ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第百十二話「扶桑のてんやわんやと三人のプリキュア」

――扶桑は結局、超甲巡の量産で日本と揉めたため、伊吹型甲巡を建造した。同艦の空母改装が取りやめになったからだ。ウィッチの軍事的価値が低下した事、ジェット機の艦載機化で第二次世界大戦型軽空母そのものの価値が陳腐化した事による。ヘリ空母にするにも、日本型軽空母では天井が低いため、航空輸送艦としても価値が見いだせなかったのも空母改装が見送られた理由である。建造が比較的に進んでいた伊吹はそのまま重巡洋艦として完成させるが、その同型艦についても同様の措置が1946年に取られた。伊吹型はこうして、軽空母としてではなく、重巡洋艦として生まれた。高雄型重巡洋艦の代替で、もう一グループの追加建造が決められたのは1947年の事だ。建造中に設計変更され、デモイン級を更に上回る武装と装甲が施された影響で排水量は大幅に増加し、25000トンを超えてしまった。雷装は対潜魚雷に変更され、ミサイル兵装が施されているなどの特徴を持つ。デモインを更に超える装甲を施す事で明治終わり~大正初期の戦艦並の排水量に達したため、『戦艦造ったほうが安いんじゃね?』という声まで生ずることになった。(近代武装と電子装備を充実させて量産したため、八隻分の費用を全て合わせると、超甲巡より高く、大和型並に達した)とは言え、デモインという重巡洋艦の最高峰に対抗するための高額化は仕方がないところであり、潜水艦の整備にそれほど予算が割けないウィッチ世界特有の事情が絡んでいる。伊吹型は史実で設計が二転三転して空母になったため、日本側が高雄の旧式化を強調し、超甲巡のコスパを悪いと断じ、伊吹を甲巡にしたのが正解である。空母化した場合の図面は完成していたが、スペックが二次大戦中の軽空母の域を出ないため、日本側には魅力がなかったのだ。(ただし、日本型軽空母唯一のアイランド型であり、搭載機は27機前後という点では特筆すべきものである)軽空母を活用せず、雲龍型に航空輸送をやらせることに文句が出ていたが、防衛省背広組にとっての空母は米海軍の超大型か、シャルル・ド・ゴールのような60000トン級であり、費用の無駄とされた。実際は雲龍型でも『インヴィンシブル級航空母艦』よりは大きく、同級のような運用も可能であった。背広組は日本軍兵器については本での評価を鵜呑みにするところがあり、そこがダイ・アナザー・デイから現場を振り回しているのは否めなかった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――1949年までに連合艦隊は戦艦の世代交代を完了させ、巡洋艦を超甲巡と甲巡の組み合わせに変更し始めた。駆逐艦が戦後世代護衛艦タイプへ切り替わりつつあるため、旧世代化した空母の更新が切望された。だが、空母そのものの大型化が顕著になり、日本側の欲しがる空母が超大型である事で建造期間と訓練期間が長期化したため、攻勢予定が更に延びる見込みとなった。だが、旧世代化と言っても、当時に30000トン超えの空母を大規模に運用できるノウハウは文字通りに日本連邦のみが有しており、艦載機の旧世代化を差し引いても、ウィッチ世界の最高峰に近いレベルは維持していた。また、空母が後衛、戦艦が前衛兼被害担当というドクトリンの確立に伴い、戦闘システムの近代化が進み、M粒子散布下に対応可能なシステムになった。ウィッチの従来型戦闘様式が駆逐されたのは、怪異相手では無くなったからだ。とは言え、個人戦闘力は今まで以上に重視されるため、45年以降、芳佳の持つ才能がクローズアップされる。出自も宮藤一郎技師の遺児であり、経歴も現在進行形でスマイルプリキュアのリーダー格と華々しい。それでいて、現状のウィッチでは最高峰の魔力というチート級の能力には批判も出たが、当人は『持って生まれちゃったんだから、文句言われてもなー』と気にしていない。それでいて、集団戦に容易く適応できる。そこが芳佳が海軍出身の医務官でありつつ、依然として航空兵資格を持ち続けている事が許される理由である。ウィッチ兵科の存在意義が薄れた時代、強襲揚陸艦の直掩要員に振り分けられつつある中、64Fが自前の艦艇で艦隊を組んだ事は賛否両論であったが、正規空母が大型空母のみにされ、ダイ・アナザー・デイ後は雲龍型が初期艦を除き、他用途へ転用されたり、軽空母が退役させられ、ウィッチの居場所づくりに海軍が難儀していた時代であったため、空軍艦隊は歓迎された。いくら未来空母を有しようが、実働数は少なく、二隻は沖縄防衛のためのプラットフォーム化されるため、追加購入が検討されている始末だ。他国が軍備刷新にストップをかけられていった時代であるため、日本連邦はウィッチ世界で孤独に軍備刷新に務めるしかなかったが、それも連邦内では抑制派が優勢であるため、人的資源の貯金を使うしか均衡を保つ手段が見いだせず、それも今後の数年で尽きると予測されているため、目立った軍事行動が取れないという事情がある。ウィッチ信仰が薄れたのも、ダイ・アナザー・デイでのサボタージュが報じられたのと同期している――

 

 

 

 

 

――1949年になると、各国海軍の現況は悪化し、日本連邦が財政難のブリタニア連邦に代わる形で連合国のトップに登りつめたが、日本と扶桑の温度差は殊の外大きく、軍への職業差別が現れた。これは扶桑には予想外の結果であった。だが、ウィッチ世界ではウィッチの雇用の受け皿としての役目が軍や海援隊にはあったため、ウィッチの社会的地位の低下が危惧された。64Fはダイ・アナザー・デイの戦功で英雄部隊と讃えられていたが、人材と機材の独占感から、反感も買っているのは事実だった――

 

 

――休暇中のキュアメロディとキュアリズムを迎えに来たのはキュアスカーレットだった――

 

「やぁ、スカーレット。久しぶり」

 

「リズム、貴方……。キャラが変わっているような」

 

「君はあまり変わってないじゃん?」

 

「私は別人格という形になりましたから」

 

とは言うものの、能力が共有されるようになっているため、モードレッドの人格がメインの状態で変身した場合は粗野な口調になるが、モードレッド曰く『恥ずい』とのことで、この時点では超ド級のレアケースである。

 

「ふーん。でもさ。君、どうやって、記憶と能力を取り戻したのさ」

 

「モードレッド卿の人格にこの体の本来の持ち主であるペリーヌが反感を感じ、仲間を守ろうと思った時に、私は『目覚めた』のです。のぞみが目覚めてから、それほど経たない頃ですわ…」

 

スカーレット曰く、自分が目覚めたのは、怪異との戦闘で501基地が攻撃を食らい、坂本が負傷した時(ちょうど芳佳が不在の日だった)にペリーヌが『ジャンヌ・ダルクのような『誰かを護れる力を強く欲した』時、トワは目覚めた。そして、気がついたら変身した姿を取っていたと。(黒江達に事後報告となったのは、その日の事情によるものだ)

 

「それで怪異相手に無双?」

 

「恥ずかしい限りですが、その通りですわ。坂本少佐も驚いていましたわ。ミーナさんのことでゴタゴタしていた時期でもありましたし」

 

キュアスカーレットはオリエンタルな着物風のコスチュームを持ち、炎(情熱)を司る『赤のプリキュア』の系譜を正統に継ぐ者である。ペリーヌは自身に眠っていたさらなる人格が『プリキュア戦士』である事に歓喜し、モードレッドでも動きにくい局面では、トワに体を委ねている。太平洋戦争の時期はまさにそれで、ペリーヌとしてはガリア議会の議員に転身しているし、モードレッドとしてはガリア軍が扱いを決めかねているせいか、まだ無役である。そのため、太平洋戦争には『紅城トワ』として参戦しており、扶桑軍に籍もある。

 

「扶桑軍に籍を作るのは一苦労でしたわ。日本連邦軍の人事部のお偉方にハニートラップを……」

 

「ヒュウ♪やるね」

 

「他に方法がなかったのです…。不本意でしたが、ハニートラップでたらし込むのは日本人には思いの外、効くのですね…」

 

「お偉方って、勉強しかやってこなかった連中も多いからね。特に日本で官僚とかしてる人って弱いんだよー。君も非合法な手段使ったのね」

 

「麻雀を覚えるのに苦労しましたわ。日本人にはチェスは馴染み薄いと言いますし」

 

「日本人は将棋だもんねー。麻雀でブロマイドでもかけたのかい」

 

「ええ。はやてに『それがてっとり早い』と言われまして」

 

(あの子、同志増やす気だなー?凝ってるとかいうし)

 

「それはそうなのですが、怪異の大型がデュアルコア持ちで、プリキュア・スカーレットプロミネンスでも焼き尽くせなかった時は焦りましたわ。メロディが輻射波動で倒してくれなかったら、かなり危なかったのです」

 

「あれは内核まで炎が届かねぇのが原因だったからな。その点、あたしの輻射波動なら問答無用で破壊できる。だが、理想的なのは宝具のパワーか、光子力エネルギー、あるいはゲッターエネルギーをぶち込むことだ」

 

「卿から許可は得て、これを今後は使うつもりです」

 

「クラレントか。お前なら本当の力を使えるかもな」

 

「その可能性は言われましたわ。今は訓練中で」

 

「剣はうちには達人が大勢いるしな。習っとけ。示現流、飛天御剣流……」

 

「技が決め手にならないだろう事はだいたい予測してたよ。それ以外の技能は磨くに越したこたぁないよ」

 

「黒江さんはどこであの技を?」

 

「あの人はオリンポス十二神を守護する闘士の最高位だ。小宇宙に目覚めないと、同じ領域に立てねぇよ。聖剣持ちだぞ。ミーナさんも前に顔面蒼白だったが、あの人が扶桑で十指に入る猛者なのは、戦艦も斬るってんで、名前が知られてたからだよ」

 

黒江は転生を繰り返した結果、斬艦刀と聖剣を手に入れ、扶桑で十指に入る達人と評価されるようになった。聖闘士になった後、山羊座のシュラの後継になったのも自然な流れである。キュアスカーレットも黒江の剣技に関心があるようだ。その技能は調に引き継がれ、彼女の会得した『龍王破山剣・逆鱗断』及び『龍王破山剣・天魔降伏斬』の拠り所ともなった。(それらはのぞみもデザリアム戦役で会得している)

 

「なるほど……」

 

 

――当時、扶桑は福祉政策の充実を無理強いさせられ、戦争遂行に多大な支障をきたしていた。軍への職業差別が社会的に生じたため、志願定数を満たせない状態である。この状態が数年続いており、軍部はウィッチ兵科の現状のままでの維持を1947年には正式に諦めている。皆、社会的ステイタスを満たせなくなった軍に用はないという事だろう。日本連邦はその穴埋めとして、自衛隊の幹部自衛官を太平洋戦争に少なからず関わらすことになる。震電や橘花などをボツにした償いか、震電改の開発には特段の制限は設けなかった。それが功を奏し、同機は当時の水準からは抜きん出た高性能機になって誕生したのである。その事が1949年に報じられると、(実機の方だが)量産を考慮していないと批判された。だが、扶桑のバックには未来世界がついているため、量産の見込みは充分にあった。コスモタイガーを部隊によっては保有していたからだ。未来世界には『歴代のガンダム』を始めとして、量産考慮外のワンオフモデルがごまんとあるので、震電改が時代を超えた姿をしているのはまだかわいいほうである。49年になると、敵方にM47戦車などの新兵器が現れ、扶桑は新戦車や新小銃などの普及が遅れていたため、陸では攻勢に出れない有様だったのだ。それを補うための未来兵器だが、導入に反対する声も大きく、結局は超人頼りな戦場になっていた。プリキュア達に現役時代を凌ぐ戦闘能力が求められた理由は日本の起こしまくった不手際の尻拭いをさせるためであった――

 

 

 

 

――日本が扶桑の信心の拠り所の多くを科学で打ち砕いてしまったためもあり、ウィッチへの尊敬の念は扶桑の人々から薄れ始めた。農村地域では、軍への供出を嫌がった者たちによって、ウィッチが毒殺されてしまう事態も発生し、社会問題になっていた。玉音放送以後の集団就職は農村地域が『厄介払い』に送り込んだ者たちであるため、士気も能力も使い物にならない。1949年当時の前線にいるウィッチは1943年以前から在籍中の古参兵か、各国の義勇兵である。そのため、四年あまりでウィッチの平均年齢は20代半ばにまで高齢化。その一方で新型ストライカーは生産歩留まりが悪い状態が続いており、第二世代宮藤理論式がかつての第一世代理論のようには注目されなかった理由の一つになる。ジェット化と電子化による調達費の高額化と重装備化による運用側の負担増も大国以外への導入が遅れた理由だ。それが解消されるには1950年代後半頃にオラーシャが起死回生をかけて開発した『MIG-21』ストライカーの登場を待たねばならない。同ストライカーはオラーシャ空軍中興の礎と評価されるほどの名機で、以後はオラーシャがカールスラントに代わる技術開発の最前線の一つに登りつめ、21世紀までには軍事技術開発的な意味合いで、日本連邦のライバルとして成長していく。それも一つの帳尻合わせと言えた――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――64Fは自給自足体制を整えつつあった。食料の軍隊への供給量が政治圧力で以前より減らされる(名目上は自衛隊との規格統一、軍隊の食料供給の優先権の廃止など)見込みであったため、ドラえもんのひみつ道具『畑のレストラン』を用いての自給自足体制を構築し始め、供給源の一つとして、野比家の所在するマンションの屋上の庭園でそれらを栽培していた。――

 

「のび太が気ぃ使ってくれて、食料を供給してくれる事になった。持ってていいそうだ」

 

「あの、どこからどう見ても、ただの大根のようにしか…」

 

のび太の栽培する庭園で栽培されているそれは、どこからどう見ても大根であった。キュアスカーレットは困惑するが、キュアメロディは得意げにその大根をカパッと割る。すると、中に入っていたのは海軍カレーであった。目を丸くして驚くスカーレット。

 

「えぇ!?あ、あの……だ、大根の中にカレーライスが???」

 

「度肝抜かれたろ?ドラえもんのひみつ道具で、遺伝子工学だかをフル活用して生み出された『畑のレストラン』だ。せっかくだ、お前も食ってけよ」

 

「は、はい…」

 

困惑しつつも、メロディに促され、好みのものを選び、大根を食事用のテーブルの上でカパッと割ってみる。すると、どういうわけか、ビーフシチューがライス付きで入っていた。

 

「ど、どういう原理ですの……これは…?」

 

「深く考えんな。ドラえもんの道具に理屈は通用しねぇ」

 

「リズムは食べないのですか?」

 

「あたしはコンビニ弁当で済ませちゃったからね。デザートは食べるけど」

 

と、いうわけで一同は2020年の春にさしかかる二月下旬頃のある日の昼食を屋上庭園の飲食スペースで済ませた。のび太がドラえもんやスネ夫達に管理を任せている『畑のレストラン』を栽培しており、和洋中、デザート。一通りのメニューは揃えられていた。

 

「すごいですわ、あの方の道具は…。大根にあらゆる種類の食料品を……」

 

「元は食料危機に備えて作られたそうだが、統合戦争で失われたそうだ。だから、統合戦争を仕掛けた連中はバカモノ扱いなんだよ」

 

 

「当時の記録が全部は残ってないそうだ。反統合同盟側が戦争責任を恐れて、当時の記録を破棄した上、時空融合現象も重なって、文明が一気に後退したからな。軍事は進んだが、民生分野が数十年は後退した。」

 

「なぜそこまで」

 

「さーな。反統合同盟の連中は日本連邦が世界を手中に収めるのを嫌がった上、地球連邦の名のもとに文化を侵食されるのを恐れたからな。何十年も戦争して、やっと収まったと思えば、一年戦争からの戦乱期だ。だから、ジオンは嫌われ者なんだよ」

 

「スィートウォーターとサイド3はそれを?」

 

「あそこはジオニストの巣窟だからな。宇宙生まれの中の過激派はほとんどがあそこの出身だ。頭オカシイぜ」

 

ジオンは一年戦争後、地球が自分達に開放されないことなどを理由に戦乱を起こし続けたが、波動エンジンとフォールド機関の登場で宇宙開発が外宇宙に達すると、ジオンの存在そのものの魅力が薄れ、デザリアム戦役でついにネオ・ジオンの命脈に終止符が打たれ、サイド3の自治権も(予定を早めて)放棄され、移民船団化し、直に旅立つ予定(反対派が移民船団化を推進する首長らを暗殺するなどのシッチャカメッチャカであり、遅延していた)である。それに納得しない不満分子はティターンズ残党に与するという本末転倒ぶりであり、連邦政府からも『自分たちの欲求不満をジオンやティターンズの名前で解消したいだけ』と冷ややかに見られている。それに巻き込まれたウィッチ世界はたまったものではない。しかし、彼等のもたらしたMSはウィッチから信仰を半ば奪ったが、一般人に怪異と戦える力をもたらしたのも事実である。ウィッチは時代と共に技能の一つとして落ち着いていく。これはニュータイプがジオン亡き後の時代に『パイロット適正が高い者』という意味合いの言葉へ変質していくのと同じで、元来の意味合いが忘れ去られるケースである。実際、ニュータイプは軍事でしか輝けなかったし、ジオン上層部も結局は『戦争の道具』(シャアもクエス・パラヤで同じことをした)としかみなしていなかった。そこもジオニズムが『ギレン・ザビという独裁者が生み出した狂気』として、第二のナチズムという扱いで歴史の中に消えていく理由である。

 

「彼等は何がしたかったのですか」

 

「第二のナチズムってやつだろうな。ギレンにはヒトラーにはない鋭敏な頭脳があったし、魅力を持っていた。ジオンは元からああなる宿命だったんだろう。一年戦争の生き残り達もデザリアム戦役で大半は散っていった。それがシャアなりのジオンの葬式だろうよ」

 

――デザリアム戦役は同時にジオン最後の戦でもあり、一年戦争からのエースパイロット達もロンド・ベルと戦い、多くが散っていった。のぞみは最終的にZEROと融合し、『神(プリキュア達にとっての『神』は初代プリキュアである)を超え、悪魔を倒せる』存在になった。だが、それはのぞみも公言しない。仮面ライダーやスーパー戦隊と違い、プリキュアの初代はどのような形であれ、『超える』事が公には許されない存在だからだ――

 

「のぞみはあの戦いでZEROと融合したろ?それは口外するなって言ってある。どんな形であれ、あの二人を強さで超えたなんて、批判されるに違いねぇからな」

 

「私達には、後輩でどうにかできないのは初代が倒すという不文律がありますからね」

 

「そうだ。後輩のあたしらに課せられた呪縛みてぇなもんだしな、あの二人の存在は。ZEROもいうなら、グレートやカイザーっていうZを超えるって位置づけの後発に押されて忘れ去られる恐怖がZを歪めさせた末に生まれたが、あたしらはその逆だろうな」

 

「ええ。初代から脱却しようとして、今度は少女ものの呪縛に嵌っていますものね、私達は」

 

「あの二人の存在を意識しすぎたのが、あいつの過去生の失敗だが、もしかしたら、あたしらそのものが一種の強迫観念に縛られてたかもしんねぇな」

 

キュアメロディはプリキュア達が抱える問題の本質に気づいていた。ZEROが『後発の存在に脅かされる恐怖』で悪魔となってしまったように、自分達は『偉大な先達』を余りに意識しすぎた結果、のぞみが生きていた世界で世代間対立が生まれてしまったのではないか?と。現世でも、古き良きスーパーヒロイン像を知る世代の人間からは、キュアエールを『虫が良すぎる』、『ポリコレプリキュア』と批判する声が出ているのは知っている。エールが聞いたら激怒ものだが、慣例を破らないほうが波風立たないケースもあるのである。

 

「21世紀以降に問題になったが、日本でエセフェミニストが増えたろ?そのせいで、アニメも感動の押し売り増えたろ?ああいうの嫌いなんだよ。子供向けアニメじゃ、特にそうだろ?泣けるだろー?って押し付けんの?過去生で差別されてた経験がある身としてはだな…」

 

「愚痴入ってませんか?」

 

「愚痴くらい吐かせろよ。ウィッチ世界は苦しんでんだぞ、ポリコレとか、エセフェミニストのせいで」

 

キュアメロディは過去生で差別を受けていた経験を持つため、感動の押し売りが嫌いであるところを見せる。枢木スザクと対立していた経験から、相手と戦わない限り、物事は変わらないという持論も持つ。そのため、ジオン公国の選んだ『選択』に多少の共感を持っていたのも事実である。また、日本のエセフェミニストの活動で自分達の今いる世界(ウィッチ世界)が迷惑を被っている事に言及する。実際、21世紀基準の倫理観が急に持ち込まれたことでウィッチ世界は混乱を強いられ、ウィッチの雇用そのものが危うくなったし、オラーシャでは各地で大虐殺がなされ、多くが扶桑、あるいは隣国のウクライナ(独立した)へ逃れた。ウィッチの現在の地位は歴代ウィッチの血の献身でようやく得られたものだが、それが21世紀世界のでしゃばりをきっかけに、一気に解体へ向かった事はウィッチへの反感が大きいことの表れでもある。

 

「逆に言えば、一部の者の思い上がりが人々に反感を持たれるには充分だった証なのですよ。あの三方の力が成し得たにすぎない事を『自分たちが威張り腐る大義名分』にして、高圧的に振る舞った。そのツケが回ってきたのですよ、メロディ。そして、三方が政治的に自分達の既得権益を脅かすと判断して、敵視した。伝説を作った側の人間に、恩恵を享受していただけの者たちが勝てると思ったのでしょうか?」

 

「扶桑でもあったろ?伝統を守るためってクーデター起こした馬鹿ども。別に、あの三人は伝統なんてこだわっちゃいない。受けた教育の関係で、一部の慣習(指揮官先頭など)は守ってるが、それ以外はちゃらんぽらんなくらいだよ。それが気に入らなかったんだろうさ。それに、ウィッチ界隈の最高権威のお気に入りときてる。それが伝統にやたらこだわる扶桑のウィッチの多数派があの三人とやりあった理由だろうよ」

 

扶桑のウィッチ派閥はクーデター後はそれまでの最大派閥が後ろ盾であった東條英機の国外追放や日本による事実上の粛清人事で解体された。派閥構成員の中には保身のためにY委員会に途中から媚び、それで粛清人事を免れようとした者もいるほどである。Y委員会系のウィッチはダイ・アナザー・デイで一気に注目を浴びた。サボタージュに与せず、侵略者に立ち向かった事が世論の共感を呼んだからだ。また、表立っては政治に関わず(実際はY委員会のもとで深く関与しているが)、実直な軍人である事を黒江達は巧みに演出し、Y委員会の権力を確固たるものに押し上げた。(実際に黒江達は政治に振り回された経験から、政治に関わる事は避けていたが、Y委員会の地位を確立させるためと、扶桑の国体を完全な議会制民主主義にさせるため、従来の悪習を一掃するためだと説得され、吉田茂などに請われ、この時期は政治に極秘に関与している)

 

「あの三人のバックに坂本商会や吉田翁がついている事を彼女たちは気づいていなかったのでしょうか?」

 

「年齢的に後方で教官か、事務仕事についてるはずだから、昔の戦功を顧みなかったのか、単にエクスウィッチと侮ったのか。たぶん、両方だろうな。そうでなきゃ、ダイ・アナザー・デイで、ウチの部隊を含めて、騒動になるかよ」

 

「隊長始め、何人かの幹部が揉めましたからね。一番の無知が隊長だったのは皮肉ですわね」

 

「あれこそ、隊長が同情を買う点だよ。本当に知らなかったからな。事の重大さを査問で知った後、それで今の人格になったからな」

 

「ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケは査問で精神的には引導を渡されたと?」

 

「そう思った方がいいな。肉体は別の精神のモノになったしな。あの人の元の精神への鎮魂のために、あの人の着るつもりだった衣裳を恋人の墓前に供えたよ」

 

西住まほは実直な人柄である。ミーナと違って、殆ど俗事に興味はない(武門の長になるための英才教育のためだ。ただし、生前と違って、器となったミーナ・ディートリンデ・ヴィルケの立場を継いだことを意識している)。そのため、ミーナが退役後に着るつもりだったステージ衣裳を『クルトの墓前に供えてくれ』と言い、シャーリーの手で墓前に供えられた。まほ自身は適性もあり、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケの軍人としての名誉回復に邁進し、太平洋戦争でそれを達成する。

 

「ま、前世の記憶が戻って、人間性は前世のものを選んだあたしらが言えたことでもないけどな」

 

「言えてますわね」

 

ペリーヌはシャーリーとは折り合いがいいとは言えない側面があったが、トワと響としては、文字通りに苦楽を共にした戦友であるので、良好な関係である。ペリーヌもそれは承知しており、トワに人間関係は一部を委託している節がある。ペリーヌはこの時期、モードレッドに戦士としての心構えを、トワにノブリス・オブリージュを学んでいく。ペリーヌは中佐に進級後の1949年に正式に予備役編入。議会議員としての道を歩む。その一方で戦士であり続けるため、表向きは『扶桑の戦災復興に従事する』という名目で扶桑に渡り、扶桑で紅城トワに肉体の主導権を渡し、日本連邦軍人の『紅城トワ』として太平洋戦争を戦うという、ウルトラCな入れ替わりをしている。ただし、いずれもシャルル・ド・ゴールとは折り合いが悪く、大統領就任後のこの時期においても現役時代同様に『将軍』と呼び続けているのは共通している。(ジャンヌ・ダルクとアストルフォといった英霊からも、その権力志向と偏執的とも言える愛国主義を揶揄されるほど、シャルル・ド・ゴールは権威主義的でもあった)

 

「この世界はウィッチ世界に何を求めてますの?」

 

「資源と労働力の供給地だろうな。自分達の基準にウィッチ世界を合わせようとして、日本が混乱を起こしただろ?あの失敗でこの世界の介入のトーンが下がったんだ」

 

「虫がいいですわね」

 

「それに、オラーシャ皇室が危うく、滅びかけただろ?あれで一気に気まずくなって、日本も自衛隊を関わらすことになったんだ。日本政府としても、自国のコミュニストやアナーキストが別世界の一国を滅ぼしかけたのは看破できなかったしな。左派がどうのこうのいうが、自分達の倫理を勝手に持ち込んで、現地を混乱させた責任を取らないで、ギャーギャーいうだけだ。ああいうのが本当の無責任だ。ルルーシュやスザクは責任とっただけマシだが…」

 

キュアメロディ(シャーリー)は日本の左派の無責任さを糾弾した。23世紀のジオン系勢力は『方便』にしろ、勝利後における大衆の権利は保証していた。それに比べ、彼等は『軍人を表舞台から失脚させればいい』と言わんばかりに、後は知らん顔。現地が如何に混乱しようが、関係なしを通そうとした。そこが彼らの自己満足と欺瞞の証明である。軍人はたしかに扶桑でも疎まれる存在にはなったが、ウィッチ世界は彼等無しに国土は維持できない現実がある。その相克の結果、『軍人街』というものが出来上がったのである。急激に生じたウィッチへの職業差別も問題になり、兵科解消と引き換えに、ウィッチのコミュニティ自体の維持は容認された。そうした世相で軍人への風当たりが強くなる時代、ウィッチの間でも相互扶助が必要とされたからである。太平洋戦争直後の第二次扶桑海事変でその傾向が緩み、1938年当時の状態にまで世論の感情が好転するまで、長く苦しい時代が続く。その間に人間不信になった軍人も多く、扶桑は長く、この時期に起こってしまった処問題に悩む羽目となる。メロディは前世で因縁があった二人を引き合いに出すが、その二人が遥かにマシなほどに彼等は無責任だったからだ。

 

「ソ連の歴代の指導者たちだって、もうちょいマシな考えだぞ?敵を作って放置じゃな」

 

「鬱憤溜まっていません?貴方…」

 

「アメリカ軍ってんで、日本の左派から目の敵にされりゃな。プリキュアになってるおかげで自由に動けるようなもんだし」

 

「リベリオン軍はそんな扱いなのですか?」

 

「米軍の圧力で緩和される前は南方の市街地にも出入りが禁止されてたからな。圧力で南方の新島内は動いてOKに緩和された。日本もアメリカと揉めるのは嫌がったからな。それで、南洋に限っては自由行動を認めたよ」

 

「災難ですわね」

 

「プリキュアやっててよかったよ、本当」

 

嘆息のキュアメロディ。自分がスイートプリキュアのリーダー格であることで、扶桑本土にも足を踏み入れられる事は幸運であったと話す。彼女たちは全般的にシンフォギアよりも高いポテンシャルを持ち、比較的簡単に最強形態へなれることから、似たポジションであるシンフォギア装者たちからはライバル視されている。(ただし、双方が聖闘士には及ばないのは共通しており、『壁』を超えることが共通課題である)

 

「聖闘士に比べれば、誤差の範囲では?」

 

「装者の連中もそう思ってるだろう。大決戦を知ってるプリキュアはあのポテンシャルの秘密を知りたがってるが、簡単にたどり着ける領域じゃねぇからな。」

 

「フェリーチェにしても、20年近くの時間を要したというのは?」

 

「本当だ。ZEROに神通力を奪われて、ただのプリキュアに貶されてから、ひたすら修行を繰り返して、ここ5年くらいで『ドワォ!』な領域に足を踏み入れた。その間に大学まで出た。その時間で得たものは以前以上かもな。シャインスパークとストナーサンシャインを撃てる。フェリーチェはストナーサンシャインのほうを使うな。真ゲッターの特性を受け継いだらしい。とは言え、マジンカイザースカルの特性も持つんだよな…」

 

「マジンカイザースカル?」

 

「マジンカイザーの模造品とも言われる、ガイアの光子力研究所らしき廃墟から発掘されたマジンガーだ。誰がどういう目的で造ったのかも不明な機体で、機体性能はZとGを大きく凌ぐ。ミケーネ帝国が作らせたマジンカイザー対抗の機体だったって推測は立てられてるがな」

 

「つまり、マジンカイザーが強すぎるから、別の地球に模造品を?」

 

「かもな。カイザーのZEROに対抗するために強化された完成型は『神を超え、悪魔も倒せる』が、スカルは『神が怖れ、悪魔が慄く』機体だ。その技をフェリーチェが使えるって事は、何かしらの縁があるとしか、な」

 

フェリーチェは『覚醒』後、インフェルノブラスター、トールハンマーブレーカーなどを持ち技として持つ。ストナーサンシャインと合わせて、プリキュア随一の強豪に登りつめたと言えるが、マジンカイザースカルと何かしらの繋がりがあるのだろうか。不思議に思う二人だった。

 

 

 

「『神を超え、悪魔を倒す』か…。ドリームとフェリーチェはそこにたどり着いた。経緯はどうであれ。それは誰にも否定できねぇよ」

 

メロディは『畑のレストラン』を食べ終わると同時に、そうまとめる。神を超え、悪魔も倒す。プリキュアの中では、ドリームとフェリーチェの二人が最初にいきついた答。それは近年のプリキュアの有り様とは相反するため、先輩後輩の少なからずとかちあいそうだと覚悟していると伝え、特にキュアエールの事を意識している事を示唆していた。

 

「過去生のようにはならないと思いますわ、私は。状況が状況ですし、倒さなくてはならない敵がいることは『あの子』も理解してくれるでしょう」

 

「だと、いいけど」

 

ドリームの過去生の経緯から、メロディからは不信を抱かれているキュアエール。本人が知ったら卒倒ものだ。スカーレットはどちらかと言えば擁護派であり、メロディを諌める。知らぬ存ぜぬうちに、先輩達から強い反感を持たれたキュアエールの事を想い、同情せずにはいられないキュアスカーレットだった。

 

 

 

 

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