ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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回想編です。


第四百三十一話「回想~黒江のシンフォギア世界での選択~12」

――圭子達がミーナの一件でてんやわんやであった頃、シンフォギア世界は(時間の経ち方が違うため)一年が経過していた。黒江は最初の数週は情報収集(うろ覚えであったアニメとの整合性を確認する意図もあった)に勤しみつつ、接触に成功した風鳴弦十郎と『密約』を結ぶことで、完全な敵ではないという事を知らせていた――

 

「これで、俺が敵じゃないというのは知らせた。後は、マリア。お前が離反するタイミングを図るだけだ。懸念材料は緑のガキ(切歌)だけだ」

 

「あの子はあなたが借りている、その姿の持ち主に強い愛を感じているの。それが狂ってしまわないか……」

 

「間違いなく狂うさ。強烈な愛は憎しみに転化するのも早いからな。仕事柄、そういう事は見てきてる。俺だって、好きでこうなったわけじゃないんだがね」

 

黒江は黄金聖闘士でもあるため、常に完全聖遺物を使っているのと同義の状態であった。そのためか、シンフォギア世界の人間では『適合者』であっても負担になる、『長時間のギアの展開維持』も何ら苦ではない。

 

「そのギア、私が見ていた時とカラーリングが違うわね?」

 

「心に後ろめたい気持ちがねぇから、かもな。アニメを見てるったって、ガキが見てたのを、後ろからチラッと見たのが数回だし、そもそも、俺がこうなった時点で、大筋から離れてるし」

 

「一つ、いいかしら?あなたは元の世界で日本軍にいたのよね?」

 

「ああ。ただ、史実通りの日本軍じゃないが」

 

「あなたは魔女なの?」

 

「元々はな。今は別の存在に転じた。俺の世界では、魔女は時限付きの才能だったんでな」

 

「時限付き?」

 

「ほれ、2000年代辺りから出てきたろ。10代の内にしか振るえない力ってのが。俺の世界での魔法はその類だった。怪物を退治するのに必要だから、公の立場が約束されただけの儚い存在だがな」

 

黒江は転生を繰り返しているため、自分を『魔女であった者』と述べた。転生を繰り返したので、元々の才能にあまりこだわらなくなったからだ。

 

「更に、俺は転生ってのを何回か既にしてるから、元々の技能に執着が無くなったところもある。それに、1920年代前半生まれだから、普通に生きてれば、2010年代に生きてる可能性は低いだろ?」

 

「そうね、日本人が長寿といっても…」

 

黒江は1921年の生まれ。普通に歳を重ねていた場合、『2010年まで生存している可能性は低い』。その自覚もあるため、魔女は半ば『肩書』にしていた。一見すると、シュルシャガナを纏った調そのものの姿だが、背丈が10cm以上も違うためと、目つきが悪いため、マリアであれば、識別は容易だ。

 

「あなた、仕事柄だと思うけど、目つきが怖いって言われない?」

 

「そりゃ、10代前半で正規ルートで軍隊に入ればな。士官学校も出てるから。これでも、ガンクレイジーなダチよりは温和って言われてるほーだがね」

 

黒江は同期いわく、『とっつきやすい方』である。事変開始時に下級将校に任官されていた世代なので、経験上、実戦本位の思考回路の士官が多いからだ。

 

「命がけの商売してるから、目つきが悪くなるのは職業病みたいなもんだ。魔女とパイロットを兼ねてれば、尚更だ」

 

黒江はそこでハンバーガーを食する。空自で食べているのと、連邦宇宙軍でも食べているため、自然と買うようになっていた。

 

「ハンバーガーなんて食うのも、職業病かもな」

 

「日本軍にハンバーガーなんてあったの?」

 

「仕事先で覚えた。俺は1940年代に20代を迎えるんだから、本当は軍隊でもハンバーガーには縁はないぜ」

 

扶桑軍はブリタニア経由で洋食を取り入れた都合上、ハンバーガーはリベリオン軍の台頭と共に伝わったが、扶桑軍の正規食料品としては加えられていなかった。だが、日本連邦化後は、日本経由で様々なアレンジが入り、正規のリベリオン軍人だったシャーリーに『羨ましい』と言わしめるほどに豊富な種類のハンバーガーが供給されるようになったのである。

 

「異世界の交流様々だよ。それがなきゃ、飽きが来る食事ばっかだったかもしれん」

 

「そう考えると、軍人は幸せなほうなの?」

 

「1940年代にゃ、洋食は滅多に食えるものでもなかった。都会のホワイトカラーのリーマンでも、白米にソースかけて済ます時代もあったからな。俺がガキの頃の話だ。今の所属先の部隊の部下に、診療所の娘っ子(芳佳)がいるんだが、洋食の教育に苦労した。洋食はカロリー高いしな」

 

覚醒後は(角谷杏としての記憶からか)カロリーの高い洋食を好むようになるが、それ以前は史実通りに和食を作りたがるのが芳佳なので、それを諫めるのに苦労したとぼやいた黒江。(なお、実際には干し芋が増えた)

 

「1940年代の日本人なら、そうなるわね」

 

「別の世界で空自の幹部だから、21世紀の人間で通じるだけの知識はあるが、こういう事態は初めてだからな」

 

「切歌は信じないでしょうね」

 

「『こいつ』の声が俺のガキの頃の声色と同一って偶然もまずかったな」

 

黒江が苦労を強いられた原因の一つがこれ。偶然の一致で、二人の声の特徴が完全に一致してしまったのだ。

 

「軍隊で喉潰したから、本当はこれを低くしたような声だったんだが、入れ替わったせいで、声帯が昔の状態に戻ったらしい」

 

「確かに。フィーネは意識を乗っ取ると聞いたから、ますます、思い込みを強めるだけでしょうね……」

 

「俺は本来、この世界と縁もゆかりもない。だから、見捨てる事は簡単だ。だが、こうなった以上、もう一つの仕事のほうの使命を果たすさ」

 

「もう一つの仕事?」

 

「ああ。神の闘士としての、な。だから、こいつを使うのに問題は起きない」

 

シンフォギアは聖衣にある意味で近しい存在だが、五感を強化するわけではないため、『遺失技術でのパワードスーツ』の粋を出ない。聖衣には五感を強化し、それを超える領域の力を使いこなすための媒介の機能がある。正規の聖闘士との間に、どうしても差が生まれるのはその機能の有無にある。

 

「俺はその中では、まだ『常識的なほう』だ。説明できないパワーで五感を奪う奴も複数いるからな」

 

「常識的って……」

 

「徒手空拳と剣を振るうからだ。サイコキネシスの応用で、相手の動きを止めるのができないわけじゃないけど。もっと強い奴は『サントスピリト語』を言うだけで、相手の五感を奪って、一瞬の内に廃人にできるぞ」

 

「何よそれ」

 

「俺達の界隈でも、その領域に達したのは『神に最も近い者』って認定される。俺なんて、まだまだ下っ端だよ。」

 

歴代の乙女座の黄金聖闘士はその領域に達しているため、代々に渡り『神に近い者』と称される。ギリシア神話の神の守護者でありながら、仏教徒であることが許容されるほどの特異な星座だが、意外な事に、教皇を出していない星座でもある。

 

「それじゃ、貴方にとって、ギアは…」

 

「悪く言えば、拘束衣に近い。最も、負担をかけなければ、機能異常は起きないようだが」

 

黒江はシンフォギアを使いつつも、小宇宙を高め、ギアの機能が異常を来さないラインで『力を発揮できないか』という実験をしていると明確に述べた。その実験は成功しつつあり、拘束技を発動する事は問題なくできている。

 

「それじゃ、この前のあの雷は?」

 

「また別の力だ。複数の力を組み合わせて、立ち回るのも、戦闘のやり方の一つだ。黄色のガキが拳法を使うようにな」

 

「それと、もう一つの力をお前に見せよう。始めたばかりの未熟なものだがな」

 

黒江はここで呼吸法を戦闘向けのものに変える。『コォォォ』という音がその特異さの表れだった。

 

「これは……」

 

「ある世界のチベットで生み出されたもので、元来は東洋医学か何かの秘術として言い伝えられていた呼吸法だ。その世界の文献や言い伝えを集め、他の世界でフィクションとして描かれているものまで見て、最近に形になり始めた。戦闘にも応用できるそうだが、そこまで行ってない」

 

「どういうものなの?」

 

「太陽と同じ波長の生命エネルギーを発生させるから、副次的に肉体の老いを遅らせられる効果がある。練度が高ければ、実年齢から相当に若めの外見を保てる。最高の例だと、50代のオバハンが25くらいの容貌を維持してたそうだ。俺は肉体の若さは維持できるから、戦闘面のメリットのほうで覚え始めたがな」

 

「あなたと同様の存在っているの?」

 

「同じ部隊に何人もいるし、同じ副業をしてるよ。ちょうど、敵に対抗できる異能持ちを探してた時に、この世界に迷い込んだってわけだ」

 

「あなたたちが本気で戦おうとする敵って?」

 

「強いて言うなら、神の一柱。日本神話のスサノオノミコトが敵だ」

 

バダン総統は日本創世の後、日本で最初期にできた国『邪馬台国』に神話を造らせた。それが卑弥呼の時代かは定かでないが、その中で自身で『スサノオノミコト』と名乗った事から、スサノオノミコトは荒神と位置づけられた。仲間の『ツクヨミノミコト』と対立し、部下の『アマテラス』を葬られたものの、スサノオは生き残り、他の地の文明を勃興させた。龍が欧州で『魔物』扱いなのは、バダン総統が欧州を支配した時代、龍に乗って飛来したからだと推測される。

 

「そいつがオリンポスの冥府の神『ハーデス』と手を組んだらしくて、こっちはゼウスの神託で軍団の討伐指令を出してもらった」

 

「なにそれ」

 

「こっちの味方はツクヨミノミコト、ゼウス、アテナ、アルテミス、アポロンだ。で、戦バカなアレスがハーデスとスサノオ側についた。俺達の元締めはゼウスになる」

 

そこにオーディーンやポセイドンも横槍を入れてくるので、23世紀の戦争は『神々の派閥抗争』も背景にある。

 

「神々の派閥抗争ってやつだよ。地上の統治権を巡って。しかも、複数の世界にまたがる規模の。クロノスやカオスに愚痴りたいよ。謁見の資格あるし」

 

話のスケールが大きくなりすぎでピンとこないが、神々の抗争が裏で起こり、地上の戦争を大きくしていた事を掴んだ聖域は、アジア地域の神の一柱『摩利支天』からの要請で、最高神の一人であるゼウスの裁断を仰ぎ、ゼウスの神託が下ったことが明確にされた。

 

「ごちゃごちゃね」

 

「神々のいる場所で神話が生まれただけで、国境はないからな、神々に。だから、ゼウスが全世界の神々に指示を出せるのは当たり前だ。同じ神が同じ場所で別の名前を持つことも多いぞ」

 

統治権を持つ地域に責任を持つものの、積極的な介入は避けてきた神々だが、スサノオノミコトとハーデスの連合がアレスを味方につけた事から、彼ら自身が抗争を開始。全次元世界を股にかける大戦である。

 

「だから、俺がこの世界に呼ばれたのは、何かの思し召しだろう。変えちまった以上は、俺のできる範囲で収めないといかんからな」

 

この事を、マリアは信じた。波紋の呼吸の効果で黒江の体は輝いて見えたし、サンダーボンバーとエクスカリバーを味わっているからだ。

 

「黄色のガキとは何度か手合わせをするだろう。お前の離反のお膳立てのためだが、お前は青のガキとやることになるかもしれん。その時のために、この呼吸法の触りくらいは覚えておけ。ギアの装着時間を伸ばせるかもしれん」

 

「分かったわ……」

 

波紋は応用が効く。黒江はマリアに教えることで、体への負担低減に繋げられると考えたが、実際はそれ以上の効果があったのである。思いっきりの付け焼き刃であるが、ないよりはマシである。そのエネルギーが後に、立花響の中に宿っていた『資質』の覚醒を促すのである。波紋のエネルギーは光のエネルギーであるからで、プリキュアの根源となるエネルギーも『光』である。そこから導き出される答えは…。

 

 

――黒江というイレギュラーが現れたことで、『月読調という人間がどういう人物であったか』という認識は、切歌の認識からは上書きされていった。元々、フィーネが米国を唆し、自身の器候補として拉致した孤児の集団の一人であり、月読調という名前も仮名に過ぎなかった。黒江が『そのような人物が実在する』かのように偽装工作した事により、その偽装データが人物像の手がかりに使われたため、切歌の知らぬ間に『存在が独り歩きをしていた』。響が後に、切歌に強く同情したのは『自分がこうだと信じた何かが周りに否定されてしまう』恐怖を知るが故に、その認識を作った人間である黒江に、自分でも知らぬ内に敵意を持ってしまったのではないか?と。小日向未来はそう推測している。他人であるが故に、調が帰った後にどうなるか。それを気にせずに傍若無人に振る舞っていると。事後の時点からだが、切歌との仲をこんがらせ、心に傷を負わせた責任を取らせる。それが、後々に推測された、響の思考であった。最も、事故で姿が入れ替わっただけの人間に『元の人間関係を演じろ』というのは、黒江に俳優の才能があっても、正直なところは不可能である。

 

「もし、緑のガキがやらかして、味方に保護されたとしても、名前と外見しか分からない人間関係を演じろとか無茶言うなや、どうなっても知らねぇぞ?」

 

「それでも頼むわ。万一のためでもあるのよ。無茶は承知なのはわかってるわ。上辺だけでもいい。そうすれば、あの子は自己満足する」

 

「いいのか?」

 

「立花響の話は、未来から聞いているのよ。おそらく、そんな事を頼むと思うから、渋々って雰囲気を醸し出して」

 

「やれと言われたら、やる。だが、本人と違うと言われても知らんから、俺は責任持てねぇよ?」

 

「構わないわ。私と……あの立花響の自己満足だもの、これは」

 

黒江はマリアにその事を注意するが、マリアは切歌の精神的安定を優先したのだ。ただし、マリアがそのように演出したことが、帰還後の調と響のすれ違いを招き、間接的に出奔の原因となるのである。

 

「おそらく、後で俺は舐めプだの言われるだろうな」

 

「なぜなの?」

 

「青のガキに聖剣を撃ったが、死なない程度には加減はしてある。本当の全力なら、五キロほど地殻をむき出しにできるくらいは斬れるからな」

 

「あれでパワーを抑えたの?」

 

「宝具のパワーはお前らの想像以上に神秘なんだ。俺は神の闘士だから、任意の形で行使できるが、普通は相当な魔力を持ち、なおかつ適切な手順を踏まないと、劣化コピーにもならんのが当たり前だ」

 

聖剣を黒江は聖闘士としての力で行使している。魔力値そのものは『坂本よりは良い程度の中の下』(減衰が遅い体質)なので、魔力では聖剣は撃てないのだ。

 

「俺はアテナから新しく聖剣を授かったんだ。歴代の継承してきたのは先輩の聖闘士(紫龍)が俺の先代から受け継いだ関係で、そうなったんだ」

 

聖剣はこの時点で既に、二対が存在する。この後、調が叙任時に与えられ、のぞみも黒江を師と仰いだ都合上、聖剣を宿す事になるので、オリジナルのエクスカリバーの持ち主である『アルトリア・ペンドラゴン』は苦笑交じりに『バーゲンセールしないでもらいたいですね…』とぼやいたという。

 

「聖剣って、そんなにあっていいの?」

 

「ギリシアにある『聖域』がケルト神話の聖剣を象徴にしてる時点で、そこはどうでもよくなったんだろうな。それに、歴代の山羊座は手刀の形で行使してきた。俺は外部からのヘッドハンティングだから、許されてるようなものだけど」

 

歴代の山羊座の中でも、特に鋭い斬れ味の聖剣を誇る者は『魔斬り』の称号が与えられてきた。黒江から見て、先々代の山羊座『山羊座の以蔵』がその称号を持っていたので、聖剣は日本人との相性がいいらしい。黒江もデザリアム戦役以降は『魔斬りの綾香』という渾名が聖域で広まるので、シュラの早世が惜しまれた(紫龍の聖剣はシュラのそれと同等だが、精度は本職の山羊座より落ちるという)。

 

「でも、貴方のその力の事がわかれば、誰だって舐めプしてるって言うわよ。光速で動けて、ものすごい技を撃てるんだから。しかも、ノーリスクで」

 

「俺なんて、まだ常識で図れる範囲だぞ?上には上がいる。言ったろ?サントスピリト語を唱えただけで五感を奪えるのがいるって」

 

黒江はここで、乙女座のシャカを『自分より上位の力の持ち主』という形で紹介し、自分はかわいいものだと強調する。乙女座は代々が『仏のように滑らかな心の者が継承する』(性格に問題ありな者も何人もいたが)星座であり、その中でも、シャカは『高慢ちきな側面があるが、戦闘では最高位級の実力を持つ』という力で『歴代最高の乙女座』と称された。

 

「その人は生きてるの?」

 

「俺の先輩にあたるけど、一度死んでんだ。ゼウスの意向で涅槃から呼び戻されたけど」

 

「ゼウスにそんな権能が?」

 

「ハーデスが反乱起こしたから、その代わりだそうだ」

 

聖闘士の中でも、高位の実力者は神の意向で生を再び与えられる場合がある。聖域が機能不全であるのを憂いたゼウスの意向で、何人かの黄金が生き返り、実質的に復帰している。これは正統な次期継承者と位置づけられている星矢達が度重なる聖戦で傷ついていた上、まだ13歳から15歳の若齢であったからだ。

 

「神様って奴はだな、戦に使える人間は手元に置きたがるんだ。それと、男神は美少年か美青年を依代にするんだよ。中には、本当のボディを隠しておく神もいる。女の神も、人間として、この世に現れるんだ。似た特徴を代々備えてな」

 

アテナは城戸沙織以前の代の肉体でも、似た特徴を代々持ち合わせて、人間界に降誕してきた。城戸沙織はその中でも『最も若くして、責務を負った』者である。

 

「アテナは人の肉体を持つの?」

 

「そうだ。聖戦が起きそうになると、赤子として生まれ、人間界で過ごす。昔は聖域だけで育てられたんだが、20世紀となると……」

 

城戸沙織はグラード財団の若き総帥という表の顔を持ち、かなりの資産家でもある。神といえど、人間社会での地位が必要になるのは世知辛いが、資金は必要なのだ。

 

「金、か…。神様っていっても、私たちと変わらないのね」

 

「むしろ、聖書を額面通りに受けとりゃ、人間は神を模して作られたんだから、当然といえば当然だな」

 

神々は意外に世俗じみた側面を持つ。その事を実感している黒江だから言えることだった。

 

「それじゃ、人間の間で伝えられた神話は?」

 

「神々がそれぞれの地方で作らせた話だよ。社会がまだ初期の段階の頃に、シャーマンか何かを使って広めたんだろうな」

 

「全平行世界に共通で存在する存在ほど、『何かしらの意志が働いてる』もんだ。俺が今、仕事で調べ、集めようとしてる戦士たち(プリキュアのこと)も全平行世界のどれかどうかに名前が伝わってるが、本質はかなり違う連中らしい」

 

「あなたはその戦士たちに何をさせようと?」

 

「神々の熱き戦いに加わってもらうためだ。俺たちだけでは、人手が足りないんだ。一つの世界のスーパーヒーローに応援を頼んでいるが、全部がOKはしてくれんし、死んでるってこともあるからな」

 

「スーパーヒーローって、本当にいるのね」

 

「日本にはたんまりいるさ。問題は、年代が古すぎたりすると、戦える適齢期を過ぎてたりするし、過去から呼ぶにしても、タイミング次第で歴史が変わっちまうし」

 

ヒーロー達は民間の有志であるほうが多数派なので、使命を終えた後の消息を追えないヒーローも存在する(超人バロム・1やイナズマンFなど)。キカイダー兄弟はハワイを守っているし、電人ザボーガーは大門豊が1984年に死亡しているため、ザボーガーの捜索中である。(後に、ライダーマンが回収していることが判明)

 

「だから、俺たちは全平行世界を股にかけて、協力を仰いでるんだが、先方にも都合ってもんがあるからな。場合によれば、M78星雲に行く事も考えてるよ」

 

「光の巨人にも頭を下げるつもりなの?」

 

「そうだ。俺たち地球人だけで、宇宙全体は守れんからな。平行世界のどこかかしらにはいるだろう」」

 

「何か、スケールが大きくなったわね」

 

「それ以前に、近隣の銀河からの侵略が間近な世界を守らないといかん状況でな。故郷の戦を一段落つけたら、そこで仕事だ」

 

「あなた、元の姿に戻る意志はあるの?」

 

「入れ替わった奴が戻らんことには、どうにもならんよ。」

 

 

マリアにそこははっきりと告げた黒江。だが、結局は自身の顔がティターンズに割れているため、元の容姿に戻さず、調の容姿を普段使いにしていくのだ。

 

「シンフォギアを普段着に使うって聞いたら、あの子が聞いたら、その場でひっくり返るわよ」

 

「俺だって、こんなになったって聞いたら、部隊の部下たちが目を回すぜ」

 

この頃の黒江の行動の結果、シンフォギアの目撃者があまりに増えすぎた(シンフォギアと認識されていないが)ことで、目撃者全員に箝口令を守らせる事は困難となった。だが、幸いにも、黒江はシンフォギアと別の能力で戦っていたため、思ったような数ではなかったのは救いであった。

 

「能力の一つが世界の干渉で使えなくなったからな。本当は姿を変えられるんだが、この世界が俺に埋め合わせを迫っとるらしい。まぁ、それは果たすが、元の通りにはできんとは承知してくれ。」

 

「わかったわ。私も一芝居を打つけれど、うまくいくかどうか」

 

「黄色のガキは事情を知れば、緑のガキの方に同情するだろうから、その時の抑えを未来に頼んである。俺にも、物事を断る権利はあるって事をわからせてくれると思うが……」

 

黒江自身は縁もゆかりもないため、切歌の精神がどうなろうと、知ったことではない。それが本当のところだが、調と切歌の関係を実質的に『壊した』ことにも、黒江の責任はある。マリアもその事を見越し、事前にお膳立てを始めた。切歌の暴走を危惧してのことだった。黒江も、自身の介入で流れが変わった事を自覚しているため、ある程度は流れを計算していた。小日向未来、風鳴弦十郎の二人も『共犯関係』となる形で、ある程度は事態を制御するものの、流石に調本人の出奔は予想外の出来事であった。未来が手引きする形でドラえもんとのび太に引き合わせたわけだが、調がのび太に懐くという驚天動地(更に後に、花海ことはも加わる)の結果が起こるのである。のび太当人はしずか一筋なので、二人は妹のような立ち位置に落ち着くわけだが、歴史の先取りという形で、黒江がこの時に纏う『明るい配色のシュルシャガナのギア』は、その変化の予兆でもあった。マリア・カデンツァヴナ・イヴも、黒江自身もだが、この事には気づいていない。この日、目についたビジネスホテルに雲隠れし、二つの勢力の捜索を躱すので精一杯の二人には……。また、黒江がシンフォギアを持ち出したその日に、のぞみの覚醒する出来事が起こっていたことも判明するため、黒江がシンフォギアを持ち出した選択そのものが間接的に、プリキュアの覚醒の引き金となったのだ。

 

 

 

 

――運命の歯車は絡み合っていないようで、絡み合う。もうひとつの宇宙戦艦ヤマトの存在が反地球と地球の外交の始まりとなり、マジンガーZEROの策謀がプリキュアオールスターズ捜索の本格化の要因になり、そのZEROの登場がマジンエンペラーGの開発を促したように。黒江の来訪は幾多のシンフォギア世界の内の一つの流れを途中で変えたのだ――

 

――そしてまた、一人のプリキュア戦士を守りたい意志を持っていた妖精が『鎧戦士』(サムライトルーパー)へ転生を果たしており、義父であるのび太にその事を伝え、彼の義理のおばであることはをも驚かすこととなったのも、この頃にあたる。のぞみの運命の歯車も、再び回りだしていた。『彼』が彼女の存在を知ったのだから――

 

 

 

 

 

 

 

 

――ダイ・アナザー・デイの直後、凱旋を記念しての記念写真が地上空母の甲板で撮られた。新生野比家の面々が集まっており、その当時に集まっていたプリキュア達、救援に駆けつけていた仮面ライダーたちもフレーム内に収まっている。ど真ん中に、作戦の司令官であった『ジョージ・パットン』将軍がちゃっかりと混じっており、キュアハートとキュアラブリーを自分の両隣に立たせる『職権濫用』を見せている。真ん中より右寄りのところで、青年のび太(28歳頃)と調、キュアドリーム、キュアフェリーチェが写っており、両手に花ぶりを冷やかれ、苦笑交じりののび太の姿、この写真で『転生後に初めて、心から笑顔になれた』キュアドリームの姿があった。ドリームは若干ながら、気恥ずかしそうな表情だったが、それはことはが野比家の養子になり、のぞみも、転生していた想い人が野比家の養子になっていたことで、お互いに『家族になる』ことを知らされたからで、それを聞いたパットン将軍が気を使って、自分の写る位置を変えたからだった。この写真は新たに現れていくプリキュア達への説明資料に使われたが、のぞみがことはと姻戚関係になり、ついには、自分のチームの妖精の生まれ変わりの青年と『結婚』に至る事は、後輩たちに『!?★』と言わんばかりの表情をされる事になる。後輩たちの流石に失礼な反応に、本人も思いっきり不満げな表情になったのは言うまでもない(後で、後輩たちをビシッと『シメた』かは定かではない)――

 

 

 

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