ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第六十七話「総集編~大決戦の経緯~その二」

――ブロッサムとマリンを救出するべく、黒江はメロディ達にあしゅらの注意を引かせ、自身はクロックアップで二人を救出する。だが、二人のダメージは予想以上であり、キュアレインボー化は起きるものの、ダメージの完全回復には至らない。二人は覚醒初期の段階であるため、後期の『スーパーシルエット』ではないためもあるだろう――

 

「ご、ごめんなさい……体が言うことを聞かないんです…」

 

外見上はダメージが治癒したように見えるが、体の芯にまでダメージが及んでいたようで、とても戦闘が可能な状態ではないハートキャッチプリキュアの二人。

 

「ハハハ、ハハハ!足手まといを抱え込んだようだな!」

 

「何を…あっ…」

 

マリンも足腰が立たないほどのダメージが残っているようで、その場から立てない。ブラックとブルームがカバーに回る。一同とあしゅら男爵のにらみ合いになると思われたが、5とフレッシュ勢がようやく到着する。

 

『ちょっと待ったぁ!!』

 

「5とフレッシュの連中か。面白い、貴様らにこの私を止められるか、試してみるかね」

 

「うるさいわよ、この縦まっ二つ男!!よくもかわいい後輩を甚振ってくれたわね!」

 

「ふん、ルージュの分際で熱りおって。エターナルが過去にしたという、クイズ対決の二の舞にしてくれる」

 

「ひ、人がトラウマってる事をよくも!!つか、なんで知ってんのよぉぉぉ――!?」

 

「お、落ち着いて、ルージュ…」

 

「と、とにかく!あたし達が来たからには……って!?な、な、な、な……、なんで、見たこともないプリキュアが増えてんの!?なんなの、どーなってんの!?」

 

「ふ、やはり貴様はコメディ担当のようだな」

 

「人を勝手に、コメディ担当とかゆーーなぁ~!!」

 

しかしながら、本来はまだいないはずのキュアラブリー、キュアハート、キュアメロディ、キュアフェリーチェが参戦している状況であるので、ツッコミももっともであった。あしゅら男爵の妙に秀逸な会話術もあり、コミカルさが際立つキュアルージュ。5とフレッシュ勢は四人の未知のプリキュアに大いに動揺したようで、一様に驚愕したりだった。ハートキャッチの二人も四人の存在を認識したらしく、未知のプリキュアと出会った驚きに満ちた表情であった。「あ、あの、ブラック。その子達は?」

 

「なんだかよくわかんないけど、あたしたちの後輩だよ、ベリー!」

 

『こ、後輩ぃぃ――っ!?』

 

5と『フレッシュ!』勢のハモった驚きの声。苦笑いのメロディ達。

 

「ど、どうも~」

 

衝撃のあまりに、5とフレッシュのプリキュア達は動揺しまくり、コメディじみた雰囲気に一変する。だが、それもそこまでであった。

 

 

「な、何!?」

 

「空が……カーテンみたいに開いていく!?」

 

「ま、また何か来るの!?」

 

プリキュア達は狼狽えるが、不意に空がカーテンのように『開く。幸いな事に、そこから姿を現したのは三大スーパーロボットであった。

 

『そこまでだぜ!ブライ大帝、あしゅら男爵!!』

 

「ハハハ、つくづくも腐れ縁のようだな、えぇ、兜甲児ィィィ――!」

 

歓喜の声を挙げるあしゅら男爵。プリキュア達は唖然としてしまう。最初に現れたのは、甲児の駆るゴッド・マジンガーであった。21世紀の科学力では、夢のまた夢と言える巨大ロボットが三体もプリキュア達より更に上空で仁王立ちであった。二人も流石にこれには驚く。

 

「ご、ゴッド・マジンガー!?」

 

「ドリーム、ピーチ、知ってるの?」

 

「うん。とある世界の日本の頭脳が生み出した、宇宙最強のスーパーロボットだよ!」

 

「す、スーパーロボットぉ!?」

 

続いて、エンペラーGと真ゲッタードラゴンも現れる。スーパーロボット軍団の筆頭格とされる、マジンガーとゲッターの最新最強の機体が揃い踏みであった。

 

『プリキュアのみんな、助けに来たぜ!』

 

「甲児さん、鉄也さん、それとゲッターチームの皆さん、どうしてここに!?」

 

『なーに、あの子がのび太君を介して、俺達に連絡したんだ。しばらくぶりなんだ、暴れさせてもらうぞ』

 

フェリーチェにそう返す鉄也。三大スーパーロボットの飛来で、すっかり見せ場を取られた形のプリキュア達。雄々しい姿の三大スーパーロボット。どう考えても『ありえない』色々さに圧倒されたキュアブラックは思わず、叫んだ。

 

『ありえなーーーい!!』

 

…と。フェリーチェが『私の友達が手配してくれた味方ですよ、ブラック』と解説するが、どう考えても色々とオカシイため、頭をかきむしりながら、そう絶叫したという。おいしいところを尽く取られた挙句、キントレスキーにボコボコにされっぱなしのままで終わっていた事も含め、自分達が何に巻きこまれたのか、なぜ、未知のプリキュア達も参戦したのか?それすら釈然としないまま、三大スーパーロボットが駆けつけたため、ますます置いてけぼりの感があるキュアブラック。本質は現役時代と変わらぬままであるのもあり、プリキュア5とフレッシュ!プリキュア勢と共に呆然気味であった。それは現役のはずのハートキャッチの二人も同様。しれっと戦列に加わり、歴代プリキュアに混じっている未知の新たなプリキュア達、謎の三大巨大ロボット。ブロッサムは『何がいったい……、どうなってるんですかー!?』と叫んだ。そうするしか出来なかった。

 

 

 

――スーパーロボットも参戦し、状況は再び急展開を迎える。ここからが本番であった。

 

「フハハハ…。これぞ甘美な瞬間よ。如何に貴様らと言えど、足手まといの子供達を守りながら、この軍団と戦えるかな?」

 

ブライ大帝が腕を動かすと、百鬼帝国の百鬼メカの大群と恐竜帝国のメカザウルス、機械獣の大群が地割れを起こして現れる。その中には大物も混じっていた。それはDr.ヘルが大抵の世界で発掘し、最初に使用した機械獣を合体させたような姿の大物であった。

 

『フハハ……かの方のおかげで我は肉体を取り戻した!』

 

『ヒュウ、どこぞの世界で戦ったガラダブラさんかよ、生き返っていたのか』

 

『兜甲児よ、かの世界以来だな。貴様も記憶を継承しているらしいな!』

 

『神話だとZ神に倒されたそうだが、今度はこの俺がZとGを超えるマジンガーでギタギタにしてやるぜ!』

 

『よほど俺たちに息の根を止められたいようだな、ガラダブラ!この俺が闇の帝王のところに送り返してやる!』

 

『ぬかせ!ここがどのような世界だろうと、我がミケーネの血肉としてくれる!!』

 

『うるせぇよ!ミケーネなんざ、とっくに発酵しきった堆肥になってんだよ!その前のクレタ文明からも何千年経ったと思ってやがる、バーロー!!』

 

完全にプリキュアはガン無視で話が進む。と、ここで。

 

「あなた、名前は?」

 

「キュアフェリーチェです、ホワイト」

 

「フェリーチェ、機械神ってなんなの?」

 

「機械で出来た神に至るための人体の延長となるもの、でしょうか。少なく見積もっても、この時代から数世紀後の人類が生み出した機械仕掛けの神、俗にスーパーロボットと言われてます」

 

ホワイトにそう答えるフェリーチェ。マジンガーの説明であるが、文明の発達でMSやMF、VFが現れても、それらと隔絶した力を持ち、文明を破壊可能なほどのポテンシャルを持つ偶像崇拝も絡んだ超・人型ロボット兵器。説明としてはこれ以上ないほど簡潔だった。

 

「そんな、たった数世紀であんな代物ができるわけがないわ!アポロから50年近く経ってさえ、月面開発は机上の空論…」

 

「する必要がなかっただけですよ、アクア」

 

アクアにはそう返す。宇宙開発は『必要性が生まれた』以後の時代に飛躍的に発達し、波動エンジンが伝えられる前の段階でさえ、冥王星まで数週間程度まで行ける程度の能力に達する宇宙船は持てていた。それはのび太の世界の歴史が証明している。

 

「必要性が生まれて、目的が生まれて、技術は初めて進歩するのです。第二次大戦の航空技術が戦争で、1000馬力もない状態からジェットエンジンに7年で到達したのは有名でしょう?」

 

「確かにそれはそうだけど、それは戦争って状況が……」

 

 

「戦争、あるいはにらみ合いの時代は時として、技術を進歩させるのです。1939年の最新飛行機は1000馬力も出ず、スピードもそう早くは無かった。それが戦争の終わる1945年にはメッサーシュミットMe262が最高で950キロを叩き出していた。技術は日進月歩と言いますが…」

 

フェリーチェ/ことはは大学時代は史学を専攻していた。のび太が度々、西部劇の時代に気分転換で行っていたためだ。ちなみに、大学でアメリカ史を受講した際の南北戦争に関するレポートはのび太がその辺りの時代によく行っていた事もあって教授が唸る出来だったとのこと。ことは曰く、『南軍の敗北チャートをまとめた』もので、わざわざ、ゲティスバーグの戦いを見に行ったらしい。

 

「貴方、く、詳しいわね」

 

「大学は史学科でしたから。この時代より数年後になりますが」

 

フェリーチェはちょっとアクアをからかう。フェリーチェが現役の頃には、本来はプリキュア5と共闘の機会は無かったのもある。実際、プリキュア5以前のプリキュアは魔法つかいプリキュアが現役初期の段階で共に戦ったが、それ以後はオールスターズ体制が崩れたのもあり、フェリーチェが加わって以後の魔法つかいプリキュアは、プリキュア5以前のプリキュアとあまり共闘の機会に恵まれていない。その事が黒江が入れ替わっているキュアドリームのメサイア・コンプレックスを刺激し、彼女の人生を狂わしてしまったりするため、黒江もそれを気遣っている。黒江が入れ替わっているのぞみは『絆を再確認する場所』としてのオールスターズ戦を心のどこかで求めており、HUGっとプリキュアの時代が終わると、その傾向が強まってしまったと自嘲している。時間が経過するにつれ、自分達の事が忘れ去られる事に強い恐怖を感じるようになってしまった事、想い人と結ばれなかったことでの虚無感も、のぞみがいた世界での長子との軋轢の一因である。黒江も自分の心を守るために二重人格になった時期があるが、のぞみは黒江のように、二重人格になるほど逃避する思考への誘導が無かったため、起きなかったし、なれなかった。それが彼女の悲劇である。

 

「一ついい?ドリーム、なんて言うか、らしくないって言うか…その…」

 

「その事は後ほどお話します。おそらく、5とフレッシュの皆さんはわかっているはずですが、指摘しないだけです」

 

ホワイトにフェリーチェはそう告げる。黒江は自重しない質であるので、バレている事は想定内であった。のぞみがダイ・アナザー・デイで『承認欲求の暴走による戦うことへの強迫観念』という形の暴走で周囲を振り回した事で、のぞみに降り掛かった悲劇を知ったフェリーチェは、それからはのぞみを立てる方向で立ち回っている。のぞみにとっては義父になる予定ののび太はそれを受け止めてやり、のぞみの虚無感をかき消した。まさにいぶし銀のメンタルサポートぶりである。

 

「どういうことなの?」

 

「全てはこの場を乗り切った後です、ホワイト。それと、ブルームとイーグレットへの感謝の伝言をMr.Nから預かっています」

 

「私達に……?そのMr.Nって誰なの?」

 

「知れば、誰もが驚くような人です。私の義理の兄であり、ドリームの結婚相手の義理のお父さんですけど」

 

『え!?』

 

ホワイトとイーグレットが同時にハモった声で腰を抜かした。そして、その一言でルージュががぶり寄りを見せる。

 

「ど、ど、ど、どういう事!?」

 

「それは後で説明しますから、落ち着いてください!」

 

「け、結婚相手は誰、誰なの!?」

 

「普通にココですけど」

 

「!?★※」

 

「その辺は俺が後で説明してやる。お前らはあいつのダチだから、事を荒立てたくはなかったんだがな」

 

「のぞみ本人はどこ?」

 

「この世界のあいつは一時的にどこかに飛ばされたと思う。本人は気がついてないと思う。本人にとっては一瞬のことだしな」

 

「ブラックたちの前だから、これ以上は言わないけど、終わったら、きっちりと説明してくださいよ」

 

「もちろんだ。誤解されて戦う羽目になるのは御免だしな。その時に俺と相棒の名前をカミングアウトするよ」

 

ルージュにそう言うと、黒江と智子は自身が転生を重ねていく過程で背負った『黄金聖闘士』の宿命に従い、大軍団にその身一つで突っ込んでいった。

 

「あ、ドリーム、ピーチ!?」

 

『よく見ておくんだ、君たち。あの子達の本気だ』

 

鉄也の言う通り、黒江と智子はプリキュアの姿のままだが、本気を出した。自身の背負った看板の一つ『黄金聖闘士』としての本気である。

 

『ライトニングフレェェイム!!』

 

『ホーロドニースメルチ!!』

 

それは黒江達が長年に渡る研鑽でたどり着いた境地。ダイ・アナザー・デイの時には『メアリー・スー』、『最強系を気取ってる』とも謗られたほどの反則的までの強さ。炎を纏う電撃と氷の竜巻は、歴戦の勇士であるブラックやホワイトですらも驚愕するほどの反則的な威力だった。

 

「嘘、炎を纏った電撃と氷の竜巻なんて…!?」

 

『あれこそが、あの子達が何十年、いや、百年単位の修行の果てにたどり着いたものだよ』

 

「教えてください、あの力は何なんですか!?」

 

『一種の壁を超えた者が成し得るものだ。シックスセンスを超えた領域の能力に目覚めし者のみが奮える力だ』

 

キュアパッションの切実な問いに鉄也は答えた。シックスセンスの先にある領域の力だと。シックスセンスが俗に言う超能力なので、それを超えた能力、『超々能力』と言うべきだろうか。黒江達は転生の繰り返しの効果もあり、黄金聖闘士としても、歴代の平均を上回る力を身に着けた。それとタイマンを張れるあしゅら男爵は充分に超人と言える。

 

『セブンセンシズ。古より神々を守護する闘士達の間では、そう呼ばれている』

 

「セブン……センシズ」

 

『神々が持つ力の一端であり、あの子達が長年の労苦の果てに手に入れたものだ。それを極めるうちに、人助けをしてゆく内に崇められるようになった後、あの子達は死を乗り越えてしまった。存在の位が人で無くなり、神域に至ってしまったというべきか。君たちにも、それがいずれ分かる時が来るだろう』

 

鉄也は死を超えた領域に達した者を『神』と評した。そして、強さは愛だとも説く。

 

『あの強さは心の愛そのものの強さでもある。行動原理に愛がなければ、人は獣同然だ。君たちは誰かの笑顔や幸せを守るために戦うのだろう?強さとは単純なものではない。俺も過去に実感した事だ。物理的パワーだけでは無い。心の、魂の、絆の力も強さの一部なんだ。そして、肉体と魂が磨き上げられた。その時こそが、神域に手をかけた瞬間になる人も物も魂が磨き上げられたら神域に至り、八百万の末席に座す権利を得る。そうした軍船の魂が人の形を持って人の想いから、肉体を得た者たちだっている』

 

鉄也は過去、愛に飢えていた故に暴走し、過ちを犯しかけた。しかし、ジュンの愛を知ることで成長し、人として強くなれた。黒江の部下となった場合ののぞみは子供が自分を憎んでいた事のショックで心を病んでしまったが、ココへの想いを断ち切れずにシングルマザーを通していた事、次女が若き日の自分の生き写しに育ち、立場も受け継いだ事が長女の中で負の感情となった事に気づいた時には、既に手遅れであった事などが不幸だった。仮面ライダーディケイドがその世界を調査した結果、のぞみの二人の子供はプリキュアとダークプリキュアに分かれて戦い、のぞみの引退後にその後を継いでいた次女が母親同様にシャイニングドリームに変身を遂げ、実の姉を倒したという悲しい結末を迎えたとの事で、のぞみはそれに強いショックを受けている。それがのぞみ自身を苦しめ、りんが記憶喪失になる事で、次なる戦であるデザリアム戦役にて、遂に理性というタガが外れてしまうことになり、アクアとミントの参戦に繋がったのである。(ちなみに、のぞみの出身世界での長子はその後、魂がウィッチ世界に漂着し、中島錦の従姉妹『中島旋風』に転生しており、生前のダークプリキュアとしての能力に覚醒していた事が判明し、再会。お互いに死力を尽くして戦い、パワーアップした『プリキュア・スターライトソリューション』でかつての実娘を浄化し、和解を果たす事になる)

 

「それじゃ、あの子達は」

 

『あの子たちも望んで、その状態になったわけではないが、彼女たちは誹りを受ける立場にある。不老不死、人智を超えた力を持ってしまえば、必然的にそうなる。君たちとて、それと無縁ではないだろう?』

 

黒江達はのび太とは親友の間柄だが、のび太がなぜ、野比のび太としての存在の不滅性を選ばなかったのか?その理由も知らず、『のび太を開放してやれ。お前らの道具にするな、都合のいい愛玩動物にしてるくせに』と罵る者は多い。だが、のび太はそれを『戯言』と一笑に付し、こう公言している。

 

『人は誰しも、危険をかえりみず…、死ぬと分かっていても行動しなくてはならない時がある。負けると分かっていても、戦わなくてはならない時があるものさ…』

 

のび太はこう断言し、黒江達の友で有り続けている。のび太の高潔さはあの宇宙海賊キャプテンハーロックも敬意を払うほどのものであり、彼が『彼にかすり傷一つ負わすな、無傷で21世紀に帰せ!』と部下に厳命するほどに崇敬されている。のび太の高潔な精神はキャプテンハーロックは愚か、クイーンエメラルダスも敬意を払い、のび太を最敬礼で迎えるほどに、30世紀人類にとっての指標とされている。キャプテンハーロックはダイ・アナザー・デイで参戦した際、こう述べている。

 

『のび太は漢だ。普段は頼りなく、力も無い軟弱者にしか見えないだろう、だが、一度戦いに身を投じれば、彼ほど勇敢な不屈の闘士はなかなか居ない。それに、銃だけでは勝てる算段がつかない』

 

ハーロックをしてこう言わしめたのび太。のび太のその優しさと愛がのぞみとことはを救い、調がそれまでの全てを事実上、かなぐり捨ててでも、その身を彼に捧げる理由でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――1948年のウィッチ世界。

 

「なるほど…。私達は人々がそうさせてしまったけれど、貴方達も…」

 

「ああ。お前らプリキュアは戦士としての存在が独り歩きした感があるが、俺たちはマジに死を乗り越えてしまったんだ。もっとも、少なくとも二度は普通に死んだがな」

 

苦笑交じりにアクアにそう告白する黒江。二度の死を経た三度目の転生の際に、それまで集めた信仰のおかげで自分達の存在の位は神となった事が語られる。

 

「靖国に祀られたのもあるかもな。この世界の日本は基本的に開明的な気質を持っている。そして、戦うべきときには銃を取る事もわかってる。そこが太平洋戦争で負けた場合の日本と違う点だ。金食い虫と言われようが、軍備を怠った国に未来はないぜ」

 

黒江は根本的に職業軍人気質である。また、未来世界の争いも見てきたため、21世紀日本に存在する単純極まりない単なる平和主義を一蹴する。(日本の外務官などは未来世界におけるリリーナ・ドーリアンのように、自分の死を覚悟して敵地へ交渉するほどの勇気もないため)

 

「世の中はけして優しくないし、むしろ残酷なんだよ、アクア。生と死の境界線が薄れた世界にいると、それがよくわかる。それでも自分を貫けるかどうかなんだよ」

 

「ええ……。戦場にいた者にしか、それはわからないと思いますよ。一般人は自分達の生活に影響が起きなければ、政治が独裁であろうと構いませんからね。ヒトラーやギレン・ザビの例がそれを物語っていますから」

 

「軍人なんてのは嫌われ者な商売だが、いざ有事になって、自分達に害が及んだ途端に手のひら返しされる。かと言って戦争に負けりゃ、大衆はエタヒニンみたいな扱いをする。日本人ほど、『敗者』に冷酷な民族はそうないぜ」

 

日本は敗戦後、旧軍の軍人達が戦後に職にあぶれ、社会から手のひら返しを受け、その少なからずが極道に身を落としたとされる。吉田茂が自衛隊を作った背景は、職にあぶれた旧軍軍人らの生活基盤をとりあえずは安定させ、防衛大学校などから入隊した『生え抜きの自衛隊員』が主流になるまでの時代までの繋ぎをさせ、彼らの持つ旧軍の培った全ノウハウを自衛隊へ受け継がせる事にあったという。その経緯を知る故と、職業柄、黒江は極端な左派的思想を嫌う傾向にある。

 

「勝てば官軍、負ければ賊軍って言葉の通りですよ。日本人はどこの世界でも敗者に冷酷非情ですからね」

 

戦後は経済至上主義であり、物理的な国防組織に冷酷である日本だが、のび太の世界では扶桑の軍事力と経済力によって学園都市が起こした戦争の後始末ができたため、また、それがなければ、疫病に経済が耐えられなかったため、扶桑と持たれ持たれつの関係を維持し、統合戦争を迎えた。また、扶桑の好戦的な風潮が入ることで、反戦自衛官が大手を振って弾圧される事を恐れた層が扶桑軍人を弾圧するのだ。しかし、旧・西ドイツが主導権を握る統一ドイツの徹底的な介入を受けたカールスラント軍がガタガタになり、軍事組織として、もはや『使い物にならない』とまで揶揄されるに至ったというニュースを知ると、途端に後ろめたさを感じ始め、クーデターの鎮圧後は五輪への反対派をアリューシャン諸島へ左遷するのみに介入を留めている。また、太平洋戦争では、イージス艦などの戦後型戦闘艦艇は必ずしも抑止力にならない。戦艦などが現役である世界に実際の戦力になるかは、ダイ・アナザー・デイだけでは判断しようがないというのがウィッチ世界の海軍関係者の判断であるため、戦艦と重巡の減勢は免れたという。日本で行われた実験で『戦艦のバイタルパートの重防御はミサイルでの完全破壊は不可能』と分かっていたためだ。また、重巡の砲も当たれば、イージス艦の船体に大穴が開くため、扶桑はイージス艦にも乙巡レベルの防御力を求めていく。ただし、ミサイルの弾頭の改良は続けられ、太平洋戦争後期頃には従来の水雷を一部代替する『噴進弾』として配備され、戦艦にも一定の効果が認められる弾頭が量産され、日本連邦の誇る矛として活躍する。その先行型として、バスターウィッチ用弾頭が量産されていく事になり、黎明期のジェット攻撃ストライカーの攻撃力の要となる。

 

「ところで、一ついいですか?」

 

「なんだ?」

 

「光子力ってなんですか?」

 

「富士山で採掘されたジャパニウムっていう鉱石を拠り所にするエネルギーだ。あのバケモノと、採掘に富士山を掘る必要があるせいで平和利用の道が事実上絶たれたが、本当は扱いを間違うと有害な核エネルギーに代わるエネルギーになると期待されてたんだ」

 

ジャパニウムは富士山に大規模鉱脈があるが、富士山を掘ることが忌避された結果、ZEROの存在と併せ、平和利用の道が事実上絶たれた。(この問題の政治的解決は火星のオリンパス山に富士山を上回る規模の鉱脈が発見されるまで待つ必要があった。だが、その頃には地球はタキオン粒子文明となっていたオチがついたが)その一方でメイン動力こそ譲ったものの、マジンガーの動力としての命脈は保ち、ゲッター線増幅炉と相互補完しあう複合機関として発展していく。

 

「原子力以上のパワーが得られるが、メルトダウンすれば甚大な被害が出る。こういうエネルギーのお約束だ。その場合の被害がメリットと釣り合わないと見られたんだな。だからスーパーロボットの動力にしかならなかったんだろう。タキオン粒子の利用が進んだ23世紀の世界にとっては、原子力の代替になるか怪しいと取られたろうし」

 

タキオン粒子は一度起動すれば永久機関と言える波動エンジンを有する。そこも光子力が新エネルギーの主役とはなり得なかった理由だろう。だが、スーパーロボットの力としては、ZEROやカイザーを見ても分かるように有益である。その皮肉がミネルバXを苦しめ、ZEROという悪魔を呪った理由だろう。だが、そのZEROはのぞみと同化し、彼女の存在の神格化に一役買った。ZEROはのぞみにその力を全て受け継がせたのだ。彼女はそのおかげでプリキュアの中でも最強と言われるまでになったが、ZEROが彼女を選んだ事には誹謗中傷も相次いだ。ZEROが選んだのが兜甲児ではなく、なぜ、マジンガーと縁もゆかりもないのぞみなのか?その疑念は彼女への誹謗中傷に繋がったが、結果を見るなら、彼女の立ち直りに一役買った。ZEROは自分が所詮はマジンガーの進化の中では亜流である事に強いコンプレックスを抱いていた(正統な血統はZ↓G↓カイザー/ゴットである)ため、甲児が認めたカイザーやZを最初に超えたグレートマジンガーを超えることで『Zへの信仰を守りたかった』のだと、Z神は推測している。もちろん、ZEROはそのエゴを守るため、そのために『魔法つかいプリキュアの世界』を滅ぼし、ウィッチ世界の平行世界もいくつか消し去ったという罪を犯している。みらい達が野比家に常駐するようになった理由は『自分達の世界はZEROに滅ぼされた』からで、キュアフェリーチェから元来の神性を奪い取った張本人でもある。それ故、ZEROを滅ぼさなかった事で、のぞみとみらいはかなり揉めてしまったという。それを諌めたのが甲児であり、ZEROは同化する時に『お前が集めた戦士の力として生きていけるなら、それもまた良し。私の創造主はそれを願い、産んだのだろう…』と言い残した。また、フェリーチェに『我が怒り、理不尽にぶつけた事、済まなく思う』と侘び、ZEROの侘びと言わんばかりの大盤振る舞いで自身の持っていた因果律操作能力、高次予測能力を与え、のぞみに与えた『強化』、『変態』、『再生』などと合わせて、二人で七つのマジンパワーとなるように分け与えていった。その関係で、二人は二大スーパーロボットの力を持った存在として進化したと言える。

 

「あの二人、もしかしなくても、全プリキュアで……」

 

「ZEROの能力がそのまま与えられてるんだ。たぶん本気でやれば、他の世界のオールスターズを二人で下せるくらいの戦力になるだろうな」

 

オールスターズの現役時代における全能力を圧倒的に上回る攻撃が完全に自己の意思で可能になった二人はヒーローユニオンに通い詰めての手解きもあり、キュアブラックとホワイトの強さを初めて超えたプリキュアとなった。元々、ブラックとホワイトはパワーと経験値で後輩らを引っ張ってきたが、後輩らは61人もいるのに、二人に及ばない事は大問題と捉える者もいた。

 

「どうしたら、なぎささんとほのかさんは信じますか?」

 

「シャインスパークとカイザーノヴァの同時攻撃でキノコ雲でも作れば、否応なしに信じるさ」

 

黒江は実際に大決戦時にドリームの姿でシャインスパークを放った身であるため、それがいいと冗談めかす。もっとも、かれんの世界におけるのぞみは黒江が放ったシャインスパークを後に映像で見て『何あれ~~!?』と泡を吹いて卒倒したらしいが。

 

「あの技、私の世界のあの子が淡吹きましたよ。シューティングスターの完全上位互換ですから…」

 

「ちょっと違うな。エネルギー弾を離脱してぶっ放す技だから、タイミング難しいぞ」

 

エネルギーを充填した後に高空からの急降下でエネルギー弾を放って敵にぶつけるのがシャインスパークで、ゲッタードラゴン以後のゲッター最大最強の大技である。なお、黒江はブイマキシマムも披露しているため、余計に平行世界ののぞみに嫉妬されていると、キュアアクアは語ったが、シャインスパークはブイマキシマム以上に使用タイミングが難しいため、黒江も使いどころを探ってから使っている。

 

「ま、お前の故郷のあいつには悪いが、ストナーサンシャイン撃たれなかっただけマシだと思っとけ。最悪、ストナーサンシャインで変身を解除させるって、俺に具申してたからな」

 

「あれを撃たれたら溜まったものじゃないですよ。生きた心地が…」

 

「クラッシュイントルードはやったみたいだが、お前の世界にいるほうに今の状況を伝えるか?」

 

「当分は見送ります。心臓発作起こしかねませんし、あの子に直接は関係はありませんから。然るべき時に知らせます」

 

アクアは定期的に故郷の世界に連絡は入れている。自分の世界ののぞみがフェリーチェと一戦交えてしまったことで考えを改めたらしい。

 

「それがいいだろう。それと、ココの今の姿の写真が見つかった。のぞみが驚いてたが、これだ」

 

「ココ、昔の人間態と姿が違いますね」

 

「転生したからな。のび太が40のおっさんになった時代に航空機事故の孤児を養子にしたが、そいつがココの転生だったんだと」

 

野比コージの姿は『鎧伝サムライトルーパー』の主人公『真田遼』と瓜二つである。魂魄の因果か、その生まれ変わりでもあったため、時間軸的意味では智子から烈火の鎧を受け継いでいる。

 

「ココ、自分が無力に等しい妖精である事を嘆いていたけれど、まさか……」

 

「サムライトルーパーという形で叶えたんだろう、その願いを。輝煌帝も呼び出せるから、そっちののぞみに説明がなぁ…。ココ当人もだけど」

 

のぞみは黒江の部下であるほうは合同挙式を終えたばかりの新婚夫婦で、しかも旦那はサムライトルーパー。夫婦で戦士となった珍しい例だ。だが、二人とも転生した後で挙式に至ったため、現役時代ののぞみの頭で説明が理解できるのか?それが心配されていた。

 

「うちのほうはレントン・サーストンも錦との間に挟んでの転生をしてるから、ある程度改善されたが、そっちは正真正銘の現役時代だろ?このウェディング写真見たら卒倒もんだろうな」

 

「この青年がココの転生した姿とそもそも理解できるか…」

 

アクアは悲観的だ。コージがかつての人間態と別の姿になっているからだろう。

 

「あいつ、現役時代は国宝級ドジと超方向オンチだって?咲が言ってたぞ」

 

「ええ。咲さんも人のことはあまり言えないとは思うけど」

 

日向咲はのぞみをそう評した。一期先輩としてだが、咲も咲で似たような事はしているので、あまり説得力がないのだが。

 

「そろそろ定時連絡の時間なので、ちょっといいですか?」

 

「構わんよ。つか、俺にも説明させろ。誤解は解きたいしな」

 

アクアはその部屋に備えられている次元間電話を使い、自分の故郷の世界と連絡を入れた。フェリーチェが端末を置いていったため、映像通信が可能になっている。黒江は改めて、自己紹介した後、かれんの世界ののぞみに事情説明をしたのだが。

 

「かんっぺきになぎささんと気まずくなっちゃったじゃないですかー!?」

 

「理由は話したぞ。お前、どこの世界でも同じような反応だよな」

 

「変なところをつつかないでくださいよー!あなたのおかげで、えりかに怖がれてるんですよー!?」

 

「それ、こっちのお前にも言われたわ…」

 

「……本当ですか」

 

「ああ。言い方も同じだ。ビデオテープか、お前は」

 

 

「ひどいですーーー!!」

 

「そう喚くな。こっちのお前、プリキュアの筆頭格として大活躍なんだぞ?強引にアクアとミントを連れて行ったことはすまないが、こっちも緊急事態だったんだ」

 

「こっちは大泣きしたんですよー!エターナルとまだ戦ってるっていうのに……」

 

「直に、そっちに助っ人を送ってやるから、それまではなんとかしてくれ」

 

「助っ人ですか?」

 

「ああ。お前の後輩で何人か手空きの奴がいるから、そいつらを行かせる。フェリーチェには改めて詫び状を書かせたし、菓子折りを持たせる」

 

「それと、お前。もしかしたら、記憶が共有されるかもしれないな、今後は」

 

「へ、どういう事ですか?」

 

「こっちのお前……一言で言えば、とんでもパワーアップを果たしてな」

 

「へ、背中に羽が生えるとかじゃ?」

 

「そんなのじゃ言わねーよ」

 

 

黒江の言うことには根拠があった。2012年頃の学園都市の技術資料に『同一性の高い生体間の共鳴通信とそれによる情報共有』に関しての論文などがあり、それを漁ったためであった。次元が違えど、同一人物同士での記憶共有は起こり得る。例えば、小宇宙を燃やすとニュータイプのようなな脳量子波通信が出来るため、数秒で朗読すると数十分かかるようなやり取りが出来るが、2012年当時の学園都市の技術では双子やクローン等の同一性が無いと上手くいかなかったという。その論文を当てはめたのだと。

 

「なんだか……難しすぎて…」

 

「違う世界にいても、同じ人物同士は記憶共有ができるっていう考えだ。こっちのお前はパワーアップしたから、そういう芸当もできると思う」

 

――小説家や脚本家などの物語の発想なんかもそういうチャネリングから生まれ、異世界の誰かの脳量子波を受け取った結果では?――

 

論文の最後はそう〆られていたが、黒江は自分の部下であるほうののぞみがZEROの能力を継いだのなら、兜甲児や流竜馬に起こったような記憶の流入現象を起こせるのでは、と考えていた。のぞみ自身もそれを試したい思惑を持っていると伝えたため、示し合わせて、都合のいい日に実験を行ってみようという事になった。その実験でのぞみBはのぞみAが経た戦いの記憶をフラッシュバックという形で垣間見ることとなり、別の自分が経た悲劇をも知ることとなる……。

 

 

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