――結局、カールスラントはドイツの抑え込み政策の犠牲となり、以後の国際社会での軍事的地位を大きく低下させた。それを目の当たりにした扶桑は軍事面では、かなり独自色を打ち出していく。戦艦の大規模保有の維持はその一環である。原子力潜水艦はウィッチ世界では大規模保有に意義がそれほど見いだせない事もあり、地球連邦海軍から譲渡された潜水艦の使用で留めるが、戦艦は大和型戦艦の発展型を必要上、定期的に開発し続けていく。他国が戦艦の維持を縮小した冷戦末期の20世紀末になっても、扶桑は40年代と変わらぬ規模の戦艦艦隊を維持していた。怪異へは砲弾が有効打になる事は変わりなかったからで、怪異の存在は戦艦の地位を維持させた点では恩人と言えた――
――ウィッチ世界の21世紀では、冷戦はティターンズの自然消滅で1989年に幕を下ろしていたが、太平洋戦争末期からリベリオン本土に乱立した『ミリシャ』の掃討は続いていた。これは扶桑への降伏を良しとしない考えの者が各地で民兵組織を作り、抵抗を繰り広げたからだが、そのおかげでリベリオン大陸は日本連邦の管理下で史実戦後アメリカに近い発展を遂げた西海岸、ティターンズの統治下で実質的な統制社会化した東海岸に二極化された。ミリシャはその間を縫う形で散らばっており、掃討に長い時間がかけられた。最後のミリシャが降伏したのは2015年であった事から、根深いリベリオン人の差別意識も背景にあった。それは瑞穂国の再興を恐れたリベリオン本国支配層の思惑もあったが、歴史として、瑞穂国を建国していた扶桑系移民を虐殺した経緯を持つ彼らの後ろめたさも大きかった――
――そんな時代においての64Fの先任大隊長であり、黒江の養子(ただし、お互いに血縁関係はある)である黒江翼(2015年当時は大佐に昇進)はダイ・アナザー・デイにおいて、義母の影武者を務めたが、太平洋戦争にも参戦していた。これは21世紀のウィッチ世界は概ね平和で、散発的な怪異相手以外に腕を奮う機会がない故、過去の時間軸に混ざる事が奨励されていたからだ――
「……ああ。マスコミの応対はお前に任す。俺はマスコミ嫌いなのは知っとるだろ?…頼むぞ」
「娘さんからですか?」
「ああ。一応、血縁上は大姪だ。三番目の兄貴の孫娘だからな。俺の素質を一番受け継いでたから、引き取った」
黒江家は黒江自身の曾祖母の世代からは『女子が当主の場合はその時代の末子である』という法則があり、黒江家当主は『長子が継がない事が多い地位』と知られていた。それは21世紀になり、自身の大姪を後継に選ぶという形で守られた。これは戸籍年齢の都合で家督を2006年頃に譲ったためだが、戦士としては『その時代でも現役』である。
「娘には影武者をさせてる。俺の同位体にやらせたかったが、技能不足とか色々な都合も大きくてな」
「同一人物でも、世界によって差がでますからね」
「そうだ。どうやら、俺の同位体は圭子の役割の一部を担ってたみたいでな。色々と違いすぎたんだ。それで娘を呼んで、影武者やらせる羽目に」
黒江自身の同位体は圭子が担っている役割の一部を担ったらしく、アフリカ戦線にいたと言い、お互いの差異が大きすぎた上、実戦離れも長いことから、プロパガンダ目的の活動に駆り出す事も断念された。それが芳佳Bと黒江Bが揉めた原因の一つである。
「同位体をこの戦争に駆り出すつもりはないし、向こうもそれは分かってるが、向こうのガキ共が怠惰だって喚くんだよ。却って、それは酷だってのに。特に芳佳とリーネは扱いづらいぜ」
「力を失った者の苦しみは……本当にその時でなければ、わからないものですよ」
第一世代プリキュアオールスターズには『力を失った時期がある』ため、エクスウィッチの境遇に理解を示すキュアアクア。黒江自身からして、力を取り戻す↓限界を思い知らされる↓修行で壁を超える事を転生の度に繰り返し、現在の強さを手に入れたため、芳佳BとリーネBを流石に叱責している。二人は予てからかなりの不満を漏らしており、それが救難任務に顔を隠して就かせる理由となったが、坂本Bは『子どもたちの癇癪だ、すまん』と侘びている。その時にリーネBは『なにもしないのは怖くないんですか?力を持ってるのに…』と暗に責め、芳佳Bも智子Bと黒江Bが何もせずにいることを否定的に言った。それで大揉めになり、智子Bは泣くわ、黒江Bと芳佳Bは口論になるわ…。黒江Aはなるべく諭すように言い聞かせたが、智子と黒江は普通に行けば、本来は40年代前半に引退している世代のウィッチである。
「戦を戦うのが軍人の仕事なのは確かだが、それを支える仕事も軍人の仕事だ、そして戦う力を失った者は戦う者を支える事で、戦いに参加出来る、戦いに出られる力を持たない者に戦えと言うお前は戦えない者を盾にでもするつもりなのか?」
リーネBはそれに反論したが、芳佳という特殊なケースであるため、説得力はなかった。智子Bと黒江Bはもはや戦闘に耐えられる魔力は残っておらず、ただ飛べるだけ。そのため、天下無双のエースである別の自分に干渉するつもりはなかった。芳佳Bはエクスウィッチの二人を坂本を引き合いに出して責めたが、『したくても出来ない』事情があるのだ。
「いや、本当。向こうのガキ共の癇癪には参るぜ。坂本を引き合いに出して、俺と智子の同位体を責めやがるんだから。泣かせてどうするっての、あのバカ」
「本人達は悪気は無いんですよ、そういう癇癪は。ただ、戦う力は普通は戻らない。たいていの世界での芳佳のケースは奇跡のようなものですよ」
「坂本は飛ぶ時間を犠牲にして燃え尽きるのを選んだってのに、たいていの場合は。思わずキレちまったぜ、俺」
――このバッカヤロウが!!俺らにはウィッチの力なんて殆どねぇよ!!鍛えてウィッチの魔法と異なる力で、ウィッチとしても戦える力を使ってるだけだからな!?その辺間違えるなよ?!!そっちとは修行量がン十年じゃ効かねぇくらい違うんだよ!!――
黒江Aも最後に流石に激昂し、そう怒鳴った。別の自分が暗に責められるのは黙ってられなかったからで、芳佳BはリーネBを庇う形で、黒江Aとの模擬戦を震電で挑んだが、黒江Aはエンペラーオレオールを使って圧倒。最後はサンダーボルトブレーカーでノックアウトであった。1945年の時点では疑いようがなく最硬の強度であるはずの『宮藤芳佳+震電』の張ったシールドを黒江Aは極限まで圧縮して光線化させた雷で破ったのだ。芳佳の防御力は皮肉にも、その時に際立った。通常のウィッチならストライカーが破壊されていて然るべき威力の雷にストライカーが稼働できる状態で耐えたのだ。しかも空間爆破に耐えて。ただし、そこまでが限界であったが。
「向こうの芳佳も筋は良かったよ。リーネのためってブーストがかかったから、菅野よりいい動きをした。しかも格闘に不向きな震電でだ。褒めてやったよ。エンペラーオレオールで極超音速の戦いを見せてやった。ドリルテンペストで震電の外板を壊せたが、それはやめといた」
黒江はエンペラーオレオールを背負い、極超音速の速度で圧倒した。芳佳Bは自身の防御力をフル活用したが、流石にタダの震電では追従不可能となった。(ストライカーの停止を度外視すれば、800キロほどの速度は出たが、震電のエンジンが死ぬ)なお、グレートタイフーンを使い、強引に地面に押さえつける事は行い、2200HPであった震電のエンジンをオーバーブーストさせ、更に芳佳Bの魔力を加味しても飛び上がれなくさせたとも言った。
「あまり傷つけるわけにもいかんから、グレートタイフーンを使った。新しく、英雄王から許可を受けた『天の鎖』を使って抑え込む手もあったが、向こうがムキになってエンジンをレッド・ゾーンでぶん回して、オーバーヒートさせても面倒だしな」
天の鎖。この時期に黒江が英雄王とのチャネリングによるネゴシエーティングで使用権を得た新たな宝具であり、神格を抑えるために使われたという鎖だ。主に対神・対神格持ち用の鎖である。物理的強度は相手によって上下するが、シンフォギア装者に対してはシンフォギアの有するギミックの一切の発動や終了を阻害するという特徴がある。例えば、イグナイトモジュールの発動中であれば、その時間経過による終了を阻害させ、その状態のままで捕縛しつづけられる。イグナイトの出力を上げようとしても、その機能が使えなくなる。雪音クリスが『アーマーパージ』で逃れようとしても、パージが一切できなくなるし、通常解除も不能になる。もっとも黒江と調は山羊座の失伝技で拘束技『ドミネーションラングウェッジ』(ランゲージとも)を有しており、相手の拘束技には事欠かないので、天の鎖の出番は少ないが。
「天の鎖はいざという時に使うが、普段は『ドミネーションラングウェッジ』で事足りるよ。ISやシンフォギア程度なら、あれを発動させれば、拘束できるしな」
「リストリクションでもいいんじゃ」
「あれは拘束が弱めだしな。前にドラえもんの道具の実物ミニチュア百科だかでアクションフィギュアサイズのエヴァンゲリオンを出してかけたら、リストリクションは割にすぐ振りほどかれた」
ドラえもんの道具には実物ミニチュア大百科というものがあるため、それでエヴァンゲリオンの三機を出して実験したと語る。また、『ドミネーションラングウェッジ』の方はシンフォギア世界にいた時に使用しており、響の突進やマリアの突撃などを強制ストップさせたとも言う。(調も別の自分に対して使用したところ、別の自分のシュルシャガナをストップさせ、ローラーによる移動を封じ込んだ事がある)
「それで、サンダーボルトブレーカーでノックアウトだ。よく耐えたもんだ。普通ならストライカー諸共に消し炭だってのに」
「その時に向こうから怒られたでしょう?」
「空間爆破入るしな。だが、サンダーブレークだと、却って中身が焼けるから、ストライカーが使い物にならなくなるし」
「やれやれ。向こうは気が気じゃなかったと思いますよ。そこまで凄すぎると」
「あの時、お前らの前でシャインスパーク撃ったのに比べりゃ優しいほ~だと思うがな」
――それは大決戦での事…――
プリキュア達は図らずしも、スーパーロボットとミケーネ/百鬼帝国の連合軍との戦闘に巻き込まれ、プリキュア本来の主敵たる『ボトム』そっちのけの戦いと化していた。だが、ボトムは物語的にも倒さなくてはならない敵であるため、黒江と智子はそれぞれ、ドリームとピーチの姿を借りていたが、それを承知の上で、シャインスパークの準備に入った。
「……分かってるな?」
「ええ、感情を込めて、力を引き出す!!」
「私達の力を合わせましょう!!」
フェリーチェも加わり、三人に空間に満ちるゲッターエネルギーが集束していく。周囲から吸い込むかのように三人は白いエネルギー光に包まれ、眩い光を発する。ゲッターシャインである。その場にいた『オールスターズ』(時間軸的に本来いないはずのプリキュアを除く)はその行為に驚く。
「な、なんなの!?」
「あの三人にエネルギーが集まってるわ!それも、空間を揺るがすくらいの…!」
「そんなエネルギー、あの三人の体が耐えられるの!?」
『ゲッタァァァァ・シャイィィン!!』
ブラックとホワイトの反応からして、驚愕するほどの行為であるのが分かる。シャインスパークはゲッターロボG以降のゲッターロボ最終兵器。それを発動したので、空間が揺らいでいるのだ。真ゲッタードラゴンのそれにはエネルギーの絶対量で劣るものの、ゲッター真ドラゴンに匹敵するだけのパワーを引き出していた。
「プリキュア・シューティングスターじゃないの!?」
「いえ、起こしてるエネルギーの量が違いすぎます!!まるで空間そのもののエネルギーを集中させて…!」
「どういう事!?どうしたっていうのよ、ドリーム!?」
その世界のミルキィローズからして、このコメントだった。そして由緒正しい『ゲッターシャイン』のポーズと共にエネルギーを臨界状態にまで高めていく三人。
『シャイィィンスパァアアアク!!』
エネルギーが臨海になり、眩い光を放つ三人はボトムに突撃する。一つの巨大な閃光として。もはやプリキュアの趣旨から離れているが、黒江と智子は力を借りている状態にあたるためと、フェリーチェは攻撃技を元々持っていない兼ね合いで行った。また、フェリーチェからは、ZEROの因果律操作により、以前のような『神通力』が失われたため、それを補うためにゲッターエネルギーと光子力エネルギーを制御する特訓を行い、20年の月日をかけて自家薬籠中の物にした。その賜物でもある。三人は眩い光とともに突撃し、大爆発を引き起こす。凄まじい衝撃波が走り、キュアレインボー状態のプリキュア達をも吹き飛ばさんばかりである。ややあって、ボトムはシャインスパークのエネルギーを浴びせられたため、ゲッターエネルギーの大爆発に呑まれ、断末魔もなく消滅する。爆発で生じた衝撃波が伝わり、プリキュア達は吹き飛ばされそうになるが、三大スーパーロボットが盾になって衝撃波から守ったのだが、一件して特攻そのもの(ただし、ハートキャッチには似たような技があるが)であったため、何名かは悲鳴を挙げたという。
「――驚きましたよ、あの攻撃は。シューティングスターに似ていたけれど、桁違いのエネルギーを纏った後にエネルギー弾として相手にぶつける大技。ゲッターロボの最終兵器と聞きましたが?」
「ゲッターGに備えられたのが最初の大技『シャインスパーク』。あれで倒せねぇ奴はいない。そっちののぞみには悪いが、完全上位互換だな」
「あれでボトムは倒したれれど、その後も大変でしたね」
「ああ。お前、めっちゃ驚いてたな」
「だって、新しいプリキュアが増えれば……」
いいわけするアクアだが、そこは本当であった……
「宇宙を流れるエネルギーを集めて叩きつける最強の命の炎の一つだからな、生き延びる意志を持ち続ければ、あの力に繋がるさ」
――話は戻り、大決戦――
「手は打ってある」
黒江は微笑む。ブラックはなんとなく不思議な感覚に襲われる。すると、上空で戦うプリキュア達の中央付近に一隻の超弩級戦艦がワープで現れる。それこそは。
「え!?戦艦……大和!?」
ドリルの艦首と船体に収納式のチェーンソーがある以外は戦艦大和に酷似した外見の戦艦が颯爽と陣取っている。ご丁寧にメインマストに日本の軍艦旗もはためいていた。
「みんな、その戦艦大和は味方だ!主砲の射線を開けろ!ブラスト圧で吹き飛ぶぞ!」
「ど、どういう事!?」
「早くしろ!艦砲射撃が始まるぞ!」
「事情を説明して~!」
「そんな暇、あるか!!」
そのラ級戦艦こそ、ダイ・アナザー・デイには間に合わなかったが、ニューレインボープランの一環で建造されたプロトタイプ『豊葦原』、俗名は『轟天号』である。ラ號の二番艦として日本海軍が計画していた軍艦を扶桑が未来技術で完成させたのだが、極秘に運用テストを行う都合、大型航空機の名目で64に回された艦である。ラ號と違い、設計通りに51cm三連装砲を当初から兵装としているのが違いである。黒江がプリキュア達を退避させると、艦砲射撃が開始される。戦艦の艦砲射撃の凄まじさは爆煙が辺りを覆い隠すほどであり、プリキュア達は思わず息を呑む。
「そうだ、ドリームとピーチ、ブラックは…?」
地上のプリキュアの事が気がかりなキュアアクアが爆煙が晴れた後の地上の様子を確認すると…。
「え!?」
「どうしたの、アク…え!?」
「ま、また…新しいプリキュア!?」
アクアたちはまたも、驚天動地の事態に放り込まれる。ドリームとピーチがなんだかよくわからない重火器を持って、それっぽい決めポーズを決めているのに加え、二人の間に挟まる形で、またも『新たなプリキュア』がいたのだ。
『澄み渡る海のプリンセス、キュアマーメイド!!お覚悟はよろしくて?』
『深紅の炎のプリンセス、キュアスカーレット!!お覚悟、決めなさい!』
プリンセスプリキュアの登場だが、アクア達は時間軸の都合などで、そんなプリキュアがいる事などまったく知らないので、カッコよく決めた二人をよそに、空中で大パニックに陥る。
「キュアマーメイド…、キュアスカーレット!?」
「また、未来のプリキュアなの!?」
「はい。あの二人はわたしの属している『魔法つかいプリキュア』の一年先輩の『GO!プリンセスプリキュア』のメンバーです」
「い…、い…、いったい!何がどうなってるのぉぉーっ!?」
「――あの時……お前、素で腰抜かしたろ」
「仕方がないじゃないですか、マーメイドとスカーレットがバシッと決めポーズ決めてたら!」
水無月かれんとしての素が出てしまうほど驚き、普段は見られないコミカルさが出る。フォローしようとする相方のキュアミントも、あまりの衝撃にフォローできておらず、茫然自失の状態であったその時。フェリーチェがさらりと、『プリンセスプリキュア』を自分のチームの一期先輩であると明言したため、衝撃度は凄まじかった。ブラックも『新しい後輩』の登場の衝撃で真っ白になるほどであった。カッコいい場面だが、ブラックとアクアがコミカルさ全開なため、コミカルさが出てしまっている一幕であったと言える。もっとも、ミント/こまちにとっては……こちらのほうが驚いたという。
「やれやれ、こういう事になるとはね」
「お!ハニー、来たのか!」
「さて、『妹』の前だし、ちょっとはいいところ見せておくとしますか」
如月ハニーはプリキュアオールスターズの前に『秋元まどか』の姿で現れた。ライダースーツに身を包んで、こまちを大学生ほどに成長させたと思わせる容姿だが、違うのは、ハニーの証である空中元素固定装置のスイッチを兼ねるチョーカーがあることだ。
「いいのか、ハニー?お前の前世での妹を含めたガキの前だぞ」
「可愛い『妹』の前だからこそ、よ。たまには良い格好したいのよ、姉らしくね」
ハニーはまどかの姿で微笑う。ドリーム(黒江)の事はのび太達から予め知らされていたため、事情は知っていた。
「え!?お、お姉ちゃん!?ど、どうしてここに!?」
キュアミントがその姿に気づき、地上に降りてきた。
「や、こまち」
「どうして、こんなところにいるの!?こんなところにいたら……それより、今日は家でお菓子を作ってるって!?」
「ま、色々あってね。それと、あたし、あなた達がプリキュアだって事は分かってたわ」
「そ、そうなの……?」
「干渉するつもりなかったから、あたしもお父さん達に言わなかったのよ、こまち。それと、地球の危機に黙ってちゃ、元祖変身スーパーヒロインの看板がすたるから」
「……へ……?」
「色々とややこしいけど、あたしも今は変身ヒロインしてるのよ。その証拠を見せてあげる」
『ある時は秋元まどか、またある時は如月ハニー、そしてその実体は!!愛のため、乙女は変わる!ハニーフラァ――ッシュ!!』
この時は通常形態のキューティーハニーでなく、最強のハイパーハニーに直接変身したわけだ。
『愛の戦士、キューティーハニーさ!!貴方の人生、変わるわよ★』
ウインクも決めて、決めポーズも決める。最強形態のハイパーハニーにいきなりの変身を行うなど、ノリが良かった。ただし、通常形態よりコスチュームがかなり際どいので、どこかの団体から抗議が来そうとぼやいているが。
「嘘!?ど、どうしてお姉ちゃんが変身できるの!?しかも、キューティーハニーって!?」
「ま、その辺はおいおい、ね」
白を基調にしたそのコスチュームは通常のキューティーハニーとは異彩を放っている。胸元の隙間も大きくなり、胸元の谷間を強調しているため、2020年代に入る頃なら、確実に文句が入るデザインである。これについては説明がややこしい事請け合いな経緯なので、ドリーム(黒江)も苦笑いである。
「加勢するわ。そのために来たのよ、私は。それと、あなたの後輩の子らを引き連れてきたわ。」
「それじゃ、あの子達は…本当に?」
「他にもいるわよ?」
「いるの!?」
『ここにいますわ!!愛の切り札、キュアエース!!』
『英知の光!キュアダイヤモンド!!』
『爪弾くは魂の調べ!キュアビート!!』
『爪弾くは女神のしらべ!キュアミューズ!』
『銀河に光る虹色のスペクトル!キュアコスモ!』
この時代においては『新世代』に分類される7人のプリキュアが更に戦線に参加する。合計で7人の追加だ。
「お前ら、のび太の差し金か?」
「そうだよ。仕事も早く終わって、休暇取ったし、それでね。ずいぶんと面白いことしてるね、アヤカ?」
「ま、息抜きしたら、こうなっちまったのさ。見ろ、お前らが来たから、ブラックが完全にフリーズしたぞ!」
「なぎささんには気の毒な事になったけど、仕方ないわ。ブロッサムとマリンがやられたら、もっと後輩の私たちの存在が危うくなるもの」
次々と起こる事柄についていけず、キュアブラックは頭がショートしてしまい、フリーズしてしまったらしく、ホワイトが首根っこ掴んで揺さぶっているが、完全にオーバーヒートしてしまったようだ。頭から煙が出る始末で、完全にオーバーフロー状態に陥っていた。口から魂が出かけるほどのショックだったのが分かる。
「ダイヤモンド、お前なぁ」
ツッコむ黒江。それをよそに。
「かーっ、それでも元祖プリキュアかよ…援軍は轟天とお前らか?」
「いや、まだいるよ、彼が」
「何?」
『デェービィーィィル!』
空から雄叫びが聞こえ、デビルウイングを展開し、颯爽と飛翔するデビルマン/不動明の姿が見えた。
「デビルマンか!……こうなってくると、完全にスーパーヒーロー大戦の様相を呈してるじゃねぇか、この戦い」
アークインパルスなどで正体を悟られているため、黒江は地を出し始めた。声や姿はドリームのそれだが、態度は完全にいつもの黒江に戻っている。
「さて、そろそろ、俺も本気出すかな……っと」
黒江は自分本来の得物の一つ『エクスカリバー』を構える。基本機能はアルトリアの持つ宝具と同様のものだが、それとは別に、女神『アテナ』が代々の山羊座の黄金聖闘士に与えし剣の霊格を実体化させたものである。ただし、アルトリアが風属性を持つのに対し、黒江はより攻撃的な属性である雷である。風王結界を解いた刀身は紫電の光を纏っている。それが黒江固有の特徴である。(ちなみに、弟子の調は炎を纏う)
「黄金の剣……!?あなた、それをいったいどこで…!その剣はまさか、伝説の…!」
「説明は後だ、ミント。全ては事が終わった後だ」
キュアミントはドリーム(黒江)の持つ剣の姿にそれが何であるか気づいた。そして、エクスカリバーを持った立ち姿が『のぞみがキュアフルーレを持った際の姿』と違い、『訓練を受けた剣士の構え』であることから、それまで半信半疑であったことが確信に変わった。
「さぁて、いっちょやりますか」
キュアピーチ(智子)も、既に自分自身の得物である備前長船兼光を構えている。刀身に蒼い炎を纏わせ、自身も蒼いオーラを発している。
「あなた方、説明がややこしくなる事をおやりなられて……。仕方ありません、付き合いますわ」
キュアエースも、どこからか太刀を取り出す。本当はどこぞの炎髪灼眼の討ち手よろしく、大太刀を使うつもりだったのだが、大太刀は大きすぎて取り回しが難しいという指摘を受け、通常の太刀で我慢した。こちらはイメージカラー同様に赤い炎を纏わせている。(青の色の炎のほうが実は温度が高いのであるが)
「援護しますわ、あなた方は遠慮なく突っ込んでくださいな!」
「スカーレット、エース。お前ら、キャラかぶりすぎだぞ」
「それ、今……いいますの?」
「事実だろー」
苦笑いのスカーレットとエース。いずれもルージュの属性である赤のプリキュアの継承者の一人であるが、言葉づかいなどがスカーレットとエースはかぶっており、黒江たちからは大いに愚痴られていた。令和の時代になる頃になれば、プリキュアオールスターズは60人以上もいるので、誰かどうかはキャラかぶりが発生するのだ。
(どうするんです?あなた方の正体、みんななんとなく悟りましたよ?)
(竹井、仕方ないだろ?のぞみとラブのポジションを空白にするわけにはいかんだろうが。ブラックやブロッサムにはわりぃが、こうなっちまった以上、俺たちで始末つけんぞ)
テレパシーでマーメイドとやり取りを交わすと、ドリーム(黒江)はエクスカリバーを撃つ前に、ピーチ(智子)と示し合わせ、ある攻撃を行う。それは。
『原子一つ残さず燃え尽きろぉ!!』
『光子力を炎と変える!!』
智子は両腕を使って光子力の火球を作り、黒江はプリキュア5のコスチューム(第二期時点)の胸の蝶形リボンを放熱板代わりにする形で光子力エネルギーを集束、制御し、二つの『魔神皇帝』の炎をその場で放った。
『ファイヤーブラスターッ!!』
『グレェェェト!!ブラスタァァアッ!!』
『二人共、私もやります!!インフェルノギガブラスタァァアッ!』
フェリーチェも加わり、ブレストファイヤー系の最高峰と言える『ブラスター』の名を持つ技の三つを一つに束ねて放った。黒江、智子、ことはの三人の鍛え上げた力もあり、その威力は本家大本の魔神皇帝に何ら劣らず、百鬼兵、バダンの再生怪人&コンバットロイド、デーモン族の連合軍の隊列に大穴を穿つ。
『嘘ぉ!?』
他のプリキュア達の多くはこの攻撃に度肝を抜かれた。三人は雲霞のように押し寄せてきた敵の軍団の隊列に大穴を穿つほどの『炎』を放った。射線軸上の地面があまりの高熱でガラス化を引き起こしているほどのパワーで。今の自分達には逆立ちしてもできない超絶的な光景である。
「ね、ねぇ……な、何あれ!?何なの!?ドリームとピーチに何があったのぉ!?ありえなーーーい!!」
「あ、ブラックが元に戻った」
「嘘でしょ、あの力……完全に私達の全力を超えている…!?」
キュアアクアは三人のパワーが完全に自分達の最大ポテンシャルを超えている事を理解し、息を呑む。それにキュアベリー(ダージリンへ転生した彼女ではない)、キュアパッションが続く。
「ええ……。ブラック達の手前、言えないけれど……あれが『あの人』達の力だというの……超絶チートじゃない!?」
「安心して、ベリー。たぶん……この場にいる殆どはブラック達に配慮して言わないだけで、おそらく気づいてると思うわ」
「――あの時、ベリーとパッションは気づいてたよな?」
「ええ、気づいてましたよ。なぎささんの手前、言わなかっただけで。私もですけど」
「だろうなぁ」
黒江はキュアアクアと文章を見ながら、そう考える。実際、途中からは演技を辞めていたからだ。だが、敵に対抗するにはこれしか手段がなかったのも事実だった。
『こいつもおまけよ!ターボスマッシャーパーンチ!!』
『グレートスマッシャーパァンチ!!』
『スクリュークラッシャーパーンチ!!』
三人は新生トリプルマジンガーのロケットパンチと同じ効果を持つ籠手を形成、同時に撃ち出す。いずれも回転と何らかの突起や刃を加えて通常のロケットパンチより威力を強化されたものであるため、ほぼ無防備に喰らえば、抉り取られるか、体に大穴が開けられる。しかも撃ち出す速度は大気圏での限界速度であるマッハ5.5。たとえデーモン族であろうと、無事では済まない。やっている事は完全にプリキュアでなく、人間マジンガーである。それらを戻した後は援軍組を率い、三人は吶喊していった。プリキュアオールスターズは通常はブラックとホワイトが先頭に立つものだが、キューティーハニーなどの援軍もあり、黒江達がリーダーシップを取るに至った。そして、本来の供給源を断たれ、パワーダウンした状態をミラクルライトで補っているため、パワーの長時間の維持は未知数であるプリキュアオールスターズ(ミラクルライトはあくまで『体力回復とパワー回復の呼び水を想いの力で起こす』アイテムである。なお、本来は『まだ、プリキュアとして生まれていない』はずの後代のプリキュア達については、そもそもがパワーダウンの対象外なので、万全の状態で戦えている)。
「つーか、なんで、あんたらが仕切ってんのよ!?ここはあたした…」
「るせぇ!マリン、ギャーギャー喚く暇があったら、自分の身を心配しろ!!」
「そ、そんなー!あの人、なんか怖いー!」
――この時の言葉で完璧に怖がられたのは言うまでもない。後日、のぞみはつぼみとえりかから間違った印象を抱かれてしまい、苦労したとキュアアクアに語っている――
「あの時、マリンに怒鳴ったでしょう?おかげで、あの子、のぞみを怖がっちゃって」
「すまん事したなぁ、それ」
黒江の部下であるほうののぞみも、黒江のその言動にはパニックになり、『どーしてくれるんですかー!』と泣いている。黒江の部下のほうに言わせれば、『大学の教育学部で一緒で、卒業論文を手伝わせた』仲であったらしいからだ。ちなみにそれを知るアリシア(つぼみ)曰く、『論文をえりかに手伝わせたんですよ…。あれはちょっと…』と引いており、中学生時代の悪い癖が大学生になっても抜けなかった事がわかる。アリシア(つぼみ)はかれんにその事を教えており、この時に黒江の耳に入るわけだ。
「つぼみも引いてました。まさか後輩に……」
「コージが呆れるな、それ」
アクアもその事は引いているようだ。アクア(かれん)がのぞみに呆れた事は数回あり、そのうちの最大のものは『ドジと方向オンチをまったく自覚していない』というもので、顔に出ていた。当人曰く『切羽詰まってたんですよ、期限が!!』とのことだが……
「あいつ、大学生になってものび太に似たアホなとこは治らんかったのか」
「つぼみが呆れ気味に話してました」
「のぞみが聞いたら憤慨もんだな」
つぼみもつぼみで、アリシア・テスタロッサに生まれ変わった後もプリキュアとしての基本能力値はそれほど上がず、強力なミッド式魔法は使用できないのだが。だが、頭脳明晰なところはプレシアの資質を受け継いたため、妹と違い、半分は研究要員である。
「つぼみはつぼみで、妹がエースなのに、自分は魔導師の素質が殆どない事を気にしてたところで覚醒したが、あいつ、プリキュアとしては根性あるが、強いほうじゃないしな」
キュアブロッサムにはなれるものの、妹が時空管理局の俊英であるため、いまいちぱっとしないアリシア・テスタロッサ。もっとも、フェイトはベクトルが徐々に明後日の方向へと爆走していくため、考えが常識的という点ではまともである。
「あの子はそういう事が売りでない初のプリキュアですから。あの子の代から増えてきたと思いますよ、浄化メインのプリキュア」
「そうだな。あいつは頭脳労働メインになってもらう。シャーリーは血の気が多いし、咲は運動部脳だし……」
「言えてますね」
シャーリーをはっきりと血の気が多いと断言した黒江。麦野沈利、アネモネ、紅月カレンの三つの過去生がいずれも勝ち気な性格の人物であった名残りだろう。その一方で美雲・ギンヌメールの神秘性を身に着け始めているものの、根本的に血の気が多いとのび太に評されている。そのため、再結成中のプリキュアオールスターズでの役目はこの時点では舞、つぼみ、美希(ダージリン)、せつな、りん、みなみの六人が頭脳労働役になり、現役時代と違う形で役割分担が行われていくのだった。なお、キュアハートは生徒会長経験者だが、行動派であったために頭脳労働役ではない。菱川六花も婚后光子の要素が強まり、頭脳労働の頻度は下がったという。