――黒江がなぜ、シンフォギア世界で早期に二課に合流しなかったのか?それには理由がある。黒江は情報はある程度持っていたが、その確証を得たかったり、身分を偽装していた都合、それが何らかの理由でばれ、自分に自衛隊と米軍が追手を差し向けることを避けたかったからだ。さらに、フロンティア事変当時のマリア・カデンツァヴナ・イヴは二課からすれば『敵』であるため、事態がややこしくなる危険が大きいのもあった――
「あなたはなぜ……それほどの力を持っていながら、こそこそ隠れてるの?」
「未来に仲介してもらって、向こうに協力するという選択肢はあるが、『こいつ』とお前、それとあのガキはそもそも、米国にとってのお尋ね者だろ?事態がこんがらがる危険がある。その上、お前が戻るまでには、あと二週間だろう?その間に、この世界のことを知っておく必要がある。ハッキングばかりもやってられんし、お前のバックも気になるんでな」
「光明結社の存在を?」
「面倒見てる奴のスマホゲを見ただけだから、その辺はあやふやでな。未来には、二課との仲介をしてもらうように頼んである。実力のある俺が、こうして隠れてるのは『間違ってる』ことの自覚はあるさ。だから、お前が戻る時には『一芝居打つ』。協力してくれ」
「一芝居?」
「ああ。俺が向こうの連中と一緒になるには、何かかしらの理由はいるだろう?向こうとの出会い方は考えとくが、一戦交えていかんと、説得力ないだろ?」
「それは言えてるわね。名目上は『偵察』だもの。嘘の報告を考えるのも一苦労よ?」
「それはすまんな。だが、おかげで状況は掴めてきた。未来はそろそろ、向こうに帰す。俺のことを『敵』じゃないと教えてもらう必要もあるし、あまりに休学させても不味いしな、学生生活的意味で」
「進級問題があるものね」
「そういうことだ。お前はあと二週間、俺に付き合ってくれ。未来は一両日中に向こうに帰す。あの子を米軍が追ってないことを確かめたかったからな」
小日向未来は一ヶ月近くの間、黒江に匿われたが、それは米軍の特殊部隊が日本国内で非公然の活動をしていることを目撃してしまったため、米軍の特殊部隊が口封じに動くことを警戒した黒江が『安心だと確信できるまで』匿わったからだ。
「俺の情報を向こうの司令への手土産にする。あのメガネ博士の言動は英雄願望持ちのイカレポンチだから、何かやらかす。ナスターシャ教授の想定を超える何かをな。もっとよく見とくんだったぜ。完全にうろ覚えだしな」
「いえ、かなりの精度よ?私達が米国に拉致された孤児だってことや、妹が使っていたシンフォギアの名まで……。なぜ、アガートラームの事を……?」
「平行世界でちらっとスマホゲを見たっきりだし、アニメはつまみ食い程度にしか見てないが、俺は記憶力はいいほうだしな。そうでないと、部隊の機材の整備状況を事細かに把握できんよ。……そうだ、お前の妹のギアはしばらく預かっとくよ。構造を把握できれば、シンフォギア形成機能の修復も可能なはずだ」
「……。でも、セレナがそれを許してくれるかしら」
「その子が命と引換えに、お前たちを守ったんなら、姉のお前には、そのギアを受け継ぐ資格があるよ。聖闘士も前任者が死んでるケースが当たり前でな。前任者の想いを背負う必要もあるように、お前の妹はきっと許してくれるさ」
黒江はマリアがセレナの形見として持っていた『アガートラーム』のシンフォギア(待機状態。ただし、コンバーター部などが破損している)を預かる。マリアはうろ覚えとはいえ、黒江から『史実のおおよその流れ』を知らされたこと、輪廻転生を知り、ある種の希望を見出した(そのセレナ・カデンツァヴナ・イヴは死後に十六夜リコ/キュアマジカルに転生していたわけだが、当然ながら、この時の二人は知る由もない)のか、その表情はどこか穏やかになっていた。
「あの子はそういう子だったわ…。どこかで会えるかしら」
「どこかで、きっと会えるさ」
黒江はマリアを元気づけるつもりで言ったのだが、ここからそう遠くない未来、マリアは生まれ変わっていた妹と本当に再会を果たす。そして、妹が『プリキュア戦士』としての宿命を背負ったことに動揺するが、妹が前世の記憶を有し、姿は違っていても、自分を『姉』として見てくれることに感涙に咽ぶことになる。そして、マリア、セレナ(リコ)の姉妹はシンフォギア世界と他世界の仲介役を引き受けることになるのだった。
――それから数日後、小日向未来をリディアンの寮まで送った黒江。未来にあれこれ心配されたが、黒江は『おりゃな、生活力あるし、マリアもいるんだぞ?』と笑った。未来は寮への帰宅後、復学届を書く作業に取りかかりつつ、短い間の奇妙な共同生活についての情報を取りまとめたノートを二課に渡すための準備を始める。『シュルシャガナの装者』についての情報をある程度まとめておけば、二課も調(黒江)を敵だとは認識しなくなるはずだと。響は任務でその日は帰らず、翌日に寮に帰れたのだが、未来が帰ってきていたことに大はしゃぎした。また、二人の学友たちも普通に調がシンフォギアで未来を送って来ていたのを目撃しており、未来が親しげに話していたことを教え、未来も『あの人は悪い人じゃないよ』と肯定した。ただし、『あの子』と言わずに『あの人』と言ったので、ちょっとしたパニックが起こった(調は響とクリスよりも若く見えたため)のは言うまでもない。また、黒江の行動の噂は市井に流れており、自由気ままなようだが、ある種の『昭和の古い映画に出てくる風来坊』的な義理人情に溢れていたために世間の評判は良く、日本政府がそれに目をつけ、二課の装者として、他国向けのプロパガンダを始める。これは二課にとっても想定外の出来事だが、『謎の装者』の思惑が読めないこと、日本の組織(当時)である以上は政府の意向には逆らえないので、日本政府の為すがままであった。そんな時に、無事が確認された小日向未来から、黒江の手紙が風鳴弦十郎へと渡された。同時に、未来を仲介役とする形での対談を希望するとも。数日後、小日向未来を仲介役にする形で、風鳴弦十郎は街のある場所で対談に臨んだ――
――対談場所――
「俺が特異災害対策機動部二課司令、風鳴弦十郎だ」
「貴方があの子供達の上司ってことでいいか?私は黒江綾香。貴方の知る歴史における日本陸軍の陸士五十期卒の陸軍将校で、空中勤務者だ」
黒江は当時の所属先であった陸軍の敬礼を見せた。シンフォギア姿で見せたので、奇異なようだが、素性を示すための手段であった。
「君は……二次大戦中の陸軍将校だというのか?」
「貴方の知る日本とは別の歴史を辿った場合の世界からやってきたんでね。こんななりなのはご容赦願いたい。これから話すが、手紙は読んでくれましたか?」
「うむ……。しかし、俄には信じがたい。その姿なのに、こちらの探知機器を反応させんとは」
「私は特殊な訓練を受け、一種の超能力を持ったので、シンフォギアの発するエネルギー反応を意図的に抑えられるのです。もっと言えば、私は『現世での肉体はあるが、存在としては神格』なのです」
「神格……だとッ!?」
「正確には、オリンポス十二神の一人『アテナ』の率いる軍団に加わり、その一員として戦う内にそうなったというのが適切でしょう。」
聖闘士はアテナ軍の上位の闘士たちの総称でもあり、『拳は空を裂き、蹴りは大地を割る』と言い伝えられている。原子を砕くという破壊の究極を身に付けているため、最下位の青銅聖闘士でさえ、シンフォギアが史実で到達した決戦機能『アマルガム』の防御特化形態『コクーン』を突破し、強制解除に持っていく事が可能である。黒江はその内の最高位『黄金聖闘士』の山羊座の闘士である。本気でその力を振るえば、黄金聖闘士随一の攻撃力を持つ。
「そうなったとは?」
「軍人として、靖国で祀られる内にそうなったと言うべきか。本来はあなたのおばあさんくらいの年齢なのでね」
「1920年代生まれなら……そうなるな」
「私がいる本来の時間は1945年(当時)。太平洋戦争が終わる年なので、その年に22歳と言えばいいですか?」
「母くらいの年齢ですな……」
2010年代半ば当時、その世代は90代を超えるため、その当時に30代後半の風鳴弦十郎の親ということは遅くに産ませた子らしいのが窺える。
「ずいぶんと遅子なのですね、貴方は」
「俺は父が忘れた頃に母に産ませた子なのでね。父は……こういってはなんだが、大昔の国家主義、いや、国粋主義の亡霊なのだ。大戦中は旧軍の少尉だったとは聞いているが…。100歳どころか、120歳にも達しようかという……」
風鳴家は戦前からの名家であるため、戦中は徴兵を免れていたか、諜報部隊に在籍していたと思われる。軍部からしても扱いにくいとされたのか、在籍時の階級は高くない上、若き日の名残りか、国家主義か国粋主義の権化である風鳴訃堂。正確な年齢は不明だが、太平洋戦争中に20代の青年以上の年齢だったのは確実だろう。
「やれやれ。2.26か5.15の連中のようなアブナイ男ってわけですね、あなたの父上は」
「そうなる。父を止めてくれるか?」
「国粋主義の連中は軍隊の階級が高く、戦功もある人間を尊敬する。意外に容易いものですよ、国粋主義者を御するのは」
風鳴訃堂は太平洋戦争での日本が戦略爆撃に対し、あまりに微力であった事を嘆いている。また、米国が戦後の日本をいいようにしてきた事も嫌うなど、極端な国粋主義に染まっている。黒江はこう言ったが、実際には予想以上に『イッていた』ため、アテナの命でやってきた乙女座のシャカの制裁で五感剥奪の上で廃人にされるのだ。シャカには『郷土を愛しすぎたために、他人を顧みなくなった哀れな男』と評された。子供の頃から軍入隊前までは現在が嘘のように慈愛に満ちていた事、太平洋戦争時にアジア最強の大日本帝国が為す術もなく米国にまたたく間に敗れていく光景を目の当たりにした事、高級軍人であった彼の父や祖父の『英才教育』が人格を歪ませてしまっていた事が暴かれるのだ。
「君は我々に協力する…そう受け取っていいか?」
「構いませんよ。この姿の元の持ち主の立場上、一芝居打つ必要はありますが」
「一芝居?」
「ええ。この姿の元の持ち主は向こう側に属すはずだったようで。取り繕う必要があるのですよ」
「なるほど」
「そちらにつくには、今しばらくの時間が必要です。あの子に託した手紙はご覧に?」
「ああ…。俄には信じがたいが、その姿の元の持ち主と思われる子との差異は聞き及んでいたのでね。手紙で察しはついた」
「気がついていたので?」
「確証はなかったが。君はどうするつもりだ?」
「貴方方に協力しますよ。ただし、向こう側のガングニールの装者と示し合わせてから、ですが」
「わかった。君の手紙に書かれていた事を信じよう」
「ありがとうございます」
深々と頭を下げる黒江。どのように動くにしろ、二課側につくには、改めての『一芝居』が必要とし、マリアと示し合わしての一芝居を打つのだが、その一芝居が結果として、大きな誤解を招くのも事実であった。そもそも、黒江の陥った境遇そのものが信じがたい上、事後の響が精神が壊れてしまっていた切歌を慮るあまりに『切歌ちゃんを壊した責任をどんな形でも取らせる!』と決めていた事、黒江もその責任を何かかしらの形で取ることは考えていた事、マリアの事前の懇願が最後の決め手となり、黒江は一年間は演技をすることになる。当然ながら、それは周囲の協力がなければ不可能な上、『事故で同じ姿になっただけの他人にそれをさせるのか?』と、翼とクリスらも苦言を呈すほどだったが、響は『戻ってきた時に居場所がないなんて、寂しすぎるよ!!』という理屈を振りかざした。切歌を慮りすぎて意固地になった末に勢いで言ってしまった『失言』(悪意はなく、調本人の帰還後の事を自分なりに慮ったのも事実である)に近かったが、黒江がそれを(マリアの懇願もあり)あっさりと受け入れた事、悪意はないことは翼やクリスもわかっていたため、苦言を続けようがなかった。また、皆の前で感情的になって言ってしまったため、響も引っ込みがつかず、我に返った時には後に引けなくなっていたというのも、黒江が魔法少女事変に引き続き参戦することに繋がっていく。黒江自身は『責任を取る』のもあり、立場を演ずる事そのものは二つ返事でこなした。(しかし、響の剣幕に押されたのも事実である。なお、自分のカラーは出した)すぐには帰れないことは悟っていたからだ。シンフォギア世界がミッドチルダから見て遠い座標にあったためと、先に調が黒江の姿で古代ベルカから現代のミッドチルダに転移し、そこから事情を聞き、黒江を更に探すのに時間がかかったわけだ)
(これで一応の『種』は蒔いた。あとは……)
マリア・カデンツァヴナ・イヴが向こうに戻った後にうまくやってくれる事を祈る黒江であった。
――シンフォギア世界で黒江が過ごしていた頃、ウィッチ世界は急速にダイ・アナザー・デイへ向かっていった。大和型戦艦の予備艦『三河』の艤装が急がれ、四式中戦車改、五式中戦車改が増産される一方、センチュリオン、コンカラー、ティーガーなどが緊急で購入されていった。日独が(一方的に)軍縮を意図し、前線部隊を解散させたのが連合軍で問題視され、日本連邦は前線から歯止めはかけられたが、肝心要の前線部隊のサボタージュが起こり、ウィッチ部隊が『使い物にならなくなった』上、501で問題が起こったため、エルヴィン・ロンメル将軍は胃潰瘍になる一歩手前であった。アフリカ戦線からの撤退後は欧州方面の防衛指揮官を拝命していたからだ――
――とは言え、空戦兵器と違い、陸戦兵器の不足は顕著であり、緊急で雑多な兵器が購入された。特に機甲装備は求められるレベルが飛躍してしまい、ストップギャップとして配備されていた三式中戦車を含めた旧型装備は使用が差止められたが、前線としてはたまったものでなかった。とは言え、旧軍式機甲装備はM4シャーマンにも殆ど太刀打ちができないというのが一般常識である故の政治判断であるので、日本連邦上層部は前線部隊の独自購入を事後承諾せざるを得なかった。これが自衛隊の秘匿兵器の投入の要因である。数のある空戦兵器にしても、(基地や駐屯地が史実より確保困難であるのもあり)航続距離が最低でも1500キロオーバー(理想的なのは2500キロ以上)、最低でも長砲身20ミリ機銃を備えることとされ、旧型機種の淘汰が進んだ他、緊急で(生産体制の整っていた新型である)雷電、紫電改が優先的に量産されるわけだが、零戦も二二型の他、史実での後期型である五二型、六四型に生産機が絞られる事になったが、ウィッチ世界では実機が存在しなかった(早期に紫電改や烈風ができていたので、零戦の過剰な延命措置は必要なしとされていた)というオチが付き、緊急でそれらの開発と水エタノール噴射装置の装備が促進されることになるなど、ウィッチ世界にとっての予定外が続いた。陸軍機も、三式戦の五式戦への一律的な改装に異議を唱える部隊の幹部が日本軍出身義勇兵と殴り合いを起こす、四式戦の諸元が史実と違うことでメーカーの技術主務が日本防衛省の官僚に呼びつけられ、公然と非難されるなどの多大な混乱が起こった。結局、これらの強引な施策に反発した前線部隊のサボタージュも起こったことにより、64Fの戦力化が急速に行われ、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケの処分も取り急ぎ決められたのは、この混乱が大きかった事の裏返しであった。なのはとフェイトが時空管理局から召集されたのは、連合軍の絶対的物量不足を『質で補う』ためであった――
――ダイ・アナザー・デイは実行前の段階で早くも前途多難であった。航空機も数を揃えるため、本土防空用の機材まで持ち出す必要があった。その一方で、日本側のパイロット選考が厳格過ぎたため、飛行学校の教官を駆り出しても、飛行時間が800時間未満という問題がのしかかった。史実の水準では『あ号作戦の空母部隊並の練度しかない』とされたため、日本軍の元パイロット達を現役復帰させる非常手段が取られ始め、黒江が以前から交友関係にあった元日本軍出身の老人達も現役に復帰した。その関係で零戦や隼は史実で人気がある型の新規生産と改修が進み、アグレッサー部隊にあったウィッチ用の『四二型』、『四三型』の二種もその大半が史実の金星エンジン搭載型の型式である『六四型』に改修され、純然たる制空戦闘機として投入されていく。要はレシプロ戦闘機を用いる『アグレッサー任務』の必要が無くなったためだ。四式戦は作戦予定日の数週間前に諸元の違いが判明し、メーカーの技術主務へ問い合わせが行われた。メーカー側は『そんな!!言われた通りに設計したのに!!今更、完全戦闘向けの派生型を用意しろなど!!』と抗議したが、防衛省としても『どうにかしておくれ!!』と言うしかなく、SUBARU(元・中島飛行機)が史実の設計図を提供し、助け舟を出すに至る。しかし、嚮導機運用が想定された機体を純然たる戦闘機へ回帰させるには設計陣の苦労がかなり伴い、ダイ・アナザー・デイに『完成と量産』は辛うじて間に合ったものの、想定された乗り手たる『日本の義勇兵』らは史実で定評のある一式三型を迷いなく乗機に選ぶため、あまり戦功には恵まれなかったという。史実で四式戦闘機とほぼ同様の用途を担うはずの紫電改が『艦上機』としても運用され、多数が戦線で使用されたのとは対照的な道を辿るのである――
――同時期、ミーナは最大の危機を迎えた。扶桑の機密書類が開示され、三人の素性が明らかになった。扶桑のウィッチが人的意味での黄金期を迎えるきっかけとなった人物であり、文字通りの『扶桑の英雄』。自分のしでかしたことに気が付き、喧々諤々になった彼女は後に坂本も呆れるような自己保身に走ってしまう。査問で不利な証拠となる記録を処分したのである。だが、それは501基地に潜り込んでいた『ユニ』(キュアコスモ)によって回収、復元されていた――
「バカな事を。普通、まずいのは裁断するか何かすんでしょうが」
「どーすんだ、ユニ?」
「司令部に提出するニャ。子供の浅知恵って奴ね。その気になれば、シュレッダーで裁断しても復元できるってのに。燃やすこともしないなんて」
「大方、司令部を通さないからって思ったんだろ?ガキのやることだから、お前を潜り込ませて正解だったぜ」
ゲッターの使者となっている圭子は(これから先にプリキュアの覚醒が続くことを視覚済みである)プリキュアであると同時に、怪盗の経験があったユニを潜り込ませ、ミーナが自己保身のために処分した書類を回収させていた。裁断してもいないなど、かなり杜撰な処分方法だったらしく、ユニと圭子は『子供の浅知恵』と断じた。
「これからはウィッチの影響力は減退する。そうなったら、お前らの出番だ。誰が一番最初になるか」
「誰だろうね」
「それはわからんね。当たるも八卦当たらぬも八卦、だな」
圭子は大まかな未来は予知できたようだが、細かい部分まではわからないのである。ウィッチ、とりわけ空戦ウィッチは戦闘機の急速な発達と可変メカの台頭で立場を失い始めていたが、それがどんなことかわからない者が多いのがこの頃だ。
「こうなるってわかってたの、ケイ?」
「未来予知がなくたって、これは普通に予測可能な範疇だ。あたしほど生きてれば、なおさらな」
圭子は冷静沈着だった。ミーナはガランド以外の上層部を信用していなかった事で『上層部の厚意を悪意として受け取った』。その時点で今回の破局は必然化していたと言える。人格変化前のミーナの活動の最終期にあたるのがこの時期だが、嫉妬と無知、更に早合点の三拍子で部下の掌握に失敗した事で失脚の危機に陥っており、幹部級の部下の一部は『その後』を見越した動きを取っているなど、部下から見放されていた感は否めなかった。圭子はそこで喉の薬をタバコ風に服用する。
「世間はどっちみち、アイツをこれでもかと叩くだろう。直筆での謝罪文を用意させておくように言ってあるが、あいつが非を認めてくれればいいんだが。そうでないと、上官のガランド閣下の管理責任も問われる」
「日本に知れ渡れば、いくらアニメで活躍したって言っても、マスコミは謝罪を強く煽るでしょうし…。どうするの?」
「プランKを実行する。武子に連絡してくれ。手筈通りに事を進めろと」
「わかったニャ。上にも伝えておくわ」
「頼んだぜ」
「アイアイサー」
これは武子に501の指揮権を移すための流れを作れという指示である。ミーナは査問を終えれば、どのような形にしろ、指揮権の停止を食らう。だが、坂本は戦闘面は良くとも、折衝は実直すぎるので、まるで向いていない。かと言って、有力候補と言えるシャーリーとハルトマンは年齢がまだまだ若い部類で、大部隊の指揮をこなせる人物がどうしても必要であった。そのようなわけで、箔のある武子を隊長に添える。黒江は辞退するつもりであるというので、武子を隊長にする流れは確定した。64Fが501を取り込んだ上で。この頃にはそういう流れになるように『仕組まれていた』。そして、圭子はキュアコスモ/ユニを自分らの『密偵』として501へ潜入させていた。いつから彼女は圭子に仕えているのか?その正確な記録は明らかではない。わかるのは、ダイ・アナザー・デイの直前の時期から表舞台に登場し、プリキュア達が台頭するのと時を同じくして、キュアコスモとしての活躍を始めた事、元は(転生先の世界として)戦車道世界の出身であったことだろう。黒江がシンフォギア世界で動き出したのと時を同じくして、ウィッチ世界は『ダイ・アナザー・デイ』へとひた走っていく。そして、ユニの存在が後の『プリキュアの百花繚乱』の未来を暗示すると同時に、既にプリキュアである彼女の登場が中島錦の中で静かに眠っていた『キュアドリーム/夢原のぞみ』の魂と因子の完全覚醒を促すのである。その兆候は既に現れていた…。