――ここでダイ・アナザー・デイ中にあった騒動の一つの始まりについて触れよう。黒江は調と入れ替わった形でシンフォギア世界の一つに滞在していた時期がある。その内の立花響との関係の本格的な始まりになった二度目のエンカウントのことを――
――シンフォギアA世界のある日――
黒江は当時、自分の行動で入れ替わったと思われる少女が武装組織に反旗を翻した事になった事に同情しつも、行くアテもないため、当座の生活資金をコスプレ喫茶で稼ぐ事にした。元から真の意味での完全聖遺物たる聖衣を纏い、あらゆる邪と戦う事を仕事にしていたため、後に判明することだが、シンフォギアの根源たる、先史文明の者たちが残した兵器を媒介にして力を再構築した鎧を扱うことは容易である(そもそも黒江は黄金聖闘士でもあるので、ギアからののバックファイアは問題にならないし、自然な形で力の勃起が可能なので、ギアの恒常的な展開も苦にもならない)。そのため、シンフォギア世界に来て間もない時期はシュルシャガナのシンフォギアを衣服代わりにしていたのである。これは聖闘士にとっては、シンフォギアは一種のリミッターでもある事も要因だ。セブンセンシズを全開にしたりしたら、その力にギアが耐えられずに自壊する危険が後に指摘される。(外部からの衝撃に強くとも、内から溢れる力の奔流には耐えられない)実際、黒江は小宇宙を実験的にシンフォギア姿でセブンセンシズまで燃焼させる実験をこの時期に行ったが、結果は総数3億165万5722のロックがいっぺんに外れ、数日もエクスドライブ状態のままになるというもので、過剰な小宇宙の燃焼はギアに負担をかける事を理解した。ただし、これはいっぺんに燃焼させた事での負荷が原因であり、この日までに、ゆっくりと燃焼させる事でなら耐えられる事も知った。
「やれやれ。あのガキ、めんどくさそうだな。出来れば会いたくねぇ。えっと、この世界……フェイトが見てた『戦姫絶唱シンフォギア』ってアニメの世界だよな。この鎧もなんとなく覚えがあるの思い出した。これで基本世界からの派生世界を作っちまった事になるな。それと、この世界はアニメと違って、21世紀前半に出来事が起こったことになるぞ?」
アニメでは、2045年頃に第五にして最後の戦いが起こった事になっているシンフォギアだが、この世界では、出来事がそれより30年ほど早く起こっている。つまり、この世界は元から『派生世界』である事になる。黒江はそれに気づいた。この時、黒江はシンフォギアを纏った調の姿になっていた。ただし、入れ替わった本人より背が高くなっているという、外見上の僅かな違いがあった。なお、入れ替わった際に、調に宿っていたフィーネの魂は黒江に玉突きされる格好で追い出されており、その時の共鳴が黒江の空中元素固定能力を完全なものにし、調に黒江がその時点で開眼済みの全能力が受け継がれたのである。(さらに言えば、入れ替わった時期がお互いに長時間に及んだ事から、それぞれの世界で自分の立場を確立するだけの時間を過ごした事になる。後にその時間で黒江が得ていた立場こそが帰還してきた調に強い疎外感と罪悪感を抱かせ、立花響の『善意』への反感と出奔の理由になるのである。)ただし、黒江と違い、調には秘密があった。調の死亡した本当の両親のどちらかが山地闘破/磁雷矢を輩出した一族の同位にある一族の出であり、磁光真空剣を素で発動できることだ。これは後に、磁光真空剣が後に調のもとに飛来し、調の手で山地闘破のもとへ返されたという事実が証明している。
「細かいことは漫画喫茶で考えるか。今は縁日を楽しむとしよう」
黒江はシンフォギア世界への滞在中は風来坊じみた振る舞いであった。特異災害対策機動部二課に与するまでは第三勢力的立ち位置になっており、マリア達の捜索からも逃れ、二課の捜索をコスプレ喫茶で誤魔化すなど、生活自体はニートかオタク並に悲惨であった。なお、この時期に黒江が面接の際に勘違いで誤記した『月詠』という表記は後に、調自身が心機一転の意図で採用し、のび太との生活から使用することになる。
「おっちゃん、綿あめ一個ね」
黒江はギア姿で縁日を楽しむ。本来、この時期の調のシンフォギアは本人の適合係数の低さで低出力の暗色系メインのカラーリングだが、黒江は適合係数云々の問題がないため、本来は適合係数が上がった後に纏う高出力の明るめのカラーリングのものになっている。その違いがあるため、マリア達は捜索に混乱を来たし、二課側も捜索に手間取っていた。
「ほい」
「サンキュー」
黒江は元が1921年生まれとは思えないほど垢抜けた振る舞いをするが、転生を繰り返す内に、感性が時代先取りなものになったためだ。縁日ではりんご飴、かき氷、ラムネなどのお約束をきっちり行い、射的で射撃センスの良さを見せるなど、お約束はこなしている。ラムネを飲み干し、りんご飴を食べた直後であった。
「ん、来たか」
「調、帰るデスよ!」
「知るかボケ、『俺』はお前のダチじゃねぇんだ」
切歌と出くわしたわけだが、黒江はこの時、始めて、自らの一人称を俺に切り替えた。以後は『俺』で一人称を統一するが、そもそもは切歌に自分は別人であるとわからすために使い始めたのだ。だが。
「それじゃ、なんで調のギアを纏えるのデスか!?」
「知らねぇよ。とっととボインのねーちゃんのとこに帰んな。言いたかぁねぇが、お前じゃ、俺の薄皮一つ傷つけられないぜ」
「まさか、フィーネに人格を乗っ取られたのデスか!?なら、このイガリマの刃で!」
「はぁ!?だから、おりゃ別人だ!口調でわかんねぇか!?このタコ!」
「黙れデ……」
切歌はシンフォギアを纏うが、その瞬間に流星拳が繰り出され、気がついたら地面に倒され、組み伏せられていた。
「このタコ、人の話は聞けと教わったろ?」
「どうしたんデス、調!アタシがわからないのデスか!?」
「解る解らん以前に俺はお前を知らん!!別人だってんだろ?これで理解したか?」
切歌は幼馴染に軍隊式格闘術で取り押さえられるという光景が信じられない。しかも、背中のバーニアを全開にしても微動だにしないという光景は当時の彼女の理解を超えていた。
「やめなさい!!」
「なんだ、シスコン気味のマリア・カデンツァヴナ・イヴか」
「なっ!?」
「お前のことなら知っているんでな。お前達が今やってる事もな」
黒江はここでギアをわざと解除した上で、マリアが投げたガングニールの槍を穂先を指で挟んで止める。
「やめとけ。お前の力じゃ、俺には勝てねぇよ」
黒江は忠告した上で、マリアにデコピンをする。だが、速度は白銀聖闘士の全力を超える領域のものであったため、マリアは額を割られ、派手に吹き飛ぶ。
「マリア!!……!?」
切歌も次の瞬間には同じ攻撃でヘッドギアを破壊され、吹き飛ばされる。
「ど、どういう事……!?」
「俺はフィーネでもなんでもねぇよ。単に事故でこいつと入れ替わったにすぎん年寄りだよ」
気絶に至らなかったマリアに黒江はいう。自分を年寄りと表現するのは、21世紀における自分の実年齢を意識してのものだ。
「年寄りは労るもんだぜ?年金もらってる世代なんだから」
「どこがよ!」
「やれやれ。涅槃にいるだろうお前の妹がそれで喜ぶと思うか、マリアよ」
「黙りなさい!セレナの事を知っているようだけど、貴方はなんだというの!!」
マリアは妹の事を言われ、瞬間的に激昂し、ガングニールの槍を突き立てるが、黒江の手の甲で受け止められていた。
「嘘でしょ、無双の槍、ガングニールが……!?」
「いい槍だ。だが、俺の右腕も聖剣を宿しているんでな。そんな攻撃では穿けんよ」
黒江は聖剣を宿す身であるが故、ガングニールのアームドギアの突きを生身で受けとめる。更にガングニールの穂先からビームを撃つが、黒江は意に介さない。握力が強められた穂先が崩れ落ち、黒江の本領の片鱗を垣間見せる。左腕を使わないのは、世界そのものを斬れるエヌマ・エリシュが宿っているからだ。
「さて、ここで良いものを見せよう。約束された勝利の剣!十分の一~!」
黒江はエクスカリバーを軽く払う程度の手刀から放ち、マリアの肩口を鎌鼬のように斬り裂き、地面を抉る。マリアはシンフォギアの外殻に影響を及ぼさないで、斬り裂いた黒江の行為が信じられず、更に妹のセレナのことで動揺してしまう。
「何故、セレナの……事を…」
「こっちも事情ってもんがあるんでな。そこのヤンデレのガキに絡まれても困るんだよ」
ここより後のことだが、そのセレナ・カデンツァヴナ・イヴは輪廻転生で十六夜リコ/キュアマジカルに転生していた事が判明し、リコは板挟みに遭うのである。結果、リコはあくまでプリキュアであるので、セレナとして戦うつもりはないと伝えると同時に、マリアの妹として、仲介役を買って出る事になる。
「や、ヤンデレって……」
「とにかく、俺としても困るんだよ、ヤンデレのガキは。お前も俺の知り合いに声が似てて、驚いたぞ」
「え……?」
それは黒江の弟子の一人の篠ノ之箒の事である。マリアと同じようだが、もうちょっと若々しい声色とは、黒江の談。
「こっちの話だがな」
話している内に二課側の装者も駆けつける。
「おうおう、お揃いのようだな」
「おい!あんたの話が本当とは、あたし達はまだ信じてねぇぞ」
「縁日にそんな格好は無粋だぜ。……って、なんじゃこりゃ」
切歌は起き上がると、勘違いから精神不安定に陥ったために破壊衝動に呑まれ、獣のような咆哮と共に暴走する。
「コイツは暴走だ!いくらなんでも生身で対峙するのは……」
「そうだよ!あれは目の前が塗り潰されて…!?」
二課の装者一同が驚く間もなく、黒江は飛びかかった暴走状態の切歌の顔を握りつぶさん勢いで掴みかかり、切歌を抑え込んでいた。
「ワンコロみてぇに、ギャーギャー吠えるな、うるせぇぞ」
『え!?』
「嘘だろ!?」
「暴走状態の装者を……生身で…!?」
「こんなところで獣みたいに暴れるってのは無粋だな。縁日楽しんでる人たちに迷惑かけんじゃねぇ!」
切歌は理性を失い、獣のように喚いているが、顔を掴みかかまれ、更に地面に押さえつけられ、身動きが取れなくなっている。黒江は暴走状態の切歌を空中に投げ飛ばすと、瞬時にある態勢を取る。それは。
『俺のこの手が真っ赤に燃えるぅ!!勝利をつかめと轟き叫ぶぅ!!』
黒江はこの時期、ある種の強制力で姿は調のもので固定されていたが、戦闘面の能力については制限が課されていなかったため、調の姿で石破天驚拳を撃って、切歌を黙らせたのだ。
『流派東方不敗!……最終奥義ぃ!石破ぁ!!てんきょぉぉぉけぇぇぇ―んっ!』
傍から見れば、石破天驚拳の炸裂は縁日で上がった景気づけの花火にしか見えないだろう。マリアが慌てて、暴走が解除され、卒倒した状態の切歌を回収しようとするが、気がついた時には黒江が先に回収していた。
「あ!?」
「ほらよ、自分が面倒みてるガキの子守りくらい、きちんとしとけ」
「い、いつの間に!?」
「おりゃ、普通の人間とは言い難い領域にいるんでな。それに、着の身着しか持ってねぇから、服を汚したくなくてな」
そこでシンフォギアを再度纏う。生身の状態でシンフォギアと渡り合える人間は超人の類に入る者しかいないが、この時の黒江は見かけがあどけなさを多分に残す調そのままの外見であった事もあり、多大なインパクトを残した。『暴走状態のシンフォギア装者に何もさせないで、生身で倒した』というのは、この時点では驚異的な行為であった。
「んじゃ、またな」
「あ、待って、調ちゃん!どういうことなの!?説明して!」
「いずれ言うさ。時が来たらな」
黒江は立花響にそれだけ言うと、アナザーディメンションを使い、その場から立ち去る。『シンフォギアを戦闘で用いるまでもなく、暴走状態の装者を倒した』行為の凄さもそうだが、エクスカリバーという黒江の持つ真の力の片鱗を垣間見た一同は敵味方関係なく、呆然としてしまい、しばらく言葉もなかった。
――こうして、不本意ながらも調の姿になった黒江はシンフォギア世界への滞在中の期間の初期段階において、シンフォギアを普段着代わりに使っていた。漫画喫茶の個室で寝たり、コスプレ喫茶の仮眠室で寝ることが滞在中の初期段階では当たり前であった。
「今日は場所変えよう。場所を特定されるのは避けたい」
黒江は場所の特定防止の為、何日かごとに街の東西南北に点在するネットカフェ、漫画喫茶などを転々とする事を行っていた。元々、職業軍人であるので、朝には強い事もあり、この時期は睡眠時間が短くなっていたが、6時間は確保していた。さすがの二課も自分達の探す少女がネットカフェ難民まがいの生活を送り、堂々とコスプレ喫茶で生活賃金を稼いでいるなど、想像だもしなかったため、黒江は見事にその盲点を突いた形になる。
「さて、と。その前に銭湯でもいって、さっぱりしてこよう」
黒江は堂々と生活する事で、むしろ周囲がガードになることを利用した。ジオン残党も使う手である。この作戦は大成功で、黒江自身が偶然、見つけられるまでは全ての勢力が捜索を失敗し続けた。それまではやりたい放題(黒江自身、誤魔化した末に破綻するよりは、いっそのこと好きに動いたほうがいいと判断した)で生活したため、調の姿は風来坊として現地のインターネットを賑わせたが、あまりに堂々としているために、二課も、武装組織フィーネも、それが『本物』であるかの確証が持てなかったのである。
「~♪」
銭湯での鼻歌はマジンカイザーの元祖テーマソングだったりする。黒江は堂々とした立ち振る舞いで銭湯のお約束を行う。
「さて、出たらコーヒー牛乳っと」
こうした行いをしていたので、その代わりを求められた調が出奔の決意を固めるのは当然であった。黒江はこの時期、戦闘時にシンフォギアの持つ機能やスペックは用いることは殆どなかったが、山羊座の黄金聖闘士でもあるため、自前の闘技でどうにかなるため、シンフォギアに敢えて頼る必要がなかったからである。聖闘士である黒江にとっては、シンフォギアは戦うための『強化服』ではないのだ。
「ぷはぁ~。どこの世界に行こうと、この味は変わんね~な」
これである。風呂から出てのコーヒー牛乳。コーヒー牛乳の味を楽しみつつ、夜の街へ消えていく。黒江は防寒も兼ねてシンフォギアを用いているが、黒江自身の力がシンフォギアの発するエネルギーを抑え込んでいる事もあり、二課、武装組織フィーネのどちらにも反応を探知されなかった。また、この時の経験は後に、ベルカでの騎士生活を経た調本人も応用し、修行に用いる事になる。
「今日は北北西にある喫茶で寝るか」
黒江は防寒目的にシンフォギアを使いつつ、北北西の喫茶へ向かう。こうした探知対策と、黒江がむしろ堂々とコスプレ喫茶で働いた事で、当時の二課と『フィーネ』(F.I.Sとも)の双方は行方を探査しそこね続ける事になる。
――黒江が調のシンフォギア世界の世界の歴史を動かしたように、古代ベルカに飛ばされた調が幼い頃の黒江の容姿になって、ベルカの騎士として王室に仕えていた。調がその時に使っていたデバイスの名が『エクスキャリバー』であり、そのデバイスは現在は発掘後にレストアされ、調のもとに戻っている。入れ違いに、幼い頃の黒江の姿になった調は黒江の全技能を感応で受け継いだが、右も左も分からない異世界に身一つで放り出され、しかも自分本来の姿を失って。かなりの苦労をして、ベルカの王族の騎士にまで立身出世し、戦果を挙げた。それを誇りとする思考が出来上がってしまっているため、立花響が調のために用意させた『SONGの装者としての生活』は単なる善意の押しつけでしかなかった。それがのび太のもとにくる理由であり、もはや『本来あり得た立場』が彼女の肌に合わなくなっていた証であろう。師である黒江と同じ道を歩み、更に野比家の住み込みの家政婦になったのは、彼女なりの『自分で居場所を決める』という意思の表れであろう。また、かつての主のオリヴィエのクローンであるヴィヴィオが高町家の養子である都合上、高町家でも働いている。そのため、調は野比家と高町家の家政婦として生活しつつ、正式には軍人であるという状況なのだ。ベルカの騎士として高度な教育をされたせいか、軍事知識もすっかり身についており、それが彼女がすんなりと士官候補生になれた理由だ。少なくとも、調が10年で貫こうとしたベルカの騎士としての気概や心意気を立花響が否定的に言ってしまったであろうとは予てから推測されているが、響としては『そんなものより、切歌やマリアとの元の生活に戻るべきで、改めて元の生活に慣れるべきだ』との趣旨の善意で言ったのだろうが、既に心身ともにベルカの敗残兵であった調には受け入れられるモノではない。その点が調には許せなかった。要するにベトナム帰還兵のような精神状態に置かれていた上、響が黒江に半ば強要して確保させていた『居場所』で黒江のような破天荒な振る舞いを事務的にこなせという事を『強要された』も同然であり、気質が黒江と根本的に違う調には苦痛そのものであり、精神的に激しく疲弊した。それを見かねた小日向未来が調が持っていた連絡先、つまりはのび太に連絡して手引きし、調を野比家へ送り込んだのである――
――こうして、黒江はシンフォギア世界で入れ替わった後、シンフォギアを持ち出す形で逃げたが、黒江が小宇宙でシンフォギアのエネルギー反応を抑えた事でステルス効果が生じていた事、適合係数が桁違いな事と心象の違いでギアのカラーリングが当時の調と異なる事、その姿で堂々とコスプレ喫茶で日賃を稼ぐために働いた事で、シンフォギア世界の関係勢力の捜索を尽く逃れた。黒江はその気になれば、21世紀以降に生きる人間を演じられるためもあり、リディアン音楽院にほど近い地点のコスプレ喫茶でバイトしていながら、響達がそれと無縁の生活であったのと、『堂々としているわけはない』とする先入観、バイト先の勤務時間という偶然の要素とが絡み合い、響達が気づくことはなく、また、黒江が基本的にあちらこちらを転々としていた事で噂は立つが、各勢力が調べるほどの余裕がなかった事から、次なる出会いまでは何事もなかった――
――黒江は入れ替わった時に着ていた服しか持っていなかったため、各地を転々としていた時は基本的にシンフォギア姿で過ごしていた。シンフォギアの機能を使わなくとも、素で装者を圧倒する力を持っている事もあり、出会う度の戦闘では常に圧倒していた――
――縁日の前の時間軸でのある時の戦闘にて――
「御庭番衆式小太刀二刀流『陰陽交叉』ッ!」
黒江は風鳴翼の天羽々斬の上段からの一撃をいなし、『陰陽交叉』を叩き込む。エンペラーブレードの峰の部分に、もう一本を垂直に叩き込む。翼はこれでギアを貫通され、負傷する。
「ぐあっ……!お、御庭番衆だと!?」
「江戸時代の頃、幕府が太平の世で食い扶持を無くした忍びに仕事を与えていたが、かの徳川吉宗の時代に新設された役職というのは、歴史をかじってればわかるだろう?その中でいざという時の戦闘術として伝えられていて、維新後は失われた闘技さ」
空中元素固定能力で作ったエンペラーブレードを二刀流で構える黒江。ギアとは不釣り合いな武器である。(よく見てみると、ブレードの刃が立ち上がり、鋸のようになっている)翼は修羅場は潜ってきたが、自身に匹敵するような剣技の持ち主とは出会っていない。黒江はエンペラーブレードを『二天一流』の流れを組む構えで構え、そこから御庭番衆式に切り替えるという戦法で対応した。この時の出会いが後に、自分の義娘(血縁では大姪にあたる)に『翼』と名付ける理由の一つであった。
「ムウン!」
黒江は御庭番衆式小太刀二刀流で天羽々斬を防御する。使い手の四乃森蒼紫も言っていたが、小太刀は防御面では太刀より小回りが効くので、使い手によっては、明治期のライフル弾をも防げる。身軽になった黒江のフットワークもあり、翼は翻弄される。
「ならばっ!」
飛び上がり、翼は『千ノ落涙』を発動する。大量の剣を具現化し、上空から落下させ広範囲を攻撃する技だが、同種の技を持つフェイトを弟子に持つ黒江は対抗策を練っている。
「ほう…。数でくるか。なら、こっちは……!ライトニングファング!!」
剣を電撃で空中爆破し、その隙を突いて、獅子の大鎌を叩き込む。
『断て、獅子の大鎌!!ライトニングクラウン!!』
聖闘士としての闘技も披露する。これらはギアとは関連がないので、映像を解析しても、その場にいても、『ただの手刀を鎌のように振るった』ようにしか見えない。だが、ギアをも斬り裂く衝撃波が奔る。そして。
「そっちが数撃ちゃって考えなら、数の違いを見せてやる!」
「何!?」
「ハァッ!!」
その時、翼は目の前の装者に黄金の翼が生えたような錯覚に囚われた。そして、光の矢を番えるようなポーズから大技を放った。射手座の最大奥義の一つ。その名も。
『無限破砕ッ!!』
無数の黄金の光矢が翼を貫く。その威力は加減してはいるが、本気であれば、太陽神の軍隊を滅するほどの威力である。翼はこの攻撃をモロに食らったわけだ。天羽々斬でとっさに防御したのが幸となり、なんとかノックアウトは免れた。だが、ズタボロであり、吐血するほどのダメージを負っていた。が、まだ闘志は失っておらず、両手に構えたアームドギアから火炎を放出、自身を青い火の鳥と化して突進する。『炎鳥極翔斬』という技だ。黒江はそれに対抗し、シグナムの『シュツルムファルケン』と、とあるゲームの技、それと鳳翼天翔をヒントにして、矢から鳳凰を放った。
『不死鳥は炎の中から蘇るって、相場が決まってるんだよ!!フェニックスバァ――スト!!』
矢が光の鳳凰となる。翼は炎鳥極翔斬で押し切ろうとするが、フェニックスバーストのエネルギー量はそれを上回った。青い炎は赤い炎に侵食され……。やがて、双方のエネルギーの相乗効果で大爆発が起こる。
「やれやれ。ちっと、やりすぎだったか?」
闘技の片鱗を見せ、装者を完全に圧倒する。
「馬鹿な、一度ならず、二度までも……こうも一方的に…!!」
「悪いな、お嬢ちゃん。俺はお前らにあまりかまってやれるほど暇でもねぇんだ」
「どういう……事だ?」
「ほら来た」
呆れ気味の黒江。
「お前は何者なんデス!?調の姿とギアだけど、お前は、お前は…調じゃないデス!」
「あたり前田のクラッカー…って、いつの時代のギャグだっけ、これ」
「ふざけるなデス!!この偽物!!調を返せぇ――ッ!」
「俺もできれば返したいとこだが、込み入った事情があるんでな」
切歌は黒江の一言がきっかけで、思い込みから暴走しており、黒江との間に横たわる実力差を認識できずに突っかかるが、ギアの背部にあるバーニアの噴射を全開にしても、黒江をその場から動かすことも叶わなかった。
「……!?ば、バーニアを全開にしているのに、1cmも押せない!?ありえ…!?ぐぬぬぅ…!」
「さあて、ガキンチョ。勢いは買うが…」
黒江は切歌の顔面を掴み、空中へ投げ飛ばす。これで通算、二回目である。
「今回は手荒にはしたくねぇからな。これでいくか。クロックアップ!」
この時期には昭和ライダー達がその技術力で平成ライダーの最速候補である仮面ライダーカブトの持つ能力『クロックアップ』を起こす原理を解析し、自身の加速装置にクロックアップ機能を組み込んでいて、その作動原理が黒江に伝わっていたため、能力でタキオン粒子を生成する事で、自前でのクロックアップを達成していた。クロックアップの原理は『タキオン粒子を使い、時空空間に干渉する事で『通常と異なる世界に身を置く』事であり、厳密な意味では高速移動と異なる。発動中は発動者の周りの物体や生命体の動きはスローモーションに見え、切歌の動きは『止まっているも同然』である。(ちなみにその上位互換のハイパークロックアップは時間移動すら可能で、クロックアップもスローモーション扱いの速さである)
「さあて、一発で決めるか」
黒江は空中へ投げ飛ばした切歌を手刀で地面に向けて落とすと、その間に足にタキオン粒子を蓄積させ、仮面ライダーカブトと同じように、待ち伏せての回し蹴りによるライダーキックを行った。
「ライダー…キック!」
発音の仕方を仮面ライダーカブト/天道総司に寄せている掛け声で、回し蹴りでのライダーキックを浴びせた。タキオン粒子の破壊力は波動砲で証明済みであるので、オーバーテクノロジーで改造されし昭和ライダーに平成ライダーが伍する戦力と評価される一因である。外的衝撃には、かなりの強さの核爆発にも耐えるほどに強いはずのシンフォギアだが、面積あたりの破壊力では核兵器もを超えるタキオン粒子による攻撃は流石に許容ダメージを超えたのか、切歌はわけも分からぬままにイガリマのギアが解除された状態で倒れ伏す。他の装者にとっては一瞬すぎて、わけが分からなかった。
「悪いな、今、テメーに事情を言ってもわからないから、あの時に立ち去る時に言わなかったのさ、お嬢ちゃん」
黒江はこの時、切歌へ同情的な言葉をかけた。その事から、二課側の装者は善性をなんとなく感じ取ったものの、漠然としすぎていて、その時は確証がなかった。黒江の力が自分らの想像を超えている事を否応なしに示されたのは、更に一週間後(縁日の数日後)の事。
「青髪のお嬢ちゃんか。単独で来るとはな、舐められたもんだ」
「何を!その強がり、今日こそは成敗してくれる!!」
「ん、今、何時だ?」
「なっ、こんな時に!」
「何時だと聞いている」
黒江はそこで一瞬だが、強い殺気を発する。翼は思わず気圧され、その時の時刻を思わず教えてしまう。
「バイトのシフトが近い。わりぃが、嬢ちゃんと遊んでる余裕は無くなった。一発で潜水艦ごと、しばらくおねんねしてな。この雷がお前を討つ!!」
『必殺パワー!サァンダァァブレェェィク!!』
グレートマジンガーのそれと遜色ない威力のサンダーブレークが放たれ、二課の仮設本部となっている潜水艦は電子装備が機能不全を起こし、更に操舵系にも不具合を起こし、潜水不能に陥り、更に翼は命は助かったが、数日は昏睡状態に陥った。黒江は装者から売られた喧嘩は買うが、基本的にバイトの時間には厳しいため、翼を一瞬で昏倒させ、二課の仮設本部を機能不全にさせるのも躊躇しない。黒江はこの後、まんまとバイトのシフトに入り、ぬけぬけとコスプレ喫茶の店員をしているので、大胆不敵である。そこが黒江の策であった。ここまでが黒江が書き記している記録の内、黒江がダイ・アナザー・デイまでに見れる状態にしてあるものである。(他は作業中とのこと)
――後に、調がのび太に語ったところによれば、響の暴走の要因は響がせっかく用意したもの(善意)を自分(調)に否定されたこと、未来が調の出奔を自分に相談なしに手引したことのショックであり、自分の厚意が自己満足的な独善と取られたことへの衝撃、不可抗力で調の姿になっていた黒江を『調に帰る場所を用意する』という理由で一年ほど演技させたために対外的に引っ込みがつかなくなり、やがて意固地になってしまった事、キャロルを『自分なら救えたのに』とする『ガングニールへの過信』、魔法少女事変の最終局面の肝心なところで蚊帳の外に置かれてしまった事実への悔恨、限定解除されたギアを纏う自分でも手出しできなかったエリスと対等に戦い、『助けられたかもしれない』キャロルごと打倒してしまった(実際にはキャロルの魂をエリスが食らっていたため、エクスカリバーで斬ってもその救出は不可能であったので、せめての慈悲で肉体を屠ったのだが)事への反発で、アテナ/城戸沙織にさえ食って掛かったというのは響らしいが、オリンポス十二神の一柱に食って掛かった初の人間という名誉(?)を得てしまったりしている事には苦笑交じりであった。また、この時にグレートマジンカイザーと神聖衣の本気を目撃し、その力を目の当たりにしたことで自分の居場所が侵される恐怖を抱いたのも理由だろうとのこと――
――邪神エリスがキャロル・マールス・ディーンハイムの大人化した肉体を乗っ取り、顕現した時のこと。もはや全ての手段を無くし、黒江でさえもゲイ・ボルグで負傷し、エリスの思うがままかと思われた。だが、そこに驚きの救援が現れたのである――
「あれは……あのマジンガーは……まさか!?」
負傷した黒江も驚きの援軍。それは。黒鉄のボディと金色のモールドを持ち、尚且つグレートマジンガーの意匠を引き継いだ者。
『偉大な勇者を超え、偉大な皇となる!!グレートッ!マジンカイザー!!』
グレートマジンガーの進化の一つの回答であるGカイザーは、マジンエンペラーGがゲッターロボとのハイブリッドであるのに対し、純粋なマジンガーとしての進化の形だった。装甲も超合金ニューZαであるため、マジンカイザーのもう一つの可能性と言える。
『喰らえ!バーニングブラスタァァ!』
「やべ!!鉄也さん、やる気満々だ!伏せろ!!焼け死にたくなかったら頭を下げて、地面に伏せろ!」
バーニングブラスターはファイヤーブラスターの対となる攻撃であり、その威力は因果律を操れるマジンガーZEROでもない限りは、為す術もなく溶け落ちてゆくだけの一撃だ。その熱線の温度はもはやシンフォギア世界の機器では計測不能な数値だ。少なくとも、市街地で撃っていい一撃ではない。更に、シンフォギア世界の摂理を外れし魔神皇帝であるため、シンフォギア世界の摂理は一切合切通用しない。
「鉄也さん!いきなりバーニングブラスターはないって、殺す気ですか!?」
『スマンスマン、小手調べのつもりだったんだ。城戸沙織さんを連れてきてるんで、手加減なしでいいと言われてな』
「え!?沙織さん、来てんすか!?」
『エリスが復活したとあれば、私が動かないわけには参りません』
「さ、沙織さん!?んじゃ、VIPカリバー(VF-19の要人輸送型)を動かしてるのは……」
『あたしよ。随分可愛い姿になってんのね、貴方』
「と、智子!?お前、私の居場所をどうやって!?」
『フェイトが貴方の転移に感づいてね。管理局を動かして、かなり広範囲の次元世界をサーチしてくれて、沙織さんにも協力を仰いだのよ。ドラえもんのタイムテレビも使ったら、発掘された古代ベルカのデバイスの残骸に、貴方の姿をした子の記録が残っててね。その子の意思があなたを、ここへ呼んだって事が分かったのよ』
『ええ。やがて、星矢に討伐されたはずのエリスが、この世界に流れ着いていると分かり、私が直接やって来たのです』
智子は機体を着陸させ、降り立つとすぐに水瓶座の黄金聖衣を纏う。負傷し、ゲイ・ボルグで黄金聖衣にも傷を負わせられた黒江に肩を貸し、沙織のもとに連れて来る。調の容姿と声になっていた黒江だが、沙織の前では臣下としての礼儀を忘れない。片膝をつき、畏まる。
「申し訳ありません……。私は自分の姿を喪失してしまい、そのせいでゲイ・ボルグの因果を断ち切れず…」
「仕方がありません。貴方が如何に『昇神(人から神格になること)』していようとも、他人の姿になっていれば、人としての因果に引きずられるものなのです。ですが、エリスを封印するには、むしろそのほうが適任かもしれません」
「神殺し、ですか?」
「そうです。あなた達に使命を託します。エリスを封印するという。天秤の武器の使用も許可します。それがオリンポス十二神である私にできるせめてのことです。」
「沙織さん、貴方、何を…」
「神の血を黄金聖衣に与えるのです。さすれば黄金聖衣も『最終黄金聖衣』となり、神聖衣を呼び起こす依代となるのです」
沙織は持ってきていた刃物で自分の腕に傷を入れ、その血をヒビが入った山羊座の黄金聖衣に注いだ。神血を注がれた山羊座の黄金聖衣は、瞬く間に傷が直る。そして、神聖衣の依代となるべき力を得た。
「ありがとうございます、沙織さん……いや、アテナ。不肖、この黒江綾香。使命を果たしてご覧に入れましょう!」
と、沙織にその言葉を発すると、神聖衣を顕現させる。智子と共に。
――聖闘士としての究極にまで達した二人は黄金神聖衣と天秤の武器をを携えて、対峙する。グレートマジンカイザーのサポートを受けて。この時までに戦闘能力を失っていた奏者達は、次々と起こる光景に置いてけぼりをくらっていた。アルカ・ノイズを一掃し、尚且つ『摂理に反している』としか思えぬ力を持つ魔神、黒江が以前に纏って見せていた神聖衣。それを纏うもう一人の闘士。完全に戦いの主役は黒江らへ移行していた。もはや奏者らの手に負えぬ戦いとなり、Gカイザーは搭乗型兵器の限界を超越した幾何学的な機動を見せ、ドリルスマッシャーパンチを撃ち込む。皇帝の名を冠するマシーンである以上、その破壊力は『兵器』の区分を飛び越えた何かであり、その拳はドリルのように、全てを穿つ――
『ギガントミサイル!!』
続いて、腹からミサイルを生成し、エリスに撃ち込む。市街地にキノコ雲が立ち込める。それで生じた隙を突く形で、二人は光速を超えて攻撃を仕掛ける。光速であるため、映像モニター越しでは丸い光が移動しているようにしか見えないか、映像にほとんど映らない。
『槍にやられたんだ、槍で返させてもらうぜ!!』
黒江はそう宣言し、天秤の槍を持ち、エリスに突き立てる。エリスはキャロルを依代に顕現しているため、金髪の容姿であるが、エリスが所々で作り変えており、服装は完全にエリスの邪霊衣(リーフ。植物を操る能力を有する。)になっており、妖艶な雰囲気に一変していた。その為、歯牙にもかけない装者らと黒江らを分断してみせる。エリスの容姿はキャロル・マールス・ディーンハイムの大人化した姿だが、髪形がロングストレートに変わっていたり、邪霊衣を纏っている影響か、化粧が濃くなったかのような風貌だった。神格であるため、壁代わりに生成した植物で、装者達のどんな攻撃も通さない。たとえ、彼女たちの全てのエネルギーを集めたガンニグールの篭手による突進であっても物ともしない。ガンニグールのほうが植物にぶつけ続ける衝撃と力に耐えられず、ヒビが入るほどの強度であった。
『これはお前らがどうにかできるレベルを超えた問題だ!ギアが自壊する前に、響の攻撃をやめさせろ!』
黒江は怒鳴るが、響は強引に一撃をかけようとする。が、ガンニグールにはエリスへは重大な弱点がある。それは所詮、依代が『グングニルの欠片』でしかない事だ。完全なものであれば、神話の通りに『鋼の穂先にルーン文字を配することにより、その魔力で貫けない鎧はない』威力と因果を誇るのだが、欠片な上、響の腕そのものがアームドギアとなった都合、グングニルの力は完全には発揮されていない。その為、ゲイ・ボルグを要するエリスはゲイ・ボルグの因果で上回れてしまうのだ。
「小娘。その勇気は褒めてやろう。……が、このゲイ・ボルグの前ではグングニルの欠片ごときの力など!」
ゲイ・ボルグの因果はエクスカリバーであれば打ち消せるが、不完全なグングニルを依代にしたガンニグールのギアでは打ち消せない。直撃を逸らすのがせいぜいである。ゲイ・ボルグが投擲され、響はとっさに巨大化した篭手で打ち合わせるが、ゲイ・ボルグはその因果律兵器ぶりで、ぶつかった篭手を打ち砕いてゆく。
「そんな……うそ……ガングニールが……!?」
これは響当人のみならず、装者全員には信じられない光景だった。ゲイ・ボルグは『対象を貫く』という因果を引き起こす神器であり、ギアでどうにかできる領域を超えている。本来であれば、ぶつかった瞬間にギアが破壊されていてもおかしくない。だが、響は父親と親友、仲間の祈りの力を媒介にオーバーブーストがかかっており、ゲイ・ボルグに抗ってみせた。致命的な直撃を逸らす程度であるが。それを確認した黒江は、貫かれたショックで篭手部分が破損した響をお姫様抱っこで抱きかかえ、そのまま他の装者に託した。
「黒江女史、立花は……?」
「気絶しているだけだ。あとは任せる。アイツは私達が封印する。それが私らの使命だ」
「女史、教えて下さい。奴は一体なんなのです?それにあのロボットは……」
「おそらく、奴の体に埋め込まれていた種子が発芽し、邪神に乗っ取られたんだろう。いつそうなったのかは分からんが……」
「それでは我々側についたエルフナインは……。」
「大丈夫だ。あいつの生命力を活性化させる星命点を突いておいた。聖闘士に伝わるツボのようなものだが、生命力を活性化させたから、直に回復する。あのスーパーロボットは……うーむ。マジンガーZの遠い子孫?そうとしかお前には説明出来ん」
Gカイザーについての説明はものすごくアバウトなものだが、間違ってもいないが、ややこしいものだ。マジンガーZはどこの世界でも、たとえ実物がない世界でも、アニメとして存在しているので、アニメに疎い翼でも分かるように努力した。グレートマジンガーはゲームをしてなければ、21世紀の若者には浸透していないので、マジンガーZの子孫と言ったのだろう。
「マジンガーZぉ?スーパーロボット大戦の常連の70年代ロボの?最近に派生作品が連載してる?」
「そそ。それだ。それの後継機の一つだよ」
「グレートマジンガーとかの?」
「そそ。グレート系だよ、あれは」
クリスはある程度は知っていたらしく、頭部が鋭角的なデザインで、放熱板がV字である事から、グレートマジンガーの系統であるとは分かったようだ。それに安堵する黒江。
「あ、やべ。ゴッドサンダーだ。お前ら耳を塞いで口開けろ!叫べ!鼓膜破れるぞ!」
「ま、マジかよ!?」
ややあって、鉄也の『ゴッドサンダー!!』の掛け声と共に、ゴッドサンダーが放たれ、ピンポイントで凄まじい落雷が引き起こされる。その電撃の威力は黒江のアークプラズマにも匹敵するほどのもので、エリスの周りにあった、崩れたビルが完全に消滅し、キャロルがエリスに乗っ取られる前に錬金術で形成していた『碧の獅子機』もエリスとなったキャロルを残し、完全に消滅していた。
「お、おい!ばーちゃん、なんだよ今のは!?」
「ゴッドサンダー。グレートマジンガーのサンダーブレ―クの発展形だ。サンダーブレークは私が撃って見せたが、ゴッドサンダーはその比ですらねぇ『神の雷』だ。奴もかなりのダメージは負っただろう。んじゃ、戻るわ」
「あ、お、おい!あたし達はどうすりゃいいんだよ!?」
「避難誘導とかをやってくれ。私達でどうにかする。オリンポス十二神の一人も来てくれているしな!」
「お、オリンポス十二神!?」
「そうだ。細かい説明は終わったら全部する!今はその暇がないんだよ」
――調が黒江の書き記している記録を推敲する過程で、エリスとの戦いの様子もおぼろげにわかってきたが、グレートマジンカイザーが明らかに『通常物理法則の延長線で造られた兵器』なのに、シンフォギアより明らかに強力な力を駆使できるという点が立花響の『自分の居場所を奪われる』恐怖を煽ったためだと推測され、調はなんとも言えない感覚を覚えたという――
『約束された勝利の剣……!これが綾香さんのいう、人が、星が、神が願い、遂には成した奇跡の産物なのですか……!?』
エルフナインはエクスカリバーに対し、このようなコメントをしている。哲学兵装となったガングニールと同等以上の力を持ち、更にガングニールに打ち勝つ『最強の剣』(黒江がエアを隠していたとは言え、エクスカリバーはガングニールの能力を真正面から上回り、響の特性でもあるエネルギーベクトルの制御の干渉をさせなかった)というエクスカリバーの持つ存在価値は凄まじいが、あくまで一つの道具である。力の良し悪しは使う人間次第なのだ。鉄人28号の開発チームにいたという、敷島博士(早乙女研究所の同名の博士との血縁関係は定かでない)は『どんな力も使う人間次第で善にも悪にもなる』と言い残したといい、その思想が未来世界でサイコフレームの封印を喚き立てるジオン穏健派と地球連邦政府の温度差に繋がり、ミネバ・ラオ・ザビが交渉に苦慮する姿はジオンの権威の低下の象徴であった。
「あの人はガングニールに依存しすぎたんだよ。それ以外にも戦う力はいくらでもあるのに……。プリキュア、聖闘士、魔女、魔導師……。スーパーヒーローやスーパーロボットだって。あの人がシンフォギアだけに頼らない生き方をもっと早く見つけてくれていれば……かち合うことなかったのに。」
調は記録の推敲作業中、そうぼやいた。その響も調とかち合う事になったことを悔やみ、沖田総司の人格と向き合うことで『誇り』を理解し、キュアドリーム達と出会ったことで彼女の内にある一つの因子が目覚め始める。沖田総司とは違うそれは、立花響には次代の『プリキュア戦士』の素質があった証明であった。