ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第九十六話「次元震パニックその二十一」

――扶桑皇国は愛国的プロパガンダが規制された影響で戦時中にも関わず、急速な採用拡大が出来なくされた。その代替が日本からのリクルート拡大であるという皮肉がある。1946年~49年春の三年間で入隊した新規のウィッチは全体で数千名であったものの、大半が玉音放送を受けた農村層から集団就職で送り込まれ、いやいや入隊した上、能力も第一線の任務に耐えられない程度のものであったため、ほぼ全員が裏方任務に回され、日本やウィッチ世界の各国の義勇兵が実質はその代わりとされた。日本の義勇兵の質は予想外に高く、魔力値そのものは黒江達を凌ぎ、1940年代前半期の時代では超ウィッチとされるであろうレベルの者も普通にいた。これは学園都市出身者に多く見られた。理由は『2020年では過去に名を馳せた学園都市の能力者も青年期を迎えているため、能力を隠して市井に散っていった者も多い』からだ。その内の一人である婚后光子も2020年では、実家の航空会社を手伝っていたが、菱川六花としての記憶と自我の覚醒でプリキュアに戻り、ウィッチ世界で菱川六花として従軍している(レベル4の『空力使い』は健在である。なお、2020年で御坂美琴がどうなっているかは知らないとの事である)――

 

 

 

 

 

――洛陽市の臨時兵舎――

 

「のび太さんにも言ったんだけど、2020年で御坂さんがどうなっているかは知らないのよ。ここ4年は年賀状のやり取りだけだったから」

 

「なるほど。ありがとう、ダイヤモンド。先輩が気にしててさ」

 

「空力使いは健在だから、私に任しときなさいな」

 

「それ、恐ろしいって」

 

キュアハートのお目付け役として、ドリーム達の援軍にやってきたキュアダイヤモンド。時たま、婚后光子としての浮世離れした言動も出るが、基本的には生前のキャラを保っている。ダイ・アナザー・デイでは裏方に徹したが、今回はデザリアム戦役以来の前線という事で張り切っている。

 

「統合参謀本部の高官連中は同位国からの訴追を恐れてるわ。ドイツ三軍と史実の武装親衛隊の連中、東ドイツも含めて多くが追放されたから、カールスラント軍はガタガタ、組織の体を成してないのが効いたようよ」

 

「連中は艦娘を兵器として扱うつもりだったっていうからね。史実のユダヤ人のような目に遭いたいのかな?」

 

「日本の義勇兵と喧嘩になったら、一方的にボコボコにされて泣いてるくせに、口だけ達者なのよね、ドイツ人」

 

「義勇兵の連中は修羅場乗り越えてるから」

 

この当時、統合参謀本部の統合幕僚会議を構成する高官達の出身は日米英の三カ国に絞られつつあった。カールスラントはドイツによる粛清人事で組織がガタガタになっており、議席が維持できるか不透明、ガリアはド・ゴールの政治家への転身で議席が空席化し、頼みのジャンヌ・ダルクは戦士としては一流だが、政治に無関心。出自は英とのハーフだが、一応は仏の英雄であるアストルフォが暫定的にガリア軍の議席を守っている(アストルフォにとっては面倒極まりない仕事なので、会議への出席率は低い)。

 

「日本人は口より手が早いから恐れられてるって感じ。まず殴る。それから口で怒鳴る。だから、怖がられるのよ。針が振り切れると、どんな恐ろしい手段にも躊躇いがないし。村八分とか」

 

「それね。日本は連合軍を信用してない上、他の国も人種差別に神経過敏になってる時勢だしね。ガリアもアコちゃん……もとい、アストルフォを統合参謀本部の議員に…」

 

「あの子、そういう仕事嫌いでしょ?」

 

「ガリアが懇願したんだって。ド・ゴール、後世の仏人にウケ悪いし、ジャンヌさんは政治に無関心だからってんで」

 

「そうなんだよ~。ペリーヌの頼みだから、ボクも断れなくてさ…」

 

「ミューズ、その姿で出たの?」

 

「まさか。会議にはアストルフォとして出たよ」

 

なんとなく、お疲れオーラを出しているキュアミューズ。アストルフォとして会議に出たはいいが、日本の内局が制服組を見下した発言をかましてしまい、場の空気が気まずくなったところに居合わせたとぼやいた。

 

「日本の内局は何考えてるんだろうねぇ。他国の高官もいる前で『金食い虫の戦車は削減したい』なんて。制服組に恥をかかせたいのか……」

 

日本連邦陸軍の削減を図っていた背広組は財務省と結託し、統合幕僚会議でそうぶちまけたが、ロンメル、モントゴメリー、アイゼンハワーなどの名だたる高官達は『実務者を馬鹿にする様な程度の低い相手は話を聞くに値しない』と会議を蹴る姿勢を見せ、日本の内局責任者が慌てて平身低頭する有様であり、日本は連合軍に大恥を晒したわけだ。その時に山本五十六は新戦艦である敷島型を公にし、同時に超モンタナ級の名称が事もあろうに『ユナイテッド・ステーツ』であるとも述べた。

 

「敵の新戦艦だけど、名前わかったよ。ユナイテッド・ステーツだってさ」

 

「ユナイテッド・ステーツ!?あれって忌み名じゃ……」

 

驚くキュアダイヤモンド。

 

「ダイ・アナザー・デイの最後に出てきたユナイテッド・ステーツ級空母、僕たちがスクラップにしたろ?今度は戦艦で造ってる。こうなると意地だ」

 

「じゃ、初戦で海軍が見つけたあれは?」

 

「二番艦のリベリオンだってさ」

 

ユナイテッド・ステーツ級はダイ・アナザー・デイには空母として現れ、64Fとの壮絶な死闘で撃沈されたが、複数のプリキュアを戦線離脱に追い込むほどの戦力を備えていた。その同型艦は乗員の内紛か何かで無人になり、泊地に放棄されていたのが鹵獲され、名を『インディペンデンス』に改名されて修繕工事中である。(大がかりな改装でキティ・ホーク級相当の外観になる模様)その影響で自由リベリオン軍旗艦は同空母となり、ニミッツは同艦に将旗を掲げたという。

 

「もっとも、今はインディペンデンスだけど」

 

「改名したのね」

 

「だって、元はリベリオンだよ?ちょっと語呂が悪いと思うんだ」

 

「言えてる」

 

「それで、戦艦のほーの同型艦が『フリーダム』だって。なんか狙ってるネーミングだよね」

 

ユナイテッド・ステーツ(戦艦)は同型艦がフリーダム、ジャスティスというもので、明らかに狙っている命名である。これはプロパガンダを兼ねており、ダイ・アナザー・デイでの敗北を海軍増勢の大義名分にするためのものだった。用兵上としては『完全な46cm砲防御を持つ船』という触れ込みである。

 

「アメリカがつけるセンスじゃないわね。アメリカなら、リバティとか、インディペンデンスとか…」

 

「ティターンズの都合っしょ。こっちがお上に裁可仰いで、敷島、八洲、秋津洲にしたようなもんさ」

 

日本連邦海軍の新鋭戦艦『敷島型』は命名が日本の別名とされたが、大和は既にいるので、それを除いたものが使われた。大和型の後継艦に日本の別名がつけられたのは、ユナイテッド・ステーツへのネーミング的意味での対抗も兼ねていた。なお、大正期以降の命名規則を変更する事になるため、昭和天皇の裁可が必要であった他、先代の敷島の存在を指摘する声もあったが、初代は海援隊に譲渡されていたので、問題はなかった。日本の異称は数がないため、そこも腐心したところだ。

 

「800mって、水上艦をそこまで大きくしてどうするのよ」

 

「核兵器に耐えないと、予算与えないって財務省がいったそうだよ」

 

三笠型より更に300mも大きいため、日本側からはウドの大木かと言われそうな敷島型だが、その機動力は水上艦の範疇を超えている。三笠型の実績から、サイドスラスターを更に増強したため、水上艦とは呼べないほど機敏に動く。サイズを考えると信じられないほどに。

 

「……いくら宇宙戦艦にする計画があるからって、水上でサイドスラスターを吹かして方向転換する必要ある?」

 

「機動力に重点を置いたらそうなったそうだ。ドーラに撃たれても装甲は弾き返すってよ」

 

「オーバースペックじゃない」

 

敷島型の重防御は三笠型の装甲を撃ち抜くとされる世界最大の列車砲『ドーラ』の徹甲弾に対応するほどに過剰である。

 

「スラスターって言っても、宇宙戦艦みたいなロケットじゃなくて、ウォータージェットを横向きに取り付けて、水を吹き出すタイプだし、サイドスラスターは今日、タンカーや客船だって付けてるよ。それに敵さんがダイ・アナザー・デイでやけになって、富士を鹵獲したドーラで撃とうとした事あるからねぇ」

 

富士の装甲が抜かれる危険があったのは、敵が鹵獲した列車砲『ドーラ』を事もあろうに対艦攻撃に転用した時だけである。威力は確かに本物で、富士の盾になった『クイーン・エリザベスⅡ』を一撃で大炎上させ、漂流の末に座礁に追い込んでいる。(戦後に修理)これは陸上への艦砲射撃のために沿岸に陣取った時に起こった珍事で、黒江も『連中はイカれたのか!?』と狼狽えていた。敵の最後の悪あがきであったが、連合艦隊主力をスクラップにしかねない巨砲の攻撃。もし、富士に撃たれていたら、富士と言えども、戦闘不能になっていたのは想像に難くない。使われたのは榴弾であったが、引火性が高い火薬が仕込まれていたか、クイーン・エリザベスⅡを業火に包みこむ威力を見せた。黒江も『列車砲を対艦攻撃に使う馬鹿がどこにいる!?』と驚いており、連合艦隊の心胆を寒からしめる効果は挙げた。幸い、富士はその前に列車砲をミサイルで沈黙させたが、撃たれていれば、無事では済まなかったとされる。

 

「列車砲ねぇ。あれ、どこの仮想戦記かと思ったよ。だって普通はやんないじゃん」

 

「列車砲は対艦用の兵器じゃないもん。あいつらのしたことが仮想戦記だよ」

 

「残骸はどうしたの?」

 

「残骸は修復して、カールスラントに返したよ。今は車両基地で待機中」

 

「なんか火葬戦記じみてきてない?」

 

「ティターンズとジオンは架空戦記もかくやのトンチンカンな事をやりだすからなー。列車砲くらいで驚いてきゃいけないよ、ダイヤモンド」

 

「なぎささんが大決戦の時に言ってたけど、あの人達の暴れっぷりに比べれば」

 

「あん時はバビロスとグランナスカが一番にインパクトあったじゃん。ウザーラが撤退の時に置き土産で落とそうとした20キロメーターの隕石を一撃で……」

 

銀河連邦警察の誇る二大超次元戦闘母艦の切り札と言える『超次元波動砲』の同時斉射。名を『ビッグバン・マグナム』。その威力は23世紀当時の銀河連邦で最強を誇る。プリキュアたちの世界を守るために披露されたそれは大決戦にいたハートキャッチまでのプリキュアたちの合体攻撃でも破壊不可能な大きさの隕石を粉砕し、仮面ライダー達に負けない活躍を見せた。

 

「あの時のプリキュア全員の残った力を結集しても破壊不可能な隕石をあれは一撃で粉砕したものね。なぎささんがパニくってたわ」

 

「えーと、あの時はライダーシンドロームで回復したんだっけ?」

 

「ええ。12ライダーのエネルギーを呼び水にしたライダーシンドローム。ドリーム、貴方はいなかったからわからないでしょうけど」

 

「先輩から話は聞いてるよ」

 

ライダーシンドローム。昭和ライダーが有する『エネルギーを結集させることで起こす奇跡のような現象』である。それでプリキュア達はエネルギーと体力を回復させ、彼女たちは怪人軍団と戦った。大決戦での本郷猛の一手はこの『ライダーシンドローム』だったのだ。なお、キングストーンも混じっての発動なので効果がRX抜きの時より増幅され、スプラッシュスターの力が進化し、それぞれで単独の変身が可能となった。これが咲の単独行動が増えた一つの理由だ。

 

「それからだって言ってるわよ、咲さん。単独変身ができるようになったって」

 

「キングストーンのパワーも入った分、効果が強く出て、咲と舞の力を進化させたんでしょ」

 

「それ、なぎささんたち知ってる?」

 

「大決戦の後はしばらく一緒にいたって、咲さんが言ってたから、知ってると思う。キングストーンの超パワーアップだと思うけど、なぎささんとほのかさんには適応されていないっぽいなぁ」

 

なぎさとほのかは既に戦士として成熟しきっていた関係か、キングストーンの力でのスペック向上は起こっていないのか?それはまだわからない。咲と舞はその恩恵を受け、システムそのものがアップデートされ、単独変身が可能になり、基礎能力も向上した。

 

「あの子達との縁が深いからかも。現役も長いし」

 

「あたしは修行で強くなったり、ZEROを取り込んだからなぁ。おかげでミラクルとかち合ったけど」

 

ドリームはZEROを取り込むことでGウィッチとしての力を完全にしたが、ZEROの行為の贖罪という意味でも、戦いに身を置く事をしなければ、キュアミラクルが納得しない。それをわかっているからか、現役時代より凛々しい表情が増えている。

 

「でも、キュアエコーが出た時に混じれた時さ、のぞみ、すごい吹かしてたよね」

 

「いいじゃん、ミューズ。ハッピーに普段はきりきり舞いさせられてるし」

 

「産休に入る前もすごくからかってたしね、君のこと」

 

「芳佳、向こうのあの子自身が固まるくらいにキャラ違うからなぁ」

 

「あなた、今回はどうするの?」

 

「前世のこともあるし、当分は夫婦水入らずさ。いくらでも時間はあるしさ、今は」

 

ドリームも1950年代後半にコージとの間に女子を儲ける事になるが、ここからは未来の話。その女子が前世での次女の転生であるという奇跡もあり、今回は幸せな家庭を手に入れる。また、コージが野比家の一員であるため、その子は野比家の財産継承権を持つ事になり、ある時代での鋼線使いとして名を馳せるのび太の孫『涼子』と同世代の野比家の一員と扱われる。その子の名前はコージの発案で『さくら』(ひかりは九条ひかりとのかぶりが起こるため)とされたという。のび太の外孫の一人に数えられるという。このように、のび太は最終的に多くの内孫・外孫を持つ身となり、ノビスケの息子はそれらを統制するため、辛苦を強いられたという。(野比を名乗らないが、のび太の血を継ぐ縁者は21世紀以後に多いという。また、その子は1960年代後半に入隊。2000年代前半まで現役だったという)

 

「先輩いわく、今回は医者としての後継ぎで、戦士としての後継ぎは次だってさ、芳佳」

 

「あの子、二人以上産む気?」

 

「あーや曰く、そうなるんだってさ。ま、トワみたいに名義を使い分けて違う仕事する芸当もできるけど、面倒くさいよ」

 

「アンタが言うこと…?」

 

「いーじゃん。お姫様から開放されたと思ったら、シャルルマーニュ十二騎士だしー!」

 

どっちみち、偉い身分からは開放されない運命のキュアミューズだが、前世よりよほど自由気ままに生きている節がある。また、キュアミューズの姿でいないと理性が保てないという切実な問題もあり、キュアミューズの姿で街をぶらつくことも多い。また、言動は完全にアストルフォのそれであるため、毒舌気味である。

 

「昔の姿にならないの?」

 

「別にいーじゃん。それに昔の姿だと、色々とフェミな人達のがうるさいんだよ」

 

「あなた、そこ気にするような質じゃないでしょ?」

 

「ガリアの特任大使なんて、引き受けるんじゃなかったよ」

 

ぼやきまくりのキュアミューズだが、現役時代は小学生プリキュアであったので、日本から文句が来るため、生前の姿の一つ『調辺アコ』にはなれない。その兼ね合いでアストルフォの姿とキュアミューズの姿を使い分けている。

 

「あなた達、そろそろ朝食よ?」

 

「あ、アクア。芳佳から引き継ぎ終わった?」

 

「申し送りも済んだわ。私がしばらくは担当する事になったから、書類が多くて」

 

変身コスチュームの上から白衣を羽織ったキュアアクアがやってきた。医務官としてスカウトされたため、多忙である。彼女は現役時代から連れてこられたので、何かと苦労も多かったが、この時点ではインターンも終わったために医官として、それなりの地位である。

 

「でも、変身したまま白衣っていうのは慣れないわ」

 

「芳佳なんて、キュアハッピーの姿で白衣羽織ってましたよ」

 

「……なぎささんが見たら、腰抜かすわね」

 

「21世紀には白衣着ない医者も増えてるけど、一種のパフォーマンスだろうな。昔の医療ドラマ覚えてる世代が社会の中心だし、日本」

 

「古典的ね」

 

「医療ドラマで老人が覚えてるの、あの二つじゃん」

 

「よく知ってるわね……」

 

「前世でおじーちゃんがCSで見ててね…」

 

苦笑いのキュアミューズ。パフォーマンス的意味合いが多いとはいえ、プリキュアたるもの、世間受けしないといけないのも辛いところであった。なお、外見的には最年少に見えるが、精神的にはもっとも成熟している一人であったりするのも彼女の微妙なところであった。

 

「でも、まさか……。君が軍医になるとはね」

 

「医局に入って、年寄りたちにへーこらして食べていって、家の財力で開業できたって、周りから陰口を叩かれるよりは、軍医になったほうがマシだと思ったのよ」

 

水無月かれんは音楽一家の出だが、それに頼らないで医師の道を選んだ。だが、日本では色々なしがらみがあり、嫌悪感を覚えた。そのためにフェリーチェの誘いに乗り、扶桑皇国空軍軍医となったのだ。

 

「君にしては切実だね」

 

「家のコネで音楽の道に進む道もあるけれど、昔、ミルクの看病をした時から決めてたから」

 

「君、そういう歳でもないだろ?」

 

「貴方もね」

 

二人はお互いに顔を見合わせて、微笑み合う。食事を済ませると、戦闘要員のプリキュア達が集まり、任務を遂行する。今回は強行偵察であるため、特殊車両で悪路をぶっ飛ばす。運転はキュアダイヤモンドである。

 

「おい、ダイヤモンド!!ウニモグなんて、どこから流してもらった!」

 

「実家のツテよ。うちは学園都市の航空部門の名門だったから」

 

「だからって、こんな悪路をわざわざ走らせるのかよ!?」

 

「普通の道だと検問されるでしょうが」

 

「ひょえ~~!??」

 

悲鳴をあげるドリームとメロディ。キュアダイヤモンドはウニモグの悪路走破性能をフル活用し、ジャングルを突破する。とんでもなく悪路であるので、プリキュアに変身していても、ひどく乗り物酔いしそうな勢いで揺れる。だが、悪路走破性能は折り紙付きである。

 

「おい!!ダイヤモンド、お前じゃだめだ!プロレーサーだったあたしに運転させろ~!」

 

「貴方はスピード狂だからダメよ。第一、こいつはそういう車じゃないのよ?貴方はどの車も限界まで引っ張って壊すでしょうが」

 

「のわ~~!そ、そ、そ、そんなのどうでもいいから~!」

 

ドリームはあらゆる方向に揺れる車に滅入ったようで、このコメントであった。慎重なダイヤモンドの運転で、なんとか途中の悪路を突破し、敵の前線基地と化した奉天に足を踏み入れる一行。息も絶え絶えになっていたが、市内に足を踏み入れた。奉天市は南洋東部最大級の都市であり、南洋横断鉄道有数のターミナル駅を抱えている。この都市は緒戦で失陥したため、陸軍の楽観を叩く世論が拡大した理由となっている。この時点では敵の前線基地化しており、国際空港は航空基地に変貌していたし、避難しなかった一部住民が占領軍に媚びを売る生活を送るという『これぞ占領下』を地で行くディストピアぶりだ。

 

「ドイツ軍占領下のパリみたいだな、こりゃ」

 

「一部の住民は生活基盤の崩壊を嫌がって避難しなかったっていうけど、ここまでなんて」

 

「世の中、そういうものよ。ドリーム。いつの時代も、大衆は自分が平和なら、政治が独裁になっても構わないのよ」

 

「世知辛いなぁ、これ」

 

「秘密警察が彷徨く、レジスタンスが指名手配される。まるっきりドイツ軍占領下の街じゃねーか」

 

ため息のメロディ。

 

「おーい。みんな~。この新聞見て!」

 

キュアハートが新聞を見つけ、皆の前で広げる。新聞の内容はいかにも全体主義や共産主義国家にありがちな内容であり、郊外の住宅地にさえ戦車が鎮座しているなど、完全に史実のナチス・ドイツ占領下の街のようなディストピア的雰囲気たっぷりである。

 

「連中、やってることはナチス・ドイツかソ連じゃねぇか。お題目が泣くぜ」

 

「それは置いといて……って、うわぁ!?」

 

いきなり一同のいる道路に爆発が起こり、兵士たちとレジスタンスが小競り合いを起こす。『如何にも』な光景であり、デザリアム戦役で自分達がしてきたことでもある。任務上、加勢できないために心苦しいが、一同はこの隙に歩みを進める。この時のメンバーはドリーム、メロディ、ハート、ダイヤモンドの組み合わせである。

 

「メロディ、ドリームの面倒は頼むわよ」

 

「へいへい。すっかり慣れたぜ、こいつのお守り」

 

「め、メロディ~!」

 

「事実だろ?って……ハート、おまっ……!何買ってんだ~!?このアホ!」

 

「え?そこの玩具屋で日本からの輸入プラモの在庫あったし~…」

 

「今、買う奴があるか!?」

 

と、キュアハートの抜けた行動にキュアメロディが頭を抱えつつも、現役時代の席次と関係なしの素の関係が窺える一同。しばらく歩いていると……。

 

「お、君たちか」

 

「一文字さん!」

 

仮面ライダー二号/一文字隼人とばったり出会った一同。一文字隼人は元々、カメラマンであるので、さほど怪しまれないが、敢えて泳がされてもいる。そこもリベリオンを裏で統制するティターンズの手口であった。

 

「組織がラ級用の重力炉を卸したという情報を掴んでな。潜入捜査をしていたんだ。連中は俺を泳がせている。俺がライダーだという事で、手出しを控えているんだろう」

 

「どうしてですか?」

 

「俺の体は組織が贅を尽くして造り上げた『大首領の体の試作品』だ。並の機甲戦力では足止めにもならない事を分かっている。俺たちに正面から対抗できるのは、シャドームーンくらいだ」

 

シャドームーン。かつてのゴルゴム世紀王にして、歴史上で確認された中で初の『悪の仮面ライダー』と言える存在である。大決戦では並みいるヒーロー達と単独で互角に戦い、その場に居合わせ、ライダーシンドロームで回復したプリキュア達の放つ必殺技を完全に無効化、反撃で何人かに瀕死の重傷を負わせたほどの男である。(シャイニールミナス、キュアウィンディ、キュアパイン、キュアマリンなど)

 

「あん時、あんたらと互角に戦って、ルミナスやパインを半殺しにした銀色の奴ですか」

 

「君達の総合力では奴には対抗しきれん。月の賢者の石を持ち、その気になれば、月光でRX化すら起こせる。必殺技の波動がサタンサーベルに切り裂かれたろう?」

 

「ええ……」

 

頷くメロディ。大決戦に乱入したシャドームーンの力は強大で、初代プリキュアの誇った必殺技『エキストリーム・ルミナリオ』をサタンサーベルで切り裂いて逸らす、スプラッシュスターの『プリキュア・スパイラルハート・スプラッシュ』を月のキングストーンフラッシュでかき消したばかりか、サタンサーベルを以てして、キュアウィンディを半死半生に追い込むなど、世紀王としての強大さを一同に思い知らせた。最強の昭和ライダーであるRXと対等に渡り合い、7人ライダーを相手取って無事であるなど、まさにプリキュア達にとっては、かつての敵幹部が易しく思えるほどの相手であった。サタンサーベルはスプラッシュスターの精霊の加護すら無効化し、レッグトリガーの超振動はたやすくプリキュアの防御を破り、肉体に重篤な損傷を与える。メロディはその時のブラックやブライトの取り乱しようを回想する。

 

『メロディ、助けてよぉ……、このままじゃ、ルミナスが……ひかりが死んじゃうよぉ!』

 

『嘘、嘘でしょ!?精霊の力が戻ったはずなのに!?ねぇ、舞、目を開けてよ……まい、ねぇったら、まいぃぃぃ――ッ!』

 

ルミナス、ウェンディ、パイン、マリンなどがシャドームーンの餌食になった。特になぎさと咲は仲間の体から溢れ出る血にひどく取り乱し、応急処置も何もできないほどだった。最強形態を保った自分やハートでも、シャドームーンには食い下がるのがやっとであり、黄金聖闘士である黒江と智子を以てしても、二人がかりでようやく互角(シャドームーンは光速を視認できる)なほどの強大さ。ブラックとブライトが戦意を喪失してしまったため、プリキュア達の士気はまたも崩壊してしまい、一種の脆さを露呈した。そのためか、『この世に希望という心の光がある限り、俺達は不滅だ!!』という啖呵と共にリボルクラッシュを決め、シャドームーンを撃退する姿と、更にプリキュア達を叱咤激励するRX/南光太郎の姿は、仲間を失う恐怖に支配され、泣きじゃくることしかできなかったなぎさと咲に強い影響を残した。特に咲は『あの人みたいに強くなりたいって思ったんだ』と合流後に述べており、『偉大な男達の背中』を追いかける事を目標にしている。

 

「あの時、君らの仲間に俺たちはどう映ったか…」

 

「あんた達はすっごく尊敬されてますよ、一文字さん」

 

「本郷が困惑してたよ。この子がすごくキラキラした目で見るから」

 

「こいつ、すっごく本郷さんを尊敬してますから」

 

「め、メロディ~!」

 

「ドリーム、一号ライダーみたいに強くなりたいって言ってますから」

 

「ハートまで……」

 

「この子、一号ライダーのフィギュア買ってましたよ。しかも後輩を使って」

 

「だ、ダイヤモンドぉぉ~…・」

 

メロディはドリームに視線を合わし、ハートとダイヤモンドもからかい、ドリームは赤面する。ドリーム自身は戦いには関わらなかったが、『大決戦』以来、本郷猛/仮面ライダー一号を強く尊敬しているからだ。(自分達に利がないのにも係わらず、命がけで戦ってくれた上、ヒーローユニオンが一丸となって対処してくれた事に感謝の念を抱いている)

 

「ヒュウ♪本郷もモテモテだな」

 

 

茶目っ気溢れる一文字。本郷猛は既に黒江からは父親のように慕われているからだが、キュアドリーム/夢原のぞみからも尊敬されていることを一文字はこの時に知ったわけである。現在型の日本の等身大スーパーヒーロー全体の始まりの男である重責からか、古武士然としてストイックな振る舞いから、本来の優しさは理解されにくいのだが、黒江やのぞみなど、自分が本来持たなかった何かを心のどこかで求める者には『優しさと強さを備える者』として尊敬の念を抱かれる。本郷もそれを『蘇った後の世界での自分の存在意義』と悟ったのか、最近は師であった立花藤兵衛を思わせる茶目っ気のある言動を取るようにもなってはいるが、まだまだ固いとは一文字の談。

 

「さて、情報交換といきたいが、ここは当局の監視が厳しい。もっと先に行こう」

 

一同は奉天の街を観察しつつ、先へ進む。ディストピア的な空気を漂わせる奉天市。人の姿もまばらで、レジスタンスと治安維持部隊の小競り合いが起こるなど、テンプレート通りに占領下である街の様子は戦争中である事を否応なしに示していた。

 

 

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