――なぜ、黒江達が時たま、自嘲的な発言をするのか?それは『ゴルゴや、青年のび太に勝て』という無茶な中傷が多く寄せられている事、味方側として共闘ばかりしておきながら、なぜ、正面から戦わないのか。そういった子供じみた考えの中傷、自分らが『元は脇役出身の身』というメタ的な理由も絡んでいる。黒江達は実際に手合わせはしているが、バトル漫画の攻撃は『ギャグ漫画出身のキャラには致命的なダメージは絶対に負わせられない』という世界の不文律を味方にしているのび太、物語のデウス・エクス・マキナ的な立ち位置であるゴルゴ13は『重傷は負わせられるが、色々な要素が絡みあって、絶対に勝てない』という結果がわかっている。ゴルゴの承諾を得た上で、ダイ・アナザー・デイの直後に『極秘裏』に実験してみた結果である。『お互いに五分五分です』と言いたいらしいが、二人への敬意もあるが、『世論』に配慮したからであり、少なくとも、三人が自重をし始めるきっかけは『のび太を巻き込んでのネットでの誹謗中傷』なので、中傷には一定の効果はあったというべきか――
――2004年頃――
高校生になったのび太。当時は引っ越しが数年以内に決まり、身辺のものの整理を始めた時期にあたる。野比家がちょうど、公園の拡張予定地に入っており、元々が借地だった事もあり、野比家は『駅前のマンションに優先して入居できる』ことになったが、『トイレの設置予定地になったから』というのは、些かの侮辱感があるため、のび助と玉子は反発し、区側と揉めていた。更に、区側の計画が寝耳に水であった野比家周辺の住民も賛同した結果、都と区が莫大な慰謝料を支払うのを躊躇ったため、結局、和解はのび太が大学二年になる頃まで持ち越され、野比家の引っ越しも2007年前後のことになった。
「のび太、どうでした?」
「オヤジ達、かなり揉めてるようだ。こりゃ、数年くらいかかりそうだ。ウチの位置に公衆トイレを立てるっていうもんでさ」
「あー……なるほど」
のび助と玉子はこの日、周辺住民の集まりでの区との話し合いに行っている。調は黒江の指令で横須賀基地の下見に行っており、不在。ドラえもんも定期検診のため、家にいるのはキュアフェリーチェのみであった。この年はのび太が比較的に平穏に過ごせた年であるが、フェリーチェにとっては不思議な年であった。プリキュアの事実上の『始祖』である、なぎさとほのかの現役時代をTVアニメという形で見ることになったからである。また、この頃から、自身も街の安全のために戦い始めていた。ただし、プリキュアである事を公にするのは、世にプリキュアオールスターズという単語が根付いた後のことである。その関係で『ススキヶ原に現れた、謎の美少女戦士』として、噂が流れ始めていた。
「あ、君の先輩たちのアニメの録画かい?」
「ええ。私はプリキュアオールスターズの経験がないんですよ。みらいとリコはあるんですが、私は途中参加なので…」
「あ、そうか。君はスターズ時代からの参加だったね」
「ええ。なので、オールスターズとしての経験は一回きりに」
「HUGっとの時代の出来事だったね?」
「その時が今のところ、最初で最後ですね。しかし、まさか、ウィッチ世界に先輩方が転生していたなんて」
「大人の僕からの連絡だと、もう何人もいるようだね」
「ええ。どうしましょう」
「その時間軸の僕たちに任せよう。今の時点の君はまだ未熟だからね」
この事から、ダイ・アナザー・デイに途中参戦したフェリーチェは2020年代の時点からやってきているのが分かる。2004年時点では、『筋は悪くないが、守勢側に回ると脆い』ということが指摘されている。のび太にとっては、時間軸の違いは意味がないものになっているため、青年になった自分とは連絡を取り合っている。これにより、フェリーチェは本格的に格闘技をヒーローたちや黒江らから教わることになり、2004年時点ではその端緒についたところであった。また、この年から、盛夏の二週間を流竜馬と共に、空手合宿(流竜馬は未来世界においては、空手道場を経営する格闘家としての顔を持っており、早乙女研究所から離れ、隠棲生活を送っていた時期はそれで生計を立てていた)をするようになり、2019年から、キュアドリーム(夢原のぞみ)が加わるのである。竜馬は成人後は身寄りがいなくなった(高校在学中に父が、次いで病弱であった母が高校卒業後に死去。既に妹が交通事故で死去済みであったため、天涯孤独になった)ため、大まかには粗野な印象が強いが、意外に面倒見が良い。特に妹を早くに失ったせいか、女性に意外に優しく接する面もあり、そこの面が世界線にもよるが、『息子』の拓馬の誕生の理由でもある。
「竜馬さんに、大人の僕が合宿を頼んだようだから、夏真っ盛りになったら、行きな」
「わかりました」
竜馬は父の一岩から空手を仕込まれたが、成人後は空手主体の総合武術を構築する方向に切り替えており、合気道や太極拳などの防御主体の武術も教えていた。空手一辺倒では、23世紀の宇宙時代では『食っていけない』からである。この頃は初夏であったため、のび太は半袖姿である。声変わりして間もない10代なので、この頃は全体的に若々しい印象がある。
「のび太はどこに?」
「16になるから、本当はオートバイの免許取りたかったんだけど、おふくろに反対されてね。仕方ないから、18になったら、車の免許取ることにした。受験勉強の合間の息抜きに、その勉強でもしてくる」
のび太は意外なことに、自動車の免許については数年後に一発で合格。生涯を通して、モータースポーツに傾倒気味の人生を歩む。その頃に大叔父の遺産を相続し、ミニクーパーSを所有することになったのも大きかった。
「おふくろが足をくじいたらしいから、その姿で買い物いってくれないかい。僕はおふくろが許可してくれないと、家を離れられないしね」
「それじゃ、買い物カゴとメモをください。行ってきます」
のび太は高校入学後も成績そのものは低空飛行状態のままであったため、中高生時代ののび太は勉強漬けに近い状態に置かれていた。志望校がしずかの入ろうとする難関の大学だったのも大きく、中高生時代は勉強の時間のほうが多かったくらいだった。その関係上、この頃に中学生であり、成績優秀(元々が神の後継者となる存在であり、妖精枠でもあった関係上、学業面は極めて良好であった)なことはが買い物を代行する事が八割であった。なお、調はこの当時は地球連邦大学に在籍中の学生だが、黒江の使いで不在にする事も多くなっているので、学校生活以外の縛りがないことはが常駐の身であった。
――フェリーチェの姿であるので、窓を開けて、そのまま買い物かごを持って飛行する。変身前の状態では箒を使うのだが、さすがに目立ちすぎるというので、変身した姿で買い物を行っている。これはデフォルトの姿での精神年齢が幼児そのものであるので、流石に中学生になって、それは不味いというドラミのアドバイスがあったので、変身後の大人びた状態に慣れるため、変身後の姿を保っているのである――
「じゃがいも、カレール、牛肉、お米……。ビーフカレーのようですね」
一路、駅前商店街へ飛ぶ。この時代には再開発も始まっていたが、河川敷のグラウンドは維持されており、高校生になったジャイアンが仲間内で草野球を楽しんでいる姿が見える。
「今日も変わりなし…と。学園都市の近くにあるというのに、この街は不思議とのどか…。はやては『江戸期の認識阻害魔方陣』の名残りだというけれど…」
ススキヶ原は江戸初期の人物『大久保長安』が存命中に自身が京から得た陰陽道の知識などを駆使し、何らかの認識阻害魔方陣を構築した際の起点の一つとなる土地だった。江戸期には形骸化したように思える陰陽師だが、実は彼らは魔導師に近い才能を持ち、それが独自の発展を遂げていた。時代が下るにつれ、形骸化していったが、大久保長安の暗躍していた時期はまだ本来の能力が保たれており、その知識を得た彼が独学で構築した。江戸幕府もそれを公認しており、江戸城を外敵から守る目的で魔方陣は構築された。時と共に本来の目的は忘れ去られたが、ススキヶ原が太平洋戦争での戦火を免れているなど、不思議な出来事も多いため、数百年後も効果は維持されていたと見るべきであろう。そんな考察をはやてがしていたのを思い出し、この土地に宿る魔力が『モフルン』の復活の一助になることに一縷の望みを託している。マジンガーZEROに全てを奪われた彼女は、この地で傷を癒やす日々を過ごし、反撃の狼煙を上げる時をひたすら待つことになる。
「強くなって、あの魔神と戦える力を持たなければ……。そう、因果律を超えられる力を…!!!」
何度思い出しても、悔しさと悲しみがこみ上げる『マジンガーZERO』の無情、自分が愛した二人の無念、自らの無力。神となる因果から切り離され、単なる『一人のプリキュア』に貶されたフェリーチェ。大地母神としての力は失われたが、その名残りで強大な魔力を持つ。単純な魔力値なら、なのはやフェイト、はやてをも上回る。(元々が大地母神のフェリーチェに比肩しうる魔力の三人がオカシイのだが。)魔力値そのものは容量の大きさに過ぎないが、ウィッチ世界では、リンカーコアが生じにくい体質が多かった事、世界としての先入観などもあり、10代のうちしか力を発揮できない者が多数派。極稀に、結婚して、子を為しても『シールドを維持できる』一族がいるのだが、扶桑では宮藤家が該当した。時空管理局の魔導師の存在はウィッチ世界を震撼させている。なのは達の存在はウィッチ世界の変革への第一歩になるが、同時に混乱の時代の扉を開く。そして、ウィッチ世界の先入観が黒江らの冷遇に繋がるのである。
「すみません、じゃがいもに、にんじんはありますか?」
駅前商店街の八百屋の前に降り、店主に尋ねると。
「ちょうど、産地直送野菜が入ったとこ。特別に安くするよ。お嬢ちゃんには、ウチのネコが世話になったからね」
「いいんですか?」
「カミさんにバレたら、大目玉だったからね。持っていきな。ワシからのサービスだよ」
ここからは商店街を闊歩する。ススキヶ原駅前の数百mに渡って、昔ながらの商店街が軒を並べている。屋根がないため、昭和30年代の風情を残していた。じゃがいもとにんじんを入手した後は米屋に向かっていたが。
「あれ、フェリーチェ君じゃないか」
「出木杉さん。あなたも買い物ですか?」
「母に買い物を頼まれてね。野比君は元気かい?」
出木杉英才は航空工学科志望なので、この頃になると、のび太たちとは別の高校に通っていた。将来はJAXAに入りたいと言っており、成人後は日本連邦初の火星居住実験に参加し、その時に知り合ったNASAの職員と国際結婚。後に一児を儲ける。この男児がノビスケが張り合う相手であり、よき友になる『出木杉英世』である。
「勉強漬けなのを愚痴っていますが、元気ですよ」
「それは良かった。ちょっと話そうか。目的は同じようだしね」
「は、はい…それは構いませんが…?」
キョトンとした顔のフェリーチェだが、出木杉は高校進学後はのび太らと顔を合わせる機会が減っていたため、この機会に近況を尋ねたかった。のび太を見かける機会が減っていたからだろう。フェリーチェはここで、自身にあった『鬱屈した気持ち』を告白する。大地母神としての力を奪われた瞬間、消滅は免れないと覚悟したが、通常のプリキュアとしての姿に戻っただけであった事、自分を仮面ライダー四号から守ろうとした仲間があえなく倒されるのを、その場から動けずに見ていることしかできなかった事、無機質に仲間を殺めた四号が自分に視線を向けた瞬間に『恐怖』が自分を支配し、腰を抜かし、無様に命乞いをしてしまった事、そこに仮面ライダーディケイド、仮面ライダー鎧武が現れ、自分を助けてくれ、鎧武がディケイドに自分を託し、自分は敵陣に突っ込んでいった事…。
「……そうか、仮面ライダー鎧武が敵を惹きつけ、ディケイドに君を託したのか」
「……はい。心が折れてしまっていた私を、二人は叱咤してくれました。鎧武さんは奴らを自分のもとに惹きつけ、ディケイドさんと私を逃してくれて…」
鎧武の壮絶な戦いぶりは想像に難くない。仮面ライダーディケイドの要請に従って動いてくれた『平成ライダー』の一人であり、『神域へ至った人間』でもある。彼がどうなったのか。フェリーチェには知る術はない。ディケイドは『奴も仮面ライダーの一人だ。あれくらいで倒されるものか』と述べているが、どう考えても、勝ち目の薄い戦場であったのは事実である。仮面ライダー三号と四号、マジンガーZEROといった強者が同じところにいる地獄絵図なのだ。
「私は自分の臆病さ、無力さを恥じました…。愛する者も、守るべき大地も守れず……、目の前で……最後の『家族』も……」
後に、マジンガーZEROをキュアドリームが取り込んだ際にキュアミラクルが反発し、月を巻き込んだ『壮大な喧嘩』となる理由がそこにあった。ZEROはモフルンをも一度は殺めた張本人なのである。フェリーチェの心が折れたのは、モフルンが光子力ビームの奔流から、自分をかばって、元の物言わぬぬいぐるみに戻ってしまったショックによるもの。その時に自分が晒した無様な姿を恥じ、自分を責めている。
「君が生き残ったのは、みらいちゃんとリコちゃんの意志なんだよ。不思議に思わなかったのかい?神威を剥奪されても、君がその姿を保てた理由を」
「……」
「確かに、君は大地母神としての全てを奪われた。だけど、君はプリキュアでもあった。ここからは僕の勝手な解釈だけども、君はマホウ界、ナシマホウ界の双方が滅んだ事で、『マザー・ラパパという存在への信仰』の殆どを失って、神威を封じられたけど、他の世界線でのテレビで、君等のプリキュアとしての活躍を見ていた視聴者の思いという『信仰』で存在を保て、こうして生きながらえた…。そう考えれば、君が変身能力と魔力を保っている理由も説明がつく」
「しかし、今はなぎささんとほのかさんしか『生まれていない』のですよ?なぜ……」
「いずれ、君もブラウン管……この表現はいずれ廃れると思うけど……デビューを果たすという事だよ。君たちは子供らの憧れなんだ。仮面ライダー、イナズマン、人造人間キカイダーとキカイダー01……更には多くのスーパー戦隊がそのような存在となり、結果的に彼らに存在意義を与えたように、君にも、プリキュアとしての使命が残されているんだ。それは君の愛した二人も望んでいるはずだ」
出木杉はのび太から、ヒーローたちの存在を知らされていたのか、『仲間を得て、遂に巨悪を打倒していった』と示唆する。そして、ウィッチ世界に現れた仲間はその事実の裏付けだと。
「しかし……彼女たちを巻き込むわけには……」
「なんだ、そういうことか。水臭いって」
「なっ!?貴方……なぜこの世界に……!?キュアハート」
「俺が連れてきた。大人ののび太の頼みでな」
「フェイトさん…!?なぜ、黄金聖衣姿なのです!?」
「なぁに、連れてくる時に、組織に襲われただけだ。ちょうど、バルディッシュは改装に出していたのでな」
大人フェイトとキュアハートに出くわした二人。フェイト曰く、発見した世界(戦車道世界)から連れて行こうとしたら、組織に襲撃されたので、聖闘士として応戦し、一蹴したと。それで獅子座の黄金聖衣を纏っているのだ。ちょうど、バルディッシュを改装(史実における第五世代型化改装に相当するが、動乱の後の情勢では、地球連邦軍が音頭を取っている)に出していた故でもあると。
「この子を送り届けたら、また戻らんといかなくてな。義兄の指示で『プロパガンダ映画』の撮影に入らなくてはならんのだ」
それは『時空管理局三人娘』の全員がダイ・アナザー・デイの最中にまで参加し、ちょくちょく抜けねばならなくなる映画撮影の事。なのはとフェイトがダイ・アナザー・デイの後半期は子供の姿でいた原因である。
「ああ、なのはから聞きました。あなた方が主人公の……」
「実母を『会社の被害者』として描いてくれと頼んでいるところだ。それに、一ついいか?俺の姉だが……プリキュアになっている」
「なぁ!?」
「キュアブロッサムだというが……」
「私とハートの先輩ですよ!?っていうか、な、な、何故、貴方のお姉さんが!?」
「俺が聞きたいくらいだよ」
そこは頭を抱えているフェイト。一人称が俺なのは、以前に先代の黄金聖闘士『アイオリア』の魂に宿られていた影響によるもので、風鳴翼に似た声色になっている。フェイトは本来、もっと高めのトーンで可愛らしい声色なのだが、憑依されていた名残りで、アイオリアに近い性格になり、ボーイッシュな雰囲気がある。
「今日は挨拶がてらに来たって感じなんだけど、フェイトさんが連絡を忘れててさ」
呆れ気味のキュアハート。
「兄貴が映画撮影の話なぞするから、いかんのだ……今更、子供の頃の振る舞いを演じろと言われてもだな……。なのはの奴など、子持ちの年齢で『リリカルマジカル』なんて言わなきゃいけないのかと、部屋で悶ているのだぞ」
「あー……22だっけね、なのはちゃんや君」
「ええ。高校も出て、なのはなど、士官学校卒済みなんですよ?そんな年齢で『リリカルマジカル』なんて、真面目に言えると?こっ恥ずかしくて、小一時間は悶えますよ」
なのははこのことに何時間も悶え、娘を呆れさせたという。史実と違い、明確に高卒であることで羞恥心があるらしく、部屋で『あたしのバカぁー!』と悶える様を晒している。
「それ、本職の声優さんとかの前じゃ禁句だよ?よーく考えてみて」
「それは確かに…。盲点だった」
確かに、声優の仕事を考えてみれば、その手の議論は馬鹿らしくなる。
「なまじっか、大人の肉体だから気にするんだよ。いっそ、撮影の時は子供の姿に戻ったら?ドラえもん君にタイムふろしき借りれば、変身魔法より安心して、姿を変えられるはずだ」
「それだ!!なのはに連絡していいですか?」
「はやてちゃんは出ないのかい?」
「それは企画次第だそうで。それに今のはやて……なんと言おうか…あかいあくま。そういう状態で」
「なら、余裕のはずだ。その状態なら、猫かぶりで元のキャラを演じられるだろう。平然とね」
出木杉はその言葉だけで、はやての変化を悟ったようだ。はやては三人娘で最も人物像が変わったと言ってもいいからだ。何気にひどいことを言っているが、的確である。また、ダイ・アナザー・デイ後半、時空管理局の代表という形で姿を見せ、イリヤ、クロ、美遊の三人からはあれこれ言われるのであるが、それはまだ先のこと。
「今度、麻雀でもどうかな?君たちを誘って」
「後悔しますよ、兄貴(クロノの事)達はいいカモにされてますし」
「なーに、ネット麻雀で相手が見つからないくらいだから、大丈夫さ」
出木杉はフェイトにそう笑いかける。出木杉は麻雀も強く、成人後ののび太、スネ夫、ジャイアンとの対局では無敗なほどであり、はやてと戦う自信はあった。なお、麻雀はコミュニケーション手段としても機能し、はやては兜剣造とのコネクションを得るために対局を申し込んだし、後にのぞみも、セラや宮部大佐(64Fの後輩たち)相手に対局をすることになる。また、扶桑軍にはトランプ遊びを嫌がる変わり者や地方出身者も多いため、アジアで生まれた麻雀はちょうどいいレクリエーションでもあった。のび太が麻雀を初めるきっかけは父親が象牙の麻雀牌(会社の重役の曽祖父が明治、もしくは大正の頃に手に入れた貴重品)を持っていた事、はやての勧めであるので、その点では罪づくりな人物だ。
「ネット麻雀も充実してきたけど、面と向かって打つのが醍醐味さ。実は父から曽祖父の遺品を譲られてね……」
出木杉は意外に趣味人の一面がある。麻雀の話になると熱がこもるので、相当にやりこんだクチだろう。なお、曽祖父と言ったのは、祖父は若い内に太平洋戦争で南方戦線に送られ、無念の戦死を遂げているからだ。従って、面識はない。高校でも秀才で鳴らし、真面目一辺倒と思われがちの彼のそんな意外な姿に、アッと驚く為五郎とでも言おうか、あっけらかんとする一同であった。フェイトははやてをこれでギャフンと言わせられると、義兄の仇(?)を取れることに内心でほくそ笑むのだった。