ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第六十四話「示される道と再会」

――のび太がレイズナーを建造したのは、ダイ・アナザー・デイでの誹謗中傷を見かねてのものだが、パイロットは元々、その技能を元から持つノビタダが想定されていた。建造されたのが強化型レイズナーという強化型SPTなのがその証明であった。のび太はノビタダのように、パイロットとして正規の訓練は受けていない(センスはあるが)ため、AI補助を強め、OS『レイ』を再現させた。流石に『フォロン』は再現することはなかったが、結果的に乗る敷居を下げる事になった。強化型レイズナーは姿勢制御バーニアが原型機より多めであるので、のび太が乗る際はレイの補助が強めになるように調整された。また、後継機種のレイズナーマークⅡも既に設計途上段階にあるが、戦闘機形態の機首の延長が検討されている――

 

「ココ、これは?」

 

「レイズナーマークⅡの線図だよ。義父さん、もう設計を始めたのか……。気が早い」

 

机に置かれていたもう一つのモノは後継機種の線図であった。のび太は少なくともマークⅡまでは建造予定らしい。

 

「のび太くん、そんな知識あった?」

 

「いや、おそらく出木杉のおじさんに引いてもらってるはずだ。うちの義父さんは航空工学科じゃないしね」

 

のび太は資金力はあるが、航空工学知識などは無きに等しいため、JAXAに就職した友人の出木杉英才に細かい設計を詰めてもらっているとコージに推測される。ドラえもん曰く、ピリカ星の冒険で使用した『天才ヘルメット』と『技術手袋』はレンタル品で、未来デパートに返してしまったため、出木杉に設計を頼んだとのこと。

 

「そうなんだ。のび太君に愚痴られたんだけど、前にピリカ星の戦いで使った天才ヘルメットと技術手袋は未来デパートのレンタル品なんだ」

 

「あ、ドラえもん君」

 

「仕事が終わったから、寄ったんだ」

 

「ドラえもん君、何?そのどら焼きの箱」

 

「駅前ショッピングモールの和菓子店がバーゲンしててさ、つい買い込んでね、アハハ」

 

どら焼きを箱買いしたらしいドラえもん。声がのぞみが幼少の頃に見た愛すべきどら声であるため、のぞみの後輩であるいちかからは却って驚かれたという。

 

「君の後輩の子から驚かれたけど、君たちの見たのはパラレルワールドでの現実でも有るのさ、ボクも偶然出会った事有るしね」

 

「え、本当?」

 

「ああ。6500万年前のユカタン半島に隕石がぶつかる日、君や僕が知るのび太くんと別ののび太君を目撃した事があるんだ」

 

「えーっと、つまり?」

 

「平行世界同士の同一人物は共存できるってこと。そののび太くんはいくらかこっちののび太君より童顔気味だったんだ」

 

ドラえもんが竜の騎士と出会った冒険で、一同は平行世界の自分達が別に冒険をしている事を目撃した。ドラえもん自身も声が高めの自分の別個体がのび太を探している様子を目撃しており、ニアミスしかけたらしい。

 

「君が同位体と出会っても問題が起きなかったように、この僕も同位体と出会ってるわけさ」

 

ドラえもんは別の自分と出会いかけた。そのケースを鑑みると、同一人物同士は会っても問題はない。黒江が言っているように、だ。

 

「僕からして、同一人物同士で共闘してるしね。ほら、バウワンコの冒険で…」

 

「わ~!あれ本当にあったの~?」

 

「のび太くんから聞いてないの?」

 

ドラえもんは同一人物同士で共闘した事がある。バウワンコ王国の冒険の時、しずかの機転で実現し、その際にしずかがスーパー手袋で兵士たちをなぎ倒し、男性陣の心胆を寒からしめたのは有名な話だ。しずかは清楚な少女像を装う一方、羽目を外した時はおてんば娘そのもので、スーパー手袋で後の実子に通ずる腕っぷしを披露し、マウンテンゴリラなどの猛獣をノックアウトするわ、バウワンコ王国の兵士らをボコボコにに叩きのめすなど、ノビスケがガキ大将になれた理由を自ら実践している。

 

「しずかちゃん、すごかったよあの時。君らに勝るとも劣らない勇猛果敢さで兵士をちぎっては投げ…。ヘッドロック、ボディスラム、エビ固め……」

 

ドラえもんの言葉からは、スーパー手袋を得たしずかの大暴れぶりは凄まじく、プロレス技を連発しまくり、男性陣の心胆を寒からしめた事が窺えた。のび太が妻のしずかをなるべく怒らせないようにしているのは、怒ったしずかの恐ろしさを間近で見てきたからであると、一同は納得した。

 

「しずか、もしかしてプロレス見てた?」

 

「お祖母さんから禁じられてたらしいけど、お祖父さんがファンらしいって、子供の頃に聞いたことがあるなぁ」

 

コージは義母のしずかがプロレスファンらしいことを子供の頃に聞いていたと言い、苦笑いする。子供の頃は口止めされていたかららしい。

 

「でも、その怖さ差し引いても好きが上回ってるとか、ドMなのか一途なのか測りかねるよ、のび太くんってやつは」

 

「貴方、口悪いとか言われない?」

 

かれんがツッコむが、ユニとのぞみが同時に告げる。

 

『かれん(さん)、ドラえもん(君)は毒舌家ニャ(ですよ)…)

 

「カミさんが見るっていうから、CSの格闘技チャンネル契約してるよ、僕も嫌いじゃないし」

 

「義父さん、帰ったんですか?」

 

「ああ。今しがただ。お前が来てるってんで、はーちゃんといちかちゃんに料理を頼んだよ」

 

「のび太くん、アメリカから帰ったって?」

 

「アストンマーチンのDB5が手に入ったよ。30万ドルで落としてきたところさ」

 

「え、30万ドル!?か、か、かれんさん…」

 

「えーと、この時代の為替レートを考えて……」

 

2020年代の為替レートで考えると、おおよそ日本円で有に3000万円は下らない。のぞみの前世の給料では、一生かかっても到達するか怪しいため、それをいっぺんに使うのび太の道楽ぶりに目を回す。

 

「ど、どっからそんなお金でるの?」

 

「ヒーローユニオンの社用車で落とした、ひみつ道具でコピーして、ヒーロー達の行動車両として、改造車にして新造扱いで特殊車両で登録するついでにコピーの1台はウチの警備車両にする。ボ○ドカーの改造だよ」

 

「うへぇ……」

 

「普段の趣味の車なら、本業の裏の手当で年に一台くらいはスーパーカー増やせるよ」

 

「3000万円よ、のぞみ」

 

「さ、さんぜ……」

 

「義父さん、のぞみが泡吹きましたよ」

 

「ま、僕にとっては普通に使う金額だし、裏の報酬はその数倍だしな」

 

のび太の裏稼業の報酬はスイス銀行に振り込まれるが、一回の報酬が数十億レベルであるため、裏稼業を一回するだけで、日本のサラリーマンが一生かかっても稼げない金額の報酬を得られるのだ。とは言え、提供するサービスがゴルゴ13と同等以上である事を求められるため、28歳を過ぎて鋼線に手を出す理由でもある。

 

「スイス銀行に金は預けてあるし、鋼線の手入れや調達も大変さ。23世紀のイギリスの『王立国教騎士団』のある人物に比べりゃまだまださ。始めたばかりだし」

 

鋼線はアラサー当時は始めたばかりであるため、王立国教騎士団の『死神』に比べたらビギナーと謙遜している。とはいうものの、その人物いわく『見どころのある若者』とのことで、将来有望と見られているらしい。その人物は鋼線分野では23世紀の英国の第一人者で、23世紀初頭時点では『初老』の執事だといい、会った事があるという。

 

「王立国教騎士団?」

 

「ヘルシング教授の一族が19世紀くらいから統制している裏組織さ。某吸血鬼が切り札。ヴァチカンの裏組織と最近は揉めてるらしいけどね」

 

この関係はタイムパラドックスを含んでいる。執事の師は野比涼子。のび太の孫娘である。つまり、彼が手ほどきをした青年は自身の師の祖父に当たるというタイムパラドックスな関係である。また、彼はのび太に銃の製造技術を手ほどきしたので、多大なタイムパラドックスを孕む。

 

「23世紀のヘルシング卿とその縁で知り合いなんだけど、複雑な関係でね。彼女の執事の戦闘技術を仕込んだのは僕の孫娘なんだ」

 

「へ?つまり…?」

 

「複雑怪奇極まりない因縁があるって事、王立国教騎士団とウチは。」

 

コージも頷く。野比家は王立国教騎士団と良好な付き合いだが、それがもとでヴァチカンとやり合うハメになったが、流石のヴァチカンも野比家には手を出せない。のび太達はその縁で後に、ナチス残党の一派も入り混じったロンドンの大戦に関わる事になり、そこでナチス・ドイツの狂気を垣間見る事になる。ただし、ことはと調曰く、ヴァチカンはのび太少年期の頃に自分達が激戦の末に撃退した(23世紀の化け物揃いの人員ほどでないが、それでも聖人級を抱えていた)との事である。

 

「23世紀のウチはヴァチカンの暗部部隊やナチス・ドイツ残党の一派とも揉め事があってね。地球連邦がロンドンから副首都を移したのは、その襲撃に備えてのものだよ」

 

「ナチス・ドイツ残党って分派いるの?」

 

「ああ、モンティナ・マックス少佐を指揮官とする戦闘団が動いてる。彼独自の哲学でね。この写真を見てくれ」

 

写っているのは、モンティナ・マックスという名の武装親衛隊の小太りな青年将校の横顔であった。日付は1944年。その時点で20代半ばほど。一見するとどこにでもいそうな小太りのメガネをかけた青年将校だが、アドルフ・ヒトラーが執着していたオカルト研究の最前線に立っていたという特異な経歴を持つ男である。第二次大戦終戦時の最終階級は武装親衛隊少佐。生え抜きの武装親衛隊エリートである。本人はヒトラーに好かれなさそうな性格だが、ヒトラーから特務を言い渡されていたあたり、戦争末期に信頼を得ていた青年将校であった事は想像に難くない。なお、本来、武装親衛隊に少佐という階級はなく、直訳で大隊指揮官だが、戦後の潜伏時に国防軍との共同行動を取るために職責に相当する正規軍の階級を名乗り始めたというべきか。

 

「武装親衛隊は正規軍じゃないんだけど、実質は正規部隊同然だったから、少佐を名乗れるのさ。この小太りの将校がどういう手法で総統の信を得たのかは不明だけど、吸血鬼の研究をしていたからね。だから、ナチスが徹底的に潰されたのさ」

 

のび太の示したモンティナ・マックスと呼ばれた武装親衛隊将校。その彼が23世紀で何を起こそうとしているのか?それを調べているという。

 

「その彼の配下のアジトを潰した時に撮った写真がこれ」

 

「嘘、23世紀にハーケンクロイツ…。ナチズムなんて化石のはずじゃ」

 

「状態のいいStG44を回収して、カールスラントに提供したよ。軍縮で生産効率が43年の5割以下らしいから、喜ばれたよ」

 

ナチズム残党は20世紀後半から多くが存在した。それら残党は23世紀でも生き残っており、のび太はオークションに行くついでに、23世紀でネオナチのアジトを潰してきたという。カールスラント国内は軍縮で政情不安であるため、StG44の自国生産さえ覚束ない有様で、そこを指して『没落国家』と揶揄されている。

 

「仕事だと、タイムベルトが意外に使い勝手いいんだよね、アジトの座標送って貰って、タイムベルトで直接侵入したよ。で、連中、レオパルト1まで隠し持ってたから、カールスラントの軍需工場に送った。担当者に喜ばれたよ」

 

カールスラントは情けないことに、強引な軍縮で数年間は自主開発も覚束ないほど治安が悪化していたため、のび太が回収した史実ドイツ製兵器を解析することで技術を維持した。G3小銃やレオパルト1戦車はそのいい例で、ハルトマンとグンドュラがF-104で大揉めし、黒江や山本五十六が仲裁に動いていた頃はこの頃の時間軸に相当する。

 

「のび太、エーリカさんから電話にゃ」

 

「わかった。ユニちゃん、電話貸して」

 

「ああ、マルヨンのことだな?エーリカ、猛反対してたからなぁ」

 

のび太はいきなり不機嫌なエーリカの愚痴を聞かされるハメになったが、グンドュラがマルヨンの採用を押し切ったため、喧嘩になったらしいことはのぞみにも想像がついた。のび太は不機嫌なエーリカを宥めすかす。前史で事故りまくった機体をなんで採用したのかと不満たらたらであり、受話器からエーリカの不満たらたらな声が漏れてくる。見かねたのぞみは電話を代わる。

 

「エーリカ?あたしだけど、対地レーダーを21世紀のものに変えるの前提条件じゃない?」

 

「ノゾミ?どういう事さ」

 

「マルヨンは元が邀撃機だから、史実のドイツは色々な要因で事故りまくったけど、対地レーダーを換装するとか前提条件にしないと、二の舞は確実じゃん」

 

「日本が邀撃機運用で成功してんのに、なんで史実と同じ運用する必要があるんだよ。グンドュラに九頭龍閃食らわせたよ、あたしゃ」

 

ハルトマンは日本という運用のいい見本があるのに、低空侵攻用の戦闘爆撃機として使う事を選んだグンドュラに怒り、九頭龍閃で病院送りにした事を示唆する。もっとも、グンドュラも超電磁砲を食らわせ、ハルトマンを数十m吹き飛ばしたらしいが。

 

「エーリカ、九頭龍閃を使うなんて。加減した?」

 

「手加減はしてるよ。同じG同士だから、あんましてないけど。邀撃機を戦闘爆撃機に転用するアホがどこにいるっての!」

 

この大揉めはグンドュラの責任とはいい難い。カールスラント空軍は単純にFw190F型などの低空侵入用の戦闘爆撃機の後継を総意として欲しがっただけだ。だが、ハルトマンが殴り込みをかけ、飛天御剣流で空軍幹部を40人規模で病院送りにする珍事が起こってしまったため、ドイツ側はハルトマンの懲戒処分を要求したが、ハルトマンはすでに予備役将校であった。グンドュラは反応速度でハルトマンに勝てないため、突っ込まれる一瞬で超電磁砲を放ち、相打ちとするので精一杯であったが、九頭龍閃の威力で肋骨を骨折し、入院した。この事件は黒江には寝耳に水で、黒江がクーデター事件を含めて、1947年まで多忙であった理由の一つになる。

 

「まぁまぁ。グンドュラさん一人の決定じゃ…。え?本部の連中を40人は病院送りにしたぁ!?なにしてんのさ、あんた」

 

流石にこの事にツッコむのぞみ。のぞみの意外なところは相手が同輩か年下で、相手のしたことに呆れ返った時などの二人称は『あんた』である点だ。これは転生は関係なしの素だ。

 

「あんた、それ……歴史に残るよ」

 

のぞみの言う通り、この事件はカールスラント空軍史上稀に見る騒動として記録され、結果としてカールスラント空軍の攻撃偏重がクローズアップされた。F-104の採用こそ取り消されなかったが、未亡人製造機と同機を揶揄するドイツの圧力もあり、運用法に変更が加わった。ハルトマンの提言通りに『邀撃機』運用が主にされたからだ。結果として、日本が同機を『もっとも理解していた』ことは覆ることはなかったと言える。カールスラント空軍は陸軍の外征能力が下がるのと同期して、旧式機材の放出もあり、量を一気に低下させた。二年後の1947年頃には44年当時の半分以下の保有数に低下した。(それでも、ドイツ連邦空軍の倍以上だが)ノイエ・カールスラント自身の貧弱な生産能力もあり、新式ジェット戦闘機の生産(戦中型ではなく、戦後型)は覚束ない。更に戦中型より遥かに高度な製造能力を要する戦後型ジェット戦闘機の生産ライン構築に手間取った事、新式ジェット戦闘機の運用法はカールスラントの1945年当時の想定からかけ離れていた事でのドクトリンの転換、ハルトマンの殴り込み事件も重なり、カールスラント空軍の権威は低下していく事になる。ダイ・アナザー・デイからの数年は欧州中心の軍事秩序が崩壊し、日本連邦が主導権を握るまでの過程であったと後世に記録される。

 

「なんだか大変ね…」

 

「のぞみが生まれ変わった先の世界は1940年代だからね。介入されまくって大変なのさ。特にドイツは無理に抑え込まれたからな」

 

コージの言う通り、扶桑皇国は遥かにマシだが、カールスラントは統治地域が旧・オーストリアハンガリー帝国全域にまで及ぶのが知られたのが、なんと1946年以降であり、その間にカールスラントは旧・オストマルク帝国領域分の防衛すら覚束ない量にまで低下していた。軍備再建が認められたのは1948年。自力での本土奪還はその頃には夢物語と言われるまでになっていた。結果として、カールスラント本土奪還は日本連邦の献身で1950年代に成ったが、カールスラント軍のモラルは軍縮で半ば崩壊。精神的な意味の再建に数十年もの月日を要する事となる他、政治的に冷遇される東ドイツ相当の地域と西ドイツ相当の地域とでの格差も生じるわ、海軍の縮小は見送られたが、戦艦や巡洋艦などの砲熕型大型水上艦の維持に興味がないドイツと揉めるなど、カールスラントは軍事的にかつての強国というブランドを失っていく。

 

「日本はマシだよ。軍隊の統合が上手くいったから。それと21世紀側が戦艦や巡洋艦、空母の維持に興味があったからね」

 

彼の言うように、日本連邦が『上手くいった』とされる理由は、扶桑皇国への過度の介入を諌める存在が周りにいた事、日本側が戦前の日本帝国海軍の威容への一種の郷愁意識を持っていた事がプラスに働いたからだ。ただし、海軍の建艦計画には積極的に口を挟んだため、軍備増強に悪影響を及ぼしたりしている。陸軍の縮小を志向していたが、日本側の都合でそれが急に取りやめられるなど、扶桑皇国も振り回されている。

 

「ニュースを見る限り、それは言えてるわね」

 

「批判も多いさ。現地の軍隊が試行錯誤中だったものの『完成品』を次々に投入したからね。F-14やクフィール、ドラケンはその典型だよ」

 

可変翼やデルタ翼は1945年当時はいずれも試作品が出来上がったか、理論が実証実験段階にあった。だが、それらは日本連邦にとっては既存の完成された理論であるため、黒江がF-14などを持ち出しても特段の文句は出なかった。

 

「あの時、敵がとんでも兵器を持ち出した時はどうなるかと思ったよ」

 

「トンデモ兵器?」

 

「地上空母さ。砂漠はともかく、欧州に持ち出すとは思わなかったけど」

 

「空母って、船じゃないんですか?」

 

「基本的にはね。だが、第二次世界大戦の頃、追い詰められた日本軍とドイツ軍は起死回生の手段として超弩級の車両を空母代わりに運用する案を立案した。日本は理論研究段階で潰えたが、ドイツは具体的設計までこぎ着けていた。そのドイツ案が遥か後年、ティターンズという組織に発掘され、クローラー・トランスポーターをかなり連結させて、飛行甲板を設置した超弩級地上車両として日の目を見た。かなり手強い相手だったよ」

 

のび太の口から、ティターンズがナチス・ドイツの技術遺産を再利用した兵器を建造しており、欧州に持ちこんだ事、64Fがダイ・アナザー・デイで死闘を繰り広げ、一隻を沈黙に至らせた事が語られた。その兵器と地球連邦軍内部の親ティターンズ派が流した『ドリルミサイル』はダイ・アナザー・デイを長引かせたと語られる。

 

「だが、ああいうものは予備があるのがお決まりのパターンだ。僕たちが撃破したのは理論実証のためのプロトタイプだったろうし」

 

「ですね。のぞみも大変そうですね。さっきから」

 

「ドイツ軍にいる戦友がやらかしたみたいでね。それで長引いてるんだよ」

 

「で、のぞみちゃんが使った機体がこれさ、かれんちゃん」

 

「F-5E……。炎の鬣のユニコーンのエンブレムを?」

 

「元は綾香さんが使うパーソナルエンブレム。それを書いた機体を使わせたわけ。どうせならってんで、最後の方はエンブレムを中隊規模で使ってたけど。今はまだ、向こうで表ざたに出来ないから、うちでオーバーホールしてるんだ」

 

「確かに」

 

F-5E戦闘機は1945年時点ではオーバースペックであるため、ダイ・アナザー・デイ直後の時点では、ウィッチ世界のマスメディア向けの公表は控えられている。(ただし、次元震パニック時の平行世界の501には必要なので、見せたが)数年後、別世界の501は世界の違いをそのエンブレムで実感する事になる。その世界の黒江は事変から数年後にテストパイロットに転向していたため、実戦パイロットとして『パーソナルエンブレム』を持つ事はなかった上、統合戦闘航空団に属した時期も短期間だったからだ。

 

「貴方方は何の準備を進めているのですか?」

 

「次の戦さ。23世紀での、ね。それに備えているのさ。それと、ウィッチ世界は1947年あたりにパニックが起きる事がわかってる。それに備える意味合いも大きいけどね」

 

ウィッチ世界が1947年を迎えると、次元震が起こり、近隣世界の住人、もしくは影響を受けた世界にいた者が転移現象に巻き込まれる。その中にスプラッシュスターの二人が含まれていた。のぞみは咲と舞の登場でようやく、最古参というポジションから開放される事になるが、それはまだ先のこと。

 

「パニック?」

 

「何かが起こる前触れがあってね。大事になりそうなんだよ。それに君達の同位体と出会う確率もかなり高い」

 

「タイムテレビ、ですか?」

 

「あれは起こりえる未来が確認できるからね。既に501統合戦闘航空団の同位体と出会うことは確認済みだけど、正確にどうなるかはわからないのさ」

 

のび太はかれんにそう告げる。物事の道筋は正確には決まっていない。だが、第501統合戦闘航空団の同位体とは出会うのは確実であるとした。これは前史からの流れで『そうなっている』からだ。ただし、出会う形はわからない。その時にならなければ。

 

「さて、みんな。そろそろ食事にしようか。いちかちゃんとはーちゃんが作り終えるはずだ」

 

「あ、のび太君、エーリカが愚痴りまくってるんだけど…」

 

「僕が代わるよ。電話貸して」

 

「ごめん」

 

エーリカが延々と愚痴りまくり、さすがののぞみも辟易したようだ。のび太が電話を代わり、穏便に会話を終わらせる。

 

「あ、ありがとう…」

 

「マルヨンのこと?」

 

「うん。本部に殴り込みかけて、40人は病院送りにしたって」

 

「あちゃー…。あの子は前世のこともあって、あれ嫌いだからなー。史実でもドイツのあれは『未亡人製造機』だし。日本の運用法を真似すべきなんだけど、あそこにも都合はあるからね」

 

「ドイツはあれに何を求めてたの…?」

 

「レシプロのフォッケウルフにあったろ?戦闘襲撃機タイプ」

 

「F型?」

 

「そそ。その後継ぎだよ。それが欲しかったのさ。だけど、あの国はドイツ連邦になっても攻撃偏重気味でね。だから、マルヨンの使い方を見誤ったんだろうな」

 

低空侵入用には設計されていない機体をその目的で使う。それがドイツの運用目的であり、カールスラントは軍事上の理由でその二の舞を演じる事になり、ハルトマンの反発を招いた。見かねたのび太の仲裁の結果、戦闘爆撃機運用は『電子装備を21世紀タイプにまで強化した上で』という条件で運用がなされることとなった。日本連邦のF-104Jが本来の開発目的通りに邀撃機として運用され、おおよそ40年近く現役であり続けたのに対し、カールスラントのF-104Gは史実通りにF-4の登場で比較的に短命で終わる。その差はその運用での機体への負担も大きく、『もっとも成功したF-104ユーザー国』の称号を日本連邦は得たのだった。

 

「ドイツは後に引けないよ?」

 

「意地でも使うだろうけど、次の世代のファントムが出りゃお払い箱だろうから、日本みたいに邀撃機として使うほうが長く使えるし、元が取れるだろうに」

 

エレベーターで部屋に戻るまでに交わされたのぞみとのび太の会話はカールスラント空軍の前途の暗示であり、グンドュラとしても不本意な選択だったと、後年にボヤく事になる主力機選定。ハルトマンの後輩思いな一面が出た出来事であると同時に、軍内部でグンドュラの手腕に一時的に疑念が生まれる出来事であった。

 

 

――F-104は日本連邦空軍の『栄光の証』であると同時に、『カールスラント空軍の弱体化』のシンボル。二代目レイブンズが台頭した2000年代のウィッチ世界ではそういう認識として定着したという。――

 

 

 

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