――21世紀のTVでは、扶桑で自分達寄りになった憲法改正を褒め称えつつも、旧体制の支配層の温存と見做されている『華族』が存続したり、軍隊の一文が統制手法が変わった以外は殆ど変化がない事を批判する声が出ているが、敗戦したわけではないのに、わざわざ華族を廃止する必要はないし、軍隊や皇室を縮小させる必要はない。それこそ日本の嫉妬でしかない。オラーシャで革命を煽った者たちは既に公開処刑され、扶桑のクーデターを主導した青年将校達も公開処刑されようとしている。1940年代の扶桑でもっとも賛否両論になったのが、クーデター軍の青年将校の処理である。クーデター軍は『未来世界の傀儡政権を倒す』と息巻いたが、結局は自分達が国賊、不忠者とされ、先手を打たれた挙句の果てに超人たちにねじ伏せられた。彼女達は自分達を更に超える力にねじ伏せられ、国賊と処理される結末を認めず、無罪を主張した。だが、天皇に『叛乱軍』と断じられた事で運命は決し、1947年に首謀グループの処刑が行われた。この時に近衛師団の若手参謀などの青年将校たちも相次いで失脚した。ウィッチの軍閥化傾向はこの時の左遷で解消されたが、今度は萎縮した国民の意思として、軍そのものへの新規志願数の減少傾向という形で国民の萎縮が表れ、軍部はますますGウィッチへの依存を強めざるを得なくなった。日本側には一部に『年端もいかない少女達を~』という声があったが、現地の情勢と風土に配慮し、1949年当時には成人に近い年齢に達しているか、成人済みの者も多くが現役ウィッチであること、教育体制の変革で『最低でも、17~18歳で初陣』となった事を理由に、変えたばかりの育成制度に更に手をつけられずに済んだ。また、『扶桑海七勇士』とその系譜に位置するウィッチ、あるいは所縁のあるウィッチが『特権持ち』として扱われる事が新規志願数の減少と中堅がごっそり抜けた事を理由に、継続がなし崩し的に決まる。実質的に既存人員の活用が命題となった上、ウィッチ部隊そのものの平均練度が却って下がったからだ。64F、50F、47F、244Fと言った、いくつかの精鋭部隊のみが人員を温存できたが、政治的に庇護されている64F以外の部隊は数人の幹部が『危険思想』を理由に更迭され、少なからずの混乱を強いられている。現・64Fは旧343空と旧64Fを統合したという泊があるため、『エース中のエースを集めた』という謳い文句を政治家と官僚向けに使い、国民にもそういう風にプロパガンダされている。実際には新人育成枠も確保していたのだが、それが実質的に無しと扱われた事で、なし崩し的に完全な精鋭部隊と化した。こうして、1949年までに扶桑は大きな混乱を生じた。近衛師団は縮小改編され、連隊に格下げされた上で儀仗部隊化された。陸海軍の少なからずの青年将校が危険思想の持ち主とされ、クーデターへの共鳴を理由に、軍から多くが問答無用で追放された事の穴埋めに自衛隊の幕僚達が充てられた結果、扶桑軍の気質から史実大日本帝国陸軍色は時と共に失せておき、陸海空自衛隊色に次第に染まっていく。ただし、完全に自衛隊風にはならず、一部の伝統は残った。(海軍は海自も伝統はそのままであるので、ほぼ変わらず。だが、陸自の気風が扶桑陸軍の気風を完全に塗り替えたわけでもないため、扶桑陸軍は1950年代には、好戦的な帝国陸軍と何事にも慎重な陸上自衛隊のキメラとなったと言える)ただし、航空部隊は高価なジェット機が主流に移り変わる時代になったため、航空自衛隊式に移り変わった面と、地球連邦宇宙軍に通ずる海軍式の伝統が混じり合っていく。(ただし、自由リベリオンを内に抱える様になった影響で、エースパイロットを認める文化が海軍航空にも波及し、志賀を始めとする中堅が中枢部から排除された影響で、むしろ瞬く間に普及する)空軍が事実上の緊急展開部隊として拡大し、21世紀以降に空軍は『航空宇宙軍』に改編(ウィッチ世界の2020年に組織再編で誕生)したが、その遠因は空軍黎明期の1946年からの数年の64Fにあったのだ――
――日本連邦設立までに交渉の現場で一致した見解は『扶桑を締め上げすぎて暴発されると、自衛隊には止める手段がないし、米軍は内乱と見なして全く動かない危険が大きい』である。陸軍だけで国家総力戦前提の数百万の人員が控えており、16万の陸自の比ではない。しかも後方人員でない前線部隊の人数だけで、ある。これは戦後基準の西側諸国の一国の軍隊全体の数倍である。更に64Fに歴代プリキュアが加わっている事で『陸海空自衛隊の離反』までも考えなくてはならない国家安全保障会議(日本)。2015年頃に『扶桑を上手くのせて、自分達にとって良質な労働資源と重要資源、軍事力の供給地になってもらう』と結論づけ、左派の反対を押し切る形で連邦を成立させた。これは日本自体には、もはや90年代の経済政策の失敗を汚名返上できるだけの余力は残っていないこと、学園都市が棚からぼた餅で得ていた極東ロシア地域を統治するに当たって、相応の軍事力が必要になったなどの理由による。(極東ロシア地域は21世紀以降、日本の統治下になり、ロシアは国力を減じた状態で統合戦争へひた走り、更に地球連邦時代の『負け組』になってしまい、中国共々、出身者が連邦政府の要職につけない時代が続いたわけだ)日本は実在が確認された歴代プリキュア達を『仮面ライダーやスーパー戦隊より身近なところにいるヒロイン』と位置づけ、プロパガンダに利用した。ダイ・アナザー・デイでウィッチ達のサボタージュが問題視された時期、前線の人手不足が顕著な軍部にとってはまさに救世主。幸運にも、のぞみ、響、トワ、みなみ、みゆきが最初に確認されたプリキュアであり、転生後の名で軍籍を持っていたことから、すぐに高待遇に切り替えた。その影響で、のぞみはデザリアム戦役後に少佐となり、みなみは(竹井家の息女としての配慮もあるが)大佐へ、トワは大尉(ペリーヌとしては中佐で予備役だが、トワとしては別カウント)、響は中佐になっている。なお、第二弾プリキュア達では、ゆかりが少将になっており、軍隊階級的な最先任は琴爪ゆかりになる。コミュニティ全体のリーダーはダイ・アナザー・デイ~デザリアム戦役までが夢原のぞみ/キュアドリーム、デザリアム戦役後の太平洋戦争からは日向咲/キュアブルーム(キュアブライト)が担っている。コミュニティ全体のリーダーは最古参のピンクプリキュアが担うという不文律がのぞみの登場で確定したからだ。咲はデザリアム戦役の経緯を知らされることで、その座を継ぐ事をのぞみに告げ、1948年度に正式に継承した。なお、参謀格は基本的にブルー/ホワイトプリキュアが担う事になった。(一部、例外もいるため、基本的にかれん、美希、エレン、みなみなどの該当者がその役目を担う)――
――結局、デザリアム戦役からの参戦となったキュアリズム/南野奏。現世では『クレア・ヒースロー』という地球連邦宇宙軍の大尉になっており、合流が叶ったのはデザリアム戦役からであった。――
――2020年――
「いや~ゴメンゴメン、響。銀河外縁部だったから、来るのに手間取っちって」
「奏、お前……。聞こうと思ってたけどよ、なんで、連邦宇宙軍のエースになってんだよ!?」
「本当は宇宙船免許目当てでエゥーゴに入ったんだけど、そのままズルズルと二度のネオジオン戦争やザンスカール戦争、クロスボーン・バンガードの動乱に最前線で関わっちゃってさ。抜けるに抜けられなくなった上、気がついたら大尉だよ」
南野奏は過去生では生真面目で優等生キャラだったのだが、現世ではおちゃらけキャラに変貌しており、過去生の面影がキュアリズムになっていても、殆どない。だが、弱気な面があった過去生と違い、現世では総じて『歴戦の勇士』の風格がある。MSのエースパイロットとしても『ガンダムタイプの使用も認められている』ほどの猛者である。なお、任官当初は下士官だったとのことなので、叩き上げとして、大尉にまで登りつめたという。
「お前、何に乗ってんだよ」
「Z乗りには愚問だよ、チミィ」
「ぐぬぬぬ……!!」
悔しがるキュアメロディ。相棒がMSエースの最高峰とも言われる『Z乗り』になっていた事はナイトメアフレーム乗りの彼女にとっても驚きだからだ。からかわれまくるメロディだが、二人の人格は現役時代と違うので、どこかギャグ漫画的なやりとりになっている。
「これで、スイートも全員が揃ったな」
「おい、マーチ。お前んとこも早く、あかねとれいかを見つけてこいよ」
「そう簡単に見つかれは苦労せんよ、メロディ。かれんさんとこまちさんを探して、連れてくるのに、どれほどの労力を使ったと思う?はーちゃんはキャプテン・ハーロックにまで頭を下げたんだからな」
「わーってるって」
「……おい、リズム。お前、昔とキャラ変わりすぎだろ?」
「そりゃ、一度生まれ変わって、別の人生生きてくりゃね。記憶が戻ったところで、昔のキャラには今更戻せないっしょ、マーチ君?」
「お前のファンが泣くぞ……?」
「えー。面倒くさーー!」
キュアリズムは生真面目であった過去生と違い、性格の基本がおちゃらけ系になったため、変身していても、その姿で往時ののび太よろしく、グータラするという『ファンが見たらズッコケ確実』なだらしないところを見せている。コスチュームが現役当時と変わっていない分、余計にクレア・ヒースローとしてのおちゃらけ成分が強く出ているのが分かる。また、キャラの変化を意識させないように普段は振る舞うのぞみやラブと違い、彼女は響(シャーリー)と同じく、キャラの変化組に属する。原型がほぼ無いレベルなためだ。
「こう見えても、チタニウム勲章もらった事あるんだよ?少尉か中尉の頃だったっけ」
「あれって、尉官とかがもらう勲章だろ?お前、もらえたのか」
「フォッカー勲章は戦闘機のパイロットじゃないと、もらえないからね。あれが他の機動兵器のパイロットにとっての名誉みたいなもんさ」
「元はロイ・フォッカー大佐の功労を称えるためだっけ?」
「それもあるけど、その親父さんが同名で、その人が統合戦争の前期のエースパイロットだったからだって」
「へー……」
「確かめてない噂だけどね。ロイ・フォッカー勲章は全領域戦闘機のパイロット向けの勲章なのは確かだし」
地球連邦軍はデザリアム戦役直後の時期、軍縮の時代に肥大化した民間軍事会社(軍縮の時代には、軍事力を民間が独自に持つことは規制対象から外された。これは政府としての軍事力をプリベンター以外に持たない事が内定していたからだ。それが撤回された後では傭兵が横行していると批判が起こった)への規制を強めていた連邦政府の意向でエースパイロットへの待遇を改善しだし、イサム・ダイソンのような素行不良者でも、以前は行われた勲章の剥奪を取り消す決定を下し、軍部の人員的な質の維持に努めていた。民間軍事会社の肥大化が批判を浴び始め、政府が肥大化した大手民間軍事会社の規制に乗り出すと、民間軍事会社は政治取引でトップエース部隊をロンド・ベルへ供出することで政府の規制を躱した。トップエースを有事に供出する事で野心はないとする意思を表明するのに、外郭独立部隊のロンド・ベルの存在はうってつけだった。これはウィッチ世界の海援隊が連合艦隊内の海上護衛総隊に編入されるのと似た流れであった。海援隊も昭和期には数百万の人員を抱え、独自の情報網を築き上げており、それを失うことは避けられた。現地の経済と諜報網的意味で、だ。時間軸的に数百年後になる地球連邦時代の民間軍事会社は海援隊の事例を参考に、身の振り方を考えたと言える。
「次は太平洋戦争だろ、リズムはどうするんだ?」
「そのまま参戦するよ。最近は銀河外縁部でゼントラーディの相手ばっかしてたし、そろそろ『戻り時』だよ」
「グータラしながら言うセリフか?」
呆れるマーチ。ラウラ・ボーデヴィッヒとしての中性的な言葉遣いが主になっているため、彼女もキャラの変化が大きい。
「今は学友を買い物に行かせてある。直に戻るだろう」
「IS、君も持ってるんでしょ?」
「一応な。私のは小型化しても、カノンがかさばるから、プリキュアでいたほうが楽だ。その点はセシリアとシャルが羨ましいがな」
「あのセシリアとかいうガキ、ほのかさんに似てる声だから、一瞬、ドキッとしたぜ」
「私もだよ」
「あいつはほのかさんと違って、料理はてんでダメ、世間知らずなところがあるがな。(もっとも、亡き両親の財産を守るために代表候補性になった経緯があるため、名家の出にしては世俗じみている面もあるが)それと戦闘は機動戦に対応できんのがな」
セシリア・オルコットは先に派遣されていた鈴がもたらしたデータで機体の改修こそ施されたが、接近戦に弱い(箒に化けた黒江に完封され、アガートラームをまとわれると、相手すら務まらなかった経緯がある)弱点はすぐにはどうにもできないため、もっぱらベンチウォーマーであった。似た声の雪城ほのか/キュアホワイトが足技で歴代プリキュアの上位に君臨している事は彼女の新たなコンプレックスになっている。この世界ではISを大っぴらに纏えるために訓練中だが、この時点でも、接近戦になると尽く完封されている事から、実戦参加は見送られている事がわかる。
「シャルは技量が高いから、私達相手でも充分に渡り合える。だが、セシリアは接近戦になるとダメだ。射撃が通じんと、対応が遅れる。閣下が箒に化けた時に一回、正体バレした後、アガートラームを使って模擬戦をしてくださったが……結果は言うまでもないな」
黒江相手では手も足も出ず、キュアマーチ(ラウラ)相手でも、プリキュア・マーチシュートを食らってしまい、模擬戦で土をつけられるなど、ここ最近は噛ませ犬感が強いセシリア・オルコット。ビット攻撃と狙撃頼りなことは度々指摘されており、つい一週間前にはキュアホイップとキュアミラクルにも、軽くのされたという。ホイップはサポート向けの特性のプリキュアで、歴代のピンクほどは戦闘能力は高くないのだが、彼女にもあっさり負けたため、キュアマーチは余りに哀れに思い、すぐには声をかけられず、セシリアも自分の無力さに打ちのめされる始末だった。(セシリアは英国の代表候補生であったため、弱点が目に見えて存在するのは外聞的にはまずいのだ)似た声を持つほのかへコンプレックスを持つのは当然と言えた。
「それと、ミラクルはまだしも、キュアホイップにも軽くのされたなんて。その子、接近されると本当にダメなの?」
「うむ。まさか、戦闘向けのプリキュアでないホイップにまで、ああもあっさりとのされるとはな…。だらしがないとしか…」
ホイップのトリッキーなサポートで動きを封じられ、そこにミラクルの飛び蹴りが入り、セシリアはISを纏ったまま卒倒した。余りにあっさりすぎて、二人のプリキュアも声をかけられないレベルで落ち込み、IS姿で体育座りしてうずくまってしまったセシリア。シャルが歴戦の勇士であるプリキュア達と互角に戦えたのとは対照的である。なお、ラウラ自身もデータ集計の目的でISで後輩たちと模擬戦をしており、こちらはカノンの使い勝手の悪さを愚痴りつつも、先輩としての威厳は守れている。
「私など、久しぶりに機体を使って、二人に付き合ってもらったが、威厳は守ったというのに。あいつはビット攻撃の素養重視と家柄で選ばれたらしき面があるからな、セシリアは」
割に容赦ない評価だが、セシリアはBT兵器に必要な『空間認識能力』が高い水準だったのと、狙撃手に特化した素質であったため、接近戦になると弱さを露呈してしまう。キュアホイップのデコレーションで拘束され、ミラクルの飛び蹴りで負けた時など、末期がん患者のほうがマシなほどに落ち込んでいた。
「BT兵器を、未来世界のサイコミュ兵器にとっかえてやったほうがいいかもしれん。ファンネルとかのあれだ。あいつにサイコミュシステム搭載機の戦闘を見せたが、場面にかじりつく勢いだった」
「あれ、プランは先方に見せたはずだろ?」
「IS世界の英国がプランを拒絶してな。だが、二号機が奪われとるから、方針を変えるだろう」
「そこはアニメ通りなのかよ」
「亡国機業は篠ノ之博士に接触していたからな。もっとも、鳳凰座の一輝が鳳凰幻魔拳で連中の幹部の精神を壊したというから、奴らももう活動はできまいよ」
「一輝、あの顔と声で15だからねー。もう噂になってるよー?え~と、織斑一夏君を『小僧』って呼んだんしょ?」
「閣下が爆笑してたがな」
一輝は老け顔なのと、長身、独特の渋い声で年齢を間違えられる。織斑一夏も一輝のことは『26、7くらい』と思っていた。その際に一輝が言った一言がこちら。
――『俺が貴様の幼馴染を連れて行く事がそんなに不満か、小僧?』――
……である。一夏は頭に血が登りやすいため、食って掛かったが、一輝は一笑に付した。箒が止めようとしたが、時既に遅し。一夏は掌を添えるだけで、白式の全速力の突進を受け止めた。一夏は驚愕し、スラスターをそこで吹かすが、微動だにしない。スラスターの噴射ノズルから出る噴射炎が虚しく瞬くだけで、押すことも引くこともできなくなっていた。一輝は素手でISのパワーアシストに打ち勝ち、一夏の白式と組み合ったのにも関わず、白式のアクチュエータやモーター駆動をねじ伏せ、逆に取り押さえてしまう。
『アンタ、本当に人間か!?ISを逆に取り押さえるなんて!?』
『笑止。そのようなもので俺を止められるとでも思ったか?聖闘士は千名の兵士に勝り、一人で城を崩す、多少のカラクリなどは物の数ではない』
そして、一輝は瞬間的に小宇宙を燃やし、威圧する。一夏はその瞬間、鳳凰の幻影を見た。次の瞬間、操縦者の意思ではないのに、ISが勝手に解除されてしまい、コールを繰り返しても再起動できなくなってしまう。パニックに陥る一夏だが、箒はすまなさそうに言う。
「……すまん。だが、アテナが呼んでいる以上、行かねばならぬのが聖闘士としての宿命。分かってくれとは言わん…」
箒もその瞬間、当時における守護星座『射手座』の幻影を見せる。
「なんなんだよ、お前たちのいうオリンポス十二神って!なんなんだよぉ!?」
「私はオリンポスの神々に忠誠を誓いし身、すまない、一夏…。私は行かなくてはならない…」
「箒、待てよ!!おい!!」
「見苦しいぞ、小僧。箒の気持ちがまだわからんのか」
「アンタ……!」
睨みつける一夏だが、一輝の風格の前では駄々をこねる子供のようでしかない。一夏はこの次の瞬間、箒が纏ったものに己が目を疑う事になった。それは……。
――ケンタウロスを象ったオブジェが分解し、甲冑のように箒の身を包む。黄金の輝きを発し、黄金の翼を持ち、将来的に星矢に継承されるであろうそれこそ。射手座の黄金聖衣。暫定的に継いだだけだが、彼女も装着者としてアイオロスの遺志に認められし一人。黄金聖衣の中でも『アテナを守る意思を持つ者にしか装着を許さない』という、まさに勇者にのみ許されし聖衣である。
『行こうか、一輝』
「ああ」
一輝が形式上の礼を取り、箒は自らの意志で太平洋戦争の戦場へ向かう。へびつかい座の聖衣を継いだ『東せつな/キュアパッション』とはこの後に面識を持つわけだ。箒はIS世界出身者(黒川エレンもIS世界を経て転生しているが、元々は妖精であったため、ノーカウントである)では唯一、黄金聖闘士になった人物であり、魂がシンフォギア装者とほぼ同一のものである事から、アガートラームのシンフォギアにも適性が元からある。それを差して『稀な逸材』と評されたという。
――『扶桑では、反戦運動で軍人への風当たりが厳しくなり、地方で入営した職業軍人が任地の周りに邸宅を構える例が増加傾向になっています。扶桑の天皇陛下はこの風潮を憂慮しており……』――
プリキュア一同が見ているTVで報じられる、扶桑の地方で『職業軍人』となった者が邸宅を基地の近くに構える事例の増加。反戦運動の浸透で故郷に居場所を失った軍人達が1946年以降、基地の近くに邸宅を構える例が増加していく。扶桑軍人は『正規軍人』という言い方を使っていたが、『軍属』を差別しているという批判が生じ、扶桑は実に困っている。また、21世紀以降の意味合いのほうが普及し、軍隊用語の意味合いが変化したのもこの頃である。地方でウィッチになったらなったで、腫れ物に触るように扱われるので、そのまま軍隊に志願するケースが減少傾向にあった1940年代後半。日本や各国からの義勇兵を受け入れる方が前線にいるウィッチの経歴の多数派になり、海軍兵学校/陸軍士官学校/陸軍幼年学校で教育された生え抜きの将校ウィッチは少数派になった。それらに代わる教育機関である統合士官学校卒のウィッチが軍に現れるには、日本の2020年代半ばまで、ウィッチ世界での1950年代半ば以降(第一期生が教育を修了する時期)を待たねばならないため、世の中での軍人の扱いの激変に耐えられなかった現役ウィッチ達が相次いで軍を去った事もあり、ウィッチ兵科の将来的解消は1947年の時点では避けがたくなっていた。ただし、高給取りである事は変わりなかったため、集団就職が行われたのも事実だ――
「ウィッチ世界は色々と大変だねー。価値観の激変の時代を迎えてさ」
「史実の戦後の時期に入るからな。これからは扶桑のウィッチと言えど、甘い汁は吸えなくなる証だろうな。無言での血の献身が理想にされるだろからな」
反G派が大義名分に掲げていた『政争の具にされない』という言葉だが、1943年以降からは実質的にウィッチは政争の具になっていた。統合戦闘航空団の存在がそうだ。統合戦闘航空団が統廃合された理由はこの『政争』や派閥抗争を起こさせないようにするためだが、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケが私情でそれを起こした事は問題視され、ミーナはその責任を取り、ダイ・アナザー・デイ後半~デザリアム戦役は降格し、大尉として過ごし、デザリアム戦役の戦功で少佐へ戻った。元は中佐だったので、まだ元には戻っていないが、本来はガランドの後継候補を謳われた身である事、501の隊長であったことで、人事的にケチのついた人員にしては、丁重に扱われている。(将官にはなれなくなったが、501隊長であった経歴から、定年後の年金と恩給は将官相当である事は保証されている)
「のぞみはこれから、どうすんだろう?」
「戦争が終わったら、統合士官学校の教官になりたいそうだ。ただ、正式な転属は受理されないから、出向という形だろう。資格はクーデター直後に取得したらしいからな」
「あいつが教官ねぇ…」
「本当は予備士官になって、教職を目指すとか言ってたが、日本の文科省が『予備士官は教諭資格は取れても、正規の教諭にはなれない』ってしたんだ。それで話が流れてしまって、しょうがないから教官に切り替えたそうな」
文科省と日教組などは扶桑にも手を回し、軍事教練などを廃止させ、ウィッチ候補生をも教育現場から締め出そうとした。だが、流石に『それは不味い』とストップがかかった。学校教練についている女性将校は元ウィッチ。つぶしが効かないために、その仕事で軍人としての余生を過ごす者は多く、1945年当時、全国の女子学校に派遣されていた将校は大勢いた。それをいきなり無役にはできない上、1945年当時に陸軍幼年学校、陸士、海兵、海軍予備員含め、4600名を超える者が在籍中、学校教練を受講中の候補生と関係者も入れれば、有に10000人近くなる。流石にこれだけの人数を市井へ放逐する事は憚られ、高等工科学校を作り、10代半ば以降の年齢の候補生の受け皿とし、陸軍幼年学校在籍中の一桁代の生徒は工科学校予科という形で、そのまま面倒を見るしかなかった。予備士官制度の変更で中島小鷹が用意させていた転職の話が立ち消えになったのぞみは教官職を目指すことで、クーデター事件で死んだ台場大尉の弔いをする事を決意。1948年度以降はエディータ・ロスマンの史実での役目を継承する形で、ひかりの教官をしていた。
「エディータ・ロスマン特務少尉が教官の役目を嫌がって、ヤツに押し付けたんだ。ま、ロスマン少尉は史実での教え子の事を突かれて、教官職に興味を失くしたと言っていたから、あいつにやらせるのは必然的かもしれんな」
ロスマンは別世界に送り込まれてからは、やんちゃ坊主的なスケバンに変貌。個人でキ44を購入し、学ランを羽織るようになっているため、父親との軋轢もあり、教官職に戻る気はなかった。これに困惑したグンドュラはのぞみにひかりの面倒を見させるというウルトラCを発案。黒江をして呆然とさせた。もっとも、のぞみは自分の先輩に『九条ひかり』がいるので、グンドュラに抗議したが、グンドュラは『仕方ないだろ、先生が引退したんだから。黒江さんから聞いたが、お前、教育志望だろう?』と抗議をスルーした。と、いうわけで雁淵ひかりはエディータ・ロスマンとは師弟関係にならなかったが、夢原のぞみと師弟関係になった。雁淵ひかりに似た声の妖精が花寺のどか/キュアグレースのパートナーであることを考えると、けして突飛なアイデアではないのが分かる。その辞令が下ったのは1947年12月。ひかりの姉である雁淵孝美もこれには困惑した。
――1947年12月――
「いやぁ、その…すまん。俺がお前の妹の教官になってな…」
「……先輩、ジョークはやめてくださいよ」
「グンドュラさんがそんな下手なジョークなんていうタマか?」
のぞみは素体の錦が孝美より入隊年度が旧いことから、孝美にはタメ口でありつつ、錦の口調で接していた。(普段のアホの子な口調では舐められるとの判断から)
「先輩ぃぃぃぃぃ~~!!う、う、ウチの妹に変な事教えないでくださいよ!!」
「だーーーー!落ち着け馬鹿!こう見えても、過去生は教職だったんだぞ」
「普通の学校の先生と軍の教官は違うんですよ!?」
「お前なぁ。俺は元テスパイだぞ」
「す、すみません…」
この時ののぞみは空軍の新しい軍服を広報する帰りであったので、陸軍時代の軍服を着ている。軍服を夢原のぞみの姿できちんと着ている事は珍しい。
「あれ、珍しいですね、軍服姿ですか」
「新しい軍服の広報写真を撮った帰りなんだよ。プリキュアともなると、広報に駆り出される事が多くてな」
「でも、先輩、驚きましたよ。プリキュアだったなんて」
「聖闘士のお前に言われてもなぁ。新しい軍服は空自のマイナーチェンジで決まった。本当は米空軍風のに決まりかけてたんだが、連邦体制下だろ?」
「なるほど」
「あ、拳銃は士官なら、届け出出せば私物使用が許されたよ。ケイ先輩のソードカトラスが好評で、その流れだって」
「ケイ先輩、あんなのどこで改造したんですか」
「先輩曰く、使いやすいようにいじっただけだとよ」
圭子の愛銃『ソードカトラス』は1943年以降のケイのシンボルであり、扶桑きってのガンスリンガーとして名を馳せつつも、ならず者と侮蔑される事がある彼女の存在を知らしめるアイテムである。圭子の偽名が『レベッカ・リー』である事、事変当時には江藤に『兵隊やくざ』と言われたこともあるタトゥーを時と場合によってハッタリに使うことから、ウィッチ世界のある世代の扶桑ウィッチにベレッタが流行った一因とされる。また、マルセイユが他の世界と違って、圭子に従順なのは、1942年の冬頃に報告書を丸投げしようとしたら、ドスが効いた声で『報告書くらい、テメェでやりやがれ!!』と怒鳴られたかららしい。マルセイユは一見して傍若無人そうだが、この世界では挫折があった事、圭子が戦闘要員として現役であることから、意外に真面目になったところと、圭子の好き勝手ぶりの尻拭いに奔走するという一面が生じている。そのため、バルクホルンとの仲は自然と良くなり、エーリカ相手にムキになる事も減っている。
「グンドュラは狂ったのかねぇ」
「エーリカ、あんたねぇ」
「だって、お前だろ、ノゾミ。あたしにやらせてくれりゃ、鍛えてやるってのに」
「あんた、過去生でマルヨンの教官だった時、候補生の心、何人折ったか」
「ありゃ、若い連中に使わせられなかったのに、採用しちゃったからだよ」
ハルトマンは過去生でF-104が現役の時代に教官であったが、スパルタ教育すぎたので、候補生の心を折る事例が多く生じ、問題になった事がある。鬼教官と怖れられた時期もあるため、ハルトマンは意外にストイックに物事に打ち込む一面があった。
「あんなの(マルヨン)、空自みたいな機械化してんじゃないのってくらい正確に操縦出来るレベルじゃないと危なくて乗せられないよ。だーから、ハン(F-100)にしろと…」
殴り込み事件からしばらくたったが、まだ愚痴るハルトマン。黒江と山本五十六の仲裁で運用マニュアルの日本連邦との共通化などで今回は事故率は下がったが、カールスラントとしては低空侵入に使える機体(ストライカー)を欲していたのも事実だ。
「まぁまぁ。こいつの妹を鍛える事になったんだけどさ、能力が接触魔眼でね…」
「っちゃー…ウィッチとしちゃ、『外れ』だなぁ」
ハルトマンも接触魔眼は死傷率の高さから、外れと評した。ハルトマンがそう断ずるあたり、レシプロ戦闘機時代でも相当な死傷率だったのがよく分かる。
「魔眼は当たり外れ大きいからなぁ。カリブチ、お前の絶対魔眼もだけど」
「扶桑ではあたり扱いだったんですけどねぇ…」
「覚醒はトモコのようなのを言うんだよ。テツコの覚醒のもっと上の奴だけど、なんで、他の統合戦闘航空団の連中が知ってて、ミーナが知らんかったんだろう?」
「ミーナさんの志願した時期、エクソダスの真っ只中だったからなぁ。それじゃ?」
「あと一つ。江藤さんが軍機にしちゃったんですよ、あの固有魔法」
「は?なんで?」
「私も大先輩が江藤さんを問い詰めてるところチラッと見ただけなんですけど、天狗にならないように…ってことで」
「は?馬鹿らしくない?」
「ウチは集団主義的なのが強かったんですよ」
孝美もその認識であったが、実際には覚醒魔法は若本のそれが最高位とされていた事、智子のものは髪の色や瞳の色も変質し、ストライカー無しで飛べるなどの点から、覚醒系と別と解釈された事、安土時代の禁術に似ていたからだという。実際には覚醒の更に上位である『変身』であり、魔法つかいプリキュアのそれと似た原理とベクトルの変身である事がキュアフェリーチェによって明らかになった。その事情を考慮すると、智子にはプリキュアの素質は確かにあったのだ。(その素質のおかげで、智子はキュアピーチへの変身が叶ったとも)
「いや……そうとは言い切れないなぁ」
「どういう事?」
「去年、先輩達が休暇中に事件に巻き込まれたって言ったろ?あの時、先輩達、プリキュアになれてるんだよ」
のぞみは大決戦の事を公にした。その時に黒江は自分に、智子はキュアピーチになっていた事を教える。
「例によってやり方はアレだったけど、一応は正義の味方してたんだよな、先輩達。だから、あたしもこの間にやったんだけどさ」
「あ、あはは……」
彼女自身もZEROとの融合から間もない頃に大暴れしたので恥ずかしそうだが、師弟関係は争えないようで、本質的な思考回路はどこかで似ている。それをなんとなく悟った孝美とハルトマンは思わず、乾いた笑いが出るのだった。