――コンバットアーマーが扶桑皇国に採用された理由はダイ・アナザー・デイでのび太が『ダグラム』を使って活躍した事に由来する。アースものび太による運用成果を鑑み、制式採用をガイアへ通達。設計図がアースの手に渡ったわけだが、固定武装であるリニアガンの手持ち化を行ったのが変更点である。対コンバットアーマー用に特化した重装甲と高い機動力はアースにはデストロイド『スパルタン』の代替として魅力的だったのだ。デザリアム戦役でそのDAMの扶桑への供給分の生産が遅れたため、扶桑はガイアへ『ラウンドフェイサーを買うよ』と打診。ガイアも商機を見出し、第一次生産分の200機が東京五輪と万博の期間中に納入された。同機はダグラムと違い、装甲は薄いが、扶桑陸軍の運用目的としては充分とされた――
――一方、空軍はMSの購入を行い、緊急展開軍という位置づけになったため、ジェガンJ型と併せて、ベースジャバーとドダイ改も購入し、一般部隊の主力はジェガンとなった。これは地球連邦軍の在庫整理の感は否めないが、ギラ・ドーガやギラ・ズールに比すれば高性能ではある末期型であるため、必要十分な性能を持つとされた。もっとも、64Fはもっとも低性能で陳腐とされたジェガンでさえもロールアウト時は指揮官用と位置づけられていたR型のアップデート型であるため、そこで格差はあった。デザリアム戦役後になると、解体されたネオ・ジオンを見限り、連邦軍へ復讐するために本来は相容れないはずのティターンズ残党に与し、ギラ・ドーガやギラ・ズールを持ち込む者が多く、その対策で普及品であるジェガンが必要になったのだ。また、64F仕様はD型のオプション機能が復活しており、スタークジェガン化してあるため、R型ベースのスタークジェガンという贅沢な仕様だが、64Fでは『旧式の換装機』と扱われている。これは後継機のジェイブスとフリーダム(RGM-196の形式が与えられた時に正式に新規のペットネームがついた)が配備されているからで、64Fのみがビームシールド装備の次世代機を有する。(もっとも、ビームシールドは新型でも『ステルス性』などとのトレードオフでない機種も多いが)
――1948年の暮れ――
「セラ、お前の任期はあと数ヶ月か?」
「表向き、私は参謀本部のスパイですから。戻るつもりはないんですが、『後任』には私の同僚の宮部を推薦しておきました」
「ふむ。明野の教諭畑か」
圭子はセラこと、広瀬大佐の任期切れが近づいてきていると知らされた。隊の責任者(代理)をコロコロ変えるのが参謀本部の思惑だろうが、広瀬大佐は完全に離反しており、彼女の同僚が推薦された。それが武子の復帰の日取りが決まるまでの数ヶ月、代理の任につく宮部大佐である。
「奴は教諭畑を歩んだカタブツですが、先輩方を尊敬していると公言しています。私が参謀本部を誤魔化して呼んだようなものですがね」
「戻ったら転属願出しとけ、そうすれば、すぐ引っ張れるから維新隊に希望出しておけば怪しまれんだろ?」
「ええ。そのつもりです。……宮部は教諭としては優秀なんですが、その、実戦をあまり知らんのですよ」
「揉んでやるさ。あたしらに手ださねぇんなら、好きにさせる」
宮部大佐は黒江達を素直に尊敬する新進気鋭の教諭であるが、経歴上、実戦指揮経験は浅く、参謀本部は『置物』感覚であった。広瀬大佐が百戦錬磨だったのと対照的である。宮部大佐は教導部隊の教諭だったため、空戦理論で自分の意見を述べる気骨があるため、黒江達にも気にいられ、無事に翌年の春まで在任する。
「数週間後になったら、しばらくは明野で骨休みをしますよ。この半年は先輩方に可愛がられましたから」
「言うようになったな、お前」
「子供の頃に遊んでもらって、もう10年以上なんですよ」
セラは小学校時代、父親が圭子の父の中学校の後輩であった関係で圭子の実家と親交があった。圭子も少尉時代に遊んでやった仲である。セラ自身はその後、黒江の腹心である黒田と紅海で戦友になったが、それが彼女を64Fへ招く縁となった。
「私のA-4とファントムは取っといてくださいよ」
「わーっとる。明野にいくと、セイバーに逆戻りだかんなー?」
「ドラケンは明野にまだですかね」
「来年以降だよ」
ドラケンはこの頃、本土防空部隊、とりわけ首都防空の244Fが優先されていて、明野飛行学校にも回されていなかった。一応、セイバードッグが置かれていたが、殆ど練習機同然であった。ただし、整備部門にエンジンは回されてきており、ドラケンの教習コースが開かれる見込みであった。64Fに配属経験がある教諭達はこれで同部隊の優遇ぶりを思い知るわけだ。
「ジェットのコツを教えてこい。機種転換組は特に手間取っとるようだしな」
「仕方ありませんよ。T-1にすら手間取る者が多いですからね」
「あれに手間取るだと?レシプロに慣らすのも今となっちゃ良し悪しだな。宮藤の産休届けは処理したか?」
「しました。菅野は誰と組ませます?」
「当座は黒田に面倒を見させる。時期を見て、ひかりを新選組に回そう」
雁淵ひかりは史実と違い、旧・502メンバーとの接点はこの決定で生ずる事になる。ひかりはダイ・アナザー・デイに際しては偵察隊『奇兵隊』に属し、偵察で鍛えられており、アニメと違い、ロスマンが師ではない。菅野やニパともその決定に基づく人事で初めて出会うのである。(ただし、菅野とは通信越しに会話は交わしていたが)ひかりは史実と違い、接触魔眼を活用する方法を圭子より授けられており、偵察要員として名を挙げていた。奇兵隊は影に徹する部隊なので、第一線部隊である新選組と維新組との接点は薄いため、ひかりは面識がなかったわけだ。ひかりは彩雲などで経験を積んできており、孝美が史実で懸念した技量不足はない。むしろ奇兵隊で鍛えられたため、史実より技量は上である。また、孝美も前世を反省し、今回はひかりを肯定的に見ている(前世では、アニメより状況が悪化、数十年は絶縁に近い状況だったため、アニメを基準に考えるならば『より良い』結果である)ため、反対はしないだろう。雁淵ひかりは芳佳ほどに主人公属性を持たない証であり、存在が大局に影響を与えないあたり、孝美の妹であるが故だろうか?同位体が戦闘に関わり合いがない人物だったせいだろうか。それも一つの謎であった。
――セラの明野への帰還については滞りなく行われたが、宮部大佐は戦闘が始まった時期の着任になったので、色々と苦労が耐えなかったが、彼女の実戦型指揮官への脱皮に繋がった。セラはこの時の圭子の言いつけ通りに半年後、維新隊の中隊長に志願する形で49年五月に舞い戻る。武子は一年ほど療養した形になるが、1949年春に復帰。戦闘本格化を名目に、宮部大佐を『天誅組』の中隊長として配置する人事を敢行。更にセラの志願届を通させ、五月に呼び戻す事にする。この時に体制が完成した事から、64F体制の完成は後世には『昭和24年の五月』とされる。以後は黒江達の信頼を勝ち取った後輩達が空位だった中堅幹部の座についていくこととなる。のぞみは錦としては実戦での実績はあまりなく、プリキュア化によって、その座についた感があるが、空戦技能自体はデザリアム戦役で鍛えられており、飛行能力があるプリキュアの先輩である日向咲や後輩の相田マナ、愛乃めぐみに劣らないほどに向上。鍛えた剣技を用いて戦うようにもなり、愛乃めぐみ(剣技の心得がある)と組むことも増えた。そんな二人に伝授された技がこちら――
『天空剣・Vの字斬りぃぃぃぃ!!』
剣技の心得がある二人に黒江などが仕込んだ極め技が『天空剣・Vの字斬り』である。これはちょくちょく、プリキュアの現役時代の極め技が合体技含めて弾かれるか、無効化されてきたため(中には、エネルギー系の合体技を気合で無効化した達人もいた)、その対策として伝授された。元がスーパーロボットの必殺技であるので、機動兵器に乗っていても再現可能である。64Fが戦線の矢面に立つことになったのは、海岸線に迫ったジオン残党を撃退してから半年後の49年晩春(五月頭)であった。
――武子の復帰から一ヶ月後。南洋島へのリベリオン軍の上陸作戦の水際阻止に失敗した扶桑陸軍。彼らは水際作戦を取った事を罵倒されたが、相手がリベリオン以外であれば通ずるため、日本と罵倒合戦をしている場合でもなかった。64Fは持久戦に戦略を切り替えるまでの足止めを命じられ、壮絶な死闘を初っ端から繰り広げる事になった。連合艦隊も主力を初っ端からフル投入し、敵艦隊を撃滅する任を負ったため、南洋西部の軍港に集結しつつあった――
――扶桑陸軍にとっては、初戦での沿岸部の失陥は想定内であった。侵攻を阻止する手立てがあったからだ。コンバットアーマーのお披露目もこの時に行われ、水際に置いてあった兵力が嘘のような強力な兵力が差し向けられ、リベリオン上陸軍を困難に直面させた。コンバットアーマーは『手足のついた装甲車』的な位置づけであり、旧態化したデストロイドの事実上の代替として投入された。ラウンドフェイサーはその尖兵として使われ、損失もそれなりにあったが、敵に衝撃は与えた。また、DAMがラウンドフェイサーの後継機種とされたが、実際にはソルティック社製の複数の機種も使われた。コンバットアーマーは旧式化した日本軍型の自走砲の代替という形でこの時期から盛んに使われ、高価なMSを補う兵器としてのジャンルを確立させる。MSは高価で高性能であるが、数が少ないのが難点であるため、コンバットアーマーはそれを補うのに値段も性能もちょうど良かったのだ――
――64Fは地下都市へ住民が疎開し、無人となった都市に展開し、戦闘を繰り広げていた。プリキュア達の少なからずはこの時期には『高速戦隊ターボレンジャー』の尽力で開発された『プリキュア・ブレス』(スーパー戦隊の持つ技術でプリキュアの変身原理を制御・簡便化させたブレス。のぞみに製造第一号が渡された後、他のプリキュア達にも与えられた)を変身に主用していた。本来の変身アイテムはサイコフレームのパワーで破損させられた例があるので、デザリアム戦役の教訓で、破損を避けるためになるべく使用しない方向に転換し、プリキュア・ブレスが支給され、使用されているわけだ。無人化した中規模都市での戦闘で使用され、戦闘の頻度が高いプリキュアたちの半数はブレスで変身している。(戦闘要員であるラブ、マナ、シャーリー、めぐみ、のぞみが該当する)
「どりゃぁ!!」
キュアピーチが兵士を蹴りで吹き飛ばし、道を切り開く。この時期にはレッドマスクから『ゴッドハンド、マスキークラッシュ、レーザーアロー』の三つの闘技を伝授されており、以前より武闘派に舵を切っていた。
「レーザーアロー!!」
以前と違い、剣技もするようになったキュアピーチ。現役時代と違って、戦闘が浄化メインでは無くなったからである。光戦隊マスクマンのレッドマスクから伝授されたレーザーアローをマスキーブレードから放ち、敵兵を貫く。運動神経はいいが、ド素人だったラブを45年からの四年で一線級の剣士に鍛えるあたり、レッドマスク/タケルやレッドファルコン/天宮勇介の手腕が窺える。(なお、マスクマンの技を使えるということは、オーラパワーに覚醒めている証でもある)
「四年も修行したんだ。伊達じゃないよ!」
(大決戦で自分の姿を借りた智子が無双したため、それに合わせようと考え、本格化させてからは三年である。のぞみとラブは大決戦の事後にもっとも苦労したが、もっとも恩恵を受けたプリキュアでもある。また、のぞみはドラえもんの特訓で雷嫌いを克服している)
「ドリーム、そっちは?」
「サンダーブレークで気絶させたのが一個小隊くらい。外でコンバットアーマー部隊がにぎやかにドンパチしてるよ。M4くらいはコンバットアーマーの敵じゃない」
「現役時代は雷ダメだった割に使うね」
「かっちょいいし、せっかく、ドラえもんくんに頼んで特訓したんだからさ」
「そもそも、なんでダメダメだったの?」
「じ、実は幼稚園の時……」
のぞみは幼少の頃、家で一人で留守番をしていた時の夕立以来、雷がダメであった。これはプリキュアになっても治らずじまいだったが、転生後は錦と混じったおかげで和らぎ、ドラえもんの『ミニ雷雲』を用いての特訓で克服した。デザリアム戦役でマジンガーZEROの魂と融合し、マジンガーの技が使えるようになった事を活かそうとすると、どうしてもゴッドサンダーやサンダーブレークに行き当たるための特訓であった。錦と融合した現在では、サンダーブレードも放てるようになり、力を持て余す事はない。
「なーるほど。昔は羨ましい時期あったんだよね、ドリームのこと。三代目なのに、場を仕切ってたし、つぼみちゃんのオールスターズのデビューん時はセンターポジだったじゃん」
「逆に言えば、そんなポジだったから、大人になった後に病んじゃったんだよね。ニューステージ以降はピーチが引き継いだようなもんじゃん」
「それもそうだけどね」
ドリームとピーチはお互いに時代の移り変わりと共に、初期プリキュアの看板を背負って戦った時期がある。ある時期から『呼ばれる機会が減った』ドリームに代わる形で初期プリキュアの気概を後輩に伝えていたピーチも気持ちはわかるのか、お互いに気苦労を分かち合う関係であった。
「昔は気にしなかったけどさ、後輩が増えてくると、どうしてもシメないといけないわけじゃん?」
「デザリアム戦役でZEROと融合したわけじゃん、あたし。それでミラクルとかち合ってさー……」
「揉めた?」
「ZEROはみらいちゃんの世界を滅ぼして、帰る場所を奪ったからねぇ。それで殴り合いだよ」
「モフルンはなんて?」
「ミラクル、完全に頭に血が上ってたからねぇ。モフルンがパニックだったよ。で、お互いの最強形態で殴り合いだよ、ハハ……」
キュアミラクルと殴り合いに際して、クロスカウンターからのアイアンカッターでノックアウトしたと語ったキュアドリーム。ZEROの意思が詫びを入れたものの、世界を滅ぼされたため、不満を隠さなかったキュアミラクルだが、のび太の仲裁で事無しを得た。ひとえにのび太の人徳である。
「のび太くんのおかげでなんとか収まったよ。向こうはオーバー・ザ・レインボーで、こっちがシャイニングドリームだったから、他の子も介入できなくてね。子供たちには見せらんない光景だよ」
「昔、ほのかさんが操られて、なぎささんと戦っただけで子供泣いたしなぁ…」
正規のプリキュア同士の戦闘は実のところ、意外に発生している。のぞみの一件だけでも、キュアドリームの同位体とキュアフェリーチェが戦闘しているし、ZEROの件が片付く戦いでは、ドリームとミラクルの殴り合いも起こっている。のび太をして『殴り愛宇宙』というジョークを産んでいる状況なので、なんとも言えないピーチ。
「それねー。咲さんと舞さんでも揉めた事あるし、一回は揉めるんだよなぁ、あたしら」
「くるみが現役ん時はあたしによく突っかかってたのも、今となっちゃ笑い話だよ。ローズ、現役ん時はエターナルに経験不足なの突かれて苦戦するのが意外に多くてね。現役を終える時に振り返ってたよ」
「そう言えば、ローズと一回だけ、咲さんと舞さんみたいな事したって聞いたよ?」
「一回だけね。ローズと合体技出したのは、その時だけだし。多分、あたしとくるみの先代はコンビ組んでたかもね。ココとナッツが伝え聞いてた伝説を考えると」
「あー。なるほど、そういうのもありだね」
「合流しよう。コンバットアーマー部隊が駅の中心部を抑えるとかいうから」
「OK」
この都市の名は『洛陽』。かつての中華文明の首都がしばしば置かれた都市の名を継承している。これはこの街の最初の移民がその地域を追われてきた明朝の亡命民たちだった事に由来する。南洋に『上海』、『北京』、『重慶』などの中華文明の名残り的地名が多いのは、その地域からの亡命者達が開拓したからである。南洋に中華文明の名残りが多い理由は織田幕府に許しを得て、明朝の王族の生き残りが行政官を勤めた時期が存在し、中華文明の文化が保存されたからで、史実の日本統治時代の台湾を思わせる要素があるのがわかる。
「合流したはいいけど、日本のマスコミが見たら目回すなぁ。1949年にこれだもん」
日本陸軍の迷彩色で塗装されたラウンドフェイサーが行軍するのと合同して進軍する二人。ハーフトラックに同乗しているわけで、扶桑が製造していたモデルだ。そのハーフトラックは史実の一式半装軌装甲兵車とは細かな点で違いがあり、M3ハーフトラックを参考にしている箇所が多い。
「でもさ、あたしら二人にわざわざ装甲兵車を?」
「向こうの部隊の気遣いさ」
ハーフトラックは急速に配備されたが、古参の扶桑陸軍兵士たちは自転車を好むため、ハーフトラックに撮影隊と機材以外には、二人だけしか乗っていないという珍妙なことになっていた。
「通信隊は?」
「別のハーフトラックに乗ってるってさ」
「丁度、前線部隊に持っていく命令書とかもあるんで予定が合ったってのも理由でしょうな」
運転士が冗談めかしていう。
「この部隊、戦車はいないの?」
「チハとチヘがいたんだけど、四年前に取られたから、ラウンドフェイサーに一括で更新したんだって。砲戦車ならいるよ」
「あ、本当だ」
ダイ・アナザー・デイで活躍した五式砲戦車『ホリ』。155ミリ砲に強化され、自走榴弾砲的運用に切り替えられたモノが半数で、残り半数は待ち伏せ用に120ミリ砲を持つ対戦車砲用途の改良型だ。ラウンドフェイサーはチハとチへの代替として、戦車一両につき三機の割合で配備されたとハーフトラックのキューポラで警戒する士官が言うように、この部隊はラウンドフェイサーを35機ほど有する事から、元は戦車連隊だったのだろう。
「チハからコンバットアーマーに切り替えたのは、ウチの司令官の方針でしてね。七式の遅延が伸びそうなのを見かねて、コンバットアーマーに切り替えたんですよ」
「74式、まだ配備が?」
「ウチのような末端の連隊にはまだ影も形もありませんね」
74式戦車は前線配備を志向する扶桑陸軍と、元が日本本土の防衛に特化した造りであるため、外地配備に反対する防衛装備庁の対立もあり、外地部隊の末端には行き渡っていない。コンバットアーマーはそれを補う目的で配備が迅速に行われ、この時点ではラウンドフェイサーが主力の座にあった。74式はダイ・アナザー・デイで自衛隊のものと扶桑陸軍の試作品が使われたが、南洋での開けた地での機動戦に向かないと考える背広組の妨害で配備は進まず、今や、主力戦車よりも、コンバットアーマーのほうが配備数が多いくらいである。これを危惧した機甲部隊閥が巻き返したが、74式の次を造らせるべきとする『10式早期製造論』が台頭してきている。また、ラウンドフェイサーの生存性の低さが背広組に問題視されたため、『アビテートT10B ブロックヘッド』の単座型の導入も検討中である。(後にアイアンフット社のヘイスティが採用され、次いで、ソルティックHT128 “ビッグフット”も採用されるが、1950年に入ってから)
「ん、そろそろ中心地だ」
「敵はM26を置いているようです。ラウンドフェイサーに対応させています」
二足歩行タイプのコンバットアーマーの利点はデストロイドより完全な人型であることでの機動力とサイズ比でいうと高めの火力だ。ガイアのコンバットアーマーの関節駆動にはマッスルシリンダーが用いられているが、ダグラムのみはアクチュエータとの併用式である(それが幸いし、ダグラムは高性能機になった)。なお、ポリマーリンゲル液とマッスルシリンダーの製造技術がこの時期に伝わったため、後の第三世代理論式ストライカーの装甲服化への道が拓けたとされる。つまり、コンバットアーマーは第三世代宮藤理論の大まかな形に影響を与えた兵器と言えよう。
「ん、制圧したようです」
M26重戦車もラウンドフェイサーの前には形無しであった。ラウンドフェイサーの損失はM26の不意打ちで片脚を破壊されて擱座した一機のみで、後は無傷であった。(パイロットは脱出した)
『駅は制圧しました。ホームに蒸気機関車が停車しているようです。兵たちが調べています』
「ブービートラップの可能性がありますからね」
『ええ。しかし、地方都市の割にいい駅舎ですな』
「大正の頃に建てられたっていう煉瓦造りの駅舎ですよ。あの時期に多い造りでしょう?」
『確かに』
ラウンドフェイサー部隊の隊長と話すドリーム。洛陽には都市名の由来が由来か、大正期にそれなりの駅舎が建てられた。東京駅や万世橋駅(ウィッチ世界では現存する)と共通する意匠から、同じ設計者と思われる。(皮肉な事に、大正大震災が起きていないために万世橋駅は初代の煉瓦造りの駅舎が現存し、1949年でも健在だ)
「ここは大正期には賑わったそうなんですが、今は新京の再開発中なんで」
『なるほど……』
洛陽市はこの時期には往時の賑わいが失われ、より大規模な新京駅に中央本線の起終点の座を奪われるなど、不思議な事に万世橋駅と似た経緯を辿っていた。この時点では住民が建設の完了した地下都市に疎開したため、街は敵味方が建物を最小限の手入れをする程度に留まられている。無人となってしまった洛陽の街には戦闘の音だけが響く。
『なんとも寂しいですな』
「ええ……。ここには親戚がいたんで、子供の頃は遊びに来てたんです。だから、余計に」
「ドリーム、知ってるの?」
「この身体の素体になった子の親戚がこの街にいてね。その時は賑わってたんだけどなぁ…」
ピーチに寂しそうな顔を見せるドリーム。最盛期には222万人以上が暮らし、一時は新京より賑わったともされる洛陽市。だが、新京の開発が進む昭和期には新京に完全に追い抜かれ、寂れ始めた地方都市と言った様子すら見せていた。そんな時期に戦争による疎開が行われ、無人化した。ドリームは錦としての遠い記憶から、なんとも言えない戦争による寂しい風景に複雑な思いを懐き、無人となった哀愁の漂う煉瓦造りの古ぼけの駅舎を見つめていた。