――芳佳Bは黒江Aの怒りに火をつけてしまったが、リーネのために模擬戦を行った。二人は『エクスウィッチの事を顧みない』発言をしてしまった事が黒江Aの琴線に触れたことを自覚した。実力の違いを見せつけられたが、言葉の通り、ウィッチ本来の力に関しては『芳佳より遥かに下位のレベル』(覚醒で絶頂期の魔力値には戻っているが、魔力値は坂本より多少良い程度の数値である)でる事は実感した――
「そんな……。魔力は坂本さんくらいなのに……あの力はなんなの……!?」
「可能性の光の力だ。ウィッチを超えた先にある、な」
芳佳Bは絶対の自信を持っていたはずのシールドを貫かれたショック、黒江Aの言葉は真実である事を思い知らされていた。『魔力は殆ど残っていない』と嘯きつつ、ウィッチが単独で起こせる全てを軽々と超える現象を以て、自分のシールドを貫いた。信じられないと言った表情で、外板表面に焦げ目がついた状態の震電を動かし、着陸させた。
「あなた達はなんなんですか。ウィッチじゃないんなら、いったい……」
「神を超え、悪魔を倒すために『ウィッチを超えたウィッチ』になっただけだ。それがこの世界特有の『Gウィッチ』って存在だ」
『ウィッチを超えたウィッチ』。黒江達に限らず、魔力を持ちつつも、そこから別の力を得て、ウィッチの壁を超えた者を指す造語がGウィッチで、書類上はグラン・ウィッチと表記されている。この時点では(1948年)、現世がウィッチでありつつも、前世がプリキュアである者、強力無比な魔導師でありながらも、アルター能力に覚醒したなのはなども包括する幅広い概念になっており、ウィッチ世界での社会通念上の都合で『ウィッチ』であると公に説明されているだけで、筆頭格の黒江からして『魔力を宛にはしていない』。また、そこそこの魔力はあれど、プリキュアの力の方を根本で信頼するのぞみのケースもある。これはウィッチの魔力は元々、『時と共に失われてゆく』ものであり、魔力値は変動するものとする認識が一般的であった事、黒江は『ピーク時の魔力値は坂本より良いが、大差はない程度』であった記憶から、のぞみも肉体の素体である錦がウィッチとしての『盛りを過ぎ始める』年齢であったことから、自身の魔力はさほど宛にしていないからだ。
「とは言え、ウィッチらしい真似ができる別の力がメインになったがな」
「――って感じだ。俺は元々、魔力は高いほうじゃなかったし、減衰が遅いだけだったから、テスパイに向いてるって言われてただけだ。」
「そうなんですか」
「減衰が無くなっても、嫌ってくらい自分の限界を見せつけられてきたからな。だから、修行を繰り返した。俺は元々、魔力は高いほうじゃなかったからな」
キュアアクアにいうように、黒江は元々、45年時点で既に戦う力を失って久しかった年齢であったので、『揺るぎない力』を求める傾向が強く、今日まで修行を繰り返してきた。その傾向は図らずしも、弟子筋の調とのぞみにも引き継がれている。特に調は自身の元々の戦力価値などから、その傾向が強い。基本的に黒江の弟子筋になると、求道的になるため、その求道的な姿勢が45年当時には『志願そのものがファッション化してきていた』ウィッチ界隈で異端視され、目の敵にされた理由だろう。
「魔力が高いとか、使い方が旨いとか、そういうレベルで鼻息荒くしたら、死ぬだけだ。俺はこれまでそういう光景はいくつも見てきたし、力が無くなった者の気持ちは分かる。あのガキ共の言うことは独善じみてたから、灸を添えてやったのさ」
「なにかしたくても、『できない事』というのはままありますからね。気持ちだけでは成せない事は……多いですからね」
キュアアクアもそういう事を経験した事があるらしく、黒江に同意した。芳佳BとリーネBは『~にできること』を必要以上に信仰しているきらいがあり、エクスウィッチにも『何かやれ』と強要に近いとされるほどの同調圧力を自覚なしにかける(本人に悪意はないのだが…)など、失態を犯した。黒江B達は『ここは自分の世界ではないし、力を失った自分達にやれることはない』と割り切っており、ホテル暮らしをしていたが、二人が揉め事を起こしてしまったことで気まずい空気ができてしまう有様だった。その解決のため、黒江Aも介入せざるを得なくなったのである。
――力よりも使い方を工夫して強くなってるのは雁渕の妹の方だね、力の量や大きさより使い方が問題なのさ――
後に黒江はのび太の助言でひかりを引き合いに出し、二人を説得するわけだが、これまた苦労を強いられるため、根本的に芳佳やリーネは才覚に溢れている事を痛感したという。
「それで結局、俺が手打ちにさせたが、なんとも気まずい空気になってな。それでガキ共に救難任務をやらせる事になったわけだ。同位体はブロマイド撮影。影武者は無理だったしな」
「大変ですね」
「俺自身、政治的抗争してきてるからな。それに、この世界は特殊な世界だし、他の世界からはかけ離れてる」
黒江の言う通り、この世界はウィッチが世の中の中心的地位から転落した世界である。ダイ・アナザー・デイでの超科学兵器の応酬がウィッチから『世界の運命を左右する立場』を奪ったが、ウィッチの信仰そのものは健在であり、黒江達に『Gウィッチ』という称号が与えられたのも、実のところは社会的な兼ね合いによるものだ。(扶桑はウィッチであった森蘭丸の尽力で織田信長が生き永らえ、大国としての前途を拓いたため、信仰が根強い。因みに、圭子の腹心である稲垣真美は森蘭丸の末裔とされる。そのおかげで、日本で足利幕府から大きい変化がない保守的な『幕府』を開いた徳川家や、本能寺の変を起こした明智光秀の評価が大きく下落してしまった感は否めないが……)
「俺たちがGウィッチなんて身分を便宜的に充てがわれたのも、ウィッチの雇用維持のためだ。ウィッチとして登録しないと、他の連中が不要と見なされてリストラされるし、職業差別意識が生まれちまった以上は『それに負けない成果』が求められる。だから、それまで精鋭と言われた連中の集中運用でウィッチの社会的な立場を守るしかないんだ。そのバーターで給料いいんだから、相応に成果出さんといかん」
「政治、ですね」
「日本の軍隊嫌いの空気の影響が大きくなってきたからな。これからは新規も数が減るだろうし、ベテランはいくつかの部隊に集中されるだろう。札幌五輪が終われば交戦が本格化するだろうから、今のうちに休暇はとっとけ」
「そうします。それと、敵はどうして一旗揚げようと?」
「一時でも栄華を味わいたいんだろう。時と共に自然消滅してゆく運命なら、ネオ・ジオンに利用されてでも、一旗揚げて消えていくのがいいと考えたんだろうな。実際、リベリオンを抑えて、半世紀くらいはそれが約束されたから、後は太平洋戦争で日本に打撃を与える事だろう。勝っても負けても、な」
「この世界にとっては、はた迷惑な話ですね」
「織田信長が天下取って違う流れになりつつあったのが、連中のおかげで史実と大差ない流れに引き戻されたからな。役者が違う太平洋戦争とベトナム戦争、冷戦は確定しているが、如何にしてこの世界を連中から守るか、だな」
「SFでよく聞く話ですね」
「連中が担わされた役目は史実の共産主義陣営の国家なんだろうな。リベリオンは割を食ったがな…」
この時期、リベリオンは東西冷戦時代の分断国家とソ連邦の役目を担わされたであろう推測は黒江のみならず、自由リベリオン上層部の間では既に公然となされていた。では、史実日本の役割はどこが担うのか?それは『新京条約』で軍備制限が課されたカールスラントだろう。カールスラントは軍事主体国家から経済主体国家へ転換する事をドイツの意向もあって強いられたが、必要上、自衛隊よりかなりマシな状況で落ち着くため、物的復興は割に早いペースで成功するが、リストラで被った人的被害はどうにもならず、人的な意味での復興は長い年月を要する事になる。対照的に日本連邦は国力が温存されていたのを理由に超大国化を求められ、そうならざるをえなくなっていく。この1948年はまさにその始まりの時代であった。また、太平洋共和国も史実戦後日本の役回りを一部演じる事になった都合で海軍の増強が必要となり、日本連邦で退役した陽炎型駆逐艦、夕雲型の残存艦や紀伊型戦艦『近江』、雲龍型航空母艦の余剰艦を艦上機ごと購入していく。太平洋共和国は日本連邦に1948年度に加盟。以後は太平洋共和国、日本国、扶桑皇国の三カ国連合になり、キングス・ユニオンとアメリカ合衆国の後ろ盾を得ていく。太平洋共和国はリベリオン合衆国の軍事力に単独では立ち向かえないため、連邦加盟に施策を転換し、以後は日本連邦の中の一国扱いで存続していく。なお、本来はパールハーバーは彼らのものだが、租借していたリベリオンが占領し、この時点では事実上喪失したも同然であったりするが。
――では、ここで大決戦を振り返ってみよう。現地のプリキュア達が置いてけぼりで話がトントン拍子に大きくなり、怪人軍団、百鬼帝国、ミケーネ帝国対ヒーローユニオン&ロンド・ベルの大戦に変質していった――
黒江は姿と声は必要上、シャイニングドリームのそれを維持しているが、正体がバレているのを前提に行動するようになったため、本来の態度に戻している。それに従い、エクスカリバーで脳天からの一刀両断や横薙ぎを躊躇なく行うようため、姿的意味で『剣を持つプリキュア』の極致を地でいくものだ。(ある意味、後世に現れるキュアエールとは対極的である。のぞみが前世で苦しんだ要因の一つも、青年期以降の戦いで『敵を倒すこと』について、のぞみは野乃はなと意見が対立し、それがやがて、世代間対立の様相を呈してしまったからとの事)
「いいか、こいつらに慈悲は必要ねぇ。生かして帰すなよ!!」
黒江は堰を切ったように、戦に関しては日本一恐ろしいとされた薩摩人の本性を見せ、修羅となる。
――こい(これ)は合戦ぞ。首の掻き合いに道理などあらんぞ。使える手ぇば何でん叩っ込まねば、相手に申し訳ばなかど――
かの島津家の武将たちは先祖代々、そのような修羅な生き方を教え込まれていたが、関東暮らしのほうが長いが、生まれは九州の黒江にもその遺伝子が受け継がれている。スイッチが入ると、直接戦闘では敵味方ともに震えあがる存在になる。(ちなみに、調にもその気質が受け継がれてしまったとか)
『貴様らの首はいらん!命だけ置いてけ!!』
必要上、プリキュアの姿を取っているが、今している事は完全に『妖怪首おいてけ』である。タイ捨流、飛天御剣流、示現流などの術を組み合わせた動きで戦場を疾駆する。目は完全に『イッている』と分かる見開いた瞳をしており、甲冑組討など織り交ぜ、相手を捻じ伏せる。
「……嘘……」
歴戦の勇士であるキュアブラックもとうとう、『ありえない』すら言えないほどの衝撃であった。
「ねぇ、あれ、なんて言えばいいの…?」
「何かの本で見た島津家の武将みたいです……。なんだか恐ろしいです…」
「ドリーム、どうしてそんな事をするの!?」
「コイツらは脳みそまで改造されて、人間が残ってない戦闘生物機械だ!死んでるのに死に切れて無い哀れな魍魎よ、引導をキッチリ渡してやらなきゃうかばれねぇ。せめての慈悲だ、一撃で成仏させたほうが幸せだ、ブルーム、ブラック、ブロッサム」
キュアブロッサム(後に、アリシア・テスタロッサに転生する彼女ではない)は狂奔モードになったが故に完全に『妖怪首おいてけ』になったドリーム(黒江)の修羅と化した剣技とその戦いぶりに身震いする。デーモン族も百鬼兵、再生怪人も一気呵成に薙ぎ倒すからだ。もちろん、のぞみ本人とはファイトスタイルなどがまったく別であったり、のぞみ本来の能力からはかけ離れた攻撃的な思考、荒い言動から、当時のブルーチームのメンバーの多くは黒江達の簡単な説明だけで事のあらましを悟っていたし、それ以外のチームのメンバーでも、のぞみやラブと近しい者は合点がいっていた。事変経験者をして『戦場を蹂躙していた』と言わしめるほどの凄まじきものを出現させた黒江の修羅ぶりの勢いは凄まじかった。だが…。
「ふふふ……そこまでだ、小娘」
「テメーは……ブラック将軍!!生き返っていたのか!ダブルライダーに倒されたって聞いたが?」
「改造人間は死なん!破損箇所を直せば、生き返れるのだよ」
「バダンお得意の時空魔方陣で生き返ったかと思ったが、レストアか。元・ロシア帝国の将軍で侯爵だったお前さんにしてはセコいな?」
プリキュアオールスターズ+αの前に現れたのは、かつてのゲルショッカー大幹部『ブラック将軍/ヒルカメレオン』だった。生前はロマノフ朝時代のロシア陸軍将軍であった男である。
「大事に使ってると言って欲しいものだな。私は地獄大使などという、おっちょこちょいの成り上がりとはわけが違うのだよ、私は代々、将軍を輩出してきた家柄だったのからな」
地獄大使をおっちょこちょいと小馬鹿にするという意外な面を見せたブラック将軍。地獄大使は従兄弟の暗闇大使と共に元は若くしてアルカトラズ刑務所に収監されていた囚人かつ孤児の出で、東南アジア圏でゲリラ軍の指揮官として名を挙げた成り上がりであるため、構成メンバーに元・軍人が多いバダンでは第二次世界大戦の経験者でもないために苦労人であった。その最古参のブラック将軍は軍人出身者でも経験が豊富であるほうであるので、地獄大使を見下していたのである。
「一文字さんから聞いたぞ。テメェはヒルの改造人間だそうだな?怪人を再生させるために、いったい何人の血を吸い取った!?」
「ふふ、フハハ…。愚問だな。そのようなことなど些細なものだ。かの方の欲しられるものに比べればな」
ブラック将軍は再生怪人を蘇すため、この地に来ていた人間達を手にかけた事を示唆する。
「まさか、遊園地に来てた人達を!?」
「そうだ。理性なき怪人なら、いくらでも生み出せるのでな。獣性を使えば、立派に使えるのだよ」
神経質な彼らしく、口の端を引きつらせつつも不敵に振る舞うブラック将軍。キュアブロッサムはお馴染みのキメ台詞で返そうとするが、またも乱入者が現れ、その機会を逸した。
「なっ!?あ、あれは!?」
ドリーム(黒江)、ピーチ(智子)も驚きの乱入者とは。
「貴様は……!」
「ブフォ!?」
オートバイを走らせ、怪人軍団に突進する一人の青年。黒江は思わず吹き出す。その青年こそ、昭和ライダーの系譜を継ぐ12番目(13番目とも)の改造戦士。その名も。
「貴様は……麻生勝!!『仮面ライダーZO』!?馬鹿な、どうやってこの世界に!」
ブラック将軍も驚きのその人物は麻生勝。RX/光太郎にできた後輩の一人である。当然、黒江たちとも面識がある。彼はオートバイに跨ったままでZOへ変身し、その勇姿を現す。
『仮面ライダー……ZO!!』
Zブリンガーを華麗にストップさせ、仮面ライダーおなじみの名乗りを上げるZO。Zブリンガーを華麗にストップさせ、仮面ライダーおなじみの名乗りを上げるZO。RX以前の仮面ライダーよりも更に生物的な姿であり、仮面ライダーBLACKに通ずるものがある。これは彼を改造した『望月博士』はゴルゴムの残党であるからだ。ゴルゴム時代に得ていた仮面ライダーブラック(ブラックサン)のデータをもとにしてZOを設計したためで、彼はRX/南光太郎と意外なところで繋がりがあると言える。
「ZOさん、どうしてここに!?」
「ディケイドから連絡を受けたんだ。まずは俺が送り込まれたわけだ。俺は新参者なんでね」
「へ…、知り合い!?」
「説明は後!ZOさん、どういうことですか?」
「すぐに分かるよ」
「え?」
ピーチ(智子)が首を傾げると、ZOに続いて、一人の青年がやってきた。今度は二人にはお馴染みの人物である。
「光太郎さんっ!」
「すまない。マシンの整備に手間取ってね」
南光太郎である。ピーチが名前呼びで破顔したため、薄々と『分かっていて』も、かなりの衝撃的な光景なフレッシュプリキュアチーム。
「ムゥ…南光太郎!貴様もか!!」
「ブラック将軍、貴様の事は先輩達から聞いている!この世界を闇に包もうなど、この俺が許さん!!」
小気味いい啖呵を切り、光太郎はおなじみの変身ポーズを決め、RXへ変身する。まさに理想的なスーパーヒーローの登場そのものであった。
『俺は太陽の子!!仮面ライダーBLACK RX!!ブラック将軍、人々の心に光がある限り、希望は必ず蘇る!!貴様らのような邪な者を倒すために!!』
バシッと決め、ZOと共にプリキュアオールスターズを守護するかのように立ち塞がる。まさに日本が世界に誇るスーパーヒーローの登場であった。
「ええい、野比のび太とディケイドの差し金か!!」
「そうだ!ある一人の少女の願いが彼らを動かし、俺たちに情報が伝えられた!この子らをこれ以上傷つける事は俺たちが許さん!!」
RXの小気味いいくらいの啖呵はブラック将軍を思いっきり悔しがらせた。これ以上ない頼もしい味方の劇的な登場に大喜びの黒江と智子。ブラック将軍はこの劇的な援軍にのび太が関わっている事を明確に口にし、大いに悔しがる。黒江は自分がのぞみと『別人』である事を暗示するかのように、示現流とタイ捨流を混ぜ合わせた独特の構えを取り、狂奔のスイッチを入れ、戦った。
「何がどうなってるの……?」
キュアブラックはあまりの衝撃に固まる。突撃したドリームの表情が見たことがないほど『戦闘に愉悦を感じ、高揚していた』からだ。しかも薄ら笑いさえ浮かべている。キュアブラックは怯えてしまう。
「あの子のいつものクセが出たな。まぁ、緊急時だ。止める必要はないか」
救援にやってきたRXとZOも苦笑いである。
「あなたたちは知ってるんですか、今、ドリームに『なってる』子の事を」
「それが…」
「俺たちもどこから説明すればいいのかわからん。だが、あの子は強い。それだけは言える」
RX/光太郎をして、この一言である。キュアブライトとキュアウィンディはこの時にRXから話を聞いた事で、黒江の話が本当であると確信に至った。そして、救援にやってきた次世代のプリキュアの一人であるキュアエースも動く。
「この戦いはもはや、あなた方の手を離れています。ここでブロッサムとマリンがやられれば、プリキュアの未来と因果に悪影響が生ずるは必定。二人を下がらせてくださいな、ブライト、ウィンディ」
キュアエースは現役時代初期は五分間の変身時間制限があったが、パワーアップを重ね、転生もした後であるので、現在は変身時間に制限はない。そのさらなる転生先はなのはの親友『アリサ・バニングス』であった。もちろん、なのはと同年齢なので、既に成人済みだが、子供に若返っての変身でキュアエースとなるなど、一種のこだわりを持つ。また、彼女の魂魄にある『別個体の記憶』の中に『どこぞの炎髪灼眼の討ち手』の記憶があったためか、この時点ではその記憶を生かした戦闘に切り替えている。現役時代と違い、備前長船と思われる刀をメインウェポンにしていたり、炎の翼を展開可能だったり、転生の影響か、現役時代より炎髪灼眼の色合いが濃くなっていたりする。
「彼らはこの世に存在してはならない存在ですわ。彼らを討滅するために、私達はこの戦いに介入したのです」
エースは精神面が成人になっていたり、別個体の記憶を見た影響か、現役時代より苛烈な物言いをしている。また、刀に炎を纏わせているなど、『赤のプリキュア』の正統な後継者である事も示している。
「その通りよ。悪いけど、手加減はしていられないのよね」
キュアビートもここで思いっきり物騒な代物を構えていた。人間が扱えるサイズにまでダウンサイジングした、フルアーマードサンダーボルト専用の大型ガンポッドである。元が対艦用の代物であるため、通常の人間には扱えないが、転生先がメルトランディであり、更にプリキュア化のブーストがかかっている状態ならば扱えると、黒川エレンは持ち出したのだ。
「ち、ちょ、ビート!お前、なんつーあぶねー代物持ち出しやがった!?そのガンポッド、ダウンサイジング試作したはいいけど、普通の人間には…」
狼狽えるキュアメロディ。彼女をして狼狽えるほどに危ない代物なのがよく分かる。ややあって、そのガンポッドが甲高い作動音と発砲音を響かせながら、百鬼帝国の兵士たちへ放たれた。人に撃つにはオーバーな代物である。
「わひゃあ!?何あれ!?」
「はーい。子供には刺激が強いから、見ないようにねー」
ハニーが主に黄のプリキュアなどに発砲の様子を見ないように促しつつ、刺激に特に弱いと思われるシャイニールミナスに見せないよう目隠しをしてやった。子供には見せられないスプラッタな光景だからだ。
「こりゃ、ガキ共は肉が当分は食えねーだろうなぁ…」
メロディも絶句するスプラッタな光景だった。人体を軽く粉砕可能な重火器、それもギガストリーマーやパイルトルネードも凌ぐ威力の『対艦用ガンポッド』を撃ったのだから、結果は推して知るべしである。
「すごいですね、あのガンポッド…」
「試作はされたが、パワードスーツ着ても扱い切れないってんで、お蔵入りしてた代物だ。ビートのヤツ、今はメルトランディだからって、アレを持ち出す事ねーだろ…」
思い切り引いているキュアメロディ。フェリーチェも冷や汗をかいている。それほどに物騒な代物を持ち出したかがよく分かるというものだ。
「どうします?」
「あいつがアレなら、あたしもアレを使う。……隊長、あたしだけど、紅蓮をエンジンかけた状態で打ち出してくれ。空中で飛び乗る!」
と、通信をかける。ややあって、ラ級戦艦『轟天』からダイ・アナザー・デイで使った『紅蓮聖天八極式改』(仮称)が打ち出され、メロディは空中で飛び乗る。可翔式以前の型でなく、紅蓮系最終型の特式でもなく、聖天八極式を改良したのは、性能と燃費の両立の観点からだ。MSやモビルアーマーに対抗できるだけの輻射波動の出力があり、なおかつスピードもあるからで、そこも熱核反応炉搭載の機動兵器が普遍的な世界においての紅蓮シリーズの運用上の理由であった。
「さあて、今までのお返しと行こうじゃないか?」
コクピットで微笑い、紅蓮系特有の操縦系(バイク型のインターフェースを持つ)で本領発揮と言わんばかりのキュアメロディ。キュアブラック達の目の前でエナジーウイングを展開し、その勇姿を誇示する。これにキュアブラック達はというと……
「へ……ぇ…!?そんなのありぃ!?」
この戦いでは、すっかり置いてけぼりなブラック。この戦いにおいては驚き役になってしまった感は否めず、コメントがそればかりになっている。
「あ、あの……どうなってるんですか、これ……」
「あとで教えるわ、レモネード。色々ややこしい話だから」
「それで済ましていいんですか…、えーと…」
「キュアマーメイドよ。説明が長くなりそうなのよ、この事は」
キュアレモネードが辛うじて、キュアマーメイドに質問を投げかけるが、マーメイドもそうとしか答えられない。そして、轟天でまた動きがあった。
――轟天 格納庫――
「出るわ。F91の調整は済んでいるわね?與子、後を頼む」
「ハッ、いってらっしゃい、お姉様」
武子は副官であり、かつての従卒であった檜少佐に艦の指揮を任せ、自身もガンダムF91で出撃した。量産型ではなく、ワンオフであるオリジナル機の同型機のアップデート型であった。カラーリングは武子のこだわりか、旧日本陸軍防空飛行隊のカラーリングで、肩に64Fの矢印を意匠化したデザインのエンブレムが描かれている。F91は試作機の段階で数機が製造されており、その内の一機が近代化改修の後に武子が配備を要請し、地球連邦軍の手でダイ・アナザー・デイ後に配備されたものだ。なお、量産型でなく、オリジナルの機体なのは、量産機はダイ・アナザー・デイ以後は個人に合わせてのチューンナップが流行り、ダイ・アナザー・デイから間もない時期には、64Fに回す余裕がなかったのである。部材単位のアップデートがなされているため、機体性能はシーブック機とシルエットガンダム改を上回る。なお、黒江が用いたツインヴェスバーパックが装着されており、ネオガンダム並の瞬間火力を誇る。武子は三次元空間把握能力を有した初期のウィッチであったが、それがニュータイプ能力へ昇華しており、F91のフルポテンシャルを発揮可能である。
「F91、出る!!」
武子は発進してなり、ビーム・サーベルでメカ一角鬼を横薙ぎで両断してみせる。F9シリーズのサーベルはνガンダム以上の出力を持つため、切断速度は早い。胸のVマークは無いため、保管されていた機体のレストア機であることがわかる。
『お、お武ちゃんが出たか。さて、こちらも本気を出すか。ダブルエンペラーブレード!』
それに気づいたマジンエンペラーGと鉄也も本気を出し、30m級のマシンながら、目にも留まらぬ剣技を見せた。甲児とゴッドも続く。
『ゴッドサンダー!!』
サンダーブレークの系統だが、雷を発生させ、広域放射で焼き払う範囲攻撃である『ゴッドサンダー』。サンダーブレーク以上の威力と高精度誘導を広域放射で実現するには、高性能管制装置が必要であり、グレートマジンガーの開発段階では不可能とされ、妥協された機能である。構想自体はマジンガーZの強化を念頭においたグレートマジンガーの基礎設計段階で存在し、存命中の十蔵も搭載を所望した武器であった。サンダーブレークは技術的には『紫外線レーザーによるイオン化した空気を媒質にして電撃を誘導する』もので、グレートマジンガーの指先にはそのレーザー発振器が内蔵されている。妥協の産物だが、スペースサンダーに匹敵しうる威力はあった。その改良発展武装という形で日の目を見たのがゴッドサンダーだ。ゴッドサンダーは面制圧用武装であり、『手を広げて振り下ろすと、五本の指先から雷がほぼ面で流れ出す』もので、また、Z神が神話で用いた『サンダースピア』、『サンダーブレード』を面制圧の形で実現したものであり、Z神の力の再現という意味では到達点と言える。
「あの魔神はどんな力を持つっていうの!?」
「あれは人の手で造られた機械仕掛けの神と言いましたよ、パッション」
「わかってるわよ、それは!だけど、あんなもの、普通に世界を滅ぼせるじゃない!?」
「世界は無理ですね、惑星一つ完全破壊して原子のチリにするくらいかしら?」
「ま、単体じゃな。だが、それが最高位のスーパーロボットたる所以だ。だが、敵は底なしの物量だ。ちっとは楽にしてあげんと」
黒江が言う。隠す意味がなくなったため、口調は普段のものに戻していた。ドリームの姿と声で言うので、ギャップがあるが、説得力はあった。
「そうだな。兜甲児と剣鉄也の援護は俺が引き受ける。お前達はゲッターチームにお守りを頼んである」
「サンキュー、デビルマン」
「いいってことよ」
デビルマンはそれだけ言って戦闘を開始する。姿と能力は『TVアニメ』のそれ寄りだが、デーモン族の勇者アモンを不動明が融合し、意識を乗っ取った形であるため、実質は『デーモン族としての知識を得た不動明』といえる。アモンは地獄の野獣と怖れられた獰猛なデーモンだが、自分より上位の力がある者には、途端に卑屈になる臆病な一面があり、上役で同族の『妖獣ゴッド』に物笑いの種にされていたという。とはいうものの、アモンはデーモン族の長『悪魔王ゼノン』の親衛隊に選抜されていたほどの強さは備えていたため、元から高位のデーモンであるのは確かだ。
「RXさん、ZOさん、ガキどものお守り頼んます!」
「任せろ!」
「行け!後ろは気にするな!」
と、黒江が突撃をかけようとしたが、そこでブライ大帝がウザーラから哄笑しつつ言い放った。
『威勢のいいことだ。だが、君たちの存在そのものがこの物語を壊している。そう思わんかね?』
ブライ大帝はこの『物語』は本来、『プリキュアオールスターズDX2 希望の光☆レインボージュエルを守れ!』であったが、それを黒江達が壊している事を哄笑しながら指摘する。ある意味では図星であった。だが、ある意味、自分達が関わった事で世界線は派生を生み出している。
「その言葉、そっくりそのまま返させてもらう」
『貴様、門矢士!!この世界に来ていたのか!』
「ブライ大帝、お前のやり口は気に入らん。それに物語を壊すというなら、いっその事、全てを破壊して、その上で新しい物語を紡げばいいだけだ」
「士、お前……」
「子供たちの前だ。お前の事は黙っててやる」
「あ、あの…あなたは……」
キュアパイン、キュアホワイトが代表して、士にそう問いかける。士は珍しく微笑い返し、こう言った。
『通りすがりの仮面ライダーだ。よく覚えておけ。……変身ッ!!』
変身する士。パワーアップしたか、ディケイドライバーがマゼンダ色になっており、フェリーチェを助ける際の鎧武との共闘でパワーアップしたらしき事を窺わせた。
「ブライ大帝、貴方には下準備が足りない、段取りが足りない、何よりも情熱が全く足りない!そんな貴方の計画が思い通りに進むとは思わない事ね!」
キュアビートがここでどこかで聞いたようなニュアンスの啖呵を切る。ラブギターロッドを打ち鳴らしながら。メルトランディとして転生を遂げた影響か、好戦性が生前より強い。
「おい、ビート。珍しいな、お前が啖呵きるたぁ…」
「いいじゃない。たまには。いつもメロディたちにやられてるし、今回はね」
『ハハハ…小娘共、いくらRX、ZO、ディケイドを味方につけても、この大軍団を前にして戦い抜けるかな!!』
「何!?どういうことだ、あしゅら男爵!!」
『見よ!!』
空からは機械獣、戦闘獣、百鬼メカ、それと有翼のデーモン族が、陸にはショッカー、ゲルショッカー、ネオショッカーの三代の『ショッカー怪人』全員の軍団が現れた。そして、それを率いるは。
『フハハ……見たかプリキュアとライダー共、バダンの技術陣が作り出した改造人間三世部隊だ!』
「テメーはマシーン大元帥!」
改造人間三世部隊。再生怪人はスペックをすべてライダーに把握されているため、一撃で倒される事も珍しくない。それを物量で補うという方向でネオショッカー時代に存在した『改造人間二世部隊』。その後継にあたるため、『三世部隊』なのだ。
「如何に貴様らとて、子供らを守りながら、大軍団を相手に戦い抜けるかな」
「死神博士!貴様も黄泉帰っていたのか!」
「かの方が私を必要としたのだよ、キュアドリーム。フフフ……」
軍団を率いて現れたマシーン大元帥と死神博士。変に気が利くあたり、死神博士の倒錯した人間性が窺える。元来は愛する妹の蘇生を願ったはずが、ショッカーの大幹部にまで身を落とした日露混血の男の悲哀といえる。
「如何にお前らと言えど、たった三人で子供は守りきれまい!」
「そいつはどうかな?」
「何…?」
「お前らがそう出る事は予想していた。だから、こちらも切り札を切らせてもらう」
ディケイドは自身の『次元の境界を開く能力』を発動させ、自分達からある程度離れた空間に開く。その次の瞬間、ディケイドが武子らに轟天の『グラビティブラスト』と『波動砲』の使用を控えさせてまで用意した一手の証明が姿を現した。空にはジャガーバルカン、ゴーグルシーザー、マシンバッファロー、ターボランジャー、電子聖獣ドル、グランナスカ、バビロスの姿が、ディケイドらのもとには残りの昭和十大仮面ライダー達が愛車の爆音高く、颯爽登場した。一号からZXまでの全員が隊列を組んで愛車で駆けつけたのである。
「ヌゥ……ディケイド、貴様……!!歴代の仮面ライダーを……!」
「言っただろう?切り札を切ると、な」
新サイクロンからヘルダイバーまでの十大ライダーマシンが陸上を駆け、怪人軍団とプリキュア達のちょうど中間点に陣取る。
『本郷猛、貴様、ディケイドの誘いに……!』
「生憎だったな、死神。確かに俺たち昭和ライダーと平成ライダーの間には相容れない点もあるが、人類の自由のために戦う心は同じだ!!」
「世界に邪な者が栄えた試しはない!観念しろ、死神!」
「おのれ、一文字隼人……またしても、私の計画を邪魔立てするか!」
「イエース!昔に言ったはずだぜ、死神。俺たちは貴様ら『歪んだ機械文明の破壊者だ』とな!」
二号の秀逸かつ、かつての戦いでの一幕に絡めた返し。隊列の先頭にスカイライダーのスカイターボが立ち、代表する形で『ライダーブレイク』を時速1200キロの高速で仕掛けた。要はスタイリッシュなひき逃げであるが。
『ライダァァブレーーク!』
スカイターボの車線上に立っていたショッカーの初期怪人の24体ほどが音速突撃に耐えられず、高周波振動による破砕効果の餌食になる。ヤモゲラス、サラセニアンが胴体まっ二つ、こうもり男はヤモゲラスの上半身が弾丸となり、激突して死亡するなど、悲惨極まりない光景が出現した。
『サイクローンアタック!!』
『ハリケーンラストダァッシュ!!』
『クルーザーアタァック!!』
他のライダーも最低でも250キロオーバーの高速でアタックする。ブースターでブーストを瞬間的にかけたライダーもおり、なんとも手段を選ばない攻撃で数十のショッカー怪人が粉砕、死亡していく。
「うわーお。すごいエグい攻撃すんなぁ」
「先輩たちも手段を選んではいられないということだよ」
「一発でショッカー怪人が20くらい死にましたよ」
「筑波先輩のマシンはライドロン並に速いからなぁ」
RXもこの一言である。ちなみに光太郎のマシンはライドロンを除くとロードセクターがもっとも速いが、オンロード仕様であるため、オフロード戦には向かない。
「え、スカイターボ、ロードセクターより上でした?」
「アクロバッターやロードセクターより上だよ、先輩のスカイターボは」
「速度はVジェットと双璧であの域になると地面蹴って走ってないからな」
「ZOさん」
「俺のZブリンガーも1000キロ代は出ると思うが、試したことがなくてな」
「エンジンは余裕ありますからね、あれ」
隊列を崩された怪人軍団は12人の仮面ライダーめがけ、一気に突撃を敢行する。長時間の戦闘で疲弊したプリキュアオールスターズ(DX2当時)は意思は旺盛なれど、体がついて行かない状態に陥り、スーパー化がミラクルライトの時間切れで次々と解けていく。
「そんな、こんなとこで時間切れ!?」
悲鳴をあげるプリキュア達。反動が体を一気に襲い、キュアブラックとキュアホワイトでさえ、身動きが取れなくなってしまう。
「ミラクルライトの代償なの、これは……体が言うことを聞かない……!?」
その場に倒れ込み、起き上がろうとするが、全身に力が入らないキュアアクア。他のプリキュアもほぼ例外なくスーパー化が解け、身動きがとれない状態に陥る。やはり、パワーの供給を一時でも絶たれたところをミラクルライトで補った代償は体力の喪失だったのである。何事にもリスクはつきものである証明であった。
「あの人たちや未来の後輩達に頼るなんて嫌だよ……あたしは……!」
「あたしたちだって…誰かの願いを背負ってるんだよ……こんなところで……」
ブラックとブライトは立ちあがろうとする。それはプリキュアとしての矜持もあるが、自分たちの想いの強さがそうさせていた。だが、ZOだけで複数のプリキュアをカバーはしきれない。そこを怪人軍団は突こうと動く。
「やめろ!今の君たちには戦う力は残ってはいない!」
止めようとするZO。だが、ブラックとブライトに触発され、他のプリキュアも次々と立ち上がろうとする。
『誰がなんて言っても、あたしたちは絶対に諦めない!!諦めるもんかぁ!!』
ブラックの思いの丈をぶつける叫びに応えたか、仮面ライダーに続く戦士がその勇姿を現した。
『その意気や良し!』
「そ、その声は!」
「マシーン大元帥、死神博士、この星を守っているのは仮面ライダーだけではないぞ!」
「貴様は!」
『太陽戦隊サンバルカン、バルイーグル!!』
威風堂々と名乗りをあげるバルイーグル。名乗りの際のポーズのクセから、二代目バルイーグルであることがわかる。(初代と二代目バルイーグルは名乗りのポーズに違いがある)これまた、これ以上なくカッコいい登場の仕方であった。
『大戦隊ゴーグルファイブ、ゴーグルレッド!』
『超獣戦隊ライブマン、レッドファルコン!!』
『光戦隊マスクマン、レッドマスク!!』
そして。それらレッドを束ねるのは…。
『ハハハ……お二人さん。私を忘れてもらっちゃ困るね』
『貴様、番場壮吉!!馬鹿な、貴様は磁石団長らが足止めしていたはずだ!?』
『あいにく、それは新命君だよ、マシーン大元帥。こんな事もあろうかと、思案を重ねたが……大成功のようだ』
『おのれ、この儂を図りおったな!』
熱り立つ大元帥。それを尻目に番場は変身し、ジャッカー電撃隊行動隊長としての真の姿を披露する。
『ジャッカー電撃隊行動隊長、ビッグワン!!』
「おお!!すげぇ……豪華だ、豪華すぎるぜ……!」
12人ライダーのみならず、スーパー戦隊も選抜されたレッド達をビッグワンが率い、戦場に駆けつけたのである。これには黒江も興奮気味である。更に。
「プリキュアの諸君!諸君の心意気は受け取った!後は我々に任せろ!!」
「ぬぅ…、貴様らもか!?」
『宇宙刑事ギャバン!』
『宇宙刑事シャイダー!!』
『時空戦士スピルバン!!』
三大メタルヒーローも参陣した。これで日本の誇る等身大スーパーヒーローの三大ジャンルを網羅した事になる。一言で言えば、ヒーロー史上空前の豪華な陣容である。ヒーロー史上に刻まれる豪華な陣容の援軍であった。プリキュア達は『世界を守るのは自分達だけでは無い』という嬉しさもあったが、ミラクルライトの代償ともいうべき体力の消耗で、ほぼ全員が戦闘不能状態となる予定外の状況はプリキュア達には痛手である。
「もう、あたしたちには戦う力はないの……!?」
「悔しいよ…。こんなたくさんの人達が助けに来てくれたのは嬉しいけど、この戦いはあたしたちの戦いなのに……」
自力でケリをつけられないという悔しさをブラックを筆頭に、二代のピンクが悔しさを顕にするが、実際問題、彼らの助け無しには、もはやどうにもならない事を悟っている者もいる。
「私達も戦わせてください!このまま、皆さんの足手まといのままでいたくないんです!未来の後輩にまで迷惑をかけるなんて、わたし…!」
「助けられるのは、恥でもなんでもねぇぞ、助けられるってのも、お前の力なんだからな、ブロッサム。いや、花咲つぼみ。それとマリン、来海えりか?」
「わたしの名前を知ってるんですか、ドリーム…?」
「え、あたしの名前をいつの間に!?」
「話は後だ。それに迷惑かけたのは、奴らをこんな所まで来させちまった俺らの方だ、気にすんな!」
黒江はここで荒っぽい素を垣間見せ、サムズアップする。プリキュア5の他のメンバーはこれで半信半疑であったことがが確信となった。だが、空気的にツッコミを入れるのは『野暮』であるので、ミルキィローズ含め、沈黙を守る。
「そうだよ、つぼみちゃん」
「あなたは…?」
「あたしは相田マナ。キュアハートだよ。つぼみちゃんの二期か三期くらい後輩だよ」
「え、に、二年か三年……後輩!?」
キュアハートがフォローに入る。歴代のピンクのプリキュア唯一無二の完璧超人と言えるのが相田マナである。歴代ピンク唯一の生徒会長経験者であり、スーパープリキュアとしても五指に入るレベルの戦闘力を持ち、生徒会長というアイデンティティを持つ点で、歴代の異端児扱いとされる唯一のピンクが彼女だ。スーパープリキュアとしては、薄いピンクのコスチューム、マント状のパーツの装着や翼の拡大など、思いっきり目立つ。その派手さは伊達ではなく、シャイニングドリームをも上回るスペックを持つ『第二期プリキュア最強のプリキュア』である。
「つぼみちゃん、あたし達を信じて。この時期はまだ、ミラクルライトを振る側の立場だったけど、あたしもプリキュアになった。だから、強くなれるよ、どこまでも」
「お前がプリキュアならな」
ハートとドリームの微笑みに感銘を受け、曇った表情を捨てるキュアブロッサム。
「だって貴女は可能性の『つぼみ』でしょ?」
「ピーチ……」
「それに、つぼみちゃんとえりかちゃんを敵にやらせたら、あの二人に会わせる顔がないしね」
キュアラブリーも同意する。
「お、おい、ラブリー。いいのか、それは…」
ブロッサムは決戦開始から抱いていた想いをドリーム(黒江)にぶつけたという。自分の未来の後輩というキュアラブリー、キュアハートがドリームの護衛として立派に戦い、更に二人が歴代ピンクで指折りの武闘派であったため、歴代のピンクでも秀でた能力がほとんどない上、先代であった自分の祖母は最高レベルのプリキュアで鳴らしていた事も知っていたためか、ドリーム(黒江)に劣等感を抱いたのだろう。
「ミラクルライトふってた中に混じってましたよ、あの二人」
「嘘ぉ!?」
「マジィ!?」
その報に流石に腰を抜かす黒江と智子。
「あのぉ、それって誰の…」
「そうだね、直に分かると思うよ、えりかちゃん」
とびっきりの笑顔を見せるラブリー。フォローも怠らない。そこで黒江もブラックとブライトに言う。
「ブラック、ブライト。素直になれよ。お前らは普段助ける側だろうから分からんだろうが、時には『助けられる』事も勇気のいることだぜ?」
「ドリーム、どういう事、それ!?それに……どうして、あなたとピーチだけが動けるの!?」
「ブラック、全て話すさ。野郎どもを地獄に送ったら、な」
黒江達はミラクルライトを介してのパワーアップではないため、皆に合わせて通常フォームに戻しても、戦闘能力の差は生じない。また、この時代に生まれていないはずのプリキュア達はパワーアップの依代が別であったり、本来はまだプリキュアとしては存在しないはずの時間軸にいるため、パワーダウンの対象外である。
「景気よく、一発ぶち込みまっせ!」
ドリームの姿は借りていても、戦闘で全力は出す黒江は、御坂美琴の同位体の記憶を得て覚醒したグンドュラ・ラルと同じように、光子力研究所から横流しされた『鉄をジャパニウムでコーティングした記念コイン』をどこからか取り出し、『超電磁砲』を撃ち、それを反撃の狼煙とする。(本来は新光子力研究所完成の暁に関係者へ配布予定だったもの。だが、ジャパニウムの大規模採掘に富士山を掘る必要が生じたため、住民投票で新研究所の建設はキャンセルされ、コインだけが宙に浮いてしまった。また、光子力を原子力の代替エネルギーにする計画もマジンガーZERO対策の一環で最終的にキャンセルされたため、光子力の平和研究そのものが下火になりつつあった)その証として、戦場に一筋の閃光が奔った……。
「――今回はここまで(ヒーローが集結し、黒江が狼煙をあげるところ)なんですね?」
「ああ。圭子曰く、ここまでは書いたらしい。俺も笑ったが、あの戦いはマジで『物語』を壊したからな。ブロッサムやマリンには悪いことしたと思ってるよ」
「あの子達の初陣を乗っ取ったも同然でしたし」
「そうなんだよ。俺に相当に誹謗中傷が舞い込んだよ。物語を壊したって」
大決戦は本来ならば『プリキュアオールスターズDX2 希望の光☆レインボージュエルを守れ!』と記録されるべき戦いだったが、黒江たちやヒーロー達の介入の結果、『スーパーヒーロー大戦/決戦!守護聖竜ウザーラ!!』と言うべき状況になってしまった。スーパーロボット軍団の介入、スーパー戦隊メカや超次元戦闘母艦の投入も行われた結果論であるが。タイムテレビで撮影された写真にはグランナスカ、バビロス、電子聖獣ドルの姿もあり、メモに挟まれていた。なお、のび太はこの時に予てから用意していた機動兵器『強化型レイズナー』の投入を検討したが、管制OS『レイ』の調整が間に合わず、諦めている。この事は扶桑軍の公文書に載ったため、黒江に誹謗中傷がまたも舞い込む珍事になったが、ブロッサムとマリンを見殺しに出来ないための緊急避難であると説明がされている。なお、プリキュアやのび太の行動原理の一つは友情であるため、今回はことはが激怒し、ストナーサンシャインの使用を公言するほどに荒れたという。そもそもの経緯からして、『事故で飛ばされたら敵が居ますた、すいません、増援送って下せェ!!』だったからだ。なお、ことはは2020年には大学は出ていたが、家のマンション近くでマスメディアに捕まってインタビューを強要されたためと、誹謗中傷を聞かされ、激怒したからだ。アニメでは概ね無邪気だが、神の後継者として超然とした態度も取ることがあったが、実際は世俗じみていると分かったのもこのインタビューだ。
「はーちゃんがキレて、ストナーサンシャイン撃つって公言してさ。いやぁ、あれでイメージ変わったと思うぜ?」
「あの子、現役時代と性格変わってません?」
「20年近くはのび太んとこにいるからな。みらいとリコもびっくりだぜ。大学まで出たって聞いた時にゃ、みらいがひっくり返った」
ちなみに、そのインタビューの際に『「あんまり馬鹿な事言ってると御社の壁に貴方を貼り付けて、共々ストナーサンシャインで消し飛ばしますよ?』と顔は笑っても、目は笑っていないという高等テクニックで発言したのと、真ゲッターロボの必殺技の名をはっきり口に出したことから、『ゲッター線に汚染された』と評判となったが。元来、キュアフェリーチェは浄化のプリキュアであったため、それと相反する『ストナーサンシャイン』という単語は大きな話題となった。また、キュアドリームがデザリアム戦役で『真シャインスパーク』を撃った事と併せ、日本のネット掲示板では『なんてことだ……いったい…なにがなんだってんだ!!ウォォォォ!!!ゲッター!貴様らはいったい何を考えている!!きさまはいったい、プリキュアになにをやらせる気なんだ!!』という書き込みがあったり、『黒化はーちゃんキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!』という書き込みが現れ、当のことはを落ち込ませ、流竜馬を苦笑させたという。一部のプリキュアがゲッターロボの必殺技を撃てるようになっていた事はデザリアム戦役で周知の事実となったが、『なぎさとほのかと真の意味で並びだつためには、ゲッターに魅入られるしかないのか?』とする論調まで現れる始末だ。ちなみに、落ち込んだことは曰く、『黒くないもん…黒く……ゲッターにやらされてないもん、ゲッターにやってもらうんだもん……』とのことだが、ズレている感があるため、日向咲にさえ『はーちゃん……なんか論点ズレてるって』とツッコまれたのは言うまでもないが。
「それで、あの子、黒に敏感なんですね」
「ああ。ZEROの一件以降な。マジンガーZの二号機の手足のカラーを黒にするのを嫌がるほどだぜ。あ、ブラックグレートとブラゲについては言ってないけど」
ZEROを想起させるカラーリングが嫌いになったらしいが、ブラックグレートやブラックゲッターに文句はないので、『ZERO恐怖症』と黒江は考察している。
「それと、あの子。プライベートでもフェリーチェでいる事が増えましたけど、意味あるんですか?
「俺のカンだが、たぶん…、ZEROとの戦いの後遺症だな。大学生になると、フェリーチェの状態で大学に行くことも多かったからなー」
中学と高校では通常時の姿にセーラー服(のび太の街の最寄りの中学校と高校は古風な制服を策定している)なことはだが、大学に入った後はフェリーチェの姿でキャンパスライフを過ごす事が増えた。その時の模様は話題になったものだ。(ことはが大学生になったのは、のび太が大学四年の頃の2011年頃で、ちょうどアニメはスイートプリキュアが放映中の頃であった)
「良かったんですか?」
「2011年にもなれば、プリキュアも世の中に定着してきた頃で、メロディ達の現役時代にあたるだろ?その後輩が大学に行くってのは話題になったぜ?当時」
黒江は当時の町内新聞の記事をスクラップしていたのか、それをキュアアクアに見せる。載っていた写真は『大学生らしいカバンを下げて、普通に大学構内を歩くキュアフェリーチェ』で、傍から見るとシュールな構図だ。
「変身したままで大学生活……。なんだかシュールな感じが」
「あの年ははーちゃんが大学生になった以外に、俺も苦労したぜ。統括官になる前の年だったが、BIから離任予定だったから、あの日は芦屋基地に…」
「あの大震災の真っ只中に?」
「そうだ。2008年か2009年くらいに着任して、数年は在籍したんだ。教導群から離れた時に一本釣りされて」
黒江にとって2011年はブルーインパルスから離任する予定だった年で、佐官として迎えた最後の年であった。その日は芦屋基地にいた。また、実戦経験者であることから、ブルーインパルス隊員でありながら大震災の真っ只中に関わることになり、その年は多忙を極めた。離任が先延ばしにされ、黒江は大震災の凄惨な現場を経験し、そこで貴重な経験を経て、翌年に震災での行動が評価され、統括準備室室長を経て、統括官となったわけだ。
「そんな時代だから、フェリーチェの変身姿での大学通いが容認されたってのもあるな。良い宣伝になるし、実物が通うってのは世の中の連中の思う以上に効果があるんだ」
のび太の世界のアニメに彼女自身が登場する際に『本好き』という設定が正式に付与された背景も『実物が史学科卒だから』という理由だったりするし、その大学の志願者数の倍増(?)という恩恵ももたらした。彼女が先駆者となった後、21世紀での外聞的都合でみらい、リコ、のぞみもその大学に通うことになり、プリキュア姿で2020年現在はそれぞれ違う学科(ただし、のぞみは前世での教育学部ではなく、今回は史学科に在籍)に在学中である。
「のぞみの奴、今回は教育学部じゃなくて、史学科を選んだけど。前世で商売の裏の面も見てきたから、今回は気楽に行きたいとかいって」
「教師は疲れますからねぇ…」
プリキュア達はダイ・アナザー・デイを終えた後、大学に行った方が良いとする空気が21世紀でできたため、年長組から行くことになった経緯がある。のぞみは扶桑でのゴタゴタで正式な教職につけなくなったことの兼ね合いもあり、ことはの後追いで史学科を専攻する事を選んだ。
「この国でのゴタゴタのせいでもあるけどな。それで史学科にシフトチェンジしたんだと」
ちなみに、みらいは元の世界での専攻と同様の学科に、リコは元々が魔法世界の住民だったために語学関連の学科に在籍している。その大学がかなりのマンモス校である証でもあるが、気風が柔軟なため、比較的最近の時代にできた大学であるのが分かる。
「のび太の街からちょっと遠いが、一時間半くらいもあれば行ける距離の大学だったな。のび太が30くらいの時代だと、人気校になってるよ」
「そ、そうですか」
「その大学、文学科もあったから、こまち……キュアミントに薦めてみるつもりだ。ハニーもそうさせたいらしいし」
秋元こまち/キュアミントは来訪後、実姉の過去生を持つ如月ハニーの邸宅に下宿している。こまちはなおも小説家志望の夢は諦めておらず、圭子に弟子入りを志願するなど、意外に肝が据わっていると評価されている。
「こまちは小説家になりたいって常々言ってますし、元の世界では皆に作品を見せてました。いいと思いますよ。だけど……まさか、まどかさんがキューティーハニーに……」
「次元世界の不思議だよ、そこは」
キュアアクアにしてみれば、親友の姉がスーパーヒロインに転生していて、メタ的に言えば、プリキュアの大先輩にあたる事は未だに現実感がないらしく、ため息を漏らす。また、こまち自身も無鉄砲でおっちょこちょいだったはずの姉が『決める時は決める』カッコいい系のスーパーヒロインとなっていたことは驚きそのもので、大決戦の時には珍しく素で一番に取り乱していた。
「平行世界のくるみと会ったことも驚きでしたよ。まさか…歴女になってたなんて…」
「たぶん、あいつ。あの世界で最初に記憶戻ったプリキュアだぞ。レモネードはタイミングズレて覚醒めたそうだし。くるみ曰く、あの子に興味なさそうにされた事がショックだったそうな?」
島田愛里寿に興味なさそうにされた事にミルキィローズが落ち込んでいたと、キュアレモネードから打電があったと言う黒江。むしろ、幼少期に見ていたと言う、大学選抜チームの面々のほうが食いつきが良かったと、キュアロゼッタ(西住みほ)の談。その時に大学選抜チームの三羽烏に『どうしてピンクがキュアハートしかいないのよ!?』と言われ、キュアハートは『それはあたしにはなんとも……』と半泣きで返したという。(戦車道世界にはキュアハートしかピンクがいなかったため)
「戦車道の家元の子に聞くほうが間違ってる気が…」
「ロゼッタもそうだが?元の世界での姉なんて、一番のファンを自称しちゃって大変だって、ロゼッタからメールが来たぞ」
「あ、あはは……」
乾いた笑いを出すしかないキュアアクア。キュアロゼッタは西住みほが覚醒めたため、姉のまほがそれを聞きつけると、素のシスコンぶりが加速し、『一番のファン』を自称する珍事が発生したという。(なお、後輩もプリキュアになったため、板挟みらしい)なお、キュアレモネードはサンダース大付属のリーダーの『ケイ』に知られると盛大に祝われたという。NO.1とNo.2がプリキュアに覚醒めたプラウダ高校に至っては『ウラーーーーー!!』なる学園艦が揺れるほどの歓声が挙がったという。黒江の言うように、西住まほはどこの世界でもシスコン資質があるらしく、『そうだ!プリキュアはみんな仲間なんだから誰とは言わず皆、妹の様に愛そう!』と公言し、キュアピースであるカチューシャにハリセンで『何を恥ずかしい事言ってんのよ!!』と叩かれたという。
「くるみ、楽しそうで良かったわ」
「試合が終わったら、ここにくるってさ。お前、相当に慕われてないか?お前を心配してたが」
「前にあの子が病気になった時……その頃はまだ人間態を取れなかったけれど、看病した事があって。それ以来、懐かれてるんです」
「なるほどなー」
「アタタタ……。あれ、先輩?」
「お前ら。また殴り合いしたのか?」
「いえ、今度は伯爵を撃退するのに一苦労で……」
「伯爵、お前らに目をつけたのか…」
ズタボロになって医務室に入ってきたドリームとブライト。『伯爵に目をつけられ、撃退するのに相当に苦労した』という。伯爵とは、64Fでは『ヴァルトルート・クルピンスキー大尉』を指す単語である。彼女はカールスラント切っての勇猛果敢、敢闘精神に溢れるエースだが、百合の毛があり、今度はプリキュアに目をつけた事が語られ、ドリームとブライトがタッグを組んで空戦を行ったが、凄まじい根性であり、ドリームが草薙流古武術の奥義『天叢雲』を放った後、『プリキュア・スパイラルスタースプラッシュ』を二人で放つことでようやく撃墜に成功したとボヤいた。
「伯爵め。どこの世界でも百合だが、ここの世界のあいつはプリキュアに手を出しやがったのか。こりねーやつだぜ」
「あたしとドリームが束になって互角って、どういうことですか?」
「あいつ、カールスラントのトップ20以内のエースだもん」
スイッチが入った伯爵は空戦に慣れた二人のプリキュアと単騎でタメを張れるという強さで、ロスマン曰く『伯爵は可愛い女子を見ると、スイッチが入るんじゃい』(ダイ・アナザー・デイ途中で『紫電改のマキ世界に行っていた』名残りか、ダイ・アナザー・デイ後もスケバン口調のままである)とのこと。
「今度、ロスマン先生に撃退法聞いてくださいよ」
「伯爵は後で裸踊りさせる。それとあいつ、アニメのこと言われるのに嫌気が差してるから、あの格好の上から学ラン羽織って、口調も直してないぞ。ま、ひかりと接点がないのに、アニメの事はコメントできんからな」
ロスマンはこの世界では、ひかりと接点がない。また、菅野も孝美とは『同期』であり、『崇拝の対象』ではないが、菅野は特に苦労している。
「あー…、直枝、それで同位体と揉めたんだ」
「当たり前だ。こっちの菅野にとっては孝美はあくまで『同期の桜』だが、向こうの管野は孝美を崇拝してるからな。あいつもえらいもんに絡まれたな」
菅野は同位体と取っ組み合いをしたが、した理由が前世の黒江自身のような理由であることにげんなりの黒江だが、しかも向こうがキレたため、今回の菅野は被害者である。
「世界線が違えば性別だって変わるでしょ、立ち位置が違うくらい、どうこう言う話じゃないわわよ」
「智子か」
「孝美だって、お互いに困ってたわ。ひかりの扱いとか、自分がアクイラの聖闘士になってることとか」
「今回は準備しといてよかったな。割に目立った混乱がなくて」
「セラには私が報告しとくわ。あの子、ケイの小学校の後輩みたいでね」
「やっと気が抜けるな」
この時期の隊長代理は広瀬大佐で、圭子の小学校時代の後輩であった事から、既に中央から離反し、自分を『セイレーンの魔女』と豪語し、A-4などを乗りこなしている。彼女の父親は紅海方面に展開していた航空軍の司令官であった少将であったが、彼女が本土に召喚された次の日に中央の無茶な対ティターンズ基地爆撃作戦の尻ぬぐいを命じられ、乗機である司令部偵察機をセイバーフィッシュに敢えなく粉砕され、戦死したが、彼女に知らされたのは数ヶ月も後のことだった。それで中央司令部に不信を抱いた彼女は同期の黒田に連絡を取り、表向きは隊長代理への志願という体裁で64へ赴任したのだ。
「あの人、黒田先輩の同期なんですか?」
「奴曰く、紅海で撃墜数を争った仲だそうだ。A-4とマルヨンに志願する、見どころのあるガキだよ」
黒江もこの頃になると、彼女に信を置いている事が分かる。明樂大佐までの前任者が『プロペラのない飛行機は信用ならん』と公言する昔気質であったため、志願してジェット戦闘機であるマルヨン(F-104)に乗った彼女の事は信用したようである。また、彼女の任期は半年とされ、それがさらなる後任の宮部大佐の派遣の理由だが、彼女も中央から離反したため、広瀬大佐の着任を以て『中央の意図は崩壊した』と言える。この二人は信用を得たため、任期をすぎる頃までに64F最高機密である未来機材を知ったためもあり、口外をさせないという名目のもと、武子復帰後に書類通りに中隊長になる。以後はそのポストに留められたが、実質の幹部と扱われ、1949年以降の64Fの屋台骨を支える逸材に成長していく。(武子の怪我は実のところ、広瀬大佐の着任時には治る目処は立っていたが、リハビリが長引いたのである。それと、武子の持つ教導術を練度が低下した本土部隊に伝授させたい中央の思惑もあった)
「隊長の怪我は?」
「ああ。だいぶよくなったらしい。あと数週間でギブスが取れるそうだ。だが、リハビリで当分は戻れんそうだ」
「そっかぁ…」
「あいつの機体の不具合、メーカーも予期しなかった不具合でな。困惑してた。俺も長くウィッチだが、あんなバランスの崩しかたは……」
武子は怪我をする日にはキ84ストライカーを教導のために履いていた。だが、着陸する時に黒江や智子でも予想だにしない機体とエンジンの複合トラブルに見舞われ、滑走路で宙返りをしてしまった。その際にストライカーから投げ出され、大怪我を負ってしまった。智子は大パニックになって泣き出し、黒江も顔面蒼白に陥った。G化後であったのが救いだが、そうでなければ死んでいたほどの投げ出され方だった。
「どんな不具合だったんですか?」
「あの機体を作った工場の個体特有の現象らしい。メーカーの技術者でさえ、ありえないと口を揃えてた。ったく、下請けの工場ってやつは…』
愚痴る黒江。その時は怒り心頭で長島飛行機に問い合わせたが、糸川博士をして『馬鹿な!?』と言わしめるほど突飛なトラブルであった。整備兵を問いただしても『最高の部材で整備してあったはずです』と困惑するだけ。扶桑最高の英雄の一人が大怪我を負ったという情報に狼狽えた空軍は直ちに調査を部隊とメーカーに命令。製造元の長島飛行機の威信をかけての全工場の抜き打ち検査により、ある工場の工程ミスとその工場の問題が浮上した。なんと、下請けのマ45(誉)の製造工場(長島の下請けの末端)の工程ミス、その原因となった工員への納入数厳守の厳命、作った工員が勤労奉仕出身の中学生だったこと、スロットルと自動調整チョークが連動してしまい、燃料が濃くなる欠点があったのだ。元々、誉にはベンチテストで特定の速度でスロットル操作をすると、それが出やすくなる特徴が発見されていた。だが、よほどの低確率でしか起きないし、通常は起きないと見なされ、対策はなんらされていなかった。皮肉にも、武子の着陸時に行った操作がその『特定の操作』と一致してしまう偶然が起こり、機体設計ではありえないはずの動作が起こった。突発的であったため、歴戦の勇士である武子もなんら対処できなかったのである。また、事故機のストライカーには、ウィッチの操作リンクに関連する重要部品のストライカーへの取り付けにミスがあったこともわかり、長島飛行機はキ84ストライカーを普及させる好機をまたも逃してしまう。これ以降はジェットストライカーが『T-33』などとして、練習機分野にも次々と現れていくため、この時代が本当に最後の機会となった。つまり、ストライカーとしての疾風はキ100に呑まれて消えゆく影にしかなり得なかったのだ…。