――1949年になると、連合軍の主導権は日本連邦、キングス・ユニオン、自由リベリオンの三カ国の手にあった。ダイ・アナザー・デイでカールスラントが連合軍から半ば手を引き、ガリアも議席を持つだけに堕ちたためだ。1949年までに『艦娘』の扱いでカールスラントなどの複数の海軍が制裁を受け、艦娘の亡命が相次いだ(複数の国が艦娘を『擬人化した兵器』として扱おうとしたため、同位国に問題視された。これで副次的に複数の有力な海軍将校が何カ国かで失脚した)。結局、元の国籍を問わずに日本連邦が身元を引き受ける事になり、艦娘による『艦隊』を編成した日本連邦海軍は艦隊航空隊の苦境はともかくも、戦力補強には成功。連合艦隊の編成通りに第一艦隊が戦艦、第二戦隊が高速戦艦(他国出身含む)という陣容となった――
――強行偵察に選ばれたプリキュア達が出かけた後――
「川内、提督の使いで参上~」
「ね、姉さん……」
艦娘・川内と神通が到着した。ダイ・アナザー・デイで経験を充分に積み、成長した後であるため、ダイ・アナザー・デイ後半以降からは能力をフルに引き出せる『改二』状態である。
「おう、来たか、川内と神通」
「提督の命により参上しました。奉天への足がかりに大連を落とすと?」
「うむ。あの海域にレアメタルがあるのが分かってな。大連を落とす必要が出た。統合幕僚会議での決定が下った。それで奉天の陣容を調べさせている。運よく、現地に仮面ライダー二号が来ていてな。早くに詳細がわかるだろう」
南洋の反攻作戦はこの頃から開始されたが、敵の戦力増強が予想を超えて早く、一部計画は先延ばしされるものの、奉天を落とすための足がかりとしての大連攻略は強行される。ちなみにこの頃から、超甲巡の性能に強い不安を覚えた日本の背広組の後押しで『41cm砲搭載の高速戦艦』の計画立案と設計が進められる。これは大和型戦艦以降の重武装の戦艦が主力化したために、工廠などに在庫が多く眠る41cm砲弾の在庫処分も兼ねての計画であったが、超甲巡の主砲換装が頓挫した代替プランも兼ねていた。通商破壊作戦への対応にアイオワ級戦艦を動員される事に強い不安を覚えた背広組のぶち上げた机上の空論に近かったが、内局の後押しで『砲の採用』には至った。実際には改モンタナ級戦艦の普及と、超モンタナ級戦艦の登場で大口径の51cm砲の『普及』が急務になり、その41cm三連装砲は第一線級戦艦の主砲になることはなく、近江、尾張、駿河の修理や加賀型戦艦の上陸支援艦への改造の際の備砲として使われるに留まったという。
「知ってますか、背広組が超甲巡に不満があるの」
「うむ。31cm砲では役に立たんと喚いてるな。戦艦とはやらん船だぞ、あれは。アイオワやモンタナは大和型とかに任せればいいんだよ。それにサウスダコタやノース・カロライナはダイ・アナザー・デイで海の藻屑にしてやったし、コロラド以前の戦艦は1941年に退役して、大半がスクラップになってるんだがな」
「新規で高速戦艦を設計しろと圧力をかけているそうな。通商破壊にアイオワ級戦艦が対応したら、為す術もないだろうと」
「魚雷ダースでぶち込みゃ大抵の戦艦は黙らせられる、敷島型や改装済みの大和型みたいな超装甲とかポリマー充填浮力体(発泡スチロール等の充填で、目的は水線下の浮力維持である)とかみたいな防御されなきゃな。それに、アイオワ級は決戦兵力だ。その可能性はないぞ。書類上は旧式戦艦の一部を現役のままにしているから、それらへの対応でアイオワ級を通商破壊への対応に従事させることはない」
黒江のいう通り、アイオワ級戦艦は多数が造られ、未だ多くが就役しているが、艦隊運用ドクトリン的な都合で決戦兵力として使われるため、通商破壊への対応に駆り出されることはない。これは紀伊型戦艦の残りの三隻が書類上はまだ在籍中であったり、改装が公にされていない加賀型戦艦に対応するためであった。また、ダイ・アナザー・デイで列車砲以外の手段では、連合艦隊の新鋭艦に正面から手傷を負わせるのは困難であるという戦訓から、大和型戦艦以降の新鋭艦を足止めするための戦力と見なしているためであった。
「アラスカ級を鑑みての事だろうが、あれとは性格が違う船なんだがなぁ」
「あれは単に大きい巡洋艦ですからね。私達ならカモにできます」
「花の二水戦らしいな、神通」
「事実ですよ。」
艦娘を運用するのは日本連邦のみとなった。艦隊戦で有用な戦力になることを見抜いた山本五十六などは人権その他を与え、厚遇している。カールスラント、ガリア、ロマーニャ、ブリタニアなどからは『単に擬人化した兵器ではないか』という意見が生じたが、日本連邦は『兵器の力を持つ九十九神』と位置づけ、厚遇を以て応えた。結果、主要国海軍の全艦娘が日本連邦への移民を申請するに至る。特にカールスラント海軍はこの騒動での提督の少なからずの相次ぐ失脚がとどめになり、三軍の周囲への影響力が致命的に低下。おおよそ数十年に及ぶ辛苦の時代が訪れていく。
「カールスラントは地団駄を踏んでるが、あそこは80年代まで立ち直れんだろう。帝国もはたして維持できるか。カールスラント本国の奪還は俺達がせねばなるまいさ」
黒江はこう言ったが、帝国そのものは存続する。しかし、完全な立憲君主制国家に様変わりした事により、この時代のような軍事重視とは言えなくなっていく。だが、時たま光るものは開発し、この時代の栄光を後世に伝えていく。軍モラルの崩壊は本土奪還という目標を政治的に奪われた事で起こったため、ドイツ連邦も対応に苦慮。1946年の新京条約の補足事項を使う形で一定量の軍備保有を認めたのが1948年のことなのだが、一年も経っていないこの時期には『堕落した軍隊』とレッテル貼りを受ける身であるのがカールスラント三軍である。
「グンドュラには同情するが、美琴の同位体っていう偶然もある以上は前線に出てもらわんとな。本人もそのほうが喜ぶだろう」
グンドュラ・ラルは長く、空軍総監に在任することになるが、自分の同位体からは『古傷が治ってる上に、軍の制服組トップなんて羨ましい』とぼやかれるなど、苦笑いの日々である。なお、本人も書類を誤魔化すことで下原を呼んだ事が日本ルートでバレたのは相当に絞られたが、『芳佳を呼ぶフラグ立てたんだぞ』と反論している。単なる開き直りだが、グンドュラが下原を持っていったことで、困った坂本が芳佳をスカウトする流れになったため、ある意味では功労者であると開き直っている。
「それはそれ、これはこれですよ」
「お前、来ていたのか」
「同位体と話してから来ました。傷が治ってることは羨ましがれましたよ」
「常盤台の制服をなんで着てる?」
「気分転換ですよ。空軍総監なんて、ガラじゃないのにやらされてるんですから」
グンドュラ・ラルはこの時には御坂美琴としての自我のほうが強まっているため、声はグンドュラ本来のハスキーボイスではなく、御坂美琴と同じものになっている。なお、肉体本来の声が出せなくなったわけではないので、使い分けているとのことだが、同位体との関係がうまくいっているのも彼女の特徴だった。(関係が険悪なのは、菅野と管野が挙げられる。管野がつっかかる側なのだが、ひかりや孝美と接点がない菅野に激昂して取っ組み合いになったこともある。この時期には流石に大人しくなったが…)
「お前の同位体……グンドュラとしてのほーだが、管野のことで何か言ってたか?」
「非礼を詫びられました。貴方のことしかり、のぞみの事、芳佳のこと……」
「管野はどこ行っても、喧嘩っ早いのがわかったってことか」
「ええ。貴方のことは特に堪えたと」
「西沢の姉御をガキ扱いしたって怒ってたな、あのガキ」
菅野はどこの世界でも西沢を姉と慕っている。その西沢を『ガキ』扱いした黒江に怒った同位体に菅野は忠告したが、結局、管野は黒江に手も足も出ない有様だった。西沢曰く、『黒江さんはどっちみち、あたしの先輩だぞ、カンノ…』とのこと。西沢は1945年当時に18歳、現役の古参世代である。一方、管野は事変を知らぬ若い世代。西沢のデビュー当時にエースだった黒江を知らないのは無理もない。普通ならとうに引退した世代であるからだ。また、怪異が相対的に弱い世代のウィッチであるので、高をくくられていた節もある黒江。だが……。
「それと、孝美の同位体がブルってましたよ?」
「俺の動きを魔眼で捉えられないからだろうな」
「孝美の魔眼は美緒と違って、能力強化型ですからね」
「俺の動きを捉えられるのは仮面ライダーや聖闘士、シャドームーン、それにのび太と東郷だけだからな。ま、ZEROと融合したのぞみも大概だがな」
「よく、キュアミラクルが納得しましたね」
「のび太の人徳だよ」
「そう言えば、貴方が言い出しっぺなんですって?ZEROとの融合の」
「ああ。前にその可能性は言ってやったが、本当に融合しやがった」
のび太はのぞみが現役時代、最初に戦った『ナイトメア』の首領と和解した事を知っていたため、その可能性にベットしていたと述べている。なお、のび太はこう言い、キュアミラクルを引き下がらせている。
『彼女とZEROは僕とザンダクロス以上に上手くやれるさ、上手く行かなそうな時は僕やみんなで助ければ良いのさ。人は優しさがなければ、生きていく資格はないと思うよ、ミラクル』
のび太はZEROにも慈悲を向ける。ミラクルは故郷を滅ぼされたことでの憎しみから、ZEROを完全に滅ぼす事を主張した。だが、ドリーム/のぞみはZEROが根本で恐れているモノを視覚したことで、ZEROが隠していた根本的な恐怖が何であるかを知ってしまった。それは『マジンガーZを超える原初のマジンガーであるグレートマジンガーへの恐怖』であった。マジンガーZの落日の訪れは『グレートマジンガーの颯爽たるデビュー』で締めくくれられる世界線が主流である事、Zの滅びの象徴がGであることから、Gの存在の抹消に全力を注いでいた。のび太の世界は『Zがゴッドに生まれ変わり、最強に返り咲く』世界であるため、ZEROも手出しをしなかった。それともう一つ。Z神の権能『雷』をZは操れないが、Gの系譜は操れるというコンプレックスだったのだ。のび太もそのコンプレックスがZEROの敵愾心の根幹であることには心底、同情した。ZEROは無慈悲な魔神と思いきや、グレートマジンガーに強いコンプレックスを持つ子供じみた側面を持つ人間臭さがあるからだ。グレートマジンガーはZと違い、人を守護せし守護神たれという思いで、ゴッドの試作機という立場から転じ、生まれた。一方のZは兜十蔵の研究の集大成であった。その差である。また、当初はのぞみと完全に融合する事を望んだが、甲児が受け入れたことで自我の確立に成功したため、元々の善の心はZちゃんの新たな力となった。また、霊魂そのものはのぞみに神託を与えるキングストーンの意思のような存在に生まれ変わり、自身の見込んだプリキュア達に協力していく。のぞみもZEROを受け入れることで光子力とゲッター線の共鳴反応に耐えられるようになり、オールスターズニューステージでの大暴れに繋がった。
「去年の冬だったか、あの子、巻き込まれたらしいですよ」
「ドラえもんから聞いた。カイザーノヴァを山下公園で撃つやつがあるか」
「え、山下公園で!?」
「ドラえもんがバリアーポイント使ってくれたからいいようなもん、ピーチのストナーサンシャインとドリームのカイザーノヴァじゃ、半径一キロはぶっ飛びますよ。その時の他の皆の顔写真見ます?」
「後で見させてくれ。今日は銃の整備に行くんでな」
「どこに行くんです?」
「21世紀のアメリカだ。知り合いのガンスミスに頼み事あるんだ」
黒江はのび太のツテでデイブ・マッカートニーと知り合い、この頃には懇意になっている。黒江は東郷の友人であるのび太の友人という遠い間柄だが、のび太を『若いの』と呼ぶ(東郷に比してであるが、のび太が若々しい容姿なため)彼の腕は確かで、ゴルゴも長年に渡って、全幅の信頼を置く。21世紀に入ると、彼も年齢的に老境に達していたが、『全米で五指に入るハンドメーカー』ぶりは健在である。黒江はドラえもんから借りたどこでもドア、自身が未来デパートから買ったタイムマシンなどを駆使して、21世紀のアメリカに向かった。
――1949年。ウィッチ世界では開発競争が続いていたが、ダイ・アナザー・デイを戦い抜いた部隊以外はジェット機へ強い拒否反応を起こすため、ジェット機の全面的普及は成っていない。そんな中、全面的にジェット機を第一線機種として用いる部隊は重宝され、酷使されていた。その関係でダイ・アナザー・デイを戦い抜いた部隊は矢継ぎ早に機種が更新され、1949年の時点で早くも有力部隊にF-4EJ改が装備されるに至った。これは日本の史実の開発速度への懸念も関係していたが、今度は機種更新速度が迅速すぎて、パイロット育成が追いつかない問題も発生。部隊ごとに機材の格差が生じていた。本来はレシプロ機もまだ使われている時代なので、仕方がないが、戦後第三世代以降の高性能機を使うこと自体が反則に近いのである。レシプロ機のいいところは電子機器の整備にあまり手間がかからず、燃料と弾薬を補給すれば、機体はすぐに飛べるようになるところだ。そこを重視する部隊はレシプロ機を依然として使い続けている。戦車が更新にヒーヒー言っているのと対照的だが、これは戦車は自国のもので正式なライセンス契約を結びたがった軍需産業の後押し、国防族議員の圧力などもあってのことだが、背広組の横槍で事態は大きく混乱。1949年になっても組織的運用ができていない。背広組は『外国産なんか使うより国産を使わせる!戦中型は使いものにならんからポイ!!』と横槍を入れたが、ダイ・アナザー・デイの長期化と外国産戦車の購入を招いた。それからの彼等の度重なる失態は遂には扶桑皇国にコンバットアーマーの購入を促したわけで、飛行機は更新が上手く行っているように見えても、現場の一部は扱い慣れた既製品を求めるし、戦車は新型が求められるのに、前線には届かないという有様であった事は日本連邦の国防行政のチグハグさと、日本側の実戦への無知ぶりの露呈であった。――
――こちらは来訪したプリキュアの中では新参であるミルキィローズ/美々野くるみ、キュアレモネード/春日野うらら。デザリアム戦役後に戦車道の冬の大会に出ていたため、合流が遅れたのである――
「まさか、この姿で本当に戦闘に出るとはな……」
ミルキィローズは生前と違い、『カエサル』主体の人格であるため、ミルキィローズに変身していても中性的な口調のままである。なお、階級は中尉となっている。
「でも、全員揃ったんですし、良しとしましょうよ」
こちらはキュアレモネード。寡黙な人物を戦車道世界で演じていたが、プリキュアとしては素を出すため、口調は生前の通りである。
「ラブリー、ドリーム達は?」
「今は強行偵察に出てるよ。あたしたちも大変だよ?これから広報に顔出し、それとブロマイド撮影……」
「な、なんだそれ……」
ずっこけるローズ。レモネードは生前に散々してきた仕事なため、苦笑交じりだ。
「軍隊でもそういう仕事するんですね、ラブリー」
「あたしは四年前からしてるよ~。そういう仕事、ゆうゆうの……ハニーの専門って思ってたんだけどなぁ」
かなり疲れているキュアラブリー。この四年、『ランカ・リーに声色がすごく似ている』事を理由に広報任務に駆り出される率が高かったからだろう。
「そ、その……、ど、どんまいですよ、ラブリー……」
「ありがとう、レモネード……」
疲れた声だが、とりあえずはアクアから言われた仕事をこなすラブリー。
「えーと、ドリームにここ数年であった出来事を説明するよ」
映像を見せるラブリー。自分も参戦した大決戦、ブルームとイーグレットが来訪後の『ニューステージ』の映像が含まれた特別映像で、マジンガーZEROを取り込み、実質的にそれまでと一線を画する存在となったキュアドリーム。光子力とゲッターエネルギーの制御が可能となったのは言うまでもないが、改心したZEROから授けられた力は『神を超え、悪魔も倒せる』レベルのものだ。ニューステージの戦いでは、キュアピーチとともに『カイザーノヴァ』と『ストナーサンシャイン』の併せ技でフュージョンを葬っている。また、錦から引き継いだ草薙流古武術と剣技も持つため、実質的には以前と別の存在となっていると言える。また、フラッシュシステムに偶然にも適応した事で、正式にガンダムX、ガンダムダブルエックスのパイロットもしている事も伝えられ、波乱万丈にも程がある経緯に二人は呆然となる。
「すると……ドリームは今や……」
「そう。全プリキュアでも五指に入る実力の持ち主だよ」
「属性盛りすぎですよ…。ガンダムパイロットで、スーパーロボットの技を普通に打てて、昔より断然強くなってるなんて」
「で、ミラクルとガチで殴り合いしたしね。今じゃ、私達は変身したまま日常を過ごす事も多いよ」
「昔と違って、正体隠さなくても良くなったからな。この世界は私達のようなシンボルが必要なのか?」
「うん。この世界は戦争が長いからね。シンボルが必要なんだって」
ウィッチ世界はどの時代でも象徴が必要である。事変の時のレイブンズ含む七勇士、43年以降の501統合戦闘航空団はその最たるものだ。
「解りやすい希望の象徴がウィッチであり、その頂点に君臨するのが、お前らプリキュアや、あたしらGウィッチって訳だ、ガキ共」
「ケイさん」
「オッス。日本は科学で代用が効くとか言って、ウィッチを排除しようとしたんだが、この世界のロシアで魔女狩りが本当に起こってからは方向転換した。本当に魔女狩りするのは、日本も望んでいねぇしな」
日本はオラーシャでの凄惨な魔女狩りと疑心暗鬼からの街同士の衝突を目の当たりにすると、ウィッチの排除から、一定の範囲での保護政策へ転換し、人事的優遇は緩めるものの、金銭的優遇は続ける事を1947年に表明した。その要因の一つであるオラーシャの脱出者の七割は扶桑に亡命し、サーニャの両親も友人関係であった名家の九条家を頼って亡命。しかし、娘がオラーシャ最高の撃墜王となっていたことなどを理由に、娘を九条家へ養子に出す事を決め、サーニャもそれに従った。だが、九条家はあまりに名家であったため、前線勤務ができなくなる事を懸念したサーニャは今度は自分の大ファンであるカールスラント皇帝『フリードリヒ四世』に謁見。皇帝の裁可でアインツベルン伯爵家の名跡をルッキーニと共に継いだ。その際にサーニャが名乗った名が『イリヤスフィール・フォン・アインツベルン』。ルッキーニは『クロエ・フォン・アインツベルン』。二人は共犯関係に近い関係になり、普段はアインツベルン家の人間として行動していたりする。
「おっと、イリヤとクロの正体は知ってんだろ?だが、同位体には内緒だ。リーネに至っては家族より芳佳への愛を選んだようなもんだしな」
リーネはビショップの家名を背負うよりも、スオムスの名家『エーデルフェルト』の一員となる事を選び、美遊・エーデルフェルトという新たな名と姿を使っている。なお、本来はブリタニア人だが、美遊としては扶桑とスオムスのハーフという事になっているリーネ。この時期には、美遊名義で扶桑人の夫と結婚(入婿)していたが、芳佳との関係は続けている。なお、身元引受人のルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトとは、ハンナ・ユスティーナ・マルセイユが変身した姿なので、マルセイユもこの大芝居に噛んでいる。ルヴィアの高飛車な性格はマルセイユの演出も含んだものだが、マルセイユの素であるところも多分にあり、遠坂凛化した八神はやてとは色々あり、ライバル関係である。(マルセイユ自身、父親が陸軍高官であるため、その気になれば、お嬢様キャラを演じられる。その集大成がルヴィアであるという)
「化けられるんなら、化けたほうがトラブルを回避出来るからな。あたしは代替存在で、別の存在だからいいが、のぞみや芳佳たちはな」
圭子の言う通り、トラブル回避も重要な仕事である。のぞみはデザリアム戦役の際に、同位体と揉め、結局はフェリーチェが力づくでアクアとミントを連れていく事になったのは記憶に新しい。デザリアム戦役の後、そののぞみの願いを組み、フェリーチェ、スカーレット、ピーチ、ホイップ、ラブリーがその世界のプリキュア5に加勢したのは、そのバーターの取引のようなものだ。
「芳佳ちゃんも大変だよなぁ。去年の結婚披露宴は同位体には内緒にしたし、向こうの世界のウィッチは迷信があるし」
芳佳Bには『自分の夫が誰であるか』は知らしていない。婚約自体は知らせたが、坂本が感くぐったため、誰かは伏せる事になった。もっとも、坂本もこの世界では従卒の土方兵曹と結婚したのだが。
「仕方がない。ミーナはそれで幼馴染との関係を進めることができなかったからな。結婚はパニックを起こす。一応、向こうの坂本には知らせてあるが、あいつもそこは口が堅いから、バラしていない」
「それが救いですね」
坂本はどこの世界でも、口が堅いところがある(態度でバレる場合もあるが)。そこが先輩達の信頼を勝ち取れた理由である。また、この世界での自分の人間関係に大いに苦笑いしたのは言うまでもない。また、坂本Bにとっての48年は胃が痛い一年で、芳佳とリーネが先輩に非礼を働く、管野は喧嘩を売りまくる(B世界では直接の部下ではないが、同郷の軍人として眉は顰めている。)など、気苦労が絶えなかった。特に坂本Bにとって、胃に穴が開いたのは、部下の芳佳とリーネが自分の世界の黒江と智子を責め立て、先輩の智子を泣かせたことであった。芳佳が自分を引き合いに出して、ホテル暮らしに甘んじる智子を批判したことは、坂本Bの胃に穴を開けた。エクスウィッチの気持ちをあまりに考えない部下の無知な発言に、坂本Bは黒江Aにひたすら謝るしかなかった。黒江が『実力を同位体に見せろ』と部下に通達を出すきっかけになったこの出来事。A世界で求められるものがどういうものかを教えるしかないと決まった日、圭子との連名で赤松の裁可をもらった上で通達を発した。
――『迷いこんで来た、分をわきまえねぇガキ共に焼入れてやれ、できるな?』――
その決定に従い、実力差を見せつける事が48年度中は行われた。501の同位体が主にその対象であったが、孝美と管野も含まれ、途中で西沢も面白がり、その流れに乗った。そのため、バルクホルンBは「ええい、この世界の扶桑軍はバケモノか!」と地団駄を踏む羽目になり、ハルトマンBは「あそこは怪物の巣窟だぁ…」と泣いた。これは阿修羅の様相で接近戦を仕掛ける姿に怯えたためで、空戦センスは概ね互角であったのだが、ステゴロを含む接近戦には対応しきれないという難点も判明した。管野はそれを鑑みれば奮戦したほうであるし、孝美は割に善戦できている。絶対魔眼はF-86ストライカーの動きにも対応できたからだが、絶対魔眼の更に上位互換である智子Aの『覚醒』の存在には腰を抜かした。そして、孝美は智子必殺の『烈風正拳突き』を食らって昏倒し、解除されたという。
「去年は面倒だったが、普通に行けば、あたしや綾香は引退してるはずの年齢だしなぁ。実力差をみせねぇと、ガキどもは納得しなかったのは疲れるぜ」
「えーと、ケイさん。戸籍上は三十路に入ってません?今年」
「智子と綾香も20後半に入るからな。それで去年は面倒な目にあったって奴だ。ヤンキーよろしく、年齢より実力が物言う界隈だからな」
ウィッチは基本的に年齢より実力が物を言う世界である。高齢のウィッチは後輩に舐められることが多いが、64Fではそれは当てはまらず、事変世代が最高幹部の座を守っている。戦略をも左右するとされた逸材の多くは扶桑においては、その世代に集中していたからである。ウィッチの摂理が覆った世界であろうと、それは変わりはない。(扶桑ウィッチはこの時期には基本的に覚醒の休眠期であり、日本で覚醒した者達などで穴埋めしている。この傾向は史実で三自衛隊ができた1954年まで継続する)それをわからせるための荒療治はその年が終わるまで行われた。
「少なくとも2つ以上の部隊が転移してきてるから、労力を費やしたぜ。実力差を肌でわからせんと、言うことを聞かない連中だしな」
「あたしたちも手伝いましたからね。ガチンコしないと、言うことを聞かない子達だったし」
「大昔のヤンキーじゃあるまいし……」
「そういう理屈が通る世界なんだよ、ウィッチ界隈は」
ウィッチ界隈では階級や権威よりも、個人の実力でしか言うことを聞かない者も大勢いる。そのため、必然的に模擬戦となり、プリキュア達も手伝った。ドリームは立場上、深く関わる事になり、他のプリキュアも時たま手伝った。その関係で、プリキュアにも負けたマルセイユや管野はその典型だ。
「新聞見たけど、何の名誉回復なんですか?」
「四年前、この世界に他の世界からの介入が始まってね。それが過激になって、色んな理由で出世街道から外れたり、仕事を辞めるしかなくなった人が多く出たんだ。その運動が終わって、名誉回復の動きが始まったんだ」
そのきっかけとなったエディタ・ノイマンはこの頃には軍を退役し、機械加工関係の企業を興し、実業家に転身していた。文化財をないがしろにしたという事で、軍人としての栄典の一切を剥奪されていたが、この頃に名誉回復がなされ、年金を受け取っていた。このように、過剰な訴追は戦争勃発で終わり、名誉回復の動きが活発となったが、結果的に処方面に深い傷を残した。扶桑とカールスラントはその傷が深く、扶桑生え抜きウィッチの質と志願数が元に戻るには、1954年を待たねばならない。
「昔のアジアであった運動みたいですね」
「どこの世界も似たような出来事は起きるって奴だよ、レモネード」
「それはさておき、これからどうするんだ、ラブリー?」
「戦闘は当分ないと思うから、広報の仕事をやらないといけないなぁ。21世紀の世界は何かとうるさいからね」
「フェミニズムとかの小うるさい輩だろ?なんで、それを気にせねばならんのだ?」
「声は大きいからね。あれじゃ、却って誤解招くよ」
ラブリーもため息だが、2020年の世界を席巻する人種差別撤廃運動はウィッチ世界では却って逆効果で、ウィッチと軍人への職業差別意識を芽生えさせる結果となった。扶桑でウィッチの志願数が低下したのはそのためで、基地の周りに『軍人街』ができていくのは、この時に生じた職業差別で故郷に白眼視され、故郷を追われた軍人達が基地の近くの新興住宅地に邸宅を構えたのが始まりとされる。ラブリーはオブラートに包んだ物言いであるが、自分達の活動を邪魔するフェミニズムや相当に滅入っているのがわかる。
「無能な働き者ほど恐ろしいものはないな……」
「ナポレオンだって言ってたろ?そういうのが厄介者なんだよな」
無能な働き者ほど、害になる者はない。それは30世紀のゲッターエンペラーとハーロックの時代に至るまでの組織論の共通事項である。実際、有事に『無能な働き者』が無駄に動き回り、取り返しのつかない事態になったことは第一次世界大戦、第二次世界大戦、統合戦争、一年戦争など、枚挙に暇がない。圭子、キュアラブリー、キュアレモネード、ミルキィローズは色々な経験から顔を見合わせて頷きあうのだった。