ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第百十六話「プリキュア達の特訓、カールスラントの衰退」

――扶桑華族は史実戦後の評判が伝わり、結果的に没落する者、息女がウィッチでないために、嫡流が当主の座をつかみ損ねた(黒田家)という珍事に遭遇する家が続出した。その中で勲功華族が多い扶桑特有の事情が注目された。また、外征に明け暮れた時期がある織田幕府では反乱抑止の手段としての改易がされた記録が殆どない。何故か?織田幕府が開かれて間もない頃に明朝と李氏朝鮮が滅亡する大事件があり、織田幕府は有事即応体制を取らなければならなかった(議会制移行の際にウィッチ団は解散したが、竹井少将が枠組みを近代兵科として復活させたが、太平洋戦争の長期化で命脈が事実上潰える事になる。こうして、ウィッチは兵科としての価値を失ったが、即応性から学生による害獣(怪異)駆除を部活動やボランティア活動、場合によっては地方自治体による委託業務のアルバイトという形で対怪異即応集団には10代半ば程度のウィッチが活躍出来る余地はのこされた)からである。海軍はその時代からの伝統を持っていたが、クーデターの後に『近代海軍として、織田水軍と歴史を分けて考える』考えが主流になったため、織田水軍の名残りの風習は20世紀後半の時代で徐々に消えていくが、抑止力としての鉄甲船活用ドクトリン(近代で言う戦艦)は大和型戦艦ファミリーの抑止力としての運用という形で残った。そんな変革の時代の始まりが太平洋戦争である――

 

 

 

 

 

――21世紀世界にとってはステルス戦闘機の運用に一石が投じられた戦が続いた。ダイ・アナザー・デイでウィッチがF-35戦闘機を怪異と誤認して攻撃してしまう事件が相次いで発生した事から、怪異と区別のつく識別塗装がウィッチ達から求められた。それを受けて、ウィッチ世界に派遣される21世紀軍隊の軍用機には、それがステルス戦闘機であっても、怪異と間違えられないように識別塗装が特例的に施されることになった。(F-35への誤射を期に、敵味方識別装置のストライカーユニットへの内蔵が急がれた他、ウィッチへのステルス戦闘機の存在の周知が図られた。21世紀型のパッシブステルス前提の機種は特に怪異に類似した機影である事から、誤認が相次いだ。誤射で全損したF-35もあった。続く太平洋戦争でもそれが危惧されたので、この時代には敵味方識別装置が搭載された世代のジェットストライカーが主流となった)この時期、レシプロ前提で訓練された中堅世代が機種転換に手間取る一方、古参と新人が容易に機種転換を終えてしまうため、中堅世代はプライドが傷つけられ、軍から去る例が多かった。その中堅世代の代表格である志賀は太平洋戦争中は芳佳への贖罪意識からか、一応は現役であり続け、戦後に民間警備会社を興し、実業家として成功を収めることになるが、黒江たちとの和解は自身の最終的な所属部隊が本土防空部隊であった都合、退役直前にまでずれ込んだという。軍での最終階級は少佐であった――

 

 

 

 

 

――そんな事例があちらこちらで続出した事も扶桑のウィッチの世代交代が停滞した理由である。本来、事変世代から順調に世代交代を進めつつあったのが、ティターンズと言うイレギュラーで前線のサボタージュが常態化。ダイ・アナザー・デイでは騒動もあり、本来は教官として各地に分散配置が予定されたGウィッチを集中運用で投入する流れとなり、64Fの名が復活した。ダイ・アナザー・デイでは孤軍奮闘し、クーデター鎮圧にも寄与し、デザリアム戦役でも活躍した事で政治的立場は安定した。時が進むにつれ、歴代プリキュアの保護所的な側面も強まり、活動の方便を得るために『ふたりはプリキュア・スプラッシュスター』までのプリキュアの多くが64F隊員の扱いで在籍中であるという状況である。一部のプリキュアは任務の都合で不参戦だが、ロボットガールズとの模擬戦が行われていた。――

 

 

――模擬戦――

 

「ほう。若いのがやっとるな」

 

「小園のおっちゃん、厚木からわざわざ視察に来なくても」

 

「今度、評議会に呼ばれて答弁をしなくてはならぬのでな、ガハハ」

 

小園安名。ウィッチ世界では空軍中将に昇進した元・厚木航空隊司令である。史実の経緯から反乱予備群と見られていたが、源田実の理解者の一人であり、黒江たちの味方であり続けることで汚名返上を成し遂げた男だ。性格は豪放磊落の一言で、黒江からはおっちゃん扱いで、空軍の制服がまだ正式に作られていないため、海軍第三種軍装のままで勤務をしている。

 

「それで、F-20の採用を押し通したの?」

 

「うむ。日本側は実績のあるF-16をゴリ押ししたが、あれは元来は昼間戦闘機だからな」

 

「F-2でも造らせるつもりだったの?」

 

「おそらくな。そのベース機として、最新型でも造らせたかったんだろうが、扶桑の工業能力ではF-16の最新型はまだ造れんよ」

 

「あと6、7年は無理だね。それに、F-2に必要な炭素繊維強化プラスチックの実用化と安定化がまだできてないし」

 

「俺もそこを攻めた。肝心の炭素繊維強化プラスチックがなければ、F-2は造れないからな」

 

――日本側はF-2の扶桑での再生産を目論んでおり、そのベース機としてのF-16を欲したが、F-2の必要技術である炭素繊維強化プラスチックの実用化には戦時の青天井の予算を以てしても、1950年代以降と見積もられているため、扶桑は前線の要望もあり、ダイ・アナザー・デイで既に運用実績のあるF-20の採用を押し通した。F-16系が採用されるには、F-2の製造が可能となる時代を待たねばならぬため、当分は先の出来事であった。F-20は史実では不採用に終わったため、背広組は猛反対したが、実際にはF-16以上の高機動力を発揮し、ダイ・アナザー・デイでは幾多のレシプロ機をカモにしている。彼等はその戦果を『トップエースによる稀な例に過ぎない!』だと反論したが、のぞみやラブなどのジェット機のド素人と言えるプリキュア達が動かしても、充分に激戦を生き延びられるだけの機動力を発揮した事が示されると立つ瀬がなくなり、『F-16までの繋ぎ』という条件で採用を承諾した。事実上の敗北宣言である。ダイ・アナザー・デイで、F-20は64Fが『私的に入手して使用した』事は周知の事実であったからだ――

 

「連中は史実で実績のある機種しか造らせんつもりだろうが、それでクーデターになったという事は思い知ったはずなんだが。横空と審査部を解散させ、新型テストの役目を君達に背負わせたのはお上のご意向だが、部内ではかなり不満がある。部隊幹部にほしい人材があらかた君達のものになったからな。だが、お上のご意向だから、表立っては言えん」

 

「交流は拒んでませんよ、俺らは。日本はエース部隊を求めてるから、よりすぐりをここに集めた。分散配置で死なれるより、エース部隊にして突っ込ませるほうが費用対効果がいいとしてるからなんですけどね」

 

日本は史実の太平洋戦争で『エースの足を新人が引っ張って部隊を衰弱させた』とし、343空や台南空などの事例を引き合いにだし、エース部隊は何が何でも必要だとし、扶桑のめぼしい人材を集結させた。整備員も含めて。実質、編成がされなかった部隊の整備員や解散させられた審査部や横空の整備員達の行き場でもあり、64Fは航空軍単位に膨れ上がっていた。本土で新たに編成された育成部隊『極天隊』も組み込まれたため、前線未配置隊員も含めれば、扶桑空軍最大の規模である。宇宙艦隊を所管する役目もあるために、一部隊としては異常な規模に膨れ上がっていたが、ダイ・アナザー・デイでの孤軍奮闘の事もあり、お咎め無しである。黎明期の空軍で勝ち組になれるかは『ダイ・アナザー・デイのサボタージュに参加しなかったか、反対していた』、『クーデターに与しなかったか』にかかっていたため、経歴を粉飾し、当時の所属部隊を詐称する者も現れ、それはそれで問題になっていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――模擬戦の相手であるロボットガールズは全般的にプリキュアよりも強い者が多く、模擬戦開始間もなく、キュアミントとレモネードがZちゃんに撃破されていたりする。Zちゃんがキュアドリームのサンダーブレークで倒されたのが模擬戦を監督する担当員の操作する電光掲示板に示されると、ガイちゃんは想定内とコメントした――

 

 

「クロガネ頭じゃ、やっぱ無理だったか」

 

「たった二人しか倒せないようでは、ロボットガールズの面汚しですわ」

 

「ま、想定内さ。クロガネ頭はロボットガールズでも最弱…」

 

なんともひどいコメントである。だが、実際にZちゃんはスーパーロボットの基本であるマジンガーZのロボットガールズであるため、能力そのものは低めに入る。口は悪いが、能力はオーソドックスすぎて歯が立たない事が多く、ジェットスクランダーかゴッドスクランダーの製造を依頼していたりする。

 

「やれやれ。俺が行こう」

 

「グレちゃん、Gカイザー化したらさ、キャラがオレっ娘になったよね」

 

「うるさい!あの小僧に偉大な皇の力を見せてやるというのだ」

 

「ZEROにまけてね…?」

 

「うっ!」

 

グレちゃんはパワーアップで衣装がGカイザーのそれを模したものになっているが、Gカイザーは『初期カイザーレベルの能力になったグレート』という体裁の存在で、ZEROは『マガイモノ』と断じ、ある世界で破壊している。それを観測していたミネルバXは『純粋なマジンガーでない魔神皇帝が必要』と説き、ライオネル博士が説得し、マジンエンペラーGがグレートの正統後継機として作られた。Gカイザーが『グレートがカイザー化したら?』という疑問への回答なのに対し、マジンカイザーの後継機種としての側面も持つのがマジンエンペラーGである。しかし、ZEROのその一言を抜きに考えても、基礎ポテンシャルが真ゲッターロボクラスであるため、充分に強力なスーパーロボットである。ZEROに勝てない存在としての徒花であろうとも。それはシンフォギア世界での活躍で証明されている。

 

「し、しかしだな。真ゲッターと同等の力は出せるんだぞ!クソぉ、ZEROめ!」

 

グレちゃんはせっかくパワーアップしても、モチーフ元がZEROに倒されているため、ハッタリ扱いなのに我慢ならないようだ。もっとも、グレートカイザーはその世界においては魔神パワー『強化』を最大パワーで起こして生まれた偶発的な存在であり、ぶっつけ本番で投入され、相打ちで散った。ミネルバXはライオネル博士の助言で兜剣造を動かし、Gカイザーが持つ弱点を潰していき、真にマジンカイザーと並びだつ存在を生み出した。それがエンペラーである。

 

「で、どうなのさ」

 

「あのキュアドリームは俺が相手をしよう。プリキュアでありながら、俺たちと同じ魔神の力を使うなど……生意気な小僧め」

 

「なんか悪役チックだよー」

 

呆れるガイちゃんだが、ドリームを迎撃したのはグレちゃんである。カイザー化しているため、口調がオレっ娘化している。普段が根暗のボクっ娘である反動だろうか。

 

「グレちゃんか!その姿、皇帝の力を!」

 

「そうだ。皇帝の力は誰が持つべきか。それを教えてやろう!」

 

「なんか…、キャラ違くない?」

 

ドリームもつっこみを入れるが、グレちゃんは普段の根暗ぶりが嘘のような高慢ちきなオレっ娘化していた。声色も偶然の一致だろうが、錬金術師のキャロル・マールス・ディーンハイムとほぼ瓜二つであり、シンフォギア装者が聞いたら驚くだろう。

 

「どっかのカードバトル漫画にいそうな勢いでノリノリじゃん!鉄也さん、どういう教育してんだ?」

 

「う、うるさいッ!!」

 

グレちゃんは赤面するが、戦闘では冷静で、ゴッドサンダーで広域制圧を行う。ドリームはマジンカイザーの力を使っている状態なので、それを耐えきる。

 

『ルストトルネード!!』

 

『グレートトルネードッ!!』

 

ルストハリケーン系の技をぶつけ合うが、まったくの同等の威力で、互いに相殺される。

 

『トルネードスマッシャー!!』

 

『ターボスマッシャー!!』

 

グレちゃんが先に仕掛け、ドリームも応戦する。パンチ対決はグレちゃんが勝ち、ドリームはトルネードスマッシャーのグリグリ攻撃で態勢を崩す。

 

『ギガントミサイル!!』

 

『なら、これで!』

 

ドリームは追撃のギガントミサイルをブレストリガーの二丁拳銃で撃ち落とす。これはのび太の特訓の成果だ。

 

『ガイアの魔神の力か!だが、そんな鉛玉で俺が止められるものか!!』

 

『思っちゃいないさ!!だけど、千日戦争になるのは御免被る!』

 

そして、正統な魔神の系譜にはない技『トールハンマーブレーカー』を続けざまに放つ。グレちゃんは雷の魔神である自分を差し置いて、雷を放つ事に怒りが頂点に達する。

 

『ふざけるな、こぞぉぉ!!サンダーソーーード!!』

 

『なら、こっちは!エンペラーオレオールッ!』

 

グレちゃんはGカイザー最大技『サンダーソード』(ゴッドサンダーを纏った剣)を突き立てようとするが、ドリームはカイザースクランダーをエンペラーオレオールに変形させ、雷をその身に受ける。

 

『なんだとおぉーーー!?』

 

エンペラーオレオールがスクランダー状に変形し、加速。そこからグレちゃんも知らない突撃技となっていく。

 

『ぐ、グレートブースター!?』

 

『いいや、オレオールブースターG!!Gカイザーが持てなかった力だっ!!』

 

グレートブースターの発展系『オレオールブースターG』。物理法則の軛から解き放たれたオレオールブースターGの速度はグレートブースターを遥かに凌ぐ。グレちゃんは背中のスクランブルダッシュを吹かすが、オレオールブースターGの勢いは止まらない。グレちゃんはスクランブルダッシュのアフターバーナーを全開にするが、オレオールブースターGがぶつかった衝撃で大きく吹き飛ばされ、危うく、基地の管制塔に突っこむ寸前でやっと止まった。

 

「……参った。グレートブースターの上位技があるとは……」

 

「あたしの……勝ちだよ。よく受けきったね」

 

「普通の姿でのスクランブルダッシュでは壊れていただろうさ。ZEROに選ばれただけの事はある…」

 

Gカイザーのスクランブルダッシュは速度では真ゲッターロボと同レベルを叩きだせる。それを吹かしても、グレちゃんを数百mも吹き飛ばすオレオールブースターGの途方も無いパワーが窺える。

 

「つか、よく聞いたらさ、あたしの後輩に声似てない?グレちゃん」

 

「前にも言われたぞ、それ。お前の後輩に」

 

「ああ、キュアホイップ」

 

「そいつに言っとけ、偶然だとな」

 

「いや、最近多いんだよね。複数の世界に跨って同位体がいる子」

 

「知るか!!」

 

ムスッとするグレちゃんだが、キュアパルフェを思わせるところがあるため、ドリームはなんとも言えない。実際、スカーレットがフィーネの真の意味での転生体でもあった事が判明し、大騒ぎなので、グレちゃんがキュアパルフェの生まれ変わり疑惑も存在する。そして……。

 

 

――別の場所――

 

「なんでなんで!?いきなり変身してるのぉ!?」

 

立花響は困惑していた。キュアグレースに変身してしまったからだ。いきなりの出来事に混乱しまくりである。

 

「プリキュアになったんだ、喜んだらどうなんだ?」

 

「メロディ」

 

「様子を見に来たぜ。あのガキ、プリキュア姿でうろたえてんのか?」

 

「え、ええ…」

 

いきなりの事態であるので、響はキュアグレースの姿でうろたえまくっている。いきなり因子が覚醒してしまって強制的に変身させられた格好なため、先程からムンクの叫びよろしくのうろたえぶりである。キュアメロディは見かねて一発ぶん殴る。

 

「あだーーー!なにすんですか!」

 

「落ち着いたか?」

 

「は、はい。あなたは……」

 

「あたしはキュアメロディ。お前も目覚めたんだよ、プリキュアに」

 

「えーーー!?ど、どういうことですか!?」

 

「お前の心にある絆が力と繋いでくれたんだ。今は活性化されて間もないから、強制的に変身しただけだ。体に因子が馴染めば、任意で変身を解除できるようになるさ」

 

「な、馴染めばって」

 

「三日か四日くらいはかかるなぁ。体験者の立場でいうけどよ」

 

「え、えぇぇーーー!?」

 

個人差があるが、転生者のプリキュア因子が覚醒した後、体に馴染むまでのインターバル時間が存在し、任意での変身解除はできない時間が生じる。シャーリーは四日ほどかかり、その間はキュアメロディの姿で生活した。芳佳は三日、ペリーヌは三日半であるため、だいたいであるが、三日くらいがプリキュア因子が肉体に定着するのにかかる時間であると推測されている。つまり、変身した状態で最初に過ごす時間がプリキュア転生組にとって最大の難関であった(最大インターバルは存在そのものを改竄されたフェリーチェの数ヶ月である)。

 

「ああ、あの時の翼さんの気持ち分かったかも…」

 

落ち込むキュアグレース(立花響)。フロンティア事変の際、黒江のサウンドエナジービームを浴びてしまった風鳴翼がシンフォギアを強制起動させられ、その日から三日はミディアン音楽院を欠席せざるを得なかった事があったが、それを思い出した。ただし、プリキュア化しているため、全ての能力が飛躍的に向上しており、視覚なども含めれば、シンフォギアを纏っている時よりも格段に強化されており、聖闘士と戦えるだけのポテンシャルを得ている。

 

「でも、プリキュアの力なら聖闘士と戦えるぜ?」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「シンフォギアは身体能力を強化はするけど、視覚とかの感覚は強化しないだろ?だから、綾香さんにいいようにされたんだよ」

 

「あんたらの力なら、ばーちゃん達と肩を並べられるのか?」

 

「うんにゃ、上には上があるさ。あの人は聖闘士の最高位だ。本気を出されたら、あたしらだって、普通のフォームだったら指一つでダウンさ。それに五感剥奪とかできるし……」

 

「嘘だろ!?」

 

「嘘!?」

 

「黄金聖闘士ってのは、神と戦うために選ばれた聖闘士の最精鋭だ。本気なら光速以上で動けて、銀河も壊す技を撃てる。人によっては宝具の霊格を与えられる。綾香さんがそうだ。エクスカリバー持ってんだろ?」

 

「なら、なんで普通に軍人してんだ」

 

「元々のショーバイだし、聖闘士の技はおいそれ使っていいものじゃない。綾香さんはかなりの自由が許されてる立場だけど、それでも自重してるほうだ」

 

「あれでか?」

 

「あれでだ」

 

「…マジかよ」

 

「うそ…」

 

かなり好き勝手している印象の強い黒江だが、聖闘士の技そのものは使うことを自重していると語っている。特訓などで発奮させるために使うことが多いだけだとは本人の談だが、そうは見えないのが事実である。

 

「えーと、その姿だとキュアグレースって呼ぶべきだな」

 

「え、それで名前決まってるんですか」

 

「ああ。のび太の世界だと放映が始まってるな。『ヒーリングっど・プリキュア』。お前はその一員のプリキュアになったんだ」

 

「嘘ぉ!?なんだか実感ないですよぉ」

 

「大丈夫だ。直にプリキュアとしての記憶も徐々に宿るはずだ。お前は二つの属性を得たんだよ。リコと同じ、な」

 

「セレナちゃん、本当に戻る気はないんですか?」

 

「アガートラームはマリアが使ってるだろ?破片がもう一つあれば別だけど、精神はかなり変わってるから、生前の形態は取らないだろうさ」

 

「二つの力を同時に使えないんですか?」

 

「未知数だ。どうも今のを見てると、プリキュアのほうが優先されるようだしな」

 

「そう…ですよね」

 

「まだデータがありませんから、それはなんとも。とにかく、長い目で見ていきましょう」

 

グレースの一言にメロディとスカーレットは未知数だという。それは事実である。ともかくも、立花響はこの日から数日はキュアグレースの姿で過ごす事になったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――日本の粛清人事は扶桑の外務省などにも及び、史実の親独派や親露派の外交官が次々と中央から追放の憂き目に遭う光景はカールスラントやオラーシャ帝国外交部を恐怖のどん底へ陥れた。ある程度、自分たちの思いを代弁してくれる扶桑外交官の存在は両国の扶桑での権威を支えていたが、日本連邦設立後に民間が主導する形で外交官の大規模人員整理を行い、次々と頼りにしていた外交官が失脚していくと、窓口を理不尽に奪われた形の両国は史実の情報を武器に責め立てる日本連邦外交部に軍部や政府官僚の失態も重なり、なんら為す術がなかった。外交的にカールスラントは1949年には日本連邦のイエスマン化し、オラーシャに至っては、革命騒動のあまりのショックで鎖国さえ検討されたほどである。扶桑としても、両国について良く知る者があまりに追放されると、外交に支障が生ずるために日本に抗議した。地球連邦よりも日本のほうが『どうせ同じことやるだろうから、予防で追放!!』という事で質が悪かった。その屈辱から、復職を選ばなかった外務官も複数人生じ、扶桑外務省に混乱を強いた。だが、史実の杉原千畝外交官の一件で国民に失態をなじられ続けていた事や親独派が実権を握った結果、国が破滅した事をトラウマにする日本側としても、その汚名返上を願っていたために粛清は断行された。この混乱によるカールスラントとオラーシャの国威の衰退を後年、『1940年代政変』と呼んだという――

 

 

――カールスラントは踏んだり蹴ったりであった。軍隊のライセンス料ぼったくりと、グレーテ・M・ゴロプによる人種差別、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケによる冷遇、エディタ・ノイマンによる文化財軽視が白日の下に晒され、ドイツ連邦共和国による強権的介入を招いた結果、国家運営に支障をきたしたからだ。エクソダスで多くの有能な人材を失っていたところに介入が起こった上、軍人達が相次いで失態を犯したため、カールスラントは外交的にも赤っ恥と出費を強いられ、501の運営権放棄で軍の権威が失墜した。更に不幸は続き、ガランドの同期で、コンドル軍団のエース『メルダース』が1946年に航空事故に遭い、瀕死の重傷を負ってしまう。ガランドの命で日本連邦の病院に運ばれ、治療が施されているが、未だに昏睡状態にある。ドイツの政権はこの報に極めて冷淡であったが、現場の人間達は別で、見舞いに訪れる空軍軍人が後を絶たなかった。ドイツでの同位体は全ての名誉を後世の人間によって剥奪されていたが、戦史に名を遺した偉大な人物である事には変わりなかったからだ。日本連邦空軍が急激に台頭する時代にカールスラント空軍が没落していくのは、エースパイロットの大半の義勇兵化、皇室親衛隊の実戦部隊としての実質的解体、軍人の相次ぐ失態などが複合して起こった結果であった。一定の歯止めがあったオラーシャと違い、カールスラントはオストマルクを取り込んでいた故に大きな悲劇になった。この時にドイツの言いなりな祖国に失望して、バダンに入る失業軍人も大勢いた。それがカールスラントを却って苦しめることになり、治安回復のため、失業軍人のバダン入りの防止のために、カールスラント軍の一定規模の再建が容認されていく。最終的にオストマルクを入れた領域の防衛に必要な数までの再建は容認される。(疎開地の放棄は対怪異の観点から取りやめられた)その再建は数十年を要する事業となるが、その間に日本連邦空軍が世界最強に成長したため、カールスラント空軍の評判が最盛期のそれに戻る事は世界の政治情勢の変化もあって、二度となかった。だが、最盛期の撃墜王達は太平洋戦争以降の戦乱でも活躍し、在りし日の栄光を伝える貴重な証人となる。それだけが凋落期に空軍の軍役についていた高官達に救いとなった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――とは言え、日本連邦空軍も左派勢力の妨害工作と対峙する過程で戦略爆撃機を『空中指揮管制機と空中給油機に一部を転用する』名目で定数を満たすなど、あの手この手で兵力を揃えていった。近代化が進んだのは予算対策も大きく、レシプロ機のターボプロップ機化が進んだのもそれが理由であった。あまりに急激に軍の近代化が進んだため、教育が行き届かず、空自と米空軍の人員が組織運営の援助をしている他、複座ジェット機に抵抗感の強い実戦部隊の人員の説得も骨であった。F-4EJ改の評判が性能と別次元で悪いのもそれで、日本と違い、豊富な資金を背景に、早期に次世代の単座機の採用が行われた理由でもある。64Fが一点豪華主義の権化と批判されるほどに陣容が豪華なのは、他部隊の機種転換が人員の頑迷さもあり、上手くいかないという切実な事情が絡んでいる。最先端の航空兵器を難なく扱い、未来兵器すら扱える64Fが優遇されるのは無理からぬことなのだ――

 

 

 

――歴代プリキュアはたしかにシンフォギア装者と同レベルの能力を持つが、南斗聖拳や華山/泰山系拳法などを極めた者たちには及ばない。ドリーム達は実際に敗北し、拷問された事もある。それを経て、デザリアム戦役では魔術の洗礼も受けているなど、仮面ライダー達が復活後は『無敵のヒーロー』として名を馳せているのに対し、プリキュア達は一敗地に塗れたケースは意外に多い。また、色々な経緯で聖闘士になった者及び、光子力/ゲッター線に見いだされた者とそうでない者とでお互いの戦闘力に大きな差が生じたのも事実である。その差を埋めるための特訓が行われている。大まかに、ロボットガールズと互角に戦えるところまで持ち込みたいのが実情であった。ドリームとメロディ、スカーレットのように、転生前後の技能をフル活用して戦闘力を底上げした者もいれば、ブルーム(ブライト)、イーグレット(ウィンディ)のように、元からの経験だけで並みいる猛者たちと渡り合える者までピンキリである――

 

 

「うーん。ドリームはそのマジンガーと融合してたのか。通りで…」

 

「前の戦いで闇落ちしかけたからねぇ、ドリームは」

 

「ミラクルとやりあったって?」

 

「そうなんだ。かなり殴り合いしてたよ。アタシが合流できたのはその頃なんだけどね」

 

キュアブライトは席次が第二席であるため、第三席であったドリームに代わって、プリキュア最古参のピンクになった。この頃にはドリームの推挙もあり、プリキュア達のリーダー格として後輩達を束ね、秘書にキュアリズムを迎え、それらしい仕事をこなしていた。元々、ソフトボール部のキャプテンかつエースピッチャーであったため、彼女の先輩である美墨なぎさ(ラクロス部所属)と違い、指揮者の才能があった。

 

「古参が基本的に強めだけど、ブロッサムは格が落ちるね」

 

「しかたないよ。あの子は浄化メインのプリキュアの先駆けだし、マリンがいないからねぇ」

 

「フローラがいなくて、ホイップまでいる……うん。虫食いだよ、今の状況。だいぶ埋まったけど」

 

 

「オールスターズの戦いが落ち着いた頃だなぁ。みんなで会えることが減ったの、いちかちゃんの時代からだし」

 

「ドリームの『闇』のこと聞いた?」

 

「うん。あの子の負担を軽くするために、柄じゃないけど、引き受けたんだ。なぎささんが来てもできないっしょ?」

 

「ドリームとピーチが愚痴ってたよ、あの時(オールスターズDX3)の事」

 

「なぎささんが聞いたら拗そうだなぁ」

 

「事実だしねぇ。指示できないの」

 

「そこが仮面ライダー一号とキュアブラックの違いなんだよなぁ…」

 

意外に先輩に辛辣なコメントのキュアブライト。自身も含めて、キュアブラックの大雑把過ぎる指示でえらい目にあったからだろう。戦士個人としては後輩に強く信頼されていながら、コミュニティのリーダー格としては失格と思われているキュアブラック。仮面ライダー一号/本郷猛という偉大な存在を知った今となっては、咲も『なぎさにリーダーシップを求めるのは無理』と結論づけたらしい。それはなぎさと並ぶ最古参のピンクプリキュアの三人(咲、のぞみ、ラブ)の総意でもあった…。

 

 

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