――何故、黒江達は扶桑を外から変えずに内から変える選択肢を選んだのか?その理由は簡潔であった――
「貴方方は何故、内からこの国を変えようと?」
「革命はいつもインテリが始める。だが、そういった連中は夢みてぇな目標掲げるからいつも過激なことしかやらないし、事が成した後には理想は官僚主義に呑まれて消えていくのがお約束だ。現に、フランスがそうだったからな。それに既存の枠組みで出世した連中ほど、改革者に反発するもんな。どっかのスペースオペラにそういう例があったし」
黒江はアムロ・レイの薫陶を受けていたため、彼が取った『内から国を変える』選択を取っていた。強引に力で変えようとすれば、既得権益で利益を受けていた者たち全てを敵に回すだけである。例えば、戦後日本は戦争で負けた時に多分に他力本願的な経緯で国の枠組みを変えざるを得なかった後、後世でその枠組みでは自分達に都合が悪くなった後、制定当時からすれば無理な解釈をせざるを得なくなっても、枠組そのものの改革にまで話が進むことがなかった点だろう。
「のび太のいる日本はこの国に華族制や軍隊を捨てろ(国防は縮小改変した自衛隊にして、余計な民間軍事会社は解散)と当初は言った。が、上手くいってる制度を無理に変えて、社会不安を煽る必要がどこにある?それに自分達とて、実質的には自衛隊で再軍備を果たしてるんだ。それに、戦争に負けたわけでもないのに、華族制度を解体する必要はない」
黒江は平行世界ののぞみとの会話を終えた後、こうした話題に言及した。日本は扶桑に接触当初、科学力と経済力を武器として、そう迫ったが、扶桑はそれを撥ねつけた。日本のお飾りと揶揄されていた旧・華族と違い、扶桑華族は『国民の模範』となる事が強い義務として課されている。例えば、黒田家の嫡流にウィッチが出なかっただけで外聞的に情けないとされ、息女が冷遇されることに繋がった。(これは日本に華族制廃止の大義名分にされる事を恐れた黒田家当主と天皇の意思で、末端の分家の長子であった黒田那佳がGウィッチかつ軍人ということで、次期当主へ祀り上げられる経緯のからくりでもあった)
「日本は何をしようと?」
「俺の推測だが、この国は日本が敗戦で失った全てを持っている。戦前の広大な領土、空襲で焼かれた町並み、アメリカ相手でも数年はまともに戦える軍事力と相手が誰でだろうと臆さない気概。軍事力を奪って、アメリカの腰巾着になって物質的に幸せになったとして、何が残る?世界特有の脅威である『怪異』のことは意に介さずだ。んなんだから、23世紀の地球と違って、日本は舐められるんだよ」
「政治的ですね」
「俺は立場上、政治に噛んでるからな」
黒江はこの時代に昭和天皇の信を得ている重臣たちと親しい間柄である上、ダイ・アナザー・デイ中からは前田公爵の後ろ盾を得ている。その関係上、政治の話題はどうしても触れざるを得ない。キュアアクア/水無月かれんも家柄の関係で、そうした話題とは無縁でないため、そうした話題についていけるわけだ。
「お前の家、確か、資産家だろ?」
「両親は音楽家でした。ですが、執事がいるので、多分、曽祖父以前の代に爵位は持っていたと……」
「21世紀の時勢に執事を雇うってのは、資産家でもそうはいないし、華族や旧・皇族も戦後に多くが没落した。そう考えると、お前の家は資産運用に成功した家系かもな」
かれんやうららは裕福な家庭に育ち、のぞみ、りん、こまちも中流の中では上層に位置する暮らし(互いに両親が2000年代後半当時の時点で意外に稼いでいたし、子供を私立に問題なく通わせられる点で当時の平均を上回っている)をしていた。その点で批判を受けてしまう身でもあるが、それはお門違いである。歴代プリキュアのピンクは平均的な家庭より多少なりとも裕福な家庭に生まれた子供である事が多いためだ。
「そう言えば、貴方。ここのところ、新京に通ってますね」
「転移してきた連中の様子を見たり、ハルトマンが揉め事を起こしたから、仲裁せにゃならんし……。疲れるぜ」
「何で揉めたんですか?」
「ドイツがF-104を採用したんだが、未亡人製造機の悪名高い機種でな。ウチは邀撃戦闘機として使うからいいが、ドイツはヤーボとして採用したから、前世で事故りまくった記憶持ちのハルトマンが激怒してな。空軍本部に殴り込みかけて、幹部を40人は病院送りにしやがった。あれをヤーボに使う事に反対論が強いのも事実だが、ハルトマンが殴り込みをかけるのはなー……」
黒江が語るその事件以降、カールスラント空軍はヤーボの運用と採用に慎重になっていき、必要上、アメリカから対地攻撃専門のA-10のライセンスを購入するきっかけとなったという。扶桑空軍は主な仮想敵が大量に飛来すると見込まれた戦略爆撃機であったことから、邀撃戦闘機を最重要視しており、他国に先駆けて『F-104J』を採用した他、クーデター以降に『サーブ35 ドラケン』を採用した事を公表した。ダイ・アナザー・デイ以降に戦略爆撃機との対峙が現実問題化したからである。この時にダイ・アナザー・デイで成果を出せなかった(あるいはサボタージュした)として、多くの邀撃ウィッチ部隊が解散させられた。実機と対空レーダーの急速な進歩にストライカーの進歩が追いつかなくなったからで、更に戦略爆撃機に対抗するための武装の問題がのしかかった事も軍隊での航空ウィッチ運用の縮小に繋がった。機材関連で特権を持つ64Fを除いた場合の邀撃成功率は低い部類であり、元々、扶桑軍機は高高度性能で他国に劣る事が知られていたこともあり、邀撃部隊のウィッチは新型を望んだ。だが、地球連邦軍が陽電子機関砲やパルスレーザーを技術提供し、史実で実弾を積んだ戦闘機に積み始めたため、航空ウィッチの軍事的意義は低下した。だが、日本から入ってきた職業差別意識の普及を阻止するため、吾郎技師が提唱した第二世代宮藤理論の実現にウィッチ技術開発のリソースの大半が注ぎ込まれていく。そのプロトタイプがノースリベリオン社がF-86ストライカーの後継機として用意した『F-100』である。それはこの1948年には初飛行済みで、扶桑とカールスラントが採用したF-104より先行し、扶桑も採用を検討した記録が後に残された。扶桑は黒江らの提言でF-104を採用したのは言うまでもないが、ハルトマンが怒ったのはそれをカールスラントがヤーボ目的で採用したからで、飛天御剣流で暴れるハルトマンをグンドュラがようやく相打ち覚悟で超電磁砲を撃った時には既に40人もの高官が病院送りという有様で、グンドュラもあばら骨に罅が入り、入院する事態であった。
「どうなったんです?」
「バルクホルンの通報で俺が駆けつけた時には、高官が40人くらい担架で運ばれてて、グンドュラもボロボロだった。あいつを怒らせちゃ不味いことを思い知ったはいいが、高い授業料だったようだ」
ため息の黒江。この事件は攻撃重視のドクトリンだったカールスラント空軍を震撼させ、後にA-10やアルファジェット、トーネード攻撃機を購入するきっかけとなり、また、ハルトマンの64Fへの義勇兵の身分の永続化の遠因となった。
「ま、ハルトマンの奴はまだいい。話せばわかるからな。海軍の中堅のバカ共に比べれば……。軍人は政治に口出ししないのは当然としてその政治を理解して出来る出来ないを政治家に教えるのも仕事だから政治に耳栓する様な真似は海軍のモットーを曲解した間抜けだけで沢山だっつーの!」
「溜まってますね」
「343空がまだあった頃、俺たち三人は老いぼれ扱いされて、舐め腐るガキどもが多かったよ。今、ウチで中堅張ってる本田、宮崎とか。菅野は覚醒してたから、俺たちの言う通りに動いてくれたがな」
「ああ、あの人達ですか」
「ああ。菅野が言ってたぜ。挨拶代わりに古いやつをぶん殴れって。俺たちは出戻り扱いだったから、343空はあらかたノシた」
「大変でしたね。」
「そのうち、お前らも似たことになるかもな。いちかの代以降はオールスターズの経験がないしな」
「のぞみが愚痴ってますよ。昔、キュアパルフェに舐められたとか」
「あいつ、ミルキィローズといい、妖精のプリキュアに舐められるジンクスでもあんのか?」
のぞみはいちかにも愚痴っているが、キュアパルフェに舐められた事があるらしい。現役時代のミルク(美々野くるみ)とのライバル関係からのジンクスか、妖精が転じたプリキュアになぜか舐められやすい。
「さ、さあ…」
「やれやれ、着地でクレーター造る訓練でもさせるか、いっそのこと、俺みたいにシャインスパークを……」
「あれはやりすぎですって」
「それはそうと、文章の続き見てくれよ。圭子に返さないとならんからな。うちの連中は頑丈だから、医務室にはそう来ないし」
「それはそうですけど。みゆきがその場で治してしまうから」
「ありゃ、そのうち外だろうが、その場で手術やりかねんしなぁ」
「どこの闇医者ですか。私の知る星空みゆきが知ったら、泡吹きますよ。あの子は絵本作家志望でしたから」
「まぁ、宮藤芳佳の比率が高いとこもあれば、角谷杏がかなり強くでてるから、みゆき成分はかなり薄いと思う。シャーリーに北条響成分が殆どないみたいに」
「ああ、響の同位体が泣いてましたよ」
「どんな?」
「ほら、口が荒かったり……」
「しゃーねーよ。シャーリーは合衆国軍人だしな」
――医者なら診察に関わるなら触り放題なのが良いんですよ、セクハラにならない様に無駄に触りはしませんけど――
芳佳はそう言い訳しているが、おっぱい星人ぶりは変わらず、クロといい勝負であるという。なお、シャーリーは紅月カレンとしての経験もあり、かなりシニカルな台詞回しが増えた。自分の同位体を前にして、『かの国の永世中立を知ってるか?永世中立はなにも建前だけで唱えているわけじゃない。血みどろの同胞たちの歴史の上に成り立っている。建前だけでは平和はなりたたないってこった』と言い放ち、唖然とさせている。また、大決戦の際には『舐めやがって……こちとら堪忍袋の尾が切れてんだ……てめぇらの血を見なけりゃおさまんねーんだ!!』とキュアメロディとして吠えてもいる。かなり荒いが、合衆国軍人としての矜持の為せる技か、優しさがうりであったキュアメロディ本来のキャラからは、かなりかけ離れた言動をしていた。そのおかげで、大決戦の翌年度の戦いでデビューした北条響の同位体はかなり困惑していたという。またのぞみの同位体が愚痴ったように、来海えりかに怖がられるなど副作用もかなりあったという。
「さて……。」
と、いうわけで、アクアは文章の確認作業を再開させる。ここからが重要どころなのか、手直し前らしい文章のまとまりが多かった。
――大決戦――
『のぞみちゃんはMr.Nに救われたと言っていい。俺たちは、彼女が彼に仲介を頼んだことで事の次第を知ったんだ』
「つまり、私たちの知るのぞみとは別の…?」」
『そういう事だ』
『俺たちの背中を護れる女神が三人居るから、問題ねぇな、行くぜ!!』
『フッ、それ以外もその域に至れる奴らだ、問題無いだろうさ。続け、甲児君!』
『がってん!!』
『さて、鬼退治と洒落込むか!』
三機の最強のマシンがその力を示す。ゴッド・マジンガーは『ゴット・ブレード』を二本持ち、エンペラーもエンペラーブレードを二刀流。真ゲッタードラゴンはダブルトマホークを担ぐ。彼らは光速の疾さで飛翔し、大軍団を向こうに回しての大立ち回りを展開する。真ドラゴンのトマホークが機械獣の胴体を綺麗さっぱりまっ二つに切り裂き、エンペラーブレードで十文字に切り裂くマジンエンペラーG、双剣突きから左右に振り払って真っ二つにするゴッド・マジンガー。振り払った先に居た他の機体もそのままの勢いでぶった斬っている。その勇姿は急転直下の連続で戸惑うプリキュアを奮い立たせる。
「あたしたちだって、負けてられない!!いくよ!!」
「YES!」
プリキュア5の時代からしばらくの間、プリキュア達の間で用いられる『了解』を意味する用語は『YES!』であった。少なくとも、ハピネスチャージプリキュアの時代までは用いられていた事が確認されており、初期三代のプリキュアとの直接的繋がりを示す単語であった。キュアドリームが持ち込んだのが先輩後輩に広がり、ハピネスチャージプリキュアの頃までは使用されていた。(魔法つかいプリキュアとGO!プリンセスプリキュアも意味は理解できる)ダメージが残るハートキャッチを除いた面々が機械獣や百鬼メカと戦闘を開始する。彼女たちも『プリキュアとしての意地と誇り』がある。力が戻ったこともあって、乱入してきた軍団相手に退くつもりは微塵もなかった。
「あたし達を調べるんなら!」
「正々堂々と!!」
「真正面から来なさいよ!!裏でコソコソ調べるなんて、いけ好かないのよ!!」
ブラック、ブルーム、ルージュ(ドリームが黒江と入れ替わっているため、その代わりにルージュが代表として前に出ている)が中心となり、自身より遥かに巨大な敵に立ち向かう。その辺りは彼女達に巨大な敵との交戦経験があるからだろう。
「ドリーム」
「ルージュか」
「上手く言えないけど、あなたがのぞみの仕事の上司なら、伝えてほしいことがあるの」
ルージュは黒江(姿はシャイニングドリーム)の隣に降り立つ)。
「なんなら、お前自身にも伝えておくよ。お前らは『セットでやって来た』からな」
「なんだか、ドッペルゲンガーに会ったみたいな感じよ、それ」
「平行世界同士の自分と会うなんて事は普通はありえんが、俺は経験がある。べつのお前とのぞみは部下だが、似たような事になると思う」
「こんな時に言うのもあれだけど、あなたの知ってるのぞみは、どんな風に生きてるの?」
「多分、あいつの可能性の中でもトップクラスに不幸を味わってきたと思う。あいつ自身が死んだ後、二人の娘がプリキュアとダークプリキュアに分かれて殺し合って、この姿に覚醒した二番目のガキが姉貴をその手にかけたっていう、な。」
「のぞみの子供が…!?」
「平行世界を自由に行ける友人の調べだ。のぞみは次女がその後を継いだんだが、それに嫉妬した長女がダークプリキュアに堕ちてな。最後は…」
「のぞみは…その事を?」
「錯乱状態になったよ。腹を痛めて生んだ二人の子供が戦い、最終的に妹が姉を殺めたなんて。そのショックで、一週間はベットから起きれんかった」
黒江はそれを伝え、のぞみは半狂乱になり、一週間はベットから起きれなかったと明言する。ルージュはあののぞみが半狂乱になり、一週間もベットから起きれなかった事に衝撃を受けた。
「Mr.Nが慰めてたよ。それ以来、あいつはN氏を慕ってる」
「N氏って誰なの?」
「お前も知ってる漫画界の大物だよ。昼寝大好き、あやとりと射的が趣味の。そう言えば分かるか?」
「え、なんか心当たりがあるけど、まさか……?」
「そのまさかだよ」
「またまた~、じょうだ……?」
「ルージュ」
「え、え、え~~!?」
「お前、あいつの声が変わる前は子供だったから、記憶ねぇだろ?」
「し、失礼な!記憶ありますよ!夏休みにレンタルビデオ借りてましたって!」
「ラブのやつも地球戦隊ファイブマン見たって言ってるんだが?」
「あの子、それでプリキュアになったの、すんなり受け入れたって言ってましたよ」
「あいつ、もしかしてそれがプリキュアの力を?」
「多分。ベリーに確認とってないけど」
「どうりで、ファイブイエローのサインをツテで手に入れた時に、あいつがすごく欲しがったわけだ…」
「え、いるんですか」
「一言で言うなら、俺がいる世界、スーパーロボット大戦とスーパーヒーロー作戦がごちゃごちゃに混ざった世界でな。ツテがスーパー戦隊にあるから、もらったんだ。それをラブに教えたら、あいつ、狂喜乱舞でよ…」
「あの子、ダンス一辺倒だと思ったけど、意外にオタクなのね…」
「あ、そのラブ、スプラッシュスターの二人の技を撃ってたぞ」
「なぁ!?」
「しかも、のぞみと一緒に『スパイラルスタースプラッシュ』を撃ったんで、お前、頭抱えてたぞ」
「えー!?」
「どうしたの、ルージュ」
「ブルームか、ちょうどいい。実は種明かしだけど…」
説明が行われ、ブルームは腰を抜かす。
「あ、あわわ……のぞみちゃんとラブちゃんがあたし達の技を!?」
「しかも、お前らの精霊の力をばっちり実戦で使ってんだよ。俺も苦笑いだったぜ」
「そんな、あたしと舞のプリキュアの力は、二人とは違うもののはずですよ!?」
「俺だってわからん。二人の言い分だと、お前らが夢枕にたったら、撃てるようになってたってんだと。ばっちり前口上もしてたし。多分、同位体の居ない世界だから、一番波長の近い相手として、チカラを託す事になったんじゃねえかなぁ?」
「のぞみちゃんとラブちゃんがあたしと舞の力を…」
「ブルーム、お前、家がパン屋だっけ?機会があったら食わせてくれ」
「なんで知ってるんですかー!?」
「そりゃ、お前の後輩連中が部下だし。二年生でソフトボール部のエースで、ペットは猫…」
「わー!!みんなの前でそれはぁ!?」
「安心しろ、相方の方もあらかた…」
そこで、イーグレットが猛烈な勢いで突っ込んでくる。顔は真っ赤である。
「や~め~てぇぇぇ~!!」
「い、イーグレット!?」
「おっと。気持ちは分かるが、こっちの説明聞いてくれよ、イーグレット。いや、美翔舞?」
「え……?」
「嘘、イーグレットの蹴りを指一本で…!?」
「何、軽いもんだ。パッションが受けてた説明は聞いてたろ?俺はセブンセンシズに目覚めているんでね」
イーグレットの蹴りを受け止め、落ち着かせる。
「あの説明はあなたのことだったの?」
気を取り直して、イーグレットが質問する。
「俺と相棒の事だ。のぞみとラブは俺と相棒の部下だ。だから、姿を借りてたんだ。自衛隊ってのは仕事が立て込むんだよ。たまには身代わり置いて、長く休まないとよ、労基に文句言われるんで、身代わりと交代したら、これだもんなぁ…」
「だから、プリキュアののぞみちゃんとラブちゃんと?」
「ちょうど非番があいつらだったのよ。オレ、本当は偉いから、労基関係ないんだがね」
「偉いって?」
「俺、将軍クラスなのよ。自衛隊の。だから、本当はそんな忙しくないんだけど、ヨーロッパでの仕事がここのところ忙しかったからな」
「将軍?20代で?」
「色々な特例なんだよ、俺と相棒は。おまけに本業は戦闘機パイロットなんだがね」
「戦闘機のパイロット?って事は航空自衛隊?」
「そうなる。イーグルドライバーだぞ、一応。それでいて、色々あって神様になっちまったから、苦労も多くてな。相棒は靖国の軍神の一柱の同位体だし、つるんでたら一緒に神の使徒から神様に昇格しちまったんだ」
黒江はある程度の身バレを話す。そして、その力の一端を見せる。
「さて、お前らに見せてやろう。俺の本当の力の一端を」
黒江はイーグレットの力で起こせる風以上の大きさの風を起こし、聖剣を持つ。風王結界を解除した黄金の剣をここで抜く。
「嘘……!?私以上の……風ぇ!?」
「お前ら、アーサー王伝説を知ってるか?」
「ケルト神話のあの…。で、でもそれは…」
「ところがぎっちょん、聖剣は確かにあるんだよ。『こうあってほしい』願いが紡いだ思いが具象化させた剣。その名も…」
「エクスカリバー……!?まさか!?」
「フルパワーでぶん回すのも物騒だし、属性の力で軽く行くぜ?ストライクエア!」
イーグレットが扱えるレベルを遥かに超越した暴風が吹き荒れ、ボトムが発生させていた暗雲の一切を吹き飛ばした。そして、黒江の手には黄金の剣が出現していた。伝説の通り、もしくはやや長めの刀身を持つ剣が。
「それが貴方の本当の力…」
「俺は黄道十二星座の山羊座を司る戦士でもある。アテナから授かった聖剣の霊格を実体化させたものがこれだ」」
「黄道十二星座…」
「それじゃ、ピーチになってる人も?」
「あいつは水瓶座だ。ただ、あいつは氷より炎向きでな」
ブルームに言う。ルージュはアイデンティティの危機を感じる。炎が得意と聞いたからだが。
『ブレイズ・エクスキューション!!』
智子が独自に編み出した必殺技『ブレイズエクスキューション』。『オーロラエクスキューション』を反転させ、劫火を繰り出すものとした独自技である。その手順はオーロラエクスキューションとほぼ同じで、構えも同じである。両手を組むことで水瓶の形を成し、放つのだが、本質的に温度のコントロールは高温も低温も基本的に同じものであり、炎と凍結は同じ属性に属していたと判明し、智子は炎を主力とする。その点では独自色が強い。
「へ……ぇ……!?炎を波動みたいにして打ち出したぁ!?しかも、とんでもない温度でぇ!?」
「お前、そこでアイデンティティの危機を感じるのかよ。あれで感じるのはまだ早いぞ」
「へ…?」
『塵一つ残さず消滅させてやる!!』
エンペラーの放射板がせり出し、普段より巨大なV字型になり、放射板が赤く発光する。エネルギーが徐々に炎になっていき、エンペラーの瞳が消える。
『光子力を炎に変える!!グレェェトブラスタァァァ!!』
それは一条の光となり、戦場を貫き、炎を起こす。それは形容しがたいほどの超高熱の熱線が巨大な光として戦場を走り、射線にいた全てを燃やし尽くす灼熱地獄を起こした。プリキュア達も唖然とする光景である。
「なっ、言ったろ?」
「何よ、これ…巨大ロボを跡形もなく溶かす熱線なんて…!?」
「あれが魔神の皇帝の片割れの力だ。機械で作った神って、よく言ったもんだろ?」
「あんなの作れるって、どういう世界なのよ…」
「それだけの力が必要にされる世界だよ。まだまだ序の口だ、あれを見ろ、お前ら」
「!?」
真ドラゴンが腕をドリルに、背中のウイングをモーフィング変形させ、巨大な双連ブースターとし、擬似的にゲッターライガーの形態を取る。そして、信じられないような空中機動(真ゲッターと名がつく物お得意の幾何学的な空中機動。慣性の法則無視である)を見せる。
『マイクロ秒の世界を見せてやる!!』
擬似的にライガーの能力を使っている状態であるために本調子ではないが、それでも時空戦士スピルバンの変身タイムを形容詞に用いるほどの速度を発揮。もはや、プリキュアでさえ理解の範疇を超える速さであったため、ドリルの回転する音、貫く音しかプリキュア達でもわからなかった。真ドラゴン・ライガーモードの速さは真ゲッター2さえも赤子同然の速さであり、全力機動はプリキュアも視認不可能なほどであった。
「今の……」
「見えなかった…。変身してるはずなのに…」
「あれが見えれば、お前らも神の使徒になれるよ。もう光速も超えてるからな」
「貴方は見えたんですか?」
「神の使徒(聖闘士)から神そのものになればな」
ブルームとイーグレットでも視認不能な真ゲッタードラゴンの動き。まさしく大決戦の狼煙であり、彼女たちが巻き込まれたものが何であるかの明確な証拠であった。黒江と智子がその真の力の片鱗を見せ、四人の『未来のプリキュア』が奮戦する中、『かくあるべき』スーパーロボットの破壊力に圧倒されてしまう。キュアブルーム、イーグレット、ルージュだった。
「さて、ボトムは俺が始末する。ああいうのは空間ごと葬るのが手っ取り早いんだ」
「アンタ、左を?」
「こういう時のために取っておいたんだからな」
黒江はドリームの姿を借りているが、能力はそのままであるため、左腕に宿す乖離剣エアも健在である。その力を使うつもりなのだ。
『キサマラ…ムシスルナ!!』
「げ、ヤバッ!ボトムって奴、ガン無視されてメッチャ怒ってるじゃん!」
「落ち着け、ブラック。ヤツは冷静でなくなってる。そういう時こそつけいる隙が生まれる。ウザーラとやろうって時だ。奴になんぞかまけてやれん」
「ドリーム…?」
『バカナ……、ソノ力ハ……!』
「感づいたか。悪いな。本来なら皆でのソリューションで浄化するんだろうが、ウザーラがいるんだ。お前には完全にくたばってもらうぜ」
『キサマハイッタイナニモノダ!』
「それを聞いた時点で、テメェの負けだ!!」
ボトムは歴代プリキュア達が戦った使役怪物をシャイニングドリーム(黒江)に差し向けるが、その技の前に蹴散らされる。
『デスパーサイト!』
黒江は聖剣を使わずとも、長年の経験で技を多く有するため、普通に敵を葬ることができる。ガイキング・ザ・グレート(正確にはガイちゃんだが)からのデスパーサイト(手刀)で第一陣を葬り去る。そして、一筋の雷を纏った流星となりて、怪物の集団を消滅させる。幾何学的機動を見せて。
「は…え!?な、何あれ!?」
「アブショックライね。あの子、こういう時に張り切るのよね。さて、あたしも!」
智子はキュアエンジェルピーチの姿は借りているが、光子力エネルギーを炎となりて邪を討つ。
『光子力を炎に変える!!ファイヤーブラスターッ!!』
胸のあたりで炎が渦巻き、炎球になる。それが弾け、超高熱熱線として放射する。プリキュアとしての技ではないし、浄化の力を持つはずのキュアエンジェルとは対極に位置する『敵を溶かし、倒す』力。これが智子が転生を繰り返している内に得た光子力の力である。ピーチの姿でも好き勝手するところは、黒江と似た者同士、若き日に血気盛んだった時の名残りであった。
『バイオブレード!!』
続いてはバイオブレード。仮面ライダーの武器でおなじみのものだ。徒手空拳の名手のはずのピーチが剣を召喚したので、他のプリキュアは大パニックである。智子は格闘より剣戟が好きなため、ピーチの姿を借りていても、それは変わらない。バイオライダーのバイオブレードを借り、百鬼メカと機械獣を斬りまくる。剣技は智子の場合、備前長船を愛用していた過去があるため、若干ながら、佐々木小次郎にかぶれていたと思われる節がある。その名残りで、空中でバイオブレードによる燕返しを見せた。これは平成ライダーのディケイドやジオウの戦いでは、敵味方ともにままあるため、黒江と智子が昭和ライダーの力を使おうと、何ら問題はない。(もっとも、二人は昭和どころか、大正後期の生まれだが…)
「嘘ぉ――!?ピーチ、何があったのよぉ!?あの子、剣道なんてガラじゃないはずよ!」
狼狽えるベリー。ピーチの幼馴染だからだろう。そして。
『邪魔だ、どきやがれ!!超電ッ!!三段キィィ――ック!!』
黒江もシャイニングドリームの姿で超電三段キック(仮面ライダーストロンガー)を敢行、ボトムを守るかのように陣取る歴代の使役怪物をぶち抜く。他の歴代プリキュア達は巨大ロボ相手にいささか苦戦を強いられている。一体一体がスーパーロボットと戦える力を持つため、最強形態になっている歴代プリキュア達も一筋縄ではいかなかった。一撃で相手を屠れる力を持つのは、三大スーパーロボットか、修行を積み、自らを鍛えた『四大プリキュア』のみ。第一期プリキュア原初にして最強を謳われしブラックとホワイトも、何も予備知識がない状態で『スーパーロボットと戦うために作られた巨大ロボ』と戦うのは骨が折れる仕事であった。
「いっつつ…、硬った~~!?嘘でしょ、キュアレインボー状態になって、パワーは上がってるのに…!」
「光弾にも耐えるよ!単純な力押しじゃ一体倒すのも骨だよ、これ!」
「技の破壊力が相手の装甲に打撃は与えられても、壊すまでには達してないんだわ!!みんな、一体づつ確実に倒さないとジリ貧になるわよ!」
「ありえな~い!キュアレインボーになってるってのに!」
愚痴るブラックだが、アクアの進言は確かに当たっており、いくらキュアレインボー化していても、相手の装甲が堅牢を誇っている以上、バラバラにかかっていてはジリ貧である。現状、後代のプリキュア達は『修行を重ねた』と公言する通りの力を発揮し、この時点での歴代オールスターズを上回る戦闘能力を見せている。
『ラブリービィィィム!!』
キュアラブリーは目の周りを指で囲んで照準器代わりにし、ビームを撃てる。練度も転生後は現役時代を上回るため、マジンガーZの『光子力ビームフルパワー』に匹敵する勢いの極太ビームを撃てるようになっている。破壊力も光子力ビームに匹敵するという反則技である。
『ラブリーライジングソォォ――ドッ!!』
ピンクのプリキュアとしては、史上初の剣戟が通常戦闘での選択肢に含まれるプリキュアであるラブリー。第二期プリキュア最後発かつ、第一期プリキュアに近い武闘派である故の戦闘であった。時間軸の都合でラブリーとの面識がないブラック達は度肝を抜かれるが、その次の技も衝撃であった。
『ラブリーシャァァァイニングゥ!!インパクトォォ!!』
修行の成果で、叫びに気合が入るようになった『ラブリーシャイニングインパクト』。本来はビームの照射技だが、エネルギーを相手にぶつける方法も可能であるため、ゴッドガンダムやシャイニングガンダムを知ってからは、エネルギーをぶつける方法を好むようになっているという。ラブリーは戦列に加わってからは第二期プリキュアの代表格として、率先して戦うのだが、それには理由がある。それを説明しよう。
――予てから、ラブリー/めぐみは彼女の先代のハート/マナの鏡写しのような存在と一部から揶揄されるように、幼少期から現役時代を通し、強烈に『メサイア・コンプレックス』に苛まれていた。ラブリーの頃には伝説視されていた『第一期プリキュア』は昭和時代のヒーローとヒロインから受け継がれてきた『崇高な目的で自己犠牲をしてでも地球を守る』という高潔な精神を備えていたが、ハピネスチャージプリキュアは『利己的な理由で戦う』事がクローズアップされていた。めぐみは『自身のメサイア・コンプレックスを満たす偽善的目的で戦っているのではないか?』という歴代への負い目を抱えたまま一生を終え、転生を遂げたという。つまり、真ドラゴンとの戦闘時には既に『転生していた』事になる。ラブリーは転生前、『世界を救うか、母親を救うか』という自身にとっての究極の選択を強いられたという。持病の病状が重くなり、余命幾ばくもなくなってしまった最愛の母親の治癒を選んでしまったがために、世界は危機に陥った。自責の念に駆られ、自傷行為に走るほどに精神的に追い詰められた彼女を救ったのは、のぞみ、ラブ、響の三者であったという。めぐみ曰く、『町外れの公園で自暴自棄になっていた自分を叱咤し、プリキュアとしての自分に希望を与えてくれた』との事で、詳しく聞くと、母親にさえ『そんな事は望んでいなかった』と否定され、人助けをしていたつもりが、『善意の押しつけでしかない』と否定されてしまい、それまでのアイデンティティが崩壊、自殺未遂にまで及んでしまったという。町外れの人気のない公園で自殺をしようとしたところを、のぞみが止め、ラブと響が事情を聞いたところ、めぐみは『何のために生きてきたのか、分からなくなっちゃった……』と泣いた。響は『身近な人が守れない子に、皆を守るとか言われても、信じられないよ。世界を守るのは、自分の身内を守るついで程度で良いんだよ』といい、めぐみがプリキュアである事を知っていた。そして、仲間と離れていためぐみを倒そうとした敵が襲撃してきて、のぞみ達はプリキュアに変身、応戦。そのまま、シャイニングドリーム、エンジェルピーチ、クレッシェンドメロディと共闘し、チームの危機を救い、最後はピーチが音頭を取った『プリキュア・クローバー・ラブリー・グランドフィナーレ』というラッキークローバー・グランドフィナーレの発展技で世界を救ったと言っている。その出来事を経ているため、のぞみ、ラブ、響を慕っているという。響(シャーリー)が自分達の戦列に加えるのを侘びたところ、『響ちゃん達の役に立てるのなら、あたしは何でもするよ。現役時代、あたしを助けてくれたもの』と語り、三人を恩人として慕っている事を語ったという。ダイ・アナザー・デイが終わった後に修行を終えると、すぐに戦列に復帰し、クーデター鎮圧に貢献している。それが彼女が戦いに参加する動機なのだ。現役時代に利己的な理由で戦ってしまった事が彼女を苦しめ、転生後に恩返しという明確な目的を得た事もあり、三人を姉のように慕っている。三人にとっては喜んでいいのか微妙(同位体が経験している出来事で、自分自身ではないため)だと言っている。ただし、めぐみが自分を素直に慕うことは悪い事ではないため、のぞみは特に上機嫌(ウィッチ世界では、日頃から黒江と黒田の使いっぱしりポジションであるため)だったという。
――話は戻って――
「驚きでしたよ、貴方がまさか……あの伝説の聖剣を……」
「俺はカリバーンから鍛えて、エクスカリバーにしたんだ。アテナは聖剣の原石を与えるだけ。後は個人の素質と鍛錬に作用される。それと、そっちののぞみはなんか言ってたか?」
「ええ。自分が目立ってるのはいいけど、なんか違うってボヤいてました」
「ま、仕方ないが、本来ならその時間にはいないはずの後輩連中もいたんだ。それくらいは我慢してほしいぜ」
そう漏らす黒江だが、ある意味、自分のチートぶりがのぞみの同位体の嫉妬の原因の一つである事を自覚するのはまだ先のこと。また、大決戦で黒江がシャインスパークを撃ったことも要因の一つだったりする…。