ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

216 / 788
前回の続きです。


第百二十三話「ザンスカール帝国の忘れ形見」

――後世の本が持ち込まれた事で明らかになった『1945年以前の時代の評価』。カールスラントは結局、この時代の『抑え込み』政策の影響で、冷戦後も軍事的には凋落したまま、キングス・ユニオンは欧州各国の財政援助で体裁を保っている、リベリオンは政治的な再統一後も精神的に歪みが残り、21世紀になっても内戦は完全には終わっていない事が明らかになった。結局、血の献身はあれど、日本連邦が『世界の盟主』になり、21世紀には月面開発に着手している事が判明した。日本連邦は各種の妨害を乗り越える事がわかったわけだが、問題はそのせいで、『戦乱期』が長引くことである――

 

 

 

 

 

 

 

――日本連邦は太平洋戦争の終結への具体的ビジョンを描けずにいた。かつての戦前日本がそうであるように、リベリオンが焦土作戦を取ることが懸念されたからだ。海保が内輪もめを起こすわ、海軍航空隊を予算と訓練の都合で存続させるしかなかったり、(航空戦力の空軍運用での予算一本化を日本は図ったが、それに失敗した)と予想外の事態も頻発し、軍全体の方針もろくに決められなかった。そんな中で重宝されたのが連合軍統合参謀本部直轄扱いの精鋭部隊である。中央の統制を受けないため、独自の行動が許可される上、未来装備の使用も全面的に容認されているからだ。64Fは奉天市奪還作戦の要とされ、ついには新・科学要塞研究所(科学要塞研究所がミケーネ帝国との決戦で失われた後に兜剣造が再建した研究所)から『グレートマジンカイザー』が貸与されるに至った。対するリベリオン陣営はデザリアム戦役で霧散したジオン残党やザンスカール帝国のの生き残りを迎え入れ、なりふり構わずの戦力増強を行った。日本の左派の妨害工作も問題視された。『扶桑の増長を打ち砕くためには敗戦が必要』と考え、リベリオンに情報を流す者、オラーシャ革命に加担した者、各地の帝政政府転覆を『民主化』と称して煽るなど、目を回す勢いであった。幸いにも外国でそういう運動を煽った者はテロリスト扱いで逮捕され、処刑されたりする。だが、扶桑は特高が縮小改編した公安警察の処理能力が急激に増したそれに対応できず、内憂外患な状況が戦時下にも関わらず、顕になった。扶桑は既にユーラシア大陸内陸部を放棄したも同然なので、その奪還を妨害工作は間接的に妨げたわけだ。扶桑は結局、元住民の心情に配慮し、数十年は結論を出さなかったが、冷戦末期に『不要』と見なされたシベリアの一部を割譲する代わりに、インドシナの資源採掘優先権、ハワイ諸島の日本連邦の領有と、リベリオン再統一後における南洋新島の帰属を決める。大陸領土を縮小する代わりに、南洋地域とハワイ諸島を手中に収めたわけだ。リベリオンはティターンズが政権を握っている間はハワイ諸島を巡って領有権を主張するが、元々は太平洋共和国(扶桑人がハワイ王国を改組した歴史があるため、ウィッチ世界では扶桑の勢力圏内である)のものであるため、係争が続いたが、1990年代に係争に決着がつく。リベリオン側が自由リベリオン主体で再統一されたためだ。旧・自由リベリオン地域に住むリベリオン系住民に扶桑の永住許可をもらう事と引き換えにハワイ諸島の領有を諦めたわけだが、ティターンズがもたらした精神的分断と混乱はウィッチ世界のその後の歴史を大きく変化させたのだ…。

 

 

 

 

 

 

――1949年、64Fのパトロール隊はとんでもない代物が持ち込まれたことに驚愕した。それは……――

 

「あ、あれは!」

 

「まだ残ってたというの……モトラッド艦!」

 

「な、何よ、それ!?」

 

「未来世界のある戦争で使われた地ならし用の戦艦よ!まさか、まだ稼働状態のものが残ってたなんて…!?」

 

「と、止めないと!」

 

「無駄よ、パッション。あの戦艦の装甲とビームシールドは私達のプリキュアとしての技を通さない。それに、貴方や私の聖闘士の『闘技』は接近しないと…!」

 

「……くっ!」

 

南洋の南部ルートから侵攻したリベリオン軍の中核にいたのは『ザンスカール帝国が用いたモトラッド艦』の残存艦であった。ザンスカール帝国は敗北後、地球連邦政府によって解体されたが、残存兵器の多くはブラックマーケットに流れた。アドラステア級戦艦は全艦が失われたかと思われたが、サイド2には就役が間に合わなかった同型艦が複数残っており、ザンスカール帝国残党が解体待ちだった同艦を盗み出し、ティターンズ残党に与えたわけだ。

 

「こちらキュアベリー!緊急事態発生、繰り返す、緊急事態発生!敵はモトラッド艦を持ち込んだ!」

 

キュアベリー/蒼乃美希はキュアパッション/東せつなと共にパトロールに出ていて、アドラステア級戦艦に遭遇してしまった。ザンスカール帝国の残党がティターンズ残党に与したのだと瞬時に悟った。アインラッド付きのザンスカール系MSも確認され、現地の守備隊は為す術もなく蹂躙されて玉砕。住民も街も構わずに地ならしされていく。如何にプリキュアと言えど、相手がアドラステア級戦艦では手出しができる状況ではなく、泣く泣く、その場から後退せざるを得なかった。この緊急事態は直ちに武子に上申され、自室にいる黒江へ連絡が飛んだ。

 

「何ぃ!?モトラッド艦が!?馬鹿な、連中はザンスカール戦役で……わかった。慣らし運転が実戦になるとはな」

 

「どうしたの?」

 

「のび太、次の定期便はいつだ?」

 

「明日の朝だね」

 

「それまでは手出しできんか……。敵はモトラッド艦隊の忘れ形見を持ち出しやがった」

 

「サイド2政庁の手落ちだな。ノビタダに言って、政庁に抗議入れるよ」

 

「ザンスカール残党が兵器を持ち出しやがったようだ。タイヤ付きの艦載機までいる。ジェガンじゃ足止めがせいぜいだから、自衛以外の行動は避けろと付近の部隊に通報した」

 

「Gカイザーの輸送隊は明日の朝に到着する。そこから整備したとして、最短でも午後になるよ」

 

「敵の進路はここだろうさ。……タイヤ戦艦で地ならしか!これだから、ザンスカールは負けたんだっての!」

 

歯噛みして悔しがる黒江だが、まさか奉天市の戦力とその増援を囮に、モトラッド艦を隠密に上陸させ、南洋の大地を地ならしさせるとは。完全に裏をかかれたとしか言いようがない。タイヤ戦艦のタイヤはハイチタン合金製の頑強な構造で、ジャベリンのショットランサーを寄せ付けず、最終パワーアップ前のマジンガーZのロケットパンチも跳ね返すという。

 

「輸送隊も急いでる。今は明日を待つんだ。いいね?」

 

「クソッタレ!!」

 

珍しく焦る黒江。モトラッド艦相手では、並の戦力では足止めもできないが、連邦のサラミスやクラップ級巡洋艦を圧倒する火力と引き換えにすぐに弾薬を使い果たすという難点があるのは救いであった。鉄也が64Fにグレートマジンカイザー(改良型)を送りこんだ理由も自ずと分かった。

 

「あーやがここまで焦るとはね」

 

「モトラッド艦だしね、相手」

 

「モトラッド艦とはなんだ?」

 

「未来世界の過去の戦争でザンスカール帝国ってコロニー国家が使った記録のある地ならし用の戦艦だよ、少佐。その艦隊は最終決戦で全滅したって聞いてたんだけど、サイド2に未投入のが残ってたようだ」

 

「地ならしだと!?」

 

「のび太の言う『前世』以前には存在しない要素だね。鉄也さんがGカイザーを送った理由が分かったよ。これは『向こう側』には漏れないように。行ったところで、ザンスカール系の高性能兵器の前じゃ何もできやしないからね」

 

「わかった…」

 

黒江に呼ばれていたキュアミューズだが、話どころでもなくなってしまった。事態は深刻である。モトラッド艦が地ならしをした場合、被害は甚大であり、進路上の街は情け容赦なく踏み潰されて壊滅する。ミューズは平行世界の501の耳に入れないよう、坂本に釘を刺す。耳に入ったら、なんとしても戦おうとするだろう。だが、B世界のウィッチのシールドでは、旧式化し始めたとは言え、高火力を誇るザンスカール帝国系MSの攻撃は防ぎきれない。たとえ震電を履いた芳佳であっても、だ。だが、モトラッド艦ほどの巨体が街を蹂躙する様は救難部隊に顔を隠して参加していた二人が遠目にだが、既に目撃してしまっていた。武子と圭子はその二人の直言に難儀した。いくら64Fと言えど、ザンスカール帝国系の高性能兵器に対抗するには相応の準備を要するからだ。坂本Aの諌めも決意を固めた芳佳Bには効果は無く、震電の使用許可を強い語気で要求してくる有様であった。芳佳は誰がなんと言おうと、自分の思いを貫く頑固なところがあるが、今回は64Fにとってでさえ、並の相手ではないのだ。

 

「おい、綾香!」

 

「どーした、ケイ」

 

「敵はグラン・ザムまで持ち出してきたそーだ!」

 

「グラン・ザムだと、オールズモビルが研究していたあれか!?ビグ・ザムのリファインとかいう噂の!」

 

「ジオン残党が持ち込んでいやがった!明日の定期便が来たら、通常はスクランブルなんだが……」

 

「おい、歯切れ悪いぞ」

 

「向こうのガキ共が直言しにきやがった。向こうの芳佳が手に負えねぇって、武子が」

 

「あのバカが!!見ちまったのか!?」

 

「ああ。任務の帰りにな。クソ、頑として譲らねぇそうだ」

 

芳佳Bは頭に血が登っているのか、坂本Aや武子の諌めを『だから何なんですか!?』と一蹴して頑として引かず、リーネBも困り果てていた。

 

「まっつぁんは?」

 

「姉御は明日まで戻らねぇよ。キレたあいつを退けられるのは、まっつぁんくらいだろうよ」

 

圭子をも圧する『頭に血が上った芳佳』。こうなると、赤松しか芳佳Bを抑えられないだろうと明言する。半ばヒステリックになっているような様子が圭子の口から伝えられた。

 

「いやぁ、我ながら困ったね~…」

 

「お前も駄目か」

 

「ああなると、自分自身の言葉でも聞きませんよ、あたし」

 

キュアハッピー(芳佳A)もやってくる。説得を諦めたのか、疲れた表情であった。自分が持っていた頑固さが裏目に出たと嘆息のキュアハッピー。圭子や彼女で駄目であるなら、赤松によるボディランゲージしか手はない。

 

「ザンスカールの兵器相手じゃ、あたしでも史実通りの装備だと死ねますからね…」

 

「相手は向こうには宇宙から来たような技術の塊だからな。いくら俺たちでも、準備なしには戦えねぇ相手なんだが…」

 

「そこが分かってないんだよ。それにサイコ研究所系の高性能機がいたら、コトだよ。烈風斬くらいは跳ね返すし…」

 

「それはいったか?」

 

「言ったんですけど、真・烈風斬があるって聞かなくて」

 

「……まっつぁんに連絡を取れ。烈風斬がこの世界ではどういう位置づけになったか、教えてやらんと。熱意は買うが……」

 

芳佳であれば、通常の烈風斬はリスクをあまり気にせずに撃てる。だが、烈風斬はもはやこの世界では、第一線で使うには『ハイリスクローリターン』と見なされ、一部の好事的なウィッチが会得するのみだ。近代で最初に使ったウィッチが海軍出身だった記録があるため、海軍出身ウィッチに言い伝えられていた奥義である事が分かるが、A世界での『聖剣』には及ばない。そこをわからすには烈風斬を防げる能力がある事を示すしかないのだ。

 

「我ながら、あそこまで頑固だったかな~……」

 

「ヒステリーになってんぞ。姉御の手を煩わせるのか?」

 

「それしかねぇな。真・烈風斬だろうが、この世界では役に立たねぇのを身を以て示さんと」

 

「戦場に連れていきます?」

 

「バカ、死に行くようなもんだぞ。ミサイルの避け方もわからんような。相手はジオンどころか、主力はザンスカール系だぞ」

 

「でも、501のみんなが知れば、今どころでも無くなりますよ。働いてないと、落ち着いていられない質のあたしはともかく…」

 

「うむ……」

 

そこが悩みどころであったが、実際にザンスカール帝国の技術は帝国が存在した当時としては突出したものであり、ジェネレータ出力も高いMSが多い。当時の連邦軍の標準機の数倍のパワーを誇り、連邦軍の次世代機のジェイブスやフリーダムでようやく伍するといったハイレベルだからだ。つまり、ビーム兵器の威力は連邦・ジオンのハイエンドモデル並のものということ。数値で言えば、1945年の怪異の数倍の威力がある。そこに連れていけば、芳佳クラスのウィッチでも、何の対策無しでは死にかねないからだ。また、リベリオンの戦闘機は既に陸上ではセンチュリーシリーズに切り替わっており、B世界のMe262など問題外の速度性能である。

 

「まっつぁんに相談だな……。ドモンさんに連絡取れればなぁ。」

 

「仕方ねえ。Gカイザーの調整が終わり次第、使うぞ。あれで破壊するしかない」

 

「あいつらにレベルの違いをわからすにゃ、シャインスパーク、ゴッドサンダー、サテライトキャノンの同時発射を見せるしか……」

 

「こっちの馬鹿どもと違って、レベルの違いはわかるだろう。地形を変える兵器なんざ、向こうにはないからな」

 

圭子はここで広瀬大佐が言っていたような逆転の発想をする。いっそのこと、見せればいいと。A世界でウィッチの権勢が黒江たちの活躍で起きたなら、それを終わらせたのも黒江たち自身の手によるものだ。

 

「うちらが全力で戦えば、地形どころの話じゃないだろ?」

 

「遠慮なしにやればな。だが、環境考えんと、ZEROの轍を踏む。」

 

そういう発想の時点で、64Fの発揮できる戦闘ポテンシャルが窺える。501の戦闘レベルは他の統合戦闘航空団より高いとされているが、それを差し引いても、近代兵器が普及した時代には通用するとは限らない。64Fが近代兵器登場後も第一級と言われるのは、それらを素で扱い、ウィッチとしての戦闘術にノウハウを反映させられる柔軟性を持っているからだ。故に第二世代宮藤理論以降の宮藤理論の進歩に予算が与えられた感がある。

 

「去年の模擬戦で実力の違いはわかったはずだ。それでもついていきたいのか?」

 

「モトラッド艦が地ならしするの見れば、そんなの関係ないって思うよ」

 

「まっつぁんの判断待ちだな……」

 

 

 

 

――結局、芳佳Bの直談判は結論を出せず、赤松の判断待ちとなった。『守りたい』という気持ちだけで通用するほど、A世界は甘くはなくなったからだ。実際に、体よりも心が折れたために引退した者は1949年までに50名を超える。また、怪異も物の数でない『マジンカイザー』や『真ゲッターロボ』のような超マシンが現れたため、それに憤慨して、軍をやめた者もいる。そして、ウィッチとしての魔力値そのものは『平均より多少上な程度』の黒江たちが無敵とされる理由は、この時代には謎扱いだが、『ウィッチであることに囚われない事』が真髄である。また、往時の501を上回るほどの自堕落さ漂う隊の雰囲気は理解されにくいが、戦闘になれば『ピシッと』統制され、当代最強にふさわしい強さを持つため、戦闘と訓練以外は自由な隊風の64Fに憧れる者も多い。広瀬大佐と宮部大佐が一中隊長として舞い戻ったのもそれが理由である。当時は軍に残った『中堅層のウィッチ』そのものが貴重であり、練度のある者は限られた部隊が独占していた。これは1945年当時に数が多かった中堅層の者が民間軍事会社を興すか、MATに転籍した影響であり、本来は人数的に少数派のGウィッチとRウィッチが中核にならざるを得ない状況は軍上層部の誤算だった。源田実が政治的妥協で打ち出した『集中運用』が評価され、64Fに貴重な人的資源が集められたのは、ある種の妥協でもあった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――1949年の情勢は一気に動いた。ティターンズにザンスカール残党が協力したからで、これは連邦政府に一矢報いるという目的と、かつての主義主張よりも、『一旗揚げる』という目的を優先するあたり、なりふり構わない両勢力の現状が透けて見えた。64Fにガルダ級での『定期便』が届いたのは、凶報の翌日の早朝のことだった――

 

 

「EX-Sだと?おい、武子。よく…」

 

「隊長特権よ。ザンスカールに対抗できる火力と防御力を重視すると、F91じゃね」

 

武子は緊急という事で、自身専用にEx-Sを取り寄せた。ダイ・アナザー・デイで使用した個体に改良を加え、再配備したのだ。F91は高性能だが、ザンスカール帝国の機体相手では防御力不足なため、Iフィールドジェネレータを新式に変え、装甲材をガンダリウムεへ換装したEx-Sガンダムに乗り換えたわけだ。

 

「隊長、整備が泣きますよ、あれ」

 

「整備の腕を鍛えるには丁度いいじゃない。これさえ覚えれば、ガンダムタイプも楽に整備できるわ」

 

「流石」

 

「貴方、ダブルエックスを使いこなせるようになったの?のぞみ」

 

「先輩方に鍛えられましたから」

 

「ロンド・ベルのみんなも協力してくれてな。実質の初陣がデザリアムとのゲリラ戦だったから、腕を上げたと思う」

 

「で、黒江先輩はアレに?」

 

「鉄也さんが気を利かせてくれたんだよ。改良したから、カラーリングや細部の形状が変わってるが」

 

グレートマジンカイザーは新規開発のマジンエンペラーGにお株を奪われたところが大きく、それを不憫に思った炎ジュン(剣鉄也の新妻で、かつてのパートナー)の発案で、ネイサーから取り寄せたゲッター線増幅炉を積み込み、改良後のマジンカイザーとの共通パーツを使って、エンペラーと同レベルにまで改良を施した。そのため、シンフォギア世界に赴いた際の姿と比べると、胸の金のモールドの排除や関節部・腕部・脚部のカラーリング変更などがなされている。また、ゲッター線増幅炉の搭載で内部容積の整理もなされ、若干ながら、スマートな体型になっている。(スクランブルダッシュも小型化されている)また、トルネードクラッシャーパンチは『グレートスマッシャーパンチ』に刷新されており、エンペラーとのパーツ共有率が上がっている。(ZEROの因果律操作を超えるには、ゲッターの力が必要であるため)

 

「整備を数時間以内に終わらせて、出撃よ。大先輩の判断が下ったわ。あの子達にこちらの戦場を魅せるしかないわ」

 

「あのガキ共に耐えられんのか?相手はモトラッド艦隊の忘れ形見だ。地ならしで万単位の人間を殺せるんだ。怪異相手とはわけが違う」

 

「それを覚悟の上でいくと」

 

「どこの世界でも一本気だな、あいつ」

 

「向こうの501に話は通した。F-100と震電改を使わせるわ。ブリタニアはまともなジェットがないもの」

 

「ガリアのミラージュは?」

 

「その前段階にも手間取っちゃって、まだそこまで行ってないそうよ」

 

「あそこの金欠も極まったな…」

 

「すみません、向こうのあたしがごねたせいで」

 

「まっつぁんは『久しぶりに強情な娘っ子が見られた』って上機嫌だったそうな。セラのいう通り、見せて考えさせることになった。だが、敵はバグも使いかねない連中だからな。ケアは頼むぞ、ハッピー」

 

「わかりました」

 

A世界の芳佳はキュアハッピーとして参戦する事になった。だが、この時の話が同じく、来訪していた二つの他の統合戦闘航空団にも伝わった結果、三つの統合戦闘航空団が丸ごと参加の運びとなった。人数が増加したため、一同を運用可能な『轟天』の出撃が決められ、地下ドックが一気に慌ただしくなる。

 

「じゃ、先輩。機体の調整してきます」

 

「あたしは搬入された医薬品のチェックに」

 

「うむ」

 

キュアドリームとキュアハッピーは機体の調整、あるいは補給された医薬品のチェックのために向かう。ドリームはパイロットも板につき、ハッピーは医務官としての仕事に慣れてきている証である。

 

 

「総員、戦闘配置!直ちに出撃準備にかかれ!!」

 

地下秘密ドックに集まるよう、隊内放送が流れ、隊員たちは一斉に行動を起こす。プリキュア達も出動準備にかかる。敵はザンスカール残党。ある意味、ティターンズよりたちの悪い者達。64Fは戦争が始まって以来の強敵と相まみえることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――それから30分後、B世界の統合戦闘航空団幹部が集められ、武子は二年越しに64Fの秘密を公開した。未来世界の技術をふんだんに用いて建造された地下秘密ドック。そして、そこに鎮座する錚々たる宇宙戦艦達。そこに搬入されている各種機材と物資。まさに時代を超えた光景だった――

 

「貴方達に隠していたのは、子供達に下手に口外されて、敵にこの基地の秘密が明るみに出ることなのよ。それは了承してくれるわね?」

 

「ハッ…」

 

時代を超えた超技術の塊の地下秘密ドック、そこで整備を受ける宇宙戦艦達は明らかに時代背景的にはありえない代物である。その旗艦と思われる超弩級戦艦は大和型戦艦の系譜を継ぐというのが分かる。

 

「加藤さん……あの戦艦は……」

 

「大和の末の妹。そう言えばいいかしら?」

 

「末の妹!?」

 

「正確には超大和型戦艦の三番艦。秘匿名称は轟天。そう呼ばれている最後の大和型」

 

「大和型戦艦の派生と?」

 

「元は798号艦だか、799号艦として起工したものを、オーバーテクノロジーで宇宙戦艦へ作り変えた代物。だから、予算上は大和型戦艦の七番艦よ」

 

「な、七!?」

 

坂本Bは腰を抜かす。B世界での大和型戦艦は武蔵で打ち止めの状態であるからで、A世界では七番目まであるのかと。

 

「予算上の都合よ。実際は強化型の超大和型戦艦だけど、防諜のためよ」

 

艦首にドリルがついていて、元の大和型戦艦よりも大きな艦砲を有するのが素人目にも分かる轟天。スクリューの代わりにジェットエンジンやロケットエンジンと同じノズルが艦尾にあり、空を飛ぶ目的で改良されたのが分かる。

 

「あの、あの主砲は46cm砲よりも……」

 

「察しがいいわね、竹井。あれは51cm砲よ」

 

「51cm!?」

 

「大和型戦艦を超える戦艦だもの。主砲も強化されているわ。もちろん、オーバーテクノロジーでね」

 

竹井Bのみならず、B世界の統合戦闘航空団幹部は一様に腰を抜かす。大和型戦艦の時点で規格外と扱われていたのが、それすら超える51cm砲なのだ。艦砲としては史上空前の大口径である。それが近代戦艦の通例通りの配置で備えられている。大国の主力戦艦が大和型戦艦を除けば、40cm砲(良くて。欧州は35~38cm砲が主流であった)というB世界からすれば、常識を超えた大口径である。

 

「……この世界はどうして、そんな…」

 

「それまでの常識を超える事態になったからよ。だから、既存の発想を超えないといけなくなったのよ」

 

多少の嘘が入っているが、大まかには本当のことである。大和型戦艦に肉薄する性能の戦艦がバンバン現れ、超大和型戦艦が必要となったのは真実だからだ。轟天はドラえもん世界での日本海軍が1944年度の末にラ號の建造計画で提示していた姉妹艦のペーパープランを扶桑が『復活』させたラ號の準同型艦。ラ號の当初計画の武装と51cm砲対応防御を備えた改良版である。武子の説明に聞き入る一同。

 

「あなた達の部下達には召集をかけてあるわ。到着次第、点呼。乗艦をして頂戴」

 

「あ、あの、武子さん。何故、海軍の制帽を?」

 

「ああ。あの艦の艦長は私なのよ」

 

「えーーーー!?」

 

扶桑海軍の制帽をかぶり、この日に着ていた陸軍の旧・軍服(旧日本陸軍のそれと同デザイン)の上から、海軍第二軍装(純白の軍服)を羽織る。デザリアム戦役で海軍の風習に慣れたためだろう。

 

「船を指揮するには海軍の格好しないと。暁部隊は陸軍の手から離れたけど、宇宙戦艦は空軍軍人が指揮する事も許されてるけれど、海軍の格好としきたりになれるのが条件よ」

 

「だからって、陸軍の格好の上から海軍軍人の誉『第二種軍装』を羽織るんですか…?」

 

「仕方がないじゃない。元は陸軍だもの」

 

その言葉にずっこける竹井Bと坂本B。宇宙を『海』と考える未来人の常識に染まったが故だが、B世界からは奇異に見える格好ではある。そこも空軍黎明期にはよくあった光景である。

 

「隊長、全艦の乗り込みと搬入はあと20分で完了いたします」

 

副官の檜大尉が報告しにやってくる。武子の従卒から副官に転じた経歴の持ち主。B世界には存在しない人物だ。そのため、大尉の階級章がありながらも従卒のような仕事をしている彼女が気になる坂本と竹井。

 

「あの、今のは副官の方ですよね?大尉の階級章が見えましたけど、従卒みたいな…」

 

「あの子、新兵時代は本当に私の従卒でね。それで、今でも副官してくれてるのよ。もう10年近いかしら」

 

 

武子の副官かつ、妹分でもある檜大尉。彼女自身も武功章受賞経験のある腕っこきである。武子とは家族ぐるみの付き合いであったため、自身が大尉にまで栄達しても、武子の副官を引き受け、身の回りの世話も行う。そこが従卒と間違えられやすい理由だ。

 

「……従卒がそのまま副官に…」

 

驚きの経歴に唖然とする一同だが。

 

「なんだ。雁首を揃えおってからに」

 

「だ、大先輩!」

 

「加藤、子供達を連れて行くようだな」

 

「はい、大先輩。」

 

「子供達の面倒は儂が見てやる。貴様は戦に専念しろ」

 

「ハッ」

 

坂本Bと竹井Bの顔色が変わる。赤松が来たからだ。赤松は扶桑ウィッチ最長老である事はどこでも変わらない。違うのは、A世界では絵に書いたように豪放磊落な振る舞いであること、階級は中尉だが、叩き上げ出身であるために、上層部に黒江たちよりも顔が利く。また、入隊年度の関係で後輩たちのまとめ役であり、武子も敬語で接する。容姿はミーナやシャーリーが霞むような端麗なものだが、言葉づかいは完全にバンカラであり、俗に言うおっさん女子に入る。そのギャップが人気の理由である。黒江の精神的な意味での育ての母でもあるため、面倒見もいい。のぞみを鍛え直したのも彼女である。赤松が酒を片手に去っていくのを見届けた坂本Bは漏らすように言う。

 

「あれが赤松先輩だ、ミーナ…」

 

ほっとしたような坂本B。B世界では接点は殆どないが、鬼教官という噂は知っていたため、ちょっと怖いようだ。美人だが、酒飲みの尉官が坂本が奮えるほどの大物なのかと訝しむミーナBだが、赤松こそが『最強のGウィッチ』であり、『孔雀座の白銀聖闘士』なのである…。(B世界でも未だ最強かどうかは定かではない)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。