――地球連邦軍の供与兵器は21世紀日本の防衛省の面子を丸つぶれにした。地球連邦軍にとっては型落ちの兵器だが、21世紀からすれば超兵器そのもの。軍需産業の売り込みチャンスが潰れたと、日本防衛省は連日の猛抗議を受け、メーカー側が独自に扶桑軍に接触を図るという異例の事態が発生した。防衛省は軍需産業に配慮し、扶桑軍への売り込み行為は否定せず、取引の仕切りなどを仲介する事で地球連邦軍を牽制した。(実際は日本連邦の後身が地球連邦政府であるため、牽制も何もあったものではないが)とは言え、日本製兵器は高性能だが、現地生産が認められるか不安要素が大きく、結局は戦車や銃火器以外は比較的少数が旧式兵器の代わりに使われたに留まる。これは政治側が陸軍に力を与えないようにしていた事も関係していた。シベリア売却も陸軍の野心を合法的に打ち砕くためだった。だが、扶桑の旧・大陸領にそれほど興味がない日本側と奪還を悲願とする扶桑陸軍の衝突を懸念した地球連邦軍はドラえもんに南洋島の拡充を要請。シベリアの事実上の代替と言える南洋新島群は太平洋戦争の前後の頃に相次いで生まれた。豊富な資源地帯である同地の防衛のための戦力という事で陸軍はダイ・アナザー・デイの終了後は陸軍主力は太平洋戦線に集積され、戦力の近代化が行われたが、1949年度になっても遅々として進まず、未来兵器が公然と使われるに至る――
――クーデターとその後の将校らの追放で組織力がグンと低下した扶桑陸軍は一部の有能かつ有力な将校が若手を引っ張る構図となっており、その穴埋めで多くの自衛官が組織運営に関わるようになった。陸自の数倍という豊富な予算は人員の世代交代と装備近代化に費やされたが、日本側が無理に歯止めをかけたため、事の重大さを日本側が知った1949年度になっても戦車その他の機甲戦力の数は足りず、新式銃も末端に行き渡らない有様。扶桑軍は1945年以降、大日本帝国陸軍の影に苦しめられており、日本側の陸軍抑え込み政策が戦争の長期化を招いた。空軍を独立させた事がウィッチの派閥抗争の尖鋭化を招き、海軍航空の形骸化を引き起こしたのも予想外であった。折しも、レシプロ機からジェット機への世代交代期であったことだけは幸運であった。新規でパイロットを育てる事で『ジェット機に最初から適応した若手』が得られたからだ。ただし、ウィッチの機種転換は事前の予想より手間取り、カールスラント軍の権威の完全な凋落に繋がり、軍ウィッチの全員の総合練度の低下を引き起こした他、F-86後継の開発に手間取った事も航空ウィッチの軍事的価値の下落の流れを起こした。また、軍の統帥権が内閣に委ねられ、皇室の軍事的役目が事実上の終焉を迎える事が布告されると、扶桑の親カールスラント派は反発した。『統帥権が総理大臣にないのは、政治指導者の政治的意図で軍部が利用されることを防いだり、作戦行動の秘密を保全する目的があるのに』と。だが、日本側は『政略不一致をもたらし、国を破滅させただけだ』と断じ、クーデターを理由に、軍部の有力者の少なからずを失脚に追い込んだ。結果、親カールスラント派は全ての官庁で衰え、ブリタニアとの関係をより深化させる史実の親英米派が栄えていく。カールスラントとの関係は相対的に冷え込むことになるが、日本連邦に見捨てられれば、瞬く間に経済が破綻しかねないカールスラントは日本連邦のご機嫌伺いを行う外交方針に転換した。同時にドイツに歩調を合わせ、ある種の言論統制で人種差別、強い愛国的な主張を強く禁止したため、言論統制に失望した多くの優秀な人材が日本連邦、ないしはキングス・ユニオン、自由リベリオンへ加速度的に流出。冬の時代を迎えていく。(前線の軍人たちはグレーテ・M・ゴロプ以外は人種差別意識はなく、扶桑をむしろ恐れていたので、はた迷惑だった。それも義勇兵の名目で本国を脱出する将校の増加に繋がった)カールスラント軍の再建には長い時間を要するということだが、グンドュラ・ラルにとっては政治を勉強するいい機会であった――
――1949年。震電改二ストライカーの制式採用と生産が始まった。同年のF-100ストライカーの量産開始と併せ、第二世代宮藤理論が実用段階に達した事を示すものだった。それは喜ばしいはずだが、必然的に新世代型ストライカーはレシプロ時代の重ストライカーの傾向を引き継いでいたため、古参の一部や中堅には受けず、当初はエースのみが使用していた。だが、敵爆撃機のB-47への世代交代がこの時期から始まったため、雷電、紫電改などのレシプロ局地ストライカーは旧式化が顕著になり(速度で完全に追いつけなくなった)、退役が始まった。F-86ストライカーは相対的旧式化が始まったものの、当時で配備済みのストライカーでは唯一、ジェット爆撃機に有効であったため、まだまだ現役であった――
――ホテルで待機中の501統合戦闘航空団(B世界)。1年前に芳佳とリーネがトラブルを起こした後は救難部隊に顔を隠して参加していた。何かしていないと『罪悪感』に襲われる二人だが、A世界の戦争は敵が怪異で無くなっているためと、芳佳はA世界ではプリキュア覚醒者、リーネは美遊になっている都合、顔出しはNGであるため、顔を隠して、救難部隊の臨時隊員をしている。それが自己満足ではあっても『何もしないよりはマシ』であるからか、それを受け入れていた――
「私達はホテル暮らしでいいのか?」
「宮藤とリーネのわがままを聞き届けてもらっただけ、マシというものだ、バルクホルン。それに、この世界は人同士の戦争に様変わりしている。我々にできるのは、ブロマイドの撮影などだ」
「他の統合戦闘航空団の連中も人同士の戦争に忌避感を持つのが大半だからな……。この世界はウィッチが単純に花形ではいられない上、黒江達は超音速ジェット機を軽々と乗りこなしている。我々の世界では、10年かかっても出ないだろう」
「言えてるな。F-86でさえ、我々からすれば超戦闘機だ。我々の知る戦闘機は時速500キロ台がせいぜいだからな」
「しかも、怪異相手に戦える力がある。それもウィッチの権威が衰えた理由だと、黒江はいった。そんな中で次世代機を与えられている事そのものが上層部から信頼されている証だそうだ。46年にクーデターが起き、ウィッチの中堅層が失脚した後に残った数少ないウィッチということでもある」
「ウィッチの権威、かぁ。そんなの意識した事ないんだけどなぁ」
「グレーテ・M・ゴロプ少佐が敵に内通していた事も、カールスラントの、ウィッチの権威が崩壊する理由の一つだそうだ」
「敵に内通、か……。それだけで権威が崩壊するのか?」
「聞いた話によれば、平行世界との交流で人種差別問題がクローズアップされ、カールスラントが槍玉に挙げられたそうだ。彼女は黒江の上官だった経験を持つが、カールスラント至上主義者だった。それがカールスラントの立場を加速度的に悪化させ、カールスラント空軍は今や有名無実化しているそうだ」
「一士官がカールスラント至上主義を公言しただけでそうなるのか?」
「平行世界のカールスラントの強烈な圧力がかかり、軍隊全体で強引な人員整理が行われたみたいでな。特に空軍は扱いにくいというだけで、人員整理の対象にされたエースもいるそうだ」
カールスラントはドイツに押されぱなしであった。ドイツの無理な抑え込み政策で三軍は人的意味で崩壊寸前に追い込まれ、長年に渡って模索していた空母運用も半ば放棄された状態にある。
「グラーフ・ツェッペリン級も生き残った一隻が扶桑へ返却されたそうだが、扶桑は莫大な賠償金をふっかけ、カールスラントはその支払いの影響で空母運用を放棄したそうだ」
「あくまでこの世界の出来事だが、堪えるな…」
坂本Bの言葉にショックを受けるバルクホルンB。カールスラント海軍は本土奪還の為に大洋艦隊復活を夢見ていたが、ドイツからの圧力でそれが放棄させられ、外洋作戦能力は持たない『沿岸海軍』に留められた。新京条約もカールスラントの軍備制限条約であるが、そこまで規制はかけられなかったため、自主規制で締め付けられた軍隊がモラルハザードに至ったのだ。(後に旧・オーストリアハンガリー帝国の統治地域も含まれる事が判明し、慌てて一定規模までの再建が図られるものの、とうとう外洋海軍には戻れなかった)
「だから、扶桑が世界全体を守る必要が生じたそうだ。同位国は嫌がったが、そうなったら仕方がないだろう?」
大戦が長引いた上、同位国の締め付けで軍隊がモラルハザードを引き起こし、使いものにならなくなった国も多かったため、日本連邦は外洋海軍を有しつつ、有力な陸軍も持つ二カ国の片割れとして台頭したが、日本の一部勢力による露骨な妨害で振り回されているのは否めない。未来兵器の使用もやむを得ないのである。
「ウルスラ中尉は嫌がったそうだが、未来兵器を使わなければ、軍隊の予算をあの手この手で削減しようとする連中を黙らせられなかったそうだ。未来兵器を使うことは、裏を返せば、同時代の兵器を揃えることが上手くいっていない表れでもあるからな」
「あいつは技術屋だしね。チートを嫌がったんだろ。だけど、それでやっと、トントンだったっていうからなぁ」
B世界の面々からすれば、ダイ・アナザー・デイの奇妙な推移は奇異に見える。だが、ミサイルやレーザー、ビームなどの未来兵器が飛び交った結果、ウィッチの権威は加速度的に凋落。第二世代宮藤理論はダイ・アナザー・デイでの戦訓と、超音速ジェット機に伍する能力をウィッチへ与えるため、そして、ウィッチを政治的に守るために生み出されたのである。
「この世界はもはや、我々の知る歴史とはかけ離れている。黒江達が絶対的エースとして君臨しておる時点でだ。あいつらは我々の世界でもエースだが、もうとっくに現役を退いとるからな」
「去年のあのことはそれが理由だったのか?」
「そうだ。それで子供達が揉め事を起こしたのは予想外だった。おまけに、赤松さんの腹心をしとるのもな。赤松さんは海軍の最古参で、陸軍のあいつらとは接点はないはずだからな」
「あの豪快な方が?」
「敬意を払っておけよ。私の師より上の年齢だから、もう30代のはずだが、海軍で右に出る者はいないとまで謳われた古強者だ」
赤松はB世界では黒江達と世代も所属する軍も違うために接点はないが、A世界では黒江は赤松の直弟子であり、赤松はウィッチの最高権威者の一人として、権勢を欲しいままにしている。A世界では現役を続けているため、64F、ひいてはGウィッチの元締めである。1949年度には30代に達しているが、黄金聖闘士に匹敵する実力を誇る白銀聖闘士である事から、普通にプリキュアより強い。
「この世界さ、人外が多すぎない?」
「お前が言っても、説得力ゼロだぞ。ハルトマン。だが、怪異だけを相手にしてきた我々では、彼女達を戦場で助けることはできんよ。怪異には一定の行動パターンがあるが、人には戦略がある」
怪異は進化で行動パターンが変化し、再生力と攻撃力も上がるが、基本的に一定の法則性がある。それをつかめば容易に対処できる。また、人同士の戦争が行われる場合には行動が弱まるという事、ゲッターエネルギーや光子力などの超エネルギーには脆弱性を見せることから、スーパーロボットによる掃討が積極的に行われた。その結果、統合戦闘航空団を八つも維持する意義が薄れ、統廃合に大義名分が生じたのだ。B世界の一同は一抹の寂しさを感じるのだった。
――B世界のウィッチが基本的にA世界での戦闘に参加する事がなかったのは、既にA世界はジェット時代であり、常識が変わっていた事、B世界のウィッチは人同士の戦争に忌避感を持つ者が基本であったからだ。多くはA世界の彼女らの影武者(ブロマイド撮影など)を務めるか、救難部隊に顔を隠して参加するの二択で活動した。騒動を起こすこともままあり、64Fが未来兵器を積極的に使うようになったのは、ルッキーニBが起こした騒動が原因である。それでも、A世界でプリキュアになっていたり、聖闘士になっているために、表立っては活動できない者も多いことから、太平洋戦争の戦局に関わる事は基本的になかった。ただし、A世界での世界の動きは知らされており、一部の年長者が影武者を志願するきっかけにもなる。
「この世界では、クーデターで扶桑の軍隊が白眼視されるようになったという。寂しいかぎりだよ。昔は入隊できれば名士扱いだったのに…」
「むしろ穀潰しって見られることもあるというしな。将校はまだしも…」
A世界では同位国の反戦運動とクーデターでの混乱から、軍は白眼視されるようになり、軍への志願数は大きく低下。ウィッチは義勇兵が新規入隊の主流と化していた。軍人が名士扱いされる風潮も消え失せ、基地の周りに軍人街と呼ばれる集落が出来上がっていくが、それは故郷で白眼視されるようになった職業軍人達が故郷を捨て、基地の周りに邸宅を構えるようになったのをきっかけに各地で急速に出来上がりつつあった。これに軍部は窮した。軍人は転勤も多いのに、邸宅を基地の周りに造られても困るからで、これがきっかけで基地内に居住地が大規模に整備されるようになり、前線基地以外には必ず存在するようになる。(同時期に軍は人心掌握のため、給金の金額を倍以上に引き上げ、危険手当を1943年の三倍に引き上げる施策を行った。軍を白眼視する風潮が広がっては、戦争遂行に多大な支障を来すからだ)
――クーデター失敗後は地方で軍人が名士扱いされる事はされなくなったが、戦争中なので、軍人が世に必要であるのは理解されているため、村八分される事はなかった。だが、戦後の掌返しを恐れた地方出身の将校たちが次々と勤務地近くに転居していく事が増加。困惑した地方から嘆願が届くに至った。リゾート地であった南洋の新住宅街に邸宅を構えられる将校がエリートと見做されるようになった。また、旧来の特権階級であった華族の名誉階級化が進展したため、各界の成功者も名士扱いされるようになったのもこの頃だ。華族というだけで名家扱いされる時代が終わりを告げた後、気質的に軍人になれない家系はそれ以外の職業で道を切り拓く選択があったが、世の中には『華族たる者、一族の誰かどうかは国家に奉仕すべき』という風潮が残っており、負担に耐えかね、男爵位などの低い位の爵位の家柄は爵位返上を行うことも増えたが、黒江家など、比較的に裕福な士族が功績で爵位を賜る例も増えていた。英国のような一代貴族制もウィッチ向けに存在していたが、世襲の華族のほうが周囲に理解を得られるために世襲華族のほうが歓迎される傾向があった。これが扶桑の集団主義の弊害だった。一代華族はこの時期以降に定着していくが、その一方で、黒江や智子のように、当人は一代華族を志向しつつも、その後継者が功績を挙げることが予測された事で、直前に世襲に切り替えられた例も存在する。(そして、当人の引退から20年を経て、実際に後継者へ世襲された後に後継者が戦功を立てた。別の理由に、いちいち一代華族の手続きをするのが国に面倒臭がられたとも)日本側は『政治の安定のために大目に見てやった』と解体しなかった事を恩着せがましく語る者も出てくるほどに『虚飾の特権階級』と公言し、扶桑華族を見下していたが、黒田のように実業家としても成功した者、前田家や織田宗家、徳川宗家、豊臣宗家のように、先祖代々の家格的に相応しい者もいたために手出しを止めた事は結果的に正しかった。カールスラントでドイツが旧来の支配層である貴族の排除をしようとしたために国家そのものが存亡の危機に陥ったり、オラーシャのように、有に100年は癒えない傷を負った例が生じたからだ。そんな時勢に太平洋戦争が起こったわけで、扶桑も内部は相当にゴタゴタしていたわけだ――
――戦争の長期化は1949年に戦闘が本格化した時点で予測されていた。日本は扶桑の資源に物を言わせての物量作戦に打って出たかったが、扶桑海軍は史実の日本海軍よろしく、質を重視しており、互いに建艦方針で齟齬があり、怪異対策で省力型駆逐艦の建造(松型)が中止されていたことで揉めるなど、中期の建艦計画が空母整備しか決まらないという情けない有様だった。また、超甲巡を中途半端と断じ、アイオワ級相当の高速戦艦を整備すべしという意見は敵戦艦が徐々に重戦艦へ統一されつつある(モンタナを元にした重防御・重武装艦)事で説得力を失った。なお、大和型を更に強化した重戦艦(この時期に生まれた造語。条件は46cm砲を最低で連装八門ほど持つ事)が戦艦の設計の主流になった事で主力艦としての存在意義を失った加賀型戦艦と紀伊型戦艦は打撃艦と別用途に転用され、改装が1948年度にかけて完了したが、紀伊型戦艦『近江』のみはクーデター参加を理由に、見せしめも兼ねて、大破状態で放置されていたが、太平洋共和国への供与が決定されて修理が行われ、太平洋共和国の日本連邦加盟への褒美という形で供与される。近江は余剰と化していたため(尾張と駿河が航空戦艦になったのも理由である)、太平洋共和国へ供与するに相応しかったのだ。播磨型最終ロット艦『飛騨』の完成で代替が済んでいたからだ。同艦は連合艦隊第二艦隊に編入、連合艦隊の構想していた八八八艦隊計画の実現のために錬成に入った――
――プリキュア達はこの頃から変身アイテム破壊を防止する観点から、普段遣いの変身アイテムを『プリキュア・ブレス』に切り替え、スプラッシュスターの二人を除く全員が着用するに至った。この日はパトロールのため、飛行可能な者が空を、陸戦主体の者が陸上をパトロールしていた――
「パッション、まさか聖闘士になってたなんて」
「ウェンディ、私も偶々に聖域にたどり着いたのよ。アカルンの力でもそこからテレポートできなかったから、聖域の一員になって、飯を食うしかなかったのよ。迎えが来た時には、胸を撫で下ろしたわ。聖闘士にはなったけれど、聖域から任務以外は動けないのも、ね」
ハーデスとの聖戦後の聖域はガタガタそのもの。黄金聖闘士全員の戦死、星矢達以外の青銅聖闘士達は戦力的に不安、白銀聖闘士も二人を残して戦死、あるいは行方不明。キュアパッション/東せつなはやむなく、任務中に行方不明になった蛇使い座のシャイナに代わる形で蛇使い座の聖闘士となった。黒江が迎えに行き、64Fに編入させたことで、ようやくラブとの再会が叶ったのだ。
「あの戦いの後から暇を見つけては、ラブちゃんを探しててたの?」
「それもそうだけど、ちゃんとお礼を言いたかったのよ。大決戦の時は慌ただしかった上、言う暇も無かったじゃない?それと、ニューステージの時に言えれば良かったんだけど、それも逃しちゃって」
「なるほど」
「ドリームのことはベリーから聞いたわ。昔の私と同じか、それ以上にハードな経緯だったのね」
「私達がもっと早く来られたら、良かったかもしれないけど…」
「仕方ないわ。ドリームにとって、それは過去を乗り越えるためには必要な事だったのよ。それに……次元震に巻き込まれた他の世界の子達も守らないといけないでしょう?」
「あの子達は私達が戦うことになった奴らとの争いに巻き込まないようにしないと」
「ええ。もう一つのシンフォギア世界の子達はウィッチ達よりはまだ関われる余地はあるけれど、ギアのスペックが違いすぎる。A世界に比べて…」
「仕方ないよ。A世界のシンフォギアは技術供与とかで二つの決戦機能があって、なおかつ、小宇宙に耐えられるように改修されたんだから」
「あの子が頑張ったっていうもの。魔法少女事変の後、小宇宙を必死に研究したって聞いたわ。小宇宙に目覚めれば、何の負荷なしにシンフォギアを恒常的に纏えるって謎に挑んでたから」
――この頃にはA世界のシンフォギアはB世界のギアとの共鳴などで『アマルガム』という決戦機能が追加されており、イグナイトモジュールとの共存を成し得ていた他、エルフナインの必死の研究の成果でギアを小宇宙に適応させる事に成功していた。ギアを纏っての行動時間の制限を無くす(切歌が聖闘士に転じたため、マリア向けの研究となったが)研究はデザリアム戦役の後に完成し、更にマリアが修行を積んだことで完全となった。展開時間の制限制限の撤廃は意外に多くのメリットが含まれており、また、心象変化で形状を変化させなくても安定した戦闘力を発揮する事が可能になり、歴代プリキュア達からも一目置かれるようになっていた。
「元は綾香さんと調ちゃんがのび太さんの世界でシュルシャガナを使ったのが、研究の始まりだったというわ。エルフナインが言っていたけれど、シンフォギアを研究する過程で行き当たった壁だそうよ」
「小宇宙があれば、シンフォギアを負荷なく起動させられるもの。調ちゃんもギアを着たままで生活してたって言ってたし、綾香さんも身体保護目的で使ってること多いし」
キュアウィンディとキュアパッションはプリキュアや小宇宙という難題に立ち向かうエルフナインに敬意を持ち、研究を助けていた。また、高速戦隊ターボレンジャーが『プリキュア・ブレス』を開発する際にも携わるなど、最初こそは戸惑ったが、太平洋戦争の頃には研究者として飛躍したところを見せた。また、意外な事に他の世界との共鳴か、この頃には彼女のオリジナルで、A世界では存在が消えたはずのキャロル・マールス・ディーンハイムの人格が奇跡的に蘇っている。彼女の人格がメインになることで、錬金術を駆使しての高い戦闘力を行使できるという。(同時にアマルガムの出現で、A世界では出会うことの無かったはずの『サンジェルマン』との記憶が装者達に宿った。そのせいか、立花響も精神的に成長したらしく、落ち着いた)
「そもそも、装者達は綾香さんや調ちゃんのギアを使った生活をどう思ってたの?パッション」
「翼は眉を顰めてたけれど、作られた世界の法律の縛りなんて、あの二人には関係はないし、普通にあの街(ススキヶ原)じゃ、シンフォギアだろうが、プリキュアだろうと普通に気にされないから、フェリーチェと、ギアを着た調が普通に買い物する時に撮られた写真が多くあったわ。ミラクルとエースも驚いてたわよ」
「ミラクルはまだいいとして、エースは目立たない?」
「のび太さんのご子息が小学校に上がった後、二人が迎えに行ったら、子どもたちに喜ばれたそうよ。ドリームったら、それに対抗して、シャイニング形態で……」
「~…本当?あの子ったら……最強形態の大安売りして…」
ため息をつき、頭を抱えるウェンディ。変なところで対抗心を燃やすのも、ドリームらしいと言えばらしいのだが。小学生になったノビスケは母の遺伝によるものか、わんぱくぶりを発揮。キュアルージュとキュアマーチの影響でサッカー少年でありつつ、のび太の子供世代のガキ大将となった。同時にプリキュアたちが姉代わりであるため、女子にも人気がある(ジャイアンは女子にも高圧的に接する事があるため、女子人気は無かった)。パッション曰く、ノビスケが小学校に進学した後に疫病騒ぎが起こり、その日はしずかが仕事でどうしても迎えに行けないため、キュアミラクルとキュアエースに迎えを頼んだ。プリキュアが迎えに着たため、ノビスケは一躍、学校のスターになったわけだが、その後日、二人に負けじと、ドリームはシャイニング形態で迎えに行き、対抗心メラメラな事をやらかした。パトロール中に交わされた二人の会話から、『マジンガーZEROと一体化しても、ドリームのお調子者なところは変わっていない』事が明確になっている。むしろ、シャイニング形態を『目立つために使う』など、変なところで子供っぽい対抗心を見せているところから、ZEROの性格がフィードバックされたらしき点もあると思われる。二人は交代が来るまで、新京近辺のパトロールを続けるのだった。