ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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九十一話の続きです。


第百三話「マリア・カデンツァヴナ・イヴのある一日、八神はやての麻雀」

――かつて、黒江は篠ノ之箒の姿になり、IS学園に潜り込んだ事がある。大佐時代の事なので、ダイ・アナザー・デイが始まる少し前の事になり、既に調を弟子にしていた頃だ。いざという時のためにアガートラームのコピーを持ち込んでおり、裏で篠ノ之束が仕組んだ『無人IS』の襲撃に対応した――

 

 

――ダイ・アナザー・デイ中――

 

「どういう事、セレナ。黒江綾香がアガートラームを使った事があるって」

 

「綾香さんは天羽々斬とアガートラームを滞在中にコピーしておいたんです。その関係で篠ノ之さんが寝込んだ時に代わりに現地に赴いた時に使用したんです、姉さん」

 

十六夜リコ/キュアマジカルはダイ・アナザー・デイ中は実質的には『セレナ・カデンツァヴナ・イヴ』名義で活動した。元・シンフォギア装者であるので、転生しようとも、シンフォギアを纏えるが、姉のマリアに自身が有していたアガートラームが受け継がれていること、自身はプリキュアになっているなどの複合的理由でシンフォギア装者に戻る事はなかった。キュアマジカルになることもなかったが、折衝で活躍。この日はある事を伝えるのが仕事であった。

 

「箒は私によく似た声だけども、どこがどう繋がるの?」

 

「ISを解析とデータ回収のために学園の技術部門に見せるでしょう?その時に無人ISが襲ってきたんだけど、綾香さんはその時にアガートラームを起動させたんです」

 

「黄金聖闘士には、私たちの常識は通用しないのね……」

 

「綾香さんは本当の完全聖遺物を使ってますから。それに、セブンセンシズに目覚めていれば、先史文明の遺物の再利用であるシンフォギアシステムは負荷なく使えます。月詠さんがシンフォギアを展開したままで生活できているのも、セブンセンシズに目覚めたからです」

 

「セブンセンシズ。第七の感覚の事デス。アタシもこれから何年か修行して目覚めるのデス」

 

大人切歌。18歳前後に成長し、背も伸びている。小山羊座の聖闘士になっている。聖闘士になったことで一時の情緒不安定さは無くなり、調と並び立てるだけの実力を手に入れている他、修行でイガリマの真の姿を目覚めさせ、本来の斬山剣へと変容させている。

 

「子供のアタシの癇癪は直に収まるデス。未来の自分に発破をかけられたら、否応なしに奮起するしかないし、調と道は分かれても、同じ向きを向いている事がわかった以上、拗ねてる理由はないデス」

 

「それもそうだけど、セブンセンシズに目覚めれば、シンフォギアを纏うことでの負荷は無くなるの?」

 

「人を『超える』のですから、絶唱を使おうとも負荷はありません。もっとも、シンフォギアの絶唱よりも闘技を使ったほうが聖闘士にとっては確実ですが」

 

「箒さんも聖闘士になってますから、相当に強いんデスが、その時はインフルエンザで唸ってましたよね、セレナ」

 

「ええ。それでIS学園に行けなくなったので、綾香さんが偵察も兼ねて、現地に潜り込んだのです。もっとも、織斑千冬さんにはいきなりバレたし、戦い方などで操縦者の皆さんにも感づかれましたが。トドメがアガートラーム。別の意味で驚いた人は多かったそうです。

 

「それはそうでしょうけど、黒江綾香がアガートラームも使えるだなんて……。アイデンティティの危機を感じるわ…」

 

変なところでしょげるマリア。苦笑する大人切歌とリコ。黒江は律儀に聖詠である『Seilien coffin airget-lamh tron』を使い、箒の姿で起動させ、マリアのそれとほぼ同様の形状の白銀のシンフォギアを披露した。その時の映像をリコはタイムテレビで見せる。

 

 

 

――その当時――

 

『篠ノ之さん!?貴方は今、ISが無いのですのよ!?』

 

『箒、下がって!丸腰の君じゃ死に来るようなものだよ!』

 

『箒!!俺がこの場はなんとかする!お前は……』

 

と、大慌てする織斑一夏、シャルロット・デュノア、セシリア・オルコットの姿があった。箒の姿を取っていた黒江は『ニヤリ』と微笑い、学園の競技場の観客席から跳躍し、空中で聖詠を唱え、アガートラームを起動させる。

 

『Seilien coffin airget-lamh tron……』

 

IS操縦者達も、織斑千冬と山田真耶と言った教員たちも我が目を疑った。この時の黒江の変身がラウラ・ボーデヴィッヒの中の『前世の記憶』を目覚めさせる引き金となったのが特筆すべき事項であった。

 

『箒さん……その姿は……?』

 

『変身した……?いや、装甲服を展開した……?』

 

『……んだよ、どうなってんだよ!?説明しろ、箒!』

 

『うろたえるなッ!!』

 

マリアのセリフである『うろたえるなッ!!』を口にし、うろたえる一同をとりあえずは一喝する黒江。マリアと箒の声は双子と言えるレベルで酷似しているため、その特徴を再現すると、どっちがどっちかの区別は困難である。だが、ギアのアームドギアについては多少異なり、通常時のアームドギアが短剣ではなく、長剣であった。

 

『この銀腕・アガートラーム、伊達ではないという事を教えてやろう!』

 

後に箒も言うことになったその台詞。マリアをちゃんと意識した構えを取るなど、妙にマリアに気を使っているところを見せた黒江。これにマリア本人は……。

 

「私に気を使っているのは分かるのだけど……、それは私の台詞よ~~!」

 

半泣きの表情でコミカルなコメントをする。『うろたえるなッ!』をカッコよく真似されたところに対抗心を見せるなど、最年長装者の割に子供っぽいところを見せる。それに苦笑するリコと大人切歌。

 

『この銀の輝き……その胸に刻めッ!!』

 

黒江はアームドギアの剣での乱舞技であり、マリアはエクスドライブモードで用いた『DESPAIR†BREAK』を通常形態で発動。無人ISを三体ほどまとめて細切れにして粉砕する。この時に乱舞技を覚えたことがマジンエンペラーGの『エンペラーソードでの乱舞』を自分で再現する事に繋がるのである。速度は黒江が黄金聖闘士である事もあり、光の軌跡が無人ISを細切れに破砕してゆくようにしか見えず、ISのハイパーセンサーを以てしても、何がどうなっているかは捉えられなかった。だが、プリキュア因子が覚醒し始めたラウラのみは視認できた。彼女がキュアマーチへ『戻る』のはそれからまもなくのこと。

 

「私の技まで!?もう、黒江綾香……やりたい放題じゃない~!!」

 

不満タラタラなものの、ちゃんとアガートラームの能力を引き出して戦闘をしてくれたことには安堵している。黒江はこれで正体をバラしたことになるが、これでシンフォギアがISを上回る能力を持つことは証明された。

 

「セレナ、黒江綾香がアガートラームを使ったのはこの機会だけなの?」

 

「今のところは。シュルシャガナを普段遣いにしてたし、月詠さんの姿を取る事が多いから」

 

「でも、アガートラームの能力を引き出しているわ…。ガリアンソードは使ってないけれど、瞬時に三体を倒すなんて。私も強くならなければ……」

 

「綾香さんは軍隊で正規の戦闘訓練を元から積んでる上、黄金聖闘士だから。慣れてないシンフォギアを使っても、一定以上の高い戦闘力を発揮できるんだよ、姉さん」

 

「それが可愛くないのよ。普通は慣れないものには戸惑うものでしょう!?」

 

「姉さん、綾香さんは大正生まれだよ?」

 

「日本の昔の軍人ってどうなってるのよ!?」

 

「ほら、風鳴弦十郎さんの例もあるし…。それに自衛隊にもバケモノいるっていうし…」

 

「だーかーら!!日本人はどうなってるのよぉぉ~!!」

 

コミカルな表情で拗ねるマリア。黒江、智子、圭子の三人が余裕でシンフォギアを纏う自分達をねじ伏せられる力を持つ事のみならず、歴代のプリキュア達に容易く戦闘能力で並ばれたことへの焦りも見え隠れする。(マリアとセレナは元々はウクライナの孤児であった。)

 

「うーん。響さんもそこは気にしてたなぁ。あの人にはプリキュアの因子があるのだけど、まだ目覚めてないようだし」

 

「立花響にプリキュアの因子が?」

 

「2020年以降に現れるプリキュアの因子を持ってるってのは仲間内で予測されてる。そうでなければ、私達の力に共鳴反応を示さないよ」

 

リコは立花響がプリキュアと模擬戦をした際に立花響の肉体がプリキュアの力に共鳴し、シンフォギアを纏った際のパワーが増大した事があるとし、プリキュアの変身エネルギーへの共鳴でガングニールが強制起動、本人は48時間ほどはギアが解除できずに涙目になる事があったことに触れる。

 

「そういえば、あなたの先輩達は立花響と拳を交えても、対等に戦えたわね?みんながああなの?」

 

「初代の時点でステゴロで戦ってきたから、みんな、一定の技能は自然と身につけてるよ。その内の初期の六代くらいは最古参で同世代だから、頭一個抜きん出る強さだよ。ドリームやピーチは技巧派で鳴らしてる」

 

「あの子たちが?」

 

「姉さん、転生者でもあるから、みんな、姉さんより年上だよ?」

 

「なっ……そんなの反則よ、反則!!」

 

「のび太さんだって、80年代末の生まれなんだし。2020年代や2030年代の生まれである事もある私達とじゃ年季が違うよ」

 

「たぶん、その辺りもアタシや響さんが拗ねた原因かも。自分が普通に暮らしてた頃には戦ってきてるってことでもあるし、ギアのポテンシャルを超えるだけの力を発揮できるから。ガングニールの元になったグングニルも黄金聖闘士の攻撃で破壊された事がある以上、ガングニールの力が誰かにねじ伏せられる事は普通にありえるデスよ」

 

実際、風鳴弦十郎は生身で装者より強いため、彼は身体能力は聖闘士級であると言える。だが、彼以外の人物がガングニールの力をねじ伏せる可能性を殆ど考えなかった事が立花響が拗ねた理由だろうと、大人切歌はいう。彼女自身、『物理的防御を無視するはず』のイガリマをエクスカリバーと黄金聖衣にねじ伏せられたショックで錯乱状態になった事があるからだ。

 

「のび太くんは無人島生活とか大冒険時の巻き戻しとか含めたら、既に人の3~4倍位の人生おくってるはずだよ」

 

「※★~!?」

 

ここで笑顔で追い打ちというのも鬼畜だが、リコの現在における性格が伺える。

 

「子供の頃はあたしだって、ショックでした。イガリマを真っ向から防がれた上、刃を破砕されたんですから。だけど、それはイガリマの本質じゃない。それに気がついた時、イガリマの力が変質したんです」

 

大人切歌は『聖遺物の本質』に気がついた時にシンフォギアという形で有した聖遺物の本来の力が目覚め、鎌から斬山剣へ変質した事を明確にし、それを見せる。

 

「その剣……それが?」

 

「山羊座に関係する聖闘士はアテナから剣の霊格をその身に宿らせられるんです。あたしも両腕に二つの剣を宿してる。イガリマ本来の姿がこれです」

 

シュルシャガナと同じく、イガリマは起源がシュメール神話なため、シミターのような湾曲した刀である。切れ味は『エクスカリバーには及ばないが、山は斬れる』程度という。

 

「シミターね。霊格を実体化させられるの?」

 

「手刀で振るうのが聖闘士本来の作法なのデスが、あたし達は特別に許可されてるのデス。翼さんに言ったら、拗ねられましたけど」

 

「あの子、黒江綾香に軽く捻られて、穴拭智子にも負けて、対抗心燃やしてるから。おまけにフェイト・テスタロッサ・ハラオウンにはスピードで負けた。そういえば、加東圭子とはやりたがらないわね…」

 

「あの人はぶっ飛んでるから。トリポリ港のブラッドバス事件、知ってるでしょう?姉さん」

 

「映像は見たわ。1944年頃の出来事なのね?」

 

「はいデス。あの人が未来に行く少し前の出来事で、敵機の残骸から出た油と敵兵の血で真っ赤に染め上げて北アフリカ撤収の殿を務め挙げて、それを引っさげて未来世界に行った出来事。ミーナさんは知らなかったのが運の尽きデス。映像も残ってるのに」

 

ミーナはなんと、この事件を知らなかった。査問の後に坂本から映像を見させられたことで腰を抜かす醜態を見せ、錯乱の引き金となった。圭子の恐ろしさは風鳴翼も勝負を避けるほどなのだ。なお、のぞみが覚醒後は圭子と良好な関係である事は大いに不思議がられているが、単純に圭子の面倒見の良さを刺激するアホの子だからである。

 

「クリスが言ってるけれど、銃の早撃ちで野比のび太に勝てないって、本当かしら」

 

「のび太さんはMr.東郷より早撃ちですよ、姉さん…」

 

「嘘ぉ!?」

 

「0コンマいくつあれば、銃をぬくことはできるそうです。いくら聖闘士でも、そこまで速いと、避けるのに神経いりますよ。しかも、のび太さんは見越し射撃の名手です」

 

「たしか、夜でも拳銃でヘリコプターの撃ち落としができるとか?」

 

「……」

 

唖然とするマリア。のび太は雪音クリスが舌を巻くほどの腕前である事がハッキリと明言されたからだ。子供時代の時点で既にクリスを唸らせる腕だったが、成長と共に更に腕を上げたということだろう。

 

「信じられないような確率に自分を賭けているの?私達のように生還できるとは限らないのに」

 

「その確率を乗り越えられるか。そこが裏世界のプロたる所以デスよ。のび太さんもMr.東郷も、一般人には理解できない何かがあるのデス」

 

大人切歌は聖闘士として、人智を超えたレベルの戦いに身を置くようになる事で、青年のび太やゴルゴ13の置く世界を理解した。それを示唆する。その時、一同の頭上遥か上を一機の戦闘機が通過する。

 

「ん、コスモタイガーデスね」

 

「あの戦闘機、本当に23世紀の新鋭機なの?やけに古臭い形だけど…」

 

「初期型の就役からまだ時間は経ってないけれど、万能戦闘機として一級品ですよ、あれは。形が先祖返りしてるのは、アクティブステルスのおかげです」

 

シンフォギア世界では、F-35が最新兵器のレベルなので、それより先祖返りした形状のコスモタイガーを未来兵器なのかと訝しむマリアだが、23世紀では、ブラックタイガーのようなパッシブステルス重視の形状では搭載量に問題が生じたため、アクティブ・ステルス技術の普遍化が起こった時代の設計であるコスモタイガーでは第四世代以前の機体形状に先祖返りしたという経緯がある。ただし、コスモタイガーは大気圏内での機動性が色々な兼ね合いでブラックタイガーに劣る(高機動バーニアを使わない場合)ため、空軍の要請でブラックタイガーの改良型である『コスモファルコン』がコスモタイガーⅡの後継機種『コスモパルサー』と共に採用の運びになった。

 

「あれで火星から土星まで往復できるだけのプロペラント積んでますよ」

 

「嘘ぉ!?」

 

「外宇宙で運用する宇宙戦闘機ですから。大気圏で運用する分には燃料は心配いりません。機銃もパルスレーザーですから、ミサイルの心配だけすればいいです」

 

「……そこは23世紀らしいわ…」

 

「飛行機の基本は20世紀後半で完成してるんですよ。後は如何に乗りやすくするか、です」

 

「エース専用と一般向けの住み分けも進んでるデスよ」

 

「あなた達、詳しくなったわね…」

 

「仕事ですからね。それで飯食ってるんですよ、姉さん」

 

「……あなた達、軍での階級は?」

 

「中尉です。一応は将校ですよ」

 

「すごいわね…」

 

「大尉までは士官になれれば、殆ど自動的になれるよ。少佐以上が大変なんだ」

 

地球連邦軍は元来、少佐になるには選抜試験を課していたが、戦乱でそれどころではなくなり、大尉の少なからずを少佐へ上げている。デザリアム戦役後に少佐への昇進がまたもきつくなったものの、以前ほどではない。これは戦乱期で佐官級の死亡率が高いからである。

 

「とは言え、一年戦争までと違って、実績積めば昇進できるから、楽とはいいますよ?」

 

「戦乱期ですからね、あの世界」

 

「立花響が言ってるわ。宇宙に住むようになるだけで、なんで何億人も平気で殺せるようになるのかって。ジオンはどうして、大量虐殺も辞さないの?」

 

「最初は純粋に自分達の権利の主張だった。それが移民一世と二世の間で流行った地球聖地論の台頭で過激化したんです。それで、ザビ家が政敵のダイクン派を排除して、独裁政政治をするようになると、一気に先鋭化。遂にコロニーを落として、シドニーとキャンベラをこの世から消し去った。破片も含めると、三つくらいは21世紀の先進国の主要都市は消えたそうです。その後の戦乱でダブリンとラサも消えたから、サイド3とサイド1のスィートウォーターの住民は地球出身者から爪弾きされてます」

 

「そうでしょうね……」

 

「ジオン残党は『自分達を認めない世界は消えるべし』って思想で動いてます。だから、本当は主張が正反対の集団にも平気で手を貸す。あいつらは戦争屋デスよ。自分達が満足できれば、一般人が何十億死のうが、全く意に介さないんデス」

 

ジオン残党はハッキリ言って、『戦争屋』と第三者からは断じられている。この時期には赤い彗星とミネバ・ラオ・ザビしか縋る者もなく、時が経ち、宇宙進出の進展で一年戦争中の大義名分さえも政治的意義が果たされてしまい、組織のお題目として使えなくなった。デザリアム戦役前の段階の時点で、組織の命脈が危うくなったジオンはビスト財団やタウ・リンに利用されるだけの存在に堕ちていたのだ。

 

「彼等に貫くものはないの?」

 

「一部の狂信的な連中も気づいてるはずデス。もう自分達の時代じゃないって。だけど、今更やめられない。だから、次の機会を最後にするはずデス。たとえ、コロニーや隕石を落としても、満足する為に」

 

「自分達の自己満足のためには、地形を変える事も辞さないの!?」

 

「だから、のび太さんは新型のガンダムを造らせてるんデス。それを止める力を持つガンダムを」

 

「そんな力、どうやって」

 

「サテライトキャノンです、姉さん」

 

「サテライトキャノン……?」

 

「元は巡洋艦の外付け主砲や防衛衛星の主砲として開発されていたモノをMSの武装へ小型化して持たせたモノです。それを積んだガンダムが月で造られてるんです」

 

「23世紀の月はどうなってるの?」

 

「地球圏有数の大都市圏に発展してます。一番大規模な都市には5000万がいますよ」

 

「ご、5000万…」

 

「私達の世界ではアナンヌキが改造した後ですが、未来世界では普通のままですからね。基礎技術で言うなら、あの世界が一番ですよ」

 

リコはそう説明する。23世紀の地球は信じられないほど文明が発達し、それでいて、時空間技術も手にしようとしていると。それを認めないのがジオン残党であり、自分達の滅亡と引き換えにしても、地球に恒久的打撃を与える。そのためにネオ・ジオング、グラン・ジオングを用意する。だが、彼女達は知らない。サイコフレームの力はシンフォギアやプリキュアの力にさえ干渉できる事を。そして、それを予期した黒江達がプリキュア達の変身アイテムの予備の開発をヒーロー達に依頼している事を。

 

「ただ、問題はサイコフレームですよ。あれの力はオカルト的ですからね。シンフォギアの力もねじ伏せるでしょうね」

 

「立花響が聞いたら、頑なに否定するでしょうね」

 

「ですが、サイコフレームほど恐ろしいモノもありません。思いの力を媒体に、どんな学問でも説明できない状況を起こしますから。シンフォギアであろうと、一方的に粉砕しかねません」

 

サイコフレームのポテンシャルを計り知れないと表現するリコ・地球連邦製のミラクルライトの構成素材にもなっているが、敵に回すと恐ろしい代物と言える。

 

「セレナ、立花響はなぜ、あそこまで頑なになってたと思う?」

 

「恐らく、聖衣や小宇宙が自分の力より上位に位置することやエクスカリバーがガングニールより上位の宝具になっているのが認められなかったと思うよ。私達の世界では、ガングニールはロンギヌスと同一のものとされてるけど、実際のところのグングニルはエクスカリバーより下位の宝具。それと、綾香さんがシンフォギアをありがたらなかった事も琴線に触れたのかも」

 

「本当の聖遺物を持っている黒江綾香にしてみれば、そうなるわね。暴走状態の切歌や立花響も物ともしなかったから」

 

「それに、暁さんに冷たくしたことかな。同じ姿に事故でなったなんて事は想像もつかないし、フィーネの人格が目覚めると、元の人格は失われる事が分かっていただけだった。それで暁さんは早合点したし、事情を知らない響さんからすれば」

 

「冷静に考えればわかるはずなのに、綾香さんを巻き込んでしまった上、響さんが綾香さんに一年も演技をさせた。その償いの意味もあるんですよ、アタシが参加したのは」

 

「翼、クリス、小日向未来が咎めたのに、強引に押し通したもの。私達の死刑回避が既に決まっていた事を考えると……」

 

「響さんは調に帰る場所を用意したがったんでしょうね。それと、アタシを錯乱させた責任を取らせたかったんデスよ、たぶん」

 

「黒江綾香が断れば、それまでのはずなのに、なぜ?」

 

「綾香さんも責任は感じてたのは事実だけど、うんと言わなければ、戦うつもりだったんでしょうね。だけど、未来さんが咎めてるし、自分の自己満足のために、姿が同じになっただけの赤の他人に演技を強要するって事はどういう意味なのか。それなりに葛藤はしたけど、調のためって事で押し通したようなものデスから。相手の言い分を無視して押し通したようなものだから、罪悪感はあったはずデス」

 

立花響が犯したミス。それは錯乱した切歌をおもんばかるばかりに、黒江の言い分を無視する形で演技をさせたという点と、調の心境に配慮せず、『帰る場所を用意させたから、それ迄に経験した事はいっそのこと忘れるべきだ』という事をそれとなく言ったことだろう。

 

「調がナーバスになってた時期に、それ迄のことを忘れて、前の生活に戻れなんて言えば、調は反発する。あたしもそれは後で、未来さんから聞いたんデス」

 

大人切歌も立花響のそれらの対応を落第と断じる。自然と相手の触れてほしくないところに触れてしまう悪癖が調の出奔を招き、小日向未来にも『調ちゃんの気持ちを考えたの!?』と叱責される事態を招いた。その事がなのはとの模擬戦に繋がった。(自分の想いを貫くために、負けられないとする思考が事態を悪化させた。だが、なのは側も大きく非がある)

 

「なのはさんにはその点は悪いなと思うデスよ」

 

「高町なのははやりすぎだったけれど、立花響に非がないわけじゃない。そこも人間の業なのかしら」

 

「人はわかりあえるとは必ずしも限らない。バラルの呪詛が存在しない世界で、ニュータイプという存在が現れても…。あの子は落胆するでしょうね」

 

「人はそういう生き物なんですよ。どんなに人間が進化しても、倒さなくてはならない者は出てくる。パプティマス・シロッコ、ギレン・ザビ、エギーユ・デラーズ、ハマーン・カーン、ジャミトフ・ハイマン……。そして、ミリアルド・ピースクラフトのように、自分が業を背負ってでも、目的をなそうとしたり、自分も死ぬことを予期した上で行動していたトレーズ・クシュリナーダ。残り少ない寿命を弟子を一人前にする事、自分の理想を実現させるために捧げた東方不敗マスターアジア…」

 

未来世界で特筆に値する生き様を見せた者たちの名を引き合いに出すリコ。ニュータイプが出現した世界でさえ、ぶつかり合う魂があること、それはけして否定できないのだと。調は出奔の際、手引きをした小日向未来に礼を兼ねてこう言い残している。

 

――帰ってきた世界は優しいけど自分の居るべき場所では無い。そう理解したから、彼の誘いに乗ったんです。手紙、渡しといてください。退職願はだしてあります――

 

と。

 

「私の先輩たちもそうだよ、姉さん。世代が違うと、色々揉めるもんだよ」

 

これは夢原のぞみが前世で野乃はなとかち合った事を指す。はなは敵を倒す選択を必ずしも取らないが、のぞみは『話には応じるが、敵意を見せれば、情け容赦しない』とするスタンスである。それが前世でのプリキュア間の派閥抗争に繋がってしまった面は否めない。のぞみはその事を引きずっており、その事情を知った、彼女と代が近い後輩の花咲つぼみに促される形で、転生は『和解』を考えるようになる。つぼみには、その世界の記憶があるのだ。つぼみは後輩のはなの名誉のために、それがいつ起きたかは明確にしていないが、先輩には恩義があるため、苦渋の決断の末にのぞみ側に立った事は示唆している。(例えば、のぞみは目の前に剣が現れた場合、迷わずに剣を取る。なぎさとほのかの持っていた気質を直接受け継いでいるからだが、対するはなは剣を取らずにロッドへ変化させた上で、浄化させる選択を取る。そこが対立の一因である)

 

「私達が最後なんだよ、初期のプリキュアを直接知ってるのは。いちか以降は直接は知らないし、一、二度会っただけ。だから、揉めたのよね……」

 

「花咲つぼみが言っていたけれど、あなた達の何人がその記憶を?」

 

「シャーリーさんとラブさんは持ってる。だから、よくつるんでるでしょう?」

 

『北条響』では間違えるため、プリキュアの仲間でも、シャーリーは『シャーリー』と呼ばれ続けている。クロになったルッキーニもシャーリーと呼び続けているからだ。リコももちろん、シャーリー呼びだ。本人は誰もプリキュア当時の名前で呼んでくれない事に『おいおい、せっかく、パットン親父たらしこんで、北条響名義の戸籍作ったのに…』とがっくりしている。

 

「あの三人は同期なの?」

 

「殆ど同世代。だから、軍で三羽烏扱いなのよ。現役時代はピーチとメロディはコンビだったけれど、ドリームはピンだったから」

 

ピーチとメロディは髪形や気質のなどの共通点などから、度々コンビを組んだ仲。部屋も隣同士だが、ドリームは三代目故か、後輩達に混じれずじまいである事が多かったため、そこにこだわりを見せている。黒江曰く『お前、リーダー風吹かしてぇのか?』と言われているが、プリキュア界では実質的なNo.2(人気、実力的な意味で)でありながら、自分と代の近い後輩とつるめなかったという後悔からか、転生後はシャーリーとよくつるんでいるのぞみ。ウィッチとして士官学校に通っていた時期が重なっていたり、肉体の戸籍年齢が同じであるという偶然もあり、黒江はシャーリーがプリキュアの記憶に目覚めた後、『シャーリー、あいつの面倒を見ろ。俺は立場上、あまり見ててやれん』と言いつけた。シャーリーは当然ながら、『ルッキーニの面倒見てるのに、更にあいつのお守りだって?あたしを過労死させる気が、あんた!』と抗議した。だが、プリキュアとして同じ時代を生きた記憶があるのは、当時はシャーリーと芳佳くらいであるため、シャーリーは渋々ながら了承した。ラブとりんの登場は天からの助けであったとシャーリーは述べている。

 

「そう言えば、あの三人はよく一緒にいるわね」

 

「今はだんだんプリキュアも増えてきてるけれど、別行動の子も多いよ。私と同じチームのキュアフェリーチェは何かと忙しいの。割に最近のプリキュアだから」

 

「リコ、ここにいたか」

 

「あ、マカロン」

 

「あなたは?」

 

「私は北郷章香。扶桑皇国海軍大佐で、プリキュアとしてはこの子の後輩になる」

 

北郷がマカロンの姿でやってきた。仕事中なので、琴爪ゆかりとしての気まぐれさは隠しており、北郷としての軍人らしい実直な口調と態度である。

 

「えぇ!?」

 

「プリキュアとしては琴爪ゆかり、キュアマカロン。宇佐美いちかと同じチームのプリキュアで、現役時代は高校生だったよ」

 

「マカロン、戸籍年齢はアラサーじゃ?」

 

「贅沢は言ってられんからな。もっとも、ウチの親父や叔父貴が見たら失神ものだ。うちは代々、講道館と武徳会の幹部だからな」

 

「貴方の弟子の坂本少佐には言ったの?」

 

「言ったよ。キュアマーメイドのこともあるし。それに、坂本には私の子孫が絡んでくる以上、知ってて貰わんと困るからな」

 

坂本は将来、子供が北郷家の誰かと結婚し、北郷の子孫を成す事になる。そのため、この時期にプリキュアである事をバラしたという。ただし、立て続けに親友・弟子、仲間がプリキュアであったため、けんもほろろな対応で、『そうですか、宮藤や醇子、ペリーヌ、シャーリーの事もありましたし、今更驚けとか無理です、サプライズとかは諦めてください、先生』と言われ、がっくりしたという。

 

「な、何。それ……」

 

「君に説明するのはややこしいが、のび太くんのような事だよ。リコ、SONGとの連絡所に行ってくれ。君が魔法つかいのプリキュアかを先方が確かめがっている」

 

「なにそれ……」

 

「君が『セレナ・カデンツァヴナ・イヴ』の転生である以上、シンフォギア装者であり続けている可能性があるからだろうな」

 

リコはげんなりするが、平行世界の存在ではなく、自分達の世界で死んだセレナ・カデンツァヴナ・イヴが輪廻転生したのなら、シンフォギアを起動させられるのでは?とする推測があったからだろう。

 

「ち、ちょっとまって!私達はモフルンとみらいがいないと、プリキュアへの変身が…」

 

「みらいとモフルンは向かわせてある。そうでないと、先方の技術者(エルフナインのこと)も納得せんだろう」

 

「エルフナインも気になってるんでしょうね。貴方が自然に生まれ変わったセレナかどうか、あなたたちの力は錬金術で説明がつくのでは?って」

 

「錬金術とか遺失技術で説明なんてできないわよ!私達の魔法は全然違うのよ!?」

 

リコは憤慨する。実際、魔法つかいプリキュアの魔法はシンフォギア世界のの錬金術と異なるものである。そのため、久方ぶりの変身がこうした事務的なものである事に不満を顕にした。

 

「まったく、何年かぶりかの変身がこんな形になるなんてぇ…」

 

「どんまい。私もついていくよ。みらいだけでは説明できんからな。マリア君、妹さんは借りていくよ」

 

断りを入れつつ、キュアマカロンはリコを連れて行く。マカロンの現役時代のパートナーであったキュアショコラ/剣城あきらを思わせる凛々しさを見せたため、マリアは茫然自失になりつつ、『え、えぇ…』としか言えなかった。大人切歌はアーティストとしてのマリアが女性人気も高い理由が子供の頃にはわからなかったが、キュアマカロンを見て、合点がいったらしい。

 

「マリアー?ダメです、完全に虜になってる……普段は同じことしてるクチなくせに」

 

大人切歌はそこは辛口になっている。子供の自分が拗ねている事、その代わりに自分が連れてこられた理由、大人であるからこそ分かるものを考え、マリアをお姫様抱っこで運んでいく。

 

「ち、ちょ、切歌!?」

 

「もー、見惚れてどーするんデス」

 

「み、見惚れてなんて…」

 

「顔、赤いですよ」

 

マリアはパニックになるが、大人切歌は気にしない。このやりとりを後で知った雪音クリスは爆笑し、風鳴翼は『ぬぅ……侮りがたし……』と妙な対抗心を見せ、笑いを誘う。この頃、調はノビタダの家に送り込まれ、地球連連邦軍士官学校(海自の幹部学校が転じた一校)に入校しており、戦線を離れているため、それを知ったのは数週間後であったという。そして。この日は休暇であったシャーリーはダイ・アナザー・デイ第四週目に向けての定例会議のためにやってきた八神はやてに誘われ、麻雀の真っ最中であったりする。会議室では、日本から伝わった麻雀机をはやて、会議に出席予定のロンメル、モントゴメリー、山本五十六が囲んで、はやては高級牌を自慢する傍ら、ものすごい役で上がっていた。

 

「ハハハ~ロンよロン~!」

 

「どわぁ!私としたことが……」

 

テンパイになっていたらしいが、戦略を誤ったらしいモントゴメリー。軍を自在に統帥する彼も麻雀だけは統帥しかねるようだ。軍の高官相手に高級牌を自慢しつつ、順調に勝つ。はやては基本的に待ってから勝負をつけるタイプらしいが、牌の引きが良いという強運を持つ。

 

「ぬぅ……このままでは砂漠の狐の評判に関わる」

 

「貴方の評判、21世紀では落ち気味よ?」

 

「私は参謀に兵站は任してるんだ。歩兵科出身が機甲科を所管する部隊の将帥になっちゃいかんというのかね」

 

ロンメルはそこをえらく気にする。

 

「そういう事じゃなくてロンメル将軍は現場だけ見て政治を考えないから将官としての能力が足りない、大隊長としてなら優秀って評価なのよ」

 

「貴方はまだいい方ですよ。自分は生きてたら東京裁判で戦犯だとか、お門違いの博打打ちと陰口を叩かれている。戦艦は否定しておらんというのに」

 

山本五十六はそこを愚痴る。山本五十六はミッドウェーの敗北で提督としての評価は落ちたが、軍政では先見の明はあった。そのため、戦争中に司令長官ではなかった事が歓迎される始末だったが、自身は大西や源田ほどの航空主兵論者ではなく、大和と武蔵の建造には反対したが、戦艦を否定してはいない。むしろ、航空機の高額化と空母の大型化で戦艦の価値がある程度見直される事を知り、戦艦の世代交代を承認している。もっとも、大和型を過大にすぎると苦々しく思っていたら、世界各国がより巨大な戦艦を次々と考え、モンタナ級戦艦は本当に現れ、紀伊を倒した。そのため、超大和型戦艦を復活させるしか選択肢はなかった。これは紀伊の敗北と呉の壊滅で海軍が張子の虎と叩かれた事、紀伊の乗員の遺族が仇討ちを戦艦で望んだ世論の圧力によるもので、山本としては不本意であった。だが、M動乱でナチスの超大和型戦艦達が連合艦隊を大苦戦させたため、扶桑皇国は地球連邦軍に依頼し、超大和型戦艦を作ったのである。

 

「あのバカでかい戦艦、あなた達はアイデアだけでしょう?」

 

「大変だったよ。日本側が保有に反対してな。イージス艦で代替できると小馬鹿にしてな。だが、モンタナ級戦艦やヒンデンブルクの資料を見せた途端に失神したよ」

 

「史実でのペーパープランが本当に完成してるの見たら、海上幕僚監部は腰抜かすわ。しかも大和以上の軍艦だし」

 

「司令長官時代の参謀だった宇垣に海上幕僚監部への説明任せたが、先方は腰抜かしたそうな」

 

「ヒンデンブルクは50cm砲じゃ?」

 

「48cmと思ったが、50cm級だった。だから、播磨以降は51cmに格上げしたのだよ」

 

ヒンデンブルク号の主砲口径は48cmと思われたが、実際は50cm台の砲であった。そのため、必然的に51cm砲や56cm砲は装備された。ただし、史実のような大和型への換装は武蔵でのテストで投射重量の絶対量低下、発砲時の船体の動揺が大きく、大和型の重さでは50cm砲のプラットホームたり得ないという結論が出され、見送られた。そのため、超大和型戦艦シリーズは必然的にこの当時の常識を覆す大きさで新造されたわけだ。

 

「あれ一隻だと思う?」

 

「同型艦が二隻くらいおるだろう。一隻だけというのは常識的にありえん」

 

扶桑の超大和型戦艦はナチスの超戦艦が仮想敵である。ヒンデンブルクはネームシップだろうと見積もられているが、姉妹艦の有無についてはM動乱では不明だった。山本五十六はその可能性があると踏んでおり、連合艦隊の戦艦の定数を多めにしている。ヒンデンブルク号は強大だが、一隻ではないだろうと。山本五十六は麻雀をしつつも、軍政面では極めて現実主義であった。史実では同盟国であるはずの日独戦艦対決はまだまだ続く。その暗示とも言える一言であった。

 

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