――扶桑皇国への政治介入は日本で疫病が流行るのと同時に急速にトーンダウンしたものの、余りに性急な改革を行ったので、カールスラントほどでないにしろ、大混乱を起こした。軍部は自然とウィッチの志願年齢下限引き上げと教育課程変更でステイタスから脱落したと判断されたため、大人数を確保しきれなくなった事を悟り、大戦終了後は兵科を解消する予定が立てられた。竹井少将の存命期間中は彼への温情で維持されるが、竹井少将は老い先短い老人でしかない。その事実がクーデターを促進したが、圧倒的な力の前に儚くも散り、失望した中堅ウィッチ達はMATへ相次いで転籍していった。1949年時点でプリキュア達が軍人としては異例の高待遇なのは、ウィッチの戦力価値は近代スタンドオフ兵器の普及で低下した一方、プリキュア達はその待遇に相応しい力を持つ事の兼ね合いであった。――
――形式的には航空兵であるため、プリキュア達は一応の飛行訓練は受けており、移動は航空機で行う事が多い。人員輸送に多用されていたのが地球連邦製のコスモシーガルであり、デザリアム戦役で普及した。ルッキーニBがバラしてしまったため、遠慮する必要が失せたため、大っぴらに運用されている。機密などに無頓着なルッキーニBや芳佳Bの提言を採用した広瀬大佐の方針もあり、護衛にコスモタイガーが用いられるなど、贅沢な人員輸送であった――
「飛行機で移動するんだね」
「列車は色々と危ないですからね。史実の日中戦争よろしく、線路爆破の危険もあるんで。空軍だし、機材はありますからね」
コスモシーガルで運ばれるスプラッシュスターの二人とキュアラブリー、キュアフォーチュン。操縦は黒田が自らしている。人員輸送や要人の視察に23世紀製航空機を用いる事はこの頃から始められる。旧式化した一式陸攻、一〇〇式司令部偵察機が前線から引き上げられた一方で、代替としての21世紀製航空機の供与を日本側が露骨に渋ったためで、23世紀製航空機の人員輸送・要人の移動などへの使用はこの頃から行われ始める。(予算削減と配備数削減を恐れたとも)これはセールスチャンスを狙っていた日本の軍需産業からの抗議を防衛省が受ける羽目となったため、防衛省もなし崩し的にC-2輸送機やUS-2を供与、現地生産を許容することになる。(この時に未来機種を見た一部の日本系エンジニアが奮起した結果、それに繋がる技術を将来に開発していくことになる)この日、潜入調査中の仮面ライダー二号からの連絡で、奉天市には『F-106』が配備されている事が伝えられた。史実では本土防空用戦闘機であったが、機銃搭載型がアビオニクスの変更を施した上で配備されたのだ。
「二号ライダーからの連絡で、デルタダートってのが配備されてるそうですよ、黒田さん」
「デルタダートだって?奴らも考えたな。あれなら、こっちにまともなデータがないからな」
「なんでですか?」
「あれは史実だと、防空にしか使われておらんからな。この時代なら立派に高性能機で通じる」
奉天に当時の科学技術的に最先端の機体の一つ『F-106』が配備されているという報告は64Fに第4世代ジェット戦闘機の投入を決意させる。
「F-14の世代を使う時が久しぶりに来たな。ダイ・アナザー・デイの時はチートだの言われたもんだが…」
「あの時は政治屋と官僚に文句言われましたからね。あるんならとっとっと出せとか…」
「数が無い時に使っても、焼け石に水なのを官僚も政治屋も理解せんからな。それに第四世代以降の戦闘機は大戦型の消耗戦に使うには、数を揃えんと使いものにならん」
大戦型の消耗戦に供するには1970年代以後の機種は相対的に高価すぎるとする意見が生じ、調達計画に口出しされては、以後の調達に悪影響が出るとする扶桑軍の方針もあり、ダイ・アナザー・デイでは64Fのみがその使用を認められていた。黒田はキュアラブリーにそう教える。
「漫画でいうところの『戦いは数だ』的な奴ですね?」
「そうだ。マジンガーやゲッターとかはいざしらず、通常兵器は数だ。MSやコンバットアーマーもそうだ」
とは言え、廉価版マジンガー『イチナナ式』もようやく配備数が500機に達するというのがこの頃の状況。イチナナ式は弓教授の意向もあり、単体性能がだいぶ控えめであるため、エースパイロットには不評である。これはマジンガーをそのまま量産し、悪用されることで、マジンカイザーの『魔』モードが発動する危険を鑑みての意向でもあるが、理解されにくい点だ。
「あれは?」
「ん、52Fのイチナナ式だよ。未来兵器が配備されたって、連中は大喜びだそうだ」
遠くに、飛行訓練中のイチナナ式が見えた。52Fに初めて回された未来兵器であるため、隊の幹部にのみ使用権があるという。ちなみに、64Fはイチナナ式のファーストユーザーであるが、ブラックグレートや量産ドラゴンの補助機扱いであり、主力機としては使っていない。なお、ブラックグレートは黒江及び、黒田のほぼ専用機扱いである。オリジナル・グレートよりもパワーがあるため、乗りこなすのに相当な腕がいるためで、デザリアム戦役の後に正式に供与を受けている。全機能を再現した機体だが、製造年度の差でオリジナルより性能が向上したが、その分、尖鋭的な操縦性となり、完全に乗りこなせるパイロットが甲児、鉄也以外に見つからないのでは?とする見込みもあり、光子力研究所に死蔵されていたが、64Fに供与された。
「本式のマジンガーを持ってるのはウチだけですよね。どうやって?」
「あれな、ある日本企業が悪の軍団にも売ろうとしたんで、プリベンターがガサ入れして接収したんだが、デザリアム戦役で相模原に置かれていてな。鉄也さんが予備機として持ち込んでたダイ・アナザー・デイの後、光子力研究所に返したって言ってたんだが、弓教授と兜博士が揉めたぽくてな」
黒田曰く、兜博士と弓教授はデザリアム戦役の前後に『マジンガー量産計画』の是非で揉め、宇門源蔵博士の仲裁を受けたとのことで、イチナナ式は宇門源蔵が渋る弓教授を説得し、開発に導いたという。宇門源蔵は二人の大学時代の先輩であり、早乙女博士亡き後のリーダー格であるため、人望は篤い。(本来は天文学が専門だが、宇宙科学研究所を要塞化しているなど、意外にやる時はやるのである。年齢的には弓弦之助と兜剣造が大学一年の時の大学四年であったという。)
「どうなったんですか?」
「宇門博士が仲裁して、あれになったそうだ。事故で早乙女博士が亡くなられた後だし、宇宙からの侵略者がいる時に内輪もめは止せと一喝だったそうだ」
早乙女博士も晩年はゲッタードラゴンの量産化を神隼人に検討させていたため、兜剣造がグレートの量産化にGOサインを出したのも一理ある。剣造も若かりし頃は大天才である父へ強いコンプレックスがあったのか、攻撃的な提案をするようになっており、グレートの設計がそうであるのが彼の本質を表している。(ちなみに、兜剣造は兜十蔵の存命中、まだ試作段階にあった時のグレートを見てもらった事がある。現在のボディになる前の生身の比率が現在に比べると高めであった最初のサイボーグのボディで自らが試運転したが、試作機のグレートは完成後に比べ、耐G装備が未熟であり、全力の空中機動に自らのサイボーグボディが耐えられず、ボディが破損してしまうという大失態を犯した。その時、十蔵は『剣造、機体設計は上出来だが、パイロットの事をもっと考えて設計をしろ!』という趣旨の叱責を受けている。これは剣造が現在に比べれば若い頃の出来事であり、当人も若気の至りだったと振り返っている。)
「甲児さんのお父さん、なんだか気難しそうですからね」
「口を開けば、甲児のパパだってわかるさ。この間、高い麻雀牌買ったの、鼻を鳴らして自慢してたし」
「そう言えば、響ちゃんも麻雀してますね」
「シャーリーの野郎、どこで覚えたんだ?」
「前世は麻雀と無縁だったはずですしねぇ」
この頃には、キュアメロディ/シャーリー(シャーロット・E・イェーガー)はどこで覚えたのか、麻雀を嗜むようになっていた。本人曰く、八神はやての誘いとのことだ。
「はやてが覚えさせたな?あのあかいあくまめ、引き込みやがって」
ため息の黒田。
「あの人、麻雀が趣味ですよね」
「ロンメルとかのお偉方から相当に物品巻き上げてんだぞ、あいつ。機動六課の隊長のくせにせこいんだから……」
はやてはどういうわけか、麻雀が異常に強い。それが高じて趣味になり、シャーリーを誘い、はめ、同好の士にしたのだと言うことは誰でも想像がつく。
「この間、満貫で上がった時は目を疑ったよ。大三元なんて、狙っても出来るもんじゃないからな」
「あ、あはは……」
「麻雀ねぇ。あたし達がやっていいんですかね」
「やる分には問題ないさ。ケチつけるのは変な連中だけだよ、ブライト」
「近頃はすぐクレームつけるヤツいますからねぇ」
1949年時点になると、扶桑は日本からの文化と思想の流入、ウィッチと義勇兵の確保のため、以前より軍隊の空気が自由で開放的になっている。また、正規兵・義勇兵を問わず、ウィッチには高給を約束しているため、近頃は日本からの義勇兵が多くなっている。正規ウィッチが入らないのを義勇兵で補っているからだ。(日本側の思惑が外れ、なんだかんだで存続した金鵄勲章だが、日本側の強い圧力(主に左派)で戦中に授与される事はダイ・アナザー・デイ後はなくなった。だが、将兵の士気に関わるため、事実上の代替物という事で武功章の授与基準が全軍で緩和された。『手柄を立てても何も褒美を与えんでは、連合軍の盟主として恥ずかしいとは思わんのかね?』という山本五十六の鶴の一声で決まった)
「金鵄勲章もそうだ。日本にないからって廃止させようとしたからな。こっちが文句言ったら、言い訳の連発だ。危険業務従事者叙勲に組み込むから、お情けで瑞宝章と銀杯はやるからってな。金鵄勲章は一兵卒でもチャンスあるってのに」
日本の危険業務従事者叙勲は高官の経験がある者しか選定されない上、もらえるのは定年退職後。それに対し、金鵄勲章は若年の一兵卒でもチャンスがある上、高額の年金が制度の関係で約束される。そこが最大の違いだ。結局、日本の圧力で『大戦後に勲章はまとめて授与』ということに落ち着いたが、戦中に武功を讃えられる事がないのも外聞的に大問題なので、武功章の授与基準の緩和と個人感状の授与の拡大で実質的な代替とされた。64Fはその授与経験者が末端までいるため、『武功章/金鵄勲章部隊』と部内で揶揄されてもいる。金鵄勲章が政治的都合で戦役後(扶桑は戦前日本と違い、戦争中に授与をしていた)に先延ばしされたので、武功章の授与経験が64F配属の判断基準とされた。(広瀬大佐と宮部大佐は若き日に経験がある)
「愚痴になってませんか?」
「あたしはその辺りに関わったからな。華族の当主にもなると、政治に否応なしに関わるを得ないんだよ」
「華族?」
「戦前の日本にあった貴族階級の事よ。戦後に解体されたけれど、その末裔は基本的に名家扱いされてるわ。昔のお殿様の末裔でもある事が多いから」
「公家の末裔もいるぞ。あたしは元々、黒田官兵衛の一族の末裔だが、分家の分家のそのまた分家の出でな。本当は家を継ぐ立場でもなんでもなかったんだが、本家の長男が廃嫡されて、先代に抜擢された。親は泣いたよ。本当はどこかへ嫁入りさせようって考えてて、仕送りを貯金してたから。でも、本家の命令で継ぐことになったんで、全部を資産運用に回したよ。本家の連中はまともな金銭感覚がないからな」
黒田は資産運用に天賦の才があり、黒田家を継いだ後は巧みな資産運用で資産を倍増させており、実業家としての一面も持つ。慈善事業に力を入れる一方、軍需産業分野は本業に関係するために出資を拡大させており、扶桑三大航空企業の株を有するようになっている。21世紀世界における台湾軍が軍事交流を名目に、一定数の部隊を台湾に駐留させるようになったのもこの頃だ。台湾は実質的に日本連邦寄りの姿勢を示している。ウィッチ世界においては、中華民国は愚か、史実で最後の王朝であった清国でさえも成立しなかった歴史を辿ったため、中華民国が領有を主張できる道理はないが、台湾軍隊を駐留させる事は認めさせた。扶桑への資金援助と武器弾薬などの融通とが条件である。扶桑も日本主導の強引な軍縮で部隊再編に手間取っていたため、この提案を諸手を挙げて歓迎。扶桑の要請で空軍部隊を中心に配置し、ウィッチ世界に一定の影響力を及ぼすことに台湾は成功するわけだ。
「それと、うちは台湾の開発に噛んでてな。ドラえもんとのび太の世界の台湾をこの戦争に引き込んだ。台湾防衛に日本の政治家と官僚は消極的でな。その代わりに台湾を関わらせた。軍縮で手が足りないからって言ってな」
「いいんですか?」
「中国の圧力に先方は怯えてるからな。こっちが台湾の海域に連合艦隊を巡回させるって旨味をちらつかせた。それで食いついた。中国海軍に連合艦隊は抑えられないからな。ロシアが躍起になってるが、あそこも金がないからな」
「のび太のおかげで大ヤマトをデザリアム戦役とかに参加させたら、向こうが勝手に怯えた。宇宙戦艦ヤマト様々だ」
「宇宙戦艦ヤマト、か……」
その名は聞いたことがあるキュアブライト。日本で一番有名な宇宙戦艦であり、自分の祖父母が若かりし頃に流行ったSFアニメのタイトル。なんとも不思議な感覚を覚えるのだった。
――2020年次の中国海軍は日本連邦の誇る連合艦隊への対抗のため、装備の近代化を急いでいたが、21世紀の目で見ても第一線級にまで近代化された戦艦大和と戦艦武蔵に対抗できる力は当然ながら、全く持っていない。2010年頃に、中国共産党は息のかかった日本の野党議員たちに『扶桑戦艦の解体』を主張させたが、結局は大和型戦艦どころか、その後継艦まで完成させていることや、想像を超える近代化で下手なイージス艦が霞む性能に飛躍しているという事実を突きつけられ、大失敗に終わった。それと疫病の経済ダメージの影響で近代化が鈍ってきている。一方、旧東側諸国の盟主であったロシア連邦は同位国であるはずのオラーシャ帝国への冷酷非情な対応で周囲の顰蹙は買ったものの、2010年代の『キーロフ級ミサイル巡洋艦の再整備』の大義名分に日本連邦の大和型戦艦を使ったのは言うまでもない。戦後型戦闘艦艇で異例の大きさであるキーロフ級ミサイル巡洋艦の存在がアイオワ級戦艦の80年代の復帰を促した事を考えれば、改大和型戦艦の存在がロシア連邦の危機感を煽り、キーロフ級ミサイル巡洋艦の復帰を促した事は歴史の繰り返しとされた。ロシア連邦が大金をかけて、キーロフ級ミサイル巡洋艦を再整備した理由は諸説あるが、日本連邦が戦艦部隊を大規模に持ち、近代的な能力を与えた事が素人目にもわかるほど改装していたため、それに体躯的意味で対抗できる水上艦艇をロシア政府が外聞的理由で求めたためであるというのが定説であった。第二次世界大戦までの巨砲と相応の重装甲、近代的電子装備とミサイル装備を併せ持つ日本連邦の戦艦部隊はまさに『復活した連合艦隊』のシンボルであった。ダイ・アナザー・デイの大海戦で勝利した後は『アドミラル・トーゴーの正統後継者が息を吹き返した』と各国海軍で評判であり、米軍をして『頼もしい同盟国に変貌を遂げた』(とは言え、22世紀の統合戦争で相対するが…)と言わしめる。この体制は統合戦争で解体されてしまうが、23世紀に地球連邦が『地球星間連邦』へ再編された後にウィッチ世界との国交回復を記念して再建され、波動エンジン艦艇主体の外征艦隊へ名が引き継がれる。それが23世紀以降の連邦宇宙軍の主力たる『太陽系連合艦隊』(通称:アースフリート)である。ダイ・アナザー・デイで勇名を馳せた大ヤマトは30世紀における連合艦隊の総旗艦であり、宇宙戦艦ヤマトの正統後継艦である。それを鶴の一声で動かせるのび太の影響力は相当なものである。また、宇宙戦艦ヤマトの勇名がヤマトそのものが生み出される前の過去の世界でも有効であるのは意外な効果との事。
――この時に台湾軍を戦役に関わせたことに、日本連邦で賛否両論があったが、日本による軍縮で浦塩に優先的に部隊が異動させられた扶桑軍は台湾に満足できるだけの航空部隊を置けない(ウィッチ主体となっていた弊害)ため、台湾空軍に一部の任務を代行してもらう案を打診しており、台湾も自らの利害が一致し、2019年に承諾。以後、台湾は日本連邦の『友好国』という立場を確立していく。日本連邦に恩も売れ、ウィッチ世界の台湾に楔を打ち込めるという一石二鳥だからだ。(これは史実戦後に失った海外領に自衛隊を置くことに左派が反対したからで、扶桑空軍はウィッチ主体の編成から切り替える途中であるために台湾に満足させるだけの通常兵器部隊を持っておらず、扶桑は独自に台湾軍に打診していた。ダイ・アナザー・デイに従事していた部隊は浦塩と南洋に配置されており、後方と見なされた台湾に大部隊は必要なしとされたが、大間違い。台湾軍の協力が防衛に必要不可欠だったのだ)――
――1949年までの変革でウィッチ主体の編成から変化しつつある扶桑全軍。ダイ・アナザー・デイと憲法改正を経た後では、空戦ウィッチは転籍で最盛期の半分以下に目減りしていた。通常兵器は日本が最新兵器の現地生産を渋ったりしたこともあり、配備数は多くなく、64Fのルートで整備した未来兵器が頼みの綱と言えた。この時期にそれらは配備が進み、陸軍はコンバットアーマーを、空軍はMSとVF、量産型スーパーロボットを配備していく。育成が完了し、『働きざかり』と見做されていた年齢層のウィッチがごっそりと抜けた事は扶桑ウィッチ兵科の命運を決めたと言える。(教育課程の変更で『婚期を逃す』事を恐れた農村地域のウィッチが入隊を家族に辞退させられる事例も相次いだため、各国からの義勇兵は大きな役割を果たした。その一方で入隊が数年伸びたが、三隅美也、中島疾風がこの頃に部隊へ配属。Rウィッチ化(1949年度では、二人はウィッチの常識で『盛りを過ぎている年齢』に達するため)処置を受けた上で、台湾に配属されていた。――
――奉天市――
「すみません、うちの妹から電話が」
「構わんよ」
奉天市で調査中のキュアドリームは中島錦としての実妹『中島疾風』からの電話に応対した。口調は錦のものに変化させた上で、だ。なお、事情はこの頃には周知されており、ダイ・アナザー・デイの時にのぞみが懸念していた事は杞憂であった。
「疾風?俺は任務中だぞ、無闇に電話すんな」(普段でも一人称が俺になる事があるのは、時たま、こうして使っているからだ)
「ごめん、姉さん。配属先が決まったから知らせようと思って」
「姉貴には知らせたか?」
「小鷹姉さんは喜んでたよ」
「どこだ?」
「台湾。29Fに配属されたんだ」
「ほー。あそこは荒くれだからな。揉まれてこい」
「今、台北についたとこ。これから着任の挨拶に行くから」
「おう。頑張れよ」
電話を切るドリーム。中島姉妹は全員が軍人であるか、そうであったため、その次女の立場に成り代わった事への反発を予想していたが、長女の小鷹のおかげで受け入れられた。この頃には中島家ものぞみの立場を尊重しており、その上で家族として扱っている。
「妹さん?」
「うん。正確には、この体の素体になった子のね。なんだか悪いから、お盆の時くらいしか会ってないんだけどね」
ドリームはダイヤモンドのその一言に頷く。錦としての家族にはお盆の時のみ会い、それ以外は野比家や南洋の黒江の邸宅に住むようになっていることも明言する。
「貴方、ココととうとう結婚したんでしょう?ココはどうやって転生してたの?」
「のび太くんが40代にさしかかる頃に転生して、飛行機事故で孤児になったのをのび太くんに引き取られてた。普段はのび太くんが55歳になった辺りの時代に住んでたらしいの。あたしが転生した後、ダイ・アナザー・デイの時期に婚約して、去年に結婚したんだ。それが驚いたよ。ココ、転生した後はサムライトルーパーになってたんだ」
「さ、サムライトルーパーぁ!?80年代末から90年代前半に同人誌界隈を賑わせたあの?」
「……詳しいね」
「ハートがDVDを買ってたのよ。それに『ウチ』の母親が若い頃にハマってて…」
キュアダイヤモンドの転生の素体になった婚后光子の母親は若い頃、鎧伝サムライトルーパーにドハマリしていたらしい。その関係でサムライトルーパーを知っていたのだとキュアダイヤモンドは恥ずかしそうに言う。
「なんだか、ずっこけそうな会話だな?」
「茶化さないでくださいよ、二号ライダー」
「すまんすまん。しかし、M47/M48戦車が配備を開始しているとはな。74式戦車の増産が必要と参謀本部に通告しとくよ」
「もう、M48が出てきてるなんて。早くありません?」
「アメリカは問題さえ判明すれば、対処速度は日本の比じゃない。ダイ・アナザー・デイで山のようにM4が破壊されたから、より強力な戦車を用意するのは当たり前だ。技術資料がある以上、官僚さえ説得すればいいからな、連中は」
リベリオン本国軍はダイ・アナザー・デイで数多のM4を投入しながらも敗れたため、M4に混じって『少数』が投入されていた重戦車を次期主力戦車とする事を決定。M46からはM26の発展型に位置する。その能力は当時のMBTとしてまずまずであり、扶桑軍は対抗手段として、MBT(主力戦車)の更新を急いでいるが、有事に総じて無関心な防衛・財務官僚と左派政治家のあらゆる妨害に遭い、現状はコンバットアーマー頼りである。(これは74式を『待ち伏せに特化した戦車であるので、機動戦向けではない』とする勢力の策謀も関係しており、74式の不足を補う為に、最新の10式戦車が運び込まれるという本末転倒な経緯となった。16式機動戦闘車はダイ・アナザー・デイで運用の齟齬もあり、戦績が芳しくなく、日本自衛隊用の車両までも調達打ち切りが検討されるに至ったため、10式戦車が結果的に増勢されたが、扶桑への供給は財務省の妨害もあり、ダイ・アナザー・デイの時でさえ、たった20両。この時点でさえも配備数は40両以下であった。防衛官僚は『10式の20両は大戦型戦車の100両以上に匹敵しうる戦力価値がある』と説明したが、数百、数千両が平然と投入される大戦型の総力戦では『焼け石に水』であるとしか言えないのだ。
「その点、こっちは財務官僚と警察系官僚が全てのガンだからな。現場に机上の空論を押し付け、それが破綻すると、全部の責任を一方的に押し付け、保身に奔る。ダイ・アナザー・デイを反省しないのも、良くも悪くも、日本人は『起きてしまわないと認めたがない』気質なようだな」
「二号ライダー、斜に構えてません?」
「俺はフリーカメラマンだからな。改造される前の時点で商売してたから、そういうのは見てきてるよ」
二号ライダーはフリーカメラマンであり、ジャーナリストでもあった。人間であった頃はちょうど青年期にベトナム戦争や学生運動があったため、ある意味、日本政府や官僚の呑気さや冷戦たけなわの世界を生きていた70年代初頭の青年層としての視線と言える。
「俺が若い頃はベトナム戦争の頃でね。それも仕事に影響してる面はある。改造で若い姿を留めてるが、君たちの時代には立派にじいさんさ」
二号は自分がプリキュア達の時代には老人になっている世代であるとハッキリ言う。普通に歳を重ねていれば、71年に20代半ばの本郷と一文字は2000年代後半に60代になっているからだ。
「でも、その時代に改造されてるのに、どうして、貴方に使われてる技術が21世紀よりずっと凄いんですか?」
キュアハートが疑問を口にする。
「組織の技術がそれだけ高かった証拠さ」
二号ライダーはそう答える。プリキュア達は歴代の組織がなぜ、反逆されるのを承知で仮面ライダー型の改造人間を作るのか?そして、シャドームーンはゴルゴム関連の記憶を取り戻しているのだろうか?などの様々な疑問を抱えつつ、プリキュアと仮面ライダー二号の奉天市の潜入調査は続くのだった。