ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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七十九話の続きで、調の響への態度などへの回答編でもあります。


第八十二話「骨休みとキュアスカーレットの決意表明」

――のび太がことはと調という『妹』を得た少年期、ダイ・アナザー・デイ以降はのぞみという『娘』(養子の妻なので)を得た。正式なコージとの結婚はのび太壮年期の頃だが、2020年の時点で実質的には同居し始めていた。――

 

 

――2020年――

 

「まさか、この時代になってもプリキュアが現れてるなんて」

 

「アニメで見る気分はどうです、かれんさん」

 

「変な感覚よ。自分達も過去にはそうだったというなら」

 

「あたし達は特に人気あるって自負してますよ?二年間戦ってた最後のプリキュアですし」

 

「自慢するところなの、そこ」

 

「いいじゃないですか、ラブちゃんたちからは一年で代替わりなんですから」

 

キュアドリームの自慢の一つは『現役を二年張った』というメタ的意味での戦歴だが、メタ的には『スプラッシュスターが商業的に成功していれば生まれていない可能性があった』という位置づけではある。二年を一貫して戦ったという意味では、南光太郎と並ぶ。

 

「なぎささんとほのかさんは出ずっぱりでいいけど、あたし達はアニメだと、声無しの顔出しも多いですよ。アフレコスタジオから飛び出すほど多くなったとかで」

 

「メタすぎるわよ、のぞみ」

 

「三年前、はなちゃん達の代の映画のアフレコをした時に聞いちゃって…」

 

2017年のオールスターズ映画にスネ夫の手引きで口出しした際にオールスターズ映画をやらなくなったメタ的事情を聞いてしまい、若干そういう事情に幻滅したらしいのぞみ。だが、『本物』がアフレコするという点では良い宣伝になったし、ダイ・アナザー・デイ前の良い骨休みにはなった。

 

「その時のニュース、録画してあるんですよ。本物が舞台挨拶するなんて前代未聞の事態だって話題になったし、あたしとはーちゃんって組み合わせだったから、色々質問攻めに遭ったんです」

 

「代が離れてるものね、ことはとは」

 

「ええ。参りましたよ、みらいちゃんたちから預かってるって言ったら、家事できないじゃんって言われて」

 

のぞみは2017年の『HUGっと!プリキュア・ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』の完成記念の舞台挨拶に招かれ、ことはと共に変身を披露したが、その際に大人のファンたちから『家事出来ないし、方向音痴じゃんー』と言われ、ずっこけてしまったりしている。ことはとの付き合いもそれからの三年になるため、姉貴分の自覚が生まれ、家事に関しては錦の残したスキルが自家薬籠中の物になった影響でそれなりになっている(方向音痴も航空兵なので治った)。みらいたちも復活後は多忙になったため、ことはの面倒は半分はシャーリーとのぞみが見ているようなものだ。みらいは色々な勉強があり、リコは前世がセレナであった都合、シンフォギア装者との折衝に駆り出されたりしている。なお、シャーリーはカレンの苛烈さが目覚めてはいるが、元々の性分もあり、ことはへも面倒見がいい。ことはがかつてのルッキーニほどは手がかからないのもあるだろうが、意外にかわいがっている。

 

「響も大変ね、色々とお守りが増えて」

 

「響も案外、お守りを楽しんでますよ?アコちゃんのことは?」

 

「知ってるわ。あの子、前世がフランスの英霊だなんて。今の国籍はどこに」

 

「一応、フランスです。響はアメリカ。あたしは日本のままです」

 

「響がアメリカねぇ…。奏が聞いたら驚くわよ」

 

「それが、奏ちゃんは地球連邦軍の大尉ですよ?」

 

「えぇええええ!?」

 

「やっと探しあてたんですが、今いるのが銀河外縁部で…」

 

南野奏は地球連邦軍のクレア・ヒースロー大尉へと転生していた。エゥーゴ時代からの古参であるため、所属部隊が手放すのを渋り、ダイ・アナザー・デイには参戦できない見込みであった。のぞみ達が探しあてた時にははぐれゼントラーディ相手の最前線勤務で、ゼッツーの外宇宙仕様に乗っていたという。

 

「響達によろしくってメールが来ましたよ。古参になってたから、所属先の司令官から渋られまして。連邦議会議長に頼んで、圧力はかけてもらったんですが…」

 

ゴップ連邦議会議長のラインで引き抜きの圧力はかけたが、クレア(南野奏)の所属先の司令官が露骨に渋ったため、キュアリズムの参戦は極めて困難であった。そのため、のぞみは本気で残念がっており、彼女から『アコの面倒はよろしく頼んだ~!』と生前よりかなり快活な性格である事が伺えるメールが送られてきたという。

 

「おい、ドリーム。ライブマンから予備のファルコンセイバーと、サンバルカンからバルカンスティック借りといたぞ」

 

「ありがとうございます、先輩」

 

「お前に日本刀もたせたら、変なとこからのクレームがついたからな。それで当分は対応しとけ。ライブマンやサンバルカンから借りたって言えば黙る」

 

「あれ、『ウチ』の家宝なんですけどねぇ…」

 

のぞみは錦の諸権利を引き継いだ都合上、錦が使っていた刀を持っている。プロパガンダと広報などの都合で、プリキュアの姿でも使ってみたのだが、黒江曰く『変なところ』からクレームがついたので、超獣戦隊ライブマンと太陽戦隊サンバルカンから武器を借りたとのこと。それならクレームがつく心配はないからだ。(それまでも一時的に借りた事はあるが、正式な借用はこの時が初めてである。)

 

「軍隊にクレームがつくんですか」

 

「日本が特殊なんだよ。音楽隊がホール借りるだけで、変なとこからクレームつくんだから。だから、ヒーロー達から武器を借りてきたんだ。刀は日本じゃ美術品扱いだしドラえもんに頼んでコピー作るか、軍用の魔導刀使うのが無難かもしれん」

 

「姉貴になんて言えばいいんです?」

 

「江藤隊長に説明してもらえ。隊長は今は参謀だ」

 

かれんとのぞみにそう明言する黒江。ヒーローの武器であれば、クレームは何故かつかないのも日本の不思議なところ。いずれもプリキュア達が生まれる遥か以前に活躍した(昭和の時代)スーパー戦隊であるので、かれんにはピンとこなかったが、日本の偉大なスーパーヒーローであることには変わりはない。

 

「それに家宝なら表向きに美術館か博物館に預かって貰え、それで目くらましにはなる」

 

「後でお礼のメールを出しとします」

 

「貴方、剣で戦ったのは一度だけでしょう?」

 

「現役時代はそうです。だけど、あたしは自分の世界で長く戦ったんで」

 

「…そう」

 

「ええ…。それが人生の間違いのもとだったとしても、否定はできませんよ、かれんさん。」

 

のぞみは前世の『知られる事がなかった戦い』でフルーレを使った戦闘も多くこなしていたため、実のところ、戦闘面の実力では転生した直後でも現役時代を上回っていた。今では錦の戦闘技能が引き継がれたため、なぎさや咲と言った偉大な先輩たちとも互角に戦えると自負している。

 

「ことはのあの強さはどこで?」

 

「俺たちが20年の時間をかけて、最高の戦闘術を仕込んだ。剣術なら、こいつより上だ」

 

飛天御剣流を覚えさせたため、剣術であれば、フェリーチェは全プリキュアでも最強を誇るほどに成長したと明言する黒江。実際、かれんの思い出した『大決戦』でも飛天御剣流で無双を誇っていた。

 

「先輩、飛天御剣流はないですよ、反則ですよぉ」

 

「るせぇ。お前だって、草薙流古武術使えんだろ」

 

のぞみも草薙流古武術を会得し、炎の拳を奮える時点で反則そのものである。後にやって来る日向咲/キュアブルームも『ずるい~!反則だよ反則!!』と愚痴るほどの威力の拳を使えることはデザリアム戦役でメンバーにお披露目されるわけだが、キュアピーチも『アギトの力』にいつの間にか目覚めていたことが飛び蹴りの際に地面に浮かび上がった紋章で確認される。それは黒江も驚きの代物である。

 

「草薙流古武術?」

 

「あたしの転生した先の世界の日本に伝わっていた炎を扱える古武術です。あたしの体の素体になってた子はそれを継承していたみたいで」

 

「それで撃てるようになってたわけだ。りんには言ったんだが、あいつ、炎の攻撃がアイデンティティだろ?」

 

「だいたいは想像つきます。あの子、ものすごく取り乱したでしょう?」

 

「小一時間くらいはツッコミいれまくってたぜ。あたしのアイデンティティがぁ~!!とか…」

 

「あの子らしい」

 

「第一、お前らの後輩にいるんだがね。炎の蹴りが出来るプリキュア」

 

「コスモと同じチームのキュアソレイユでしたね?」

 

「ああ。今はどこにいるか分からんがね」

 

黄色のプリキュアながら、赤のプリキュアの領分である情熱も司るキュアソレイユ。黄色のプリキュアでありながら『あざとくない』点では異端児である。

 

「そのコスモは?」

 

「今日はイベントにお呼ばれだ。あいつが今んとこは最新のプリキュアだしな」

 

キュアコスモは生前は猫型宇宙人であるが、今は地球人に化けた姿がデフォルトになっている。(尻尾はあるが、生前の名残りのようなものだ)本人も今の生活を楽しんでおり、元・怪盗でありながら、現在は職業軍人である(階級は中尉)。

 

「いいんですか?」

 

「あいつの次の代のプリキュアは放送休止されそうだしな。中国で疫病が流行り始めたみたいだし。」

 

黒江はその後に疫病が広がることを予期していた。治癒魔法持ちの者たちが疫病対策に活躍したことで、日本連邦ではウィッチの価値が認められるが、西洋人達は『近代科学が魔術に負けた』という屈辱を懐き、その屈辱感が統合戦争の伏線の一つとなる。また、統合戦争で居場所を無くした者たちは後にジオンの母体となり、地球圏に幾多の戦乱を撒き散らした挙句に消滅しようとしている。ジオンの風俗が世界大戦当時の日独がベースになっていたのはなんとも言えない歴史の皮肉であり、地球連邦政府に仇を成した国家としてはもっとも長命を保った。そして、ダイ・アナザー・デイでも暗躍している。

 

「疫病?」

 

「23世紀には断片的にしか記録が残っていないから、詳しくはわからん。中国とロシアが文明を後退させた名残りだよ」

 

ドラえもんの時代に存在した『宇宙放射線病すら治癒できる』ウルトラスーパーオールマイティワクチン。ドラえもんの時代に生み出された究極のワクチンだが、統合戦争で失われている。ジオン系勢力はその復活をあの手この手で妨害し、しかも残されていた資料を押収し、コロニーを壊滅させる細菌兵器に応用していた事実が明らかになったため、最近は一気にジオンから求心力が失われ始めた。(それがジオンを自滅と言える第三次ネオ・ジオン戦争に走らせたのは皮肉であるが)

 

「今の状況はどうなってるんです、先輩」

 

「23世紀のジオン残党も暗躍してる。目下の敵はティターンズ残党だが、ティターンズにロシアと中国の金が流れている。それでリベリオンの軍備を近代化してるんだから、始末が悪い」

 

「ティターンズはどうして、MSを温存してるんです?」

 

「数だよ。正規軍の機体に比べりゃ旧式だし、いくらグリプス戦役の時にバケモノって言われようと、マジンカイザーとかに比べれば有象無象でしかないからな。有志から比較的新しい機体を流されるのを頼りにしてるんだよ」

 

ティターンズは一個軍団規模が転移したが、有人MSの数はけして多くはないので、モビルドールなどで数合わせを始めている。無人機の本来の開発目的に沿った運用である。(それを主力にしようとしたのが一部勢力の大間違いだが)皮肉なことに、彼らが正しいモビルドールの使い方を実践したことで『人材不足』の移民船と移民星から無人機の規制緩和を求める声が生じ、度重なる戦乱で有人部隊の再建が進まない本星も規制の一定範囲の緩和を容認する。その過程でロンド・ベルに最新鋭機を配備し、その抑止力が期待されるという政治抗争も起こっている。

 

「奴らにとっちゃ、リベリオンは駒だ。そのうち、ファラウェイランドは圧力に耐えかねて屈伏するだろうから、宛にならん。カールスラントはドイツの圧力で軍縮したから、これも戦力にならん。頼りになるのはブリタニア本国の戦力と米英軍、自衛隊、地球連邦だけだ」

 

「カールスラントも可哀想に」

 

「ドイツがカールスラントの共和制化を目論んだ上、ナチス化抑止を理由に、大規模にリストラと軍縮しやがったからな。エーリカ達がこっちに来たのも、それから逃れるためだ。海軍の拡張もほとんどがキャンセルされたし、空母は返却して来やがった。違約金をふんだくってやらんと、気が収まらんだろうな。あの国は今後は義勇兵以外は殆ど使い物にならんだろうな」

 

 

グラーフ・ツェッペリンは姉妹艦のペータ・シュトラッサーの喪失もあり、カールスラント海軍は運用を諦め、10年近くも放置状態であり、戦列復帰は難しくなっていた。一度もまともに運用されずに返却というのも虫が良すぎるため、日本連邦は莫大な違約金をふっかけて恫喝した。エーリヒ・レーダーに代わって、カールスラント海軍の実権を握ったカール・デーニッツが潜水艦に傾倒した理由もそこにある。日本連邦は得た違約金を80000トン級空母の建造費に充てつつ、余った金で国民の福利厚生を近代化する。愛鷹の戦列復帰は状態の悪さから諦められたが、プロパガンダの必要から、映画撮影用に再整備され、日本の戦争映画に駆り出される余生を送ったという。(カールスラントの復元工事でカールスラント式艤装が取り外されたのも大きい)また、カールスラントは必要上、軍事国家だったのを無理に転換させようとして失敗したため、軍のモラルと秩序が短時間で崩壊するという有様となった。ドイツも気まずくなり、一定範囲の再建は認めたが、既に多くの人材が海外へ流出した後であり、総合的な兵器開発力は見る影もなく低下、海軍は三流、陸空軍は二流のそしりをされるまでに堕ちてしまうが、傭兵化した実力者らはその後の戦乱でも日本連邦で活躍したため、それがせめてもの救いであった。

 

 

「自由リベリオンと俺らが今後は矢面に立たねぇとならん。次の戦場は太平洋だ。近代兵器がわんさか使われるだろうから、最後あたりにはミサイルが飛び交ってるかもな」

 

「研究されてます?」

 

「自由リベリオンにミサイルの開発資料は流れたし、カールスラントの軍縮に納得がいかん連中は向こう側に開発データを渡すだろう。そうすれば早い。ミサイル戦のカリキュラムを確立させんとな…」

 

「あなた達も大変ですね…」

 

「お前にもそのうち加わってもらう事になる。みゆきがお前を軍医にならないかって誘ってるぞ、かれん」

 

「みゆきが?それこそ驚天動地ですよ」

 

「あいつが聞いたら憤慨ものだぞ、かれん」

 

「なにげにひどいこと言ってません?」

 

「だって、のぞみ。あの子はあなた以上の……」

 

「うーん…あ、あはは……」

 

星空みゆきは現役時代、のぞみを一回り更にアホにしたような人物と言われていた。かれんの一言はそれを前提にした発言なため、さすがののぞみもみゆきに同情した。星空みゆきは宮藤芳佳へ転生しており、医療従事者志望である。なおかつウィッチとして類稀な才能があったために戦闘要員であったが、本分は治癒ウィッチである。なおかつ、角谷杏の狡猾さも身についているため、この時点の若手NO.1とも噂されている俊英である。生前と違い、素で有能な人物であるため、流石に苦笑いののぞみ。

 

「ん、先輩。TVのワイドショー見てください。扶桑が公表した大和型戦艦のデータ特集やってますよ」

 

「この手のワイドショーって、うちらを嘲笑するためにしてるからなー」

 

黒江の言う通り、扶桑での大和型戦艦は完成時の時点で機関主力は192000馬力(カールスラントの高圧技術採用)を誇り、速度も29ノットに達していた。これは史実の性能所元が黒江達によってリークされた後、艦政本部が純粋な国産型から機関を変更したために実現したが、日本では『ドイツさえ手に余った高圧タービンが戦中の日本に扱えるものか』と評論家達に物笑いの種にされていた。(扶桑が核融合炉に大和型戦艦の機関を変えたのは、実は機関整備と燃料補給の手間がかかるからだ。核融合炉の更に膨大な出力でさらなる速度が得られたので、アイオワ級に充分に対抗できる)

 

「今の大和型は公表したのと別物だ。23世紀でも一線級で通じる。波動エンジンを乗せられる構造にしたからな。日本人がこだわる速度も30ノット超えだ。戦艦としては過剰性能なくらいだ」

 

「戦艦に必要なんですか?そんな速さ」

 

「普通はいらんが、空母の弾除けに使うのに必要な速さだって言われてる」

 

戦艦は26ノットも出れば通常は高速に分類される。もっとも、損害を受ける事、単艦行動を前提条件としない戦艦に高速はあまり要求されないが、日本は30ノットに強く拘ったので、扶桑は核融合炉を動力に選んだのである。宇宙戦艦用の部材で強化したため、ウィッチ世界の他国の如何なる戦艦も太刀打ちは困難となった。自動化で乗員も1000人台に落ち着いており、中身はまったくの別物である。また、日本は単艦対空戦で坊ノ岬沖海戦での米空母戦力を撃退することを求めたため、パルスレーザーも搭載され始めており、もはや二次大戦レベルの航空機では手も足も出ない。(ガイア側の近接戦闘用六連装側方光線投射砲、司令塔防護ショックフィールド砲などは実効性の不明度から採用されず、アース側で効果が実証された堅実な武装のみが載せられている)

 

「戦艦はタフネスと火力が取り柄だが、日本はレイテと坊ノ岬を引き合いに出しやがるからな。怪異だろうが、宇宙戦闘機だろうと撃墜できる能力を与えた。1940年代にゃ過剰性能だぜ」

 

「言えてますね。戦艦を捨てさせようとしたら、宇宙戦艦の技術で魔改造してくるなんて思いもしないだろうし」

 

「煙突もVLSに改造してる関係で残しただけだしな。大和型戦艦の後期はその仕様に最適化して建造してるからな」

 

「あの、改造し過ぎでは」

 

「そうでないと、日本が認めんかったからだよ、かれん」

 

TVのワイドショーは影響力があるため、施策への悪影響を恐れた扶桑軍は偽装のため、古い情報を開示している。そのため、大和型戦艦はディーゼル機関搭載と偽装されている。(速力も28ノットほどに偽装)特にオラーシャが政変でニューレインボープランからも脱退しようとした(艦は完成間近であった)事は一大事であり、結局、オラーシャはそれらのラ級を国内政情の落ち着いた1950年代まで受領できずじまいであるが、その混乱を鑑みた措置だ。

 

「ん、コスモからだ。お前ら、三日後のイベントにお呼ばれだぞ」

 

「えぇ!?」

 

「町内の小さいイベントだが、お隣の国から疫病が広まったら、息苦しい思いをすることになるかもしれないだろ?」

 

「それはそうですね…」

 

「うららの仕事を手伝った時みたいで、なんか面白そう~」

 

「そいや、三年前から気になってたんだが、アフレコ技術なんて、どこで覚えたんだよ」

 

「前世の高校時代に、うららの相手役が急病で代打ってことでやったんですよ。昔とった杵柄だったけど、上手くやれてよかった」

 

のぞみは前世で芸能活動歴があり、それがその後の人生で支えになったらしいことを明かした。アフレコを伴う仕事だったらしく、その経験があったため、アニメのアフレコをこなせた。それは現役時代を終えた数年後の高校生の頃だと言い、少なくとも、一回や二回ではなかったのが分かる。りんが下手すぎてボツにされたのと裏腹に、のぞみはその経験で担当声優もびっくりの演技を見せ、映画の目玉を作り、舞台挨拶でも自慢したのである。

 

「あれ、お前。声優さんに記念写真せがまれたって言ってなかったか?」

 

「ええ。はーちゃんが迎えにきたんで、アフレコスタジオに悲鳴が……」

 

のぞみが担当したのは担当声優が急病でできなくなった戦闘シーンのボイスだったので、比較的に短い時間の収録ではあったのだが、シナリオ変更でシューティングスターを放つシーンが追加され、そこを自分で自分を吹き替えた(本人役)が、本人なので、発声は本物そのもの。スタッフも圧巻の演技であった。公表は広告担当を新たにもらったH広告代理店(骨川コンツェルン傘下の広告代理店)の意向もあって、舞台挨拶でのことであり、のぞみとことはが招かれ、そこでのぞみは婚約をぶちまけていたので、プリキュア界隈を賑わせていた。(ことはとの同居も明かし、別の意味で悲鳴があがったという)町内のその小さいイベントに出席したのが、2020年での公なプリキュア達の活動の最後であった。以後はダイ・アナザー・デイに従軍していくためであった。

 

「それと、調とあいつのことも仲裁せんとならんから、忙しくてな、俺。あいつら、かち合っててな、今」

 

「ああ。あの子のことですね」

 

「そうだ。あいつは『元鞘に収めたかった』んだろうが、仕方がないとは言え、俺があれこれとアイツにまつわる認知をあいつらはともかく、一般人に刷り込んじまった後に戻ってきたわけだからな。俺のあれこれな振る舞いをごく自然と要求される場面が多いわけだ。学校とかな。それに、かなり早い段階でフィーネから離反したってことになったし、一般にはあいつは俺のあれこれの結果、『二課の新しいシンフォギア装者』として最初から認知された状態なわけだから、まったくの元鞘ってわけにもいかなかったし、調もナーバスになってたからな」

 

黒江曰く、自分があれこれ風来坊的に動いていた上、既にそう認知された状態になってから調は帰還したので、元鞘に収められない点が多く生じていた上、調自身もベルカの興亡を体験し、ナーバスになっていたという。それで調の琴線に触れる一言を立花響が言ってしまったのが出奔のきっかけであるという。

 

「俺が代役として築いてた場所はあいつ自身で築いた場所でもなんでもないし、元鞘に戻れないって、あいつ自身も思ってたんだろう」

 

調は10年間の生活で価値観も変貌していた。ベルカ騎士としての教育を受けたためもあり、調と切歌たちが元の鞘に収まることを願うことに悪意がないことは理解していても、黒江のやっていた振る舞いを対外的に求められるのは必定であるとわかっていたため、代役の良いところまで引き継ぐのは無理だという思考も関係している。

 

「まぁ、元を知らないからどーにでもなれってことで盛大にやらかした俺の責任も盛大にあるから、一年は演技したし、野比家に土下座もので頼み込みもしたがな。転移した時、アニメの一期は見てたが、二期以降はほとんど見てなかったし。それにあいつら自体は評価してるよ。そうでなかったら、うちのガキにあいつの名前をつけるかよ。」

 

黒江は後継者である大姪に風鳴翼の翼という名を頂いて与えている。魔法少女事変までシンフォギア世界にいたため、翼の思いを理解する機会はあったし、天羽奏のことは、転移前にフェイトがアニメにハマっていた都合で元から知っていた。だからこそ、自分の後継者である大姪にその名前をつけたと。

 

「皆が同意出来る大義と自分の内の正義をすり合わせなければ、社会生活なんて出来ねぇ。あいつは『善意』がどうにも先走りすぎたし、調も戻ってきて、精神的にすごくナーバスになってた。ベルカの聖王が世界を統一するために寿命削って、ゆりかごに乗ってたのを目の前で見てくれば、な」

 

「それ、なんか言われますよ?」

 

「もう言われてるぜ。高度すぎる対応力や理解力を求めて、それが出来なければ見下すなんて言われてるが、俺たちも全知全能じゃねぇから、ミスも普通にやる。だからこそ、ヒトなんだよ」

 

黒江は仲間内の仲裁においての心労も普通に多いため、のび太からアドバイスをもらうことは普通にある。Gウィッチも人の子、ミスは普通にあるし、お互いにかち合う事はある。戦闘では無敵であっても、それは一面的な見方である。黒江はニヒリズムに満ちた微笑で誤魔化すが、ため息をつきたいほど、弟子の失態に胃を痛めていたのだ。そしてもう一つの問題にも…。

 

「オリュンポスや北欧神話、日本の八百万の神と同じで、一つの人格が神性を持っただけの存在に完璧求めてどうするんだよ?中東発の全知全能唯一神だって、世界を完璧に作れねーってのに、無理言うない。自分の領分で手一杯だっつーの」

 

焼酎をホッピーで開けながら、盛大にボヤく黒江。焼酎はあまり飲まないのだが、飲む辺り、調が『あの人がシンフォギアだけに頼らない生き方をもっと早く見つけてくれていれば……かち合うことなかったのに』と愚痴っていたと、部下で腹心である黒田から報告があったからで、響と調の仲裁を行う黒江の苦労は如何に。のぞみとかれんはやけっぱちにも見える、焼酎を煽る黒江に同情せずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

――こちらは水無月かれんの故郷の世界――

 

大決戦で蚊帳の外に置かれてしまった『かれんの世界の夢原のぞみ』は不満を顕にしていた。その出来事から蚊帳の外に置かれたばかりか、別の自分を助けることを公言したことで、『ここにいる自分はどうでもいいのか』とする不満を持っていた。

 

「わかんないよ!そのわたしは『わたしじゃない』のに……」

 

「かれんさんとこまちさんだって、よく考えた末の事なのよ、のぞみ」

 

「なんで!?そのあたしにも、みんながいるはずだよ!?なのに、なんで……!?」

 

その世界ののぞみは荒れていた。かれんとこまちがキュアフェリーチェの要請に応じ、別ののぞみ自身の救援に赴くと表明した事は大決戦で蚊帳の外に置かれた事がコンプレックスと化していた彼女には容認しかねるものだったからだ。拗ねていると取られても仕方ないが、年齢故に不満の発露の仕方をそれ以外に知らないため、それでしか不満を表せられないからでもあった。授業が終わり、ナッツハウス(プリキュア5の現役時代における憩いの場かつ、妖精たちの地球における住処)にいくと、一人の客人がいた。

 

「あんた……どうしてここに!?」

 

「お久しぶりですわね、りん」

 

「りんちゃん、この子のこと知ってるの?」

 

「私は紅城トワ。あなた達と同じプリキュアですわ」

 

「じ、じゃ……あの子と同じ!?」

 

「別のあなたやことはからの伝言を伝えにきたのですよ、のぞみ」

 

トワは超然とした態度を見せる。プリンセスプリキュアとしての優雅さと出自故の高貴さも併せて、一線を画する何かがあった。

 

「何の用なの?別の私の問題なら……」

 

「のぞみ!!」

 

憮然とした態度を隠さないのぞみBをりんが諌めるが、トワはそれを意に介さす、淡々と述べる。そして。

 

「その世界の私たちがあなたを助けられなかった、それを知ったから、私たちが決着付けに行くのよ。のぞみさんがのぞみさん自身を助けに行っても良いと思うの」

 

こまちがそう表明する。こまちは実姉が転生した如月ハニーから誘いを既に受けているからでもある。

 

「ええ。貴方自身が貴方に会って、話をしたように、なぎささんやほのかさんたちと出会ったように、この世界も一つではないのです、のぞみ」

 

「それなら、なんで、みんなで会っちゃいけないの!?それなら……」

 

「あなた達全員がここを出ていったら、誰がこの世界を守るのです?なぎささんやほのかさん、咲さんに舞さん、ラブさん達にいらぬ負担をかけるつもりですの?」

 

「そ、それは……」

 

さすがにそこを突かれてはタジタジののぞみB。この世界では自分達はまだ現役だが、ラブ達が戦い始めていたからだ。

 

「異世界の同位体は別人だけど、根源においては同一人物、別の可能性の貴方もまた貴方自身、それを助けようと動くのは貴方自身を助けたい心の現れ、それでも貴方は貴方自身を助けようとは思わないですか?」

 

「こっちはエターナルとの戦いだって、まだ終わってないんだよ!?そんな時に仲間を連れて行かれるなんて、黙ってると思う!?」

 

「……いいでしょう。私の貴方への決意をお見せしましょう。プリキュア・プリンセス・エンゲージ!!」

 

トワはなおも不満を見せるのぞみBへ決意を見せるため、プリキュア・プリンセス・エンゲージを敢行。キュアスカーレットへ変身する。炎に包まれながら派手に変身するので、のぞみBは呆然としてしまう。

 

「深紅の炎のプリンセス、キュアスカーレット!!」

 

トワは元が地球人ではないため、耳先が尖っているなど、異世界出身であった名残りが外見に表れている。オリエンタルなコスチュームもあり、この時代のプリキュアとは一線を画する派手さがあった。

 

「嘘……それが……」

 

「ええ。貴方の後輩にあたるプリキュアですわ、私は」

 

「貴方、どうしてここに!?」

 

「くるみ」

 

この世界の美々野くるみがやって来た。授業を終えたばかりであるので、制服姿だ。

 

「どうしてこの世界に?」

 

「伝言を伝えに来たのですよ。それと、決意をのぞみへ見せるためですわ」

 

「貴方がくるなんて…。私のカッコいいところがぁ…」

 

大決戦で見せ場を完全に取られた形であったため、肩を落とすくるみ。ハートキャッチにいいところが見せられなかったのを気にしているようだ。

 

「なんで君がここに…!?」

 

「ココ。ちょうど良かった」

 

「トワ……いや、スカーレット。ちょうど良かったとはどういうことなんだい」

 

この世界における小々田コージが姿を見せた。職員会議が終わり、店番のために来たようだ。

 

「別の貴方の写真を渡すように、さる方からお預りしてきましたわ」

 

「かれんとこまちのいう、平行世界のボクだって?」

 

「正確には、その生まれ変わりの人物ですが」

 

スカーレットはどこからか取り出した一枚の写真をコージに見せる。その写真に映るは、彼自身の同位体の転生した姿『野比コージ』であったが……。

 

「なにこれ……赤い鎧甲冑?」

 

覗き見たりんがそういったように、それは烈火の鎧を纏った際のコージの写真だった。顔つきなどは小々田コージとまったく違うが、赤い鎧甲冑からは何かは感じとれた。動画メッセージも添えられていた。

 

「これを見て、君たちは驚くかもしれない。だけど、ボクは強く願った事を遂に叶えた。この烈火の鎧を纏う戦士……サムライトルーパーとして。たぶん、驚いているだろうけど、生まれ変わって、戦士の力を受け継いで、上手いことやってる、想い人ともやっと結ばれる目処もついたしね、そっちでも上手くやれよ、ボク!」

 

コージは別の自分へサムライトルーパーとして、兜を小脇に抱えて語る形のメッセージを添える。りんは想い人という一言に合点がいき、諸手を挙げて万歳三唱であった。当ののぞみとコージはというと……。数秒ほどは固まっていたが、お互いに顔を見合わせ……。

 

「スカーレット、まさかそのために?」

 

「ええ。コージに頼まれまして。婚約してますわよ、あなた達」

 

その次の瞬間、のぞみBは瞬間湯沸かし器のように顔を真赤にする。コージも同様だ。

 

「それと、貴方へ決意を見せると言ったのはもう一つ。これを見せるためですわ」

 

スカーレットは鞘に収まったクラレントを召喚する。モードレッドが使う時と違い、邪念で歪んでいない本来の姿だ。

 

「燦然と輝く王剣。いざとなれば、私がこの世界を守りますわ」

 

「まって、スカーレット!燦然と輝く王剣(クラレント)はたしか…。イギリスの宝具のはず!それをどうして……」

 

こまちがその剣の正体に気づく。クラレントは英国に伝わる宝具である。それをどうして持っているのか。イギリスの文化財ものな剣のはずである。

 

「私がある理由で手に入れた宝剣ですわ。元はブリタニアの王位継承権の証でしたようですが、カーテナに取って変わられた後は行方知れずでしたので…」

 

それは本来、後世でのカーテナの役目を担うはずの宝具で、スペックはカリバーンと同等というもの。モードレッドと違い、プリンセスプリキュアであるスカーレットが持てば、本来の姿とスペックに立ち還る。さしずめ、クラレント・シャイニングローリアと言うべき姿へと。

 

「イギリスの宝剣……。それが……」

 

「ええ。これが貴方への決意表明ですわ、のぞみ」

 

宝具を見せ、決意表明するスカーレット。キュアフルーレを超える武器を自前で出せることに驚きのくるみ、宝剣に驚きを隠せないこまち、突然の別世界のコージのメッセージと宝具の二段構えの攻勢に当初の怒りはどこへやらで消えたのぞみB。りんはウインクして、スカーレットに合図を送る。それは全てが彼女の差し金だった証だった。

 

(向こうのあたしによろしくね)

 

(ええ)

 

りんはどこの世界でものぞみの手綱を引くことに関しては一級。自分の知るのぞみが心の支えにしていることを改めて実感したスカーレットだった。

 

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