ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第九十五話「次元震パニックその二十」

――日本は2020年の夏を迎えていた。日本は疫病の蔓延で経済に打撃を蒙り、ウィッチ世界での軍事的負担を露骨に嫌がったが、アメリカからの圧力で否応なしに扶桑へ軍事的協力をせざるを得なかった。そんな最中の74式戦車の生産遅延は防衛装備庁内部の勢力争いによるものであった。(最新作の10式戦車の増産を目論む勢力の後押しもあったが、ウィッチ世界では10式はオーバーテクノロジーであるという当たり前のことも議論された)未来兵器であるコンバットアーマーが流通し、戦車に取って代わる事を恐れた派閥の後押しもあり、74式はウィッチ世界での1949年から、ウィッチ世界で増産に入ることになった。愛国的な事を煽り立てるプロパガンダが強く規制され、急速な人員補充が難しくなった扶桑軍は兵器の質を当代より数段は上としないと色々な意味で追いつかなくなった。それを補うために個人の戦闘単位を引き上げることが行われたが、当時の軍ウィッチの多くは教育カリキュラムが簡略化された1943年以降に志願した促成組であり、黒江達のような職業軍人として就職している古参はごく少数にまで減っていたために苦労が伴った――

 

 

 

――日本 安全保障会議――

 

日本連邦の国防政策の協議は時たま、日本で行われる。この回の会議で敷島型戦艦の竣工が報告されたが、大艦巨砲主義を地で行く超戦艦の存在は非難の対象になった。だが、究極に発達した戦艦がバンバン量産されている上、自前の対潜能力が万全に近い日本では、攻撃型潜水艦を敢えて増産するだけの魅力はなかった上、ミサイル兵器では上部構造物を損壊させるのが精一杯とされた戦艦への攻撃にイージス艦を使うのは非効率とされたため、結局、敷島型の存在は容認された。(あまりに巨大化したため、艦載機搭載の促進も決定された。800mというのは、21世紀の造船技術からすれば『常識外れ』の大きさなのだ』)

 

「閣下、この大きさはあまりにも……」

 

「将来的に宇宙戦艦に転用するつもりで造ったのだ。見かけは大和型戦艦の改造型に合わせたが、武器は超文明の発明で占めている」

 

敷島型は見かけこそ改大和型戦艦とそれほど代わり映えしないが、武器はより未来兵器の導入が強められ、波動エンジンも導入可能な構造で造られている。ニューレインボープランと規格統一がなされた恩恵である。戦闘能力は23世紀の第一線級戦艦と同等であり、ウィッチ世界では過剰性能である。

 

「貴方方が兵器の供与を渋ったので、超文明に懇願したのですよ。そうしたら盛大にしてくれましたよ」

 

山本五十六は1949年には60代後半になっていたが、日本連邦評議員である。嫌味を兼ねて、扶桑軍に与えられた未来兵器をお披露目し、日本側の一部が抱いていた優越感は木っ端微塵となった。とりわけ、ダグラムやZプルトニウスはその象徴として扱われた。ビーム兵器やリニア兵器を実用段階で奮える人型兵器は21世紀の時点では存在し得ないため、凄まじい衝撃であった。また、ウィッチの新規入隊年齢の下限を引き上げた弊害で戦線のウィッチ部隊は人員補充が困難となり、うかつに投入できなくなり、一部の超人達に頼らざるを得ない現状も伝えられた。プリキュア達の活躍は裏を返せは、その苦しい現状の象徴であった。

 

『プリキュア・スパイラルスタァァァ……スプラァァシュ!!』

 

『プリキュア・スターライトォォォ……ソリューション!!』

 

ブライトとウィンディ、シャイニングドリームの必殺技は華々しいが、裏を返せば、扶桑で五年以上かけて確立されつつあったウィッチの供給体制が大きく崩れ、彼女達に依存するようになってしまった証であった。山本五十六は職業差別意識さえ生まれてしまったウィッチ達の窮状を訴え、日本側も魔女狩りが本当の意味で起きることは望んではいないので、山本五十六の提言を採択した。『人事的優遇は緩めるにしても、金銭的意味での優遇は継続、ダイ・アナザー・デイに従軍したウィッチへの従軍記章の創設を行い、戦後にまとめて『勲章の授与』を行う(黒江達は叙爵込みであるので、1949年次には既に授与済み)事が決議された。また、次期主力艦上戦闘機の方向性は『トムキャット単座型とライノのハイローミックス』でまとまり、当時に配備が進むファントムⅡ改の次を見越していた。これは直に敵もファントムⅡに行きつく事を見越しての予防策であり、予算上はダイ・アナザー・デイでテストしていたものを採用する体裁であった。空軍もドラケンとF-104Jが行き届いたタイミングでF-4EJ改を生産開始し、F-15とF-20の用意を開始する。この開発競争はある意味、戦後は軍事軽視の風潮が強かった日本にとっては皮肉じみた出来事であった。そして、戦中の日本軍の航空機開発が『ないものねだり』だった真の理由も知れ渡った。

 

 

 

「閣下、これでよろしいですね」

 

「うむ。彼女達にいつまでもおんぶにだっこではいかんよ。後進を見出すのが私達なりの君達への償いさ」

 

山本五十六は自身が日本で『生存していれば、A級戦犯とされただろう』事を知っており、それを踏まえた上での発言であった。政治的には有能な山本は正式に『軍政家一本ならば大成できた』とする評価を頂く。これは軍略家として卓越していながら、運に恵まれずに終わったために『理論倒れ』と陰口のあった小沢治三郎と同様であった。小沢治三郎はクーデターの責任を取り、連合艦隊司令長官を辞し、統合参謀本部議長へ転じたが、M動乱とダイ・アナザー・デイの海戦を勝利したという実績は残せた。山口多聞はその後釜に添えられたわけだ。

 

「山口くんは上手くやるさ。闘志に関しては我が軍随一だよ。それに近代兵器が加われば、鬼に金棒だ」

 

山口多聞を高く買う山本五十六。日本側の悲観論と裏腹に、戦況は楽観的であった。未来兵器の投入とプリキュアという超人の存在で、リベリオン上陸軍は大きな蹉跌を余儀なくされた。ティターンズ残党はダイ・アナザー・デイの打撃から立ち直るために沈黙を保っていることもあり、リベリオン軍は大きな壁にぶち当たっていると言えた。

 

 

――戦線――

 

「敵は成都に本部を置いた。敵軍の主力はM46戦車、P-51H、F-84Fなどだ。我が軍は当面、洛陽市周辺を奪還しつつ、重要拠点である奉天を落としたい」

 

洛陽駅に設けられた司令部では、陸軍の着任した司令官『宮崎繁三郎中将』が目標を説明する。彼は史実で活躍した陸軍将官であったため、クーデター後の粛清人事を免れた。一部からはロンメルと同じような歩兵科出身の野戦型指揮官なため、『大局が見れない』と批判されているが、それは大局を見据えた教育ができなかった日本陸軍全体の落ち度である。

 

「空軍としてはどのような方策があるかね、少佐」

 

「ハッ。我が空軍は飛行場が整い次第、戦闘爆撃機を用いて敵を痛撃致します。政治的な要因で戦略爆撃は憚られますので、戦術爆撃を行いつつ、我が部隊が進出して敵を叩きます」

 

TPOを弁え、キュアドリームはこの場では『軍人らしい口調』で宮崎繁三郎中将に説明する。空軍は実際に爆装したF-4EJ改とA-4、A-10を用意しており、いつでも出撃可能である。当時、F-84Fが普及したばかりであるリベリオン本国軍はF3HデーモンやF9F-6クーガーの生産準備中の段階であり、F-4EJ改とA-10は当時の時点では『一歩先んじる技術』の証であった。A-10はダイ・アナザー・デイ後期から本格投入されており、大抵の陸戦兵器を屠る事から、勇名を轟かせていた。扶桑空軍も『制空権を維持できる』ことで採用に踏み切り、1949年の段階では『最新型襲撃機』という触れ込みで公にされている。A-10の能力は1949年時点では『旧来の軽爆撃機と襲撃機を過去の遺物に陥れた』とされるほど評価されており、扶桑の空軍力のシンボルでもあった。日本側の政治的理由での『配慮』で富嶽や連山の戦術用途での投入は憚られているため、高い能力を持つA-10とA-4攻撃機は重宝されていた。

 

「砲兵の展開は?」

 

「自走榴弾砲部隊が到着次第、作戦を検討致します」

 

「相分かった。コンバットアーマーやプリキュア達による強行偵察はどの道、せねばならん。兵站が整うまで本隊は動けんが、敵は政治に振り回されん分、早く動ける。そこを突かれる可能性は大きい。やってくれるね?」

 

「お任せを、閣下」

 

「頼む。君達のような娘っ子に重責を担わせるのは心苦しいことだが、今の我々にはこうしか手がないのだ」

 

ドリームとピーチは敬礼で応える。宮崎繁三郎は傲慢な態度を取る事が多い日本陸軍高官の中では稀なほどの人情味あふれる人物であり、自衛官からも尊敬する者が現れるほどの大人物である。今村均大将と並び、低評価されがちな1940年代の日本陸軍の高官の中で、高潔で尊敬すべき人物と異端児的な存在である。方面軍司令である宮崎繁三郎の方針もあり、ドリームとピーチは他のプリキュアを率い、この翌日から強行偵察に従事する事になる。

 

 

 

 

 

――作戦会議を終えて――

 

『宮崎のおっちゃんはそういう方針か』

 

「ええ。安請け合いしちゃったんで、メンバーを選抜してください」

 

「明後日までに送り込む。フェリーチェも仕事が一段落ついたそうだから、新京から直接向かわせる」

 

「素で飛べるからなぁ、フェリーチェ」

 

「とりあえず、軍隊階級的にお前とラブが先任になる。お前は嫌だろうが、仕事の上で『序列』は必要になるからな」

 

「分かってます」

 

プリキュアとしては、リーダーというものを置きたくないキュアドリームだが、軍人としての序列は理解しているため、便宜上、自分が指揮を取らなくてはならないというのは分かっているので、そこは割り切る。黒江への通信でそこは明言する。

 

「ZEROを取り込んだ以上、お前は矢面に立たなきゃならん。ミラクルを説得するのは骨だったが、ZEROの犯した罪を償う事がお前のやるべき事だ。」

 

「ええ。融合した以上、その責任を取りますよ。ZEROが滅ぼしたみらいちゃんの世界の人たちへの贖罪は戦う事でやっていきます」

 

ドリームは黒江への通信で『ZEROの犯した罪を背負って戦っていく』と明言する。ZEROがみらいのいた世界を滅ぼしたことには変わりはないし、たとえ改心したとて、幾多の世界を滅ぼした罪が消えるわけではない。ドリームはそれ故に今まで以上に戦線の矢面に立つ選択をしたのだ。

 

 

「そうか。みらいはいちかとマナが改めて宥めたが、お前とガチでガチンコするとはな」

 

「みらいちゃんとやりあったのは初めてですけど、いいパンチでしたよ」

 

「だろうな。そうでもせんと割り切れなかったのは事実だろう。お前、ナイトメアのボスと和解した経験あって、本当によかったな」

 

「ええ。つくづく、それはほっとしてます」

 

「それと、多聞丸のおっちゃんがそっちに川内と神通を送り込むそうだ」

 

「あれ、その二人ですか?」

 

「那珂は戦闘要員とはいい難いからな」

 

「なるほど」

 

艦娘・那珂は戦闘要員とはいい難い性格であるために広報任務が主となり、二人の姉が戦闘要員となっている。その二人はダイ・アナザー・デイで金鵄勲章を叙勲されたほどの猛者であるため、艦娘といっても千差万別であるのがわかる。

 

「艦娘もどんどん来るから、統合参謀本部の処理も追いつかなくてな。宮崎のおっちゃんにはそう報告してくれ」

 

「分かりました」

 

こうして、様々な状況の変化に対応しつつも、扶桑軍はてんやわんやであった。当時は人員不足に対応するため、事変の実戦経験があるウィッチ出身参謀の現場復帰も行われたが、必ずしも上手くいくとは限らなかったため、経験がある教官級を実戦部隊に一定期間送り込んで、部隊を育成することも行われた。これは東二号作戦の頓挫で名誉が傷ついた明野飛行学校などへの救済措置でもあり、教官級を隊長格に添えなければ、義勇兵無しでの部隊編成もままならない扶桑皇国ウィッチ兵科の窮状の表れでもあった。そのため、艦娘もこの時期から元の国籍を問わずに投入されていくのであった。

 

 

 

 

 

――ダイ・アナザー・デイ以降、米戦艦はその権威を没落させていた。基本的に米国系の新戦艦は40cm砲に耐えるように造られてきたが、大和型を更に超える砲で殴られてはひとたまりもなかった。50口径46cm砲はまだしも、45口径56cm砲という列車砲と同等の砲を撃ち込まれては、アイオワ級戦艦ではもれなくスクラップとなり、モンタナ級でも致命傷は免れない。改モンタナ級の普及が進んだのはそのためである。その改モンタナ級を上回る新戦艦も計画された。その名は『ユナイテッド・ステーツ』。史実では半ば、忌み名となっていたが、ダイ・アナザー・デイでの無残な敗北に怒り心頭となったリベリオン海軍は『当初から46cm砲に対応した艦』を開発し始め、1950年代の竣工を予定していた。その名にユナイテッド・ステーツを選ぶのは意地のようなものであった。扶桑はその情報を掴むと、大和型以前の戦艦には新型砲弾の配備を行い、20インチ砲級の艦砲を有する播磨型と三笠型には砲の長砲身化を施し、遂には敷島型を完成させた。この常軌を逸した超戦艦の建艦競争に他国はもはや追従不可能であり、事実上、日米両国の頂上決戦の様相を呈していた――

 

 

 

 

 

――話は戻って、日本 安全保障会議――

 

「馬鹿な、アメリカがそこまでして意地になるとは」

 

「空母が政治的に史実ほどの打撃力を持てない以上、戦艦を強化するのは当然です。潜水艦強化に用いるはずのリソースをつぎ込んでも、ね」

 

「モンタナ級の次だと……馬鹿な。ペーパープランでも」

 

「大和型以降の新戦艦が暴れた以上、向こうも対抗措置を取ったのでしょう。予想される大きさは333mです」

 

「信じられん。大和型を倒すためだけに、戦艦をこんな馬鹿げた大きさで……」

 

「大口径化した上で、モンタナ級と同等以上の投射重量の確保を狙う以上は全長・全幅を更に拡大し、船体の安定性を上げるしかなかったのでしょう。我々も大和型の改装で主砲の大口径化をすることは諦めましたから」

 

「閣下、播磨型以降の強化は?」

 

「主砲の長砲身化を進め、新型砲弾の配備を進めています。自動装填装置の強化で投射重量はむしろ増しますので、改モンタナ級が量産されても優位は確保しております」

 

「して、敵新型戦艦の名は?」

 

「仮の名でしょうが、ユナイテッド・ステーツとの事です」

 

「ユナイテッド・ステーツ……!?馬鹿な、あの名は忌み名のはず…」

 

「確かに、史実では慣習的に忌み名とされていますが、我々の世界のリベリオン本国はダイ・アナザー・デイでの思わぬ敗北で軍隊が非難の対象にされたために、より強力なる新型戦艦を前々から準備していた事にして、国民の自尊心を刺激する方法を取った。そのプロパガンダに祭り上げられるのでしょう」

 

山本五十六は自身がかつて、大和型で各国を動揺させた事から、リベリオンがユナイテッド・ステーツ級をプロパガンダに用いるだろうと見抜いていた。本来、ユナイテッド・ステーツは戦後のアメリカの事例から、軍艦の名としてはまず登板しないと見られたため、リベリオン本国軍が使うと予測されたことは安全保障会議を動揺させた。

 

「我々もそれを見越し、命名規則を変えるために聖上の裁可を仰いだのです。その結果が二代目の敷島型なのです」

 

敷島型の概略図がスクリーンに映し出される。空母を兼ねられるように拡大された船体だが、基本構造は手堅く、改大和型の改正である。56cm砲を長砲身化し、元来は水上機格納庫であった部分を拡大し、機動兵器格納庫に強化している。それでいて、サイドスラスターなどの導入で機動力を確保している。そして、機関部は宇宙戦艦化を見越しての構造となっている。ユナイテッド・ステーツの倍以上の船体は置いといても、ユナイテッド・ステーツが当代の造艦技術で造られるのなら、敷島は宇宙戦艦時代の技術で造られたオーパーツ。これは日本海軍最高技術で造られながら、後世に『時代遅れの兵器』と馬鹿にされた大和型戦艦の怨念が異世界で具現化したのだろうかと考える者も安全保障会議の参加者に生じた。なお、播磨型以降の新戦艦は宇宙戦艦への転用が考慮されているため、構造上の都合で集中防御方式ではなく、全体防御方式が取られており、必然的に排水量は大きくなっている。

 

「このように、海は圧倒的に優位ですが、陸は機甲兵器が不足しております。コンバットアーマーとMSを購入したのはそのためです。ダイ・アナザー・デイで購入したと言っても、その後に貴方方が少なからずを博物館に入れたので、数の不足は相変わらずです」

 

「規格に合わない物を除いただけではありませんか。戦中ドイツ製などはすぐに陳腐化してしまう。アメリカからM46かM48を……」

 

「アメリカは自由リベリオンへの援助で手一杯なのですよ?それに敵はM26への更新すら手間取っている。ドイツ軍の車両は米軍やソ連軍も一目置いていたのですよ?」

 

「ティーガーⅠは旧式です。ティーガーⅡはまだしも……」

 

「我々の世界ではまだ新式ですが」

 

ウィッチ世界では基本的に兵器更新速度は遅めである。ウィッチ装備が優先されていた名残りである。ダイ・アナザー・デイでの更新速度が異常であり、平時では四年前に開発された兵器が『最新式』を名乗れるレベルなのだ。(史実のこの時代は一年半で兵器のモデル寿命が来るので、日本が急がせたのは無理はない)

 

「閣下。貴方方の世界はどうなっているのか?」

 

「言ったでしょう?兵器の更新速度は『遅い』と。それにパナマ運河は史実のような大規模な運河ではないので、太平洋への回航効率も悪い上、こちらが抑えている。敵増援は最低でも一ヶ月以上かかるし、それまでに友軍に補足されるのですが」

 

山本五十六はリベリオン本国が抱える難点を述べ、日本側の悲観論をぶっ飛ばす。そして。

 

「我々には切り札があります。これをご覧下さい」

 

ガンダムダブルエックスのツインサテライトキャノン。ウィッチ世界では、どんなウィッチでも防げない(芳佳レベルのウィッチが10人いても無理である)し、街をまるごと吹き飛ばす超兵器。

 

「ガンダムダブルエックス。これが我々の連中への鉄槌を下すための抑止力ですよ」

 

ツインサテライトキャノンはMSが奮える力としては究極的な逸品である。魔神皇帝のブラスター系の武装に比べれば破壊力は落ちるが、効果範囲は遥かに広い。

 

「ガンダムエックスを保有していたのですか……?」

 

「我々も今次大戦における切り札として入手したばかりでしてね」

 

ガンダムエックス系列は地球連邦軍の最新鋭のタイプである。デザリアム戦役でネオ・ジオンの最後のあがきを打ち砕いた功績から、『連邦の力の象徴』とされている。その最高位機であるガンダムダブルエックスは誰が動かしているのかという質問が飛ぶ。

 

 

「貴方方の想像だにしない人物ですよ」

 

山本五十六ははぐらかした。ウイングガンダムゼロに匹敵する力を持つとされるほどの強力なガンダムのパイロットが本来は縁もゆかりも無いはずの『プリキュア5』のリーダーであるキュアドリーム/夢原のぞみであることはこの時期には日本側に明かされなかった。何故か?彼女がフラッシュシステムに適応し、なおかつ、ニュータイプの素質があることは全くの偶然である事、『プリキュアがガンダムパイロットになった』という水と油と言える突飛さから、山本五十六自身が機密指定にしたからだ。これは日本のフェミニズム団体からの追求を躱すためであった。当時、彼らの抗議運動を無視できなくなった21世紀の日本政府は扶桑皇国にウィッチ採用枠を縮小させており、軍に在籍中のウィッチ達が『育成ノウハウが失われる』とカウンターデモを行うほどになっていたし、プリキュア達を軍部で抱え込んだ事への批判が日本のゴシップ紙を賑わせていたため、ガンダムダブルエックスのパイロットが誰であるかは明かさなかったのだ。もっとも、デザリアム戦役には連絡業務のために23世紀世界に駐在していた自衛官も参加しているため、現場単位では暗黙の了解的に知られていたが。

 

 

 

 

 

――民間軍事会社への風当たりが強くなったこの時期、海援隊は公営化されたし、23世紀の世界でも大規模民間軍事会社はエース部隊を軍隊に供出せざるを得なくなった。その関係上、黒川エレン(クラン・クラン)/キュアビートは正規の職業軍人へ転じていた。民間軍事会社に強い政治的規制がかけられたからである。日本連邦では海援隊の組織解体が海保により叫ばれた。その動きは頓挫したが、一部勢力の勇み足で戦艦薩摩は解体されてしまった。その代替に海保の最新式巡視船が与えられたが、戦艦の代わりが海防艦以下の武装しかない船なために太平洋共和国が困惑し、抗議するに至った。日本側はその抗議に困惑したが、扶桑海軍向けに現地で旧世代の護衛艦を作らせる一方、クーデターで大破したまま放置されていた紀伊型戦艦『近江』を修繕し、海援隊が組み入れられた『海上護衛総隊』の旗艦(兼・太平洋共和国海軍旗艦)に添える事で宥めた。(海援隊の旧式戦艦はこの時に多くが護衛艦に置き換えられた。上陸支援艦になった加賀型戦艦も太平洋共和国の要請で一時的に海上護衛総隊に属していたように、戦艦の見栄えする外見が必要と見做されたため、鹵獲したモンタナ級戦艦が太平洋共和国にも譲渡される事になった)日本はこうした混乱への対処で軍組織が巨大化したことで、政治的に増長するのを異常に恐れており、一部の精鋭部隊のみを酷使する事を推奨するが、戦闘の本格化でそれどころでは無くなっていくのだ――

 

 

 

 

 

 

――プリキュア達は1949年になると、のぞみ、シャーリー(北条響)、咲、ラブ、マナの古参である五者の合議で行動指針が決められていた。この時期には星空みゆき(宮藤芳佳)が産休に入り、会議のメンバーから外れていたため、マナがその代わりに入った。会議の進行役は水無月かれんと海藤みなみの両者が交代で担当している。定期的に行われるのだが、ここ最近は『なぎさ、ほのか、ひかりの来訪に備える』事が基本方針となっている。(この時期には、シンフォギアA世界の立花響が『花寺のどか』の因子を目覚めさせ、キュアグレースとして、プリキュアチームの末席に加わっているが、プリキュア会議に列席する資格は持っていない(会議は基本的に現役を退いて、最低でも数年が経過した者達で議席が構成されるため、会議の末席に位置するのはこの時点で宇佐美いちかである)。

 

「だいぶ揃ってきたし、会議も賑やかになってきたね」

 

「それはそうと、今日は駅前のホテルで寝泊まりかぁ」

 

「ホテルの施設は再稼働させてあるそうだし、施設科と需品科が料理は出してくれるそうだよ」

 

「無人化してるったって、ホテルを臨時の兵舎にするなんてね」

 

「本当なら、こんな高級ホテルには泊まれないよ。ここ、20年くらい前の皇国博覧会の時にオープンした高級ホテルでさ。お袋が泊まりたいとか、ぼやいてたんだ」

 

中島錦としての記憶で話すキュアドリーム。ホテルのロビーのソファに座ってくつろいでいる。キュアピーチとは向かい合う形になっている。

 

「前世でダンスでおまんま食ってたけど、こんな高級ホテルに泊まれるのは滅多に無かったんだよね。まさか軍に入って、将校になってるなんて、ブッキーが聞いたら驚くよ」

 

「言えてる。パッションが蛇使い座の聖闘士になってるのどう思う?」

 

「せつな曰く、アカルンの力でも聖域からはテレポーテーションできなかったし、飯を食うために聖闘士になったんだって。シャイナさんが行方不明になったらしくて、欠員補充でスカウトされたみたい」

 

キュアパッション/東せつなは1948年に黒江が聖域から連れてくる形で合流した。黒江が聖域に呼び出され、来てみると東せつなが蛇使い座の白銀聖闘士に収まっていたので、びっくり仰天。そのまま戦列に加えた。アカルンの力でも聖域からはテレポーテーションが不可能(聖域では、アテナの小宇宙でテレポーテーションなどは封じられる。それはアカルンの力だろうと例外ではない)であったので、キュアパッションはスカウトを受け、行方不明になったシャイナの後釜という事で蛇使い座の白銀聖闘士になった。

 

「ぼやいてたよ、せつな。まさか、数年も修行する羽目になるなんて、とか」

 

「あたしらも似たようなものだけど、素質あるよ、せつなちゃん。いきなり白銀聖闘士、それも最高位クラスの蛇使い座じゃん」

 

「元々、綾香さんと智子さんが大決戦で無双した力の根源って事で気になってたみたい。それで聖域の秘密を知ったし、帰る宛がないって事で、聖闘士になる誘いを受けたんだって」

 

東せつなは元々、『管理国家ラビリンス』の幹部『イース』であり、プリキュアの敵だったが、桃園ラブと触れ合ううちに改心し、イースとしての死後に東せつなとして転生し、プリキュアに転じた。敵対組織の幹部がプリキュアへ転じた例は彼女が初である。(以後、セイレーン/黒川エレン/キュアビートなどが続く)

 

「で、数年はガチで修行して、サンダークロウ撃てるようになったんで、叙任されたみたい」

 

せつな曰く、数年は本気で修行したとの事で、この時点には、キュアパッションの姿で極超音速戦闘が可能になっている。プリキュアが修行で聖闘士級の戦闘能力を得たというのは彼女が最初である。次いで、海藤みなみ/キュアマーメイドがその極致に達している。

 

「先輩が無双した事がきっかけで、あたしたちもそのレベルに行くことが必要になる……か。なぎささんとほのかさんも驚いたろうなぁ」

 

「せつなやエレンちゃんの話だと、なぎささん、相当に焦ってたみたい。おまけにヒーローユニオンのヒーロー達が圧倒的に強かった上にスーパーロボットの大技が決め手になったから……」

 

 

歴代の仮面ライダーや歴代のスーパー戦隊レッド達、宇宙刑事達も参戦した大決戦の激しさは咲と舞が来訪からしばらくの間、話の種にするほどであった。その時のなぎさの焦りは相当のものだったと、咲と舞は語っている。

 

「マジンガーとゲッターの破壊力に妖精のみんなは怯えたようだけどね」

 

「そりゃそうだよ。星も砕く破壊力を機械が出せりゃねぇ」

 

ゴッドスパークと真シャインスパークの同時攻撃は守護聖竜『ウザーラ』を撃退するに充分すぎる破壊力を見せた。それは妖精たちを怯えさせたが、むしろ、ウザーラが撤退の際に落とそうとした『20キロ単位の大きさの隕石』をたやすく粉砕したビッグバン・カノンとビッグマグナムのほうが恐ろしいと思うのだが。

 

「むしろ、その後の隕石攻撃を粉砕した宇宙刑事の母艦のほうがおっそろしいと思うけどね」

 

「あれで警察の母艦なんだから、銀河連邦はどうなってんの?」

 

「さー。あそこは20世紀後半の戦争で大ダメージを被ったのが回復できてないって、先輩が言ってた。ギャバンが要職に取り立てられたのに、現場にいるのがその証明だってさ」

 

「宇宙刑事シャイダーが現役の時代って、昭和の末期だよね?」

 

「1984年あたりだけど、そこから地球時間で200年経っても回復できないで、内部の腐敗が進んだみたい。だから、百戦錬磨のシャリバンさんが引退できないで、別のコードネームと偽名で現場復帰したんだって」

 

「スピルバンはつまり……シャリバンさんの新しいコードネーム?」

 

「うん。後進にシャリバンのコードネームを譲ったらしいから、代わりに充てがられたコードネームみたい。地球での名前も城洋介って風にしたみたいだよ」

 

「あそこも大変だねぇ」

 

「あたし達も変身した状態で、こんなショーバイするなんて思ってなかったしねぇ」

 

「本当だよ。しかも正体バレバレで、自衛官からサイン攻めじゃん?それはいいとして、子供から覚えられてるかなー。あたしたち」

 

「五年一昔っていうからねぇ。2020年じゃ、あたしら(プリキュア5)で12年、ラブちゃんたちで11年だしなぁ。2010年代後半からはオールスターズも展開が縮小したし…」

 

ドリームはホテルのロビーの机に置かれたチョコレートを口にしつつ愚痴る。ピーチもメタ的な事情にため息である。

 

「あたしは転生した直後は陸軍に籍あったから、特に叩かれてるんだよね。陸軍とは言え、航空部隊出身だってのに」

 

「そいや、そんな事言ってたね」

 

のぞみは空軍発足前は陸軍に籍があったために中傷を受けているが、陸軍航空部隊のほうがむしろ文化的にはフランクで洒落ているのであり、空自にも影響を色濃く残した。今や、逆に坂本のほうが史実の芳佳の一件や駄々をこねたことで叩かれている身である。

 

「坂本さんのほうが悲惨だよ、今は。アニメで描かれたことで中傷されてる。もう引退してるってのに」

 

坂本はこの世界においてはダイ・アナザー・デイが終わった直後に空中勤務者としては引退を表明し、空母の管制官へ転身している。アニメでは最後まで現役にこだわったが、この世界においては未練なく転身している。坂本としてもいい迷惑だが、眼帯をしたままである事を示すことで『アニメと既に違う分岐を辿った』と示している。

 

「盛り上がっとるな」

 

「あ、坂本さん。来てたんですか?

 

「今さっきだ。連絡要員として海軍から送り込まれてな。お前らんとこに厄介になっていても、書類上は海軍空母の乗員だしな、私は。私への中傷はまだ良いほうだ。黒江達なんぞ、45年にはとうに引退しとる筈だったから、喧嘩を買う事が多かったんだぞ、この二年は」

 

「その度に相手をギタギタにしてませんかね?」

 

「仕方あるまい。統合戦闘航空団にいるようなウィッチは多かれ少なかれ、自信屋だ。菅野のような坊主を見れば、わかるだろう?」

 

「は、はは……」

 

「シャーリーも変身して、別の自分をのすしかなくて、困ってたぞ」

 

「あれには同情しますよ。変身したらしたで愚痴られてたし」

 

「こちらはとかく、戦闘能力では向こうを超越しているからな。向こうのハルトマンとバルクホルンも愚痴るほどにな。接近戦では付け入る隙がないとぼやいてた」

 

「こちとら、ステゴロで戦ってきましたからね」

 

「フルーレで向こうの私の太刀筋をよく捌けたな?」

 

「元々、剣の経験はありましたし、向こうの先輩は実戦で剣を人相手に奮った経験はなかったんで、攻めやすかったですよ」

 

ドリームは通常形態での剣戟もこの頃になると、アニメと同様の経緯を辿った場合の坂本を圧倒できるだけの技量に到達しており、スターライトフルーレで一本取った。扶桑歴代で十指に入る猛者たちに日頃から鍛えられたためもあったが、ダイ・アナザー・デイとデザリアム戦役を経たことも大きかった。

 

「お互いに技能に自信がある以上、平行世界の違いを見せるには、やり合うしかないからな。それも困ったもんだが」

 

「シャーリー、あの時、ぼやいてましたよ」

 

「あんなフリフリの格好でバルクホルンより格闘で強かったからな。しかもまだ力を隠して、な」

 

「超形態になったら勝負になりませんよ。向こうの直枝相手に試したら、あの子に何もさせないで勝ちましたし」

 

「管野や伯爵のようなタイプが厄介だが、宮藤も曲者だからな。黒江が叩きのめして、初めて実力差を思い知ったようだ。お前らもそうだが、血の気が多い奴ほど、どっちが上かわからせんと、言うことを聞かん。宮藤は我を張り通す分、扱いに困るがな」

 

「あの子は自分がこうだと思ったら、絶対にやろうとしますからね。昔のあたしたちのように」

 

「お前たちも大人になって、社会で揉まれていく内に、ああいう無鉄砲さは鳴りを潜めたようだな」

 

「あたしは教師、ラブちゃんはダンサーでしたから。だけど、芳佳やイリヤを見てると、昔を思い出すんですよ。学生時代の自分を」

 

「あたしもです。大人になると、どうしても立場的に無理できなくなりますから」

 

ドリームとピーチは自身が大人として生きた世界での過去を振り返り、どことなく『イリヤスフィール・フォン・アインツベルン』や『宮藤芳佳』の向こう見ずなほどの一途さに現役時代の自分自身を見たと坂本に述べる。坂本は微笑みつつ、自動販売機で買った缶コーヒーを空ける。

 

「武子さんの前では、缶コーヒーは飲めんよ。あの人はうるさいからな」

 

「隊長は豆から挽きますからねぇ。先輩がぼやいてますよ」

 

「あいつはコーヒー牛乳派だしな」

 

黒江は日本に行って以来、コーヒー牛乳っ子になった事が坂本から伝えられる。のぞみもブラックコーヒーは飲めない(かれんがナッツハウスに持ち込んでいた関係で紅茶は飲める)ため、武子から叱られる身である。

 

「あれ、坂本さん。微糖ですか」

 

「それしか在庫が残ってなくてな。黒江はコーラとかを普段は飲むから、自動販売機を発注してやったよ」

 

「あれ、兵站部署に知り合いいるんですか?」

 

「うちの旦那がコネを持っていてな。黒江や黒田に毎回頼むのも悪いだろ?」

 

「確かに」

 

「このホテル、義兄さんのコネで泊まれないかと頼んだ事があってな。南洋横断鉄道の経営で、義兄のおかげで優待券貰えるから。その時は親父に止められたがな」

 

「坂本先輩って、ホテルってガラじゃないイメージありますからね」

 

「それはマスコミ向けだよ。駐在武官が長かったから、本当はホテルのほうが慣れとるんだよ。親父は扶桑撫子らしさを押しつけたがるがな」

 

坂本は対外的にはサムライのイメージで売っていたが、海軍という職場の都合、実際には洋食のほうが慣れている。そのためか、かなり苦々しい思いがあるようだ。

 

「おにぎりを三角ににぎれん時点で、扶桑撫子もないだろと思っとるよ」

 

「芳佳が話の種にしてますからねぇ」

 

「ん、そろそろ士官の夕食の時間だ。行くぞ」

 

「先輩は何を食べるつもりですか?」

 

「今日の曜日次第だ」

 

「あたし、こういうホテルで本物の海軍カレー、食べてみたかったんですよー!」

 

はりきるピーチ。坂本とドリームはそんなピーチをよそに、何を食べるか、ホテルの食堂のメニューを見て思案するのだった。

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