ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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五十三話の続編です。


第六十五話「次元震パニックその十三 ~出会いと炎の鬣の一角獣~」

――さて、今回における次元震パニックの始まりは予めの対策が立てられたとは言え、やはり、出会いから始まった。炎の鬣の一角獣は『Gウィッチの存在する世界の象徴』とされた。その理由は……――

 

 

――1947年のある日――

 

時空管理局からの通報で次元震警報を受け取った扶桑皇国は中央部に起こった強い地震という形で観測。黒江からの情報で2つの旧・501基地付近に変化がないかを観測した。『今回』においては基地ごとの転移はなかったが、64Fの管轄空域で連合軍の古い周波数で救援要請通信が流れている事が確認された。同空域は当時のリベリオン軍新鋭爆撃機である『B-36』がちょうど編隊で『定期便』で飛行しており、それと接触したと思われた。黒江達は直ちに出撃、爆撃機の殲滅に向かった。

 

――その空域――

 

「震電でも上がれない高さに上がれるの、あの飛行機は…!?」

 

501統合戦闘航空団の同位体らは護衛を伴った新鋭戦略爆撃機『B-36』と接触。理由も分からぬままになし崩しに交戦状態に入ったが、高度13000mを超える上昇限度を誇るため、501最高の高高度性能を持つP-51と震電ストライカーを以てしても、その高度に到達できなかった。芳佳Bはエンジンのスロットルを緊急出力にしてでも上がろうとしたが、流石に機体設計上の上昇限度を超えており、マ43-42特魔導エンジンも息をついてしまい、気を抜くと高度が落ちてしまう有様になる。

 

「え、わわっ!?だめです、これ以上は上昇できません~!」

 

「嘘だろ!?12000超えだぞ!?まだ上がれるのかよ、あいつは!」

 

P-51Dと震電を以てしても、到達不能な高度へ上昇するB-36。爆撃機は市街地の中心地へ到達するのは時間の問題と思われたが……。

 

「こ、この音は!?」

 

「ジェットエンジンの音だ!馬鹿な、ジェットを積んだ通常戦闘機なんて……」

 

シャーリーBがそう溢した瞬間、雲海を切り裂くようにして、一機のジェット戦闘機が飛来した。胴体に見たこともない国籍標識(日の丸)をつけ、尾翼に『炎の鬣のユニコーン』が描かれた『胴体に単発のジェットエンジンを積んだ、短いテーパー翼を持つ機体』が現れる。二人を尻目にそれは猛然と上昇し、爆撃機をその武装で粉砕する。二人にとっては非現実的ですらある光景だった。

 

『501へ。敵は貴隊の手に負えるものにあらず。戦闘は我々に任せ、我が方の基地へ退避されたし』

 

501幹部らに向けての広域無電が流される。すぐに坂本Bがそれに応える。

 

「こちら501統合戦闘航空団戦闘隊長、坂本美緒少佐。どういうことか?貴官の官姓名は?」

 

『そうか、声じゃわからんか。黒江綾香といえば分かるか?』

 

「黒江!?馬鹿な、お前は航空審査部に引っ込んどるはず……」

 

『その辺は込み入った事情があってな。とにかく、B公の新型にはお前らじゃ太刀打ちできん。護衛に絡まれる前にガキ共引き連れて、俺が所属しとる部隊の基地からの誘導に従え。後で事情を話してやる』

 

「どういう事だ、黒江!ちゃんと説明しろ!」

 

『後だ、後!』

 

かなり雑な対応だが、坂本の頭上をクフィール(操縦者はキュアビート)がフライパスする。カールスラントでも理論実証段階にあったはずのデルタ翼を持つ戦闘機が颯爽と現れたため、すっかり混乱する坂本B。それはカールスラント勢も同じで、シュワルベの実機すらまだ初飛行して間もないはずのジェット機が実戦投入されたとは聞いていないからだ。

 

『誘導は緊急チャンネルのBだ、呼び出し符号《コールサイン》はトレボーだ』

 

「わ、わかった。」

 

と、黒江は通話を切る。この時に投入されたのはF-20とクフィールで、64Fが保有する未来機材の一つである。いずれも、本来の歴史では遥か後に生まれるはずの戦闘機である。本来、固有のエンブレムは現役の時期的に持たなかったはずの黒江がはっきりと持つ事、見たこともない国籍標識と新型機。謎は深まるばかりであった。

 

『坂本、久しぶりね』

 

「その声は穴拭、穴拭か!?」

 

『綾香から話は聞いたでしょ?子どもたちを連れて、基地にいらっしゃい。事情はそれから教えるわ』

 

「まて!お前と黒江が何故同じところにいる!?お前、明野にいたはずだろ!?」

 

『基地についたら説明するわ。驚くわよ』

 

坂本Bは智子の誘導を受け、隊を率いて基地に向かう。日差しの強さから、元いた空域から離れているとは思っていたが、基地が見えてくると、基地の大きさと駐機されている機材があまりに凄すぎた。

 

「な!?ジェット戦闘機があんなにまとまった数で配備されているだと!?馬鹿な、カールスラントでさえ、まだ部隊配備には…」

 

バルクホルンBも腰を抜かす。しかも皆、エンジンが胴体内蔵式の機体であり、中には可変後退翼の機体まであった。

 

「皆、降りるぞ」

 

基地に着陸する一同だが、爆撃機や輸送機も余裕で着陸できる長さの滑走路や鉄筋コンクリート構造の管制塔など、リベリオンなどでしか見ないような豪勢な基地だった。格納庫もジェット機前提の大型のもので、かなりの財政状況の余裕度を感じさせる。

 

「よ、迎えに来てやったぞ、坂本、それとガキども」

 

「お前、加東…か?」

 

「わざわざ戦闘服着てやったのに、わかんねぇのか?ダボ」

 

「貴方は坂本少佐の知り合いなの?」

 

「若い頃に面倒見てやった先輩…といえば分かるか、中佐。あたしは加東圭子中将。この部隊の先任大隊長の一人だ」

 

怪訝そうな声を出すミーナBに圭子は官姓名を名乗る。階級が将官なので、ミーナは思わず敬礼する。

 

「し、失礼しました!」

 

「お前、いつの間にそんな……」

 

「こちらもお前らの事を聞きたいくらいだ。坂本。部隊長の執務室にいけ。お前もよく知る奴だよ」

 

「わ、わかった。子供たちはどうする」

 

「綾香が帰るまで、別室で待機させる。それと一応の身体検査は受けてもらうぞ。装備は預かりで整備もしといてやる、名目は入管検査って事にしてな」

 

 

こうして、収容された501B。64Fの身体チェックの後、幹部級のみが呼ばれ、黒江達と会談を行った。黒江達はフライトジャケット姿であり、扶桑軍本来の軍規に規定されていない服装である。

 

「どういう事だ、黒江」

 

「ここはお前らの元いた世界と違う世界だって事だ。普通に考えて、二年であんなジェット機が造れるか?」

 

「無理だ…。だが、その証拠はどこに…」

 

「入っていいぞ」

 

「うむ」

 

坂本Bは固まった。入ってきたのはフライトジャケットを海軍軍服の上から羽織っている自分自身だったからだ。

 

「うーむ。自分自身を他人目線で見る日が来るとはな」

 

困り顔の坂本A。この時には大佐に昇進済みで、結婚間近の同棲中の身である。

 

「美緒……貴方、双子だったの?」

 

「馬鹿な、私は……」

 

「え……」

 

ミーナの顔色が変わる。窓の外を自分らしき人物がタンクジャケット姿で、しかも自転車を漕いで通過したからだ。

 

「今のでわかったろ?何だったら、呼び出そうか?」

 

「ど、ドッペルゲンガーじゃないよな…?」

 

「あたりめーだ。こいつはここの世界のお前自身だし、今、窓を通り過ぎたのは、この世界でのミーナ自身だ」

 

「今のがミーナか?なんでバタバタなんかに乗ってるんだ?」

 

「お前なぁ…。まぁ、いい。次に見せるのはこのスライドだ」

 

黒江が用意したスライドは事変からダイ・アナザー・デイまでの経緯を写真に収めたもので、黒江達のいいところが多めである。監修は圭子だ。事変編は三人を中心にする七勇士の勇姿が主で、黒江達が大立ち回りをしている最中の一枚が多めであった。

 

「ん、ちょっと待て。浦塩市内は戦場にならんかったはずだぞ」

 

「こっちじゃ空襲はあったんだよ。それで俺たちがなんとか陥落を防いだのさ」

 

浦塩中心市街への空襲を防ぐ旧64Fの写真はB世界では起きていない出来事の象徴であった。中でも、突出して黒江達が暴れたというのは当時の練度や装備的にもありえないはずだからだ。

 

「ここじゃ、お前ら三人、特に若本のガキが血気に逸るんで、抑えるのに苦労したぜ。引き際をわかっちゃいねーガキだったしな」

 

「徹子は血の気が多かったからな。今で言う菅野タイプだな」

 

「さて、見て驚くなよ。ここからはカールスラント提供のカラーフィルムだ」

 

「フィルムはリベリオン製だけどな」

 

映写された映像は事変最終決戦の際の映像で、艦娘・大和が現れる時の実艦のシルエットも撮影されていた。そのため、坂本Bは驚く。大和型は1937年当時には影も形もないはずだからだ。

 

「馬鹿な、あの時に大和型は一隻も完成しては……!?」

 

「こっちでは大和は土佐の早期退役が予定されたから、とにかく急いだんだ。大和だけ急いで投入したが、急いだもんで機関の不具合がな」

 

それは実際には嘘八百だが、大和に関しての公式記録ではある。

 

「それと、実際に戦ったのは船霊の一種、艦娘だよ。この時は設計図を依代に現れたんだよ。強かったぜ。シルエットを目撃した観戦武官が泡食ったせいで、大和型より強い戦艦の時代になったが」

 

「大和以上の戦艦など作れるのか?」

 

「カールスラントは48cm砲の船をキール運河度外視か拡張で用意するはずだったし、ブリタニアは本当に作った。うちが超大和を作るのは当然だよ」

 

「待ってください、空母の時代にそんな戦艦……」

 

「お前の国は空母を諦めたから、説得力ゼロだぞ」

 

「で、色々と紆余曲折あって、超技術が流入して、ついにこんな戦艦が投入された」

 

「な、なんだこれは……キングジョージ級が笹舟…に」

 

「三笠型戦艦。二年前の連合艦隊旗艦さ」

 

「で、ここからが二年前の大戦闘だが……」

 

「いったいどうなってる!?説明しろ!」

 

「落ち着け、バカ。ここからが大事だぞ」

 

「!?巨大な陸上車両の上に飛行甲板だと……」

 

「地上空母。二年前の戦いで敵が実験的に使った兵器さ」

 

ダイ・アナザー・デイもたけなわの頃、ティターンズがナチスの残した技術資料を後世の技術で蘇らせた代物が投入された。地上空母である。元は第二次大戦の枢軸国側が回天のために計画した事が判明しているが、日本軍は机上の空論としたが、モータリゼーション技術があったためにドイツ軍はこれを本気で設計した。もちろん、時期が時期だったので、ペーパープランに終わり、アイデアだけが日本の漫画で使われたとされるが、ティターンズは示威も兼ねて、実験的に作ったのである。

 

「こんな代物、いったい……」

 

「これなんて、まだ理解できるほうだ。次を見ると腰抜かすぞ」

 

『ブイトゥギャザー!レェェツボルトイィィン!!』

 

「これだものな」

 

ボルテスVが合体し、天空剣で怪異をV字に叩き切る映像が入る。巨大ロボットがいきなり大暴れするので、ポカーンな事になる。しかも怪異の法則をガン無視で粉砕するのだから。

 

「なんだこれは…」

 

「別の世界からやってきた助っ人が持ち込んだスーパーロボットだ。二年前の戦いは彼らが怪異を抑え込んでくれたようなもんだ」

 

「何?すると……」

 

「二年前の戦いは人同士でドンパチしたって事だ。後半はウィッチ部隊で動いたのは一部の部隊だけでな。俺らしか後半は戦ってなかったから、終わったら直ぐに長期休暇取ったよ」

 

「何故だ?」

 

「それに人同士の戦闘とは…」

 

「次のフィルムで説明する。この世界がどうなったかを説明する。だが、休憩挟むぞ。長丁場だし、ガキどもから部下がヒアリングしてるはずだしな」

 

「大隊長、ヒアリングが終わりました」

 

「ご苦労。挨拶していけ」

 

「水無月かれん医務少尉であります」

 

かれんが報告書を提出しにやってきた。彼女はこの時期にはインターン中の医務少尉だ。

 

「よろしく。黒江、軍医も自前で用意できたのか?」

 

「宮藤のツテがあってな、かれんはその関係で呼べた。この時間軸だと、宮藤はウチの医療責任者で、医務少佐だぞ?」

 

「何ぃーーーー!?」

 

「ま、まて、そんな急に…!?」

 

「軍医学校出て、実務経験積んだからな。それにあいつ、ここだと親父さんの弟子と結婚間近だぞ」

 

「み、み……」

 

「あ、美緒!卒倒してしまったじゃないですか、閣下!」

 

「すまんすまん。そういう事だ」

 

 

 

――妙にコミカルな会話になったが、幹部級には安心する材料となった。一方、芳佳達のほうは黒田とシャーリーが説明を担当した。シャーリーはこの日、紅月カレン時代を思わせる服装であり、非番が伸びた事を愚痴っていた。

 

「おい、なんでそんな恰好なんだよ」

 

「本当は非番だったんだよ、チクショウめ!」

 

こちらは自分同士でコミカルにやり取りを交わすシャーリー。元からコミカル担当だが、Aは紅月カレンなどの要素が入ったため、ルッキーニしかわからないが、気が荒い。

 

「どっちがどっちかわかんないよ~!」

 

「まー。同一人物だしな。諦めろ、ルッキーニ」

 

「ヤダヤダヤダ~!シャーリーの胸はあたしのだもーん!」

 

(久しぶりだなぁ。駄々こねるルッキーニ。クロになってからは手が離れたしなぁ)

 

「おい、シャーリー。ややこしいから変身しとけよ、確実に間違えなくなるから」

 

「たしかになぁ。ほれっ。これでどうだ?」

 

容姿を北条響のそれに切り替える。一同は驚く。瞬時に姿が変わったからだ。

 

「え!?」

 

「お前、ニンジャかよ!?」

 

「違う違う。ちょっとした特殊能力だよ」

 

「そうそう。ここじゃ芳佳も持ってるよ」

 

「ど、どーいうことですか!」

 

「うわぁ、お前ら!いっぺんに来るなよー!?」

 

「響ー、事情説明終わったー?……って、なにしてんの?」

 

「のぞみ、ガキどもを引き剥がしてくれーーー!」

 

「ほらほら、シャーリーが潰れてるよー」

 

「す、すみません…」

 

「誰ー?見ない顔だね」

 

「夢原のぞみ。少佐で、シャーリーのこの世界での同期。これでいいかな、ルッキーニ?」

 

「にゃ!?にゃんで、あたしの名前を!?」

 

「そりゃ会ってるし、同僚だしねぇ。大丈夫?」

 

「あたた…。お前ら。群がるのも時と場合考えろー!」

 

「す、すみません。だけど、シャーリーさん。すごく、その…」

 

「はいはい。さわり心地はいいから、芳佳」

 

のぞみもこの頃になると、芳佳のおっぱい大好きぶりは周知の事実。ツッコミを入れる側である。

 

「お前、こいつの扱いに慣れたな…」

 

「二年も付き合ってればね…」

 

「しっかし、お前……。なんで、そんな能力を」

 

「訳あってな。それに、神様ってのは皮肉な運命がお好きなようだ」

 

「どういうことだ?」

 

「戦う事が運命づけられたってことさ。こいつとあたしは」

 

「でも、まるっきり姿を変えられるのは、なんでですか?」

 

「色々あった末の産物だよ。望んでなったわけじゃないが、そういう運命でな」

 

Gウィッチの誰もがその能力を『望んだわけではない』。シャーリーの場合はプリキュアとしての前世がそうさせたと言える。

 

「あたしとシャーリーはある意味、選ばれちゃったからね。」

 

のぞみは『望んでそうなった』ため、シャーリーとはそこが違う。だが、外向きにはそういうことにしている。シャーリーものぞみに付き合う形でプリキュアに戻ったので、そこはお互い様であると言える。

 

「あれ?そっちのあたしはー?」

 

「長期休暇が取れたから、今はどこにいるやら。ママさんとどっかに旅行行ってるっていうぞ?」

 

「そっか~」

 

と、誤魔化す。Gウィッチは基本的に姿を変えられるが、リーネとルッキーニの場合は『自分で選んで人格も変えた』部類に入るからで、圭子のように『別の姿で別に戸籍を持つ』パターンである。ルッキーニAはクロエ・フォン・アインツベルンとして、リーネAは美遊・エーデルフェルトとして生活している。また、リーネはビショップ家の家名を重荷と感じた上、芳佳への負い目もあり、そうなる事を選んだ。マルセイユもそれに付き合い、『ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト』として、ぬけぬけと貴族家の当主を演じているため、そうした二重生活を送る者もいる。のぞみも中島家がデザリアム戦役時に了承したこともあり、『夢原のぞみ』として公式に生活を始めた。現在は野比家に普段は住みつつ、ウィッチ世界では、黒江の邸宅(南洋島にある)に間借りしている。

 

「でも、同じ人物同士でよく対消滅しないよな」

 

「現実には、そういう事は起きねぇさ。SFじゃあるまいし」

 

「と、言うことは私たちも『いる』って事ですよね」

 

「そういう事だ。お前は医務主体になったけど、飛ぶことは続けてるぞ。あ、言うことがある。宮藤、お前の機体だけど、こっちの世界じゃエンジンの部品を用意できねぇそうだ」

 

「え、なんでですか」

 

「お前の機体の排気タービンとターボチャージャーは紫電改や烈風のそれと規格が違うらしい。こっちで飛ぶことはそんなにないと思うから、エンジンを取り替えて使うしかないな」

 

「なんでですか?」

 

「震電はこっちじゃ、レシプロとしては完成しなかったからな。二年前、少佐が手配しようとしたけど、横須賀航空隊が審査未了を名目に出さなかったそうだ。直ぐにジェット時代になったのもあってなぁ」

 

試作機を実戦配備することは未来世界では珍しくもないが、ウィッチ世界では忌避されていたため、横須賀航空隊の言い分ももっともであった。だが、その量産型の雛形になるはずの試作機が『クーデター事件で失われた』ため、残された初期試作機をベースに、ジェット戦闘脚化して開発を続行する事になり、レシプロストライカーとしては芳佳のもとに渡ることはなかった。震電ストライカーはレシプロとしては量産されずじまいであったため、エンジンの予備部品を用意できないのだ。

 

「そうですか…。ところで、あの機体はなんなんですか、シャーリーさん」

 

「F-20。愛称はタイガーシャーク。リベリオン最新鋭のジェット戦闘機だ。扶桑がエースパイロット用にライセンス生産してる機体で、超音速機だよ」

 

「ち、超音速だって!?馬鹿な、カールスラントでさえ、最新試作機で950がやっとだったはずだぞ、それがなんで、いきなり超音速なんて……」

 

「色々な世界の技術で軍事技術が急激に発達してな。その産物だ」

 

公には『そうなっている』が、この時点のA世界では『F-5』系統はまだ脚光を浴びていない。黒江やシャーリー自身が使用し、ダイ・アナザー・デイで無敵と例えられるほどの活躍を見せたが、史実でF-20は不採用に終わった機体であるので、ダイ・アナザー・デイ時点では、日本連邦軍関係者の興味を惹かなかった。だが、耐G技術が史実でのF-20完成当時より上になった時点の技術を用いれば、同機は下手なステルス機を凌ぐ機動力を持つ。第五世代戦闘機がステルスという特徴を剥がされた時、『あまりに非対称戦に適応されすぎて、大戦型の大規模空戦には却って使いにくい』という点がクローズアップされた時、その次の世代の戦闘機に早々に切り替えられるのである。

 

「ジェットと言っても、ターボジェットじゃなくターボファンだから、バイパス比2無くても、燃費が倍は楽に違う高性能エンジンだぞ」

 

「なんだとぉ!?カールスラントでも理論実証段階のはずだぞ!?」

 

「バルクホルン、そういうの、この世界だとご法度だぞ。つか、ブリタニアの理論だけど?」

 

「か、カールスラントがそういう研究をしていないと思うのか、リベリアン!」

 

「ブリタニアがジェットの大家なんだぞ、バルクホルン。うちはそのパテントを買ったんだよ。扶桑もな」

 

「待ってください。あの国籍標識は扶桑のものなのですか?」

 

「そうだ、ペリーヌ。この世界だと、あれに変えたんだ。連合軍はミートボールと呼んでるけどな」

 

「あ、あの。この世界はどうなってるんですか?」

 

「それは後で説明する。お前にはショッキングな事実だしな、リーネ」

 

シャーリーAは北条響の容姿ながら、シャーリーとして質問に答える。姿が変わったため、芳佳は残念そうだが。

 

「おい。サーニャはどこだよ?」

 

「軍やめたよ」

 

「何ーーーー!?」

 

「そのへんは後で上官達に聞いてくれ。サーニャんとこは政変だったんだよ、エイラ」

 

「あ、あの。私は?」

 

「政治行くんで、予備役編入。後任と交代だ、ペリーヌ」

 

「どういうことですの!?」

 

「その辺は上官達に聞いてくださいよ、ペリーヌさん。一言じゃ説明できませんし」

 

「同じく」

 

黒田も頷く。そうとしか言えない上、ペリーヌAは『紅城トワ』としてここにいるので、すごくややこしいのだ。後にトワとして出会い、また、モードレッドとしても出会うため、ペリーヌBはモードレッドへ『円卓の騎士のあなたがなぜ我が国に?』とモードレッドに問いかけ、『前世の生まれなんぞは意味がねぇことだろ?昔は昔、今は今さ。生まれたのがパ・ド・カレーで今の故郷だ、文句あるか?』と返されたとか。

 

 

 

 

――この頃には日本からの社会規範の流入で扶桑社会の軍人を見る目は瞬く間に冷たくなり、職業軍人達は村八分すらやるようになった生まれ故郷を捨て、基地の近くか、大都市に邸宅を構える例が続出していた。後に軍人街と呼ばれるコミュニティの誕生である。ウィッチもなり手が減り始め、事変世代の古参兵に慰留が次々とされる一方で新兵の確保が覚束なくなった事は次の時代における兵科消滅の一因となった。竹井少将は日本からの社会規範の流入でウィッチ兵科の運命は決したと漏らし、近い将来に自分が世を去れば、役目を終えたとされる事を見抜いていた――

 

「少将、よろしいのですか」

 

「時代が求めるのなら、それを受け入れるまでだよ、加藤くん。孫娘が世話になった。儂は20年、30年は生きられんだろう。若い頃、ウィッチの生きる道を守るために兵科を創設したが、高慢を生んだのは誤算だった。ウィッチが社会的にもう一度、一からやり直すには、儂が若い頃の状態に戻るしかあるまい。それが正しいかどうかは次の世代が判断してくれるだろう」

 

「日本留学経験者が二極化して、色々と面倒の元になりそうですが」

 

「仕方あるまい。ある程度は覚悟していた事だ。我々は彼らの悲観的憶測を学ばければならんよ。君達が軍を去る時代のためにも」

 

 

――竹井少将は引退後もウィッチ兵科創設の功労者として存在感を持ち、昭和天皇からも信を得ている。その彼自身がウィッチ兵科の解消を受け入れていた時点で、反G派の大義名分は名ばかりのものとなっていた。社会がウィッチを排除しないようにするには、Gウィッチの力と存在を上手く使えばいいのだ。竹井少将はそう考え、自身の孫娘を含めたごく一部の者達が達したその境地を肯定していた。孫娘への善意を滲ませつつ、軍人としての冷静沈着な戦略家の顔を覗かせる。竹井少将は日露戦争相当の時代の若手将校であり、少将時代に病を得、退役したが、本来なら功績的に大将になっていてもおかしくはなかった。武子が疎んじられつつも、窓際コースにならなかった理由は天皇の信を得ている彼の後ろ盾があったからだ――

 

 

 

 

 

 

――次元震はこの後にも数回ほど起き、各統合戦闘航空団や統合戦闘飛行隊のメンバーは巻き込まれた時の時間軸にもよるが、若干の差異はあった。管野直枝のように、状況と世界の差異に納得できない者もおり、その際に模擬戦で叩きのめすしかない者も多い事は意外な苦労であった。特にマルセイユは自身の戦闘能力の高さに自信があったため、黒江達は更に上の戦闘機動を見せ、天狗気味なその鼻っ柱をへし折る事で以て従わせた。(マルセイユや管野は階級よりも実力を見て従うタイプであるため、模擬戦は必然であった。特に管野と違い、その実力で鳴らしたマルセイユは生半可な戦いでは納得しないため、B世界では関連性を持たないものの、圭子が模擬戦を担当。秘奥義であるシャインスパークでマルセイユを倒した)また、自発的に模擬戦を申し出る場合も多く、プリキュア達が何故、名だたる名うてのウィッチを抑え、64Fの更に最精鋭の大隊に配置されたのか。隊内でのその疑念を払拭するのにも役立った。基本的に新選組は『最精鋭』かつ『Gウィッチの引き受け場』であったため、人智を超えた力の持ち主のみが所属出来る。その証明となった。――

 

 

 

――その翌年のある日――

 

「教えて。なぜ、貴方達は人同士の戦争なんて…」

 

「そうでなければ生き残れない地獄だからさ。よく死人がでなかったもんだ」

 

坂本Aはこの年に結婚を控えているが、ミーナBの面倒を見ていた。その関係上、相談を受ける立場であった。

 

「二年前、敵のお偉方はこう言った。たとえ地獄の業火だろうと、焼きつくしてしまえば、灰になった過去だけが残る。そこから『未来』を造りあげるのも悪くはなかろう?と」

 

坂本Aはダイ・アナザー・デイでティターンズの幹部たちは無常感を心に抱いてきた事を実感した。ティターンズは敗軍である。世の中は敗軍に冷酷非情である。それを身を以て体感しただろうティターンズ将兵はどこか無常さを心に抱きながら戦っている。何故、転移先に溶け込もうとしなかったのか。世界でのポジションが史実のソ連役になってでも、一旗揚げようとしたのか。坂本Aは疑問を抱いている。(戦後日本の成功から社会保障と社会主義的ルールが安定発展のきっかけと認識していたのもあるが)そして、その時にキュアドリームはこう啖呵を切り返した。

 

『冗談じゃないよ!!あんたら、神にでもなったつもり!?思いあがらないで!!』

 

と。また、地上空母戦の折にのび太は誹謗中傷への回答を一つ述べている。

 

『自分の戦いを危険だからって理由だけで他人に金を渡して、リングの外から眺めてるほど、僕は卑怯じゃないさ。この世界のためにも、そして、君たちのためにも…、この世界の平和は己が命をかけて勝ち取ったものでありたいだけさ』と。また、シャーリーが『のび太は鉄人兵団を倒した以上、戦う必要なんてもうなかったはずだ……。あいつは普通に生きて普通に死ぬ身分に戻れたはずだ…』と嘆くと、『僕はかみさんと普通に生きて……息子や孫に看取られて死ぬために……ここに来たのさ』とシニカルな返しをのび太は披露している。どこぞの外人部隊的な言い回しだが、64Fは最前線中の最前線にあったので、こうした無常感漂う言い回しは受け入れられていた。

 

『やらない後悔よりやってダメだった時の後悔の方がマシだしね。まったく、地上空母なんぞは漫画の中の産物と思ってたよ』

 

のび太はその時に炎の鬣の一角獣の描かれしドラケンを初めて使用し、出撃の際にこう言った。

 

『後悔する程、手を抜くつもりは無いけどね』

 

のび太は青年期以降はカッコいい言い回しもするようになった。そして、成長したその背中は『男の背中』であった。

 

 

――連合軍航空部隊に多大な損害をもたらした地上空母は人の科学が生み出した怪物であった。坂本Aの戦友であった艦攻ウィッチや艦爆ウィッチ達も多くが逝った。特攻を行って戦死した者も10人や20人ではない。地上空母はのび太の調査によれば、構想は『ナチス時代にあった』らしいが、当時の技術では実現不可能だった代物である。ティターンズはダイ・アナザー・デイの際に、一年戦争以前に使われていたクローラー・トランスポーターをかき集め、足回りをガンタンクⅡのクローラーとすることで重量20000トン、かなりの全長を持つ地上空母を現実に生み出した。設計段階であった潜航機能を削り、アングルド・デッキを完備。装甲にガンダリウム合金を使ったために並の砲撃を物ともしない。しかも、横流しされたガミラス製ドリルミサイルを積んでいるというおまけ付きだ。遭遇したウィッチ部隊をいくつも全滅させたが、怒りに燃える64Fの猛攻には流石に耐えられなかった。のび太が初めて使用した『炎の鬣のユニコーン』のエンブレムは1945年のその日以来、『64F/新選組』の象徴として扱われ、初代64Fより『洒落の効いた気風がある』と評された。その死闘は語り草である。(初代隊長である江藤は過去、そういう洒落の効いた文化を嫌っていたたため、プロパガンダなどではシャークマウスなどを削除させていたが、地球連邦軍などでは普通にやっている文化であるため、参謀時代以降は渋々ながらも受け入れた)――

 

「美緒、この世界はどうなっているの?」

 

「二年前を境として、人同士の戦争に回帰しただけさ。だから、ああいう文化がウチでも普遍化したのさ。元来、ウチはよほどの例外でないと、ああいう洒落の効いた文化は認められなかったからな。お前のところの子供たちにはやらせられんよ。」

 

「この世界は……地獄ね」

 

「まだマシさ。世界によっては何十年も戦争が続いてたのに、宇宙時代になった途端にまた戦争をしまくるって流れもあるんだ。地獄というのは、戦っている時は平和を、そして平和の中では戦いを、いつも反対側をみて生きていくような在り様さ。笑われようが、なじられようが、傷つくようなプライドなどは……私は二年前に捨てたさ。軽蔑すらも生きるという快感の前では効力を失うものだ」

 

坂本Aはダイ・アナザー・デイで無常観というものが身にしみたらしく、どこか哀愁を漂わせる。少なからずの戦友が散った事で考えが変わったらしいところを見せる。

 

「誰も傷つかず幸福を保つ世界はないさ、ミーナ。死んだほうがマシだと思える状態でさえも、生きて明日をみるんだというその気持ちが生き残らせる。これは子どもたちにはわからん世界さ」

 

A世界を覆う無常観はB世界の『子供達には理解できない』と前置きしつつ、坂本はこう〆た。

 

「政治の腐敗という事柄があるだろう?それは政治家が賄賂を取ることじゃない。それは政治家個人の腐敗であるにすぎんよ。政治家が賄賂を取っても、それを批判できない状態が政治の腐敗だ。この世界はそれと似た状況にあったのが外的要因で覆ったのさ。怪異がいなくなれば、人同士の戦争などは普通に起こり得るが、その事を提唱すれば、矢のように批判され、社会的に抹殺される。この世界は外的要因でそれが起こった。お前のところの子供達には悪いが、半端な覚悟で……この世界の戦争は戦えんよ」

 

一見して坂本らしくない台詞回しだが、それは他世界と異なる道を選んだA世界の坂本の選択である。

 

――『この世界の戦争って悲劇はあんた達が始めたんだ!目的が手段を正当化する事などありえないんだよ!』――

 

キュアドリームはダイ・アナザー・デイでティターンズ幹部にそう啖呵を切ったが、彼女自身、『プリキュアとして戦うという目的が自己承認の手段と化していた』過去を持つため、ある意味では双方にとっては皮肉な流れである。坂本は彼女に秘められた過去を黒江から聞いていたため、その皮肉をのぞみ本人より感じていた。坂本はのぞみが一時は錯乱状態に陥った事を聞き及び、その皮肉を感じていた…。

 

 

 

 

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