――プリキュア出身者は501と504に確認されたのみであるが、主要戦士の複数がいた事は幸運であった。ドリームは504の中島錦(1945年当時に中尉)を素体に転生した。それが覚醒後はすぐに大尉となり、デザリアム戦役の功で少佐となった事は批判もあったが、功績を挙げた以上は相応に遇するべきである。1940年代後半当時の扶桑軍は1945年当時の中堅世代が失脚した影響で中堅世代に穴が空き、一線を退きつつあった古参世代を急遽呼び戻して戦線の中枢に添える方法で場しのぎを行った。1947年の憲法改正などの影響で教育現場から軍事教練が廃され、大量の教官が職を失ったことへの対応策は前線復帰であったり、教導部隊への配属だが、扶桑では前線部隊のほうが尊ばれる風潮である。元教官らの箔付けに64F隊長の座は一時的に使われたが、戦死と事故死が立て続けに起こったことで教官出身者から『縁起が悪い』と忌避されるようになり、上層部の一部の思惑は外れ、武子が1949年にそのまま復帰する。代理を務めた広瀬大佐と宮部大佐の二名は同年の夏に一中隊長として舞い戻り、武子の指揮下に入った。とは言え、当時の64Fは統合戦闘航空団は愚か、宇宙艦隊すら内包する巨大組織と化していたため、隊長を根本的にすげ替えるのは得策ではなかった。そのために当初の予定通りに武子の復帰が行われた。武子はプリキュア出身者をも統率できる逸材であったため、前線復帰は既定路線であった。しかしながら、教育隊はダイ・アナザー・デイ以降は新人教育の機会が減っており、前線要員の再教育の場と化していたため、七勇士という権威がある武子を欲しがり、人事に圧力をかけた。Y委員会の介入でその目論見は潰えたが、教育隊はダイ・アナザー・デイで散々に恥をかかされた事に伴い、前線での戦功を求める教諭が後を絶たなくなった。新人教育の機会が減り、教諭の多くが暇を囲っていたからだ。日本もこの要請に戸惑い、扱いに窮した――
――1949年――
日本連邦評議会が荒れるのも恒例行事化した嫌いがある1949年。教育隊が暇を囲うようになってしまった事が議題に挙げられた。1945年に高等工科学校に入校した世代が卒業しだしたものの、従来通りの新人教育は不可能になり、人員育成速度は鈍化した。義勇兵はそれを補うために大量に雇用された。教育隊には戦技教導部隊としての役目を与えることが検討されたが、元々が新人教育を前提にしての部隊であるため、第一線級のウィッチを鍛え直すだけの技量があるか不安視された。当時は航空審査部の解体と横空の再編で熟練ウィッチとパイロットの行き場が狭まっており、64Fや50Fなどの精鋭部隊を巨大化させるか、教導部隊を新たに増設するか。その選択が迫られた。航空審査部が行っていた『アグレッサー任務』は自衛隊の飛行教導群で概ね、事足りるためだ。
「ウィッチは人手不足だ。半数は強襲揚陸艦の直掩任務に就かせ、半数は陸上の防空に投入する。第二世代宮藤理論が完成したとは言え、暇を囲っていると、日本の世論から攻撃される」
「501だけで事足りるとさえ揶揄されるからな。それも困ったものだよ」
「前線の不満を解消するためだ。今やMATのほうが優勢だ。少ない人材を遊ばせておけるほどの余裕はない」
これが日本連邦評議会の一致した意見であった。軍に残ったウィッチは最盛期と比べればごく少数となり、とても教導部隊の増設は無理とされた他、高等工科学校を卒業した者の任官も上手くいかない(農村部出身者から『農作業にいらない知識をつけられた』と抗議が来る&家の都合で任官辞退も生じた)有様であるため、ウィッチ兵科の解消は急速に現実味を帯びてきている。この頃に任官された中島疾風と三隅美也は家の都合で、軍にそのまま入隊した珍しい組に入る。任官が当初の予定よりも四年遅れであるため、当然ながらRウィッチ化処理を受けており、処理後に共に47Fに配属された。特に、疾風は錦(のぞみ)の実妹である。この二人の47Fへの配属も扱いの慎重さの表れであった。二人は配属地の都合で戦争中は目立った戦果はなかったが、40年代後半以降の軍のウィッチ部隊の中枢を担った。彼女らの代は部隊配属が四年遅れになったので『遅れてきた世代』と揶揄されたが、軍部にとっては貴重な新規入隊組であったため、丁重に扱われた。ダイ・アナザー・デイは一種の分水嶺のようなものだったと後世に語られるが、実際の現場でも一種の階層の構築がなされた――
――ダイ・アナザー・デイ後の扶桑ウィッチには暗黙の了解的な階層が生まれた。ダイ・アナザー・デイを全期間戦い抜いた者が最高位、後半に参加した者が次位、サボタージュを後半にやめていた者が……という感じである。ダイ・アナザー・デイを真の意味で戦い抜いた者は英雄と扱われているが、太平洋戦争で前線勤務確定なため、あまり喜ばれてはいなかったとは言え、ダイ・アナザー・デイを経験した者は倫理観に変化が生じたため、引退後も民間軍事会社にいく事が増えた。ダイ・アナザー・デイ後に引退者もかなり生じたため、そのまま太平洋戦争に従軍した者はダイ・アナザー・デイを経験した者の6割弱であり、1949年に人手不足は極まった。それを補う手段が兵器の近代化であったが、怪異には必ずしも有効ではないため、一部の超人の優遇の容認が継続された――
――こちらはシンフォギアD世界の装者達。便宜的にD世界としているのは、調が既に他の平行世界と接触していたからだ。士官教育を終え、デザリアム戦役を戦い抜いた後に中尉となった調はキュアマジカルと共にD世界の装者と接触していた――
「状況は分かったわ。ここでは既に別の世界の私達が活動しているのね?」
「うん。だから、不用意な外出は控えて。事態がややこしくなるから」
「そっちだと、サンジェルマンさん達との戦い以降の出来事は起きてないんだね?」
「魔法少女事変の終わり方も違ったから。私は正確には、フロンティア事変も魔法少女事変にも関わってないけど」
「どういうことだ、月読?」
「事故で私は魂の波長が合った人と入れ替わる形で、私達と縁が全くない世界へ飛ばされたんです。その世界に10年いる内に体の体質が変わっちゃったんです」
「だから、月読さんがシンフォギアを普通に纏えてるんだよ、姉さん」
「貴方が別の世界のセレナの転生だと言うのは、にわかには信じがたいけれど、記憶は引き継いだのね…」
「ええ」
マリアDも妹の転生には嬉しそうだが、調Dはどことなく別世界の自分に劣等感を持っているようである。ギアの性能と機構そのものはほぼ同等だが、Aは経緯故にギアの展開可能時間に制限がなく、日常的に纏っていても、体になんら問題がないという絶大な利点が存在する。その点がLINKERの服用が必要な調Dのコンプレックスである。
「ずるいよ…。そっちはシンフォギアを制限なしに纏えるなんて…」
「私はS.O.N.Gを抜けたし、住んでる世界も別世界になったからだよ。シンフォギアは記念に持っていったんだ。転職したようなものだから」
Aは普通にギア姿である。B世界のギアと感応したせいか、形状や機能はD世界の最終形態とほぼ変わりがないが、イグナイトモジュールが現存しているという機能上の違いがある。黒江達の介入でシンフォギアA世界の歴史が変化したためである。また、黒江が追い出したフィーネの魂はモードレッドへ転生し、そこからキュアスカーレットを経由してペリーヌ・クロステルマンになっていたため、そこもややこしい。ペリーヌの場合は愛国心で現在の自我を保ったものの、アクが強い二つの人格が残った一方でフィーネの自我は失われつつも、記憶は残っていたのが黒江をして『ややこしくなったなぁ』と嘆く理由だ。
「転職……デスカ?」
「うん。今の私の本職は公には自衛官、裏では神を守る闘士。後者になるにあたって、特殊な訓練を受けたから、シンフォギアは普段着を着るようなものなんだ」
「私も転生して、世界を守る戦士になったの。今のこの姿はその証拠。転生してからは魔法つかいなのよ」
「そんな漫画みたいな事があるのかよ!?」
「あるんですよ、クリス先輩。私は異世界行きと、転職してからの訓練とかで体質が完全に変わったんで、LINKERは必要じゃなくなったんです。セレナは『選ばれた』んで、この姿なんです。シンフォギアも纏おうと思えば纏えます」
「ええ。それは事実です」
キュアマジカルも言うように、彼女がシンフォギアを纏えることには変わりはない。マリアにアガートラームは引き継がれたので、やる必要がないだけである。
「お前ら、ギアをそんなホイホイな……」
「元の世界での法律には縛られないのもあるけれど、色々と自分達と関連がない平行世界にいけば、ね」
「それで、そちらの世界はどうなったんだ?」
「私が別の世界に飛ばされた後、この世界の人が私の姿になって入れ替わっちゃったんで、ややこしいことになったんです。その人、なんていうか、超人だったんです」
「あん、それがどうして……」
「つまり、その方が強すぎたと?」
「ええ。本当の意味での完全聖遺物を身に宿してる神の闘士だったんです。エクスカリバーを、ね」
「エクスカリバー!?アーサー王伝説のあの!?」
「そう。その聖剣。更に言えば、その人が関わってる世界からの援軍や神々の戦いもあって、魔法少女事変は根本から違う終わり方になった」
「待て待て待て!神様だと!?」
ツッコミが追いつかないクリス。調にドラえもんのタイムテレビも使用して撮った写真を見せられる一同。オリンポス十二神が一柱『アテナ』の命で戦闘を繰り広げる黄金の甲冑を纏った二人、ノイズをも有無を言わさずに倒していく巨大ロボット(グレートカイザー)」。しかも、動きがとんでもないほど高速。完全に自分達がどうにかできるレベルを超えているとしか言いようがない。
「嘘……アタシ達が完全に蚊帳の外じゃないデスカ!?」
「うん。シンフォギアでどうにかできるレベルを超えた戦いだから。本当の意味での完全聖遺物やそれと同等のエネルギーがぶつかりあう場だよ?」
シンフォギアが完全に蚊帳の外となる。それは自分達からすればありえないことだが、別の世界ではありえないことではない。自分達の世界での聖遺物は先史文明の遺物を指すが、別の世界では文字通りの神造や星造武器。桁が違うのだ。
「別の世界の私が反発したの、わかる気がするなぁ。シンフォギアの力を信じてると、それを超える力があるっていうのは信じられなくなってくるから」
「私の世界の響さんは私の師匠に反発してた嫌いがありますからね。おまけに当時の響さんの全力を上回る速度の乱打を浴びせられる。しかも、格闘戦に不向きなシュルシャガナのギアで。それでいて自由人な振る舞いだった上、シンフォギアを上回る力を持ってたから、かな?」
「そちらでは砕けた物言いなのだな」
「色々とあったんで」
調Aは苦笑する。黒江の苦労は大きい。事故で入れ代わった後は当時の『武装組織フィーネ』から即座に脱走し、自由人な振る舞いで過ごしたと思えば、双方から追われる日々。やがて、本質的には善であるため、二課側に与した事。それを話す。調自身が古代ベルカで騎士としてのサクセスストーリーをしている時、黒江は調の立場に置かれていたのだ。
「そうですよ、現人神から
「それが信じられんのだ。あの
「その昔、ムー大陸が沈む前にアテナが造らせた防具の最高位の代物です。私は中級の位なんですけど、師匠は最高位の十二人の一人。その階級の闘士の纏うプロテクターはイガリマの刃だろうが、天羽々斬だろうが、ガングニールだろうが防ぎます。神を守る闘士の使うものだから、通常の物理法則を超えてますからね。響さんがそれを認めたのが、フロンティア事変の終わる頃だったかな。あ、あった。これです」
「戦に使うとは思えんが……神々しいな」
「神聖衣。人が得れる力としては究極の逸品です。神殺しさえできるんですから」
「待って。ガングニールだって、それができるはずだよ?だって……」
「他の世界の存在には通じません。ロンギヌスは本当なら別の槍ですからね。それに本来のグングニルには必殺の効果はないですよ」
「えぇ!?」
「そうか、本来、グングニルとロンギヌスは別個の存在。別の世界の存在相手では、我々の世界の『コトバノチカラ』は薄れるのか」
「効果はありますが、本来のポテンシャルは封印されます。それが私たちの世界の響さんが自分の力に固執してしまった点です」
「その私はどうしてそこまで?」
「師匠が舐めプしてるように見えたんでしょうね。それに、私の姿になってるだけってわかったのは途中からなんで、それと私の居場所を用意するって善意が暴走しちゃったんですよ。切ちゃんが勘違いして、おかしくなった責任を取らせるのを、その人の都合より優先させましたから」
「気まずいなぁ、それ……」
A世界の響は切歌をおもんばかるばかりに、黒江の都合を考えない行為を押し通した。黒江はマリアの事前の懇願を汲むのと、響の暴走を抑止するためにそれを呑んだ。調と響が気まずくなった一因はそこである。(双方に非があるため、後に両成敗とされたが)
「帰ってきた直後は私もナーバスになってましたから、お互い様ですよ」
調Aは気まずそうな響Dの姿になんとも複雑な気持ちだが、響Aも時が経って反省し、その優しさがキュアグレースへの道を拓いた。そこは機密事項だが、本質は他人想いなのが彼女だろう。
「調。表向きは自衛官って事は、その手の学校に?」
「一応は幹部自衛官。だから、普通の軍隊だと『将校』にあたるよ。航空自衛官だから、表向きはパイロット」
「パイロットって、貴方」
「戦闘機搭乗員の扱いだよ。背丈も伸びたし、師匠はエースパイロットだったから、その手ほどき受けたから」
そう説明するものの、実際は黒江の技能をそのまま感応で得たので、その気になれば、ゲッターロボにも乗れる。(実際に、女性用ゲッターロボであるゲッターロボ斬には搭乗経験がある)
「えぇ!?」
「あたし達、驚き役になってねぇか?」
「事情が各々で違いますから」
「セレナ、貴方も変わったわね……」
「転生したって分かれば、ね」
D世界の装者たちはA世界と違い、五度の戦いを潜り抜けたのと、錬金術師達との出会いと別れを経ていたため、全体的に冷静であった。そこは安堵する調とキュアマジカル。
「じー……」
調Dが微妙そうな顔を見せる。DはAほどの強さはない。切歌とは最終的には歩む方向が交わったとは言え、基本的には別々に働いている(切歌は聖闘士にはなったが、日本連邦軍や地球連邦軍には入隊していない)事に不満なのだ。
「貴方の不満は分かるよ。また別の自分自身に会ってるから。切ちゃんとは道は違っても、歩む方向は同じだから。離れてみて、違った形の歩み方もある事を知ったから……私はここにいるんだよ」
「ずるいよ…。ギアをLINKER無しで纏えるなんて。私達の適合率は…」
「こればっかりは体質の変化と特殊な訓練の成果だしなぁ…。この世界にいる内に覚えられるものでもないと思うなぁ」
困った表情の調A。自分は黒江との感応を経て、そこからススキヶ原での訓練などで開眼したが、それには相応の苦労があったのも事実だ。
「教えて!このまま『お子様』扱いされたくないの!」
Dの表情は真剣である。Aはマジカルと顔を見合わせ、大きく息を吐いた。
「うーん。見せるか困ったんだけど、これ見て。私が住み込みで働き始めた時の写真。隣に写ってるのは、私が働いてる家の息子さん。子供の頃の写真だから、私にとっては10年以上前だけど」
その写真は西暦2000年のもので、調が来て間もない頃に映画を見に行った日の帰りに撮ってもらった写真。撮影者はしずかで、帰り道にばったり遭遇して撮ってもらったのだ。調Aにとっては宝物である。シンフォギア姿の調だが、のび太からマフラーを巻いてもらった事もあり、恥ずかしそうな表情。のび太もその頃はまだ、ぎこちなさを感じさせる。
「な、なんですとーーーー!?」
「わーお……。オイシイ場面じゃん……。この人、なかなか分かってますよ」
「おいおいおい、これじゃデートに見えんぞ!?」
と、写真を見た一同の鼻息が荒くなる。切歌Dは目がグルグル巻きになり、混乱している。
「元の世界のみんなにも見せたんだけど……って、うわっ!?」
「し、調を惑わす悪い奴はぁ~……あ、あ、あたしが成敗するデー……」
「はいー、そこまで~」
目をグルグル巻きにして大混乱のあまり、イガリマを纏う切歌Dだが、様子を見に来たキュアミラクルとキュアブライトに鎮圧される。
「様子を見に来たんだけど、危なさそうだったから止めたけど…大丈夫だった?」
「ブライト、ミラクル。すみません、切ちゃんが混乱しちゃって…」
「話の流れ聞いてて、すぐに分かったよ。あなた達が平行世界のシンフォギア装者のみんなね?私はキュアミラクル。キュアマジカルの相方で魔法つかい」
「その先輩のキュアブライト。よろしく」
「あんたら、こいつの仲間か?あたしらより年下に見えるんだが…」
「クリス先輩、この人達は私達よりずっと上ですよ。下手すると司令より上かも……」
「なにィ!?ど、どーゆことだ!?」
調Aが耳打ちするが、日向咲は1992年、朝日奈みらいも2003年生まれ。シンフォギア世界の時間軸はA世界以外は2045年なので、風鳴弦十郎よりも更に年上にあたる。世界の違いとは言え、みらいや咲は装者たちからすれば、祖父母と言っても差し支えないほどの世代の人間なのだ。
「いくら住んでる世界が違うからって、あたしらより若い姿じゃねーか!?」
「まー、14歳で力に目覚めるから、あたしら。あなた達からすれば、92年生まれのあたしはおばーちゃんになるかな~?雪音クリスちゃん?」
「からかうなっ!あたしらの名前は聞いてるようだな」
「そうだよ。マジカルはミラクルの相方。あたしの相棒は別のとこで仕事だよ」
笑顔が印象的なキュアブライト。ブライトの姿なのは、この世界では空中戦が主体だからである。パワーアップで相方と距離が離れていても、迷いが生じようと変身が最高の状態で維持されるため、単独行動も増えた(ただし、単独変身は相変わらずできないが)。
「貴方がセレナのバディなのね」
「貴方のことはセレナから聞いてるよ、マリアちゃん。凛々しくて、いつも自分を守ってくれた姉さんだったって」
「せ、セレナ……」
「ご、ゴメン。あの時はまだ13だったし…」
キュアマジカルはマリアの亡き妹の転生である。13年の人生で見てきた印象しか語れないため、マリアは妹にどう見られていたかを他人の口から言われ、赤面してしまう。みらい(ミラクル)も気を使い、マジカルをセレナと呼んでいる。
「でも凄いよ~。本当に魔法つかいなの~?」
「うん。私達の代は魔法つかいだから。ブライトは私の大先輩なんだ」
「二代目だしね、あたし。今じゃ後輩たちを暫定的に仕切ってるけどね~」
「二代目って事は……、初代がいるのか?」
「うん。まだ来てないけどね。その次に古株があたし。一個下の子から仕事継いだから、忙しいんだ」
とは言え、なぎさに他人に指示をする才能がないことは第一期プリキュアの間では周知の事実である。第二期後半あたりからの後輩たちから尊敬されているブラックだが、同世代のプリキュア達はダメダメなところを知っている。ドリームとブルーム(ブライト)が主席指揮権を持つ事になっているのは、ブラックに指揮能力がない事がラブリーやハートからも報告されたからである。
「貴方達は世界を守れると聞いたわ…。何人いるの?」
「令和が始まった時点で60人超えかな…」
「おい、光の国の巨人より多くね?」
「純粋な光の国の巨人は10数人くらいだけどなぁ。光の巨人は地球生まれもいるし」
光の巨人も数が多いことで知られるが、それは光の国と近縁星、同盟星の巨人以外の巨人も数えた場合であり、原初の『兄弟』は意外に少ない。仮面ライダーも一号からの系譜を継いだ改造戦士のみをカウントすると、10数人のみである。咲は後輩のラブとやよいがヒーローオタクなことから、それを知っていた。
「あんた、なんで知ってんだよ」
「そういう方面のオタクな後輩が二人いてね……」
ラブは子供の頃にヒーローに憧れ、自身も長じた後に戦士になった初の例だが、前世での最後の戦いで『アギトの力』に覚醒めていたため、プリキュアのままで仮面ライダーの武器を使用できる。デザリアム戦役でそれを初披露し、黒江も驚かせている他、デザリアム戦役と太平洋戦争の間に起こったオールスターズ戦でも武器を使い、事情を知らぬプリキュア達を驚かせている。
「あ、ラブちゃんはフレイムセイバーとストームハルバード使って驚かせてたっけ」
「両方いっぺんに使うと、立ち回りに気ぃ使うって言ってたよ」
「剣と槍じゃ間合いが違うしね」
ラブはそこを『気を使う』で済ませるあたり、技巧者であると言える。(ちなみに、のぞみは素体の都合もあり、剣は自信があるが、槍は苦手だとのこと)
「あなた達、戦い慣れてるわね…」
「一年も邪な連中とドンパチして、引退しても後輩の助っ人してたからね」
「私の代からはみんなで集まる事減っちゃったけどね」
「本当に戦士なのですね、貴方達は…」
マリアと翼に関心されるが、咲は実のところ、サポート枠だったため、かつては美味しいポジションののぞみを羨ましがっていたりする。(咲は現役時代、横文字にとにかく弱かったが、現在はある程度は改善されている。後輩が多くなったためだ)
「さて、そこに寝てる子を運ぶかな。キュアップ・ラパパ。その子をソファまで運びなさーい」
ミラクルは魔法で伸びている切歌をソファに寝かせる。ギア姿で伸びたままなのは情けないが、ブライトとミラクルのブローがいいところに入ってしまったせいである。これに一同は固まる。錬金術などではない本当の魔法だからである。
「おおおおーーー!!本当に魔法だーーー!」
「お、お、落ち着け、立花!?」
「あ、あれ?」
キュアミラクルも一同の目の色が変わったのを感じ取り、一筋の冷や汗をかく。年長の二人の制止を聞かずに響はかぶりより、クリスも目を輝やせている。翼も子供の頃に憧れた時期があるのか、気にしている素振りを見せる。
「ブライト、どうしよう~……。」
「しゃーない。見せてあげな。アタシの精霊の力よりは分かりやすいからさ」
ブライトはそういう。プリキュアでも唯一の魔法つかいチームが魔法つかいプリキュア。最も『魔女っ子の系譜』寄りの特性があることから、大人人気もある。咳払いし、二人は魔法のデモンストレーションを行うのだった。
――こうして、マジカル共々、ミラクルは魔法を見せてやる事になった。ブライトは少し残念そうな顔だが、自身の力は飛行と光弾、バリアくらいであるからで、ドリーム以降のプリキュアの雛形になったプリキュアであることをこの時だけは残念がるキュアブライトであった――