――シンフォギア世界来訪時、黒江は多少の制限(元の姿ではない上、金が無い)があったものの、戦闘能力に制限が加えられたわけではなかったので、殆ど敵なしであった――
――市内のホテル――
「あなたのその強さ、どこで?」
「数回ほど転生を繰り返して、数百年単位で長く生きた末のものだ。聖闘士としての力は主力だが、全てじゃない」
黒江は仮面ライダー三号を倒すために、修行を重ねた。だが、その時の『生』では『再戦の機会』はとうとう訪れなかった。しかし、仮面ライダー三号はどういうわけか、その記憶を有しており、後々、キュアドリームへ『俺は逃げも隠れもせん』と言付けを述べるのであるが、それはそこからはずいぶん後のことだ。
「あなた、他人の姿になったのに、ずいぶんと落ち着いてるわね…」
「この歳になると、肝が据わるからな。よほどのことでなきゃな」
黒江の強さは三号への敗北などが糧になったが、肝心の三号への雪辱の機会に恵まれないという不運もあった。お互いの立場の違いもあるが、単純に、再び出会う機会がなかったのである。調の姿と声になっていても、態度は普段と変わらないため、マリアには不思議な感覚であった。
「お前らが引き込んだという、あの博士だが、どういう人物だ?」
「ええ。実は……」
この時に、黒江はウェル博士の情報を得た。黒江は人生経験の差で、ウェル博士がマリアたちを利用せんとしている事を悟り、マリアにある知恵を授ける。だが、精神に異常をきたした切歌はウェル博士の言葉を素直に信じてしまい、ここから、しばらく後に『惨劇』を引き起こしてしまう。ウェル博士に『駒』として利用されての所業であり、本人も精神に破綻を来たしていた時の行為であるため、情状酌量の余地はわずかにあった。それが皮肉にも、切歌の命を救うことになる。
「ふむ…。俗に言うマッドサイエンティストに片足突っ込んでる奴らしいな。なら、策を伝授しておく。向こうの企みを逆に利用するから、リスクは有るがな。」
「お願い。切歌はどうなるの?」
「このまま行けば、お前らは国際司法裁判所か何かで、形式的な裁判の後に、良くて終身刑、最悪の場合は電気椅子に座らされる。あの緑のガキをどうにかして、終身刑くらいに抑えるしかないが、狂った者は、そいつが普通ならやらないような真似もしでかす。多分、あいつの口ぶりから言って、俺の魂を消しにかかるだろう。この姿の元の持ち主のために」
黒江は切歌を抑えるため、『シンフォギアを破壊する』選択肢をこの時から考えていた。だが、切歌の精神が完全に破壊される危険が大きく、マリアからの懇願もあり、穏便な方法を考えていく。また、二人はこの頃から、小日向未来を介し、風鳴弦十郎に内通している。要するに、二課側につくタイミングを探っているわけだが、風来坊である黒江はともかく、マリアの踏ん切りの問題や、情報収集の都合で、二人はしばらくの間は身を隠すことにしている。とはいえ、風鳴弦十郎も黒江に『プロセスを踏む必要があるので、何度か交戦してもらうことになる』と述べている。
「あいつのイガリマは俺なら無効化できるが、最悪の場合、イガリマの特性を『斬って』無くすしかないかもしれん」
黒江は、切歌が凶行に走った場合は『叩き斬る』と明確にした。シンフォギアを斬ることで『特性』を無くすために。また、黒江はその魂に最上級の聖剣を宿す都合上、イガリマの特性である『霊的なダメージを与える』事が通じないため、イガリマの刃をシンフォギアの籠手で受けてもいいのである。
「俺の聖剣は最上級のものだ。『千山斬り拓く翠の地平』の本質が失われた代物と打ちあえん道理はないさ。それに、俺のこのシュルシャガナだが、本来の異名は『万海灼き祓う暁の水平』。前に、職場で聞いたのを思い出した。由来はシュメール神話だったはずだ」
「ええ、その通り。だけど、それを知ったところでどうなるというの?」
「宝具は真名を唱えることで、その真価を発揮する。山羊座の聖闘士は基本的に、宝具の力を纏わせた手刀を聖剣とするが、俺は元から魔法使いだった関係で、任意で聖遺物の霊格を実体化する事ができるんだ。俺はそっちのほうが性に合ってるから、そうしてる。元々、仕事の関係で剣術の免許皆伝だったからな」
後に、弟子となる調も受け継ぐが、宝具の霊格を実体化する事は『ある一定の魔力を持っていれば、比較的容易に可能』である。イリヤスフィール・フォン・アインツベルンらが行う『限定展開』と似た原理である。(同じというわけではない)黒江の場合は『約束された勝利の剣』の実体化が、この時点で可能であった。
「全力出したら、辺り一帯は消し飛ぶな。対象を絞って加減した一撃でも、あのカンフーおっちゃんの率いる……二課だっけ?に観測されたしな」
「あなた、あのガングニールの子に突っ込まれたらどうするの?」
「まあ、間に合えば、拘束技で動きを止めるさ。俺の星座の拘束技『ドミネーションラングウェッジ』は強力だが……まだ、訓練でしか使ってなくてな」
黒江はドミネーションラングウェッジという山羊座の失伝技を復活させたが、黒江独自のルーティンで発動する。拘束力はかなり上位のもので、相手を物理法則から外し、意のままに操る。例えば、止まれといえば、最高速で暴走するF1カーだろうが、戦車だろうが、『その場にストップさせる』。抵抗は不可能である。
「どういう事が起きるの?」
「多分、エグい絵面になるぞ。あの黄色のお嬢ちゃんが猪突猛進の勢いで、スラスター全開で突っ込んでくるとしよう。俺がパワーを高めた状態で念じれば、あの子は文字通りに動けなくなる。その格好のままでな。苦し紛れにスラスターを吹かそうと、物理法則を外れる以上は役に立たん」
黒江は技の効果を説明するが、あまりに非現実的過ぎて、言ってる本人もピンとこない。だが、その言葉通り、言葉で相手の自由を奪うのは効果絶大であった。
――その機会はすぐに訪れた。黒江が単独で出歩いたところ、雪辱に燃える翼と出くわしたのだ。道中、ノイズを始末してきたと思われ、アームドギアは展開済みであった――
「今日はお前か。青のお嬢ちゃん」
「お前には、色々と聞きたいことがある」
「俺も色々と野暮用があってな。あまりかまってはやれんぞ?」
「子供扱いするなッ!今回はこちらからいかせてもらうッ!」
「好きにやれ。だが、あまりかまってはやれないのは承知してくれ」
「ふざけるな!!!」
翼は自分より年下と思われる装者に『おちょくられた』と感じつつも、先手を打ち、脚部ブレードのバーニアを使って滑空しての斬りかかりを行おうとする。バーニアで滑空する内にスピードも乗るのだが……
「!?」
唐突に、翼の動きが止まる。最高速からいきなり『ガクン』と止まったため、翼は困惑の表情を浮かべつつ、ブレードのスラスターを再度吹かす。……だが。
「な、なんだ……前に進まん!?」
先程から、ブレード部のスラスターが猛烈な勢いで火を吹いているのに、まるで何かにつっかえたかのように、その場からまったく進まない。それどころか、体全体の自由も効かないことに気づく。
「ば、馬鹿な!?体もまったく動かんだとッ!?」
まるで何かで固められたように、体全体の自由が効かないことに気がつく翼。黒江(外見は調)は攻撃が届く範囲だというのに、体が言うことを聞かないのだ。
「悪いな。お前の体は今、俺の思うがままだ」
心の中でほっとしつつも、それらしい表情をしてみせる黒江。証拠を示すため、翼の体を操り、メイドカフェでよくされている、いくつかの『あざといポーズ』を強引にさせる。シンフォギア姿で。
「……お、おのれぇッ!な、何の真似だッ!」
ものすごく恥ずかしいのか、ゆでダコのように顔が赤くなる翼。
「わりぃな。このまま、新技の実験材になってくれ」
黒江は更に、そのまま『シェー』のポーズを取らせる。翼は当然ながら、それに抵抗しようとするが、肉体そのものが自分で動かせない以上は為す術もない。
「何故だ、体が……奴の言うとおりに……!?」
「うん。こりゃ使えるな。……ほれ」
「!?」
最後は自分で自分を殴らせる。全力で。クリーンヒットだったため、翼はあっさり昏倒じてしまう。黒江は念には念を入れ、フィンガーネットでそのまま包み、更に体を太い縄で縛った上で、付近の建設現場のクレーンのてっぺんの足場に蓑虫の要領で吊るす。何気にひどいが、断崖絶壁に吊るさないだけマシである。
「仲間に助けてもらえ。まぁ、ミノフスキー粒子をばら撒いたから、無線が回復する頃には、夜になってるだろうが」
二課側の監視網は当然ながら、M粒子対応ではない。別の戦場から、響とクリスが駆けつけた時には、翼の居場所を示す書き置きが残されているのみだった。
――その日の夕方――
「どうだったの?」
「実験の後に、蓑虫みたいに、この街の建設現場のクレーンのてっぺんに吊るしてきた。目が覚めたら、肝を冷やすだろうよ」
「み、蓑虫……」
「奴らに書き置きは残したから、今頃は救出に四苦八苦してると思う。一番高い建設現場のクレーンの更にてっぺんに吊るしたから」
黒江の言う通り。翼は目が覚めたら、蓑虫のように縛られた上に網に包まれ、蓑虫 のように吊るされているので、さしもの彼女も悲鳴を上げてしまう状況に置かれていた。二課側は無線と映像が回復した直後に、この状況を突きつけられる事になり、手続きや人払いの都合で、救出作業の開始までに半日かかったという。
「バイトの賃金はもらったが、食品を買うだけで無くなる金額だ。お前のカード記録は調べられてないな?」
「表向きは歌手だから、お忍びの静養って言ってあるわ。公の地位を持ってると、何かと便利ね」
「まぁ、お前が宣戦布告したっていうライブを見てない連中も多いって事でもあるが」
黒江はマリアの協力で、それなりのホテルに泊まれるようになっていた。食事はお互いに、ホテルの部屋でインスタントラーメンやおにぎりを食べる程度で済ませている。
「この世界だが、仕事先の世界でのアニメより、数十年は出来事が前倒しされてるのは確かだ」
「本当?」
「思い出したが、お前らの体験する出来事は2040年代半ばとされてた。だが、この世界では、2010年代に起こっている。一世代分は確実に前倒しされているぞ」
ラーメンを『シンフォギアをまとったままの格好ですする』のは、実にシュールである。会話の内容は大真面目なので、マリアは妙な感覚を覚える。
「なんだか、妙な感覚だわ」
「俺がこいつを着ているからだろう。ま、昔の厚底ブーツみたいなものだと思えばいいが、車は運転できんな」
「ああ、生まれる頃に日本で……って、あなた、なぜそれを?」
「簡単だ。その時代から、今の仕事先の世界にいるからさ」
黒江は2000年には日本にいたので、そのことは知っている。そこから約20年間、日本で自衛隊にいる。そこから20年の流行を見てきていることになるため、21世紀にいても、生活に差し支えはない。
「この世界からノイズが消えても、亜種か何かが生み出されて、争いは続く。シンフォギアが必要で無くなる事は当分はない。ただ、俺のような外的要因が起これば、話は別だ」
「ありえるわね」
マリアは自分達の背後に、欧州に根を張る錬金術師の結社の影がちらついている事は承知しており、黒江の言葉を否定しなかった。そして、二課が翼の救出に一苦労しているであろうことをお互いに悟りつつ、今はラーメンををすするのであった。
「調もまさか、自分の姿を他人に使われるなんて、思いもしないでしょうね」
「向こうも、俺の本当の姿と入れ替わってるだろうから、お互い様さ。今後、そいつに俺の持つ技能が反映されるだろうし、行き先如何で心境も変わる。元鞘に収まる事はないだろう。そういう予感がする」
黒江の予感は本当に的中する、ただし、全てをかなぐり捨てて、調がのび太の世界に来た事は予想外であった。のび太は妹のように可愛がり、調ものび太に淡い思いを抱く。その状況はキュアフェリーチェ/花海ことはの来訪で変わり、それがお互いのそれまでを振り返り、『今度こそ、自分たちの守りたい誰かを守り通す』という共通認識へと繋がっていくのだった。
――この共同生活でマリアは黒江の理解者の一人となり、ウェル博士の野望を止めるため、高度な演技をこなし、策を講じていく。だが、マリアはこの時点で、重大な過失を犯してもいた。切歌の早とちりを『可能性を聞かされていたのに、面と向かって指摘しなかった』のだ。ウェル博士を止める事を考えるあまり、自身の家族も同然だった切歌のフォローをしなかった。この事はマリアの犯した痛恨のミスであり、結果として、その後の調と切歌の運命をも大きく変えてしまったのである。救いがあるとすれば、切歌が正気を取り戻した後は『贖罪のため』に、二課の後身である『SONG』を短期間で抜け、調と同じ道である聖闘士の道を選び、和解した事だろう。立花響も、黒江に『その場の感情』で演技を強いたことは後ろめたい気持ちとして残ってしまい、調本人が出奔した後は精神バランスを崩しぎみになってしまう。それが彼女の内に眠っていたもう一つの魂、そして『プリキュアの力』を呼び覚ますきっかけとなる。そのことから、何かかしらの強い感情が『覚醒』のキーになる事が後々に判明する。結果オーライではあるものの、響と調はしばらくの間、『わだかまり』を抱えてしまう。ダイ・アナザー・デイを経て、太平洋戦争で完全な和解を果たすわけだ――
――後に、小日向未来は『響は優しすぎるから、切歌ちゃんに同情しすぎたんです。本当なら、事故で別人の姿になった方が大事(おおごと)なのに』と、幼馴染かつ親友だからこそ、曲がりなりにも味方してくれた者に対する態度とは思えないほどに強く迫る姿を『それはない』と断じている。『黒江が同意しなかったら、腕力にものを言わせるつもりだったのか?』という趣旨の言葉で咎めてもおり、調と切歌への一方的な善意を優先させた事で、事態を悪化させた事は『響の自己満足を満たすために、調ちゃんの感情を無視した』と切り捨てている。その気持ちがあったのもあり、調の出奔に協力し、それをしばらくは意図的に伏せておくなどの制裁をしている。なんだかんだで、響は自己完結した判断基準があり、他者への配慮やデリカシーに欠けるところがある。それが、史実では最悪の事態を招きかけた。黒江と出会うことで、その可能性を知ったからか、未来も戦場に立つことを決意。後に、黒江の能力で復元された『神獣鏡』を纏うことになる。響はそのことをきっかけに『未来を守れる力』を更に求めるようになり、それが『前世の記憶』を呼び覚まし、覚醒した力を変質させるほどの想いとなる。後に、響が変身したキュアグレースは、前世とは『似て非なるプリキュア』となり、ヒーリングステッキを必要とせずに戦えるようになっていた(史実でのパートナーフォームに近い能力を通常形態で行使できるようになっていた)という――
――この時期、翼は散々な目に遭う率が上がっていたのだが、『気がついたら、蓑虫のように吊るされていた』というのも衝撃的であり、無人の建設現場に、彼女の悲鳴が虚しく響き渡った。真っ向から戦えれば、対等とはいかないが、渡り合える程度の剣技はあるだけに、高度な拘束技を持つ黒江とは戦闘での相性が悪かったとしか言いようがなかった。また、出動しては空振りが続いた響は『話がしたい』という気持ちを強めたが、最初に出会った時の調とは『同じ姿の別人』となっていることを知らされたが、『またまた~』と本気にしておらず、それが後々の齟齬への伏線となるのである。二課、とりわけ風鳴弦十郎は黒江を『父を止めるための手段』としたい(黒江と話をしたことで、時代遅れの国粋主義者である、彼の父を止められる可能性を見出した)思惑があったが、風鳴家の戦前期からの暗部が明るみに出る(そもそも、公には『風鳴弦十郎の姪』とされる翼は、実際には彼の歳の離れた妹である)危険が大きく、この時点では父の身辺捜査に留まっていた。ただ、実父がそこまで『悪魔』ではないだろうという情も絡んでいた。実際は昭和期の大日本帝国陸軍軍閥の申し子的な『戦鬼』であったため、彼の意を受けた黒江は後々、自身の先輩格の聖闘士にして、冥土から舞い戻った『乙女座のシャカ』に来てもらい、アテナ公認の『制裁』を風鳴の長『風鳴訃堂』に与えることになる。シンフォギア世界(後に、近縁の平行世界との区別で『A世界』とナンバリングされた)は聖闘士の介入で『超常的な事変が終結していく』のだ。風鳴弦十郎は聖闘士の存在を知らされたことで、『シンフォギアを使う必要のない時代と平和が訪れるのだろうか』という、淡い希望を抱くようになったが、実際は色々な都合で、そうはいかなかった。シンフォギアが、国連の都合の良い道具となることを懸念した彼が最終的に選んだ道は『装者達を異世界へ派遣し、当面は運用母体組織を存続させる』こと。その頃には、シンフォギア関連部署は日本政府の手を離れていたが、国連常任理事国の都合の良い道具となることを嫌う関係者の意思もあり、ダイ・アナザー・デイ中に地球連邦と協力関係になるのである――
――黒江が戸籍などのデータをハッキングで捏造していたこともあり、日本政府向けの書類などで『月詠調は風来坊的な装者である』とでっちあげられていく。従って、公的には『調が武装組織フィーネの一員である』事実は何一つないことになる。これが凶行を働いたが故に、極刑が確実視された切歌とは明暗が分かれた形だ。立花響は切歌を慮るばかりに、黒江の都合も聞かずに、『演技』を強要することになってしまったのは、切歌の減刑の知らせが届いたのが、事が決まった後であったという悲劇、切歌の減刑には心神喪失も絡んでいることは容易にわかるので、一連の責任を何らかの形で取らせたい本音もあったのだろう。切歌は心神喪失からは比較的に早くに回復していたが、罪の意識もあり、魔法少女事変中は『知らぬ存ぜぬ』を通す。『フロンティア事変』で『これから犯す行為』が如何に大罪であるかは後の結果からも、想像に難くない。何故、切歌がSONGに短期間しか在籍しないことになるのか?如何な経緯で、聖域の門戸を叩くのか?その全ての始まりは、彼女自身の早とちりにある。『調を取り返すためには、何万人を犠牲にしても…』と思いつめての行動は結果的に、自分自身に重い十字架を背負わせていく。その罪の自覚が皮肉にも、イガリマの真名『千山斬り拓く翠の地平』を呼び覚ます事になり、仔山羊座の聖闘士に選ばれる要因になる――
――後々、二人は活動領域の違い(切歌は聖闘士にほぼ専念し、調は正規軍人)から、別々に暮らす事になり、史実とまったく異なる道を歩む。切歌の申し出も大きかった。罪と向き合い、罰を受けること。それが切歌の選んだ道であった――
――『これが、多くの人の魂を魂葬してしまったアタシの自分への罰なんデス。あたしは……多くの人達に謝らないといけないんデス』』――
切歌はその一言を記した置き手紙と共に、SONGを脱退。それからしばらくは日本各地を転々としたが、ある時に調の誘いを受け、聖域に赴く。アテナ(城戸沙織)へ罪を懺悔し、贖罪のための生き方を掲示される。その生き方こそが聖闘士になる道であり、天才肌の調と異なり、かなり下積みの期間が長かった。これは切歌は文字通りに、一から始めたためで、黒江から技能を受け継いでいたため、早期に正規の聖闘士になった調と違い、地道に修行をし、候補生の期間が長く、聖闘士になる前に選抜試験も経たためである。聖闘士は平時には、多くの候補生から選りすぐりを選ぶ。切歌が門戸を叩いた頃には、黒江達の抜擢や先代の蘇生で、落ち着きをだいぶ取り戻しつつあったため、選抜試験も再開されていた(聖闘士は、神々同士の聖戦以外では、その死傷率はむしろ低い)のだ。その未来はダイ・アナザー・デイで提示される。大人切歌が参加したためで、切歌のダイ・アナザー・デイでの功績は成長後の彼女が打ち立てたものだ。
――大人になった彼女の存在は『いつか和解が叶う』事の象徴。それは自らの行いが招いた出来事、なのはが愚かにも犯した行為のえげつなさに打ちのめされていた響にも、一つの光をもたらした。大人切歌はダイ・アナザー・デイ後も顔をちょくちょく出し、過去の自分や響を勇気づける役割を果たしていくのだった――