ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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回想編の続きです。


第二百六十一話「回想~黒江のシンフォギア世界での選択~9」

――シンフォギア世界で黒江はマリアを引き連れて、世界の情報を収集しつつ、自身は武装組織『フィーネ』が出現させたノイズをその闘技で蹴散らしていた。元の調より背丈が10cmは伸びていたりしているという外見的差異もあるが、聖闘士として、戦士として既に完成された黒江の動きはこの時点で風鳴弦十郎をも唸らせるものであり、後に黒江のもとに現れる歴代のプリキュアの多くをも、正面戦闘においては凌いでいた――

 

 

「当面はこの世界にこの姿でいなきゃならんようだし、せっかくだ。この世界を守ってやるか」

 

黒江は纏っているシュルシャガナのギア(適合率がこの当時の調本人とは比較にならないため、ギアの形状とカラーリングは史実の魔法少女事変時点以降のものとなっている)の機能は使わず、手慣れている攻撃で対処し、縦横無尽に戦場を飛翔した。シンフォギアは機能ロックが解除されない限りは『陸戦用強化服』の粋を出ない(スラスターによる高速移動が物によっては可能だが)。だが、黒江は転移時点で既にゲッター線の力をある程度は制御できるようになっていたため、ギアの形状がノーマルのままで飛行し、体格が(黒江本来の背丈よりは小柄だが)元になった人物よりかなり大柄であるため、真ゲッターが使うような『ハルバードタイプのトマホーク』を難なく扱える。そのため、ノイズなどは敵ではない。そして、この様子は二課もキャッチしていた。

 

 

 

 

 

 

――二課 移動本部――

 

「例のシュルシャガナの装者が現れました!」

 

「状況は?」

 

「圧倒的です。有象無象のように、ノイズを蹴散らしています」

 

「すごい。物理法則を無視している……」

 

二課は衛星からの映像中継で情報を得ていたが、黒江の圧倒的動きを捉えきれていない。更に、如何に熟練の装者であろうと、ハルバードを一振りするだけで、多数のノイズを蹴散らす事は不可能なはずだが、彼女はそれを可能にしていた。

 

「司令、これは……」

 

「師匠、これって…!」

 

「こりゃ…!?」

 

「来たか、お前たち」

 

二課の装者たちがやってきた。風鳴弦十郎は状況を説明する。前回のノイズ出現から間が空いているが、『彼女』が現れ、対処していること、歌う様子がまったくないため、ギアを維持はできても、フォニックゲインは高まっていないはずが、二課の装者全員を『圧倒的に』上回る戦闘能力を発揮していた。

 

『ムウン!!』

 

調(黒江)が背中に10枚のウイングを出現させ、周囲に強力な電流を放出し、一気にノイズを焼き払う。その技の名は。

 

『サンダァァァ!!ボンッバァァァ!!!』

 

サンダーボンバー。この時の二課の面々は知る由もないが、元々はゲッターロボアークの最大必殺技である。ゲッターアークは『真ゲッターの戦闘力を維持しつつ、人の制御が効くレベルに収めた』ある意味、ゲッターロボGまでの『大人しめ』の特性を持つものの、基礎戦闘力を真ゲッターレベルに引き上げた優等生的ゲッターロボである。黒江達は転生を繰り返し、ゲッターロボそのものに搭乗した経験と、ゲッターに見いだされた影響で、技の再現が可能となっていた。その発露だった。

 

 

「凄まじい電流の奔流です!エネルギー量は……計り知れません!!自然界で起こる雷のそれをも遥かに超えています!!」

 

二人のオペレーターが血相を変えて報告する。エネルギー量が自然に発生する雷のそれをも超えており、雷神と形容すべきパワーである事が見るからにわかるからだ。

 

「あ、シュルシャガナの装者の反応が……消失!?」

 

「完全に慣性の法則を無視した空中機動です!!ギアを纏っていたとしても……こんな機動に人が耐えられるはずが!?まるでUFOです!!」

 

二人の驚愕と畏怖に満ちた声が、状況をこれ以上無いほどに装者たちに示していた。『シュルシャガナの装者』は予想を遥かに超えて強大である事が否応なしに示されたからだ。

 

「調ちゃん……いったいどうなってるの…!?」

 

「奴はもう一人の装者と仲間割れを起こしていた。司令、小日向未来の仲介で、彼女と会ったそうですね?」

 

「ああ。彼女は何かかしらの事情を抱えているようでな。我々と積極的に敵対する意思は無いとも…。彼女の真意は見極める必要はあるが、我々の敵になる気はないようだ」

 

会談の大まかな結果だけを伝える風鳴弦十郎。黒江に二課と敵対する意思はない。それは最大の安堵である。先程の映像からもわかるが、二課の装者達が束になってかかっても、太刀打ちできるかは未知数である。更に、弦十郎が小日向未来と本人から聞いた話を聞く限り、『平行世界の太平洋戦争期の日本陸軍航空部隊の将校で、現役の航空兵。更に、神の軍団に仕えし戦士でもある』。この時は確証に欠ける面があるので、弦十郎は装者たちに詳細を明かさなかった。とは言え、これでも、黒江の能力の真価ではないのだ。

 

「あいつは……あたし達が最初に出会った奴じゃない気がするんだ」

 

「どうして?」

 

「考えてみろ。いきなり、10cmも背が伸びるわけはねぇし、口調も全然違ってたろ」

 

「言われてみれば…」

 

「それに、積極的に接近戦を行い、更には電撃を操ってみせた。奴は…できる。手刀一つでギアをアンダースーツごと斬り裂いたのだ……。ギアの性能に頼っていないのは、あの時に感じた」

 

風鳴翼は黒江のサンダーブレークと手刀バージョンのエクスカリバーの洗礼を受けている。いくらギアを纏っていようと、たかが手刀で防御フィールドごと、アンダースーツまで叩き切れるわけがないからか、真剣な声であった。なお、後に判明するが、翼は青年期以降のフェイト・T・ハラオウンと声色が酷似しており、フェイト当人も苦笑交じりの感想を述べている。

 

「それと、お前の拳を易易とあしらってみせただろう?立花。私たちが記憶している『奴』はギアの機能に頼った戦い方しかできんはずだ。それに、ギアの色合いもあの時とは全く異なるだろう?」

 

「はい…。あの時は全体的に暗めの色だったはずなのに、今は白とピンク。まるで別の………翼さん…?」

 

「……今はなんとも言えん。だが、敵ではないという、司令と小日向の言葉を信じよう」

 

翼も、ある種の確信を抱いていたようだ。短時間にギアの色合いや形状が変化することは、聖遺物への適合率が高い者であってもありえない。ましてや、敵対側の装者たちはLINKERを服用していたはずだ。それがいきなり『ギアを常に纏っている』ようになることは不可能である。それは翼のかつての相棒で、戦死した『天羽奏』の例で充分に証明されている。響はその事がどういうことかはおぼろげにしかわからないが、違和感はあったのは同じである。多くの謎が新たに示され、今後の接触などに悩む二課の面々であった。

 

 

 

 

 

 

 

――黒江はマリアと合流し、ギア姿のままで、外で食事をしていた――

 

「あなた、ギア姿のままでホットドッグを?」

 

「普通の服を買えるほどの金はないからな。それに、逃げる時に着てたのも、体格的に小さくなっちまって、入らなくなったしな」

 

「なるほど」

 

「この世界は平和でいいよ。あの怪物が出る以外は。俺の故郷は戦争中だし、仕事で行ってる先も疫病が流行ってて、空気がギスギスしてるんだよ」

 

「疫病?」

 

「スペイン風邪以来の大流行でな。2019年の冬に某国で確認されてから、一年ほどで世界的大流行に陥って、世界中が不景気に陥ってる。陰謀論も最初から出るくらいの感染力と変異速度だ。世界的に見て、かなりの医療体制のはずの日本でさえ、都市部の医療体制が限界に近づいてるほどだ。だから、こういう普通の雰囲気は久々なんだ」

 

黒江は故郷では戦線の先鋒を務める身であるし、21世紀日本でも、自衛隊の高級感部として、疫病対策を政府に進言できる立場にある。つまり、ここのところはずっと有事下にある世界に身を置いているため、シンフォギア世界の日本は『ノイズが災害と位置づけられている』以外は平和を謳歌している。そのため、平時の空気を味わうのは数年ぶりである。

 

「あなた、あの戦い方はどこで?」

 

「俺はスーパーロボットにも乗ったことがある。それもキワモノじゃなく、ゲッターロボやマジンガーといった、超大物にな。そのパイロット達の戦い方を間近で見てきたし、手ほどきを受けた。アニメファンが聞いたら、感涙にむせぶだろうよ」

 

ニヒルな物言いの黒江。黒江は転生後はニヒリズムな物言いが増加している。転生を繰り返した故の哀愁も込めていた。調の姿で言うので、マリアは不思議な感覚を覚えた。

 

「その姿だと、あの子が大きくなった感じがしてしょうがないのだけど?」

 

「しかたねーさ。あのガキの物言いから察するに、この姿の元の持ち主が『乗っ取られた』って思ってるみたいだ。そうなったなら、体格まで変わるわきゃねーだろうに。俺だって、こうなるなんて思いも寄らなかったんだ」

 

「切歌をどこに飛ばしたの?」

 

「小笠原諸島か、それとも東京の離島……あるいは沖縄諸島のどこかか。日本の端っこには飛ばしたと思う。当分は帰れない。あいつの能力じゃ、長時間の滞空は無理だろう?それと、元の世界で使ってる、通信と索敵妨害に使う物質をあいつの周りの空間にばら撒いたから、その効果が出るはずだから、気がついても、三日は連絡はつけられんだろう」

 

「なにそれ」

 

「ある世界で軍事利用された新物質でな。電子機器の作動に悪影響を及ぼす作用がある。レーダーや、21世紀までの原理での長距離無線通信とかな。その物質を、あいつのギアの通信機がしばらく使えないようにばら撒いておいた。効果は時限式だが、こっちが対策を講じられるだけの時間は稼いだ」

 

黒江はM粒子を切歌を転送する直前のアナザーディメンションの空間に一定濃度で散布し、転送終了後にギアの通信機を機能不全にさせる目的で使ったと教えた。黒江流の念入りの対策であった。その効果は出ており、切歌が目覚めた地は小笠原諸島の『父島』。旧日本軍の施設の廃墟がある山の中でのびていたりする。

 

「大丈夫なの?」

 

「人がいるところには飛ばしたつもりだ。たぶん生きてるだろう。ま、起きたら腰抜かすだろうよ」

 

「かなりアバウトね」

 

「細かい座標の指定をする時間はなかったんでな。向こう側も慌ててるだろうが、ノイズってのは誰が出している?」

 

「おそらくは、ドクターウェル。マムの身体の治療をさせるために見逃してはいたのだけど……危険な男よ。英雄願望がバカみたいに強い男でね…」

 

ウェル博士。史実では功罪入り交じる存在という表現が当てはまるマッドサイエンティスト。(とは言え、その度合は生前の兜十蔵や早乙女博士、はたまた敷島博士に比べれば、子供のようなものだが)ネフィリムという聖遺物や、英雄になることに固執し、自身のためなら、仲間を平然と切り捨てるような危険思想者だと、マリアは言う。

 

「あなた、私達のことをどれだけ知っているの?知っているのなら…」

 

「言ったろ?チラっとしか見てないし。面倒見てるガキのスマホゲをいじってみた程度なんだ。そこについては力になれん。だが、そいつが何かやれば、俺が止めてやるさ」

 

黒江はこの後、事情を察したウェル博士からは『イレギュラー』とされ、観察対象と見なされる。切歌は結果的に思い込みが正されずに精神が破綻状態に陥っており、完全に狂気に染まってしまい、(ウェル博士が嘘を吹き込んだ事も大きい)周囲を顧みない戦闘を行い、何の関係のない一般人を虐殺してしまう。これが彼女が正気に戻った後に巡り巡って、周囲に悪影響を強く及ぼしてしまう。そして、切歌は虐殺の罪を償うために、SONGに属することを辞め、聖闘士となるのである。

 

「貴方のその力は転生の賜物なの?」

 

「単純な転生じゃねぇから、説明しずらい。それに、俺はお前等のいう完全聖遺物を普段から扱ってるようなもんだし、この世界の人類とは存在そのものが違うようだし」

 

シンフォギア世界の人類は他の世界と違い、先史文明(後の記録で言うシュメール文明と思われる)が猿を意図的に改造して生まれた存在であるため、他の世界より人為的な面が強い。(未来世界もプロトカルチャーが似たような事をしたが、決定的要因はそれを促すゲッター線の存在である)

 

「シュメール神話の元になった宇宙人が家畜か何かを意図して生み出したのがこの世界の人類なら、俺達はゲッター線という進化を促す宇宙線が進化に関わってる。ゲッターロボのエネルギーになってるあれだが……。ロボットさえも有機体のように進化させられる効果がある」

 

「なっ、そんな事……ありえるの?」

 

「あるんだ。マジンガーZのプロトタイプ……エネルガーZを、マジンカイザーという最強のマジンガーにまで進化させ、ゲッターロボGを真ゲッタードラゴンにする効果が確認されてる」

 

「……機械さえも進化させる宇宙線……」

 

「だが、どんな力であれ、扱う奴次第で善にも悪にもなる。鉄人28号の歌詞にもあるように」

 

「ずいぶん古いわね」

 

「俺にとっちゃ、20年くらい後の漫画だけどな。1940年代の20代だから、俺」

 

「その割に、現代の暮らしに順応していない?」

 

「言ったろ?平行世界を行き交ってるせいだって」

 

黒江は1945年当時に22歳前後(戸籍上)。ウィッチの世界ではロートルとされる年齢だが、世の中の常識では『青二才』である。その齟齬が45年当時に騒動となり、ミーナは下士官への懲罰的降格さえも俎上に載せられるわけだが、その問題が表面化するのは、黒江の帰還後の事である。それに関連し、この頃は、ウィッチ世界でミーナの冷遇が発覚した時期でもあり、江藤が一度目の退役前に上申していたはずの未確認戦果を記した1930年代に書かれた書類の一式が1945年、残務整理中の陸軍参謀本部の人事部の粗雑に重ねられていた書類の山から発見され、現地から伝わる情報に憤慨した昭和天皇が江藤を皇居に呼び出し、真意を問いただした時期でもあった。江藤敏子(黒江たちの元上官で、初代64F時代の隊長であった)は人事部のミスであり、彼女には非はなかったため、艦娘・陸奥の執り成しで懲罰を免れたが、ミーナは事態を把握したロンメルとモントゴメリーから強く叱責される羽目に陥ってしまった。

 

「あなたの世界、どうなってると思う?」

 

「仲間は俺を探してるだろうが、その前に人事的意味の騒動待ったなしだろう」

 

「何それ」

 

「今の部隊の上官が年下な上、俺とダチの昔の活躍を知らないっぽくてな。その彼女の上官にあたる将軍たちは大騒ぎだろう。日本で指折りのエースパイロットで鳴らして、世界的にも名声得てたから、俺とダチ」

 

「そんな事ありえるの?」

 

「戦時中の座学が省略された時の世代には、ままあるんだ。特に、俺ら魔法使いは本来、サラブレッド並に世代交代が早くてな。俺とダチ共みたいに、恒常的に力を使えるのは特異体質に入る。世代につき、一人か二人いればいいほうらしい。それが上官の運命を決めたようなもんだな。今頃、将軍たちに怒られてるかもな。国際部隊だったから、余計に不味いんだ」

 

「だいたい想像つくわ」

 

「おまけに、その運の悪い事に、ドイツ人でなぁ」

 

「あー……」

 

黒江の言う通り、ミーナはブリタニアの連合軍前線司令部に呼び出され、『扶桑の外務省が公式に抗議をカールスラント帝室に申し入れた』事、黒江たちは純粋に『助力』で派遣されていた事が通告された。ミーナは『20歳超えのエクスウィッチのどこが助力なのです!?』と言い返したが、ロンメルが『彼女らは特異体質で、現在でも第一線級の能力を保っているのだが?扶桑最高のエースだというのに、貴官は戦力外というのかね?』と冷たく突き放した。モントゴメリーは『これは人種差別問題にもつながる問題なのだ、中佐。かつての事変の英雄を冷遇したことは既に扶桑の世論を沸騰させている。私達に喚き散らすよりも、素直に公に向けて謝罪するほうが先ではないのか?』と述べた。加えて、『人事記録を見たまえ。彼女達が如何に偉大な存在であるかがわかる』とも。ミーナに突きつけられた人事ファイルには『扶桑海七勇士』、『ウィッチ黄金時代の礎を築いた英雄』という文字、自分が子供だった時期に、大物怪異を倒す事例を作った世代であることを示す写真。この呼び出し以降、ミーナは次第に言動に狂気を帯びていく。自己保身に走ったのもこの頃であるように、知らず知らずの内に、仲間からの人望を失っていく。同時に、七勇士出身者達が隊の主導権を握った状態で、二代目(現)64Fに取り込まれていくわけだ。

 

「あの時代のドイツ人は、極端なナショナリズムに毒されてる阿呆が多いと聞いているけれど」

 

「俺の世界はマシなほうだ。第二帝政が存続しているからな。それでもいるが。ドイツの科学力は世界一ィィィなこと宣うバカはな」

 

「ドイツ人はそういう民族だから。まぁ、日本人も独創性に欠けるけど」

 

「八木アンテナとかな。あれは笑えん例だったが」

 

黒江は日本人が古今東西、陥りがちな固定観念は多分に心当たりがあるので、苦笑する。

 

「あなた、元の世界では魔法使いでパイロットなの?」

 

「機械の箒で空を飛ぶのは前に言ったが、普通の飛行機で飛ばないわけじゃない。俺はテストパイロットもしてたから、なおさらな。そうでないと、テストパイロットなどはやってられんよ。陸軍出身だが、空母に着艦することも多かったからな」

 

黒江は陸軍出身だが、空母に着艦する技能を新兵当時から訓練されていた世代にあたる。更に、黒江は夜間飛行技能もある『技能甲』に分類される空中勤務者で、扶桑全ウィッチでも屈指の実力者である。そこがミーナには不幸だった。

 

「日本軍は統一した空軍はないのよね」

 

「別の世界と接触したんで、作る動きが活発になってる。海軍がクーデターやらかした世界だから、陸軍主体になるだろう」

 

その動きは黒江の帰還後すぐに具体化するが、海軍青年将校らが不満を持ち、1946年前後にクーデターを起こす。結局、海軍航空隊は手元に残された空母航空隊の再建に1946年から長時間を要してしまうこととなり、その間にレシプロ機の時代が終焉してしまうなどの混乱も起こる。結果、空軍が主力の軍隊として、太平洋戦争は進展していく。

 

「あなたも元に戻ったら、戦争に?」

 

「史実と違う形だが、結局はアメリカと戦ってるからな。史実と違って、日本に大義名分がある分、マシかもしれんが。同盟国が英国だし」

 

「階級は?」

 

「大佐だが、直に准将になることになってた。航空兵出身では初だよ」

 

「ドイツじゃいたでしょ?」

 

「前例がないってやつだ。天皇は少将への昇進を約束してくれたが、お偉方が反対したんだ。で、天皇を嘘つきにできるわけがないから、准将の階級を置いた。いわば、妥協案だ」

 

とは言え、その後すぐに中将に昇進してしまう(自衛隊で空将になっていたための兼ね合いでもある)ので、短期的に見れば徒労に終わったが、長期的にはウィッチ出身者が将官になれる道を切り拓いたため、大いに意義があった。また、将官になれれば、士族出身者でも『子爵』以上の爵位が得られる機会がある(それまでは平民出身者は近代化の功労者の一族以外は男爵が上限であった)ことを知らしめる機会ともなる。扶桑の華族は過去の日本における華族と大きく意味合いが違っていたこともあり、廃止を免れる。(ウィッチの安定供給元の一つでもあるためと、国家功労者への名誉的意味合いが強いため)制度確立時の特権は時代に合わせて縮小・改変が進むが、義務は課され続けるため、積極的な叙爵は減っていくが、何かかしらの形での慰労は続けられる。扶桑では功労華族のほうが多くなっていたからでもある。

 

「帰ったら、やることは多い。だが、この世界の動乱を収めるのが先決だろう。俺の副業はそういう仕事だ」

 

「だからって、シンフォギアを普段着代わり?」

 

「仕方ないだろ。元の『こいつ』(調)より背が高いから、服がないし、金もない」

 

なんとも、しょうもない理由であったが、黒江はシンフォギアを普段着代わりに使った。小宇宙でシンフォギア特有のエネルギー反応を抑え込んでいる事もあり、二課に探知される事も無い。また、二課も常に状況の把握をしているわけでは無いこともあり、黒江との接触は黒江が自分から接触しない限りは『極めて難しかった』。また、マリアはこの頃に黒江に色々なことを頼み込んでおり、それが後々の伏線となる。マリアは表向きは有名アーティストであることもあり、ある程度の変装をしているが、黒江はギア姿を通している(そのままバイトをする事もあり)。この時期の経験が調本人に伝えられた結果、調もギア姿を通す事が多くなる。また、調は後にのび太への思慕という心象の変化がマフラーの付加として表れるため、二人のギアの形状が完全に同一であった時期は実は短いのだが、黒江もこの頃は、史実の魔法少女事変の時点で調が纏っていたものに単純に首のマフラーが付加されただけであるため、ちょうど、この時期が偶然にも、『二人のギアの大まかな姿が同じであった』時期にあたるのである。

 

 

「さて、今日はどこで風呂入っかな」

 

「いい加減に、ビジネスホテルにしたら?私の表向きの顔を使えば、ビジネスホテルくらいは泊まれるはずよ」

 

「カード持ってきたのか?」

 

「入れてたのを思い出したのよ。これでも、表向きは売れっ子歌手よ?」

 

マリアはドヤ顔だ。テロリストまがいのことに現在進行形で加担している割に、世俗っぽさが残っている。これはマリア達の良心が完全な悪道に徹することに罪悪感を感じるからで、ある意味では、彼女たちこそが『偽善』である。その自覚があったのも事実なので、マリアは黒江に加担することで、死んだ妹『セレナ・カデンツァヴナ・イヴ』への贖罪をしたかったのである。

 

「それに……あなたにはこれから色々と世話になりそうだから」

 

「そういう気がしてたよ」

 

黒江は微笑う。そういう予感がしていたからだろう。こうして、マリアは自分の表の顔を使い、ビジネスホテルに泊まることを提案する。表向きの『歌手』という仕事を考えれば間違いではない。ネット喫茶巡りは流石にきつくなっていたのだろう。黒江もマリアがカードを持っていたことで資金面の心配がないため、この日はビジネスホテルに連絡を入れ、宿泊することにしつつ、黒江もこの日はオフなので、そのまま街の観光をしばし、共に楽しむのだった――

 

 

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