――のび太は青年期以降は裏方仕事も多くなった。歴代のプリキュアを自宅に住まわせるというのも中々に勇気のいることだった。のぞみはココの事もあり、野比家を定期的に訪れるようになった。また、水無月かれんも様子を見に来るようになったため、彼女の精神状態はひとまずの小康状態にあった。かれんは自分の故郷での戦いよりもそれを優先させたため、かれんの世界ののぞみの反感を買う事に繋がった。しかし、Gウィッチとしての夢原のぞみという存在も『彼女の一つの可能性である以上は放っておけない』。秋元こまちの後押しもあり、接触してきたことはの誘いに乗ったわけだ。その当時はウィッチ世界で『自分たちの都合のいいように日本を利用したアメリカ合衆国』の情報が伝わり、自由リベリオンへの扶桑国内の反感が醸成され、自由リベリオン軍が肩身の狭い思いをする羽目に陥り、自然と自由リベリオン陸軍軍人の戦死率は高くなっていた。これを抑止するためにも、一騎当千の力を持つプリキュアの雇用は連合軍全体の意思となり、かれんにもオファーが来るほどであった。かれんはダイ・アナザー・デイには参加しなかったものの、将来的な就職までは否定しなかった。デザリアム戦役後にそれは現実のものとなり、軍医として就職した――
――自由リベリオン軍は日本連邦の管理下に置かれたため、日本連邦はアメリカへの長年の意趣返しと言わんばかりに自由リベリオンへ厳しい国内での行動制限を加えようとしたが、アメリカ合衆国の強い圧力により断念した。実際、市内での観光まで制限を加えられれば、兵士達の不満は貯まるばかりであるために徐々に緩和する方向となり、戦時であるため、南洋での行動に限って認めることとなった。当時は連合軍全体が同位国主導の人種差別への意趣返し的な私刑に怯えていたため、日独を抑えられる政治力を持つアメリカ合衆国の介入が望まれた。日本連邦も自由リベリオンと諍いを起こし、アメリカ合衆国との関係が疎遠になる事は避けたいため、自由リベリオン軍に扶桑での一定の行動の自由を認める事になった。また、日本の市民運動の圧力で沖縄駐留軍の解散が検討されると、怪異のこともある現地自治体側が困惑する事態となり、紛糾。結果、プロメテウス級空母二隻を沖縄の東西に配置し、それを基地の代替とする案が採択された。軍関連の収入を見込んでいた那覇市などには将来に渡り、その補償金を支給することとし、取得済みの軍用地の一部はMATの拠点に転用する事が決められた。この経緯以後、ウィッチ世界への介入のトーンは下がり始めたが、それまでの行為の代償は大きく、扶桑軍はクーデター失敗の影響もあり、45年八月~52年五月までの長期に渡って、ウィッチ志願数の低調に悩み、その後も大戦世代が数的主力である時代が続き、扶桑ウィッチ社会に深刻な対立と断絶を生むことになる。(MATの代替役としての正式な承認が1995年まで延びた最大要因である)また、Gウィッチ達が押しなべて比較的に若年で高位の階級についた事は後年に至るまで揶揄されるが、戦時下の状況だったことなどから、最終的には社会的に容認された――
――2020年――
「みらい。あなた達は元の世界が?」
「ええ。マジンガーZの変種にわたし達の世界は滅ぼされたんです。跡形も無く。戦ったんですけど、まるで歯が立たなくて…。それでのび太さんにお世話になる事になったんですよ」
みらい達は既に帰るべき場所を失っている。そのために野比家に厄介になっていると、かれんに明かす。また、のぞみも戸籍上の実家である中島家に帰る事を色々な理由で避けているため、実質は野比家に居候の身である。のび太はこの時代、ススキヶ原の名士であり、駅前のマンションのワンフロアまるごとを所有しているため、プリキュア達を養うことは余裕でできるわけだ。
「のぞみはどうして?」
「のぞみちゃんは他人の体を乗っ取るような形で転生したから、後ろめたさがあって。それでのび太さんが面倒を見てるんです」
「なるほど…。ところで、最近のTVのワイドショーは似た内容ばかりね」
「マウント取りって奴ですよ。自分たちは疫病に怯えてるのに、ウィッチ世界は治癒魔法で重病化は避けられる事への嫉妬もあるんでしょうね。扶桑を嘲笑うのは、過去の自分達を嘲笑うのと同義なのに」
日本のワイドショーはこの時代、扶桑の技術を論う内容が多くなっていた。飛燕のエンジン、ドイツ(カールスラント)への傾倒ぶりなど……。当時の扶桑にとっては屈辱とも取れる内容のものが多く、中には巻き込まれ的に評価が陥れられたカールスラントが公式の抗議声明を出した番組さえ存在する。カールスラントの高慢ぶりが問題視され、ドイツが無理に軍縮させた結果、主要軍事産業の技術者が他国へ流出し、日本連邦の軍事産業を栄えさせていくのは皮肉な事例であった。カールスラントは1940年代初めまでは紛れもなく世界最先端を誇っていただけに、後世の技術が次々と流入し、自国の研究より先の世代の技術が完成された状態で生産されていくという状況にウルスラのみならず、複数の技術者が反対声明を出したが、日本連邦は『いくらすごい技術を持っていても、負ければ無意味に終わるだろ!』と自らの経験から反論し、矢継ぎ早にウィッチ世界から見ての新技術をどんどん投入した。その結果、『必ずしも新技術が旧技術を淘汰するわけではない』ことも分かってきている。『ミサイルとレーザー、ビームは砲弾を駆逐するとは限らない』。ガミラス帝国や白色彗星帝国との戦いでは実体弾が活躍した事から、閉じる事が検討されていた旧NATO規格の実体弾の製造ラインが生き残っているように。
「やれやれ。日本はどこでも、80%以上の確率で江戸時代と明治維新が起こった場合は太平洋戦争で挫折するのね」
「扶桑は稀な例ですよ。織田信長が存命して、織田幕府を作った世界ですから。秀吉も関白にはなって、一時は権勢を誇ったらしいですけど、史実に比べればマシな最期だったとか」
ウィッチ世界でも羽柴秀吉は豊臣秀吉になり、関白にはなったが、主君である織田家が信長存命時の権勢を維持していたためか、弟の羽柴秀長が長命を保ったためか、史実の晩年期の暴走は見せず、壮年期までの人柄を維持していた。それが明らかになったため、日本の一部勢力も扶桑を論う事に一種の戸惑いを覚え始め、『むしろ、自分達が史実にウィッチ世界の歴史を近づけてしまっているのでは?』と気づく者も出始めている。実際、ティターンズは自分達が史実のソビエト連邦の役目を担うために召喚されたという事を自覚し、分かっていて、冷戦時代の再現に労力を傾けている節があるため、日本の良識派の指摘は的を射た指摘と言えよう。プリキュア達も薄々と、ティターンズがソビエト連邦なら、旧エゥーゴ系の地球連邦軍はアメリカ合衆国の役目であるのだろうという事を悟っており、扶桑皇国は文字通りに東西冷戦時代の日本や西ドイツの役目を担っていくだろうと気づいている。
「21世紀の日本はどうするのかしらね」
「どんどん自分達の技術を流すでしょうし、扶桑もそれを喜々として受け取るでしょう。遅かれ早かれ、あそこはあの世界の超大国になりますよ。ブリタニアは財政が傾いてるし、英国は往年の国威の見る影もないくらいに落ちぶれてる。そうなれば、自然と日本連邦は否応なしにそうならざるを得なくなる」
「ウィッチ達が反発してるというのは?」
「わたしたちは一度発現した魔力は失わないけど、あの世界のウィッチは基本的に期限付きの力だそうです。長くても十数年間しか生きない儚い力。その立場に慣れすぎてたんですよ。極稀に、みゆきちゃんの転生した一族みたいに、魔力を一生使える血統はあるけれど、それは顧みられないそうですから」
「だから、一生使える力に嫉妬するのね……」
「ただし、つぼみちゃんのおばあちゃんみたいに、肉体の加齢が進みすぎると、変身の維持に力が持ってかれて、肉体に負担がかかるんですけどね。のぞみちゃんは前世で少なくとも壮年期までは戦ってたそうなんで、その反動で長命とは言い難い寿命だったそうです」
かれんの顔色が変わる。プリキュアは基本的に肉体を絶頂期にまで若返らせて変身をするのだが、変身者が加齢しすぎると、今度は往時の戦闘ポテンシャルが出せなくなる問題が生じてくる。つぼみの祖母であった『花咲薫子』のように、変身すら長時間の維持が不可能になる(彼女の場合は絶頂期の頃の戦闘も要因だが)。のぞみも自身が歳を重ねてくると、変身はともかく、技のキレが落ちてきている事を自覚していたため、自身の次子が目覚めたことで引退を宣言するに至ったという。だが、しばらくして長子の闇落ちが起こったために自身が倒そうとするが、その頃には肉体は長年の負担の反動で病を得ており、(のぞみ曰く、心臓病だったとの事)もはやプリキュアとして戦うこともできなくなってしまった。更に仲間達の相次ぐ訃報のショックも重なり、長子の闇落ちから程なくして他界してしまった。そのため、絶頂期の肉体のままでいられる事を喜んでいる身である。
「だから、今の状況を喜んでるかもしれませんよ、のぞみちゃんは。絶頂期の頃に戻ってる上、わたしたちが傍にいますからね」
「のぞみは前世で……」
「ええ。代替わりとかが起こってたらしいですからね、のぞみちゃんの晩年には。のぞみちゃんの証言だけだから、裏が取れないことなんですけどね」
みらいは事態に巻き込まれた時には大学生になっていたため、現役時代より大人びた振る舞いが多くなっており、戦友であるのぞみを気づかう発言が増えている。『プリキュアオールスターズ戦役経験のある最後のピンク』であるからだろう。
「みらい。あなた……、ずいぶんと大人びたわね」
「現役終えてからもう六年近くになって、大学一年でしたから。肉体の再生で若返ったのは変な感じですけど」
みらいの後を継いだ後輩のいちかも驚いていたが、みらいがプリキュアとしての現役を退いてから、いちかがプリキュアになるまでには五年ほどの間があったのである。その時間軸で巻き込まれたため、精神年齢は相応に高くなっている他、大学一年という年齢の都合上、現役時の天真爛漫さは若干ながら薄れている。
「それと。日本の誤解はウィッチが『あれ』じゃないかってところもあるんですよ」
「ああ……なるほどね」
「バリバリの戦闘要員だって分かっても、年齢を突いてくるんだから、職業差別煽ってますよ、連中は」
それが何なのか、かれんも察しがついたようだ。ウィッチはバリバリの戦闘要員である。治癒ウィッチも魔力喪失後の事を考え、普通の医療教育も施されている。それを先入観で決めつけ、排除しようとしたからこそ、日本は墓穴を掘ったのだ。
「彼女たちはどうなるの?」
「MATにかなりが転職していってますからね。住み分けが進むでしょう。今までの延長線で生活するウィッチ、戦争を戦う職業軍人ウィッチと、ね」
みらいの予測通り、その後のウィッチは二極化が進むが、MATは第二次扶桑海事変の早期鎮圧の失敗と人員の世代交代での練度低下で次第に衰退してゆく。軍部は大戦世代からの世代交代がその子供世代が現れる1960年代前半から始まり、その10年後には概ね世代交代を達成し、2000年代には孫世代が入隊し始めるに至る。ただし、大戦世代の少なからずは有事に駆り出されることを前提に、若い肉体を保っているため、完全に退いた者は意外に少ない。Gウィッチでなくとも、全盛期の若い肉体を保ったままで孫持ちとなる者は多く、教官/予備役将校として、湾岸戦争やイラク戦争相当の戦を戦った者もいるという
「ウィッチ世界に混乱を強いた代償というには大きいわね」
「むしろ、このくらいで済めばいいほうですよ。最初は軍隊を解体してから、一部の将兵だけを現地の自衛隊として取り込むつもりだったって言いますから」
「身勝手ね」
「一部の連中の独善ですよ。組織を完全に解体するより、現地の軍隊の制度を年月をかけて変えたほうが楽ですよ。それに、陸軍だけで数百万もいるんですから」
「昔は総力戦前提だったから、人数が多かったと言うけれど…」
「自衛隊が少ないんですよ。扶桑はこれでも減ったほうだそうで」
「なるほど…」
この時代、扶桑は1000万人近い人数の軍人を抱えていた。21世紀頃には機械化と志願制主体になった影響でだいぶ減ったが、それでも広大な領土を有する都合上で大所帯を保っている。この時代がもっとも大所帯であった時代であり、ウィッチ兵科を維持できる予算があった時代でもある。みらいが言うように、機械化がされていない日露戦争相当の頃には更に多い人数がいたという。
「みゆきちゃんが誘ってますよ、かれんさん」
「このまま医局で教授相手に媚びへつらうよりはいいかも知れないわね…。驚いたけれど、あの子は転生先の都合よね」
芳佳はプリキュア仲間達へは『星空みゆき』として接しているが、生前と気質が違うのと、かつては歴代一のドジだったため、宮藤芳佳としての姿に驚かれることは多くなっていた。(彼女の場合、前世であった主人公属性もそのまま引き継いだため、キュアハッピーとしての姿を取り戻した事はチートだと最も言われやすい)
「逆に本当は脇役だった人が主人公属性を手に入れる事もあるそうです。のぞみちゃんは転生先の世界だと、本当は脇役ポジションだったのが、前世の記憶と力を取り戻した途端に強い主人公属性がついたように」
黒江もそうだが、自身の岩をも通す意思の強さと同位体の成した事如何で主人公属性を得る事もある。のぞみはウィッチ世界では『中島錦』という脇役ポジションであったが、前世での意思、プリキュアであった事によるZ神の心遣いで主人公属性を取り戻し、『夢原のぞみ』としての第二の人生を歩みだしている。(新規で主人公属性を手に入れたケースは黒江が該当する)
「メタ的な事情ね……」
「こまちさんから聞いてません?そういう事は多いですよ。こまちさんのお姉さんなんて、転生先がキューティーハニーですよ?」
「あれはこまちが一番驚いてたわ。こまちとは付き合いが長いけれど、あんなに驚いたのは記憶にないわ」
「かれんさんたちはその戦いの後、どうだったんです?」
「しばらくは忘れてたけれど、響と奏がデビューした辺りで記憶が戻ったの。その時はZ神が直接出向いてきたわ。その関係で物語もずいぶん変わったわ」
「Zマジンガーが?」
「ええ。ブラックホールを操っていた黒幕はミケーネの闇の帝王。またの名を冥府神・ハーデス。ブラックホールでは倒せないと踏んだのか、神としての巨体と軍団で私達を蹂躙したわ。それを救ってくれたのがZ神よ」
かれんは『大決戦』の後に起こった『プリキュアオールスターズDX3』の戦いは闇の帝王の介入で世界が本当に滅びかけたといい、それをZ神が阻止してくれたと語った。Z神の介入で一部のプリキュアに大決戦の記憶が宿り、その記憶を完全な形で最初に思い出したキュアブライトとキュアウィンディが実質的にオールスターズの音頭を取って戦った事も。また、仮面ライダーJがZ神の意思を受けた使者として現れ、プリキュア達を叱咤激励したとも。
「その戦いは咲さんが音頭を取ったわ。記憶が完全な形で最初に蘇ったのは、咲さんだったのよ。大決戦の記憶は一部のプリキュア達にしか宿らなかったから、温度差もあってね。それもあって、Z神は彼を……仮面ライダーJを送り込んだのかもしれない。それが私達の世界ののぞみの嫉妬に繋がったかもしれないわ」
大決戦の記憶の有無はチームの温度差に繋がったと言い、その時にかれんの知るのぞみは諦めかけていたところを咲に叱責されたという。別の自分の存在を明確に知らされたためか、それとも別世界のヒーローと轡を並べて戦えるまでになった別の自分に比べての弱気に負い目を持ったかは定かでないが、それが嫉妬に繋がったのだろうと推測するかれんだった。
――ちなみに、Gウィッチとしてののぞみは後々、その次の『プリキュアオールスターズニューステージ』の戦い(スマイルのオールスターズ初陣、キュアエコーの誕生)にSS組、スイート組と共に召喚され、その時は咲と共にオールスターズを率いて戦う事になる。その時に栄光の七人ライダー譲りの『新技』と戦隊ヒーロー譲りの剣技を披露し、咲、響(シャーリー)と共に中心となり、ブラックとホワイトを差し置いての活躍を披露。のぞみは溜飲を下げる思いだった(ニューステージの時代以降は初期プリキュアは徐々に目立つ機会も減っていったため)という。この二つの事例から、オールスターズは『ランダムに繋がった世界のプリキュアを集めている』事をかれんに確信させるに至る。それでも未来のプリキュアも参戦した『大決戦』は如何にイレギュラーであった事は確かである――
「そろそろ、のぞみたちが帰る頃ね」
時計を見ると、いつの間にか午後三時半を回っていた。
「じゃ、食事の用意を始めてます」
「ごめんなさい。私も手伝えれば…」
「いいんですよ、慣れてますから」
ちなみに、プリキュア達が留守番している時の食事担当はいちか、もしくはみらいが担当する。2020年の野比家の日常の一コマである。従軍組の休暇が直に終わろうとしていた頃には、水無月かれんも場に慣れてきていた。かれんは深窓の令嬢という立場上、料理が苦手である点が明確な弱点であり、料理はみらい、いちかといった後輩に丸投げ状態であった。(両親は演奏家であり、常に不在。その関係もあるだろう。最近は後輩に丸投げにしていることを負い目にしているが、りんからの通達で、かれんが料理だけはできない事を知らされたいちかとみらいは意気込んで料理をしている)この日はのぞみとりんは入会したサッカークラブの成人部(職業についているため)からの、ことはは図書館からの帰りであった。みらいは具体的な事は明かさなかったが、国際学関連の学部に属していたとは述べ、リコも魔法学校の教諭として就職した矢先だったという。それが根底から破壊されてしまったため、みらいは地球連邦大学に通い直しになり、リコは前世の都合で折衝任務に駆り出されている。ことはは既に大学まで卒業済みであったため、日本連邦空軍へ就職した扱いになっている。また、ことははジャイアンから頼み事も受けているため、意外と多忙でもある。ジャイアンが会社で雇っている弟分の青年のメンタルケアも行っているからである。ジャイアンは強い義侠心を青年期になっても持っており、自身を子供時代から慕う身体障害者の青年を雇って、家族共々に自分で養うという度量を見せ、慈善活動家としても名を馳せている。その青年は数年前の出来事でのトラウマで家族に心を閉ざし、そのせいか言動も年齢不相応に幼くなってしまっているが、ジャイアンや調、ことはには心を開いているため、ことははその青年の家に通い、相手をしてやっているという。(その青年は子供時代からナイーブであったが、母親が息子の細かい心情に関心があまりない性格だったのと、遅くに生まれた次子だったためもあり、自身の老後の心配を早くからかけるなど、お世辞にもメンタルヘルス的意味では良い母親ではなかった。それが彼のトラウマとなる出来事に繋がったという)
「そう言えば、はーちゃん。ここんとこはジャイアンさんに仕事頼まれてるそうです」
「剛田さんに?」
「ええ。社員の人のメンタルケアを頼まれてて。なんでも、はーちゃんと昔からの知り合いらしくて」
「なぜ、あの子に?」
「さあ。社員のプライバシーとかで教えてくれなかったんですよ」
ジャイアンもそこは当然ながら伏せているようである。ことははこの経験を期に、元々が大地母神であった出自もあり、メンタルケアの勉強も始めていく。その勉強が後々にのぞみを救う上でのキーとなるのである。
「でも……まさか、現役時代の姿でお互いに会えるなんて」
「これも次元世界の不思議って奴でしょうね。最後に会ったのは、はなちゃんが現役の頃でしたっけ……」
「ええ。ずいぶんと久しぶりよね…。この街の不思議さにも慣れてきたわ。」
「私もですよ。もっとわくわくもんなのは、わたし達以外にも、この星を守ってる人たちがいたことですよ」
「それも昭和の時代から、ね。あの時は驚きの連続だったわ……」
ドラ・ザ・キッドとドラえもんがのぞみとみらいにのび太、調、ことはの武勇伝を語るより数日前、大決戦で、その後のオールスターズ戦で出会ったヒーロー達の事を回想した水無月かれん。その時にオーラパワーや小宇宙などの『人の可能性』を知り、それ故に別世界の仲間を救いたい気持ちが強まっていた。だから、ことはの誘いを二つ返事で了承したのだと述べる。みらいも仮面ライダーディケイドに恩義がある(再生に必要な自身の最初の肉体の回収をしてくれた)ため、のび太達の誘いに乗った面もあるため、お互いに感ずる何かがある。歴代のスーパーヒーロー達の背中はプリキュアたちにも確かに影響を与えていたのだ。かれんの脳裏に蘇る11番目の仮面ライダー『仮面ライダーBLACKRX』の勇姿はその象徴だった。
――この世に希望という心の光がある限り、俺達は不滅だ!!――
そう啖呵を切り、リボルクラッシュを決めるRXの勇姿は、水無月かれんの背中を押す形になった。そして。朝日奈みらいにとっては……。
――通りすがりの仮面ライダーだ。よく覚えておけ――
みらいとリコにとっては大恩人である門矢士のキメ台詞。かれんとみらい。この二人に共通する点は『偉大な英雄たちの背中に刺激され、自身の友を救おうとしている』ところだろう…。