――ウィッチ世界で現れたジェット戦闘機は急速にレシプロ機から主役の座を奪いつつあった。カールスラントは先駆者でありながら、部内の無理解もあって、普及が遅れていた。そこに彗星のごとく現れた『F-86』が突如として主力に収まったため、カールスラント機は次世代機も含めて性能が陳腐化。直後の軍縮による技術者の流出もあり、カールスラントは自主的な開発能力を1950年代にほぼ喪失。以後は軍用機開発の第一線から脱落する事になる。ウルスラ・ハルトマンは45年以後、『カタブツ』とされて出世が遅れる事になるが、日本連邦で勉強をした後は傾向も和らぐ。F-86がダイ・アナザー・デイの戦線を支えたのに疑問の余地はないが、扶桑海軍においては混乱も起こった。軍令承行令の廃止がなされたため、指揮序列の混乱が多分に予想されたが、実際は『特務士官のほうが下手な兵科将校より偉い』とする慣例に大義名分を与える事になり、肩身が狭くなった兵科将校たちから苦情が多数舞い込んだ。正規将校は体裁上、指揮序列は一位のままであったが、特務士官が後に兵科将校と統合され、将校という立場が変質していったため、ダイ・アナザー・デイ前後の時期の反発は一時的なもので終わった。これは23世紀世界でのサナリィが『ガンダムなんて愚連隊の象徴の様な機体デザインや名称は使うな』という内部通達を過去に出していた事がスキャンダル的に報じられると、政治取引で『過去に開発したガンダムタイプに正式にガンダムの名を与える』という処置と当時からの幹部の何人かの辞任で折り合いがつけられ、ザンスカール戦役の咎での組織解体の危機を乗り越えたことにも似ていた。サナリィが危機に瀕したのは、『小型MSの時代』が終わってしまったため、サナリィは依然として苦しい立場に置かれたのと同じであった。アナハイム・エレクトロニクスが中興を迎え始めたのは、『小型機の時代が終わった』事、デストロイドの製造元が統廃合されるに従い、アナハイム・エレクトロニクスがそれらメーカーの製品の保守を引き継いでいった事、ガイアからライセンスが購入された『コンバットアーマー』の製造を引き受けた事も関係していた。ダイ・アナザー・デイ当時、国交が成立したガイア(反地球)の軍需産業はアースへの進出を目論んでいたが、アースのほうが兵器技術で優越しており、艦艇分野などでは後塵を拝している事に困惑した。しかし、一つだけガイアがアースに優越していた事がある。それは高価な人型兵器と従来型の装甲戦闘車両との間を埋める兵器の決定打に欠けていた点であった。ガイアはその位置の関係で『Xネブラ』と呼ばれる現象に悩んでおり、その関係でアースほどには高度な操縦アシストシステムが導入できないという難点を抱えていたが、従来型の装甲戦闘車両の陳腐化に伴い、コンバットアーマーという兵器を考案、それを実用化していた。サイズは10mほどで、デストロイドと同サイズであったが、汎用性はデストロイドを遥かに上回る。ガイアは艦艇や無人機などに傾倒しており、人型兵器の配備は軽視されており、ダイ・アナザー・デイ当時に最新鋭機であったはずの『ダグラム』の流出さえ容認されるほどだった。かくして、アースはまんまと安価で新種の兵器を手に入れたわけだが、ウィッチ世界で実用試験を兼ねての投入がされる事になった。その一環で初期にライセンス生産された内の一機は野比のび太の手に渡り、ダイ・アナザー・デイで使用された。コンバットアーマーは地上戦主体のダイ・アナザー・デイでは大いに有効であり、のび太は鉄人28号FXに続いて、自身との関連が薄いロボを操ることになった――
――のび太が引っさげてきたコンバットアーマー『ダグラム』。ガイア(反地球)の当時における最新鋭の機動兵器であったが、ガイアの兵器整備方針により、アースに放出された。そのサンプルの内の一機を入手したのである。――
「見てくれ。ガイアから流れてきた機体だよ」
「だ、ダグラムじゃねーか!!連中、コンバットアーマーを使ってると聞いたが……よく流れたな?」
「ガイアの真田さんと共同で仕組んだんだ。芹沢参謀総長は人型兵器を軽視してるっぽいから、メーカーにも言って、潰される前に流してもらったのさ。純然たる陸戦兵器だけど、今回は陸戦主体だしね」
「空母に積んでたのか?」
「本当は駐屯地に運ぶためだったんだ。誰か適当なパイロットに乗ってもらうためにね。だけど、時局的に僕が使うことになりそうだ」
コンバットアーマーは純然たる陸戦兵器で、第二世代からは『手足がある戦闘ヘリ』という体裁が強い。ダグラムはその世代の集大成というべき代物だが、芹沢虎徹は人型兵器を軽視しており、アースへ恩を売るために流したのである。だが、アースと同じような兵器を造っていたことが明らかになったため、前衛武装宇宙艦(アースでのアンドロメダ級に相当)は武装や航行コンピュータ、戦略指揮用コンピュータ機器をアースとほぼ同仕様に変更した型へ切り替えが行われた後、アースの人型兵器より優れた点があるはずの兵器を無条件で流した事が参謀本部に問題視され、彼は責を問われ、職を追われそうになる。その名誉挽回のためにダグラムの代替機の開発を行わせ、無人艦艇開発の縮小と引き換えに、コスモタイガーのライセンスを獲得。コスモファルコンの後継機種として生産させるのだ。
「ガイアと取引したのか?」
「先方はアースで人型兵器が花形になってる現状を鑑みて、採用の見込みが薄いけど、いい兵器をアースに売って利益を確保しようとする動きがあってね。僕はそれを使ったのさ。アナハイム・エレクトロニクスに造らせている僕用の兵器は当分は完成しないって連絡きたから、丁度いいや」
残念そうにするのび太だが、彼のような折衝能力持ちの人物は連合軍には珍しい。一部の著名な提督と将軍に戦功が集中しがちな上、オラーシャの脱退、ドイツ連邦に史実東ドイツに転じた記録がある人材の排除を強制されそうになるなど、人材不足が顕著になりだした連合軍の勢力図は日本連邦主体に染まりつつあった。世間的には戦闘能力の高い者が正義とされがちだが、折衝能力に優れた者も組織には必要であるため、人柄から言っても、のび太は適任であった。この功績で、のび太はダイ・アナザー・デイ後に瑞宝章(公務員であるため)特別に授与され、一族に扶桑爵位(永世)が与えられる事になる。
「カールスラントはもうダメだね。ほとんどが撤兵しちゃって、前線にいるのは義理立てで残された航空部隊と歩兵部隊、それと一個機甲連隊だけ。まともな戦力にならないよ」
「やれやれ。ドイツ連邦は何考えてんだ?」
「軍縮にかこつけて、戦前の支配層から地位を奪う事しか考えてないよ。だから、カールスラント軍は三軍全体がガタガタ。使いものにならないよ、あそこは」
「ビスマルクがこっちに身を寄せたわけだ」
「本国じゃ冷や飯食いにされそうだし、日本連邦で高級取りしたほうがいいと思ったんだろう。プリンツ・オイゲンも連れてきたし」
カールスラントは大混乱でかなりの人材が流出し、ダイ・アナザー・デイ途中からは落日の様相を呈していた。艦娘でさえも流出した事はカールスラント軍の混乱の象徴であり、カールスラントのトップ級の逸材達が寄ってたかって、日本連邦の義勇兵に転じた事を懸念するマンシュタイン、グデーリアンはグンドュラ・ラルを空軍総監に押し込み、地位である程度束縛させるのと引き換えに、栄光のカールスラント軍の光を後世に伝えるという任務を負わせた。連合軍は日本連邦に完全に依存するのを避けるため、ブリタニア連邦の中興を意図的に起こすのであるが、ブリタニア連邦は疲弊しており、昔年の威光は見る影もなく、その目論見は英国の横槍もあり、頓挫。日本連邦の突出は運命的な何かを持って起こっていく。それは史実アメリカの代役を日本連邦がウィッチ世界で担うという結果で示されていく。日本連邦の超大国化を妨害しようと、一部の者達はあれこれとティターンズを援助するが、結果として、ウィッチ世界に災厄を撒き散らすだけに終わった。カールスラントの衰退はその結果である。
「君たちも大変だよ?将来は元帥だよ」
「ま、引退しようと、俺たちは有事には引っ張り出されるだろうからな。元帥の階級が復活したのは、俺達を戦後も使うためって面があるだろうな」
扶桑は扶桑で、従来の『元帥』が変更され、階級として復活したために旧来の元帥府が廃止され、憲法改正で正式に天皇の軍事顧問という政治的役目が廃されると、軍事的役目から必要な職責だけが残される見込みである。これは日本連邦軍の成立に伴って起こる『自衛隊の将官が扶桑軍将官を束ねる』という行為(あるいはその逆)を合法にするために『階級としての元帥』が必要とされたからだ。これは正式に日本連邦軍という組織が整うと、実戦経験がある扶桑軍将官を幹部自衛官が束ねる可能性が現実味を帯びてきたからである。実際に翌年度のクーデター以後、しばらくは自衛隊の幹部自衛官(統合幕僚長)が政治的意味合いで『日本連邦軍元帥』に任ぜられていくが、やがて扶桑軍出身者も任ぜられるようになり、太平洋戦争中は必要上、扶桑軍の功ある大将らが任ぜられたのである。
「日本はこの時代のアメリカ以上の兵器を、史実でアメリカが使う技術で造らせるって息巻いてるからね。バンカーバスターを空母に使う案まで出したって」
「グランドスラムをビスマルクに使ったみたいな攻撃をしたいのか?まったく、そんな労力あるんなら、A-1をもっと普及させろっての。数が少ないんだよ、ジェット機は」
シャーリー達が出撃した後、乗機のプルトニウスの不具合(可動部不具合による変形不能)で帰還した黒江はシャーリーに指揮を任せ、自身はのび太と話していた。
「君の機体の不具合はどうだった?」
「可動部に不具合が出たから、アストナージさんにオーバーホール頼んだ。Iフィールドジェネレータも出力低下したからな」
「試作機だし、予期せぬ不具合は出るさ。僕はSPTを造らせているけど、完成はこの戦には間に合わないからね。パーフェクトガンダムを代わりに手配したよ」
「それまでの繋ぎにダグラムを?」
「半分はね。僕は格闘タイプじゃないから、パーフェクトにしたのさ」
「ま、あれは格闘戦向きのガンダムじゃねぇしな」
「Iフィールド積んだよ。MSの携行ビーム兵器の大半は防げる」
「ま、最新型のIフィールドなら実体弾も防げるからな。連邦も贅沢な改修するもんだ」
「さて、みんなはどうなってるか。CICに行ってみよう」
二人は空母のCICに足を運ぶ。400機ほどの航空攻撃を迎撃隊は上手く抑えている。防空艦からの対空砲火の援護もよく機能しており、レシプロ艦上機機は機種を問わずに抑え込まれている。数は少ないが、超音速ジェットは当時の情勢では圧倒的なキルレシオをキープしており、殆ど敵なしであった。また、地球連邦軍の援軍もあり、リベリオン軍は多くの機体を失う羽目となっており、当時のリベリオンの生産量からしても顔色を失うほどの一方的なやられ方である。
「ふむ。敵は懲りないな。毎回毎回、300機をいっぺんに失う攻撃を行うとはな」
「これまでの累計撃破数は1200機を超えました。既にマリアナ沖の米軍機動部隊の動員数を超えています」
「敵は護衛空母で予備機を運んどるからな。捕虜も累計で何人だ?」
「五体満足な者だけでも、有に5000名は超えますよ」
「まじかよ……。二昔前の陸戦じゃねぇんだぞ?」
「陸上での捕虜と併せてですが、近代以降ではスターリングラード攻防戦など以来かと」
「一年戦争はどうだったんだ?」
「オデッサとジャブローで数千名、宇宙要塞戦で5000名を超えましたが、それが最後ですね」
「ジオンは玉砕を尊ぶというが……」
「ジオンは日独が混ざった気質ですからね」
ジオンはデラーズ紛争以後に顕著だが、玉砕を尊んだり、人手不足の解消のためにティターンズ残党すらヘッドハンティングしていた過去がある。ティターンズはなんだかんだで地球連邦軍から派生した組織なので、捕虜になることに抵抗はない。そこも間接的にリベリオン軍に影響を及ぼしている。リベリオン軍は両組織の地球連邦への復讐の尖兵とされて働かせられている事に気づいているが、曲がりなりにも彼らのおかげで有色人種差別が鳴りを潜めたため、有色人種の強力な支持で戦争を遂行しているのである。そして、白人至上主義への積もりに積もった嫌悪が太平洋戦争後の冷戦とミリシャ乱立に繋がったのは自由リベリオン上層部の誤算だと言える。
「黒江くん。どうなると思うかね?」
「おっちゃん、今の自由リベリオンの上層部が生きてる内に帰還は無理だろうさ。白人至上主義への有色人種の憎悪が原動力になってる以上、奴らは南洋新島群に原爆の使用も躊躇わないだろうぜ。そうなったら、報復の反応弾を東海岸へ一発はぶち込まんといけなくなる」
「日本は大西洋艦隊の回航速度を警戒しているが、運河の規模も地形も違う以上、少しは楽観してもいいんだがな。運河を拡張するにしても10年以上はかかるし、その内の一つは地球連邦軍が抑えている」
「原爆で掘削工事するのを恐れてるんだ。ソ連がしたが、核兵器は反応弾でもなきゃ、放射能汚染がある。それより、列車砲やビッグサイズの迫撃砲が使われる事のほうがこえーよ」
ティターンズは80cm列車砲のうち、東部戦線の投入が予定されていた『ドーラ』を司令部への輸送途中のところを鹵獲し、それを対艦攻撃に使うのでは?という懸念が生じていたが、列車砲はその用途では造られていない。そもそも、ドーラはウィッチ世界では『怪異の巣の攻撃』のために特化した砲弾が優先配備されていたため、史実のようなベトン弾や榴弾はそれほどない。(副次的用途が史実の任務であった)
「それに、ドーラを鹵獲したところで、あれに使う砲弾の製造に時間がかかる。ただ、その用途に使われたら、半端な地下要塞は弾薬庫にぶち込まれてお陀仏だよ」
「使うかね?」
「元は東部戦線用のヤツだったが、欧州は鉄道網が整備されてる。それを整えてやれば、ドーラの一両くらいは通れる。もし撃たれたら、区間ごと一個師団が全滅だよ」
ドーラは運用に膨大な人員がいるため、可能性が低いが、そのまま投入される危険もあった。史実と同じ榴弾とベトン弾が製造され、使用された場合、街の一区画がまるごとぶっ飛ぶ。また、史実の用途で使用するなら、ウィッチ世界で備えていた旋回機能は保守の容易さの確保のために省かれる可能性が大きい。(元は精密照準用途で備えられたが)。悲観論が強い日本では『列車砲は戦艦への攻撃に使われそう』と言われているが、列車砲はそういう用途に向いていない)
「こういうのは、言い出したらキリがないんだよ。バンカーバスターを戦艦に使えだの。グランドスラムをティルピッツに使った例があるが、あれはドイツ空軍が死に体だったからできた事だし、坊ノ岬沖海戦やレイテ沖海戦の大和型戦艦にしても、味方の航空戦力が死に体だった状況下だしな」
「だから、大枚はたいて買ったのだ。21世紀の水準より強力な兵器を」
「そうすると、今度は嫉妬する。21世紀の日本ほど変にプライドが高い国もないぜ」
黒江は山口多聞にそう返す。実際、21世紀の日本は自分たちの技術力と常識を振りかざし、ウィッチ世界を振り回したが、ウィッチ世界が独自に自分たちよりも上のレベルの兵器を持つと、今度は『民生分野を軽視している』と嫌味を言ってくるからだ。しかし、いきなり民生技術を21世紀のレベルに引き上げるのは物理的に不可能である。色んなインフラを整える必要がある上、モータリゼーションを到来させないかぎり、2000年代以降の日本と同じ光景は実現し得ないからだ。日本がそれを理解しにくいのは、戦後の急激な復興でアメリカと同等以上のインフラとモータリゼーションを達成したという成功の記憶が由来だろう。
「それに怪異がいる以上、宇宙への進出は21世紀には本腰入れないとならん。そこにも怪異はいるだろうから、当然、そこでも生存競争はせにゃならん。怪異は鉱物資源を食らうからな。ガリアやカールスラントには、鉱物資源は沿岸地域以外には残っていないだろうよ」
「居住には向かなくなると?」
「住む分にはいいだろうが、経済活動がな。鉱物資源が近代の暮らしにゃ必須だ。ガリアは植民地を手放さんだろうし、カールスラントも鉱物資源供給地になる南米を手放したくないだろう。ドイツは手放させようとしたがな」
「我々には西海岸の『瑞穂国』地域の開放の責務があるよ」
「ああ。だが、大虐殺と収容で日系人がどれくらい残っとるか。それに、サンフランシスコとサンディエゴがアトミック・バズーカでぶっ飛んでるから、かなり死んだはずだしな」
リベリオン西海岸にはかつての扶桑植民地『瑞穂国』が存在したが、統合の過程での大虐殺とティターンズの核攻撃、更に強制収容で、日系人は残っているかどうかという問題がある。この瑞穂国の存在が扶桑に太平洋戦争の大義名分を与えたわけで、リベリオン西海岸は早期に日本連邦の影響下に下る事を選択するが、それが却って、リベリオンを泥沼の戦争に引きずり込む事になり、リベリオン全土そのものが極限まで疲弊。冷戦終結後の時代になっても、ミリシャが乱立し続ける理由になってしまう。
「それで人種差別が表面化し、トルーマンは政権を追われたわけか」
「南北戦争以上の内乱になる可能性もあるから、あの国が大国に戻れるには、数百年くらいかかるだろうさ。地震爆弾を撃ちまくってインフラを寸断すりゃな」
「その過程で音楽隊ウィッチが不要と見做されたのは残念だよ」
「ウィッチ全体が21世紀世界の圧力で排除されそうになりそうだったからね。仕方ねえさ。俺達がその代わりもせにゃな」
ルミナスウィッチーズはこの世界においては死産に終わった。『戦闘要員になれないウィッチは落ちこぼれである』という風潮が21世紀世界との接触で強固になったからで、23世紀世界の諌めで『隊の結成が見送りになる』くらいで済んだが、『戦場に癒やしは必要である』ため、64Fはその任務をも代行する羽目になっている。それもルミナスウィッチーズに想定された以上の水準でこなせてしまうため、ウィッチ部内に反感が生まれていたが、当時に最高とされる人員の集まりである事は承知されていたため、反感そのものは一過性であった。64Fの目下の目標は『必要上、軍人にせざるを得なかった歴代プリキュアを育てる』事。のぞみ(肉体の素体は中島錦)、北条響(同じく、肉体の素体はシャーロット・E・イェーガー)など、素体となった人物が元から軍人であった者はともかく、そうでない者も一律で軍人と扱ったことは21世紀の女性層からの不満が強く生じており、風当たりは強かった。しかし、そうでなければ、法的に戦闘行為を合法にできないからである。民間軍事会社が認められていない日本では、海援隊の存在すら認められず、結局は公営化し、連合艦隊に組み込むしかなかったため、その流れでプリキュア達を公的な就職をさせるには軍部が受け皿になるしかなかったのだ。後に、彼らが間接的にのぞみの転職を妨害し、決まりかけていた進路を潰したことで気まずくなり、なし崩し的にプリキュアの軍在籍を認めていく事になる。(のぞみはその後、平時は統合士官学校教諭などの教官職を勤め、64Fには有事に戻るという体裁の勤務体系を確立するが、それは太平洋戦争と第二次扶桑海事変の後の時間軸での事である)
「君たちが見つけた子達の雇用はどうだね?」
「うちで食わすよ。他の部隊に回してくれって話も出てたんだけど、この状況じゃ、うちで全員を引き取るしかなさそうだ」
「それと、中島小鷹の動きは?」
「錦くんのことには気づいておったよ。諏訪君が頼んでいたようでな。一時は君に電話かけようとしたようだ。だが、錦くんが君を慕っているようなので、事を荒立てるのもあれだと考え、本人の意思に委ねたようだ」
「やっぱ、気づかれてたか」
「飛龍に接触させたが、小鷹君は『精神が他の誰になろうと、あの子は自分の妹です』と伝えてきた。それが錦くんの光になればいいが」
「ああ……そう願うよ」
のぞみにそれが伝わるのは、デザリアム戦役での事になる。りんの記憶喪失、現役時代より強くなりながらの無残な敗北などの絶望に押しつぶされそうになり、精神が破綻寸前にまで追い込まれた彼女にもたらされた最初の希望。それは素体となった中島錦の家族が家が自分を受け入れてくれた事であった。やがて、ドラえもん、のび太、ことは、キャプテンハーロックの尽力でかれんとこまちの参戦というさらなる光がもたらされ、のぞみは希望を取り戻していくのだ。
「あいつは転生前の出来事で、昔の自分のままであるように装ってるが、どこか後ろめたい気持ちがあるからか、暗い雰囲気あるんだよな」
「昔の君自身のようにね」
「ああ。二重人格だった事があるからなー、俺。その時の俺に似てるんだよ、今のあいつは」
のぞみの心の闇を晴らすには、何らかのイベントを経るしかないというのが黒江の持論である。のび太と山口多聞の言葉にそう頷く姿はその象徴であった。
――この時期、のぞみが歴代プリキュアで現状、最古参であり、中心人物として振る舞うのを強いられるというのも地味に負担になっていたのも否めないが、前世の青年期以降の経緯の都合で『戦うことが精神的に充足感を得られる方法』になっていたため、りんという安全装置の役目を果たしていた人物の存在は大きく、曲がりなりにもこの時期には闇が表面化しなかった。だが、りんが記憶喪失に陥り、タウ・リンにりんとの友情を一笑に付されたことで一気に表面化してしまう。だが、りんの復帰がタウ・リンへの憎悪で『堕ちかけていた』彼女を救ったのは言うまでもない。また、のぞみ曰く、『娘の幻影に囁かれた時、咲さんの声が聞こえたんだ…』と言い、キュアブルーム(キュアブライト)/日向咲の声が響き、自分を押し留めてくれたという事で、その恩義が後にやってくる咲に敬語で接する理由に繋がるのだった――