――野比家はいつ頃、かつての場所から引っ越したのか?2020年頃の記録によれば、2000年代後半に入る頃の再開発で立ち退いたという。のび太の記憶によれば、野比家が地主の代替わりで借家生活から開放されて数年経った中学生時代にその話が出、公園予定地にされた地域と都/国との交渉が数年ほど膠着状態にあったため、立ち退きまでにのび太がマンション地下に地下格納庫を移設するだけの猶予はあった。そして、2006年頃。のび太が高校三年生の頃に正式にマンションへ移ったのだ。――
――2020年 地下格納庫――
「ん、この写真は?」
「のび太が高校生の頃の写真だよ、のぞみ」
「のび太くんが?」
レイズナーの鎮座する場所のすぐ横に置かれていた作業机の上に置かれている一枚の写真にのぞみは気づいた。この時点より若々しい姿をしているのび太が調、キュアフェリーチェと共に、彼のかつての実家である一軒家の前で写真に写っていた。のび太が育った一軒家が取り壊される数日前に撮られたようで、のび太は寂しそうな顔をしていた。
「のび太の育った家が取り壊される直前に撮られたものでね。それが最後の思い出だよ」
「日付は……2006年の夏頃?」
「うん。2002年にのび太の住んでる街の地主たちが寿命で亡くなり始めたから、街のお偉方が再開発をぶち上げたんだって。その一つがのび太達が住んでた区画の公立公園化だったんだ」
「揉めなかった?」
「そりゃ揉めるさ。区の都合なんだし。で、今のこのマンションや、近くのいくつかのマンションに住民を優先的に入居させる事が決まるまでに四年もかかって、計画にテコ入れも入って、のび太一家が引っ越したのがそのくらいになったわけ」
「へー…」
「この施設はこのマンションに元からあったの?」
「いや、前の家の庭に置いてたひみつ道具の地下室をマンションの敷地に移設したんだよ、かれん。このマンションはのび太が子供の頃から関係してる機関が買い取ったから、この時代になると、のび太一家以外の住民はその機関員が大半だし、管理もその機関がやるようになったから、こんな芸当ができるんだにゃ」
「それで、こんなロボットを造れるのね?」
「そういうことにゃ。もっとも、今の私達なら宝具も扱えるから、戦う手段には不自由しないけどにゃ」
「ダイ・アナザー・デイの時にそれでチートだって言われたもんですよ、かれんさん。シンフォギアの子達の常識をぶっちぎってるようなものだったし。あの子達にはずるいとか言われましたよ。宝具を貸し借りできるんですから」
「それは言えてるわね」
「調ちゃんもそうだけど、クラスカードを扱える魔力さえあれば、宝具の霊格は呼び出せるし、いざとなれば、インストールして自分の存在に英霊の力を一時的に加えればいい。あの子はそうしましたから」
のぞみはダイ・アナザー・デイで調がシンフォギアのオーバーホールの際の敵襲に際し、クラスカードのインストールを使用した事に言及した。調はシンフォギア装者出身者だが、黒江との感応で、黒江譲りの高い魔力を得たため、クラスカードを問題なく起動可能である。ダイ・アナザー・デイ以降はデバイスも持つが、それも整備で使えない時にクラスカードを借りたのである。
―――――告げる!汝の身は我に!!汝の剣は我が手に!聖杯のよるべに従い、この意この理に従うならば応えよ!誓いを此処に!!我は常世総ての善と成る者! 我は常世総ての悪を敷く者――!汝、三大の言霊を纏う七天!抑止の輪より来たれ、天秤の守り手!!
クラスカードの本領はこの夢幻召喚である。自身の存在に英霊たちの力を具現化させるという行為はシンフォギア世界のあらゆる概念を超越しているため、エルフナインがショックのあまりに固まったという。よく用いられるのはオーソドックスな能力を持つ『セイバー』のカードであり、美遊・エーデルフェルト、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、月詠調(本来は月読だが、表記を変えている)が主な使用者だが、プリキュアの変身アイテムを置き忘れた際にのぞみも実行し、ことはも使用経験がある。これがイリヤと美遊が得た最大の力であり、なおかつ魔力さえ持っていれば、貸し借りの効くものであるため、クリスやマリアはその強力さの割に手軽に使えるという点で『反則アイテム』と評している。意識の回復後の立花響も『すごいアイテム』と言っている(彼女は最終的に沖田総司と共存したため、自身もガングニール以外の戦闘手段を手に入れたからか、黒江達への以前のような『コンプレックス』はなくなった)。
「キュアモを忘れた時にあたしもやりました。今の体は魔力があるんで。ただ、これは個人の元々の技能レベルで強さが変動するんで、基本的に戦闘訓練を受けた誰かが使うのがいいんですが」
クラスカードのインストールは基本的に戦士として一流と呼ばれる水準まで能力を引き上げるが、使用者のセンス、魔力次第で強さはいくらでも変わるため、使用が望ましいのは高魔力と戦闘センスの高い者。イリヤ、ことは、調は元から一定水準の戦闘センスと高魔力を両立(美遊は素体の持っていた魔力値はイリヤに比べれば常人の方に入るが、変身後はイリヤと同水準に飛躍している上、戦闘センスは高めである)しているため、クラスカードのポテンシャルを安定して発揮可能である。のぞみもインストールを行った経験が一回あり、プリキュアとしてだが、元から高い戦闘センスを備えていたため、比較的に高いポテンシャルを発揮したと自負しているようだ。
「確かに反則ね。その子達になにか言われた?」
「愚痴られましたよ。宝具の霊格を召喚して具現化できる上、英霊の能力を得られるんですから。エクスカリバーはたぶん、一番撃ったかも。元々の持ち主ご本人も使ってるし、変種・亜種を先輩たちが撃ってるし」
「イギリスが聞いたら泡吹くわよ」
「ブリタニアの軍高官とチャーチル首相の顎、外れてましたよ」
「アルトリアの扱いでカールスラントとブリタニアが取り合いっこしてたにゃ。子供じみてるにゃ」
64Fはエクスカリバーを亜種・変種含めて複数を多用し、ダイ・アナザー・デイに旋風を巻き起こした。エクスカリバーは変種・亜種も発生しやすいため、複数人が同時にエクスカリバーを放つことで威力を引き上げる行為も行われた。元から対軍級宝具であったものを重ね合わせることでもたらされる破壊力は強大であるが、それにも耐える者は存在するし、そもそも、スーパーロボットはエクスカリバーの攻撃にも耐えられる(真ゲッターロボやマジンカイザー級以上のスーパーロボットになると、宝具のエネルギーも吸収可能である)モノが多いため、無条件で宝具が強いわけでもない。あるに越したことはないが、けして無敵ではない。そこも不思議なパワーバランスである。
「でも、宝具も無敵ではないのでしょう?」
「そこが面白いとこだよ、かれん」
ユニはそこに次元世界の不思議を感じているようだ。
「スーパーロボットが実質の最高位の代物さ。機械仕掛けの神とはよく言ったもんでね。人間が極限まで強化した科学力で星や次元の境界を壊せるだけの代物を生み出すんだからさ。しかも中には自己進化してる奴もいるんだよね」
「核爆弾で都市を破壊できても、スーパーロボットに傷一つつかないってのはよくあるそうだからね。ほんと、バケモノだよ」
スーパーロボットは戦場の頂点として君臨する。マジンガーZEROからして、世界を滅亡させているし、それを倒すためのゴッドマジンガーや真ゲッターはその極致だ。この頃にはカールスラントや扶桑に対して『自分達と同じ目に遭え』という世論を通し、史実連合国の占領政策がウィッチ世界に知れ渡ったことで猛批判を受けると、日本とドイツも驚き、史実戦後秩序が成り立っている事が前提の軍縮政策を公式に転換。アメリカも同位国への批判を躱すため、強力な各種援助をウィッチ世界に行う事になった(同時に自由リベリオンは血の献身を常に求められるようになるが…)が、地球連邦軍がスーパーロボットを投入したことで存在感が霞んでしまった感が大きい。
「アメリカも技術とかで一応は援助したけど、地球連邦がスーパーロボットで持っていった感があるからね。真ゲッターやマジンカイザーとか惜しげなく使ったしさ」
「そりゃ、その気になれば地球を一撃で粉砕出来るマシーンを使えばね。向こうの世界の怪異なんて物の数じゃないよ。スーパーロボットの元祖で、旧式・低スペックのマジンガーZでも、アメリカ海軍の空母機動部隊の全力に相当する戦力なんだし」
「マジンガーZって、有名なあの?」
「ええ。あれです。二号機が造られてるって聞いてます。グレートマジンガーくらいのスペックに改良して」
「スーパーロボットって量産されてないの?」
「色々な兼ね合いで避けられてます。グレートマジンガーが少数生産されたけど、結局は廉価版に切り替えられましたし」
弓弦之助の意向もあり、マジンガー量産計画は『グレートマジンガーの量産』から『イチナナ式』の量産に切り替えられた。これについては不評だが、マジンカイザーやゴッドマジンガー、マジンエンペラーGの積極投入とのバーターである。
「その兼ね合いで、敵がナイトメアフレームとかを量産した場合に備えて、のび太君はこれを用意したんです。響が紅蓮聖天八極式を使った事で、ミドルサイズ以下の機動兵器の研究を始めるところは増えるでしょうし」
機動兵器のユニバーサルサイズはマジンガーZや初代ガンダムを基準にした18mであるが、小型MSよりも小型の機体に20m級の機体を高出力で動かせられるジェネレーターを積んで『サイズに見合わない高出力を与える』という研究は行われており、SPTとナイトメアフレームの開発・製造はその研究の成果であった。財政に余裕がある地球連邦軍はともかく、他勢力はこの動きにさほどの興味は抱かなかったが、非ジオン系の反連邦テロリスト達がそれらを生産し、ジオン共和国亡き後の時代に台頭してくるのである。また、旧・ロシア連邦を中心にした反統合同盟の残党がジオン系勢力の亡き後に再興してくるなど、地球連邦政府の上層部にかつての極東地域における一国にすぎないはずの日本の出身者が多いという事実への反発も燻っているのが23世紀である。もっとも、日本国が統合戦争の最終的な勝者であるという歴史的事実は変わらないため、ロシア連邦や中国などの統合戦争で零落した地域の僻みと妬みの点が大きいが。
「貴方、板についたわね。職業軍人が」
「敵と戦うのを法的に合法にする唯一の手だったし、なんだかんだで『公務員』ですからね」
「確かに。法的には、私達のやってる事は違法行為だもの。その自覚はあるわ。こまちの説得ができれば、私も正式に加わるわ」
「ありがとうございます。先輩に伝えておきますよ」
とはいうものの、親友のこまちはともかく、かれんは自らの世界ののぞみの説得に手間取り、結果的にだが、ことはが肉体言語を使うしかないのである。(二人を連れて行く上での対価をその世界のりんとうらら、くるみの三人が求めたことから、ことはとトワ、いちかがその世界のプリキュア5に助っ人として参加したという)
「そっちのあたし、どういうことしました?」
「そうね、一言で言うなら、貴方が戻った後、私に詰め寄ったわ。私達はエターナルと戦ってる最中だし、りん達も対価を求めるでしょうね」
「だいたい想像できます。現役時代はあたしも若かったですし」
「年寄りじみてるわよ?」
「一度死んでる身ですから、こっちは」
のぞみは別の自分が青臭さを見せていることをそう評し、かれんから年寄りじみていると言われた。当然だが、転生者は成人後のパーソナリティが残っているため、外見と内面が釣り合わないことも多い。のぞみの場合は錦の姉御肌なパーソナリティが影響したか、現役時代より落ち着きがある面と血気盛んな面が同居しており、精神が不安定化すると錦の持っていた強い攻撃性と粗野さが出てくるが、レントン・サーストンの持っていた愛する者への一途さが残ったと思われる『純情さ』もある複雑な心理である。それとのぞみの成長した後の心理も混じっているためか、教職にかつてほどのこだわりはなく、むしろ戦うことが自分の運命であると普通に受け入れているなど、前世での経緯も反映している複雑怪奇極まりない精神状態。同位体はその変質した姿に強く反発したと思われる。
「時間は人を変えちゃうところがあるんだよ、かれん。ここにいるのぞみは挫折して、戦士としての自分にすがるしかなかったって暗い経緯を辿った場合ののぞみ。現役中のこの子が見れば、許せないと思うよ」
ユニが気持ちを代弁してやる。同位体が怒ったのは『夢を諦めた』ように見えたからだが、実際には夢そのものは叶えたが、職業の現実に打ちのめされたというのが正しいからで、後に、ことはもそこを強調する。
「一応、教育学部を出て、教師にはなりましたよ。問題はその後ですよ。モンペアの対応やら、口うるさい指導係との人間関係、子供を産んでもかまってやれないこと多くて、上の子にグレられて、ついにはダークプリキュア化ですから。現役中のあたしは絶対に信じないですよ、やることなすこと全部が裏目に出た人生なんて」
「ええ…」
「だから、元々の願いの為に愛を諦め、誰かの為に生きたけど、その生き方を子供に否定されたから、大元の自分の心の芯に一番近いプリキュアとしての自分をやり直す決意でこの子は転生したのさ、だから、のぞみは素体から姿が変わる時に現役の頃の姿になって、それで肉体が固定されたのさ」
「それを伝える?」
「それはのぞみ次第だよ、かれん」
「その声は……もしかして、ココ?」
「久しぶりだね。義父さんからの伝言を伝えに来たんだ」
コージがやって来た。ただし、容姿はかつての人間態『小々田コージ』のものとも、妖精としての姿と違う転生先の肉体独自の10代半ばほどの少年に見える容姿であった。(要は鎧伝サムライトルーパーの主人公『烈火のリョウ』と同一の容姿である)
「ココ、どうしてこの時間軸に?」
「烈火の鎧を僕が智子さんから受け継いだんだ。魂的には元鞘って言うべきだろうか?その報告さ」
「それじゃ、ココも戦うの?」
「魂魄の記憶に従うまでさ、のぞみ。僕は本来、そうあるべきだったようだしね」
コージは彼が住むのび太壮年期の頃には、智子から『烈火の鎧』を受け継ぎ、魂魄の記憶通りにサムライトルーパーとしての使命を果たすために戦う事を決意したようだ。ある意味では妖精時代の切なる願いを叶えたというべきだが、魂魄的には因果を感じさせるめぐり合わせであった。もちろん、最強の鎧たる『輝煌帝』も呼べるという。
「魂魄の記憶があるとは言え、鍛えないとならないから、義父さんと兄貴に無理いって、剣道道場に通ってる」
「あ、そうか。ココはノビスケ君の弟って扱いだっけ」
コージが野比家の養子になって、10代半ばになる頃にはのび太は壮年期を迎え、ノビスケも20代(アラサーだが…)の青年になっている。彼は養子とは言え、野比家の次子という扱いであるため、形式上、のび太の妹になっているキュアフェリーチェは叔母にあたる。
「ことは叔母さんはいるかい、のぞみ」
「はーちゃんはのび太君に随行して、今はアメリカ。スネ夫君の誘いでカーオークションだよ」
「義父さんも道楽者だなぁ。お土産を渡そうと思ったんだけど」
のび太の車道楽は壮年期の頃でも続いている事が明確にされる。
「いい状態のアストンマーティン・DB5が出たとかで、スネ夫君に呼ばれて、ベガスに」
「義父さん、僕のいる頃にはそういうヴィンテージを死ぬほど持ってるくせに」
呆れるコージだが、のび太の車道楽は青年期の頃に亡くなった大叔父の遺品である『ミニ』を譲られたのを始まりとし、意外な事に車道楽に大金をつぎ込んでいる。アルファ・ロメオ、アストンマーティン、ポルシェ、フェラーリなどのヴィンテージを青年期から老年期に至るまで買い集め、コージがいるのび太が55歳の頃には『ノビ・コレクション』と呼ばれるほどの収蔵数に至る。中でも、アルファロメオ・グランスポルトはダイ・アナザー・デイの際に乗り回すほどで、スネ夫も呆れたほどだ。
「この頃から集め始めてるからね、のび太くん。アルファ・ロメオなんて、普段遣いがグランスポルトだよ」
「ノビスケ兄貴が愚痴ってたよ。子供の頃は親父の自慢話を聞かされまくったってね」
「のび太さん、車道楽をその頃でも?」
「子供の頃に我慢してたのが弾けたっていうのか、車道楽に金かけてるんだ。爺さんの麻雀みたいに」
年老いたのび助は絵の他に麻雀を嗜むことが増えた。若い頃よりタバコを減らした兼ね合いだろう。コージから見ると、祖父と父は極度の道楽者ということだろう。
「『さすがに三代目みたいにしょっちゅう壊して直してじゃ、財布が死んじゃうよ、レプリカなら惜しげないしね』とか言ってたしね、義父さんは」
「のび太さんの特技はなんなの、二人共」
『射撃とあやとり。射撃は僅かな光があれば、夜中でもヘリのパイロットを撃ち抜けるほどだよ(ですよ)』
のび太の射撃力は壮年期になっても衰えず、55歳頃になっても、僅かな光があれば、夜中でもヘリのパイロットを撃ち抜けるほどの精度を素で保っている。壮年期を迎えると、流石に老眼が入ってくるが、それを物ともしない。
「あやとりは鍛えすぎて、鋼線で『殺取り』って必殺技繰り出してるとか。ノビスケくんはどうなの?」
「あやとりは継いでないよ、兄貴は。兄貴は表向きはサッカー選手だからね」
のび太55歳の頃、ノビスケは30歳を迎えており、サッカー選手としての盛りを迎えている最中であり、人気選手である。スポーツ界で成功した野比家男子は彼とその孫(セワシの父)で、アイスホッケー選手であった『ノビゾウ』だけだ。なお、あやとりを鋼線にする方向の後継はノビスケ第二子で、セワシの大叔母『野比涼子』、そして、その更に子孫でノビタダの妹である『エリカ』が継いでいるという。
「のび太くん。言ってたなぁ。あやとりは女子に受け継がれて、射撃は代々の男子に受け継がれるって」
「セワシも統合戦争で鳴らしたっていうしね」
野比家は源家と剛田家の血が入った後の世代になると、代々の男子はのび太の優しさと射撃力を、代々の女子はあやとりとしずかとジャイ子の気の強さを受け継いでいる。セワシは双方の気質を併せ持つ珍しいタイプであり、それ故に強引なやり方で事業を展開した。家族にはワンマン経営だの言われ、嫌われていたが、晩年期は高祖父の面影を持つひ孫を溺愛した。そのひ孫が高祖父の転生体である事を今際の際に悟り、最後に安らぎを得た。ノビタダはのび太として、セワシを見送ったのだ。
「あ、そうだ。みらいとリコとモフルンにはこれを。他のみんなには…」
ユニにお土産を渡すコージ
「私が運んどくニャ…。あ、のび太からだ。え、えぇ!?」
「どうしたんだい?」
「アヤカから連絡があって、聖闘士世界にせつなが来てたって。しかも……へびつかい座の白銀聖闘士になってたそうな」
「ほえ!?」
一同は固まった。青年のび太が黒江から転送され、さらにユニへ送った写メールにはへびつかい座の聖衣を纏った東せつなが写っていたのだ。黒江によれば、シャイナが何らかの理由で行方不明になり、その間の代理ということで才能をシオン(ゼウスの手で蘇り、聖域を実質的に統治している前教皇)に見いだされたといい、黒江がダイ・アナザー・デイを戦ってる際に叙任されたらしい。
「せつなちゃん、どうして聖域に?」
「アカルンのテレポート能力が何らかの影響を受けて、聖域にたどり着いたんじゃないか?アテナの小宇宙の影響でテレポートの進路が変わって、その世界に漂着して、聖域だとアカルンの力でもテレポート出来ないから、聖域に居付いたんじゃ?」
「前になおちゃんと言い合ったけど、本当にそうなってたなんて。先輩は?」
「聖域での用事が済んだら連れてくる予定だって」
「今の聖域でそんなに用事が?」
「前教皇が生き返らされたから、聖域の近くの街とかの巡礼の護衛とかだって。黄金聖闘士は先輩たちが今は主力だし」
流石に教皇不在では外聞的にまずいと思ったか、教皇代理の権限を持つ祭壇座の聖闘士もサガの乱以前に誅殺され、アテナの直接統治状態の聖域を見かねたZ神は牡羊座のシオンを蘇生させ、聖域にカムバックさせた。アテナの直接統治は聖闘士世界の時代背景的に難しいからだろう。加えて、牡羊座のムウの直弟子であった貴鬼は幼齢であるため、先々代のシオンをカムバックさせたのだ。
「神様の都合で蘇り…。なんとも世知辛いわね」
「神様の軍団だって、立て直すのに20年近くはいりますからね。聖闘士の育成し直しとかで」
シオン曰く『聖闘士の育成はそう簡単に成るものではない』が、平和な時代には空位に成る星座も多いため、星矢達の戦った聖戦のように星座が完全に揃う事は珍しいという。シオンと童虎の代の聖闘士はほぼ戦死したが、その後継はなかなか出ずじまい。ある時にアイオロス達の世代がその後継についたが、サガの乱心で結果的に聖域は大打撃を蒙り、以後は星矢達におんぶにだっこであった。それを緩和するためのヘッドハンティングを行い、黒江達は聖闘士になった。せつなも漂着者ながら、高い戦闘センスを持つと確認できたためにヘッドハンティングされたのだろう。プリキュア出身でありつつ、正式に聖闘士になったのは彼女が最初であった。後に、キュアベリー/蒼乃美希が鷲座(この時点でアクイラとイーグルの二つの聖衣が存在した)の白銀聖衣を個人的にシャイナ捜索に赴く魔鈴の代理という形で叙任されるが、それは未来の話である。
「それと、義父さんがレイズナーを用意した理由だけど、君たちを助けるためさ」
「どういう事、ココ」
「君には批判が多いからだよ、のぞみ。義父さんが一生をかけて、君たちを無償で助ける事は馬鹿らしいからね、ネットギーク達にとっては。君たちが現役時代に僕たちを無償で助けた事も馬鹿らしいからね、連中にとっては」
「どうして?」
「要は僻みや妬みだよ。君は世界を守れる力があるのを合法化するためとはいえ、軍人になっただろう?軍人っていう商売は日本じゃ、とかく反感を買う商売だしね。もっとも、軍人に社会的優遇措置を取らないのは戦後の日本くらいなものだけど、扶桑で社会問題になってるだろう?」
「うん」
コージの言う通り、扶桑社会で問題になったのが、軍人への社会的優遇の廃止の是非である。日本国民は軍人への表立った社会的優遇措置を一切合切廃止し、お情けで軍歴証明書発行、退役後の軍人恩給と高官の経験者向けに瑞宝章を与えるという方法でお情けで『勲章を残す』という方向を政治運動として目指したが、扶桑で社会問題になった(実際にクーデターに至る)、軍隊は農村部の次男や三男坊などの雇用の受け皿である事や、21世紀では『軍隊が職業』という意味合いで語られる『職業軍人』という単語の意味が扶桑では『兵役を経験した者が使う軍人への蔑称』であったという認識の齟齬もクーデターの理由の一つだ。扶桑は戦前期日本同様、軍人と遺族に手厚い保障をしているが、日本がこれを殆ど停止させようとした(これは平等性を謳っての年金支給金額の減額にトーンダウンした後、遂には立ち消えになる)事がクーデターの一因であるが、クーデターの鎮圧後は日本の手での社会変革の大義名分に利用された。1947年以降、軍嫌いの吉田茂が事実上の次世代の『元老』として影響力を奮った影響もあり、事変以前ほどは周囲から優遇されなくなっていく。職業的意味での人気が死亡率の増大で相対的に低下した結果、軍部は半ば慢性的に人的な意味での新陳代謝速度の停滞に悩まされ、ウィッチ兵科も第二次扶桑海事変(1950年代後半)の直後に兵科の解消が正式に決まり、アルジェリア戦争開戦時に兵科維持の理由とされた『竹井海軍元少将』(竹井の祖父)が没した事で遂に実行されるのだ。
「『特技章』へ事実上の格下げと取るだろうね、日本と扶桑が内密に決めあった事は。だけど、ダイ・アナザー・デイでシェルショック、俗に言う戦争神経症になって辞めたウィッチは敵味方共に多いからね。君たちの政敵は焦ってるはずだよ。サボタージュの大義名分にした『ウィッチ同士の空戦』は殆ど起きなかったし、母機ごと対空ミサイルに落とされたウィッチも多い。ウィッチは超重爆の編隊や戦闘機の迎撃は訓練されていないからね。日本側にとっては仕事もしないタダ飯食らいに見えたのさ」
ウィッチは1943年以降は訓練課程の激しい簡略化もあり、対戦闘機・対爆撃機戦闘の訓練は簡略化の影響でなされていないか、形式的なものであった。その弊害はダイ・アナザー・デイで表れ、高性能なB-29の迎撃戦はまだしも、戦闘機である『P-51H』、『P-47N』、『F8F』などとの空戦ですら覚束ない有様だった。きちんと数年の教育を受けた事変以前の世代が相対的に活躍した事で戦時の軍事教育の簡略化の是非が問われたが、要は簡略化のしすぎが問題の根幹であったため、太平洋戦争までに急速にカリキュラムの見直しが進んでいく。その過程で、三隅美也などの将来有望なウィッチの任官が彼女らが高等工科学校を卒業する1947年次以降までずれ込んだため、結果的に統合戦闘航空団の一つの存廃に影響を及ぼしたケースも生じた。また、史実の雁淵孝美のように、統合戦闘航空団を経歴の箔付けに利用する事も禁じられたため、扶桑では501統合戦闘航空団を内包した64戦隊への所属が経歴的意味での統合戦闘航空団の代替物と見做されるようになるのだ。
「そう言えば、507の結成が見送りになって欠番になったけど、改編対象のいらん子中隊が事実上の代替にされたっけ」
「ダイ・アナザー・デイは結果的に統合戦闘航空団の淘汰を進めたようなものさ。分散配置は各個撃破のもとだし、アニメでも501以外は目立った活躍をしていない。そこが人件費削減のいい大義名分にされたんだよ」
統合戦闘航空団は空母機動部隊の508が必要上、存続できた以外は廃された。501以外に目立った活躍がなかったのも理由だが、ひかりの一件で孝美の人事考査が危なくなりかけたり(アニメで妹が活躍した事を知ったため、本人も物凄く気まずくなったのみならず、私情で有望なウィッチとなり得るひかりの芽を摘み取りかけたと非難された。孝美は家計を支える必要上、給与の自主返納は二割に留めたが、戦闘では絶対魔眼の自主的封印を行った。その代替となる力を求め、黒江の仲介でアクイラの聖闘士になった)、グレーテ・ゴロプのカールスラント至上主義を助長していた仕組みと見做された事も統合戦闘航空団の淘汰の理由である。
「だよなぁ。504は噛ませ犬って認識されてるし、他の統合戦闘航空団も政争の道具扱いだから、無敵の501以外を無くそうってなるのは当然なんだよね」
「日本とドイツにエース部隊の実績があるのも、統廃合の理由だろうな。地球連邦軍にもエース部隊としてロンド・ベルがいるし、栄光の501に比べれば、他の統合戦闘飛行隊や統合戦闘航空団の功績なんてのは微々たるものだ。エース部隊はひとまとめにして扱うのが長期的に予算削減になるって考えたんだろう」
「なんか世知辛いなぁ」
「生徒会の予算会議を思い出すわ…」
「同じく…」
「金は天下の回りものというだろ、のぞみ、かれん、ユニ」
『言えてる……』
金は天下の回りもの。うまい例えだが、世の中、金がなければ何もできない事は真理である。のぞみ達はコージにそう言われ、頷くのだった。