――2011年。世の中にプリキュアオールスターズが根付いた頃。キュアフェリーチェ/花海ことはは郊外の新興の大学の文学部に入学した。高校卒業から一、二年ほどは仕事が忙しかったが、戸籍上で20歳になるこの年に大学に入学した。仕事が忙しかった理由は日本連邦の成立に関わる交渉に立ち合っていたからだ。日本連邦が成功した理由は、日本が扶桑の国体を内部から変える勢力の存在に期待したからだ。政権与党は扶桑の国体と体制に口出しする事はあまりしなかった。扶桑の史実以上の軍事力を自分達に向けられれば、数が不足している自分達は捻り潰されてしまうからでもある。米軍も内乱と見なして動かない可能性が大きく、扶桑を自分達に取り込むのではなく、共存共栄する事で良質な労働力と貿易相手を得て、死に体の経済に活力を与える事を選んだ。ただし、連邦成立後は野党が横槍を入れまくる、警察官僚たちが軍人達を見下し、揉め事を起こしまくるなど、シッチャカメッチャカなことになっているが。この時期、連邦は2016年度以降の成立と取り決めが交わされたが、扶桑はこの時期にティターンズへ物資を流した韓国へ軍事制裁を単独で加えている。近代装備を曲がりなりにも有する国家を短時間で制圧した事は日本に衝撃を与えた。その時に姿を見せた播磨型戦艦は近代装備を有しており、更に51cm砲という強力な艦砲を奮った事は驚きを以て迎えられた。
「大和が可愛く見える口径の砲なんて食らったら、ニミッツ級が軽くへし折れますよ」
とは、2010年代の防衛省の見解である。こうした軍事的抑止力も作用し、日本連邦は2014年に条約締結、2016年に成立した。ことはは高校を出た直後の二年は日本連邦成立の詰めの仕事にキュアコスモと共に、プリキュア代表で黒江に付き添いで携わっていたので、高校卒業から二年後の2011年に大学に入ったのである――
――2020年――
「嘘…。フェリーチェ、あの格好で大学にいってたの!?」
「そうだ、ミラクル。お前には信じられんと思うが、その頃にはプリキュアオールスターズも周知されてきたからな。仕事が入る時などは変身したままで大学に行っていた」
「え~~!?見たかったよ~こっちはリコとモフルンがいないと、変身だってできないのに」
キュアミラクルが見つけた一枚の写真。それは大学時代のキュアフェリーチェの写真だ。そこも日本が自制をした理由だ。2011年からの四年間は通ったため、意外に多くの写真がある。また、途中から文学科から史学科に転向し、好成績で卒業しているため、その気になれば、学者になれる。のび太もピー助の冒険と竜の騎士の冒険で考古学に興味があった頃があるが、ことはも大学生の頃の延長線で、趣味の範囲で歴史を調べている。ことはの私室を見てみると、その種の本が並んでおり、大学で史学を専攻していたのが容易にわかる。
「はーちゃん、何を専攻してたの?」
「最初は文学部だったが、二年か三年で史学に移っだ。彼の影響でな。彼は過去に恐竜にまつわる冒険を二度経験していて、その延長線で、今でもタイムマシンで過去の時代に行くそうだ。そうだ。言っておくが、ダイ・アナザー・デイは激戦だったが、リコはラグナメイルで戦ったからな」
「ところで、リコが乗った機動兵器はどの世界の記憶から造ったの?」
「一つ心当たりがあるが、お前には刺激が強いだろう。そういう世界からとしか言えんな」
「そ、そうなんだ…。それにしても、疫病の救援に来た扶桑の船の特集を最近はよくやってない?」
「史実の日本海軍は造れなかったものだからな。それと、史実で酷使した改装空母を寄越したから、TV屋は注目するさ」
キュアマーチの言う通り、超甲巡は大和型と共通デザインの塔型艦橋を持つ。それと、飛鷹型航空母艦は史実で守勢の日本海軍を支えていた艦であるため、病院船代わりに送って来るとは思っていなかったために驚かれている。(扶桑としても、大鳳型の量産が頓挫し、蒼龍型後期艦が『翔鶴型』に再分類されるなどの混乱が生じ、雲龍型を『低性能だから』とレッテルを貼られるなど、踏んだり蹴ったりな事態に陥っている。もっとも、ジェット機が載らないから送られたのは事実だ)
「扶桑もかなり心を砕いている証だ。超甲巡は新鋭艦だし、飛鷹型は北方の要だったのを引き抜いてきたんだからな」
「評論家ってのは勝手だね」
「史実で完成しなかった艦は憶測でしか語れんからな。モンタナの脅威を騒ぎ立てたんで、扶桑は大和型を超える戦艦をバンバン造る羽目に陥った。そこは考慮すべきだよ」
TV番組で評論家は勝手にあれこれ語るが、扶桑としても、大和型の上位艦は造るつもりはなかったのだ。(信濃と甲斐も予備艦という名目で予算がついた経緯がある)大和型の建造目的もそもそもは『移動司令部』だった。だが、公表された情報を戦艦更新の大義名分に各国が利用し、大和型に肉薄する能力の戦艦がどんどん計画され、連合艦隊を困惑させた。更にモンタナに紀伊が容易く粉砕され、M動乱でのナチスとの死闘が大和型の役目を『軍馬』に変え、世論の圧力でさらなる上位艦を計画せざるを得なくなったのである。モンタナを『大和型を超える』と日本側が宣伝したため、扶桑は史実通りに質で超えるしかなくなった。その結果の最初の具現化が三笠型である。(播磨型は廉価量産型に入る)
「昔、おとーさんが友達とプラモ造りながら言ってたけど、大和だって、日本が造れるギリギリのラインだったよね?」
「史実の日本の造船能力で造れる限界だよ、あれは。扶桑は空母主体に切り替えてたから、大和型を従来通りの戦艦の運用で使うことは考えてなかった。だが、人類兵器の怪異化研究が潰えた事、敵が大和型に匹敵する戦艦をバンバン造ってきたり、実際に使ったから、超大和型を用意せざるを得なくなったんだ。地球連邦軍に依頼してな」
「なんで、そこで地球連邦軍が?」
「大和型を超える艦を造るとなると、使う資材ももっと膨大だし、普通に考えて、数年はドックを占領するだろ。扶桑は空母重視に切り替えてたから、戦艦を量産された事自体が予想を超えてたんだ。だから、地球連邦軍に依頼して造ってもらったわけだ。それに地上の海軍は暇を囲ってたから、乗員も容易に確保できる」
「未来世界にそれで造らせたの?」
「21世紀の装備を最低でも持ってないと、日本の財務省が予算認めんだろ。日本が『戦艦は時代遅れ』という先入観を持つ以上はな。それに、ウィッチ世界では潜水艦の予算は得られん。史実の攻撃型の意義が見いだされたのも最近のことだ」
キュアマーチは素体がラウラ・ボーデヴィッヒ(ドイツ軍少佐)であるため、軍事に関しては専門家である。箒や調に近代軍事知識を教えたのも、実は彼女である。彼女の口から、地球連邦軍が超大和型の乗員を一年戦争後は暇な地球連邦海軍から供出している事も明らかにされた。つまり、扶桑は超大和型の安めの建造代金を支払うだけで良かったのだ。(ドックも地球連邦軍が用意してくれる)23世紀基準のハードウェアとソフトウェアを持つため、21世紀の現用艦艇の比でない電子装備を持ち、大和をも超える防御力が備わる。扶桑としては地球連邦海軍に恩が売れる上、お手軽に超大和型を持てるため、どんどん発注し、紀伊型を除く旧型を置き換えた。史実連合艦隊の構想はこうして(一部将校には不本意だが)実現した。航空装備の高額化と潜水艦装備の充実化で『航空主兵論』が半ば崩れたからだ。また、ダイ・アナザー・デイを境に、宇宙艦隊の保有もあり、空軍が緊急展開部隊化するに従い、陸海軍の発言力は相対的に弱まった他、ダイ・アナザー・デイ前に大量に陸海軍の参謀と将官が更迭されたため、ダイ・アナザー・デイでは一部の有能な将校にものすごい負担がかかり、扶桑のクーデター事件の引き金となった。(クーデターと粛清人事で陸大/海大卒という経歴、参謀職が殆ど有名無実化した嫌いが強いため、自衛隊の幕僚達がダイ・アナザー・デイ後の時代の扶桑三軍の教育転換期を支えた。なお、この頃、海上保安庁は現地の海防を混乱させた責任を取らされ、建造中の巡視船を半分以上提供する羽目となった他、トップが直ちに更迭される事態になっており、まさにガタガタの状態。現地に自分らの派閥抗争意識を持ち込んだツケを支払う羽目になった)
「海保も今、ガタガタだからな。坂本龍馬の孫娘をトップが殴ろうとして、その事件のせいで幹部の首が飛んで、懲罰として、建造中の巡視船を現地に提供させられたそうだ。実質的な組織縮小だよ。学園都市とロシアの戦争で多くの巡視船を喪失しているからな、連中。海援隊を自分達に取り込もうとしたんだろうが……結果は海保存続の危機だ」
「なんで、そんなアホな事を?」
「海援隊は海軍の予備役部隊の側面があった。それを民間軍事会社の体裁で保ってることを海保のトップは気に入らなかったのさ。それに元老の孫娘というだけで、大組織のトップになっているというのが癪に障ったんだろうよ」
「それだけで問題を?」
「海保の組織自体もいい迷惑だよ。向こうの事情を顧みずに私情で公然と罵倒して殴ろうとしたんだぞ、トップが。いい恥晒しだよ。海保は扶桑の内地の警備しか関われなくなった上、本分の日本の警備でさえ、短期的な縮小が決まった」
日本連邦体制では、その前の学園都市とロシアの戦争で海保が大打撃を被った上、海援隊との不祥事で恥を晒した事から、海保は縮小の道を辿り、連合艦隊が海保再建までの代行を大義名分に、警備任務にも付く。これが統合戦争まで中華人民共和国が大人しくしていた理由になる。(統合戦争の激戦で人民共和国は実質的に解体され、その後は台湾の中華民国と人民共和国が分裂した軍閥の闘争が続き、地球連邦体制に取り込まれた。海保もその後、地上の海防組織自体が連邦宇宙軍が宇宙艦隊を整備した段階で存在意義を喪失した事もあり、一年戦争後は警備ノウハウの維持という理由で存続しているにすぎなくなった)
「TVで海保出身の評論家が喚いてるわけだね」
「現地の事情を顧みん奴らが悪い。だから、この時代から不要論が出るし、一年戦争の後に本当に解体されそうになるんだ」
一年戦争は皮肉なことに、海保に事実上の引導を渡す戦であった。一年戦争後は海軍自体が沿岸警備隊扱いになり、地上海軍の不要な装備が解体されるに従い、海保は組織が存続の危機にさらされる。海自(日本連邦海軍)と上層部が派閥抗争を繰り広げた事もある海保は『地上海軍が海上警備任務しか殆どやることが無くなった』時代に真っ先に不要と見做され、存在意義を求めるという皮肉が待ち受けているのだ。(要は宇宙軍が従来の海軍の役目を継承したため、海軍と海上警察は沿岸警備隊などの扱いになったのだ)
「それ知ってんの?」
「地球連邦に統一された海上警察が存在しない以上はわかるだろう?地球連邦軍も一時は解体される寸前だったが、宇宙戦争の時代になったんで、存続したからな」
――地球連邦軍が存続した最大の理由はガトランティスが話し合いの余地がゼロの独裁国家だった事、地球へ奴隷か死を要求してきた事である。(この事実への人々の恐怖が当時の連邦政府の政権を瓦解に追い込む一因となった。ヤマトの徹底抗戦の意思が地球連邦軍の戦後における存続を決める最大の要因である)――
「左派はいつの時代も夢みたいな事を掲げるから、過激な真似しかしない。現実を見れてるのは、23世紀のドーリアン外務次官だけだ」
「あの人、なんで雰囲気が官僚と違うの?」
「元は北欧の小国の王族の出だったからだ。今は義父の名を受け継いで、地球連邦の良心って言われるほど有能だ。宰相向けでなく、外務官向けの資質だったんだな」
地球連邦政府の左派で唯一、現実路線でモノを見れるのが、リリーナ・ドーリアンである。彼女はピースクラフトから義父の姓であるドーリアンに戻り、一外務官として腕を振るう。連邦の融和政策が上手く行っている一番の要因だが、ジオンなどから暗殺される危険が大きい人物であり、タウ・リンも命を狙っている。過去の経緯上、地球連邦の良心とまで言われるほどの人物。まだ10代と若いが、平和主義者が嫌われ者の時代にあっても、彼女だけは行動で信条を示せる事から、人々に認められている。プリキュア達からも、ある種の敬意を払われているのがその証明だろう。彼女の出自は公然の秘密だが、23世紀初頭の地球で一番の有能で良識的な外務官僚であるため、なんとなく皆が察している。ジオニストから敵視されるようになったのはつい最近のことで、ジオンの衰勢が明らかとなった第二次ネオ・ジオン戦争後からだ。
「その人を敵視してるジオンって、もう傾いてる国でしょ?」
「国でもない。かつて負けたコロニー軍の残党の残党の残党くらいの残党にすぎん敗残兵だよ」
「へ?残党の残党の残党?」
「連中は離散集合を繰り返してきたからな。元の軍隊の半分も残ってはいないはずだ。最大派閥でもな」
キュアミラクルが驚くのも無理はないが、ネオ・ジオンは派閥抗争もあり、規模が小さくなり、第二次ネオ・ジオン戦争後はジオン共和国の極右勢力のみならず、ギガノス帝国、ティターンズ残党などさえ取り込む節操のなさで存続している。ヌーベルエゥーゴはそこに漬け込む形でジオンを利用しているのである。その首魁のタウ・リンは一年戦争以前の青年期に旧香港のスラム街暮らし。姉を飢餓で失った事からジオンに志願。だが、戦後はジオンも憎むテロリストとなり、遂にはテロリストとして大成してしまった。元のジオン軍人でありながらもジオンに恩義は感じておらず、双方を滅ぼすために怪しげなオカルトに手を染めたと、もっぱらの噂である。ただし、彼の身体能力は肉体の加齢(23世紀初頭で30代から40代前半)と未調整期間の長さ故、強化当初の能力を保てなくなり始めており、オカルトに手を染めた面がある。それで身体能力にブーストをかけた場合、戦闘向けのプリキュアすら上回るほどになる。そこも最強形態となっていたはずのキュアドリームをすら叩きのめしてしまう一因であった。
「この男に気をつけておけ、ミラクル」
「この人は?」
「未来世界最悪のテロリストで、中国系のタウ・リンと呼ばれる壮年の男だ。元ジオン軍人という事、青年期は香港にいたことしかわからんが、次の戦で立ち塞がる敵になる。お前にも戦ってもらうかもしれん」
キュアマーチはタウ・リンの写真を見せた。そして、嫌な予感がしたのか、タイムテレビである事を確認する。すると……。
「やはりそうなるか…!ミラクル、見てみろ!」
「どれどれ……え…!?」
キュアミラクルは一気に青ざめた。キュアハート、キュアラブリー、キュアピーチなどの強豪とされるピンクプリキュア達が倒されたのか、無残に地面に横たわり、キュアメロディのみが辛うじて健在だった。ドリームはミラクルも見たことがないほどの憤怒の表情でその男と戦うが、まるで歯が立たない。そして、タウ・リンは憐れむような声で言い放つ。
『フン…。友情や家族愛という綺麗で便利な言葉を使えば喜んで踊る小娘というのも哀れだな。まるでピエロだな』
その言葉に激昂するドリーム。怒髪天を突いているのか、理性は完全に吹き飛んでいた。
『殺してやる、殺してやる…殺してやるぞ!!タウ・リンーーーー!』
『ふん。ピエレッタの分際で俺に強い言葉を吐くか…。ならば、調教してやるか……』
ドリームは自分の信条を嘲笑し。愛や友情も否定した目の前の男を殺すとまで言い放つ。りんとの友情を否定されたことへの怒りが臨界点を超えたのだ。そして、禍々しい紫のオーラがシャイニングドリームを包み込み……。
「マーチ、こ、これって!!」
「ダークプリキュア化だと!?馬鹿な……バッドエナジーでも出したというのか…!?」
映像として見る二人も絶句した光景。ドリームの中の闇がこの時、遂に表面化してしまったのだ。
『うわぁあああああ!!』
咆哮とともに、衣装に紫のグラデーションが入り、鋭角的で禍々しい意匠が加わったその姿こそ、本来あってはならない変化であった。
『タウ・リン。俺は……テメーを……地獄に送ってやる!!』
言葉づかいから何まで、のぞみ本来のものと大きくかけ離れた攻撃的なものに変わっていた。マーチはその姿に見覚えがあった。
「まさか、あの姿は……あいつの過去生の……娘の一人と…!」
その姿はマーチも知るのぞみの過去生に存在したのぞみの長子であり、ダークプリキュア『キュアナイトメア』(本人はそう名乗っていたという)と似通っていた。そして、のぞみ自身は怒りで自分に何が起こったかも理解しておらず、脳裏の『囁き』が彼女の肉体を動かしていた。そして、そのただならぬ変化を感じ取ったメロディ(シャーリー)は必死に呼びかける。
『おい!!のぞみ!!おい!!……なんだってんだ……なんだってんだよぉ!?』
メロディは理由が分からずに困惑し、ただ呼びかけることしかできない。狼狽するメロディの声で気がついたキュアピーチがやってくるが、彼女も言葉を失う。
『のぞみちゃん……!?……ひ、響ちゃん……なんなの、何が起こったの!?』
『わっかんねぇよ!?あいつに何が起きたってんだよ……誰か説明してくれよぉ!』
メロディは完全に狼狽してしまい、めちゃくちゃなことしか言えなくなっていた。ピーチも己が目を疑う事態に直面し、思わず本名で会話を進めるほどにパニックになっていた。
『ああああああああああっ!!』
咆哮だけを発し、タウ・リンと戦うドリーム。理性は完全に吹き飛んでおり、戦術も何もあったものではないが、彼と戦えるポテンシャルには飛躍していた。その一部始終をチェックしているキュアマーチとキュアミラクルの二人を絶句させるほどの戦闘だった。それは5分ほど続いた。その終わりはドリームのその禍々しい変身が不意に解けることで迎える。
「ハァ…ハァ……。何、なんなの……!?あたしに……何が起こったの……!?」
激しく息切れを起こしつつ、自分に起こった『あってはならないはずの変化』を感じ取ったのか、手と足は恐怖で震え、顔は完全に青ざめている。そのままペタンと地面にへたり込み……。
(あの声……まさか、まさか!?)
ワナワナと恐怖に震え、自分に何が起こってしまったかを理解する。そして……。
「う、うわあああああっ!」
絶叫する。それしか彼女にはできなかった。タウ・リンはその様子に侮蔑とも、憐れむとも取れる表情を見せる。本人曰く、年齢は30代半ばらしいが、強化の副作用か、外見はそれより10歳は老けて見える。その彼が憐れむほど、のぞみはこうして、闇に足を踏み入れてしまったのである。その様子をタイムテレビで事前に確認した二人は顔を見合わせ、事態の重大さを認識。他のプリキュアも加えての協議を検討しだすのだった。
――この時以来、のぞみは過去生で闇に堕ちた長子の『囁き』に悩まされ、加速度的に心を病んでいく。それを憂慮した後輩たちはのぞみの戦友であった水無月かれん、秋元こまちを連れてくる事を総意とし、かれんとこまちも事態を鑑み、要請を呑む。のび太とドラえもんものぞみの同位体の説得に動き、仮面ライダーディケイド/門矢士もその世界を守護させるため、仮面ライダーBLACK/南光太郎をどこかの世界から連れてくる。(RXにならなかった世界の南光太郎である)のぞみの同位体ものび太、ドラえもん、ラブの三者の説得と、フェリーチェの肉体言語でついに折れ、『事後に自分同士で対面する事』を条件に受け入れる。仮面ライダーBLACKまで連れてこられては、栄光のプリキュアの一員として、駄々をこねるわけにもいかないからだ。精神のバランスを崩してしまった別の自分は自分で救いたい。それが本心であると漏らし、駄々をこねていたのは、何故、かれんとこまちだけをつれていき、自分を連れて行かないのか。その疑問からの行動だったと述べる。『事後に会う』という約束は彼女なりの筋の通し方であり、別の自分に対して求めた『かれんとこまちを行かせる』事の対価であった。Gウィッチとしてののぞみは後に返礼として、後輩のキュアスカーレット、キュアコスモ、キュアフェリーチェらを派遣。仮面ライダーBLACKと共に、その世界の助っ人として戦わせるのだった――