――黒江はシンフォギア世界で活動していた頃は、背丈以外は完全に調の外見になっていた。声も転移の影響で『軍隊で喉を潰す前』の声色に戻ったが、特徴が調と一致してしまうという偶然の発生により、事態がこんがらがってしまった――
「まいったな、そんなに似てるか?」
「瓜二つよ。貴方のほうが荒っぽいけど」
「環境の違いだよ。俺は正規軍人で、将校(ダイ・アナザー・デイ直前では大佐であった)だからな。多少なりとも荒っぽくなきゃ、昔の日本じゃ、部下がついていかなくてな」
マリアと連絡を取っていたわけだが、マリアはある日の『一芝居』の結果、ギャラクシアンエクスプロージョンの膨大なエネルギーを食らったため、ギアの着脱機能に一時的な異常が生じ、しばし、切歌たちのもとには戻れなくなっていた。
「それはいいけど、少しは加減して頂戴。こちらのギアが機能異常を起こしたわよ」
「一時的なオーバーロードだと思う。掌サイズの銀河を爆発させたも同然のエネルギーを浴びたんだ。キャパシティの許容範囲内までエネルギーを消費しないと解除されないだろう」
「嘘ぉッ!?」
「多分、ギャラクシアンエクスプロージョンのエネルギーで聖遺物が隆起したから、一週間前後はそのままだろうな」
「何よそれぇ!?表に出れないじゃないの!!」
「すまんすまん。食料は渡してやっから。俺だって初めてだからな、手探りなんだよ。それに、俺は黄金聖闘士だから、扱えるエネルギー量も本当に高いんだ。それでも、生き延びる奴はいるぜ」
「いるの?」
「ギャグ漫画補正があるか、主人公属性が強けりゃな。俺の知ってる奴らに、数人はいる。二課の装者とは本格的に一戦交えてみないとな。もっとも、密約は結んだから、あまり本気は出さないがな」
「出したら?」
「返り討ちにできるよ。向こうがムキにならない事を祈るがね」
この予感は少なからず当たっていた。それから数日後。黒江を捕捉した二課側の装者と成り行きで交戦することになり…。
「…!?」
猛スピードで突進する立花響だが、黒江が発動したサイコキネシスの力で強引にストップさせられる。
「思い切りはいい。だが、バカ正直すぎるな」
「か、体が動かせ……!?」
黒江はその一瞬で極超音速の拳を響の腹に見舞い、吹き飛ばす。
「馬鹿な、奴は何をしたのだ……!?」
「お前等の視覚じゃ見えねぇよ、嬢ちゃん」
「遠距離武器が当てられないのはわかっている。ならば!!」
翼は咄嗟に刀で斬りかかる。だが、ここで黒江に先手を打たれ、刀の柄を使っての『牙突』をぶつけられて、これまた吹き飛ぶ。
「先輩!……クソ、ミサイルがロックオン出来ねぇ!なんでだよ!?」
クリスは得意のミサイル攻撃が何故か出来ない(ロックオン機能が災いし、小型ミサイルが撃てない)ことに歯噛みし、大型ミサイルの危害判定の大きさに賭け、イチかバチか、放った。近くで起爆させ、爆炎に巻き込む作戦である。それは成功したかに見えたが…。
「!?」
風が走ったかと思えば、爆炎がかき消される。手刀で起こした鎌鼬でかき消したわけだが、無傷であるため、二人は驚愕する。
「嘘だろ!?」
「無傷だというのかッ…!?」
「作戦自体はいいぜ。相手が悪かっただけだ」
「何…ッ!?」
「来たか」
頭上からスラスターを吹かしての反撃を試みた響の拳を左腕で受け止めながら、言う。響はスラスターの出力を上げるが、『何かの壁がある』ように微動だにせず、背中のスラスターの噴射炎が虚しく瞬くだけだ。
「これでもダメなの……くぅぅ……!」
「ムゥン!」
「わ!?」
黒江は合気道の要領でぶん投げ、響はなんとか受け身を取る。
「落下の加速度を使うのは悪くない。次はこっちから行くぞ!!エレクトロファイヤー!!」
地面に腕を叩きつけ、舞い上がらせた砂を導電体にし、高圧電流をぶつける。仮面ライダーストロンガーや御坂美琴の得意技であり、ストロンガーのそれは御坂美琴以上の威力である。黒江のそれは両者の中間だ。シンフォギア装者の予想外の攻撃であったのと、技の速度が速すぎて反応ができなかったため、もろに食らう形となった。
「なるほど、『これ』(シンフォギア)は電気エネルギーにも一定の耐性を与えるのか」
装者たちは高圧電流を浴びせられたためか、立つのも難しいほどのダメージを負っていた。耐性が低かったか、雪音クリスは気絶してしまい、翼も足腰が立たない。響は尚も立ち上がる。
「ほう、見上げたもんだ。今の攻撃で立てるとは」
「教えて。調ちゃんの目的はなんなの!?」
「言ったろ、俺はそいつじゃないって。事故でそいつに『成り代わってしまった』だけの人間だよ」
「なら、どうしてそれを使えるの!?おかしいよ!」
「偶々、これに適合してただけだ。それで逃げる時に持ってきただけだ。お前らのことは調べさせてもらったが、まだ協力するわけにはいかん」
「なんでなの!?」
「まだ調べる事があると、この間に言ったろ?……おや」
「貴様の言い分はどうであれ、私たちに弓を引く以上は敵だ……!」
「待ってください、翼さん!」
「止めてくれるな!防人として、奴を何度も無傷で帰しては……名折れだ!!」
技の一つ『蒼ノ一閃』で攻撃した翼だが、そのエネルギーは黒江が振るった何かに両断され、霧散する。二人はその次の瞬間、驚愕した。
「いいだろう。嬢ちゃんの望み通りに相手をしてやる。全力を以てな」
「黄金の……」
「剣……だとッ…!?」
黒江が持つそれは、黄金の輝きを放っていた。装飾の施された西洋の長剣のようだが、どこか、神々しささえも感じさせた。
「お前たち。アーサー王伝説を知っているか?」
「へ?アーサー王?」
キョトンとする響。それに呆れ半分ながらも、教えてやる翼。
「実在なのか、伝説なのか、釈然としない英国の王とその騎士たちの英雄譚だ……確か、五世紀過ぎとされていたな……まさか、その剣……!?」
「え、ど、どういう事ですか?」
「奴の持つ剣は……完全聖遺物やもしれん。この間の光の柱を出現させた元凶……」
「まさか!?」
「フィーネとの戦でお前の持ったデュランダル。あれ以上やもしれん……!!」
「!?」
「そうだ。俗に言う聖剣・エクスカリバーってやつでな。聖剣というカテゴライズで最上位級の宝具でもある。……見せてやろう」
「!?」
黒江はエクスカリバーを両手で構え、付近にある魔力をエクスカリバーに集束させる。シンフォギア世界の機器には『フォニックゲインではない何かのエネルギー』としかわからないし、機械的な計測は不可能に近い。
「黄金の輝き……ッ!これが――」
翼が言い終わらぬ内に、エネルギーチャージの済んだ『約束された勝利の剣』が輝きを最大限に増す。
「束ねるは星の息吹、輝ける命の奔流。受けろ!!『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』――ッ!!」
剣が振り下ろされると同時に、膨大な破壊エネルギーが奔る。翼はその輝きに圧倒され、立ち尽くしてしまう。それを見かねた響がとっさに突き飛ばし、自分がエクスカリバーのエネルギーに包まれる。
「立花ァッ!?」
翼が叫びをあげる中、史実で調、切歌の絶唱を阻止したように、響は自身のギアの特性でエネルギーを制御し、空へ発散させようとする響だが……。
「嘘……調律でき……!?」
響の持つ特性は『エネルギーベクトルの制御』であるが、シンフォギア世界の法則に当てはまらない別の世界の『宝具』のエネルギーまでは調律できず、暴力的なまでの力の奔流が彼女の体を駆け巡る。
「だとし……!?………あ、ああああッ!?」
エクスカリバーのエネルギーが炸裂し、光の柱が出現する。それが収まった後の炸裂点で倒れ伏す響。
「……なんて無茶をしやがる。まさか……、約束された勝利の剣のエネルギーを受けて、五体満足とは思わんだ」
これは黒江も驚きの結果であった。だが、無事と言っても、エネルギーを受け止めたショックは大きく、響は昏倒してしまっていたし、ギアのエネルギー伝達回路を宝具のエネルギーが駆け巡り、オーバーロードを起こしているようでもあった。
「たちば……」
思わず、駆け寄ろうとする翼だが…。
「待て!」
「貴様!!何故止める!?」
「約束された勝利の剣を食らったんだ。しばらくは動かすな。残留エネルギーが溢れて、そいつのギアを破壊するかもしれん」
「なんだと……ッ」
「見ろ」
ギアがエネルギーを受け止めきれず、装甲部のあちらこちらに罅が入り、ギアの自己防衛機能と宝具のエネルギーがぶつかりあったか、火花を散らす。幸いにも、5分ほどでそれらは収るが……。
「そいつのギアだが、今ので機能の一部がぶっ壊れたかもしれん。現代科学じゃ説明できない『幻想』の産物の一撃だからな」
「馬鹿な、そのようなことが………」
「その子に感謝するんだな。お前が食らっていたら、ギアごと消し飛んでいたかもしれない」
「……!」
「ヘリに回収を頼め。それと、その子はしばらくはその格好のままだと思う」
「何故だ」
「あれだけのパワーを食らって、何事もないなんてのは、正直ありえん。今の様子からすると、体をエネルギーが駆け巡ったのがわかる」
黒江は見た限りの推測を言うが、当たっていた。この当時に『融合症例』であった響の体に巣食っていた『聖遺物の侵食』はエクスカリバーのエネルギーが食い止める形になって駆け巡ったため、しばらくは静止に等しい状態になった。その副次効果として、聖遺物本来のキャパシティを超える規模のエネルギーを受け止めたため、ギアの機能に異常が生じていた。それはギアの装着機能のオンオフであり、聖遺物が膨大なエネルギーで自然に隆起したため、そのエネルギーが発散されきらない限りはギアの解除はできなくなっていたのだ。
「さて、ここらで退散させてもらうぞ」
「待て!お前が立花の言う『調』という少女でないのなら、せめて名を名乗れ!」
「黒江綾香。お前と同じ『日本人』だ。ただし、生まれた時代は違うがな」
「何だと…ッ!?」
若干、取り乱している翼にそう告げると、黒江はアナザーディメンションで、その場から姿を消す。翼は呆気にとられつつも、二課の臨時本部に連絡を取るのだった。
――これが黒江のエクスカリバーが炸裂した二例目となった。立花響は自身の『繋ぐ力』でエクスカリバーから奇跡的に生還したが、目が覚めても、ギアを装着したまま(エクスカリバーのエネルギーを調律しようとした反動で、装甲部に罅が入っている)である自身に驚く羽目となったのは、言うまでもない。昏倒中に『誰かが微笑む』夢を見たようで、寝顔は嘘のように穏やかであったとのこと。これは後に判明するが、プリキュアの因子が覚醒し始めた合図であり、微笑んでいる誰かとは、前世の自分にあたるプリキュア戦士『キュアグレース』だったのである――
「――この世界は『関連性のない世界』からすれば、単なる物語なのね」
「平たく言えば、な。日本の一アニメの世界だ。確証が持てたのは、未来から話を聞いてからだ」
話は戻って、マリア・カデンツァヴナ・イヴは『シンフォギア世界』も数ある次元世界の一つに過ぎず、そこから分かれた世界も無数に存在する事を知った。
「もっとも、それが現実にある世界がここだがな。俺も数ある世界の一つから飛ばされたし、故郷はそこからまた別だ。この世界は俺というイレギュラーが歴史の流れを変えつつあるから、『シンフォギア』という枠組みの分岐世界になるがな」
「分岐世界……」
「史実という大まかな流れから分かれた瞬間、世界は違う道を辿る。太平洋戦争で日本が勝つとか、日本という国家が生まれないとかのIFがそれだ。お前の故郷は?」
「ウクライナよ。祖父母はチェルノブイリ出身だったらしいけど、そこを追われたのよね」
「そうか、お前と死んだ妹はウクライナ出身か」
「戦争で生まれた難民ってところ。アメリカの機関に拾われて、そこであの子たちと出会ったのよ」
マリア・カデンツァヴナ・イヴとセレナ・カデンツァヴナ・イヴはウクライナ人だが、戦争で難民になった所を米国に拾われ、シンフォギア関連の実験材料と扱われた。この世界でもそこは一緒だが、黒江の来訪で、調がフィーネの次の器であることは闇に葬られた形となった。
「思い出したことがある。フィーネとか言うやつの次の器は『コイツ』だよ」
「なんですって…!?」
「おぼろげな記憶だが、コイツはフィーネの血を継ぐ一族の出だったような。俺が来たことで、それは起きない事になるが、あの緑のガキは暴走するだろう」
「歯止めがかからないと?」
「思い込みが強ければ、なおさらだ。最悪、あのガキのギアを破壊するしかなくなるだろう」
「そんな……!私が試みてみるから、それは待って!」
「言っとくぞ。取り返しがつかなくなったら……倒すしかないと」
黒江は切歌の思い込みからの暴走を懸念したが、事実、切歌は愛ゆえに既に視野狭窄に陥っており、マリアの判断は遅かったのだ。
――その頃、ウィッチ世界では――。
「まさか、お前らがプリキュアとは思わんだ」
「ケイ先輩……来てたんですか?」」
「504の501への吸収の手続きの判子をもらいにきたが…まぁ、後で事情聴取すんぞ」
圭子は実のところ、のぞみとみなみ(竹井)の覚醒の場に居合わせていた。そして、戦闘に自身も参加していたのである。
「ムゥン!!」
圭子のマフラーがゲッターウイング化し、先程、のぞみ(キュアドリーム)が撃破した怪異の僚機だと思われる個体の怪異に向けて飛び立ち、幾何学的飛行を見せつける。そして、絶好の位置に占位すると。
「バトルショットカッター!!」
腕に巻きつけていた布が展開し、鋭利なカッターに変貌。圭子はそれを振るい、怪異の外殻瞬時に削り取る。怪異はコアを守ろうと、圭子を振り払い、子機を展開しての自衛に移るが。
「そんなの、パターンなんだよ!」
圭子のマフラーが変形、ゲッターロボアークを連想させる形状の10枚のウイングとなり、それを展開する。そのウイングが帯電し、辺りに必殺技を放つ。
「サンダァァァ・ボンッバァアァ!!」
『サンダーボンバー』。本来はゲッターロボアークの技だが、圭子はゲッター艦隊の使者というのが転生後のポジションであるがために、擬似的なロボットガールズ化しており、代表的な歴代ゲッターの力を行使できるのである。
「あいにく、銃は持ってなかったんでな。だが、これがあたしの本来の姿『ゲッター線の使者』。だから、ウィッチなのは、以前の名残りみたいなもんだ」
「なんですかそれーーー!あたし達よりチートじゃないですかー!!」
「よく言われる。若い頃は悪童だの、狂気だの言われまくったもんだ」
「そーいうことじゃないですーーー!!」
自分が霞むチートぶりの圭子に、ツッコミ半分で膨れるキュアドリーム。
「そういえば、ケイさん、このことは上に?」
そんなドリームをスルーして、話を進めるキュアマーメイド。
「あたしのことは知ってるぜ。アフリカで、ストナーサンシャイン撃ったからな。あ、欧州方面には伝わってないか?」
「初耳ですよ」
「はーん、モンティめ。あんまり刺激強かったからって、情報統制しやがったな。だが、お前らがプリキュアなのはちょうど良かった。これで、ドラえもんと話してた計画を実行できる」
「どういう事ですか?」
「お前らは軍にいるから、話しておくか。あたしらは上にかけあって、計画を立てた。次元世界にいるプリキュアを集めるってな」
「先輩、プリキュアを知ってたんですか」
「のび太が見てたしな。その辺は後で教える。直に、大人ののび太がくるからな」
「え、子供ののび太くん、帰るんですか?」
「あいにく、小学校の新学期が近い上、宿題してねぇんだと。それで代わりに、成人した後の時間軸の自分にバトンタッチするんだそうだ。27、8歳の頃だと言ってたな…。」
のび太は小学生の時の姿でダイ・アナザー・デイ序盤まで参加。その後の時期は成人後の姿で戦い抜く。その関係上、ダイ・アナザー・デイ関連の褒賞の多くは成人後に受け取るのである。
「違う時間軸の自分同士で連絡を?」
「ドラえもんがいるからな」
圭子はサラッというが、のび太は子供時代から、チートを意外に行使する。ある年の夏休みの宿題を『大学生の自分』にやらせるなどしており、『今年は計画的に怠けてた』と嘯いていたこともある。また、のび太は成人後に『子供時代にやり残した仕事』にカタをつけることも多い。その一つが、後に『ダイ・アナザー・デイ』と呼ばれる戦いだったのだ。
「智子がパニクってんから、なんだと思ったが……まさかな。あの子の存在が予兆だったか」
「そのようですね」
「だな」
キュアマーメイドと頷きあう圭子だが、キュアドリームは何がなんだかわからないので、?マークである。
「??」
「ああ、いずれわかる。大人ののび太がその子を連れてくるっていうからな。さて、竹井。いや、キュアマーメイド。この書類に判子押してくれ。504の戦闘隊長としての判が必要なんだ」
「それなら、ドッリオ隊長のほうが適任では?」
「ドッリオ少佐は隊を離れる。参謀本部に若い航空参謀がいるんだと。だから、次席のお前が責任者になる」
「そうですか…」
「仕方ない。お前んとこは史実なら、二回は壊滅するからな。日本側もそれを名目に、504の解体をしようとしたのを先手を打った。ドッリオ少佐を参謀本部に寄越す代わりに、主要メンバーを前線に残すって。だが、諏訪の妹は外すしかない」
「天姫を……ですか?本国に帰しちゃうんですか?」
複雑な表情のドリーム。
「これからの作戦には練度が足りなすぎるし、お前たちのことをむやみに口外されても、それはそれで困るんでな。仕方ない。表向きの編成表にはしばらくは残す。諏訪家はそれなりの名家だから、探られないように偽装工作の必要がある。もちろん、お前の家……、中島家にもだ。わかるな?」
「ええ…。」
「今までの中島錦じゃなくて、夢原のぞみという人格になりました……なんて言えるか?」
「わかってます。だけど、なんか胸が締め付けられるような……」
「奴には気の毒だが、今度の戦は人との戦争だからな」
圭子はプリキュアの出現が『既存のウィッチが覚醒する形で始まった』事による混乱の可能性を鑑み、プリキュアの存在はしばらくは軍機(軍事機密)に指定することを告げる。しかし、黒江の帰還後に参謀本部の方針転換があり、(のび太を誹謗中傷から守るためと、サボタージュを上手く利用し、自衛隊の援助を引き出すためでもあった。)その存在は一転して『反攻のシンボル』という形で公表された。キュアドリーム、キュアピーチ、キュアメロディ。初期に属する世代のかつ、人気のある三代のピンクが集まったからでもあった。特に、扶桑軍の軍人を素体に出現したキュアドリームは歴代有数の人気と強さということで、日本向けの広報にうってつけだったのである。
「さて、帰るぞ」
「帰るって、どうやって?」
「そこにコスモシーガルを停めてある」
「地球連邦から借りたんですか?」
「支給されたんだよ。あたしらは未来世界じゃ、ロンド・ベルの隊員だからな」
圭子はコスモシーガルを操縦してきたようだった。
「あれだ」
「オスプレイみたいな飛行機ですね?」
「その末裔だ。23世紀最新の輸送機だぞ、これ」
オスプレイを連想させる外観から、キュアドリームはズバッと言う。圭子は苦笑交じりに乗り込み、エンジンを暖機運転する。
「お前ら、後ろの席に乗れ。コンテナはストライカーと弾薬、その燃料で満杯だからな」
「よく載せられましたね」
「整備班が骨を折って、即席の輸送ラックを作ってくれてな」
圭子はプリキュアたちをシーガルのコックピットの後部座席に座らせ、シーガルを垂直離陸させ、504の基地を離れる。504基地は再利用される見通しだが、まだ、具体案はできてない。なお、この機は開発元の地球連邦軍でも、ダイ・アナザー・デイの時点で、あまり配備の進んでいない新鋭機である。元々、地球連邦宇宙軍がガミラス戦役当時に有していた『救急艇』の代替機として開発されたが、開発系譜上はかつての米軍機である『オスプレイ』の子孫にあたる。そのため、オスプレイを思わせる外観を持つ。外宇宙用の宇宙戦艦の救難機として配備されているが、本来は小型輸送機を目指していたという。民生用も検討されていたが、未来世界は戦時が続いているために、具体化はしていない。
「今度の作戦はでかいものになるが、通常兵器主体になる。プライドの高い連中がどれだけ受け入れるか」
「決まったんですか?」
「最終裁可はまだだがな。問題はそれまでに、敵が動くかどうかだ。物量作戦で来るだろうから、正直、ブリタニア、ロマーニャ、ヒスパニア、それとロマーニャも宛にできねぇ。最悪、扶桑軍と日・米・英、地球連邦で迎え撃つしかなくなるかもしれねぇぞ。それも上手く支援が得られた場合だ」
圭子はリベリオンの物量作戦の前では欧州の軍隊は烏合の衆である事を明確に予期しつつ、次の作戦(ダイ・アナザー・デイ)は通常兵器同士の戦闘が主体……つまりは人間同士の戦争が起きるのだ。
「ウィッチは対人戦を忌避する風潮が強い分、戦力には数えられてないと?」
「対人戦の可能性は、この世界の近代以降は考えられてこなかったからな。古来の例を見る限り、対人戦でウィッチが駆り出されなかったことはないんだが、1900年代以降はそういう事もなくなった。そんな状況で対人戦をやれと言われても、六割くらいはサボタージュするぞ。上はそれを懸念している。ティターンズの支配を受けるか否かの瀬戸際に、『自分たちの都合で戦いません』は通用しないんだが……」
キュアマーメイドにそう返す圭子。戦線が対人戦争に移行するため、ウィッチのサボタージュの発生は避けられないことは、司令部にも一定の予測はされていたが、それを遥かに超える規模に発展してしまう。それがダイ・アナザー・デイの『想定外』を招いてしまうのだ。そして、ティターンズの暴虐ぶりが地球連邦の手で周知されてゆくにつれ、彼等との戦いに参加しないウィッチへのバッシングも発生。結局、ウィッチ・サボタージュはウィッチの社会的立場の悪化のみならず、ウィッチに必ずいる『非戦闘要員』への社会的なバッシングも招いてしまうという、本末転倒の結果に終わるのである。
――銃後の慰問を主目的にした部隊『ルミナスウィッチーズ』の結成が見送られてしまうのもこの時期であるように、『同族の侵略者』の存在がクローズアップされたことが『ウィッチ独自の社会通念』、『軍にいても独特の風土を持つことが許される空気』への疑義に繋がり、『力を持つ者は戦え!!』という強迫観念が扶桑の農村部で生まれてしまう。その思想の浸透を食い止めるため、64Fが慰問分野への精通をも余儀なくされる点に、扶桑が扶桑であるが故の悲劇があった――