――統合戦闘航空団を示す『500番台部隊』は本来、国際協調以外にプロパガンダ目的が元から多分に含まれていた。だが、506のように存在そのものが政治目的で利用されるケースが生じたため、日本とアメリカ主導で統廃合が行われ、既に成果を挙げていた501主体で統廃合がなされた。ミーナは覚醒前、それに反対していたため、査問は自身の破滅と受け取り、錯乱した。覚醒した西住まほの人格に取って代わられたのは、そのような理由からである。とは言え、503や505が蹂躙されたという報を知らないはずはないため、黒江への冷遇はミーナの私心からくるものだとされ、後年に至るまで『ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ』の人物評に暗い影を落とす事になった。ミーナの行動面での重大な過失は間接的にカールスラントの衰退のきっかけとなったため、その面でも後年の批判は大きい。もっとも、カールスラントの急激な衰弱はドイツ連邦の過剰な干渉が招いたことでもあるため、後年(1990年代以降)には擁護論も生まれている。どちらにせよ、歴史の一つの事実は『欧州の陸空での軍事的覇者であった帝政カールスラントは衰退し、代わりに海空軍を誇る日本連邦が栄えた』事である――
――1990年代初頭、ウィッチ世界の『冷戦』を形作っていたリベリオン本国でティターンズ系勢力が自然消滅し、1991年にリベリオンは政治的には再統一された。だが、根強く残った白人至上主義などからの観点から、日本連邦の影響下に置かれるのを恐れる者たちが尚も抵抗を続け、全てのミリシャの消滅は21世紀に入った後の話になった。カールスラントは帝室廃止と共和制移行が幾度となく議論されたが、1940年代初頭のガリアの体たらくから、共和制そのものに強い忌避感を持つ風潮から、戦前からの共和主義者が辛うじて生き残っていた1970年代を最後に共和制移行は諦められた。その代わりに立憲君主国へ移行が進み、帝室は冷戦後は緊急権以外の権利を内閣に委ねた人身御供的な役目を担うようになる。(貴族の名誉階級化も進んだ)日本連邦が1940年代に政情不安を招いたのは、そのレベルの改革をいきなりやってしまい、それまでの既得権益を木っ端微塵に吹き飛ばす真似をしまくったからである。冷戦後の時代にはGウィッチ達も公職を退いて久しく、戦乱の時代も人々の記憶から遠ざかりつつあった。ダイ・アナザー・デイから半世紀後の1995年から機密が相次いで解除されていった後、歴史家はダイ・アナザー・デイの研究を相次いで始めた。第二世代理論以降の宮藤理論の開発のきっかけであり、Gウィッチ達が軍ウィッチを牽引しだすきっかけともなった歴史のターニング・ポイントだったからだ――
――21世紀。黒江の甥の一人で、三兄の末の息子にあたる『黒江孝宏』は戦史研究家の道を歩んだ。彼は叔母の往時の活躍に憧れつつも、彼自身が物心ついた頃には冷戦も終わりつつあった世代である。時が経ち、21世紀も5年が経つ頃には、彼も壮年期を迎えていたが、ダイ・アナザー・デイから60年が経ったその頃から研究を始めた。彼の姪である翼がその頃に軍へ入隊した事もあって研究は捗り、2015年頃に一冊の本として結実する。Gウィッチの親族がまとめた本であるため、それ以前の研究本では不明とされていた箇所も明らかにされており、一級の研究本という評価を得た。その中でミーナ・ディートリンデ・ヴィルケの複雑な覚醒以前の心境がハルトマンへのインタビューという形で明らかにされた。ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケの振る舞いがダイ・アナザー・デイ中に大きく変化した事は後世においても有名であり、『真相』が明らかになった事で1945年までのカールスラントの根拠なき『思い上がり』、実力主義と年功序列、人種差別の狭間に揺れていた当時の軍部の独特な空気がようやく世間に理解され始めた。ミーナが単純に無知だったのは事実であるが、事変から10年も経過していないダイ・アナザー・デイ当時から非難されていたが、ミーナの志願年度、教育を受けた時期がカールスラント・エクソダスの最中であった事で当時よりも後世のほうで同情された。また、当時の扶桑航空隊の派閥抗争と海軍航空隊の見苦しい空軍設立への抵抗ぶりが克明に記されたことで、海軍航空の当時における中堅層から『裏切り者』と敵視された坂本や孝美の努力が正当に評価されるようになった――
――1949年――
「なるほど。孝宏の奴、よく研究したもんだ」
「黒江、翼ちゃんに持ってこさせたのか、その本」
「ああ。甥の一人が21世紀で出した本だよ。暇つぶしになるしな」
「ダイ・アナザー・デイの後世における研究本か」
「あれは本当にハラハラもんだったからな。ほれ、お前らの努力も書かれてるぞ」
「70年先での評価か……。それでどうなんだ?上の施策」
「日本の施策についてはボロクソだよ。特に陸戦兵器の強制廃棄については」
「あれなー。あれで予定が大きく狂った。自衛隊の秘匿兵器を引っ張り出させたのは成果と言えば成果だが……」
「チハやチヘは対歩兵用トーチカにするつもりだったが、それが潰れたからな。チト改とチリ改も設計に無理があるのを無理させたからな。だから、センチュリオンとコンカラーを買わせた。虎と豹はカールスラントへ恩を売るために買ったにすぎんデコイだ」
「その割に多かったが?」
「この時代じゃ一番進んだ戦車大国だったからな、あそこ。うちの旧式が殆ど処分されちまったから、ロンメルに連絡して、緊急で買っただけだよ。今は博物館の肥やしだがな」
カールスラント系戦車群最後の輝きがダイ・アナザー・デイの戦車戦で、熟練兵の操作とロンメルの指揮もあり、性能に勝るM26パーシングを打ち負かした。それがカールスラント戦車隊の戦史における最初で最後の輝きとされる。(冷戦期には実戦から遠ざかるため)この時期では旧型になり、代わりにコンカラーが多くなっているが、カールスラントの軍事的衰退の中での一縷の慰めとなった。このカールスラント戦車隊の衰退は未来世界でいうところのマジンガーZからグレートマジンガーへの交代劇にも似た悲壮感が漂うと、この時期の連合軍で囁かれている。実際にティーガー戦車隊がM26に苦戦するところをコンカラー重戦車隊に救われるシーンもダイ・アナザー・デイ後半ではあちらこちらで見られたが、そのコンカラーもやがては次期主力戦車として開発中の『チーフテン』で淘汰される運命である。だが、チーフテンの装甲をより世代の進んだ『複合装甲+爆発反応装甲』に強化する案が出たことで開発が大きく遅延。こうして、コンカラーは太平洋戦争でも連合軍の重戦車の一翼を担う事になった。
「敵はまだAPDSも満足に行き渡ってないのが救いだな。こっちはAPFSDSに切り替えを進めているからな。当分は優位を保てる」
「しかし、日本に知らせなくていいのか?」
「息のかかった連中には知らせてある。10式を引っ張り出す口実に使ってるしな。MSは背が高いからな。その点、日本の21世紀の電子機器は何故かM粒子に強い。そこを攻める」
「航空機は順調に機種変更がなし得ているのに、なぜ、陸は遅れる?」
「日本の政治屋が陸を疎んじるんだよ。陸の暴走で破滅したトラウマを大義名分にして、陸を縛り付けようって魂胆なんだ。だから、俺があの手この手で装備を変えてるんだよ。少数精鋭は聞こえばいいが、国家総力戦じゃ無意味だ。空はある程度はカバーできても、陸は完全に質よりも量が物を言うからな」
黒江は軍人としての現実主義さを見せる。一見すると、自身の身につけた技に酔っているようであるが、プロの職業軍人である故の冷静さに頷けされた判断をきちんと下す。そこが彼女が時代の変化に対応できた理由である。
「お前、甥っ子とかにどう見られてるんだ?」
「そーだな。この本買いてる甥っ子には好かれてたよ。だが、上の兄貴のガキ共は悪ガキが多くてなー」
「お前、上の兄の子供は嫌いだったからな」
「兄貴と義姉さんが悪いんだよ、あれは。厳しすぎの教育だったからな。その点、三番目の兄貴の方は全部が聞き分け良くてな。この本を書いたのも、三番目の兄貴の末の子供だ」
黒江は長兄の子供たちへのスパルタ教育を『子供が捻くれた要因』として呆れている一方で、三兄の子供達は可愛がっている事を教えた。長兄の子供達は全体的に厳格な親へのコンプレックスが強く、黒江自身にも手を焼かせたほどの素行不良が目立ち、何人かは後々に一族の鼻つまみ者になったという。長兄はそれを気に病みながら、1980年代前半に息を引き取ると話す。
「すると、翼ちゃんは?」
「三番目の兄貴の孫娘だ。俺の資質をその世代で一番濃く受け継いだから、俺が後継に指名した。俺んちは基本的に末っ子が当主になる率がひーばーさんの代から高いんだ。俺も末の子だったように、あいつも末の子だよ」
黒江家は綾香の曾祖母の代から、そうした風習が存在していた。女子が生まれず、長子が後を継いだ黒江の父の代が例外中の例外と言える。
「お前も一族の中では、よく見るパターンか」
「まーな」
「やぁ」
「おう、来たか」
青年のび太がやってきた。ドリームたちと合流し、談笑した後に黒江の私室に寄ったようだ。
「子供達と話してきたよ。やっぱ、ブラックとホワイト、フローラの事を気にしてたよ」
「ブラックとホワイトは目処がついてるが、フローラとトゥインクルはまだ、どこにいるかわからんからなー。あ、ルミナスはどーせセットだろうから」
「それと、キュアウィンディとキュアアクアが言ってたけど、君、大決戦で色々歌ったろ?」
「ま、景気づけにな」
「あれでアクアの世界のドリームが拗ねたって」
「あー、やっぱりな~」
「君、歌ってる時、『地声』だったろ?」
「ああ」
「あれで、色々と誤解されたってぼやいてたそうな」
「仕方ないから、こっちのはトレーニングさせたよ。ある程度までは持っていった」
「それで戦闘でも地力に差があったから、アクアとミントを連れて行くのに骨だったって、はーちゃんが愚痴ってた」
「平行世界で差があるのは仕方ないんだがな。俺自身、Bのやつの愚痴に昨日は付き合ったんだからよ」
「お前、向こうはそのままテスパイだったな」
「いや、ケイの代わりにアフリカの指揮官になったそうだ。だから、向こうのほうが面食らったらしい。向こうのケイは代替存在で『よく似た別人』だしな」
「そうか。去年は子供達が揉め事起こしたな?」
「あれな、向こうのお前もその後の処理に苦労したそうだ。こっちが現役だからって、向こうも現役だと思ったって、馬鹿げた言い訳かましたそうだから、怒ったこっちの智子がビンタかました時には冷や冷やだったぜ」
「平行世界とは言え、自分が遠回しにでも見下されるのは嫌なものだからな」
「芳佳とリーネは働いてないと死ぬ病気にでもかかってるんかね?この世界のように、何らかのチートでもなきゃ、20越えりゃ、やれることは減ってくるからな」
「ま、現役者至上主義の風潮があるからね、君らの界隈」
黒江は元々、魔力の減衰は少ないが、20で退役した後、再雇用でテストパイロットに転じる運命だったが、その運命に抗ったことで現在の力を得た。それは他の平行世界からすれば信じられない奇跡である。平行世界の芳佳とリーネの失敗は『のほほんとホテル暮らしでいいのか!』という不満から、それを楽しむその世界の黒江と智子に八つ当たりとも取れる態度を取ったことであろう。二人としても不本意であるが、この世界は『自分達が超常的パワーで押しも押されもせぬ地位を築いた世界』であるので、力を失った自分達がやれることはないと結論づけたためだ。芳佳たちの言葉は『それでもやれ』という趣旨で、無理強いを強いるのと同義であった。二人は坂本にも怒られてしまい、意気消沈した。双方の協議での温情で仕事は与えてやったのが実状だ。
「こっちじゃ顔が売れてるから、顔を隠させて救難部隊に関わせたよ。この世界の敵は人だ。向こうの世界の連中には引き金は引けんからな」
「それがいいよ。サボタージュの原因もそれだし、それが原因で社会的に疎まれ始めたのがこの世界だしね」
「それ、向こうの幹部に話したが、連中、目ン玉を点にしてやがった」
「当たり前さ。ウィッチは高嶺の花だったんだもの。それがこの世界じゃ、『わがままばっかり言う穀潰し』って陰口も出てきてるからね。君たちが血の献身をしてないと、社会的に排斥されてるだろうね」
のび太の言うように、サボタージュとクーデター、オラーシャ虐殺はA世界でのウィッチの地位の低下の過程で起こった悲劇。そう後世で位置づけられている。黒江たちの血の献身でなんとか排斥は避けられ、冷戦後には『年金に有利な能力』という位置づけで落ち着いている。黒江達がこの後の長年の献身を行う事で、ウィッチの社会的地位は『いたほうが精神的安寧を得られる』という位置づけに落ち着いていき、21世紀頃には『特殊部隊などに配置されるのに有利な技能』という形で残っていく。
「そこが理解されるのに40年。俺たちが定年を迎える頃だってのがな。」
「世の中、そういうものだよ。日本で評価されるには、最低でも本人の死から四半世紀はいるもんさ」
「吉田の翁や田中角栄みたいなもんだよな」
「そういうもんさ。日本連邦が生まれたのも、そもそもは自衛隊が立派に成長したのに、60年以上昔の言い分を21世紀でも押し通そうとしてる現状をどうにかしようとする模索に扶桑がつけ込んだのが始まりだしね」
――2020年には日本連邦樹立から4年ほどが経過しており、なんだかんだで90年代以来の暗黒期を終えられたことから、日本連邦樹立の決断は評価され始めた。政治的・財務的観点から、攻撃型空母や攻撃型潜水艦などの『攻撃型装備』は扶桑に持たせ、自身はこれまでの防衛予算編成を続けるという2016年前後の政治判断が固定化するのもこの頃である。その過程では、扶桑が旧来の砲熕型艦艇を多数有したままであることに背広組から異議が唱えられたが、モンタナ級戦艦やH級戦艦ができた世界であるウィッチ世界の現状を鑑み、妥協された。特に史実の大和型戦艦に肉薄する能力を持つモンタナが量産されたのが戦艦の軍事的意味での延命の理由であった。ダイ・アナザー・デイでの喪失を直に埋めてくる事は容易に想像されたし、欧州の軍港には『65000トン級戦艦を整備できる設備はない』という日本側の思い込みもあった。(欧州ではミサイル巡洋艦で戦艦を置き換えるのが押し通されたところも多く、ニューレインボープラン艦の受領に支障を来たし、戦艦隊にミサイル巡洋艦が蹂躙されてから、慌ててニューレインボープラン艦を受け取った国も出た)ブリタニア(キングス・ユニオン)は財政難から、旧式戦艦の空母改装にすら支障を来すほどに衰弱しており、戦艦の運用放棄が検討されたほどだが、怪異への対応の観点から、戦艦の運用は最低限度の維持がなされることになり、ニューレインボープラン艦を含まない新鋭の七隻を『黄金の七隻』という位置づけで維持していく。欧州の秩序維持のためで、カールスラントが南米の国家と化し、ガリアが衰弱した時代では、欧州の覇者であり続けるしか選択肢がないためであった――
「ま、日本の思惑がどうであれ、この戦争は長くかかるからな。主に日本の横槍で」
「ハワイ攻略でさえ目処がたたんからな」
「パール・ハーバーの完全破壊じゃ、太平洋共和国がうんと言わんが、あそこは日系国家じゃなければ、見捨てられてたさ」
「日系国家だから存続したと?」
「ああ。連合艦隊と戦えば、太平洋艦隊は打撃を受けるは必定だしな。ダイ・アナザー・デイでグレートヤマトにコテンパンにされたから、ティターンズも艦艇を温存してるし、当分は安全だ」
「あれは宇宙戦艦ヤマトの後裔なのか?」
「初代を初代乗組員達の一族が私費で途方のない改造を繰り返して生んだ怪物だよ。外殻の大ヤマト、中枢部に秘匿されてるGヤマトの二段構造になってる。30世紀の宇宙五大戦艦の一つにして、地球連邦の後継国家『太陽系連邦』の旗艦だ」
黒江は地球連邦がその後、政体が29世紀頃に太陽系連邦という枠組みに発展したが、その軍の主力部隊は『地球連邦軍』の名称を引き続き使用していると話す。これは地球人の根底にあるのが二つの地球であったからだ。その時代における主力艦隊『アースフリート』の旗艦が『宇宙戦艦大ヤマト』なのだ。
「あれ一つで銀河を股にかける国家を殲滅できるからね。ゲッターエンペラーと併せて、地球連邦軍が最強の座に返り咲いた理由だよ」
地球連邦軍は数百年おきに停滞と腐敗の時代を迎えては、追い詰められた有事で立ち直る事がハーロックとクイーンエメラルダスの話で明らかとなっている。そして、その度に人類の支柱になったのが、宇宙戦艦ヤマトの後継達であるとも。ヤマトの由来が戦艦大和であると考えれば、『大日本帝国を守れなかった鬱憤をガミラスやガトランティスを倒して晴らした』と言える。ヤマト乗組員の敢闘精神は凄まじく、古代進は追い詰められた状況でさえもこう啖呵を切った。
――違う!!断じて違う!!宇宙は母なのだ。そこで生まれた生命は全て、平等でなければならない!それが宇宙の真理であり、宇宙の愛だ!お前は間違っている!それでは宇宙の自由と平和を消してしまうものなのだ!俺たちは戦う!断固として戦う!!――
ズォーダー大帝が地球連邦軍を絶体絶命に追い込んだ時に発したこの啖呵は語り草である。その敢闘精神は間接的に黒江にも強い影響を与えた。ヤマトクルーの八割方が死傷した状況での自己犠牲的な啖呵は賛否両論であるが、追い詰められた状況下でも一縷の希望を見出そうとした姿勢は高く評価されている。自らの死を覚悟してまで発した悲壮な啖呵。アースの古代進がその後に『平和に馴染めない』と自嘲しているのは、彼の青春はヤマトと共にあったからでもある。白色彗星帝国に満身創痍に追い詰められても、その身を犠牲にし、地球を救おうとしたヤマトの悲壮な勇姿はその後の地球人に強い影響を与えた。
「ヤマトには、ガトランティス戦役でテレサと共に閃光に消える世界線があった。だが、ヤマトは神に『不死鳥』のような加護を与え、生きながらせた。それがいいか悪いかはわからんが、神様から見ても悲劇だったからかもな」
「ヤマトの見せたあの精神は批判も多いけれど、ガトランティスのとり得る手段を考えれば、ね。星間戦争はそういうもんさ」
黒江は平行世界のどこかに『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』の結末が起こった世界がある事を示唆し、ヤマトの辿った一つの結末が自分に影響を与えたと明確に述べ、のび太も肯定した。
「向こうの芳佳達が『特攻』を見たら、絶対に認めんだろうがな」
「私は共感するだろうさ。『元の宮藤』のようなヒヨッコにはわからんだろうがな」
ダイ・アナザー・デイで敵味方を問わずに多数のウィッチが戦闘ストレス反応を発症したのも、日本義勇兵らのうち、旧日本軍出身者にいた『軍人としての死に場所を得られた』とし、自らの死が避けられないのなら、死に花を咲かせる思考と行動によるものだ。無論、少数派ではあったが、味方ウィッチからも『狂ってる』と畏怖される選択である。ウィッチ世界ではVT信管が遅れていた事もあり、成功率は意外に高く、発艦寸前のウィッチがいるところに炎上した攻撃機が爆弾ごと突っ込み、ウィッチ部隊を全滅させた事例もある。ダイ・アナザー・デイ以後、空戦ウィッチ同士の空戦が稀になったのは、特攻が敵味方を問わずにウィッチ達の心をへし折ったのは間違いなかった。
「特攻は敵味方を問わずにウィッチの心をへし折るからね。あれがウィッチ兵科に精神的意味で引導を渡したと思うよ」
「ま、一部が振りかざしてた特権意識が消えたのが、あの戦いで得られた成果だろうな」
「カールスラントには悪いが、扶桑へ高圧的に接した報いだな」
「ドイツは裏で日本人を見下してる連中が多かったからね。帳尻合わせの犠牲になってもらおうよ」
カールスラントは連盟軍(連合軍の旧称)の主導国であり、軍事では指導的立場にあった。その立場故に、『カールスラントこそ世界最高峰』として他国を見下す者が多かった。日本連邦が苛烈な『報復』を行ったのは、それを懲らしめるためであったが、やりすぎと言わざるを得ない点があり、軍事国家化していたカールスラントの国そのものが傾いてしまった。特に自主開発機の多くが一夜にして時代遅れの烙印を押され、カールスラントの撃墜王にスコア粉飾疑惑が生じた事はカールスラント最大の災厄であったとされる。1949年では扶桑皇国系のウィッチが世界最強とされ、持て囃される一方、『祖国奪還』のモチベーションを奪われたカールスラントウィッチのモラルは瞬く間に崩壊し、ゴロツキ同然に見られるに至った。空軍本隊も疎開地放棄を前提の軍縮で有名無実化したため、グンドュラ・ラルの得た役職も名ばかりであり、実際は中間管理職の悲哀全開である。そんな悲哀全開のグンドュラ・ラルだが、後任に足る人材が長く見つからなかったため、彼女の長期政権となるのである。そこにカールスラントの悲劇があった。
「で、鉄也さんからプレゼント?どういうこった?」
「君等にGカイザーをしばらく預けるってさ」
「改装中だって聞いたけど、終わったのか?」
「ああ。とは言え、根本的に上位存在(素でZEROと戦える)のエンペラーが出た以上、鉄也さん専用ってことで遊ばせられないからね。ZEROに及ばなかったって言っても、魔神皇帝だしさ」
Gカイザーは剣鉄也の搭乗で投入される事がZEROの存在で無くなり、事実上の代替機と言えるマジンエンペラーGの登場で立場が無くなった感があったが、ゲッター線増幅炉を補助機関として積み込む改装が施された後に、64Fに運用試験名目で貸与される事になった。ZEROと融合したキュアドリームがGカイザーの技を『プリキュアオールスターズ/NewStage戦』で既に使用しているが、Gカイザーそのものが使われることになるのは予想外であった。
「次の定期便で搬入されるよ。君たちなら、Gに耐えられるだろうって」
「鉄也さん曰く、ピーキーなマシンだっていうが、お手並み拝見ってところだな。慣らし運転しないとなぁ…。ん?オリジナルのグレートマジンガーをパワーアップさせて生み出したのがGカイザーだけど、ZEROに負ける世界があったから、エンペラーを?」
「ミネルバはそう言ってる。今となっちゃ懐かしいけどね」
「まさか、ZEROとあいつが融合するとは思わんだ。そう言えば、あいつ……」
黒江はドリームが融合後に一暴れしてみせた『プリキュアオールスターズ/NewStage戦』の経緯を思い出し始める。ドリームは融合後、『Gウィッチ』として本当の意味で完成されたためか、色々とタガが外れたらしいところが増えたが、なりふり構わなくなり、戦闘手段を選ばなくなったとも言える。黒江が数年前にドリームの姿で完全に自己流のファイトスタイルを見せたように、ドリームも先輩後輩らの前で融合後のロボットガールズ寄りなファイトスタイルを見せた。それを見届けたキュアミューズ(アストルフォ)曰く…。
――ありゃ殆どさ、『プリキュアのコスプレのロボットガールズ』で通ると思うよ?――
キュアミューズ(アストルフォ)が珍しく真顔でそう断言するほどにスーパーロボットの技を多用していたというキュアドリーム。親友であるキュアルージュ/夏木りんを危うく失いかけたことで、ある種のタガが外れたのでは?との推測が彼女によってなされているが、本来はキュアエコーの誕生した戦いであるはずのその戦いがいったいどうなったのか。黒江はそこが気になり、同室する二人に了解を得て、キュアミューズ(アストルフォ)を呼ぶのだった。