ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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今回は前半はプリキュア、後半はウマ娘のオグリキャップが主役の構成です。


第三百二十三話「オグリの願った『IF』と、プリキュア達の始まりの日」

――黒江たちが、隊で頭角を見せ始めたのは、エルヴィン・ロンメル将軍がミーナにまつわる理由を知った日からである。ミーナ本来の人格は司令部直々に呼び出され、査問を受けたことで『情緒不安定』に陥っており、部隊指揮を急激にこなせなくなっていった。坂本は自身の指揮権を緊急で、扶桑から派遣された赤松貞子に譲渡し、ダイ・アナザー・デイの直前の段階では、彼女が実質の現場責任者に任ぜられていた――

 

 

――1945年――

 

「ほう。娘っ子らが『プリキュア』とは。面白いものよ」

 

「大先輩、上はこのことを?」

 

「儂はそれでやってきたのだ。お偉方は既に知っとるよ。ボウズ、運び込みはどうか」

 

「手配は済んだ。今、荷降ろし中」

 

「ご苦労。加藤の娘っ子が近いうちに『大佐』として、新しい部隊の指揮官に収まる。それまでに、501統合戦闘航空団の残務処理を済ますように。それと、プリキュアになった娘っ子共を呼び出せ。人格が変容する者もいる以上は、『意思確認』はせねばならん」

 

赤松の呼び出しで集められた者達は変身後の姿で集合を命じられた。64F結成前の時点では501在籍中の者からの覚醒が多かった。この時点で、ペリーヌはまだ覚醒に至っていなかった。だが、シャーリー、竹井、錦、芳佳の四名は既に覚醒済みであり、錦に至っては肉体の素の外見までもが変容していた。

 

 

「お前らの現役時代のチーム名は?」

 

「スイートプリキュアだよ」

 

「Go!プリンセスプリキュアです」

 

「プリキュア5です」

 

「スマイルプリキュアです」

 

「うーむ。見事にバラバラだな」

 

「のび太に裏を取ってもらったけど、間違いないよ、まっつぁん」

 

「ご苦労」

 

「おい、黒江さん。あんた、プリキュアでもねえのに、外見がなんで、そんな変わってんだ!?」

 

「異世界に飛ばされて、帰ってきたばっかなんだ、無茶いうな。身体検査も済んでねぇんだよ、『俺』」

 

「お、俺!?」

 

驚くキュアメロディ。黒江はシンフォギア世界に飛ばされる前は『私』が一人称だったが、帰還後は『俺』に変わっていた。猫をかぶる必要が無くなったせいか、全体的に『バンカラ』な口調になっている。

 

「転生前の能力と自我が復活するというのは稀にあるが、今の自我と混じり合うのは見るが、前世の自我が肉体を完全に乗っ散るとはな。……驚いたぞ、中島。いや、キュアドリームと呼ぶべきか」

 

「大先輩、随分と落ち着いておられますね…?」

 

「儂やボウズ、お嬢、黒田にも秘密があるのでな。一つは『転生者』であること。もう一つは……」

 

赤松と黒江ははそこで聖衣を纏うところを見せる。赤松は孔雀座の聖衣なので、白銀聖衣。黒江は山羊座なので、黄金聖衣だ。

 

「オリンポス十二神の内、知恵と戦いの女神『アテナ』に仕えし闘士であるというという点だ」

 

「大先輩たちが……聖闘士…!?」

 

驚きを隠せないキュアドリームだが。

 

「お久しぶりですね、それを纏われるのは」

 

「事変以来じゃから、もう七年になるか。お前は知っとるな?」

 

「ええ。その場にいましたから」

 

事変で聖衣を見ていた関係で、事の全てを既に知るキュアマーメイド。

 

「これで隠し事は無しじゃい。儂らは光速戦闘に慣れとるが、お前らはどうじゃ?」

 

「あの~、こっちはせいぜい、マッハなんですけどぉ~……」

 

「同じく」

 

「私もですぅ~…」

 

しょげる三人。プリキュアとしての記憶は目覚めたが、高位の聖闘士がこなすような『光速での戦闘』の経験はないからだ。

 

「やぁ、やってるね」

 

「のび太!お前……あたしたちのこの姿見て、何も疑問に思わねぇのか…?」

 

「いやぁ、プリキュアならさ…。すっかり慣れちゃってるんだ。僕」

 

「どういう事だよ」

 

「ほら、子供の僕が『僕が十二、三歳になると、パパが『漂流者』の子を養子を迎えることになる』っていってたろ?」

 

「お、おう……」

 

「後でわかったけどさ、その子、君らの後輩だったんだよ」

 

「なにぃーーーー!?」

 

「嘘……、誰、誰なの!?」

 

狼狽するキュアドリーム。それと対照的にキュアマーメイドとキュアハッピーは落ち着いている。

 

「落ち着きなって。連れてきたから。……いいよ」

 

「わかりました」

 

「そ、その声は!?」

 

青年のび太に促され、姿を見せたのは。

 

「お久しぶりです、皆さん」

 

『ふ、フェリーチェ!?』

 

魔法つかいプリキュアの『キュアフェリーチェ』その人であった。赤松に会釈するその姿は往時そのままである。

 

「え、え、えぇーーーー!?ふ、フェリーチェが……の、の、のび太君の……義理の妹ぉ!?」

 

とんでもない状況に、言葉を失うキュアドリーム。

 

「おい、これはどういうこった!?なんで、フェリーチェがここにいんだ!?」

 

声を荒げ、半ばパニックのキュアメロディ。

 

「ずいぶんこみいった事情なんだよ、シャーリーさん。それと、夢原のぞみちゃん」

 

「なんで、私の前世での名前を…」

 

「この子に聞いたんだよ。それに、キュアハッピーとキュアマーメイドには話してある」

 

「お前ら……」

 

「仕方なくてね、響。私とみゆきも確証が欲しかったの」

 

キュアメロディは現役時代と違い、『血気盛ん』な気質になっている故か、現役時代よりガサツになったと言わざるを得なかった。隠し事をされたことへ強烈な不満を見せたが、のび太に軽くスルーされる。

 

「それで……」

 

「おい、スルーすんな…!?」

 

キュアメロディはのび太に掴みかかろうとするも……。

 

「メロディ~?」

 

と、フェリーチェに止められる。だが……。

 

「お、おい。なんだよ、その真ゲッタートマホークは!?どこから出しやがった!?つか、笑顔でドス黒いオーラ出すんじゃねぇ~!?こえーよぉ!?」

 

「不満はわかりますけど、これから事情を説明しますから」

 

「ぎょわ~~!!それは説明するスタイルじゃね~~!?」

 

キュアメロディはこの時から、『コメディリリーフ』的なポジションが確定した。キュアフェリーチェが真ゲッタートマホーク(ハルバート型)を一瞬でメロディの喉元に突きつけたことで、一瞬のうちに冷や汗タラタラになり、情けなく命乞い(?)をしたからである。

 

「だーーー!こ、こういうコメディ的なポジションはあたしの役柄じゃねーーー!ま、ま、マジ勘弁してくださ……」

 

「ふむ。だいぶ、『モノ』になりおったか」

 

「あなた方に鍛えてもらったおかげですよ」

 

と、赤松はフェリーチェの身のこなしを冷静に評価する。

 

「え、フェリーチェは大先輩たちが……」

 

「うむ。のび太も言うように、かなりこみいった事情があるのでな」

 

「あたしはピーチと一緒に切り込みで慣らしたんだぞ……それが反応もできねぇって……!?」

 

「鍛えたんですよ。二〇年ほどの時間をかけて。今日は顔見せにきただけですので」

 

「顔見せだと?」

 

「ええ。私はまだ、修行の途中なので。ですが、あなた方の支援は、キュアハートに頼んであります」

 

「キュアハートだって…!?マナ……、相田マナもいるのか!?」

 

「彼女は、フェイトさんが調査している(当時)地球系の新世界に転生していたのです。我々がその世界を把握し、彼女がプリキュアに戻ったことの調査を終えたのは、先日の事です。今はもろ他の手続き中ですので、武子さんの護衛という形で着任するでしょう」

 

「お、おい。軍人にしたのか?」

 

「それしか、私たちの戦闘行為の合法性を確保する方法がないのです。私も日本連邦と地球連邦の双方の軍籍を既に取得しています」

 

「なに!?」

 

「うん。君等は一階級昇進が直に内示されるはずだよ。新しい部隊で幹部になるから」

 

「なんでだ?」

 

「部隊が大規模化するけど、君等は十字砲火に突っ込んでもらうことになるからね。プリキュアなら、仮面ライダーたち並の活躍が見込めるからでもあるけど」

 

「ずいぶん無理難題を……」

 

「君等は元々、そんじょそこらのウィッチよりは一騎当千を期待されてたんだ。今更だよ?」

 

「ハハハ……でも、あんたらのほうがよっぽどできそうだと思うぜ?」

 

「現役時代の頃に、ブラックホールにブルってたというけど、マジだったな」

 

「だ、誰から聞いた!?」

 

「え、お前の戦友の南野奏と黒川エレンから……」

 

「なぁあああああーーーー!?」

 

「さっきから驚き役だぞ、シャーリー?」

 

「あんたが、そうさせたんでしょーが!!」

 

顔を真赤にするキュアメロディ、ニヤける黒江。顔を真赤にした彼女がやたらめったにパンチを繰り出すが、黒江はこともなげに受け止める。

 

「な!?」

 

「いったろ、黄金聖闘士だって。そんな盲撃ちのパンチくらいは屁でもない」

 

「変身した状態のパンチだぞ!?本当になんともねぇのか!?」

 

「そんじゃ、食らってみっか?聖闘士の攻撃を」

 

キュアメロディを光の軌跡が滅多打ちにする。ライトニングプラズマである。加減しているが、速度は光速である。反応すらできずに、その場に倒れ伏す。

 

「嘘だろ……!?この姿で『見えない』なんて……」

 

ライトニングプラズマに滅多打ちにされ、立ち上がれないキュアメロディ。

 

「これが黄金聖闘士だ。最も、今のお前らでは、白銀相当の攻撃も対応できんだろう。だから、これからはびっちり鍛えてやる。俺たちがな」

 

「うーん。そこまでする必要あるのかなぁ」

 

困った顔のキュアドリーム。それにのび太が答える。

 

「君等はプリキュアだからね?ティターンズの強化人間相手に、無様を晒すわけにはいかない。ただでさえ、君等を軍や自衛隊で雇い入れるのは『近頃』(2021年)は妙に文句がきまくるからね?相応の成果が必要なんだよ」

 

この時ののび太の言う通り、プリキュア達は後の追加メンバーも含めて、最前線で一騎当千を期待されることになる他、軍(自衛隊)で雇い入れることに『市民運動』方面からクレームが入りまくる『2020年代の情勢』とも戦わざるを得なかった。その関係で『成果が強く求められる』のは仕方なかった。広告塔としても最大限に活用されるのは言うまでもないが、『事変世代の著名ウィッチを広告塔に再起用する』事への現場の強い反発への妥協的な回答であった。事実上のリーダーであった上、日本でも人気がある都合で、キュアドリームは広告にドシドシ起用されていく。『プリキュア三羽烏の筆頭』、『プリキュアチームの中心戦士』として。芳佳、静夏、ひかり、菅野、調とともに『扶桑軍ウィッチの新世代の象徴』的に祭り上げられていくのだった

 

 

 

 

 

 

 

―この時に浮上した問題は人事の他にもあった。日本側が零戦を生産中止にしようとしたが、ウィッチ世界では、零戦は1943年に初飛行した新鋭機だったのだ。(零式の名も通称に過ぎなかったが、日本側からは旧式機と扱われた)とはいえ、史実情報を持つ敵が早期に『F8F』や『F2G』を送り込んでくる可能性は極めて大きく、根本的に性能をレベルアップさせた次世代機のロールアウトが急がれた。紫電改や烈風はこの時に相次いで生産が始まったが、それでも『F8F』と『F2G』への性能不足が懸念され、ターボプロップ機の研究、並びに『陣風』の開発再開が決まった。また、ジェット機の購入も緊急で決まり、一般部隊用に『F-86』が配備される見込みとなったが、当時はジェット機への忌避感の大きい時代であったので、64Fはジェット機の高性能の啓蒙の役目を担わされることになっていく。その流れで選定されたのが『F-20』であり、史実で採用されなかったのをいい事に、かなりのカスタマイズが行われた。これは大規模空戦に『戦後のジェット戦闘機の搭載弾数では、物理的に対応不可能』という現実問題があった。そこで、未来技術である『パルスレーザー』、『陽電子機関砲』、『熱核タービンエンジン』がカモフラージュの上で搭載されるのだ。また、結果的に扶桑海軍主力に登りつめた紫電改だが、試作段階では『欧州用の機材として、航続距離を史実通りに切り詰めていた』ために第一陣が到着していた『義勇兵』からものすごく不評を被り、結局は燃料タンクなどを改良し、『試作段階よりかなり延長された』2300キロ前後で落ち着く。(爆撃装備の場合は、100キロ前後は短縮されるが…。)搭載エンジンも、試作段階での誉エンジンから、当時の扶桑の単発機用エンジンで最高馬力かつ、最新鋭の空冷レシプロエンジン『ハ43エンジン』に換装されたため、結果的には、誉エンジンを搭載した場合よりも、史実より稼働率が大きく改善される。――

 

 

 

 

 

 

 

 

――ハ43はダイ・アナザー・デイの数週間前に審査合格間もない2200馬力級レシプロエンジンであったが、先行する誉エンジンの先行搭載機が不具合を頻発しだし、大作戦を前にして、日本連邦は『ハ43を次期戦闘機の発動機とする』と決定。同エンジンの量産体制が急ピッチで始められる一方、誉エンジンの大口注文を一夜にして失った長島飛行機は、一転して窮地に追い込まれる。航空部門の起死回生そのものは『ドラケンのライセンス生産、飛天の生産』で成るが、この時の屈辱が同社が自動車産業で成功を収めるきっかけとなる。誉エンジンも『搭載機の保守部品』として一定数は使われるが、(史実よりマシな部類だが)『整備員泣かせ』とされた。(そもそも、搭載機がそれほど出回る前に淘汰されたが)搭載予定機も予定通りにはいかなかった。四式戦闘機は『嚮導機から、純然たる戦闘機に特化する』設計変更に手間取った結果、ダイ・アナザー・デイに事実上は間に合わなくなったし、『流星』艦上攻撃機は『航空雷撃そのものの陳腐化と、防弾装甲の再装備と武装強化の再設計』が災いし、本格配備前に『史上最後にして、究極のレシプロ艦上爆撃機であるA-1に取って代わられる』ことになるなど、運命に翻弄されていく。ただし、リベリオン機を『ズブい』という先入観で嫌う部隊も多かったため、その部隊向けに流星改は出回り、旧式化した九九式の代わりの戦闘機として運用された記録も残された。戦場では『時速530キロ以上出れば、充分に実用に耐える』(零式三二型よりも高速である)と判断されたのだ――

 

 

 

 

 

――ダイ・アナザー・デイの直前はまさに日本連邦軍の黎明期と言ってよく、扶桑軍生え抜きの参謀は日本側の政治的都合で(史実で有能とされた者以外)作戦計画は愚か、現場からも排除されたため、前線指揮官に過大な負担を強いるものだった。その代わりの自衛隊の幕僚の派遣にも日本側の都合で手間取る有様であったため、のび太は独自の人脈で、ヒーロー達へ助力を乞い、彼らが承諾したのが、ダイ・アナザー・デイでのヒーロー達の活躍の理由である――

 

 

 

 

 

 

――ダイ・アナザー・デイの時期は、未来世界でサナリィの不祥事が露見し、アナハイム・エレクトロニクスを支配していたビスト財団が斜陽を迎えた頃である。ユング・フロイトが大統領選に当選、現役時代の名声で『ビスト財団、サナリィの不祥事を調査する』事を世論が認めたことで双方の不祥事が露見。双方はユングへの懐柔を図ったが、元々、軍のエースパイロットであったユングはそれを跳ね除け、白日の下に晒した。そこで明らかになったのは、歴代政権とビスト財団の癒着、サナリィの裏取引と引き抜き、高慢な姿勢。サナリィはザンスカール帝国と『トリスタン』にまつわる出来事の咎で、幹部の多くが懲戒処分に遭い、彼らの司法取引で『F9系にガンダムの名を与える』ことになった。幹部の『愚連隊同然の非正規部隊で運用される機体』という認識が軍民問わずの非難の対象となったため、結局、プリベンターによる組織解体を免れるための妥協的な司法取引を行うしかなかった。アナハイム・エレクトロニクスもビスト財団のバックアップが将来に無くなる可能性を予見し、代わりの存在として、野比財団に急接近する。そのため、ネオガンダムやクラスターガンダムなどが64Fの手に渡ることになり、その運用データは後に活用され、アナハイム・エレクトロニクスがネオガンダムの後継機種『センチュリーガンダム』を生み出すことになる――

 

 

 

 

 

 

――当時、64Fの編成の凍結の解除、腕っこきのウィッチ及びパイロットをそこで集中運用することは、反対論がものすごかったのも本当である。だが、日本側は(政治的理由として、戦時中の分散配置による五月雨的な投入による戦死への反発がある)反対論をねじ伏せ、当時の扶桑陸海軍における航空部門の腕っこきを全戦線から引き抜いて配置した。これは日本側の『本土の教導部隊から引き抜けなくするが、各戦線からは引き抜いていいのだ』な思考の産物であり、各戦線の部隊からの反発を招き、実際のダイ・アナザー・デイでの64Fの孤軍奮闘の遠因となった。実際は情報提供などで間接的に協力していた部隊もいたが、多くが激戦で後送されてしまい、結果的にそうなったのである。また、故郷で『前線にいかないことで、故郷で後ろ指を指された』教導部隊の教員が『箔付けのために、前線での転属を望む』ケースもあり、結果的に、1945年当時における『腕っこき』の大半は64Fに一時的にでも属した、あるいは『共闘』した経験を持つことになった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――2021年のある日。オグリキャップはゴルシに相談を持ちかけていた。それは。

 

「全盛期のタマモさんと今の状態で戦いたいだぁ?」

 

「そうだ。今の状態のタマとでは、お互いに気心を知りすぎていてな…。何かあるだろう?」

 

「平行世界が一つ増える事になるのをあんたがいいのなら、できない事はないが」

 

「どういうものだ?」

 

「一つは未来への影響が出るのを承知で、普通に過去に行く、もう一つは『タマシイムマシン』(魂だけを一時的に過去に送り込むタイムマシンの一種。ドラえもん曰く、元は老人が過去の記憶を懐かしむためや、認知症治療の目的で開発したという)で一時的に、あんたが望む時間軸の肉体に魂を憑依させるというもの。未来に影響は出ないらしいが」

 

「なぜだ?」

 

「おそらく、その時点で元の世界と分岐するからだろうな。クリークさんと相談しな。魂だけを過去に送る場合、現在の肉体は抜け殻になるからな。タイマーが作動すれば、元に戻るらしいが、色々と不味いだろ?」

 

タマシイムマシンが開発された理由は『認知症患者の治療』だとされるが、色々と危ない点も多々ある。ドラえもんも詳しくは把握していないというが、ドラえもんの時代には、普通に市販されていたという。

 

この後、オグリキャップはスーパークリークやタマモクロスらと相談した上で、助言を仰いだ。結果は『タマシイムは危ないから、普通に過去の自分と入れ替わり、天皇賞を普通に勝て』というものであった。これはタマシイムの仕組みが『危うい』からであった。後日、オグリキャップは自身の心残りを解消するため、ウマ娘世界の過去にタイムスリップ(ゴルシがタイムマシンを操縦した)し、その時期の天皇賞に臨んだ。

 

 

――ウマ娘世界の20XX年――

 

「すまない、ゴルシ。協力してもらって」

 

「なに、良いってことよ。この時代のあんたを拉致るのは大変だ。二週間はかかったのは、あんたに効くレベルの眠り薬を、敷島博士とタキオンに共同で作ってもらってたからだ。普通のウマ娘なら、三日は眠り続けるらしいが、あんたには一日だという」

 

「すまんな」

 

注射薬になったのは、経口薬では、オグリキャップには薬効が見込めないからとの事。オグリキャップの薬への突出した耐性が窺い知れる。

 

 

「んじゃ、過去のあんたをテキトーに拉致っておくから、入れ替わっといてくれ」

 

「ま、待て。入れ替わるったって、どうすればいい?」

 

「そこらへんをほっつき歩いてれば、適当にベルノライトさんが見つけるだろうさ。ほんじゃ、後でな」

 

「お、おい!」

 

タイムトンネルが閉じ、オグリキャップはゴルシの言通りに、程なくして、ベルノライト(オグリキャップの同期のウマ娘で、サポート学科へ進んだウマ娘)が見つけ、オグリキャップは往時の勝負服に身を包み、変則的な形で、久しぶりのトゥインクル・シリーズを味わっていた。

 

 

(やはり、ドリームシリーズとは違うな。この熱気……久しぶりだな)

 

「なんや、その顔は」

 

「……タマか」

 

「おい、ウチは猫ちゃうで!?」

 

「わかってるさ。君に負けるつもりはないということさ」

 

「おーお。ずいぶんとかましおるな」

 

「……すぐに分かるさ」

 

その微笑みの意味を測りかねる『当時』のタマモクロス。

 

「私達にとって、既にシリウス達は敵ではないだろう?私が勝ちたいのは……君だ」

 

タマモクロスと親しくない当時の接し方を必死に思い出しつつも、現在の心境を垣間見せる。実際、この当時のシリウスシンボリはレースウマ娘として全盛期を終え、そろそろ『落ち目を迎える』頃であり、昇り龍と例えられていた当時のオグリキャップとタマモクロスの敵ではない。(現代においても、シリウスシンボリは後輩でもあるエアグルーヴには高圧的に出れても、オグリキャップとタマモクロスの名を出した途端におとなしくなるというほどのトラウマを持つという)

 

「ほな、その自信のほど、確かめてもらうで」

 

「ああ」

 

――果たして、レースは始まった。この時の天皇賞にはG1級ウマ娘も多くいたが、その能力値に衰えが出ていたり、伸びしろが無くなっていた者も多く、タマモクロス以外はオグリキャップの眼中にはなかった。――

 

「悪いな、シリウス。私とタマの勝負に……水を差さないでくれるか?」

 

「……んだと、てめぇ……!」

 

シリウスシンボリがそう言い返した瞬間、オグリキャップはシリウスシンボリを『置き去り』にした。文字通りに。オグリキャップは全盛期の頃の『完成された』加速を用いた。この当時の現役ウマ娘では『G1級』であろうが、殆ど追随を許さないほどの。

 

「ウソ……だろ?」

 

シリウスはこの瞬間に心をへし折られ、以後は完全に往時の輝きを失った状態となり、その翌々年にひっそりと引退したという。

 

「シリウス……。もはやお前の時代ではないという事だ」

 

関係者用の観客席でレースを観戦していた、シンボリルドルフは幼馴染であっても、レースウマ娘としては『退き際』を冷酷なほどに見抜いた。自身がそうであった(大怪我で引退せざるを得なかった)からだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

――レース展開は『史実通り』に、オグリとタマモの一騎打ちの様相となった。最後の直線、タマモクロスはスタミナが尽きかけ、思考力も低下し始めたが、自身の中にある思いがウマ娘としての『スペックの限界』を超える扉を開き、ターフに稲妻が奔る。

 

「ウチは約束したんや……。みんなにかっこいところを見せるって……日本一になるって!!」

 

タマモクロスが固有能力に目覚めたのは、この瞬間であった。追いすがるオグリを突き放す。……はずであった。だが……オグリキャップには、史実にはない秘策があった。

 

(ルドルフ……。あんたの力を借りる!!)

 

次の瞬間、タマモクロスは幻視した。シンボリルドルフが勝負服姿でターフに現れたかのようなビジョンを。周りのウマ娘には『緑色の稲妻を、オグリが纏った』ようにしか見えない。だが、観客席のシンボリルドルフは目をカッと見開き、驚愕の表情で叫んだ。

 

「馬鹿な!?あれは……私の『汝、皇帝の神威を見よ』……だと……!?」

 

ルドルフがあからさまに狼狽するのを、マルゼンスキーも久しく見ていなかったため、事の重大さを悟った。だが、そのマルゼンスキーも。

 

「(マルゼン……あんたの力も!)おおおっ!!」

 

加速力増強のため、更にマルゼンスキーの『紅焔ギア/LP1211-M』を重ねがけしてみせたオグリキャップ。今度はマルゼンスキーが腰を抜かす羽目になった。

 

「ウソでしょ、『領域』を……重ねがけした……。それも、私とルドルフの力を……?」

 

ウマ娘の固有能力そのものは基礎となる領域の『開眼』に至れば、ある世代の大物ウマ娘の能力が『次代のウマ娘に継承される』事があると、この後の時代に判明する。ちょうど、テイオーやマックイーン以降の世代が学園に入学した後の出来事。オグリは最後のダメ押しと言わんばかりに、この時代には『子供』であるはずの後輩『ナリタブライアン』の固有能力『Shadow Break』を最後の重ねがけとして発動した。

 

(ブライアン……。最後に借りるぞ、お前を『シャドーロールの怪物』と言わしめた力を!!)

 

お互いの全盛期に『怪物』と呼ばれた事があるという『繋がり』しかないはずだが、とにかくそれを発動した。オーラの色が紫に変わり、タマモクロスのみならず、後方のウマ娘、観客席にいる誰もが『摩訶不思議な幻影』を見た。

 

「なんや……今のは……?」

 

タマモクロスはハッとした瞬間、オグリキャップが自分に並んでいることにギョッとなった。オグリは微笑っているように見える。

 

――オグリキャップ、タマモクロス!!並んだ!!完全に並んだ!!こうなると、ハナ差の勝負になるか!?――

 

実況もヒートアップしていく。勝負は残り数百m。ウマ娘達の中では、『第三者であった』ルドルフとマルゼンだけが、二人の至ったものが何であるか気づいていた。稲妻と『怪物』の勝負だと。

 

 

 

 

 

――オグリキャップは史実を塗り替えるつもりで、三人から継承していた能力を全力で発動させた。だが、歴史の帳尻合わせという名の修正力の為せる業か、オグリキャップはタマモクロスより『前には出れなかった』。タマモクロスも『限界を超えてなおも、自身が引き離せない』オグリキャップの怪物ぶりに打ち震えた――

 

 

 

――同着!!同着です!写真判定とビデオ判定の結果待ちですが、おそらく同着でしょう!!!――

 

二人はまったくの同時にゴールを駆け抜けた。写真背景やビデオ判定を持ってしても『同時』。例を見ない『同着』であった。史実とは異なるが、史実からは完全には逸脱しない範囲の落し所であったといえる――

 

「同着やと!?……こうなるたぁ……思わなかったで……オグリ」

 

「ああ。今日はタマと走れて、本当に嬉しかったよ」

 

「そう言われちゃ、敵わへんな」

 

「そうだな」

 

「ところで、そうなると、ウイニングライブはどうなるんや?」

 

「多分、交互に歌うことになるんじゃないか?前例はないが。ライブの曲だが、流して欲しい曲が一曲あるんだ。頼んでくる」

 

「協会に知り合いがおるんか?」

 

「ちょっとな」

 

下手なはぐらかし方だが、それはゴルシのことである。ゴルシもライブの設営関係者にあれこれの口八丁で取り入り、オグリが『歌ってみたかった曲』を(音源を持ち込んでいた)流した。ライブのアンコールという形で。それは後輩のナリタブライアンがキャリア初期に歌っていたが、彼女が怪我した後は『BLAZE』に使用曲を切り替えたため、歌われなくなった『シャドーロールの誓い』であった。つまり、オグリの現役当時の時代には『存在しないはずの楽曲』である。

 

『♪孤独や涙さえもぉ~速さへと変える誓い~♪何度不安に駆られても、止まりはしない!どんな明日が待っていてもぉ~走り抜く意思は同じ――!誰にも負けない、夢を掴んで――……♪』

 

オグリは、後輩のナリタブライアンにある種のシンパシーを感じていた。オグリも、ブライアンも、『全盛期は怪物と呼ばれたが、けして、全てが順風満帆ではなかった』という共通点がある。また、オグリは規則という形で、ブライアンは自身の怪我、それに伴う精神面も絡む不調という形で『周囲の期待した夢には応えられなかった』。出自も成り上がり方も異なる二人だが、『周囲の期待を裏切ってしまった』という、共通した負い目を持つ。故に、オグリは『シャドーロールの誓い』を気に入っており、現役時に遡るという『ウルトラC』で『トゥインクル・シリーズのウイニングライブの舞台』鮮烈に歌唱した。ゴルシは服装を替え、一見すると協会関係者のように見える、キャリアウーマン風のスーツ姿になっており、万感の思いで、オグリのウイニングライブを見つめていた。

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