧した(突出した個人を嫌う当時の軍部全体の意向であったのだが…。)当時の高級将校らの生存者達(1945年になると、事変当時の高級将校には退役者や物故者も多いのだ)は一様に気まずい思いをする事になり、個人を大規模に表彰する流れを定着させたカールスラント軍へ個人的な恨み節を吐く者が続出したという。
――その変革の最中に『次代を担う』とされ、空軍のプロパガンダに用いられた人材が黒江らの弟子筋とされる『月詠調』(地球連邦軍人としては本来の『月読』ではなく、この表記を使用している)、『キュアフェリーチェ』(花海ことは)、『キュアドリーム』(夢原のぞみ)であったのは江藤を含めて、事変に関わった当時からの高級将校らにとっては皮肉極まりない顛末と言えた。その江藤は『転生者としての最初の償い』とし、プロパガンダの先頭に立ち、プロパガンダを盛り上げる一人として、源田実付きの参謀としての『下積み』経験を積み始め、64Fの初代隊長である事を周囲に公言し始める。江藤個人としては、これから参謀としての長い『下積み』時代を迎えていくものの、最終的キャリアは『空軍総司令官』であるため、参謀としての下積み経験が評価されるのである――