――日本連邦は太平洋戦争で戦後型艦艇の打撃戦での脆さが政治的痛手になることを悟っており、砲熕型艦艇へのミサイル装備を急いだ。改鈴谷型にあたる『伊吹型』が重巡洋艦と言うには大仰な排水量になったのは装甲厚とミサイル/電子装備の重量によるものだ。旧軍式巡洋艦の究極点にあたる同艦級、航空巡洋艦というジャンルが陳腐化したため、対デモイン級用の打撃艦として再々設計された。超甲巡の整備に反対する日本側への方便でもあったが、日本は超甲巡洋艦を『中途半端』と毛嫌いしており、空母改装がダイ・アナザー・デイで取りやめられた伊吹型を重巡洋艦として完成させた。伊吹型は艦隊随伴タンカー案もあったが、デモイン級の量産を恐れた海上幕僚監部の後押しで高雄型後継の重装甲型の重巡洋艦として完成した。これは伊吹と数隻の姉妹艦は主砲塔が取り付け完了段階にあり、そこから空母改装を強行しても、長時間の使用に耐えられないだろうという悲観的予測が出ていたため、陳腐化した巡洋艦の代替にしたほうが却って安上がりであったからだ。伊吹型は紆余曲折あって、予定より遅い1948年度末~1949年に相次いで就役した。(利根型のヘリ搭載改装が手間取ったのも理由。利根型をM1作戦敗戦の元凶と嫌う者たちが廃艦をゴリ押しし、揉め事を起こしたため、伊吹型の完成が遅延した)ウィッチ世界では水中艦艇は輸送艦代わりにされており、それが開戦劈頭の『リベリオン潜水艦狩り』という哀れな経緯に繋がった。その時に多数のリベリオンウィッチが潜水艦ごと海の藻屑となったことも、ウィッチ同士の会戦が滅多に起こらなくなった理由である。(部隊ごと海の藻屑と消えた件数は開戦劈頭の潜水艦狩りだけで15件も確認された)
――設計そのものが改定されまくった伊吹型は上部構造物のデザインや配置は戦後型護衛艦と戦前型砲熕タイプ巡洋艦の折衷になっていた。砲配置は純然たる巡洋艦時代の鈴谷型に準じるが、デモインを意識した装甲厚と配置であるのが違いである。奇しくも、日本型重巡洋艦を陳腐化させるためのフネが日本連邦に対抗馬の建造を促したのだ。ウィッチは基本的に強襲揚陸艦での運用に絞られたため、航空巡洋艦はヘリ搭載に改装された影響もあり、強襲揚陸艦の制海艦運用が広げられ、新型空母建造までの制海権維持に使われた。新型空母は瑞龍型と名付けられ、一番艦が建造中だが、80000トンの基準排水量に拡大強化した影響で予定より竣工は遅延の見込みである。それを穴埋めするため、ウィッチ運用も可能な強襲揚陸艦が注目された。アメリカから提供されしアメリカ級強襲揚陸艦の線図を使用しての新造も行われた。それらが出揃うのは1953年以降であるため、結局、それまでは南洋島防衛に全力という方針で固まり、連合艦隊は全艦を上げての通商破壊が主任務となった。陸軍軽視のツケがここで回ってくる形になった。コンバットアーマーとMSの購入が急がれたのも、その時勢の対応策であった。南洋が戦場になり、軍人への職業差別が問題視されるようになったこの時代だが、求められる事が高度化してしまった上、ウィッチと言えど、かつてのように、小学生のうちに志願する事がタブー視されるようになったため、根本的な人手不足は解消されずにいた。陸上自衛官が中堅指揮官として駆り出されるようになったのは、軍の青年・中堅将校の左遷で現場指揮官と幕僚が圧倒的に足りないが、前線指揮畑で来た高級将校はそもそも少ない。官僚畑で来た者に前線指揮は無理なのは実例が示している。日本の一般人の考える『前線主義』はそもそも、近代軍隊では成り立たないのだ。――
――指揮官と幕僚不足は目を覆うレベルに酷かった。特に幕僚の不足は致命的で、幕僚職は派遣されている自衛官が代わりに担う始末だった。黒江たちは高級将校らの幕僚を兼任しつつ、前線指揮を担当する多忙ぶりであった。これは日本が陸大恩賜組などを追放した弊害であり、史実で効果が薄かった水際作戦より、内陸での立て籠もりが主眼になった事もあり、少なからずの国土の被害が生ずる事になったが、足止めのためにはやむなしとされた。(そもそも、圧倒的な火力投射が可能なリベリオン相手に水際作戦は無意味である)通商破壊と立て籠もりと多少の反攻で兵力増強が成功するまでの2、3年を持たせる統合幕僚会議の方針は近代化の立ち遅れで破綻寸前の状態。通商破壊にコードネーム『機龍』(メカゴジラシリーズ)とされる超兵器が複数投入されるに至った。これらは元々は旧軍の研究を長い年月で実現させたもので、学園都市の反乱鎮圧用として、バブル全盛期から90年代に建造された。超テクノロジーを用いた兵器であるため、第二次世界大戦中の軍隊では戦艦の艦砲でも傷一つつけられない。運用経費は嵩むが、相応の戦果はもたらした――
――南洋本島近くの海域――
「ば、バケモノだーーーー!!」
悲鳴が傾斜しつつある戦艦の甲板に響き渡る。必死に機銃で最後の抵抗をする彼の目に映るティラノサウルスのような機械の巨獣。咆哮を上げつつ、各部にある武装を放ち、戦艦を破壊していく。戦艦すら歯牙にもかけないで撃沈するその巨獣のコードネームは『機龍・G型』。俗に言う量産型メカゴジラ。特撮映画でいうスーパーメカゴジラ形態を取る空戦タイプだ。その相手はなんとも張り合いのない旧式戦艦の艦隊であった。
――予備役から復帰した旧式戦艦群を要する任務部隊は機龍軍団に蹂躙され、殆どの艦艇が海の藻屑となっていた。ある兵士の悲鳴がそれを物語っている。投入された機龍は量産タイプ(スーパーメカゴジラ型)であったが、それでも第二次世界大戦型艦隊を蹂躙するには充分であった。目のレーザーキャノンは駆逐艦や輸送艦を容易に炎上させ、量産タイプにはあるフィンガーミサイルは第二次世界大戦型のどんな航空機も一撃で粉砕できる。体の装甲も第一次世界大戦型に属するニューヨーク級戦艦などの主砲である35cm砲を余裕で弾き返す強度であり、まさに蹂躙であった。三機のメカゴジラが空襲をかけただけで、任務部隊は壊滅。随伴の兵員輸送船と輸送艦のみが丸腰状態で残された。メカゴジラ相手では逃げることも戦うことも無意味であるため、降伏を宣言する。フェリーチェが捕まえた者らと合わせると四個師団に相当する。陸軍と海兵隊の増援部隊を連続で装備ごと捕まえた事は朗報であり、メカゴジラの存在を敢えて誇示することで侵攻を抑止する狙いもあった。――
「他愛もない。我々の爺さんたちがあれこれやられたことを今度は我々がする。スカッとするな」
「いいではないですか、隊長。扶桑も南洋が落ちれば、史実と同じ道をたどる。グランドフリートは落ち目だし、空母機動部隊は戦力にもなりません。背広組は彼等の空母機動部隊を宛にしていたようですがね」
「ウィッチコマンド母艦化していたブリタニアの空母機動部隊に、エセックス級とミッドウェイ、下手すればフォレスタル級が前倒しされそうなリベリオンの空母機動部隊と戦う力などないからな。宛が外れた時、ブリタニアを詰ったそうだ。だが、彼等も無い袖は振れん。やれることは一つ。扶桑に対抗できる空母機動部隊を持ってもらうしかないのだ。背広組はそれが分かっとらんのだ」
「超兵器に頼るなと言っときながら、結局は超兵器に頼ってますからな」
「我がGフォースの存在を誇示して、敵がビビるのを期待しているわけですか?」
「そうだ。この機龍、23世紀の技術でもそうそう破壊できんからな。敵も警戒するはずだ。」
Gフォースの隊員たちは三機のスーパーメカゴジラで旧式戦艦を含めた艦隊を壊滅せしめた。これで敵も一つの補給ルートは完全に使えなくなったと判断するだろう。勝利の咆哮をする機龍は敵にとっては『白亜紀のティラノサウルスに襲われた』と思えるだろうと彼等は考えるのだった。
――沈んでいくニューヨーク級戦艦の一隻とニューメキシコ級の『ミシシッピ』は無残にレーザーキャノンで溶けた箇所を晒している。この時に撮影された写真を『Gフォースの戦果』として日本連邦は大々的にプロパガンダ。焼けただれた主砲塔と熱で無残に赤熱化して溶け始めた艦橋を晒しつつ沈む両艦の姿は同盟国への示威、敵には力の差を示すために用いられた。リベリオン海軍は恐竜を模したロボットに任務部隊が蹂躙された事を重く見、さらなる戦艦の増産を決意する。皮肉な事に、力の差を見せつけることが『空母でなく、戦艦の量産』を促すあたり、ウィッチ世界の業を感じさせる。実際、人型兵器を作る事はウィッチ世界には不可能(扶桑を除き)であり、戦車や戦艦の増強を選ぶのは当然のことだが、空母機動部隊の育成が受動的なあたりがウィッチ世界の軍人達の思考回路がウィッチ至上主義に染まっていた証拠である。扶桑はそこからドクトリンの転換に成功していた事で、軍にリベリオンとの戦争を戦い抜ける力をもたらしたと言える。そして、リベリオンが多くの熟練ウィッチを戦わずして喪失しているのに対し、扶桑にはM動乱~デザリアム戦役を戦い抜いた猛者たちが温存されていた。そこが人員補充が絶望的ながら、楽観論が存在する理由であった――
――立花響はキュアグレースとして覚醒した。キュアグレースの変身者であった花寺のどかの記憶と経験がなだれ込み始めていた。のぞみやラブの思いを『同じ立場』に立つことで理解し、自分と別れた後の調の行動原理が黒江と入れ替わる前に出会っていた時のそれとまったく違うものに変わった理由も悟った――
「そっか……そんな簡単な事だったんだ……プリキュアとは……守るって事の意味とは……」
ゲッター線に魅入られたような台詞回しのキュアグレース。記憶が覚醒したために歴代プリキュアの戦列に加わる事を決意する。ただし、立花響の特性が強く反映されたか、変身の維持と戦闘に本来は必要なはずのヒーリングステッキを必要としない。キュアスカーレットによれば、『響の強い思いがプリキュアの力をも変質させたのだろう』とのことである。
「お、おい……お前…」
「スカーレットの言う通り、記憶が走馬灯のように駆け巡って『戻った』よ。だからって、ガングニールもあたしの力だよ。両方の力であたしは戦う。クリスちゃん」
キュアグレースは微笑う。花寺のどかとしての記憶は戻ったが、根幹は立花響である事を示すかのように。それは別の世界での『本来のキュアグレース』とは異なる形で戦っていく事の示唆であり、多くの転生組プリキュアと違い、転生後の自我を保った上での覚醒となったということである。
「はなもひかるもいないから、ユニを呼びますわ。貴方を直接知っているのは、あの子だけですから」
キュアスカーレットはタブレットでユニ/キュアコスモを呼び出す。のどかを直接知っている先代プリキュアは現状、彼女のみだからだ。(第一期、第二期のプリキュアたちがキュアスター以降のプリキュアと面識があるかは当人たちの経験に依存する)それから15分ほどして。
「呼ばれてジャジャ~ンニャ~!」
キュアコスモの姿で登場するユニ。装者たちはあざとい登場の仕方のキュアコスモに閉口する。
「やっぱ……、あんたがのどかの……キュアグレースの転生だったのね」
「コスモ……久しぶりだね」
「あんたと一緒に戦った機会はそれほどなかったもの。あたしも本当に久しぶりニャン」
地球人に転生しても、ファンサービスで語尾をつけるところはユニらしい。素体がプラウダ高校のノンナであるため、現役時代より戦闘力は大きく増しているほか、ロシア語に堪能である。アイドルであった経歴もあるため、キュアレモネードとユニットを組むつもりらしい。当然、現在は地球人(日本人)であるので、かつてのレインボー星人としてのキャラを気取るつもりはなく、キュアミューズ(アストルフォ)と同じ方向性のあざとさを出している。
「あれ?そんなに茶目っ気効いてたっけ」
「今はレインボー星人じゃなくて、正真正銘の地球人だもの。ファンサービスで語尾は使ってるけど、それ以外は楽しまないとニャ」
かつては宇宙人であったが、現在は正真正銘の地球人。元々、ノンナは意外に茶目っ気があるので、ファンサービスでかつての語尾を意図して使っているが、TPOに応じて、ノンナとしてのクール系の口調を使う。その時は冷徹な印象を与えるため、交渉を優位に運ぶ時などでノンナ本来の口調に戻している。ちなみに普段は元気っ子キャラを通しているので、そのギャップも人気がある理由だ。
「アンタ、本当、楽しんでんな」
「よく言われるよ」
クリスは呆れるが、現状、もっともニュートラルに接する事ができるため、マリアと同じく、装者代表で事柄に関わる事が多い。彼女達にも別次元の自分達が現れているが、交渉は調とマリアに一任している。本来の歴史に近ければ近いほど、調がSONGから自立し、聖闘士へ実質的に転職した事、光明結社が第三者(天秤座の童虎)の手で事を起こす前に鎮圧され、自分達は事後に存在を知らされたという経緯は驚かれるからだ。(いろんな事のフラグがへし折れた上、風鳴訃堂には乙女座のシャカが制裁を加え、悪事を暴かれた上で廃人にされている。その過程で副次的に風鳴家の権威も地に堕ちかけたが、同時に米国の権威も地に落ちている)
「マリアは平行世界のあたしらに会いにいったけどよ、割に近い世界なんだな」
「むしろ、あの子達のほうが本来の流れに近いよ。だから、大変だと思うよ?説明が」
「あいつやキャロルのことだろ?それと先輩の家のこと……。色々と違っちまったからな。あたしらの世界はばーちゃんのお仲間達のおかげで殆ど平定されたから、シンフォギアを使う機会は減ったし、グレートマジンカイザーの存在がシンフォギアの優位性に一石を投じたからな」
GカイザーはZEROには及ばないが、魔神皇帝の看板を背負っているのは伊達ではなく、シンフォギア世界のあらゆる法則を無視し、キャロルとの戦いに貢献した。その事は立花響にある種の『自分が必要とされなくなる恐怖』を抱かせたため、それを憂慮した風鳴弦十郎は黒江の誘いに乗ったのだ。
「お前、なんでGカイザーに怯えたんだ?」
「必要にされなくなる事が怖かったって奴だよ、クリスちゃん。聖闘士はある意味で私たちに近いけれど、あれは悪く言えば『機械』だからね。それも先史文明のものでもない、現代の延長線上の技術で造られた代物。それなのに、ノイズの攻撃も物ともしない装甲、抜群の破壊力の武器、常軌を逸した速さ。その気になれば……って思ったんだ。一点物だってわかった時が一番、ほっとしたんだよね…」
キュアグレースの姿になっている立花響はグレートマジンカイザーへ抱いた恐怖心を吐露した。一点物ものスーパーロボットと分かって安心するというところはズレている気がするが、現代科学の延長線上の存在がノイズを意に介さずに倒せるという事を深刻に考えてしまったりした事がゴタゴタの原因なので、ある意味では、シンフォギアを異世界の存在よりも特別と考えてしまった事が彼女の不幸の始まりだったとも言えるため、自身がシンフォギアと異質の力であるプリキュアに覚醒めたことでそれを自覚したようだ。
「でもよ。まるで別人だよな」
「プリキュア化すると、印象変わる子多いよ?」
のぞみやラブ、ユニは比較的に元の原型が残っている方であるが、マナやはるか、北条響は元が残らないレベルで変わっている。それを考えると、立花響もグレース化すると、元の原型が全く残らない。(かつての花寺のどかは髪の色はグレースと同じだった)
「別のあたしらと接触させないようにしてるのはなんでだ?」
「無用なトラブルの回避のためさ。501でトラブったからね」
「ばーちゃんから話は聞いた。大変だったそうだな」
「平行時空は出来事にも違いがある。例えば、あちらの世界では風鳴訃堂が黒幕で、犠牲も大きかった。ですが、貴方たちの世界では黄金聖闘士が制裁を加えたことで、そもそも光明結社にまつわる戦が起きなかった。それに、このことはあちらには説明できませんわ…」
「自分達を遥かに超える力で物事が未然に防がれたなんて、説明つかないからな。それに先輩のお父さんが普通に生きてるしな」
「本来の流れでは、あのジジイに撃たれて死ぬもの、あの子のお父さん。それが起こった世界からすれば……」
「だろうな…。先輩、自分の大切な人たちのことになると、嘘みてぇに荒れるんだな…」
「あの子は親とのすれ違いもあって、精神的に起伏が激しいところがあるのよ。だから、箍が外れると、ね」
キュアコスモとキュアスカーレットにそう評価される風鳴翼。雪音クリスは装者の中では第三者的立場であるため、プリキュア達とも関わり合いがある。そこがマリアと並び、折衝役が多い理由でもあった。C世界の自分達と接触させないようにさせている事情も悟っていた。ちなみに、この世界ではギアの法的な使用制限はないため、クリスも特訓を兼ねて、ギアを展開したままである。(小宇宙に覚醒めつつあるため、負担が軽くなった事もある)
「でもよ、ギアを単純に身体保護目的で使うなんて、思ってもみなかったぜ」
「他の世界に出身世界の理屈を持ち込んでも、しょうがないことですわ。次元世界とはそういうものです」
「言えてるな。あいつやばーちゃんのやった事がやっと理解できたよ」
シンフォギアは纏うことの制限がなければ、積極的に身体保護目的で使うに値する。調は聖闘士に就職後は身体保護目的で展開している事が多いが、この事はD世界の装者たちには年長組にしか知らされていない。揉め事の回避のためだ。
「で、向こうにどのくらい教えてんだ、あんたら」
「取り捨て選択で教えてるけど、年長組にはそこそこ知らせてる。こちらにとっては、ギアは戦闘用途での主役じゃないからね」
「そこは納得してんのか?」
「その世界はなのはたちを知っていたから、割に冷静だったよ」
コスモはそう言う。見かけは可愛いが、仕事ではクールなところを見せる。スカーレット共々、この時期以降、シンフォギア世界との折衝役をしていくのだった。
――扶桑の陸軍記念日の廃止の是非もクーデター発生の理由である。クーデター後は海軍記念日を『軍隊記念日』に改称し、一つに統合する事にした。日本側の意向だけで陸軍記念日を祝えなくなる事に軍部青年将校が反発したからで、日本側もクーデター後に軍隊記念日の取り扱いに難儀し、海軍記念日を一つの軍隊記念日として残す事で扶桑と折り合いをつけた。日本も扶桑に配慮を見せない者のせいで扶桑に混乱を強いた事には罪悪感はあったからで、金鵄勲章、従軍記章の廃止(瑞宝章と防衛記念章での代替)議論の終焉はクーデター後における扶桑への配慮という形で唐突に訪れた。(武功章の授与増加傾向が顕著になったのは、金鵄勲章の授与が『戦後にまとめて~』ということになった事、従軍記章が防衛記念章では代替しきれない上、出戻りの古参ウィッチへの嫌がらせ防止の観点から、扶桑海事変従軍記章の新設がなされたのも契機だろう。ミーナの立場が一時はまずいことになったのも、自分以上の古参ウィッチへの冷遇をしてしまった故だ。各国のウィッチ閥の衰退は扶桑での多数派が解体へ向かった事へのショックであり、ウィッチへ強い制裁がなされたことでの混乱の結果である。頼りのGウィッチは『若めの者』でも、1943年以前から軍歴がある古参。世代分布も古めであるため、現役世代の反発を招き、1946年~1947年前半の混乱に繋がった。皮肉にも、働き盛りの現役世代の多くが排除され、主に古参と新人の構成に様変わりした事で兵科の円滑な連携が成ったのである――
――ウィッチ同士の会戦が行われる懸念が開戦劈頭の潜水艦狩りでほぼ消えた一方、近代兵器の応酬でウィッチ兵科の存在意義が薄れてしまったのも事実である。Gウィッチは政治的には、ウィッチ達の恐れる『社会からの排除という選択肢』を霧散させてくれる有益な存在であったのにも関わらず、『社会的秩序を乱す』として迫害した事で起こった最悪の可能性がダイ・アナザー・デイからの現実であった。そして、ウィッチ組織が二分された後の時代、職業軍人ウィッチは馬鹿にされる傾向が強まったが、有事に入ると鳴りを潜める。MATは怪異専門組織であり、戦争には従事しない事が知れ渡ったからだ。軍ウィッチたちは復員後に故郷で迫害を受けるのを恐れたのもあり、1946年次に在籍中のウィッチの大半が定年まで軍に残り続ける。定年の規定改定もあり、一律で60歳代まで(ただし、現役中に元帥に任命されていた場合のみ地位を保持できる)となったので、その後も80年代半ばまで大戦世代は軍に存在し続けるのである。世代交代の鈍化は軍部の予想外の事態でもあるが、事変世代が人的資源の意味での黄金期であったため、彼女達ほどの輝きを放つ者が少ない時代が続いたり、いてもGウィッチの血縁者に限られた時代が続いたため、根本的世代交代を成し得たのは年月を重ねる事であったとされた。――
――Gウィッチはプリキュア経験者も含めて、二代目レイブンズが軍に入隊した後の時代には南洋最高峰に隠棲している。公職は引退したものの、軍部への影響力は未だ保持しており、90年代以後は時の将軍や提督が挨拶に訪れるのが通例になっていた。転生でないプリキュア組も戦乱などを潜り抜ける内に肉体の加齢は起きなくなっており、現れた当時の容姿を保っている。皆が隠棲したとは言え、周囲の求めがあれば、公の場に姿を現す事もある。2005年のダイ・アナザー・デイから65年経過した記念式典に参加している姿が二代目レイブンズの時代には有名である。往時の若々しい容姿のままである事は驚かれつつも、『神に愛された』事は知られており、太平洋戦争当時の高官達の懸念と違い、人々の思考の変化もあって受け入れられた。2010年には黒江の養子『翼』に第一子が、その三年後に次子が生まれており、引退から30年近くが経過した時期には、黒江は孫娘たちの面倒を見ていた。黒江家は綾香、その養子の翼の功績で2010年代には侯爵家に昇格しており、名実ともに扶桑の名家となった。翼の結婚相手は扶桑にコンビニエンスストアを広めた実業家のひ孫で、21世紀の扶桑で名を馳せる新進気鋭の実業家であった事から、コンビニエンスストアの経営も行うようになっている。
――ここからは『未来』の序章となる――
――21世紀――
「やれやれ。この歳になって、孫の面倒たぁな」
この時代には、黒江の戸籍年齢は100歳を迎えようとしていた。戸籍上はとうにヨボヨボの年齢だが、肉体は若々しいままである。23世紀の戦乱も落ち着き、この頃には悠々自適の生活を送っていたのだが。そんな黒江に一本の電話がかかってくる。この時代の黒江の家にかかってくる電話とは。
「はい。黒江で……沖田提督ですか?お久しぶりで……はい……はい…。え、非常呼集ですか?全員?わかりました、全員を召集します!」
30世紀にいる沖田十三からの連絡であった。その時代の敵であるイルミダス、マゾーン、セイレーン連邦の残党などが連合艦隊を送りこんできて、平時に慣れきっていたその時代の地球連邦軍は劣勢であり、アースフリートからの緊急召集が23世紀当時のロンド・ベル隊の主力人員に対してかけられたのである。黒江は引退後は久しく着ていなかった軍服に袖を通し、地球連邦軍人としての任務に久方ぶりにつく。孫達を婿と娘の家に返した後、往時の64Fメンバーに緊急召集をかける。全員が往時の姿のままである。それぞれ隠棲生活を送っていたが、有事には往時の編成通りに集結できるように取り決めがなされており、この時が引退後初の緊急召集であった。新生リベリオン空軍結成から30周年の記念式典に出席中であったシャーリー、新生カールスラントの首都であるベルリンの復興から何十年かを記念する式典に出ていたカールスラント三羽烏と魔弾隊の隊員ら、扶桑本土で講演中であった黒田と真美、孫達に呼ばれ、一家団欒中の武子や坂本、実家に帰省し、孫や娘たちに会っていた芳佳、この時期に天寿を全うした実姉の中島小鷹の葬式と通夜のために『中島錦』に戻っていた夢原のぞみ、その手伝いをしていた先輩/後輩のプリキュア達、引退後に傭兵に転じていた広瀬沙羅・バルナックなど。臨戦態勢を取れる太平洋戦争当時の主要メンバーに召集がかけられ、彼女たちはそれぞれのいた場所から現役引退時に取り決めていた暗号の場所、要するに冷戦後は表向きは閉鎖されている64Fの太平洋戦線当時の基地の地下部へ向かった。そこには30世紀の技術で更にアップデートをされて秘匿されている64Fの往時の保有兵器が保存されている。Y委員会の手で再整備され、灯が灯されるのだ。
――彼女達が数十年ぶりかに向かう戦場はキャプテンハーロックの時代である30世紀のドラえもん世界。それぞれが久方ぶりに往時の編成通りに行動するのである。――
そんな彼女らを迎えにくるかのように一隻のヤマト型宇宙戦艦が往時の64F基地に降り立った。そのヤマト型宇宙戦艦こそ、宇宙戦艦大ヤマトの僚艦にして、大和型戦艦の姉妹艦の一つの後身にあたる『超時空戦艦まほろば』。孫娘たちを送り届けた後に一旦戻り、家の保守を婿の会社の清掃部門に頼み終え、用を済ませて玄関に出たところで、まほろばの使者と『再会』した。
「久しぶりだな……35年ぶりくらいか…?」
まほろばの使者である女性士官と再会した黒江。その士官は森雪やかつてのスターシャによく似た容貌を持つミステリアスな美女である。最後に会った時から全く加齢が見られないことから、まほろばの意思が肉体を持った姿であることの推測が確信に変わった黒江。
「お迎えにあがりました、黒江閣下。アースフリートの皆さんがお待ちです」
「35年ぶりだってのに、感慨もクソもあったもんじゃないな、おい。羽黒妖くん?」
黒江はちょっと毒づく。羽黒妖のやり方は感慨も何もあったものではないからだろう。
「緊急時なので、ご容赦を。イルミダス、セイレーンの残党、そしてマゾーンの連合艦隊が地球連邦軍を追い詰めつつあるのですから」
「それでアースフリートの主力が久方ぶりに出陣というわけか。隠居した俺らも駆り出すとはな……」
「沖田十三提督直々の決定です」
事は思ったより深刻であった。アースフリート(地球連邦軍・太陽系連合艦隊)からの使いが迎えに来るのだから。30世紀におけるコスモシーガルの末裔の機体に乗り、2020年のウィッチ世界での黒江は引退から35年かぶりに実戦の場に赴く事になった…。