ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第七十九話「つかの間の休息とセイレーンの魔女との出会い」

――2020年を迎え、平成の次の元号である令和を迎えて半年が経つことが取り沙汰される時勢、プリキュア達は休暇の最後の二週間を楽しんでいた。フェリーチェ/ことはは区立図書館の分館に通い詰め、ドリーム/のぞみはのび太の息子のノビスケのサッカークラブに顔を出すようになり、その影響で自身もサッカーを始めた。アクア/かれんは医療関係志望のため、特別に芳佳(みゆき)の通う予定の軍医学校の見学が許可されていた。その縁もあり、デザリアム戦役後の頃には日本連邦軍の軍医へ就職することになる――

 

 

 

 

――2020年――

 

この年の頭はまだ疫病のえの文字もまだ感じさせない頃であり、プリキュア達も休暇中は自由に活動していた。のび太の子『ノビスケ』は母親に似たのか、わんぱくな少年で、ジャイアンの子『ヤサシ』とスネ夫の子『スネ樹』と『スネ太郎』を従えるガキ大将であった。小学校に入学し、母親に似たそのわんぱくぶりがクローズアップされだした頃であるため、ジャイアンの子がのび太が担ったポジションに居る事はのび太世代からは信じられなかった。

 

 

「うーん。あの子が本当にジャイアンくんの?」

 

「信じられんが、奥さんに似たんだろう。父親の体格は受け継いでるが、気弱でな。あの方の子とは思えん…」

 

のび太たちもよく使用していた川辺のサッカーグラウンドに来ていたドリームとマーチ。ノビスケの引率だが、ジャイアンの子であるジャイチビの気弱ぶりとのび太の子であるノビスケの荒々しさは逆転の構図と言えた。石器時代以来の関係が初めて逆転したのが、この二人である。ノビスケはキュアルージュとキュアマーチの影響でサッカーに傾倒するサッカー少年。のび太に容貌はとても似ているが、荒々しい性格になり始めている。プレイは闘志むき出しで、ラフプレーも辞さないというスタイルながら、『将来はいい選手に育つだろう』と評判であった。一方のジャイチビは父親譲りの運動神経こそあるのだが、気弱な性格が災いし、どうにもミスが目立っていた。往年ののび太を見ているようであるため、二人もこのコメントであった。

 

「言えてるなぁ。昔ののび太くんみたいだよね」

 

「それと、ノビスケは確実に静香からの遺伝だな。動きが往年の静香に似ている」

 

「え、あのしずかちゃんが?」

 

「世間体を気にしていたが、両親の目が届かない場所ではお転婆だったぞ。サッカーもした事があるが…」

 

しずかは良家の出なために、妙に厳格な母親の教育のせいか、少女期は世間体をかなり気にしていた。清楚な少女として振る舞っているつもりであったが、元来の気の強さは所々で出していたため、良くも悪くも箱入り娘であったと推測できる。女子の一つの願望の形でもあるプリキュア達と違い、ステレオタイプ的な少女像に当てはめられて語られる場合が多いしずかだが、息子のわんぱくぶりから、しずか本来の性格は割に推測されやすくなっていたのである。

 

「マーチさ、昔とキャラ違くない?」

 

「ドイツ軍にいれば、な。ドイツは教育にうるさいところがあってな…」

 

緑川なおは今生においては『ラウラ・ボーデヴィッヒ』として生まれ、試験管ベビーの一体としてドイツ軍に英才教育で育てられたため、キュアマーチとしての記憶はあるものの、ラウラ・ボーデヴィッヒ成分はかなり色濃く残っている。そのために転生組では、生前と振る舞いがもっともかけ離れた結果となった一人でもある。

 

「なるほどね」

 

「お前も生前は国宝級のアホでドジだったが、今は多少なりとも良くなったな?」

 

「それはなしだって。アクアを驚かせたいし…」

 

「かれんさん、つくづく言っていたからな…。お前は国宝級のドジで、超弩級の方向音痴だって」

 

「む、昔の話だってば…」

 

のぞみの特徴はそれらに加え、何をやっても長続きしない飽きっぽさであった。似た特徴を持っていたのび太が自分の欠点をポジティブに受け入れていたのに対して、のぞみは欠点にコンプレックスを強く感じていたのが違いであった。プリキュア化で自らの潜在能力を引き出せるようになり、コンプレックスを打破したためか、『プリキュアであること』に強いこだわりと誇りを持つようになった。明確な長所を元から持っていたなぎさと咲と違い、普段の自分に誇れるものがなかった事が前世での悲劇に繋がったと猛省しており、それが素体となった錦が趣味にしていたサッカーを始める理由に繋がっている。

 

「まぁ、打ち込むものを見つけるのはいいことだ。今のお前なら、ユース級の実力はある。りんのフットサルに助っ人してやれ」

 

「基本は同じだからね」

 

話している内に、ノビスケがディフェンダーの守りをドリブルをしながら突破、中距離からのシュートを決める。

 

「ふむ、素質はある。将来が楽しみだな」

 

「マーチ、生前の部活、女子サッカーだっけ?」

 

「いや、単に趣味でな。うちは兄弟姉妹多かったろ?」

 

「あ、ああ…。なるほどねぇ」

 

「そのうちだが、りんの誘いに乗るとするよ」

 

キュアマーチの必殺技はサッカーシュートタイプ。この種の必殺技はルージュ、マーチ、ソレイユの三人しか持っていないため、貴重な技能である。

 

「キュアソレイユの事をりんに話したが、すごく対抗心出してたぞ?」

 

「あの子の技はたしか……うん。被ってるなぁ」

 

「そうか、そういうことか」

 

「うん。あたしも今は草薙流古武術の応用で炎を出せるから、この間なんかさ、すごく血の涙を~…」

 

「察してやれ。あいつのアイデンティティなんだからな」

 

「あ、ああ~……悪いことしちゃったなぁ」

 

りんは自分のプリキュアとしてのアイデンティティの炎のお株をのぞみに取られ、更には自分の技の上位互換技を持つ後輩『キュアソレイユ』の存在を知ったため、アイデンティティの危機を感じ、リベンジを誓っていた。その心は後に、ショックで記憶喪失状態に陥っても消えてはおらず、のぞみの心からの叫びと想いが無くした記憶を呼び覚ますキーとなるのである。

 

「まぁ、あいつにはいい発奮材料にはなっただろうさ。お前を守ろうとして、あいつも色々と努力してるんだから」

 

「りんちゃんから聞いたけど、りんちゃんの世界じゃ、くるみが戦死したそうなんだ」

 

「そうか……。それでか」

 

「うん。あたしもその戦いで片腕を失くしたらしくてね…。」

 

「かなりの激戦だったというからな」

 

「だから、かれんさんに言ったんだ。時間軸が前後するけど、先輩たちが色んな人たちの協力を得て、かれんさんのいる世界のみんなを助ける事はマシだって」

 

「ああ。よく、その世界が壊れなかったものだ。真シャインスパークとファーストライトの同時炸裂なのだろう?」

 

「正確には、ファイナルダイナミックスペシャルのパワーアップ版だよ。事象の地平面が露出したとかなんとか。よく地球が持ったよ」

 

「かれんさんの世界の連中はなんて?」

 

「驚くなんてものじゃなかったって。最大パワーならさ、銀河系を余裕で破壊できそうなスーパーロボットの最大技が炸裂したんだから。つぼみちゃんとえりかが新人の頃のオールスターズの全力を思いっきり超えてるよ」

 

「あれは神を超える力と力が合わさった最強の攻撃だ。その時点でのオールスターズでは逆立ちしても並びだつことは不可能。それは分かったろう。ゴッドマジンガーと真ゲッタードラゴンの攻撃はな」

 

「でも、ダイ・アナザー・デイにはなんで『あれ』を出さないんだろう?」

 

「全容が未知数だし、予定を早めて覚醒した分、炉心が不安定な側面が多いのさ。だから、表向きはまだ繭から目覚めてない扱いだ」

 

「いいの?」

 

「ゲッタードラゴンの強化型など、マスコミのいいネタにされるからな。ましてや、ゲッタードラゴンより強い真ゲッターロボがあるというのに、それが霞む性能のゲッターなどはな」

 

真ゲッタードラゴンは大決戦が初陣だが、公式にはデザリアム戦役が初陣とされている。それはゲッターとしての性能レベルがそれまでのゲッターと次元が違う故の政治的理由であった。そもそも真ゲッターロボの時点で23世紀初頭当時の機動兵器でも五指の実力を持つからだ。二人がそれを知っているのは、ドラえもんがタイムテレビで予め、見せていたからだ。

 

「スーパーロボットは性能の上がり具合がおかしいからねぇ」

 

「マジンガーZからのグレートマジンガーは順当なんだがな」

 

「あれって本当はどういう関係?」

 

「同じアーキテクチャから分化した兄弟機だ。ゲッタードラゴンとゲッター1とは違うが、後継機種と言ったほうが通りがいい」

 

「基本は同じかぁ…」

 

そんな事を二人が言い合う内に、試合はハーフタイム間近となる。ここでもノビスケは活躍を見せ、高等テクニックであるオーバーヘッドシュートを決めてみせた。のび太の子とは思えぬ運動神経である。

 

「本当、のび太くんの子供にしては運動神経いいよね、ノビスケ君」

 

「頭の方は父親似だがな」

 

「アチャー~…」

 

野比家代々のお約束。それは長男は代々、のび太と似たりよったりの少年時代を過ごす事だ。大小の違いはあれど、ノビスケも父親と似た傾向の頭脳を持つ。ただし、運動神経がいいため、往年ののび太と違い、ガキ大将になっているが。

 

「さて、これからお前は大決戦の裏方になる心構えをせねばな」

 

「分かってるよ。かれんさんにも伝えてある。それをやる前に、これから起こる後の事を話すのは変な感じだよ」

 

「タイムテレビの効果だ。文句を言うな。ある程度の対策を立てられるのは、あれのおかげだからな」

 

「それはそうだけどね」

 

二人は会話をしつつ、ハーフタイムのうちに軽く食事を取る。試合が終われば、ノビスケが喫茶店につれて行けというだろうということで、サンドイッチを口にする程度だ。

 

「戦線はどうだ?」

 

「朝鮮戦争のジェット機も出てきたからね。彩雲じゃ偵察がきつくなってきてる」

 

「彩雲はせいぜい時速700キロだからな。ジェット機が現れれば、単なる旧式機だ。これは一〇〇式司令部偵察機もだが」

 

「うん。ハチロクの偵察型の調達も始めてるよ。その二つが旧式化してきたから」

 

「レシプロ機は今の戦が最後の華だ。使ってやれ。歴史の帳尻合わせが始まっているのなら、旧来型レシプロ軍用機は次第に淘汰されていくはずだ」

 

「一応、キ44とキ100をを予備機にしてるけど、先輩達は84のはずれを引いちゃってさ」

 

「疾風はだめだ。機体が良くても、エンジンが良くない。閣下たちの機体でさえ粗製乱造された個体なのか?」

 

「偶々だって。それとストライカーとしても、造ってる側も把握してない欠陥があって…」

 

「製造の過程かなにかで見つかったものか。厄介だな」

 

疾風のその欠陥はメーカー側にも欠陥と認識されていないものであったが、数年後に武子が偶然にもその操作をしてしまい、全治数ヶ月の重傷を負ってしまったことでクローズアップされ、古参に忌避されるようになってしまい、改良されたが、ストライカーとしては当初の予定通りに主力としては普及せずに次世代のジェットストライカーに淘汰されて終わっていく。その一方で、戦闘機としては、リベリオンの分裂に伴うキ44Ⅲの頓挫に伴う緊急の代替目的(リベリオンのR-2800の搭載が前提であったため、エンジンが確保できなかった)で一定数は量産され、さらなる次世代型の陣風の普及までの期間の繋ぎを果たしたという。ダイ・アナザー・デイでは日本の多くの勢力の軍事的無知ぶりが明らかとなったが、シビリアンコントロールの名のもとに公式に文民統制されるようになった扶桑軍にとっては、多くの場面で政治的に辛酸を舐めるきっかけとなった。だが、海保のみならず、21世紀の自衛隊の地方の駐屯部隊程度の規模では怪異の小規模出現にも対抗不能である事が硫黄島事件で判明したため、ウィッチの雇用維持が功を奏し、扶桑軍から供出された部隊が各地に展開されたことで、結果的にはウィッチの組織的運用ノウハウの維持に繋がった。また、時空管理局経由で先進魔導関連研究が流入した事が急速な第二世代宮藤理論の実現に繋がった。その過程でウィッチに『特権意識』を持たせないために、『兵科解消』が結論づけられたのはこれ以上ない皮肉であった。

 

 

 

 

 

 

――自衛隊は怪異の小規模出現にさえ対応できなかったことで各所から中傷されたが、扶桑軍が国情に見合わぬ規模の外征型陸軍を有していた理由がようやく日本側にも理解された瞬間であった。だが、その近代化はどう急いでも五年はかかるとされた事も太平洋戦争の前半の苦戦に繋がっていく。本来はウィッチの平均力が世代交代で低下し始めた時代であったため、高級将校になっていた者が前線を支える必要が生じていた。黒江達が准将(ダイ・アナザー・デイ中頃から)になっても前線で戦う理由の一つは『本来は戦力の中核になるはずの中堅層のサボタージュ、右も左も分からない若手は使い物にならない』という前線の切実な事情が絡んでいる。本来は教官+後詰めと見做されていた古参世代がダイ・アナザー・デイの中核となったことも予想外であり、戦争の様相が血で血を洗う殺し合いとなったことで古参も少なからずがサボタージュを行ったため、Gウィッチ達はあらゆる戦場に駆り出され、無茶と言えるまでの戦闘を求められている。その流れで彼女たちには一種の万能性が求められた。ダイ・アナザー・デイの途中からだが、キュアフェリーチェ、キュアハート、キュアラブリー、キュアダイヤモンド、キュアエースが参加した一因は上層部の無茶ぶりに黒江達と言えど、すぐには対応できなくなるほど多忙になったからである。――

 

 

 

 

 

 

 

 

――こちらはキュアフェリーチェ。練馬区立図書館の分館に入り浸っていた。彼女は大学の史学科を優秀な成績で卒業した後も趣味として、自分が暮らす街の歴史を調べていた。その中でのび太が以前に話した『延元3年の出来事』が記載されている事に気がついた――

 

「前にのび太が言っていたのはこの出来事だったのですね…。何々……延元三年頃、この街の周辺に鬼が現れて、村を荒らし、桃太郎が退治したという言い伝えがあり、その証拠とされる鎧と刀が郷土資料館に展示されている、か…」

 

街の歴史(口伝含む)が書かれた昭和後期頃の本を読み、のび太が子供の頃から冗談交じりに言っていた事が本当にあったことを確かめたフェリーチェ。初めて聞いた時は冗談と思ったが、後で気になり、休暇を利用して調べていた。本を本棚に戻して、図書館を出ると、翼を広げ、町外れの郷土資料館に向かった。裏山の更に裏にあるため、普段から寂れている雰囲気があるが、町外れという立地と食堂があるので、意外に人は入っている。彼女がプリキュアの姿で入っても、この街では気に留められない。のび太の証言通り、ベタに『日本一』と書かれた旗指し物、のび太曰く、『僕の技能じゃ猫に小判だった』とボヤいた刀、少年のび太が実際に着込んだ鎧、その時代に書かれた絵巻が展示されていた。のび太曰く、鬼というのは、難破した当時のネーデルランド(当時はスペイン領)の唯一の生き残りの船長で、鉄砲伝来からさらに200年近く昔だったのが災いし、鬼と勘違いされたスペイン人(現在のオランダ人)であるとのこと。

 

「桃太郎の伝説は各地に似たようなものがあるけど、この街に伝わったのび太達の冒険もその一つというわけか。鉄砲伝来の前の時代には、のび太が言ったような悲劇が起こってたんだろうなぁ…」

 

のび太達はそのネーデルランド船の船長を故郷へ帰させたが、不幸にものび太達以外の日本人と出逢えば、鬼退治されたのは想像に難くない。渡辺綱の鬼退治などの話は各地であった鬼退治を組み合わせて生まれたのだろう。フェリーチェは郷土資料館に展示されている絵巻に書かれた桃太郎のモデルが実は義兄ののび太であるという事を考え、少し笑えてくる。(実際にのび太は桃型ボートで川を下った際に童話通りの経緯で老婆と翁に助けられ、桃太郎として鬼退治をする事となった。展示されている刀は船長が持ち出してきた棍棒と多少打ち合ったため、刃が傷んでいるはずである)

 

「動物変身ビスケットで童話に合わせたとかいうけど、財宝はネーデルランド船の積荷だったんだろうなぁ。だけど、スペイン金貨や外国の宝石くらいで富めるかなぁ…?」

 

その当時は室町時代の黎明期。まだ鉄砲も影も形もないころで、建武の新政が瓦解したのが記憶に新しい頃。スペイン船の積荷を持ち込んでも、それが財宝と日本人は理解できたのだろうか?それが気になるところだ。各地の鬼退治の伝説が混ざり、それが混ざって生まれた童話が桃太郎とするなら、のび太は『童話のステレオタイプ』を確立させた立役者となる。

 

「食堂できびだんごを出してるんだ。もしかして、桃太郎じるしのきびだんごの起源って…」

 

ひみつ道具『桃太郎印のきびだんご』の由来が子供の頃ののび太たちの行為にあるのかも知れないと結論づけたフェリーチェ。街の名物かもしれない『きびだんご』を食堂で食してみる。

 

「美味しい……。もしかして、あの道具の起源はこの団子かな?でも、あの刀、抜けなくなってるよね。棍棒とぶち当たったのなら、刃が歪んだはずだし」

 

絵巻のように勇壮な戦いをしたわけでもなく、『鬼』はたった一人だったはずが、後世の着色で軍団になっていることに後世の都合というものを感じ、不思議な感覚を覚えるフェリーチェ。のび太の足跡は中国は唐代にもあるとのことだが、桃太郎の原型となる口伝を残した点では偉大な足跡と言えた。また、のび太は桃太郎よりも孫悟空(こちらはちゃんと活躍できた)や、お得意の『流れ者のガンマン』としての活躍が自慢の種であるため、のび太は日本の武士よりも西部開拓時代のガンマンが本質的に向いていると言える。

 

「ん、そろそろ家に帰るかな。ノビスケも試合が終わる頃だし」

 

フェリーチェは郷土資料館を出て駅前にまで戻ると、一行と出くわした。

 

「あ、ことはおねーちゃん」

 

「ノビスケ、試合はどうでした?」

 

「僕の活躍でチームは大勝利、チョコレートパフェをおねーちゃん達におごってもらったんだ」

 

「代金はマーチと折半したけどね。あいにく、持ち合わせがあまり、ね」

 

ドリームは『足が出た』ことを示唆し、マーチが助け船を出したという。スネ樹とジャイチビの分もおごったためだ。高給取りの軍人であるにしては情けない話である。なお、ことははノビスケからは義理の叔母にあたるが、外見は少女そのままであるため、ノビスケは幼少期からの惰性でおねーちゃんと呼んでいる。(ノビスケは言葉づかいは荒いが、ことはの前ではおとなしくなる。彼女が自身の叔母である事を自覚しだすのは小学校高学年頃で、ここからさらに4年ほどの月日を要する)

 

「ドリーム、キャッシュを入れてなかったんですか?」

 

「慌てたから、ついうっかり…。マーチが持っててよかったぁ」

 

「そろそろ、みらいといつきさんも長距離行軍テストから戻ってくるはずだ。シャルはともかく、セシリアに料理場に立たせるのは禁止させてある」

 

「賢明ですね…」

 

この頃になると、セシリア・オルコットは周りから『厨房に立つな』と厳命されており、プリキュア達にも『ある種の天才』と例えられるほどの料理下手が知られていた。ISのテストは続けているが、高機動型パッケージに換装していた場合はビットの機能が使えなくなる事を指摘され、落ち込んでいたりする。また、プリキュア達に声色の雪城ほのかとの類似性を指摘されており、彼女との差にものすごく落ち込むなど、最近はコメディ担当と化している。

 

「あいつはどこをどうしたらああなるのか、皆目見当もつかん…」

 

「声がほのかさんに似てるんだよなー。あの子」

 

「ええ。ただ、あの方はほのかさんよりポンコツの毛が」

 

フェリーチェにもこの評価であるセシリア。実際、戦いでは歴代プリキュアに実力で及ばず、最近に習得したという偏向射撃の限界も見抜かれているなど、機体と搭乗者双方の射撃特化が仇になっていた。(機体が射撃特化型であるためと、狙撃主体であったため、それが通じない場合は無力に近い)料理も佐倉魔美とタメを張るレベルで、のび太曰く『ジャイアンシチューなみ』という壊滅ぶりで、シャルロット・デュノアに比べると不遇である。自身と似た声をしているほのかと比較されることはセシリアにとっても相当に堪える事実であり、IS姿で地団駄を踏んだこともあるほどにコンプレックスである。

 

「あいつ、今頃はくしゃみでもしているかもしれんなぁ」

 

キュアマーチが零したその言葉通り、セシリアはくしゃみをし、シャルは夕飯の支度をISを展開したままでエプロンをつけた格好で始めている。キュアアクアも料理だけは駄目なので、料理ができる者は意外に少なかったりする。(マーチは料理ができるし、ドリームも錦としての経験とレントン・サーストンとしての記憶で自炊はできるようになった)一同はノビスケを連れ、家路につく。ほのぼの感ある一幕だ。

 

 

 

――その頃の黒江――

 

「何、黒田の同期から俺に差し入れだぁ?」

 

「ええ。セラさんから」

 

「ああ、紅海で黒田と争ってたとかいうガキか。たしか、母方の性はバルナックとか聞いたな…?」

 

「え。彼女、ハーフなんですか、先輩」

 

「お前からの連絡があった後、坂本に紅海戦線にいた連中の人事記録を調べさせた。本名は広瀬沙羅・バルナックらしい」

 

広瀬大佐はウィッチ世界では珍しい出自を持つ家柄で、母方は扶桑人ではない。オリエンタルで妖艶な雰囲気を持つ風貌だが、父親の広瀬少将はこの時既に戦死しており、上層部へ不信を抱き始めていた。黒江が坂本に調べさせた記録によると、母方が中東や華僑などの一族、直近ではゲルマン系の血を受け継いでいたというが、広瀬少将が両親の反対を押し切って駆け落ちして生まれた関係で、扶桑では辛酸を嘗めてきており、父親の戦死で上層部への不信を決定的にしている。

 

「武子の奴が黒田のペアにいいとか言ってたが、上に先手を打たれたとか言ってたが、日本に来てたのか」

 

「今すぐ引き抜きます?」

 

「いや、今年中(45年)は西沢を海軍から引き抜いた関係で無理だ。それに志願者が多くてな。黒田のライバルとは言え、あまり短期間にエース級を引き抜くと、統合参謀本部に睨まれる」

 

「どうします?」

 

「ケイに接触させて、こちらからアプローチはかけてみる。連合軍から、義勇兵にキトリ・パルヴァーネフとか言うのも推薦されててなぁ。天秤にかける必要があるやもしれん。」

 

連合軍からの推薦枠(曰く、どこかの小国の王族のウィッチらしい)でねじ込まれそうなウィッチと天秤にかけるという黒江。結局、キトリには王族という以外に加入のメリットがないため、外交的には『曰く付き』だが、黒田に次ぐ実力を13歳時点で発揮していた広瀬大佐が内定する。また、広瀬大佐自身も加入後には圭子に肖り、『セイレーン・バルナック』という別名義の軍籍をカールスラントに造るのである。

 

「どうするんですか、先輩」

 

「黒田が話を聞いて、俺達に推薦してきてな。どうやら紅海で龍虎と謳われた間柄らしくてな。パットン親父からの頼みはいったん断るしかないな」

 

パットンから推薦があったキトリというウィッチは実戦での実績も何もなく、一族の七光で推薦させた疑惑が拭えないため、黒江達は広瀬大佐を選択する。だが、政治的にパットンへ借りは作りたかったため、キトリは仮入隊からの扱いという形でやってくる。二人の容貌は偶然にもよく似ていたが、広瀬大佐には泣きぼくろあり、それが見分けポイントとなる。言葉づかいもポイントである。広瀬大佐は素が出ると『あたい』を使い、圭子の薫陶を受けたらしき荒々しさが出るため、そこが違いだった。

 

「その人のパーソナルエンブレム、分かります?」

 

「広瀬大佐のなら、黒田から連絡があった。ハートだよ」

 

「やっぱり。昔、黒田先輩と龍虎を謳われた凄腕のガキがいるって、47で話題になった事があるんですよ」

 

「へー。俺の頃と変わったな」

 

「あたしがいたころは戦闘配置に改編されてましたし」

 

黒江とのぞみ(錦)は同じ47Fに時期は異なるが、在籍した経験がある。錦の時代には実戦配置に変わっていたため、噂も流れてくるのである。

 

「差し入れだが、内容は?」

 

「馬肉入ってましたけど」

 

「おお、それじゃ馬刺しできるな」

 

「先輩、食えるんですか」

 

「俺は薩摩出身だぞ?」

 

「そうだったぁ」

 

「連絡ありがとな。彼女にはケイから連絡を入れさせる。ケイの小学校の後輩らしくてな」

 

「うっそぉ……」

 

お互いの意外な繋がりに感嘆のキュアドリーム。家路につきつつ、黒江に連絡を取ったわけである。プリキュアが普通のタブレットで連絡を入れるのはシュールだが、M粒子対策の都合で21世紀基準のスマホより大きくなるのは仕方がない。

 

「先輩。馬刺しなんて、どこで?」

 

「肥後にいる叔父貴の大好物なんだよ。叔父貴、俺にガキの頃から食わせてたからなー」

 

黒江の告白に言葉もないドリーム。黒江の一言に閑古鳥が鳴く思いだったという…。

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