――ウィッチ世界に多数が転生した歴代プリキュア。その筆頭格にならざるを得なかったのが、キュアドリーム/夢原のぞみである。ひとえに三代目の『ピンク』であるという点に尽きるのだが、彼女はウィッチ世界に生きる『中島錦』という一人のウィッチに生まれ変わっていたところに能力と記憶の覚醒で人格が統合され、のぞみとしての容姿と記憶を取り戻した。ただし、任意で肉体の元々の容姿は取れるため、帰省時は錦としての姿になると公言していた。――
――ウィッチ世界の1945年のある日――
「のび太くん、はーちゃんをどれくらい面倒みてたの?」
「11くらいの頃から20年近くになるね。色々と楽しかったさ。元は一人っ子だったしね、ぼく」
「色々とクレームが部隊に来てるけど、処理はどうしてるの?」
「キュアハッピーが処理してる。あの子、直近の前世が大洗の狸な生徒会長だから」
「あー、なるほど」
「ぼくにまつわるものならいいけど、君たちが軍隊にいる事へのクレームも多いよ。法律的対処が『戦うのをやめるか』と『軍隊に入る』の二択しかないし、扶桑は戦う力としてのプリキュアを受け入れている。元からウィッチがいる世界だしね。だから、軍隊にみんなが入ったわけ。軍籍がない子もいたけど、一律で中心戦士は大尉って具合でね」
「あとは?」
「うーん。あとはあの子、立花響ちゃんの扱いかねぇ。綾香さん曰く、『基本は良い奴だが、頑固すぎて手に負えんところがある』で、綾香さんが調ちゃんと入れ替わってた時期、現地で一年も調ちゃんの役を無理強いしたそうだから、今も折り合いがお世辞にもいいとは言えなくてね。それに調ちゃんが反発して、今の状況に繋がったわけ。あの子は善意でそうしたんだろうが、いくら精神不安定状態になってた切歌ちゃんのためとは言え、姿を借りてる他人に一年も役を無理強いで演じさせて、しかもそれを当然と思ってた節あるし」
「先輩もそれは愚痴ってるなぁ」
成り行きとはいえ、黒江は事故で姿が入れ替わっただけであるのに、調が本来担うはずの役回りを強引に一年も担わせた、邪神エリスに魂が食われたがために、オリンポス十二神でもどうにもできない『キャロル・マールス・ディーンハイム』の魂の救出を『自分ならできたのに!』とアテナ/城戸沙織に食ってかかるなど、他人を思いやる彼女の負の点が目立ってしまう振る舞いが散見される上、ガングニールの絶対性への妄執が酷くなったように見えるのは、シンフォギア世界の全ての法則が適応されない世界の存在への恐怖の裏返しとも取れる。
「ZEROやディケイド、ゲッターエンペラーっていうルールブレイカーが大手を振って歩いてるのが、次元世界の恐ろしいところさ。だから、あの子の拠り所を否定するような事実はそこら中に転がってる。あの子はどうも、自分の居場所や力の拠り所を守ろうと、自分の力に強烈に依存して暴走するとか、無意識に他人の地雷を踏み抜くって悪癖があるみたいだね」
「調ちゃんが反発したのはそれ?」
談笑している青年のび太とキュアドリーム。ドリームは錦の気質が溶け合っている影響か、現役時代と違い、サバサバした雰囲気を持つようになっている。物言いも現役時代より大人びている。
「たぶんね。あの子は飛ばされた先の古代ベルカで10年位生きて、ベルカの女王の騎士っていう居場所を得てた。だから、相応に敵は倒してきてるし、誇りもある。立花響ちゃんはその事をどうも、否定的に言っちゃったみたいでね」
「OUTだなぁ~…、それ」
「完全にホームランだよ。相手の立場を考えないで、自分の価値観で頭ごなしに言っちゃったからね。それに、なのはちゃんの行為は道具への依存心をどうにかしようとしてのものだしね。後輩とは言え、立花響ちゃんのやり方は不器用すぎた」
「なるほど~…」
「ある種の妬みもあるかもしれないな。真の意味での聖遺物たるエクスカリバーや黄金聖衣を目の当たりにして、しかも、自分達の力は先史文明の住民達が『聖遺物を模して作った兵器の破片』を拠り所にしてるかもしれないっていう一つの可能性は残酷すぎたかもしれない」
「だから、先輩が撃ったエクスカリバーのエネルギーを制御できなかったんだっけ?」
「あれは一種の因果律兵器に近いからね。ギアの許容量を超えてる。もし、綾香さんがその時期にアヴァロンを発動させることができていたら、あの子のガングニールの全力でも破れないし、ガングニールのほうが自壊してたかもね」
「アヴァロン、か」
「たいていの攻撃を防げるものだよ。マジンガーZEROでも干渉できない唯一無二の防御領域かもしれない、ね」
黒江はシンフォギア世界滞在中、『約束された勝利の剣』を幾度か戦闘で使い、そのうちの一回は立花響が射線に割り込んで受けたという。彼女はそのエネルギーを束ねて拡散させようとしたが、それが仇になり、自分がその破壊力を受ける事になってしまった。彼女はエクスカリバーのエネルギーを御する事ができない事に驚愕していたというが、宝具の攻撃で五体満足でいられたのは、彼女の力の効果である。
「山羊座の聖闘士になったからできた芸当なんだけどね、約束された勝利の剣を撃てるの。向こうで装者の味方になった時に質問攻めにあったそうだ」
「そりゃ、伝説のエクスカリバーの姿をドーンって出して撃ちゃねぇ」
「聖剣の霊格を具象化してるだけなんだけどね、あれ」
「なるほど」
「君の方はどうだい?」
「47Fの連中からの手紙の返事を書いたり大変だよ。錦ちゃんはそれなりにこの世界で名が売れてたウィッチだったから」
「その立場を継いだ感想は?」
「一応は自分の経験として語れるから、違和感は持たれないと思う。キ44Ⅲのことは残念だよ」
「あれね。鍾馗だっけ」
「うん。実機もストライカーも、R-2800でパワーアップさせる計画だったんだ。正式に三型として採用されて、本格量産間近だったんだ。ところが、リベリオンが分裂した挙句の果てに、鍾馗の基礎設計が古いことを問題視された上、キ84を作ったほうが早いって日本側が言い出して御破算。でも、84がウィッチ支援機を主眼に作られてる事がわかって、長島の技術陣は哀れ、背広組に怒鳴られる羽目になったそうな。それで急いで、史実の84の乙型準拠の武装にして、ハ43のダイナミックバランサーと排気タービン搭載の改良型を積む計画に転換せざるを得なかったんだ。その煽りでストライカーも三型の制式量産がぶっ飛んで、おまけに史実通り、キ84の魔導エンジンの誉が史実通りの曲者でね」
錦が覚醒直前まで抱いていた思いを、のぞみが代わりにのび太に話す。なんとも複雑である。錦は自分がテストを担当していた『キ44-Ⅲ』が採用されたのに、情勢と政治がその量産を許さなかった事へ相当に悔しい思いを持っていたのだ。さらに緊急で代替として生産されたキ84ストライカーもエンジン回りにトラブルを頻発し、不評で生産の主体がキ100に移った事から、キ44-Ⅲのテストパイロットとしては、関わった機体が不本意な結果に終わった事を不満に思っていたのだ。
「それはまた…、なんといおうか」
「わたし自身…って言うべきかな?悔しい思いはしてるよ。まぁ、せっかく飛行技能受け継いでも、りんちゃんには信用してもらえないけどね」
「君は現役時代が現役時代だしね」
「のび太くんも子供の頃は似たようなもんじゃん~!」
膨れるドリーム。のぞみとしての天然なところと錦のサバサバした姉御肌なところが同居するようになったため、割に複雑な性格になっている。また、壮年期のび太の養子であり、のぞみのかつての想い人『小々田コージ』(ココ)の転生である『野比コージ』と婚約したため、時間軸を考えなければ、二人は義父と息子の妻になるのだ。
「ま、それいったら、僕たちは家族なんだし」
「なんだか、頭がこんがらがりそうだよぉ。おじさんになったのび太くんの養子にココがなってるから、えーと……~」
「君は嫁さんだよ。ただね、そうなると、はーちゃんの義理の姪って事に…」
「~~……」
「オーバーヒートしない。ま、僕たちは家族になるわけだ。いずれね。この戦いが終わったら、カミさんに紹介するよ。うちのカミさん、君等みたいな存在に憧れてたからね」
「なんか恥ずかしいな~、そういうの」
「いいじゃないの。去年(2018年)のオールスターズの映画のシナリオ書き替えられたんだし。他のみんなの活躍は次の機会に増やすことを確約させたから、結果オーライじゃない?」
「確かに」
「君だって、仮面ライダーストロンガーと渡り合えたんだし、現役時代より強くなってるのは確実だよ。君たちはチームが全員揃っていないほうが多いって状況だしね」
「わたしも、昔よりは強くなったつもりなんだけど、なぎささんと咲さんの領域にはまだまだって思ってるよ。特に、なぎささんとほのかさんは初代なのに、未だに最強クラスのポジションを保ってるしさ」
「君だって、スプラッシュスターを差し置いて、第一期プリキュアのリーダー格の中じゃ目立ってるし、国営放送の投票じゃ、君はブラックに次いで、二番目に人気なんだし」
「メロディに血の涙流されたんだけど」
「あの子は圏外だしなぁ。君の上がマリンなのは納得だけど」
「えりかとは、出身世界で大学が同じでさ。よくつるんだもんだよ」
「会ったら、昔の好できるかもね」
「だといいなぁ。卒論の時、えりかに手伝ってもらってさ~」
「ぼくも卒論の時はドラえもんに手伝ってもらったよ」
生前の大学時代につるんでいた関係からか、キュアマリンこと、来海えりかのことは美々野くるみ/ミルキィローズと同様に呼び捨てで呼んでいた事がわかる。年齢はほぼ同世代なので(えりかが一歳から二歳は年下)、気心もそれなりに知れた関係であったらしい。
「ラブちゃんはせつなちゃんのことを探してるし、響は奏ちゃんを。相方いない子も多いからなぁ」
「そそ、そのラブちゃんだけど、シャーリーさんとつるんでるよね?」
「ああ、現役時代からつるんでるんだよ、あの二人。ほら、響はシャーリーとして、スピード狂じゃん?ラブちゃんもスピード狂でさ、現役時代、つぼみちゃんを泣かせたことあるんだ」
「それで、一代飛んでつるんでるのかね?」
「たぶん」
「綾香さんにマン島TTレースに誘われそうだなぁ」
「誘われたとか言ってたよ…。2020年のレースに」
「手が早いな。ここ最近はシャーリーさんと出てたんだけど」
「変身した姿で出そうだなぁ、ラブちゃん」
「主催側も広告塔に使おうとするだろうし、去年はシャーリーさんが初めて、キュアメロディとしてエントリーして注目されたけど、来年はキュアピーチになりそうだな」
「おーい、ドリーム~」
「ほら、噂をすれば」
「ピーチ、先輩からマン島に誘われたんだって?」
「うん。面白そうだし、組んでみようと思ってさ。スピード大好きだし」
「美希ちゃんが愚痴ってたよ?」
「美希は子供の頃から付き合ってたからねぇ。でも、響が紅蓮聖天八極式持ってるのはずるいよぉ」
「ま、それはあの子の特権さ」
「うーん…」
ギャグ顔のピーチ。戦闘ではドリームと組むことも多い。彼女は意外にも、子供の頃のヒーローがリアルタイム世代でないと思われる『地球戦隊ファイブマン』のファイブイエローで、黒江がビッグワンのツテでファイブマンのサインを入手し、ラブにプレゼントしたところ、ラブは大喜び。番場壮吉にファイブマンへのお礼の手紙を渡すようにせがむなど、意外に可愛いところがある。
「綾香さんがヒーローにツテがあって、良かったね」
「転生して良かった~!幸せ、ゲットできたよぉ~!」
「君って、もしかして、隠れ特撮オタク?」
「うっ!な、なんでそれを…」
「なのはちゃんがジャガーバルカンとゴーグルシーザーのミニプラ作ってる時の君の目がキラキラしてたからね」
「実は子供の頃、近所のお兄さんに……」
黒江には言い訳したが、最初のきっかけはラブの実家の近所に住んでいたオタクの青年が布教として、ラブに『地球戦隊ファイブマン』のビデオを見せたのがきっかけであることがはっきりし、ドリームとのび太は思わず、苦笑いする。
「そりゃ、言い訳したくもなるなぁ」
「それで、プリキュアになったのをあっさり受け入れたんだね、ラブちゃん」
「うん…。のぞみちゃんは?」
「わたしも似たようなもんだよ。ただ、わたしは何をやっても続かなくて、ついたあだ名が部活追い出され女王。自分でも変えたって思ってたけど、中二まできっかけがなかった。ココと出会ったのは、そんな時だったんだよね」
のぞみははっきり言って、素質はあるが、開花させるきっかけに恵まれなかった人物だが、戦士になることでそれが起こり、のぞみは変われた。だが、彼女の出身世界においては後輩の応援が呪縛となってしまったという経緯がある。それは彼女の出身世界での不幸である。基本世界では幸福な人生を送った事が予測されている分、彼女固有の不幸ぶりはかなり際立っている。だが、それが彼女が生まれ変わるきっかけでもあったのも事実である。
「まぁ、多くの同位体の中でも大人の時に失敗しちゃったってのは珍しいと思うよ。今はそれも自分のあり得た可能性の一つだって割り切った。そうでないと、出身世界で生んだ娘達に悪いしね」
「それがいいよ。君たち、明日か明後日に綾香さんと図上演習だろ?勝つ自信は?」
「あるわきゃないって!先輩は士官学校時代、図上演習の成績が良かったことで鳴らしてたし、戦略シミュレーションゲームも大の得意だっていってたもん~…」
「あたしもオセロとか、あまり得意じゃないんだよねぇ」
「実際の戦闘だと、君等は切り込み役で鳴らしてるのにねぇ」
「うん。咲さんと舞さんの力を継いだから、余計にね。通常形態でも飛べるようになったし」
「あたしは美希に考えるのは任せてたしなぁ」
「私はりんちゃんやかれんさんたちに…」
「要するに、君等はうちの倅と同じタイプなのね」
「うん…」
「恥ずかしながら~」
のび太の実子のノビスケは『考えるよりも、体が先に動く』タイプであるが、歴代のプリキュアピンクチームの大半がその気質なので、如何に頭脳が行動力に伴っているキュアハート/相田マナが異端児であるかがわかる。
「そう考えると、キュアハートは君等のチームの異端児ってところか」
「うん。マナちゃんはあたし達『ピンクチーム』でも、つぼみちゃんと並んで、頭脳明晰だしなぁ」
「ガキの頃の僕みたいな傾向があるわけかい?」
「現役時代のわたしとみゆきちゃんだね、それは。まぁ、マナちゃん以降の代からは頭脳明晰って子もいるよ。みらいちゃん、はるかちゃんあたりかな。ただ、2010年代を超えると、なぎささんの持ってた要素が薄れてきてるって感覚があるから、完全な武闘派はめぐみちゃんが最後かもなぁ」
「はるかちゃん以降は浄化技メインに切り替わってるからねぇ。なぎささんは今から考えると武闘派だよね」
「うん。私までは技が完全に攻撃技だけど、ラブちゃんも技が浄化技な割に、前に出るよね」
「元からダンサー志望だった関係かな?それに格闘技してるわけじゃないから、映画とかの見様見真似だったのが本当のところ」
「私も現役時代は喧嘩殺法だって言われてた事あるし、マナちゃんみたいにはいかなかったんだよなぁ。ま、フルーレで剣戟やった最初の例と、ピンクチーム初の単独での最強フォームなのには誇り持ってたよ。今は正規の戦闘訓練受けてた体だから、この体が訓練を覚えてるのが幸いだよ」
「綾香さんの代より簡略化されてたって聞いたよ、錦ちゃんの代は」
「今の子供たちよりはよっぽど訓練はされてるよ。ウチの妹(中島疾風のこと)なんて、先輩達の代は習ってた天測航法を省いてるんだよ?昨日、学校の電話使って、わたしに連絡してきたから、『信じらんねぇ。お前の代は天測航法も習ってねぇのか?』って言ってやったよ」
「綾香さんらの代は日本海から浦塩まで飛ぶ訓練課されてたって言うからね。海軍でないと習うことが無くなってたって言うから、教育の簡略化も極まってるなぁ」
「あれじゃ、大戦末期の特攻兵並だよ。飛べて、銃さえ撃てればいいなんて」
「坂本少佐が怒るはずだよ」
「坂本先輩は、新人を200(飛行時間)とかで出すのに反対した気骨の人だよ。先輩は600以上は必須だって言ったんだけど、大戦が始まった後は航空関係者の間で無視せざるを得なくなったんだ」
「まぁ、世代交代期に大戦が始まったっていう不幸もあるだろうね。だから、突然変異で生まれた『Gウィッチ』が重宝されだしたんだよ」
「思ったんだけど、誰が言い出したの?それさ」
「発端は海軍の山本五十六提督だったらしいよ。それが綾香さん達の間で気に入られて使われて、かつての英雄がちょうど現役時代の神通力を保ったままってんで、通常のウィッチと区別する意図で部内で使われてたけど、綾香さんたちと関係が深い、源田実空軍司令官が史実でも日本軍航空関係の『大物』で、航空幕僚長の経験もある人だから、それが短期間で広まって、公式化したって奴さ。『G』は通常のウィッチより遥かに強い力がある分、妬みを買いやすいし、嫉妬されやすい。歴代のガンダムやMr.東郷もそうだけど、Gの称号を持つ者は何かかしらの因果を背負うって思ったほうがいい」
「Gの称号、か…」
「そう。君たちはプリキュアの力とGウィッチの称号を得てる。その分、上からは結果が求められるし、敵からは全力で殺しに来られる。強くなるしかないんだよ。僕や東郷と並び立つ領域までね」
青年のび太はキュアドリームとキュアピーチにはっきりと言う。『Gの称号』の持つ因果と、少なくとも、のび太とゴルゴと並び立つ資格が得られる領域までたどり着く事が、Gウィッチと見做されるだけの最低条件だと。先駆者である黒江綾香、穴拭智子が黄金聖闘士になり、加東圭子がゲッター線の使者になっているために、求められるハードルがとてつもなく高くなっている感は否めないが、邪神たるマジンガーZERO相手に抵抗できるだけの力の基準がのび太とゴルゴと並び立つだけの強さなのだ。二人は突きつけられたハードルの高さに呆気にとられつつも、Gウィッチと見做されたことでの責務を実感するのだった。