ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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小休止の日常話です


第百二十五話「小休止~とある日常~」

――これはデザリアム戦役が終わって間もない頃…――

 

2020年も夏真っ盛りになった7月。一つの戦争が終わったロンド・ベルは長期休暇がもらえたが、交代制になった。ジオン残党狩りなどの任務はネオ・ジオンの消滅後もまだ継続していたからで、プリキュア達とウィッチはその第一陣となった。休暇とは言え、広報活動は行うこととされた。これは日本連邦の決定でもある。そのため、広報活動をする事を鑑み、変身しているようにしていた。

 

「今日は街のイベントだっけ?」

 

「トークイベント。おもちゃ屋の企画なのよ。私とミラクルとハートで出るから、留守番頼んだわよ、ドリーム」

 

「任せてよ。いってらっしゃ~い」

 

のび太の街は疫病もあまり関係がなかった。近くに衰退したとは言え、先進技術を持つ学園都市があるからだ。のび太の街は学園都市の隣とは言え、基本的にはのどかな郊外の街である。一言で言えば、疫病が巷で話題になっていたとは思えないほど平和であった。ハートたちを見送ると、今度は調が買い物に出かけようとしている。シンフォギア姿で買い物カゴというのもシュールだ。

 

「調ちゃん、買い物?」

 

「ええ。今日はジャイアンさんのお店がタイムセールなんですよ」

 

「近頃はこの辺も物騒だから、付き合おうか」

 

「お願いします。いくらシンフォギア纏ってても、学園都市から追い出されたゴロツキ相手じゃ不安なんで」

 

「あいつら、能力持ちも多いからなぁ。ピーチ、調ちゃんの買い物に付き合ってくるから、留守番お願い~」

 

「OK~」

 

調はこの街ではシンフォギアを纏っている事が常態であった。最初は修行だったが、デザリアム戦争が終わった後は純粋に身体保護目的で纏っている。これは2010年代後半に学園都市が政治的に衰退したためだ。解体された暗部部隊の構成員や不要とされた能力者の少なからずは外の世界へ退去させられた。現役時代からの年月の都合で平和に学園都市を去った御坂美琴らは幸せなほうである。この時期になると、日本政府の介入で行き場を失った者達がゴロツキになり、隣町のススキヶ原の治安をかなり悪化させていた。ノビスケが幼稚園バスごと誘拐されかけた事件を期に、いくら聖闘士となっても、見かけは以前より背が高くなった程度しか変わっていない調が普段着で出歩くには、目をつけられる危険が増したことが判明したため、自衛のためにシンフォギア姿で買い物をするようになっていた。それでも防御力にやや不安があるのが現状だが、これは学園都市の遺産である『能力』の力によるものだ。

 

「この辺も寂しくなったなぁ」

 

「疫病が流行ってますからね。前はもっと賑わってたんですけどね」

 

再開発された駅前は以前は賑わっていたが、時間帯にもよるが、生活必需品を買いにくる主婦や大学生などしか見なくなっていた。

 

「でも、相変わらずすごいなぁ。他の街なら、すぐ注目されるんだけど」

 

「この街じゃそういうもんですよ」

 

シンフォギア装者がギア展開姿で出歩き、プリキュアが変身した姿で闊歩しても気に留める者は少ない。この街、いや、この世界特有の現象だろう。調は道では脚部の内蔵ローラーを使っているが、現在のギアでは脚部のデザインが多少変更され、歩行ができない構造ではなくなったため、店内では歩行で移動するようにしている。(これはギア姿で生活する内に起こったギアの小変化である)

 

「この街も随分と変わりましたけど、変わってないところもある。ほら、あそこに裏山が見えるでしょう?」

 

「本当だ」

 

「今はてっぺんにホテルが建っちゃったけれど、山自体は残ったんです」

 

「へー。つーか、ホテルなんだ」

 

「マンションのはずだったらしいんですけど、再開発が進む内に変更があったみたいです」

 

のび太が卒業した小学校の裏山は校外学習などでよく利用されていたためか、地主が代替わりしても、山自体は切り崩される事はなかった。だが、2000年代後半にホテルが建設されてしまい、景観を多少損ねてしまった。(23世紀に戦乱で焼失。再建されず)ホテルそのものは23世紀に事業主が戦乱で撤退するまで存続する。200年近くは存続した計算で、のび太曰く『隠れ家的な雰囲気を目指したホテルだったよ。食事も悪くはないけど、他の街から来る客用って感じだよ』とのこと)そんな会話をしていて、本屋の前を通りかかると。

 

――ウィッチ世界のジェンダー観を問う――

 

との内容の週刊誌の煽り広告が目に入る。実際のウィッチ世界は伝統的に女性優位であった。マロリー大将が偉大な兄へのコンプレックスと家庭での弱い立場がウィッチたちへの嫉妬に繋がったように、ウィッチたちはむしろ優遇されていた。ところが、ティターンズの台頭でウィッチ達がわがままを言いまくったため、それまで抑え込むしかなかった男性たちの反発が爆発した結果、46年以降のウィッチの立場の凋落に繋がった。伝統的に立場が強い扶桑でさえ、『運用ノウハウ維持の為に雇用をしている』という風にまで短期間で堕ちた事は、ウィッチ達の傲慢の表れだった。太平洋戦争開戦前の時点では、それまでと逆にウィッチ達が『発展した兵器や知識を必死に覚えないと、軍から放逐されてしまうのでは』という恐怖に怯えている。64Fの立場が盤石になったのは、ダイ・アナザー・デイ、デザリアム戦役で『未来兵器も手足のように扱い、それでゲリラ戦をしてきた』という事実が高く評価されたためだ。

 

「古今東西、女性の権利拡大のために努力してきた先人の事を考えないで、他の世界を見下すのが問題なんだけどな。似たことを時空管理局もして失敗したし」

 

調はそう愚痴る。日本で議論されているように、ウィッチ世界は『ウィッチだけが怪異に正面切って立ち向かえる』という一つの事柄があったから、女性優位の社会構造であった。だが、それが加速度的な科学技術の発達で覆った結果、あっさり崩壊し、ウィッチ達は十字教的価値観もあり、欧州で一気に疎んじられ、虐殺まで起こった。多くは比較的に理解がある扶桑に逃れ、そこで義勇兵として戦う。欧州の軍事強国の複数が衰えた理由はウィッチを疎んじ始めたためでもある。日本連邦は学園都市や裏世界での各宗教の非合法活動部門の存在から、ウィッチ能力そのものは疎んじるよりも活用に舵を切り、1946年の思想調査からの一定数の切り捨てを経て、軍ウィッチの立ち位置の再構築を行う。太平洋戦争はその最中に開戦するのだ。それまでのような専横こそ許されなくなったものの、普通の兵士や将校よりは高待遇(昇進が多少早い、元帥になれる機会が比較的に多い)なことには変わりない。(Gウィッチ達はダイ・アナザー・デイでの功績を鑑みての『特別待遇』が連合軍ぐるみで許されているが、それは例外中の例外である)

 

「世の中、自分達の価値観が絶対だって思うとしっぺ返しされるんだよね。あたしやなのはもそうだったし、切歌ちゃんもね」

 

「私もですよ。 古代ベルカで経験ありますから。たぶん、響さんも」

 

「ガングニールのあの子か。あの子、ガングニールより上の宝具があることを中々認めなかったからね。最近はどうなってんの?」

 

「エクスカリバーや乖離剣エアを見せつけられた後ですからね。師匠が入れ替わってた時にイガリマを弾き飛ばすの見てますし、黄金聖衣がイガリマの攻撃を通さなかったのは目の当たりにしてるから、自分の力は違うって信じたのかも」

 

「ガングニールはロンギヌスと同一のもの……か」

 

「ええ。ロンギヌスは十字教の『彼の人』を殺したって話ですよね。でも、たいていの場合はあれとグングニルは別の存在。だから、私達と関連性がない世界じゃ、絶対性は無くなる。そこがわからなかったのは落ち度ですよ。私達にとっても」

 

「そういえば、あの子。あたしらを羨ましそうに見てたっけ」

 

「多分、あなたたちは世界を本当に救えるからじゃ?響さんは家庭が一回、父親の失踪で壊れたっていうし、自分の居場所を失いたくないために、アテナ…、沙織さんにも食ってかかったっていいますから。私の世界じゃ、キャロルは不可抗力で救えなかった。それに、グレートカイザーは現代科学の延長線上の兵器。それが普通に神をも倒せる事は、シンフォギアの存在意義を揺るがしますからね」

 

調は黒江が入れ替わっていた時期の立花響の態度には冷淡であった。半ば自業自得だからだが、自分がその立場に立ったなら、気持ちはわからないわけではないため、どちらかと言えば、同情しているようでもあった。響は数年後にキュアグレースへ覚醒し、花寺のどかとしての記憶も目覚めるものの、根幹は立花響のままとなる。これはそれまでのつながりを無くすことを良しとしない強い心が自我の統合を防いだためで、調との完全な関係改善はその時を待つことになる。ここから更にウィッチ世界で四年後のことだ。

 

「そういえば、あの子のおかげでさ、シャーリーが前世の名前を使う機会が減ったとか」

 

「同名でしたっけ、シャーリーさんの前世での名前」

 

「北条響。それで相方が南野奏」

 

「あー…。反応しますね。それも二人」

 

「え?」

 

「翼さんの亡くなった相方、天羽奏さんっていって…」

 

「メロディとリズムが聞いたら苦笑いもんだなぁ。それで、めっちゃ愚痴られてね」

 

シャーリーに愚痴られたと、ぼやくキュアドリーム。そんな会話を交わしていく内に、ジャイアンの経営する『スーパージャイアンズ』につく。

 

「行きますよ、ドリーム」

 

「うん……オバハン連中に遅れを取らないようにしてっと。それとマスクはしていこう」

 

「意味あります?」

 

「マナーの問題さ」

 

と、この時期のマナーの問題でマスクをしたり、マフラーで口を覆った上で。二人は殺気立つオバハン軍団と争いつつ、生活必需品と食料品を確保していく。

 

「オバタリアン共はのけのけ~!邪魔だぁ~」

 

調も雰囲気に呑まれ、この時期にはとうに死語になった『オバタリアン』という単語を口走り、ドリームに苦笑される。

 

「お、オバタリアンって…。あたしの生まれた頃か、それ以前の単語だよ?なんで知ってんの?」

 

「……昔の漫画を古本屋で読んで」

 

「なるほど…。あ、醤油が100円だよ!」

 

「確保ぉ~!!」

 

タイムセール特価をいいことに、買いまくる。貯まりに溜まったポイントカードのポイントも使って。

 

「おおおお!」

 

「ああああっ!」

 

二人は変身していたが、殺気立っていたオバハン軍団の前では有効とはいい難かった。逆にいうと、日本のオバハンは下手な変身ヒロインよりよほど恐ろしいという事だろう。だが、調はほしい野菜を確保するため、ドリームは欲しいお菓子を確保するため、オバハンの肩に手を付き、前転宙返りでそれぞれ品物を確保する。なんとも能力の無駄遣いだが、これが争奪戦であった。

 

「こういう時に使うなんて。……クロックアップ!」

 

調とドリームはGウィッチとして得た『タキオン粒子操作能力』で仮面ライダーカブトのそれと同じ原理の加速『クロックアップ』を起こす。クロックアップは物理的加速ではないため、昭和ライダーの加速装置を超える速さを発揮する。時間の流れを外れるからで、昭和ライダーが原理を解析するのに数年かかったというほどの平成ライダーのアドバンテージ。(世紀王であるRXには通じないが)

 

「でもさ、この力、チートじゃない?また、向こうのあたしに愚痴られそう」

 

「RXの光太郎さんには効かないんですけどね」

 

「え、本当?」

 

「世紀王ですから…」

 

「あー…。さすがキングストーン持ち」

 

黒江がシンフォギア世界で絶対的優位を保った理由の一つがクロックアップの存在であった。時間の流れを外れるため、シンフォギア装者が如何な手段を講じようと、『止まっているも同然』。ましてや黒江にはハイパークロックアップもあるため、キャロル・マールス・ディーンハイムがどんな錬金術を用いようと、切歌がどんな攻撃をしようとも無力だった。特に切歌やマリアと敵対関係にあった時期には『どんな攻撃も当てられない』ということで、マリアは『対処できない』と嘆き、切歌はイガリマの特性に固執してしまったわけだ。調は帰還時の感応で、ドリームはZEROとの融合で得た。そのため、二人は同位体から『チートだ!!』と詰め寄られ、説明に四苦八苦するハメに陥っていたりする。

 

「ふう。まさか、戦闘以外でクロックアップやるなんて」

 

「オバハン軍団の先を行くには仕方ないさ。さ、会計済まそう」

 

表現はオーバーだが、約20分ほどで戦いは終わり、二人は一仕事を終え、清々しささえ感じていたが。

 

 

「お二方、社長がお越しくださるようにと」

 

「ジャイアンさんが?」

 

会計を済ませたところでジャイアンの秘書から呼び止められ、そう言われた二人は、スーパーの最上階にあるジャイアンのオフィスに案内される。大人になったジャイアンは自分がバリバリ働くタイプの経営者であるため、店のペントハウス部分にオフィスを構えている。屋上にはプレハブ(と言ってもツーバイフォーの頑丈なもの)が事務所でお金の管理や業者の応接に使う部屋がある。そして事務所の反対側に屋上遊園が小規模だが、ある)調ものぞみも『ジャイアンさん』と呼んでいる。俗に言うニックネームが本名より知られている例で、ジャイアンもそれを容認している。

 

「やぁ。よく来たね」

 

ジャイアンは30代に入ったこの頃からは貫禄をつけるためか、ちょび髭を生やしていた。子供も小学生になったからだろう。なお、風貌は厳ついが、成人後はレディ・ファーストなため、青年期以降の時期は意外とモテており、仕事で知り合った妻からもそういう評価である。

 

「ジャイアンさん、用事ってなんですか?」

 

「のび太に頼まれていたものが完成してね。君たちに渡そうという事だよ」

 

ジャイアンは思春期に苦労したためか、子供時代に見られた粗暴さは鳴りを潜めており、風貌は厳ついが、ノビスケを含めた息子世代の子供たちに『ジャイチビ(息子・ヤサシの渾名)のおじさん』と呼ばれ、慕われている。身長も190cm以上で、のび太達と依然として差をつけている。大人になった後の一人称は家族とのび太らの前以外では『私』に変わっており、立場相応に成長している。

 

「のび太くんに?」

 

「あいつが子供の頃から好きだったお子様ランチのレシピだよ。大人になった今では食べられないからね」

 

ジャイアンは自身の従兄弟の一人が2010年代にレストランを開いた関係で、食料品の取り扱いを増やしており、のび太に『グルメテーブルかけの持ち合わせが少なくてね』という名目でオリジナルの料理商品を作らせられている事も多い。スネ夫が主に裏稼業と趣味でのび太に頼られているのに対し、実生活ではジャイアンを頼っている。21世紀には骨川コンツェルンのCEOであるため、余計に浮世離れした感のあるスネ夫よりもジャイアンを実生活では頼っている。スネ夫ものび太たちと次第に生活する場が乖離していくことに思春期は悩んだが、成人後は割り切っている。のび太らも成人後は成功者であり、スネ夫とそれほど離れなくなったからだ。

 

「ありがとうございます、喜びますよ」

 

「私も本当なら加勢したかったんだが、今は店が軌道に乗ったばかりだ。店を空けるわけにもいかん。だから、スネ夫に頼んだ。あいつにはスネツグ君というナンバー2がいるから、会社を空けても大丈夫だからね」

 

「そういうわけだったんですか」

 

「うむ」

 

ジャイアンがダイ・アナザー・デイに直接の加勢をしなかった理由は、2010年代半ばに入る頃に開業した『スーパー・ジャイアンズ』の経営がちょうど軌道に乗り出したため、店を空けられなかったためだ。スネ夫が参戦した理由は、人格者である実弟のスネツグがコンツェルンの実務の多くを取り仕切っている(スネ夫は貿易業が仕事の中心で、決済が中心である。)からで、妹のジャイ子に好きなことをさせたジャイアン(剛田武)の両親だが、長男の武には家業を継ぐことを義務とする厳しさを見せた。ジャイアンはそれを良しとし、歌手の道を諦めた(実際は才能ゼロだが)。中高の時期に街の再開発で家が傾きかけたからで、大学で経済・経営学を修める要因であった。良くも悪くも、ジャイアンのワンマン経営の体裁が強いが、ジャイアンが有能な経営者であった事、資金面でのび太やスネ夫のバックアップが保証されていた事から、疫病の状況でも影響がなかったのである。

 

「君等のやっているラジオ番組のスポンサーになろうと思ってね。ジャイ子が世話になった礼だよ」

 

呵呵と大笑するジャイアン。前年に引き続き、2020年もコミカライズ担当することになったジャイ子の漫画家生活が順風満帆になり始めた(2018年頃に同人活動期以来の仲である茂手もて夫と結婚し、この頃には一子を儲けている。その子の血筋がセワシに繋がる要素になるとの事)ことへのお礼として、キュアブロッサムとキュアハッピーがやっているラジオ番組のスポンサーになる事を伝える。

 

「ブロッサムとハッピーが喜びますよ」

 

「それと、ジャイ子が大手の漫画雑誌に新連載を持つことになってね。その、助けになってくれないかね?」

 

「任せてください!このキュアドリームがジャイ子ちゃんの漫画を成功させてみせます!けってぇ~い!」

 

その場は鼻息荒いが、実はほとんど出任せを言うキュアドリーム。こうした『悪い癖』ものび太に良く似ている。血のつながりはないが、似た者同士であるため、とても気が合う。それがのぞみの転生後における子孫が野比家の分家扱いでドラえもん世界に存在してゆく理由となった。とは言え、そのでまかせも間違いではない。のぞみには多くの後輩たちがおり、プロットを練るのに様々な意見が聞けるのは事実だ。その音頭を取ったのぞみ、ラブ、めぐみ、マナの四人のピンクプリキュアの尽力もあり、2020年にジャイ子が連載を始めた『ウェディング・メロン』というオリジナルの恋愛漫画はコミック売上が発売からの数週間で500万部を突破するヒット作となり、ジャイ子の漫画家としての地位を盤石にし、『ヒットメーカー』と出版業界で評判になる。ジャイ子は以後、オールマイティーな作風で知られるようになっていき、メロドラマ、ロマンティック・コメディー、冒険活劇、西部劇、重厚な歴史もの、神話もの、スペース・オペラ、血生臭い戦場の悲哀を描いた戦争、傭兵もの。はたまたそれらの派生であるロボットものまでこなせるため、21世紀の漫画界に旋風を巻き起こしたと記録される。これはジャイ子の真摯な漫画への情熱、のび太たちの尽力とが合わさった奇跡である。また、のび太達が各分野の専門家とも言える詳しさだったことから、それが助けとなった。後の世には『2020年代に台頭した世代でトップの漫画家』という評判であったという。

 

 

――その帰り道――

 

「あんな大見得はっちゃって、大丈夫なんですかは?」

 

「大丈夫、みんなにも頼むから。こういう時にトップ3で良かったって思うよ。あたしの下に50人以上いるし…」

 

「まさか、後輩の皆さんを?」

 

「ゆりさんいないのが残念だけど、だいたいのサンプルにはなると思うよ」

 

のぞみの下には50人を有に超える後輩がいる。全員はいないが、だいたいの傾向のサンプルにはなるし、のび太は漫画評論家になるつもりでもあったので、審美眼は備わっている。そこもジャイ子の幸運であり、環境としては最良に近い。

 

「うーん。こういう時にひかるちゃんがいればなぁ…」

 

「もしかして、キュアスター?」

 

「うん。前にいちかちゃんから聞いたけれど、ひかるちゃんのお母さん、漫画家って聞いたんだ」

 

星奈ひかる/キュアスターは実母が漫画家であったため、好奇心旺盛であった。のぞみの前世では、成人後にJAXAに就職したとの事。ドリームは前世では共闘が殆どなかった後輩へ思いを馳せる。

 

「面識あったんですか?」

 

「みらいちゃんといちかちゃんから話は聞いてたんだけど、殆ど会ってないんだ。代が離れすぎててね」

 

はなとは共闘経験が数度あったが、ひかるとは一、二度しか共闘がない事を示唆したドリーム。プリキュアオールスターズもはなの頃を最後に結集自体が無くなっていったためだともいう。そこが前世におけるドリームの悲劇でもあったのはいうまでもない。

 

「前世でポカやったのは、その頃だったな。呼び出される時だけは14歳に戻れたから……」

 

自嘲しているドリーム。プリキュアオールスターズの功罪は『ランダムにプリキュア変身者を平行時空から呼び出し、現役時代の姿に一時的に戻す』点であり、のぞみは前世で成人後にはなと揉めた挙句、オールスターズを割ってしまった後悔がある。キュアブロッサムに気にするなと言われたが、前世における罪が消えるわけではないと考えている。そこがデザリアム戦役で彼女自身が思いつめてしまった原因の一つである。

 

「のび太が言ってましたよ。『罪は消えないが、後から責めるな』って。のび太だって、人生で何度か後悔があって、ドラえもん君のおかげでやり直せるチャンスを得た。だから、あなたにもありますよ」

 

「そう…だよね。だから、ZEROを受け入れたんだ。つぼみちゃんの後押しがなかったら、倒してたと思う」

 

ドリーム/のぞみはもはや、ヒトを超えてしまった身である。完全に『後戻りできない』選択であったが、キュアブロッサム/花咲つぼみが背中を押してくれ、ZEROと融合した。結果的にGウィッチとして『完成』されたものの、完全に神域へ達していいのかという葛藤もあったのは事実である。(ZEROが神域へ達していたため、それと融合することは『ヒトを超える』事を意味する)

 

「だから、素でマジンガーの技を?」

 

「うん。ラブちゃんもアギトの力使えるみたいだから、これでシャーリーとの三羽烏化が進むなぁ。シャーリー、今はガサツだし」

 

「あの、シャーリーさんって、本名がシャーロットなのに、渾名がなんで…」

 

「おばーちゃんがシャーリーって呼んでたのが始まりだって。だから、今は別名義が二、三個あるけど、シャーリーって呼ばれてる」

 

シャーリーはダイ・アナザー・デイを境に、『紅月カレン』、『北条響』名義の戸籍を作り、使い分けるようになった。実際には麦野沈利とアネモネの要素もあるため、キュアミューズ曰く『プッツンすると、原子崩ししてくるんだけど』とのこと。原子崩しをしている時は麦野沈利の粗暴なところが表面化し、言動もタガが外れるので、周囲を怯えさせる。そのせいでバルクホルンからも引かれていたりする。普段も紅月カレンのガサツで勝ち気なところが強く出たため、荒っぽい性格である。もっとも、北条響の温厚なところも一応はあるため、有り体に言えば、『キレると何するかわからないが、普段はおおらかで気のいい姉ちゃん』である。

 

「そう言えば、前世で遺恨がある人が何人かいたって愚痴ってますけど」

 

「ルルーシュとスザク、シーツーの三人だって。曰く、思いっきりぶん殴りたいそうな。ま、シーツーは気になる事があるから、ある意味怖いって」

 

シーツーの声がほのかに似ていた事を思い出したのか、一種の懸念を持つシャーリー。それを教えるドリーム。

 

「シャーリーさん、変に気にしますね」

 

「ま、エレンが織斑千冬経由でクラン・クランになってたからね。それを踏まえてるんだろうね。だから、箒の幼馴染向けの芝居をしたんだろうけど」

 

「そう言えば、ケイ先輩の前世、どう考えても、東南アジア圏の裏社会でガンクレイジーしてたようにしかねぇ」

 

「本人は芝居って言ってますけど、素でガンクレイジーですからねぇ」

 

圭子の『前世』が誰であったか。それも圭子の周りの人間の関心事だが、黒江は目星をつけていたし、調もそういう予感がしている。実際、圭子のガンクレイジーぶりは単なる演技で説明のつかないところが多い。そして、ヤサグレ度の高い粗野な言動は演技で説明できないところがある上、今回の転生での事変当時、江藤が『あいつは頭打って、トチ狂ったのか?』と腰を抜かすほどの言動を公然と行ってもいる。

 

「軍に入った時の教官がケイ先輩の同期でさ、同期の人たちからも『あいつはいつから、兵隊やくざになった?』って評判だったそうだよ」

 

――圭子は今回の転生のことだが、同期の間で『兵隊やくざ』と呼ばれていた。記憶の封印が解けた1942年以降はマルセイユも従順になるほどに粗野な態度を通し、アフリカ戦線では『血まみれの処刑人』、『暁のガンスリンガー』などの渾名を得ている。古巣の扶桑陸軍からは『扶桑陸軍の狂気』扱いである。

 

「そう言えば、ケイさん、素でノイズ倒せる上、雰囲気がイカレポンチでしょう?一度、私がのび太のところに行ってるのを事後報告でSONGに顔を見せた事あるんですけど、ドン引きされてましたよ」

 

「まだいいよ。アフリカ戦線じゃさ。普通の時に片手でライフルを撃って、棒切れのように振り回すなんて当たり前、トマホークで怪異をぶった斬る、一人で陸戦ウィッチの数十人より強かったとかの伝説を残してんだから。だから、ダイ・アナザー・デイの時の査問がね…」

 

ドリームもミーナの無知にだけは同情できないらしい。圭子のアフリカ戦線での武勇はあまりに有名だからで、マルセイユやハルトマンがミーナの無知に本気で腰を抜かすほどであった。それを知らずに圭子の部下を試すかのような態度を取ったミーナの覚醒前の態度はマルセイユをして、戦々恐々とさせた。のぞみはその前後に覚醒したが、直前の錦の態度のおかげでえらい目にあったといい、苦労をしたとも語る。

 

「ケイ先輩、言動は抑えられるから、出世できたんだよな。今じゃ将官だし」

 

「ウィッチって出世が早いですね」

 

「妹の代からはそうでなくなったけど、芳佳の代まではそうなるね。調ちゃんまでがそうだと思うよ」

 

「籍はありますからね。太平洋戦争じゃ、大尉くらいになるかな」

 

「少佐にはなると思うよ。今は経験あるウィッチが貴重だし、パイロットとしても腕が立つのはなおさらね」」

 

「ところで、ダブルエックスは乗りこなせます?」

 

「のび太くんがあたしにくれた力だしね、あれは。ジオンは阻止したから、後は…」

 

キュアドリームは帰り道、来る太平洋戦争への決意を見せる。それがのび太からもたらされた『ガンダムダブルエックス』という力の意義を自分なりに考えている証。お気楽極楽であった現役時代より『大人』になったところを見せつつ、年下である調の前では、ついつい姉貴分として振る舞いたくなるのだった。

 

 

 

 

 

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