――オールスターズ世界のプリキュア達の救援に参戦したヒーロー達は多種多様であり、日本三大等身大ヒーローのジャンルを網羅していたと言っても過言ではなかった。その中でも顕著な活躍を見せ、彼女たちの印象に残った仮面ライダー以外のヒーローはバルイーグル(太陽戦隊サンバルカン)、レッドファルコン(超獣戦隊ライブマン)、時空戦士スピルバン、宇宙刑事ギャバン、ビックワン(ジャッカー電撃隊)などのアクの強い面々であった。2020年頃、キュアアクアはそれをキュアドリームに伝えた――
「私が彼らに頼んだんですけど、そんな大事に?」
「ええ。こちらののぞみにそれを伝えたら、すごく複雑そうな表情だったわ。自分達でどうにもできなかった敵、別の世界のヒーロー達の存在、スーパーロボット……。なぎささんもそこを気にしていたわ」
「あたし達も、けして絶対無敵の存在じゃないし、りんちゃんのいた世界は戦死者も多く出る戦いがあったって言ってました。いいじゃないですか、ミラクルライト以外の手段で助けられても。ヒーローもヒロインも『一人じゃない』んだから。熱血最強くらいがあたしたちのポジションなんですよ」
キュアドリームはキュアルージュの故郷の世界で起こった『最終決戦』の存在を教える。大決戦のもう一つの形とも言うべき戦であり、りん曰く、そこから10年くらいは『生き残ったプリキュア達は力を失っていた』とのこと。
「その戦いに比べれば、いいほうですよ。誰も死なない、存在感が霞んだとは言え、あたし達の気概は敵味方に示せたんですから」
ドリームは黒江たちやスーパーロボット、スーパーヒーローの介入を肯定した。りんの生まれた世界の決戦に比べれば、遥かに『救いのある』展開となったと。実際、ハートキャッチが新人であった時代のオールスターズでは、守護聖龍ウザーラ、勇者ガラダブラを中心にした大軍団相手には力不足であり、更にバダンの大軍団相手の激戦は荷が重いと言わざるを得なかったからだ。ましてや、改造魔人相手では、その時点のプリキュアオールスターズが万全の状態であろうとも敗れ去っていたであろう事は想像に難くないからだ。
「先輩曰く、デルザー軍団の改造魔人は神の使徒だそうです。そいつら相手に気概を見せられただけでも御の字ですよ」
「私達が戦局に貢献したとはいい難かったし、最後は他力本願みたいな形になったから、なぎささんも、私達の世界ののぞみも複雑そうな顔をしてたわ。
「先輩も言ってたでしょう?自分達の敵を倒しただけだって。それに後輩たちとも共闘したんですよ?記憶が戻ったからには教えないと」
「そうね…。いつか機会があれば、ね」
アクア達は大決戦で共闘した後輩たちに関する記憶を一時的に喪失していた。これは後輩たちがプリキュアにならない未来が生ずるのを防ぐための帳尻合わせとも言える記憶の封印と言える状態であった。その状態は大決戦から何回か後のオールスターズ戦で解消しているが、黒江と入れ替わっていたのぞみの別個体、智子と入れ替わっていたラブの別個体にはその記憶は宿らなかったため、それが意識の差と劣等感に繋がった(特に、別の自分が裏方で戦局を左右する選択を取った事が知らされたのぞみ)のだ。また、別の自分が自らより圧倒的に強く、かれん達が追い詰められた敵と互角に戦える事も、アクアとミントにデザリアム戦役への参戦要請のために再訪したフェリーチェへの反発に繋がったのである。
「問題は貴方自身よ。美希とせつなもラブのことで頭を痛めてたけれど、こちらは貴方自身に記憶は宿ることはなかったから……」
「フェリーチェに、ボディランゲージでも構わないって言っときます。あたし自身もそうだったから分かります。一回、殴り合いして白黒つけないとわかんないもんですよ」
「あ、貴方ねぇ。自分自身をボコボコにしていいの?」
「こういう場合は自分同士で争ってでも、筋は通さないといけないんですよ。フェリーチェにはストナーサンシャインを撃っていいって伝えておきます」
「……」
アクアはドリームの思考が黒江達に染まってきていると実感し、苦笑いする。のび太も言うように、自分同士で争うことは珍しくもないことだからだ。(のび太とドラえもんはそのようなことの経験者である)
「ドラえもん君も自分同士で喧嘩になった事があるって言ってましたし、そういうもんですよ」
「そ、そういうものなの…?」
「自分同士でだって喧嘩しますよ。のび太くんもドラえもん君もそういう経験あるっていってましたから」(ドラえもんなど、『やろう、ぶっ殺してやる!!』と眠たいあまりに、自分に激怒した事がある)
「休暇も直に終わりますけど、ドラえもん君が今回は予め、兵器庫から回収したのをのび太くんに使わせるそうです。」
「兵器庫からって……」
「地球連邦軍も一年戦争の混乱で記録が散逸してるそうなんで、先輩達のいう前世の記憶と地球連邦の古い記録を突き合わせて発掘したそうです。それが今日に運び込まれた『パーフェクトガンダム』です」
「なんなの、その大仰な名前」
「一年戦争の時の発掘した記録によると、FSWS計画っていう初代ガンダムの改良計画で開発されていたけど、計算されてたカタログスペックは机上の数値で、実際は機体が重くなるんで、ビーム兵器の発達で切り捨てられた研究だそうです」
パーフェクトガンダムやフルアーマーガンダム、ヘビーガンダムはその計画で生み出されたが、一年戦争当時の技術レベルでは『RX-78以上の重装甲と高機動力』を両立できず、三号機『レッドウォーリア』を軽装型として開発した段階で打ち切られたという。(ニュータイプかトップエースを乗せないと、ガンダムタイプは真価を発揮しないという点もあった)だが、一年戦争とそこから間もない時期の地球連邦軍はRX-78を連邦のシンボルとして見ていた(エゥーゴ政権に交代後にその役目はMSZ-006に代替わりしたが)ために試作機はできており、それを回収し、アナハイム・エレクトロニクスが素体のRX-78に至るまで手を入れて近代化した個体である。つまり外見だけしか元が残らない改造が施されたのである。
「一年戦争から数年はセミモノコックか、モノコック構造で、連邦系はセミモノコック構造なんで、中身は相当に古いんです。23世紀だと、機体構造自体がフレーム構造に世代交代したんで、それに改造した上で、だそうです」
「それ、外見しか残ってないわよ?」
「MSは戦車や戦闘機、戦艦と違って、技術革新が早いですからね。古い機体を第一線で使おうと思ったら、作り変えに等しい手間をかける必要があるそうです」
連邦はジムⅡとジムⅢの経験から、ジェガンのような『マイナーチェンジで済ます機種』、ガンダムタイプのように『最新鋭部材で中身を作り変えるか、ガワだけが同じ外見の新造機』の二通りの方法を取る。パーフェクトガンダムの場合は後者の二つの方法の組み合わせが取られたという。
「のび太くん、誹謗中傷への対抗策として、自分も機動兵器に本格的に乗ることを考えてるんです。それで腕を鍛えるためにフルアーマー系のガンダムに乗るそうです」
「そこまでしなくても」
「期待されるのが昔の冒険みたいな活躍なら、仕方無しって奴ですよ。まったく……」
のび太はダイ・アナザー・デイからは機動兵器で戦うことも増えていく。Gウィッチが戦場を支配している一方、裏方に徹するのび太への誹謗中傷は絶えない。のび太が『主役の戦場でない』事への無理解も大きかった。
「ガンダムは基本的に重装甲(Zガンダム以降は高生存率にシフトした)と高火力、高機動力を兼ね備えた高性能機なんですよ。元は金をかけた試験機だったらしいんですが、いつしかフラッグシップ機になったとか」
「量産型と高級機の住み分けは分かるのだけど、露骨に差があるような……?」
「人型機動兵器の世界じゃ、そういうのはよくあるそうです。連邦は一年戦争でザクにボコボコにされたから、それをボコボコに出来る機体を金をかけて用意した。それが初代ガンダムだそうです。それ以降のMSは初代ガンダムの影響で生まれたようなものだそうで」
のび太が当座の乗機として手配したという『パーフェクトガンダム』の写真を手に取りながらも、キュアアクアに説明するキュアドリーム。『人型兵器の世界ではよくある』というように、ガンダム以外の機動兵器でも、グレードの絶対的階層が存在する。スーパーロボットでさえも格差があるため、リアルロボットでは尚更だ。
「その初代ガンダムの改良型とは言え、旧型をどうして?」
「いくらロンド・ベルでも、新型を短時間に多くはもらえないんですよ。旧型を改装するなら、予算が出やすいんですよ。たとえ、政府に影響力がある人の機体でも、ね」
のび太搭乗仕様パーフェクトガンダムは増加装甲部にIフィールドが搭載され、本体共々にガンダリウムε合金に装甲を換装されているなど、防御力主体の強化がなされている。前世では兵器庫で払い下げまでの保管がなされていたが、今回ではのび太がアナハイム・エレクトロニクスを動かして確保していたのだ。
「初代ガンダムって何機あったの?」
「フルアーマー計画に回された機体があるから、二桁はあったそうです。歴史で活躍したのは限られますけどね」
「戦艦と同じ火力をロボットに与えるなんてオーバースペックじゃ?」
「地球連邦軍の伝統ですから。ただし、連邦はアメリカ的な進化ですけどね」
「アメリカ的?」
「二次大戦の戦車の発達が由来だそうです。地球連邦軍はガンダムが頂点のヒエラルキーがあるんですが、他の組織や国のMSはどういうわけか、ドイツ風の進化を遂げていったそうなんで…」
兵器は第二次大戦中の米独の戦車の進化を後の世でそれに代わる兵器が主流になった後も説明に用いられる事がお馴染みだった。ジオンは気づいていないが、一年戦争以来、ジオンは史実枢軸国に似た兵器開発に走っては、歴代ガンダムに打倒されることを繰り返している。サザビーがνガンダムに敗れたように、結局は同じ失敗を繰り返しているため、地球連邦軍からは『バカの一つ覚え』と揶揄されている(スーパーロボットは軍主導のほうが少ない)。もっとも、連邦軍以外の地球圏の国家は人的資源の限界でそのような傾向が強いが……。
「いつの時代も似たような事は行ってるのね」
「そういうことです。私たちプリキュア以外にもヒーローやヒロインがたんまりいるのと同じですよ」
「あなたはどこであの強さを?」
「あたしは転生した先の肉体の人格を上書きするみたいな形なんで、その子が持っていた技能を引き継いだんです。だから、昔だったらありえないような技能も持ってます」
「つまり、別人に生まれ変わってたのが前世での人格に戻ったの?」
「そんな感じです。だから、現役時代はできなかった事ができるようになってるんです」
「不思議ね」
「別人の体が魂に合わせて姿を変えたようなもんですから。ただし、背は高くなってますけどね」
ドリームの身長は現役時代より高くなっているため、多少なりともプロポーションは良くなっている他、元が職業軍人である錦の肉体であるため、基礎能力値も上がっている。それでもダイ・アナザー・デイではボコボコにされまくりで、スーパーヒーロー達に救われる事もしょっちゅうである。歴代仮面ライダーはもちろん、歴代スーパー戦隊にも、である。スーパープリキュアであろうと、戦力の決定的差とはならないことの証明であった。
「シャイニングドリームに任意でなれるから、現役時代より強くなってるはずなんですけど、しょっちゅうボコボコにされてるんですよ。みゆきちゃんに治してもらってるんですけど、生傷絶えなくて」
「あの子に?あなたに輪をかけて……」
「転生した後は医者してますよ」
「嘘ぉ!?」
星空みゆきは歴代プリキュア(ピンク)でも、トップのドジであった。それが転生した後は医者である。さすがのキュアアクアも素っ頓狂な声を上げてしまう。
「おまけに、魔力はあたしより上ですよ」
プリキュア出身でウィッチへ転生した者の魔力は芳佳(星空みゆき)を頂点にしている。黒江達はむしろ、Gウィッチの中でも魔力値に関しては下位に属する。(だからこそ、早期にその他の力を身につけたのだ)
「……どうなってるの?」
「魔力と戦闘力は比例しないってことです、かれんさん。先輩達は魔力値自体は低い部類に入るけど、あたしより強かったでしょう?」
「言えてるわね……」
黒江達は魔力運用が巧みだが、魔力値そのものは坂本と大差ない。だが、その他の力と組み合わせることで強さを誇っている。黒江達はそれを差して『可能性』と称している。ミッドチルダ動乱でなのは達が認識したのもそれである。のぞみもそれを認識し、最近は草薙流古武術とプリキュアの力と魔力を組み合わせて戦い始め、戦績が改善され始めた。
「慣れてきましたね、変身しての生活」
「だいぶね。この街は不思議な街ね。私達が変身してうろついても、まったく気にも留めないんだから」
「みらいちゃんも驚いてますよ。ただ、みらいちゃんはリコちゃんがいないと変身できないんで、残念がってます」
「そういえば、リコとモフルンは向こうだったわね」
「おまけにみらいちゃん、ガンダムのテスト中で」
「みらいも大変ね……」
「ひょんなことから、テストを引き受ける事になったみたいです。キュアミラクルになりたいけど、当分はお預けだったぼやいてます」
「あの子たちが最後になるのよね、私達と現役時代に共闘した後発のプリキュアは」
「ええ。感覚が共有できるって意味じゃ」
「棘があるわね」
「はなちゃんとは前世にやりあいましたから。それで」
「なおから聞いたけれど、原因はジェネレーションギャップよ、おそらく」
「ですよねぇ。気にしてるんですよ、大人になってからは」
お互いのジェネレーションギャップが前世で問題になった事柄であるため、気にしているらしい。なのはも成人後はヴィヴィオを養子にしているため、地味に苦労している。
「つぼみの頃から変わり始めたけれど、それは必然よ。時代のね。後輩達が理解してくれるのを祈るしかないわ」
「年食ったなぁって思いますよ、時々」
「あの人達に比べればマシだと思うわ。あの人達は昭和どころか、大正生まれじゃない」
「先輩達は時代超えてますから、感覚が」
黒江達は大正生まれであるので、世代的にプリキュア達の曾祖母でいいくらいの差がある。それでいて、転生を重ねたためか、自分達と同時代の人間で通じるくらいの感覚を持つことが信じられないキュアアクア。令和を迎えようかという時期の日本で働きながら、1940年代相当の別世界で戦うGウィッチ達の多忙ぶりに感嘆としている。
「あなた達も忙しいわね。あと二週間もすれば、また戦場でしょう?」
「敵の隠し玉が怖いんで、あんまり長期は取れなかったんですよ。転生した先の世界なんて、つい一年半前にゼロ戦や隼が行き渡ったばかりなんですよ。それが紫電改や疾風、遂には朝鮮戦争のジェット機まで飛んでるんですよ。ミグが出てきても驚きませんよ」
ウィッチ世界は通常兵器の発展は後回しにされていたが、M動乱とティターンズとの戦いで一気に技術発展が加速。2000馬力エンジン搭載戦闘機、ジェット機まで一年くらいで行き着いてしまっている。地上空母出現の直前の時期には戦場に『F-84F』が現れ始めていたため、技術競争が資金難に喘ぐカールスラントを置き去りにし始めていた時期である。扶桑の軍事面でのカールスラント信仰が冷め、政治的にも扶桑と疎遠になり始めていたカールスラントにとっては技術発展の維持は死活問題だったが、ドイツの締め付けで戦前期の技術者の多くが流出し、軍事開発での主導権を喪失してしまうのである。(それがF-104採用の背景にある)それがダイ・アナザー・デイで起こった連合軍内部での勢力図の書き換えにまつわる出来事だ。扶桑は急激に生ずる兵器の需要に対応しきれず、現場では兵器の現地購入が相次いだ。ティーガー(ケーニッヒ含む)、センチュリオン、コンカラー戦車が大量に扶桑軍に流入したのはダイ・アナザー・デイ直前の『不要兵器の処分』施策によるものである。陸軍機甲本部はM動乱と併せて、それらに衝撃を受け、74式戦車、次いで10式戦車のライセンス生産に傾倒していく。扶桑軍への物資割当の全分野の優先度が日本側主導で下げられたため、自衛隊や米軍からの食料品や武器の融通などが行われたりしている。日本の警察関係勢力は扶桑軍の力を背景に自衛隊が増長することを異常に恐れており、扶桑軍を押さえつけようと躍起になっているが、ウィッチ世界での戦いの混乱を引き起こしたため、責任を軍部に押し付けようとしている。扶桑軍は自前での食料品確保も難しくなり、必要量を地球連邦軍から得ている始末であるため、自衛隊の備蓄品の提供が慌てて行われている始末だ。扶桑が核融合炉に主力艦艇の動力を切り替え始めたのも、その政治的都合が大きい。
「魔女が大きな顔してまかり通ってたら、近代兵器に踏み潰されていってる、か。錬金術が科学に否定されていった事さながらね」
「ま、あんまり驕ってるとしっぺ返しが来る典型ですよ。先輩なんて、その連続で、気がついたら聖闘士してたってやつですし」
「あなたがいる世界はどうなるのかしらね」
「太平洋戦争と冷戦でしょうね。歴史の帳尻合わせが行われているのなら、必然的に太平洋戦争と冷戦は起きますから。皮肉ですよ。連合軍の海軍力のシンボルは戦艦大和だし、陸軍のシンボル的将軍はエルヴィン・ロンメル将軍なんですから」
連合軍はリベリオンの分裂と内戦により、海軍力のシンボルを『ヨークタウン級航空母艦/エンタープライズ』から『大和型戦艦/大和』に切り替えざるを得なくなり、陸軍のプロパガンダにロンメルが多用されるようになった。敵がモンタナ級をプロパガンダしている都合、それを倒せる大和型戦艦をプロパガンダし返すのは当然の流れである。ロンメルも自らがドイツ連邦から疎んじられているのを承知でプロパガンダに協力している。皮肉めかした発言に、キュアアクア(水無月かれん)はのぞみの精神が素体になった少女の影響を受けている事を実感していた。
――連合軍の主導権が日本連邦の手に移り始めた時代、黒江達の後の世代の有力者が次々とMATに移籍していく中、後の戦いで64F幹部として名を上げる一人のウィッチが日本にいた。『広瀬沙羅』大佐。通称は母親からつけられた『セラ』で、この時期は日本への派遣任務についていた。黒田の陸士同期であり、紅海戦線で撃墜王を争った仲で、圭子の出身小学校での後輩にもあたる。エースとしての渾名は『セイレーンの魔女』。それもあり、後の64Fでも『セラ』と呼ばれるようになる。硫黄島の事件で日本に駐留する航空ウィッチ部隊の部隊長として任務についていた――
「あれ、お客さんだ」
キュアドリームがマンションのインターホンで応対すると、その彼女が挨拶にきていた。
「黒江閣下はおられるでしょうか?」
「あれ?あなた……紅海にいた『セラ』さん?大佐になったって聞いたけど…。先輩は自衛隊の仕事でいませんけど…?」
「ええ。広瀬沙羅です。この度、大佐昇進と日本へ着任したので、ご挨拶をと伺いましたが、職務でご不在でしたか」
「良ければ、先輩たちに言付けしましょうか」
「お願いいたします。それと、加東先輩に差し入れを持ってきたので、受け取ってもらえますか?」
「わかりました」
この会話が広瀬大佐が64Fに関わりを持つ最初のきっかけであった。黒田の戦友であったため、ダイ・アナザー・デイに際し、隊に招く案があったが、上層部の一部が先手を打ち、別部隊に着任させていた。上層部に誤算だったのは、この時に軍高官であった父が戦死しており、内心で不信を抱いていたことで、数年後に彼女が着任した後に64Fの空気をあっさりと受け入れられた事の背景であった。また、1945年時に中堅層に属する年齢でありながら、事変帰りの古参兵がひきめく64Fで瞬く間に頭角を現すほど、彼女の戦闘センスは優れていた。また、のぞみの肉体の素体になった錦の先輩であり、黒田の同期であったというポジションであったことから、武子復帰後は後任の宮部大佐共々に中隊長にスライドし、隊をそのまま支えていく。貴重な中堅世代だったからだ。
「では、よろしく」
「わかりました。わざわざご苦労さまです」
と、当たり障りなく接客するドリーム。まさかこの数年後に同僚になるとは夢にも思わないのであった。
「ふう。同郷の人でした。先輩たちに肉の差し入れだそうです、かれんさん」
「冷蔵庫の空きはどう?」
「入りますね。ノビスケ君が食べ盛りで容量が大きいの買ったとか言ってたのが功を奏してますね」
「あの年頃は食べ盛りだから。りんが前に愚痴ってたわ」
「どこでも、りんちゃんは兄弟姉妹に苦労するんですね」
「あなたも似たようなものよ?」
「言えてますね。」
ドリームは図星なのを苦笑いで誤魔化しつつ、差し入れを冷蔵庫にぶちこむ。変身した姿で普段の日常生活というのは、黒江がシンフォギア世界にいた時の経験に由来するトレーニングで、精神力を鍛えるという意外な効果が出たため、黒江はプリキュア達にもそれを課している。これは変身に特段の制限がない場合にのみ実行可能であるため、一部のシンフォギア装者には(今の所)物理的に不可能な芸当である。過去には調が行い、シュルシャガナを(心象変化無しで)纏ったまま生活をしていたように、プリキュア達も変身したままでの生活をしている。身体への負担も副次的に軽くなるという特典もあるため、ことはも服装が自由になった大学時代にはキュアフェリーチェの姿で大学に通うことが多かった。
「そうだわ、こちらののぞみ達は驚いてたわよ。あなたとことはが置いていったアルバム」
「ま、インパクトあるでしょうねぇ。変身した姿で日常生活なんてのは。周囲に隠してたりしてるのが通例だったし」
「貴方が変身した姿でサッカーなんて、何も知らないでアルバムを見た、こちらのりんがパニクってたわよ」
「悪いことしたなぁ。でも、ラブちゃんや響も写ってるし、気づいたでしょ?」
「そこにいくまでが大変だったのよ。貴方たちが置いていったアルバムだっていって、あの子をやっと落ち着かせたんですから」
「気になるなぁ、それ」
「みらいはどうだったの?」
「なおちゃんの話だと、相当にパニックだったそうです。フェリーチェが普通に大学に通って、四年間のキャンパスライフ送ったなんて」
「想像つくわ」
ドリームは平行世界の親友のパニックを想像しつつ、アクアに朝日奈みらいが陥ったパニックぶりを話す。キュアフェリーチェ/花海ことはが変身後の姿で大学に普通に通った。その衝撃や、如何ほどだったのか。アクアは後輩であるみらいの陥った大パニックを想像し、『クスッ』と微笑う。天真爛漫なみらいも大いに度肝を抜かれたのは想像がつくからだろう。みらいは今回のことに巻き込まれた際の実年齢は19歳、つまりは大学一年生であった。そのため、自分が『見たかった光景』(みらいは四年半ほどリコやことはと切り離された事がある)が実現していた。しかもプリキュアの姿で。わけがわからないみらいが大パニックになったのは言うまでもない。ことはが史学科を専攻し、卒業したという記録はみらいが最近でもっとも気になる事柄であるだろう…。