ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第九十八話「次元震パニックその二十三」

――ウィッチは純潔でなければ魔力を維持できない。それは間違いであった。魔導師の存在が明らかになった事、更に芳佳や美遊、坂本、のぞみが結婚し、後に子供を儲けても、魔力に何ら異常がなかったからだ。二代目レイブンズが現役の時代には、1940年代前半の常識は過去のものとなっていた――

 

 

 

――二代目レイブンズの時代である21世紀――

 

黒江達が隠棲生活に入り、二代目レイブンズが正式に後継者となった時代は平和であった。2010年代に『第二期日本連邦時代』が始まり、64Fがかつて有した超兵器の国産化も実現したが、有事は2000年代の事変を最後に起こっておらず、有事即応部隊も時代とともに縮小・解散していったが、64Fは大戦~冷戦期の戦功が政治的立ち位置の維持に奏功し、維持されている。そんな平和な時代に生きる黒江の後継者『黒江翼』は義母らの現役時代に加勢する事で『技量維持』を行う事を部隊長であり、武子の孫娘『美奈子』に提案した。

 

「おばあさまの時代に加わって戦う?」

 

「平和すぎて、隊員の訓練も惰性的で儀礼的になってるからな。母さんが現役の頃に加勢して腕試しする。今の若い連中は有事の空気を知らん。ウチの伝統的にそれは不味い」

 

2010年代。その頃になると、大戦で生じたリベリオン本国のミリシャも掃討が完了しており、平和そのものの時勢になっていた。扶桑は月面進出で資源を確保する道を選び、そこにいた新型怪異との戦闘も起こっていたが、かつての戦いからすれば『些細なもの』である。64Fはかつての功績により、政治的に手出しできない聖域であるが、世代交代した政治家からは『不要論』が叫ばれていた。(優秀な人材を一般部隊へ放出させたい思惑があった)そんな『空気』では隊員の士気も低下していた。それを払拭するため、過去への介入を決めた未来64F。彼女らの陰ながらの助力は黒江達がダイ・アナザー・デイ、そして、太平洋戦争を戦い抜く上での力となった。

 

 

――1949年―― 

 

未来64Fは未来機材の提供と整備ノウハウの提供を行っており、黒江達が大戦中に未来ストライカーを使用可能な状態で終戦まで維持できたのは、それが理由であった。二代64Fの結成メンバーは21世紀では生涯現役扱いになる『元帥』の扱いになっており、現役引退後も一定の影響力は残っており、機材の横流しは比較的容易に行えた。

 

「美奈子、そちらに送ったリストは見たかしら?」

 

「はい、おばあさま。手配が済み次第、そちらへ届けさせます。軍需産業も発注が減ってますから、喜んでますよ」

 

「ごめんなさいね、未来の貴方たちの手を借りて」

 

「いいんですよ。どうせ暇してますから。トーネードは第二陣を送ります。ライノはクラリス(シャーリー/キュアメロディの孫)のラインで横流しできないか探っています」

 

「トーネードは防空装備?」

 

「防空装備と爆撃仕様を送ります。ウチが湾岸の時に輸入していたものを再整備して、実戦仕様に戻しましたから」

 

トーネードはキングス・ユニオンが生み出したマルチロールストライカーである。実機と違い、装備違いであらゆる任務に対応可能であるため、一時代を築いた。日本連邦も一定数を軍事交流で購入しており、64F・魔弾隊の後進である『マジックブレット隊』が主に使用していた。また、後世の公式記録には意図的に残されていないが、実際には1949年度に魔弾隊が使用し始める。ISにも似た装甲服型なので、ストライカーの後身であることには当時の殆どの人々は気づかなかった。(アリス・ギア・アイギスや武装神姫などにも似ているためだろう)黒江達の現役末期頃に登場した装甲服タイプはマッスルシリンダーとアクチュエータを併用する日本連邦タイプ、オラーシャが発明したマッスルシリンダーのみのタイプに大別され、日本連邦の技術を基にした併用型は大国向けの高価なタイプだが、生存性に優れる。マッスルシリンダー式は扱いやすいが、生存性が悪く、全損になることも多いため、装甲服タイプが花開くのは、A-10ストライカーとF-20ストライカーでアクチュエータと併用する方式が吾郎技師(芳佳の夫)によって発明されてからである。以後、大国では併用式が主流となるが、第二世代式以前のストライカーより相対的に高価であり、大国の保護国などの『小国』は機体の生存性に目をつむり、マッスルシリンダー式を買う事が多い。

 

「魔導誘導弾は?」

 

「携帯式対空誘導弾仕様も含めて、数千発は送りました。半年は持つでしょう」

 

「ありがとう。タイガーシャークは受け取ったわ。整備が終わり次第、新選組に回すわ」

 

「おばあさま、扱いには慣れておいででしょう?」

 

「『久しぶり』だから、慣らし運転したくてね」

 

タイガーシャーク。F-20のことだ。当初はマッスルシリンダー駆動式で設計されていたが、黒江達の後押しで機体が正式採用され、制式量産される際にアクチュエータとの併用式に改良され、21世紀においてもその最終型が使われている。スーパーホーネットとほぼ同型のエンジンに換装し、各所を改良した最終型は初期型と別のストライカーと言ってよく、21世紀でも、機動力は随一を保つ。そのタイプが制空戦闘脚としての後継機となるF-22の配備で余剰となり、レストア後に過去の64Fに送られたのだ。

 

「さて、去年のこともあるし、501の同位体にも見せるわ」

 

「分かりますかね?」

 

「ルッキーニの同位体の起こした騒動で明るみになったから、隠せなくなってね。あの子の身軽さは大したもんだわ」

 

「トリエラが苦笑いしてますよ」

 

「は、はは…」

 

「武子おばさま、おばあちゃんが苦労かけまして」

 

「正確にはその同位体だけど、貴方のおばあさまの素がわかったわ、トリエラ」

 

ルッキーニの同位体は1948年に騒動を起こした。その時に501Bに未来ストライカーの存在が明るみに出てしまった(ルッキーニに悪気はなかったが)ため、存在を明らかにし、実際に使用した。その時に、ルッキーニBはイリヤとクロにシメられたのはいうまでもない。なお、21世紀には震電は震電ⅢがF-2の後継として開発されだした頃であるため、未来64Fから震電シリーズは全機が退役している。

 

「芳佳おばさんの同位体はなんて?」

 

「こちらがさらなる力を隠していたんで、すごく不満そうな顔をしてたわ。もっとも、公にできない未来の機体とわかったんで、引き下がったけど。ダイ・アナザー・デイでも、ウルスラを説得するのが骨だったのを思い出すわ」

 

「仕方がないですよ。第三世代理論は第一世代、第二世代のネガを潰して生まれたんですから」

 

「とりあえず、翼と麗子は義勇兵で処理するわ。澪は?」

 

「こちらで仕事があるので、それが終わり次第。なんて説明する気です?おばさま達」

 

「普通に姪で通すって」

 

その辺はいい加減だが、『姪』であることには変わりないので、大きくは嘘はついていない。基本的に三人の実家は三人の仕事に口は挟まない主義であるのも助けになっている。

 

「面倒事はこれ以上避けたいから、いっその事、試乗させるわ。」

 

「第一世代にしか乗っていない人に第三世代は無謀ですよ、おばあさま」

 

「当代最高を謳われた者達だから、使いこなせるかは別にしても、飛べはするでしょう?」

 

武子は1949年、遂に501、502、504の三つの統合戦闘航空団の同位体らにそれを明らかにする事を選んだ。第三世代理論式航空ストライカー。それとその前世代の第二世代の理論式。第一世代型とはまるで違うそれらは試行錯誤と技術革新の賜物と言えた。

 

 

――後日、ホテルの中庭――

 

「これが未来の可能性の一つなのですか、武子さん」

 

「そうよ、坂本。正確にはその可能性の一端と言えるものよ」

 

「一端?」

 

「少なくとも、この世界での答えでしかないわ、これらは」

 

「誘導ロケットにガトリング砲……えらい重装備だなぁ。こんなんで空戦できんの?」

 

「これでも比較的軽装よ、エーリカ」

 

「嘘ぉ!?」

 

「で、21世紀にはこんなゴテゴテしたものでドンパチかよ」

 

「そういう流れになったのよ、直枝。陸戦も考慮されるようになったから、装甲服型に変わったの」

 

「俺もここじゃ、あと数十年でそれを?」

 

「現役の末期頃のことになるわね、この場にいる貴方達の世代にとっては」

 

 

第三世代型の登場は1970年代頃になるので、大戦第一世代のウィッチが退役を迎える10年ほど前の時期における最新鋭機であった。それと同時にインドシナ(ベトナム)戦線での決戦兵器でもあり、黒江達は使用したとの記録が後世に残されている。

 

「そんな時代のものをどうやって?」

 

「孫娘が後を継いだから、無理を言って持ってこさせたの。俗に言う技術チートね」

 

「よろしいのですか?」

 

「構わないわ。今の戦争はそれをしても許されるような戦いだもの」

 

ダイ・アナザー・デイでは政治的対立勢力の策略もあり、ほぼ孤軍奮闘を強いられた反動が来た武子はこの時期には率先して技術チート行為を行うに至った。ダイ・アナザー・デイで苦労した反動なのか、かなり考えを転換させ、『技術チートがなんぼのもんじゃあ!』とヤケクソ気味な答えに行き着いた。頼れるのが地球連邦軍、Gフォース、ヒーローユニオンだけだった故であり、ある意味では背広組と日本の左派の罪と言えた。

 

「それと、あいつらはなんなんだ?」

 

「おい、管野」

 

「個人的に気になるんだよ」

 

「私もです。あなた達はウィッチを超えたって言ってますよね。どういう事ですか。それに……。あの子達の力はいったい…」

 

「私達はあなた達の知る『ウィッチの摂理』を超えた者。そうね、純潔で魔力が失われたら、芳佳の一族はどうなのって話にもなるし、呪い師としてのウィッチにはそもそも純潔は必要じゃないわ」

 

「それに、道具で魔法を操るって意味だと、私達も広義のウィッチに入りますし」

 

「お前は?」

 

「私はキュアミラクル。貴方が戦ったキュアドリームの後輩だよ、直枝?」

 

「ここの俺の知り合いで、あの野郎(キュアドリーム)の後輩だって?」

 

キュアミラクルはこの時期には活動を開始しており、一同の前に姿を見せた。魔法つかいプリキュアは魔法を真正面から扱う戦士である。なお、リコとモフルンに頼み、予め変身をした上で待機していたとのこと。

 

「うん。一応、少佐かな?」

 

「なんだとぉぉーーーー!?」

 

腰を抜かす管野。菅野が源田という理解者の後ろ盾を得て、1945年には大尉になっていたのと対照的に、一介の少尉に過ぎない彼女には雲の上に等しい階級差があるからだ。

 

「くっそ、いったいどうなってやがる!!?あんたが少佐だとぉ!?」

 

「武子さん、この子もそうですが、まだ若いのに…」

 

「あら。この子は見かけは14くらいだけど、実年齢は貴方より上よ、坂本」

 

「!?」

 

仰天する坂本B。他のメンバーも一様にざわめく。苦笑するミラクルだが、見かけは現役時代と変わっていないが、実年齢は『巻き込まれた』時点で19歳を超えている。そこから更に数年後が1949年であるので、普通に考えて20代になるからだ。

 

「見かけと実年齢は比例しないってことですよ、坂本さん」

 

「君や中島もそうだが、その力はウィッチとは違うのか?」

 

「私はウィッチに近い力ですけど、のぞみちゃんは魔法と無関係の力です」

 

「……」

 

日本のウィッチ差別意識はウィッチ世界の1946年から問題視されており、『魔力を保つのに純潔が必要』という『日本から見た迷信』も差別意識からの冷遇に繋がった。その冷遇がウィッチ志願数の低下を招くという悪循環を引き起こした。それをせき止めるため、ウィッチと同等以上の力を扱える上に、子供を儲けようとも影響がない魔導師や、そもそも別種の魔法を持つ魔法つかいプリキュアが軍部に重宝されていた。ウィッチそのものの世代交代による性質の『進化』(ゲッター線にウィッチ世界の人間が適応する)でウィッチそのものが古代の呪い師のように、純潔を保つ必要が無くなり、男性にも魔力が発現するには、少なくとも1946年から数えて、十数年の月日を要する事になる。

 

「そもそも、ウィッチに純潔が必要なんて、誰が言ったのかしら」

 

「武子さん」

 

「魔導師は男が当たり前にいるし、古代には男のウィッチもいたって記録はあるわ」

 

幼馴染のことがあるミーナBがあからさまに眉を顰め、坂本が諌めるが、武子はミーナBを意に介さない。呪い師や魔導師、魔法つかいプリキュアなどの存在から、純潔を失う事での魔力の喪失は精神的な要因によるもので、強い精神があれば、魔力は復活する事がある。それは史実の芳佳で証明されている。

 

「それに芳佳はたいていの場合、魔力は戻るわ。1945年の戦いで失ったはずの魔力を翌年に取り戻す。確認済みよ」

 

平行世界を認識している時点で置かれた状況の違いがわかるので、B側は何も言えなくなる。また、キュアミラクルの存在はある種の『魔法つかいの可能性の一端』の証明である。芳佳が辿るであろう可能性を諳んじてみせた事でB側に衝撃を与えたわけだ。

 

「それはそうと、シャーリー。使ってみたいでしょ?」

 

「お、おう…」

 

「これらは本来は少なくとも数十年後、中には21世紀に使われるはずの機体もあるわ。貴方達の知るジェットとはケタ違いのものよ。もちろん、安全性も燃費もね」

 

ルッキーニやハルトマンが疑いの眼で見るものの、流石に隔絶した技術差が生じていることは外見からも明らかであったし、MSやVFが普通に飛行するのは目撃しているので、なんとも言えない。

 

「孫かひ孫の時代ね……。平行世界との接触はタイムマシンすらも……」

 

「そういう事よ」

 

ミーナBのその一言を肯定した武子。これにより、目の前の機体が自分達の孫の時代に造られるはずのストライカーであることが示された。急激に科学が進歩しているこの世界での答えなので、自分達の世界では違う答えになるだろうが…。

 

「あの、穴拭先輩のあの力はいったい…」

 

孝美Bが質問する。

 

「覚醒系の最高位のものよ。貴方の絶対魔眼の更に上をいくもの。あの子はそれに更に第七感を上乗せして強化しているわ。第六感ってあるでしょう?その上の領域の力よ」

 

智子の力は覚醒系の最高位である。もちろん、B世界の智子にはないものだ。それにセブンセンシズを上乗せすれば、他の覚醒系のウィッチを遥かに上回る能力を発揮する。この時代には『ウィッチ権益の守護者』と見做されている初代レイブンズだが、つい四年前には『ウィッチの異端児』扱いされていたため、ウィッチ出身高級軍人達の現金さと保身のための掌返しぶりは高官達の間でも公然と語られている。

 

「第六感の……先……」

 

「第九感まで確認されてるわ。阿頼耶識を超えると、冥界にも自由に行けるし、光速で動ける。私達はその領域に達しているわ」

 

「!?」

 

「そして、それでようやく互角になる敵がいてね。そんな怪物と戦うためには人の領域を超えないとならなかったのよ」

 

「はい。私達、普通にダンプカーを押し返せますからね」

 

キュアミラクルもサラッと言うが、通常形態でも、一般的なダンプカーの突進を押し返せるレベルのパワーを持つ。ススキヶ原滞在中に暴走車が横断歩道を歩いていた親子連れを轢きそうになった時には、暴走車を押し止め、親子を救って表彰されたこともある。

 

「怪力系のウィッチじゃないとできないですよ、そんな事……」

 

「貴方達が出張ったところで、人を撃てるかしら?最低でもそういう覚悟がないと、この世界では生き残れないわ。四年前、その事が理由の一つになって、統合戦闘航空団の多くが凍結されていったわ」

 

501に他の統合戦闘航空団が統廃合される流れとなったのがダイ・アナザー・デイだったが、人同士の戦争に駆り出される事を嫌い、統合戦闘航空団からもサボタージュ参加者が少なからず生じた。結果的に64Fが連合軍ウィッチ部隊の殆どからろくな支援が受けられずに孤軍奮闘を強いられたのを重く見た連合軍がダイ・アナザー・デイ後にウィッチ兵科の段階的廃止を採択すると、保身のために日本連邦に移民するウィッチが続出。『食うため』それまでの考えを掌返しして、日本連邦軍に属する者も多く生じた。この浅ましさも人心の離れに影響し、後の兵科解消の一因である。凍結扱いなのは『将来に復活できる余地を残してほしい』とのウィッチ出身参謀達の嘆願によるものだ。

 

「どうしてそんな事に……」

 

「敵が現れたからよ。怪異よりよほど、たちが悪いのが、ね」

 

ティターンズをそう表現する武子。ティターンズは強化人間、格闘術の達人が大勢おり、ダイ・アナザー・デイではプリキュア達が最強形態を駆使してさえ、ズタボロになって帰ってくる率は高かった。(ドリーム、ピーチ、メロディは特に確率が高く、治療担当の芳佳/キュアハッピーをして『あんたら、またかいな……』とうんざりさせられるほどであった。黒江が特訓させたのは、芳佳がうんざりさせられるほどに、その三人は毎回毎回、ボコボコにされてくるからであった)特にティターンズ残党の指導者『アレクセイ』は南斗鳳凰拳のドラえもん世界における継承者であり、南斗最強を誇る拳で当時のドリーム、ピーチ、メロディが最強形態で束になってかかっても一瞬で返り討ちにしてみせ、黒江をして『お前が……南斗鳳凰拳の…!』と驚愕せしめたほどであった)

 

「敵は人知を超えた殺人拳を極めた達人も大勢抱えてるし、その強さは常識を超えているわ。この子のような力を以てしても、舐めてかかれば返り討ちにされるほどに」

 

キュアミラクルも頷く。プリキュア達が現役時代の上を行くことを志向したのは、アレクセイを始めとするティターンズ幹部達が上位の南斗聖拳、あるいは華山系の闘技を誇る猛者共であり、現役時代の最強形態でさえもたやすく返り討ちにしてきたからである。前線視察に来たアレクセイを襲撃した三人のプリキュアがたやすく、彼に返り討ちにされて捕虜になり、7人ライダーとのび太が牢獄から救い出した出来事は当事者の三人をして『プリキュアしてきて、最大級に恥辱を味わった』と振り返るほどであった。(救出後に大特訓が行われたのは、7人ライダーとのび太が救出しなければ、見せしめに磔で市井に晒されていたであろう事実に強い屈辱を覚えた三人が特訓を懇願したからだ)

 

「私達は矢面に立つ事が求められる以上、あらゆる敵と戦う。あなた達にそれは無理と言ってるのよ。理屈では理解しても、気持ちとしては人を撃つのを躊躇う。そんな状態で戦場に出しても、死ぬだけよ。敵は怪異じゃ無くなっているのよ、もはや」

 

武子はB世界のウィッチたちに現実を突きつける。A世界の戦争はもはや人類古来の形式へ立ち還っているのだ。B世界の芳佳やリーネ、ひかりは1948年中にそれと向き合い、顔を隠して救難部隊に参加している。それも一つの選択である。次の次元震で506が現れる可能性も取り沙汰されているため、扱いを統一するための選択肢の提示であった。プリキュア達は大決戦とデザリアム戦役での経験で覚悟を決めており、ブルームとイーグレットも大決戦で覚悟を決め、職務についている。

 

「俺達に黙って見てろってのか!?」

 

「でも、ナオ。人を撃つなんてできんの?」

 

ニパBが疑問を口にするが、管野は苛立つ。

 

「それは分かってるよ!だけど、二年近くも技能維持の訓練だけじゃ……!おい!アンタ、事変の英雄だかなんだかしらねぇが、俺を倒して証明してみせろよ!」

 

「管野、先輩に無礼だぞ!!」

 

「アンタは黙ってろ!!同郷だけど、直接の上官じゃねぇだろうが!」

 

「綾香やのぞみの言うとおり、活きが良い子ね。いいわ、受けて立ちましょう」

 

「武子さん、子供の癇癪をいちいち……」

 

「こういう子には口で言うより、ぶつかりあう事でわからすほうがいいのよ、坂本。勉強なさい」

 

 

管野はA世界のウィッチに返り討ちにされ続けたせいか、鬱憤がかなり溜まってるらしく、階級としては『上官』である坂本にもみっともなく当たり散らすなど、かなりのヒステリーになっているという『醜態』を見せた。それを見かねた武子はそれに応じ、震電改を使い、模擬戦を行うことにした。

 

「くそ、震電の改良ったって、乙戦だからか?機体が重い……!」

 

管野はスロットル操作に気を使い、思うように横方向に曲がれないジェットストライカーに戸惑う。菅野が源田の秘蔵っ子として名を馳せ、黒江や智子から英才教育を受け、スムーズにジェットストライカーに乗り換えたのとは対照的であった。

 

「あの野郎、誘ってやがる!事変の英雄だがなんだかしらねーが、やってやる!!」

 

と、意気込んだものの、実際には武子の圧倒的技量の前に翻弄される。

 

「まただ……昔の英雄だってだけで、俺があてらんねぇのか!?」

 

模擬弾がかすりもしないことにヒステリックに喚く管野だが、地上から見れば、彼我の技量差は明らかだった。武子は仮にも世界最強の64Fの隊長であり、竹井(A世界ではキュアマーメイドになっている)が姉のように慕うほどの大人物。坂本も幼少期に世話になった。その経緯があるため、坂本Bは管野の敗北を直感する。

 

「あの小僧、負けるな」

 

「どういう事だ、少佐」

 

「お前らのような若い連中は知らんだろうが、武子さんは事変で三羽烏と謳われたほどの腕っこきだ。ましてや、引退していないこの世界だ。活きが良いだけの小僧では歯が立たんだろう」

 

バルクホルンBに坂本Bがいう。B世界での武子の武功を教えるが、A世界では『七勇士』の一人ではあるが、三羽烏ではないという違いはあれど、七勇士の一人に数えられし英傑である。震電が元は一撃離脱向けの局地戦闘脚で、管野の好みではないことを差し引いても、二人の技量差は顕著に現れている。芳佳Bがそこそこ渡り合えたため、管野の猪武者ぶりが際立つ。けして凡人ではないが、A世界における菅野ほどには才能がないという証でもあった。

 

「それじゃ猪よ?頭を使いなさいな」

 

「るせぇ!!」

 

武子は涼しい顔だが、管野は顔を真っ赤にしており、完全に血が昇っていた。数回ほどの接触で拳での殴り合いに切り替えたが、武子は顔色一つ変えることもなく、身体の重心移動などだけで管野のラッシュを躱す。そして、痺れを切らして剣一閃を使用したのだが……。

 

「う、嘘だろ……!?」

 

我が目を疑う管野。全力の一撃を武子は掌で受け止めてみせたからだ。その瞬間、武子の体から黄金のオーラが迸り……。

 

『貴方に見せてあげましょう。この大いなる星々の瞬きからは逃れられないことを』

 

管野は本能的に危険を感じ、距離を取ろうとするが、全ては遅かった。黒江達が聖闘士になった以上、その元締めである彼女がならないはずはなく……。

 

『スターダストレボリューション!!』

 

管野は『何をされた』か理解できず、目の前に閃光が奔ったことしか認識できずに昏倒する。地上でも、坂本Bが辛うじて、魔眼で『何かの力で撃ち抜いた』事を認識した程度だった。だが、武子の力が撃ち抜いた事だけは閃光で全員が理解できた。

 

「なんだ……今の攻撃は……」

 

「今のがセブンセンシズの為せる業ですよ。指から放った無数の無数の光弾で撃ち抜いたんです」

 

「光弾だと…!?」

 

スターダストレボリューション。牡羊座の黄金聖闘士に継承される奥義の一つである。武子は復活したシオンが教皇に専念するため、孫弟子の黄鬼が然るべき年齢に成長するまでの繋ぎで牡羊座の黄金聖闘士にダイ・アナザー・デイ後に叙任されたのである。

 

「反応は悪くはないけれど、ジェットの特性を覚えないと、これからは戦えないわよ」

 

「武子さん。数回のコンタクトで?」

 

「経験を積むと、わかるものよ」

 

武子は本来、第一線を退いた後は教官を志していたが、第一線任務から縁が切れなくなったため、一転して往時の戦闘技量を維持する必要が生じた。黒江達が聖闘士になったこともあり、ダイ・アナザー・デイ後に聖闘士になった。これはアテナ(城戸沙織)が聖戦後の大打撃から立て直すため、不常設枠の聖闘少女(セインティア)を廃し、常設の聖闘士枠に切り替えた影響、黒江達が新世代の黄金聖闘士に選ばれた事によるものだ。武子も黄金聖闘士に選ばれた事により、64F最高幹部は黄金聖闘士、あるいはそれに匹敵しうる実力者という慣習ができる事になる。

 

「お見事です」

 

「新参とはいえ、牡羊座を継承した以上はやってみせないとね」

 

武子をねぎらうキュアミラクル。

 

「加藤さん。貴方は……」

 

「人を超えたという事よ、竹井」

 

竹井Bにそう明言する。64F最高幹部は殆どは常人を超越した力をウィッチの力を維持したまま得た。聖闘士以外には『ウィッチでありつつ、プリキュアへ前世の記憶と魂魄を拠り所に覚醒した、あるいは転移してきたプリキュアが魔力をそのまま得た』パターンがある。しかも、ウィッチ本来の枷も容易く『破壊』(結婚し、子を成しても魔力が失われない点がそれである)している。ダイ・アナザー・デイでの孤軍奮闘とクーデター鎮圧でその事が知れ渡ると、『進化したウィッチ』の見本として(事実、二代目レイブンズの時代には、その体質のウィッチが当たり前になっている)宣伝された結果、45年時と打って変わって『ウィッチ権益の守護者』として一般人に見なされている。これはダイ・アナザー・デイのサボタージュで政治的に顰蹙を買い、軍部が兵科の段階的廃止を打ち出した際に人々は『Gウィッチの孤軍奮闘』を引き合いに出し、ウィッチの雇用を守ろうとしたからで、ダイ・アナザー・デイ後は一転して『ヒーロー』と見なされる事に当のGウィッチ達はかなり苦々しい想いを抱いたが、人々がウィッチの社会的地位の低下を望まず、『英雄』を使って、ウィッチという存在への信仰を維持させようとした(特に東アジアには明国の消滅という恐怖の記憶が残っている)結果であるため、受け入れたのである。

 

 

――また、この頃は日本の世論の圧力で扶桑の(大日本帝国的な)愛国的プロパガンダが強く規制された上、ウィッチ・クーデターへの厳格な対応が軍部の志願者数そのものの低下を招いた事への対応策として、既存ウィッチと義勇兵への福利厚生費が増額されており、ウィッチの新規志願の打ち切りすら検討されたが、ウィッチ訓練学校の教官達の役目の廃止後に与えるべきであろう役職を前線で用意しきれない事、育成ノウハウの保持は後世のためにも必要なため、反対意見を押し切る形で新規志願募集は続けられ、教官達は教育現場から追い出された後は軍学校の教官という形で仕事を続ける。予備士官制度に変更が加えられた結果、予備士官は正規の教諭になれないからで、のぞみはその事に加え、台場大尉の殉職をきっかけに、転職を取りやめたわけだ。ウィッチへの職業差別意識が瞬く間に生じたことは日本政府にとっても予想外の結果であったし、オラーシャでの集団ヒステリー的『魔女狩り』の凄惨さはウィッチ世界全土に衝撃を与えた。そのことを引き起こした間接的要因としてのウィッチ世界への贖罪という形で、日本連邦においては、1948年度以降、ウィッチの社会的地位の一定範囲での保全が図られた。また、軍人への差別意識の抑制のため、給与水準のインフレに合わせた向上と危険手当の倍額以上への増大などは軍人への福利厚生の一環として行われ、左派の軍を冷遇する思惑はウィッチ世界の急転直下の情勢の前に、敢え無く潰えることになった――(実際に1950年代以降、ウィッチへの覚醒者への市町村での差別の抑制のため、ウィッチへの覚醒者は軍学校へ入学する権利を『10年の勤務実績を残す』(後、7年へ緩和)という条件付きで与えられる事になるなど、軍人を社会不適合者の『穀潰し』も同然に見る左派のほうが今度は問題視されていく事になるのだ。)

 

「貴方達はウィッチなのですか、人なのですか?」

 

サーシャBが無礼を承知の上で、と断りを入れた上で問う。ウィッチの力を恒常的に維持できる上、肉体的加齢(とは言うものの、B世界の面々はA世界では概ね、転移時の肉体年齢を保っている。これは異なる時間の流れに現れた事、A世界には降り注ぎ始めたゲッター線の影響を受けた事に由来する)をしなくなった事、人智を超えた力を手にしていながら、それまでの暮らしを続け、軍にも所属し続けていることへの率直な疑問だった。

 

「私達は世界を守るために、オリンポス十二神の一柱『アテナ』に選ばれた者。多くの世界で人々に弓引く者を倒すための力を得たけれど、本質はヒトよ。ヒトが後から神性を得たって話が世界に無いわけじゃないでしょう?」

 

「みんなの想いを一つにして束ねるための存在が世界には必要なんですよ、サーシャ大尉。例えば、芳佳ちゃんやひかりちゃんのように」

 

自分達は神話や伝説の英雄のように、神々に見いだされた結果、世界を守護する役目を担う事になった事、その過程で人としての性質を失わずに人知を超えた事を武子とキュアミラクルは明確に示しつつ、芳佳やひかりには『想いを束ねる力がある』事も告げ、芳佳とひかりが『特別な存在』であると教える。B世界では過去の人間扱いの武子はともかく、現役で戦士であるキュアミラクルがいうと説得力にあふれていた。

 

「それが答えなのですね」

 

「そうよ、大尉」

 

「ありがとうございます。私達は何の為に呼ばれたのかわからずに悩んでおりましたので」

 

「人の想いに限界はないって事ですよ、大尉。みんなの想いが一つになれば、一つの勇気や理想はどんな邪な存在も打ち破るパワーになるんです。私はその証人ですよ」

 

キュアミラクルの言葉に感銘を受けたらしいサーシャB。サーシャAがサーニャとの揉め事を発端に不幸に見舞われ続け、この時期は辺境に左遷されて不遇な扱いを受けているのに対し、サーシャBは対照的に希望を見出し、A世界での生活に意義を見出していく。武子は内心でサーニャ亡命の原因という事で、即位した新皇帝の逆鱗に触れ、辺境に飛ばされた上、暴漢の襲撃で片目を失うなどの不幸に見舞われ、荒れた生活を送るサーシャAと、統合戦闘航空団の戦闘隊長として順風満帆な生活を送るサーシャBとの落差を思い、サーシャAの不遇に同情するのだった。

 

 

 

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