――マジンガーZEROとは何か?どこかの世界のマジンガーZが自我を得た後にグレートマジンガーやマジンカイザーへの想像だにもできないほどの憎悪を糧に生まれた。当初の世界では、マッドサイエンティストのままであった兜十蔵が『愛を知らない魔神』として完成させ、その魂が神格化し、マジンガーZの悪の側面のエゴという形で権限。幾多の平行世界を滅亡に追いやった。やがて、デザリアム戦役でスーパーロボット軍団とプリキュアオールスターズ選抜メンバーの前に膝を屈する事になり、その魂はキュアドリームと融合する道を歩んだ。時たま、神託のように言葉をかけるが、基本的に穏やかな口調に変わっており、ドリームに感謝の意を伝えている。ZEROの能力はキュアドリームを始めとする数人のプリキュアにそれぞれ引き継がれており、その能力はデザリアム戦役後半以後の戦いで活用されていた――
――太平洋戦争もたけなわの1949年。501統合戦闘航空団と502統合戦闘航空団の別個体らは64Fの戦闘に帯同したが、その凄まじさに息を呑む者が後を絶たなかった。グレートマジンカイザー、ゲッターノアールG。二大スーパーロボットが登場したのもそうだが、64Fに在籍中の歴代プリキュアの内、飛行可能な者が参戦したからだ――
「みんな、いくよ!!」
「YES!!」
1948年に正式にのぞみから指揮権を引き継いだ日向咲はプリキュアコミュニティのリーダー格となり、それに伴い、軍隊階級が少佐となった。のぞみと違い、部活で主将だったため、場を仕切ることに抵抗感がないためにのぞみの推薦で任を引き継いだ。空戦が多いため、ここ最近はキュアブライトの姿での活動が多い。当時のストライカーより高速で飛べ、旋回半径も鳥のように小さい。それでいて、力はバグ程度ならば徒手空拳で壊せるほど。歴代プリキュアは当時の最新鋭ストライカーを履いた平均的空戦ウィッチより、よほど戦力になる。その証明であった。
「たぁああ!」
キュアブライトのパンチがザンスカール系MSの一つ『トムリアット』の装甲を軽くへしゃげさせ、機体ごと吹き飛ばす。小型MSは直接の打撃には実のところ脆くなっている。クロスボーン・バンガードのデナン・ゾンの時点で『装甲車の攻撃で戦闘不能になる』難点が明らかになっており、多少改善されたザンスカール系の機体であろうと、プリキュアの打撃力には耐えられない。その点が克明に現れ、ゾロ、トムリアットといったザンスカール系ビームローター機は真価を発揮する以前の問題でスクラップにされていく。
「ビームのローターで飛ぶなんて。未来世界のロボットはずいぶん強引な手段で飛ぶのね」
「変形すると、単なる戦闘ヘリだもん、こいつら。地球連邦の機体とは別の設計思想で作られてるからなぁ」
「子供達の前だから、張り切ってない?ドリーム」
「そうじゃないと言えば、嘘になるね、ウィンディ」
キュアウィンディの指摘にドリームは苦笑交じりに肯定する。互いに『現役』を終えたなので、B世界のウィッチらを『子供達』と形容する。変身している時は現役時代の名残りか、対等な喋り方になるのもプリキュアにありがちな特徴でもあった。
「風よ!!」
ウィンディが暴風を起こし、ビームローターを最大出力で回しても抗えないほどにもみくちゃにする。
「ドリーム、今よ!」
「分かってるって!フィンガーネット!!」
暴風を以てして、もみくちゃにしつつ、ドリームが空中元素固定能力でフィンガーネットで一個小隊をまるごと捕縛する。そして。
「秘伝・大雪山おろしぃぃぃ!!」
投網の要領で網を操りつつ、大雪山おろしでぶん投げ、地面に叩きつけて粉砕する。
「ものはついでだよ、ゲッターエレキ!!」
キュアブライトも64Fで生活する内に身に着けた『スーパーロボットの闘技』を放ち、ザンスカール系MSを破壊する。
「あんたら、バケモンかよ!?」
「貴方達から見れば、そうなるね」
「クソ!俺だって、剣一閃が当たれば…」
「直枝のはシールドパンチだから、MSは壊せないと思うなぁ」
「あんだと、テメェ!やってみなけりゃ……」
「事実だよ。スンマセン、のぞみさん。こいつが迷惑…」
突っかかる管野をやってきた『菅野』が諌める。菅野は管野よりは理知的である。なおかつ、自分より上と認めた相手限定だが、敬語を使って接することが常にできる特徴がある。
「相手は普通の機械兵器だ。お前の剣一閃は怪異相手のもので、機械兵器を壊せるほどの力はねぇだろ?俺が4年前に試したからな」
「ぐ……!お前に言われちゃ、元も子もないだろうが!」
拗ねる管野だが、背も大きくなり、魔力値も上な『別の自分』に断言されては、ぐうの音も出ない。菅野はダイ・アナザー・デイ当時に剣一閃を試したが、MS相手には避けられるのが関の山、対艦攻撃などに使うしかなかったので、別の自分を諌める。
「でもさ、戦艦の甲板をぶち破ってなかったっけ?」
「思いっきりやれば、ですけどね」
菅野は自嘲気味だが、その代替手段を模索し、刀を覚えた事もあり、芳佳のバディとして名を馳せている。一応は少佐になったが、素行がよくないため、人事部が佐官への昇進を渋ったとされる。とは言え、往年の圭子よりは幾分かマシなこと、海軍出身者では坂本や孝美以来の逸材である事から、ようやく昇進が決まった。
「こいつらのお守りしながら空戦ってのは、やりにくいぜ」
「あんだと!」
「戦闘機との空戦の経験がねぇだろ。怪異はパターン覚えりゃいいが、戦闘機は違うからな」
「ぐ、ぬぬ……」
「それに、こいつらはビームシールドを持ってる。正面からは効かねぇぞ」
「ビームシールドだと……!」
「見な」
グレートマジンカイザーの攻撃をMSがビームシールドで防ごうとするが、それを容易く、Gスマッシャーパンチで貫かれ、あえなく破壊されるのが見える。スーパーロボットは単に大きさだけで勝っているのではないのがわかる。そして。
「お、隊長も出たようだね」
「あん?」
管野達の上空を、武子がダイ・アナザー・デイ後期から使用しているガンダムF91が通過していく。ザンスカール系のMSに比べれば、機体のハードウェアの設計年度は古めだが、元が贅を尽くした試作型である事で行える『徹底的な近代化改修』で未だに第一線級の最高ランクを維持している。そんなオーバーテクノロジーの塊が乱舞する様に管野は固まる。
「嘘だろ……あんなのをこの世界は戦争に使ってんのか」
「その中でもウチは特別だよ。最高グレードの機体を使えるんだから」
ドリームの言うように、ガンダムタイプは連邦軍の象徴と言えるフラッグシップ機である。連邦軍純正のガンダムタイプとしては、F91がまだ最新作の一つに位置する。F91は公的な後継機はF97(クロスボーン・ガンダム)とされるが、F91の純正発展型として、それに続く『F92』が構想されていたのも有名な話だ。もっとも、それが軍縮の時期に予算削減で頓挫した故に、全くの別コンセプトであるF97が後継機種に祭り上げられたわけだ。
「あんなの今の技術で造れねぇだろ?」
「当たり前さ。提供元がいるのさ。別の世界からの、ね」
「あんたら、世界の壁を軽く超えてんだな…」
関心する管野。だが、ザンスカール系のMSはゾロ系はともかく、アインラッド装備機は強固な防御を持つ。ジオン系が嘘のように硬いため、連邦軍も手を焼いた記録がある。プリキュア達も連携で撃破する戦法を取るのは、アインラッドがプリキュア達の攻撃をも防げるからである。
「みんな、アインラッド装備のが来たわよ!!」
キュアウィンディが注意を促す。
「なんだありゃ!タイヤが……空を!?」
管野はその姿の奇異さに驚く。武装されたタイヤに乗ったロボットが飛行して突撃してくるのだ。サブフライトシステム的には最高傑作の一つとも評され、ビーム攻撃の大半を防ぐ。スーパーロボットの攻撃力の前には関係ないのだが、リアルロボットにとっては大問題であった。連邦軍はアインラッドを破壊するリアルロボットなりの攻撃力を模索しているのだが、その研究過程で生み出されたのが輻射波動機構なり、V-MAXである。
『バーニングブラスター!!』
黒江がGカイザーのブラスターを放ち、突っ込んできたアインラッド装備MSを溶解せしめる。改良されたGカイザーにとっては物の数ではない。
『アインラッドは俺とケイで引き受ける。お前らはタイヤ戦艦を制圧しにいけ!管野、お前んとこのひかりと芳佳が先走りやがった』
「なぁ!?あのバカ共!」
芳佳Bは街を蹂躙するタイヤ戦艦の姿に激昂し、ひかりBも帯同した。芳佳Bは衝動的に自分のシールドで地ならしを阻もうとしたが、流石にそれは無謀であった。核融合炉による莫大な出力に由来する突進は怪異のビーム攻撃とは比較にならないため、数分は押し留めたが、エンジン出力を上げられ、更にビームシールドで干渉されると、芳佳はシールドごと弾き飛ばされてしまう。
「そ、そんな……私の全力でも止められないの……?」
絶望する芳佳B。それを助けるひかりB。それを尻目に、ドリーム、ブライト、ウィンディの三人がアドラステア級に取り付こうとする。だが、同級の対空砲火は激しく、豊富な実戦経験のある三人を以てしても、容易には取り付けない。
「うわっ!!連中、必死だよ!」
「対空砲を潰さないと!これじゃ取り付けないわ!」
「よっし!!光よ!!」
ブライトがすぐに光弾を放つ。対空砲のいくつかが沈黙し、対空砲火に穴が開く。だが、一つや二つが沈黙したくらいで薄まる弾幕ではない。護衛MSも加わり、三人を阻止しようとする。
「おわっ!一筋縄じゃいかないか!」
ドリーム達は弾幕に苦戦する。ウィッチ達も援護せんとするが、ミサイル、レーザー砲、ビーム、機関砲の雨あられに阻まれ、思うように援護ができず、自分達の思うような戦いができずにいる。
――ウィッチは機械兵器相手には、攻撃の際の装甲弱体化補正が働かず、魔導師ほどの火力もないため、日本連邦内では二線級の戦力と扱われている節がある。純鉄による『ウィッチ殺し』がダイ・アナザー・デイで広まって以降のウィッチはクーデターの影響もあり、軍事的には存在感を低下させている。それと対照的にプリキュア達は(ドリームたちが捕虜になる失態があったが)『伝説のヒーローである仮面ライダー達にも負けないヒロイン』として、ウィッチの担っていたポジションを一部『奪う』形で巷での人気を博している。そのプリキュア達を苦戦させる敵は強敵とされる――
「他の部隊は何してるんですか?」
「50Fが時間稼ぎをしてくれた以外はウィッチ部隊はここにはいないよ。こいつにこの街の守備隊は全滅させられてるしね」
「なぜ、ウィッチ部隊がお前達以外に少数しか南洋におらんのだ?」
やってきた坂本Bが疑問を口にする。ドリームがそれに答える。
「一言で言えば、4年前の戦いでウィッチ部隊の軍事的価値が大きく下がったんです。3年前のクーデターがそれに追い打ちをかけて、ウィッチ部隊は運用・維持・育成ノウハウ維持のために、ごく少数が軍に残置するだけに落ち込んだんです。政治家に存在自体が危険視されましたからね。あたしの代の中堅は多くがアリューシャンへ島流しにあったし、教官も少なからずが4年前の戦闘の補充要員として駆り出されて、半分近くは負傷や精神的にやられましたから」
「この世界の45年に何があった?」
「怪異との戦闘が異世界の介入で一段落ついたのと引き換えに、人同士の戦闘が大規模に起こったんです。奴らみたいな敵とウィッチは戦うを得なくなった。その結果、社会的評価を大きく落としたんです」
「どういうことだ!?」
「サボタージュですよ、坂本さん。あたし達以外の部隊はまともに参加したほうを数えたほうが早いくらいに動かなかったんですよ。差し迫った時に動き始めたけど、次々とやられていった。作戦が終わるまで実働を維持できたのは、うちの隊だけでして」
サボタージュの公表もクーデターの鎮圧のために利用されたが、結果的には扶桑で急速にウィッチの社会的立場の悪化を引き起こし、1948年時点で、農村部では『軍隊しか居場所のない穀潰し』とさえ罵倒されるほど。ウィッチ候補生と教員の学校教育からの放逐の決定も社会的評価の悪化に一役買ってしまった。ウィッチ候補生は地域ごとに高等工科学校へ集められることになったが、家庭の都合で途中で課程を辞める者も続出し、1948年度の入隊人数は集団就職を省くと、散々たる数字であった。人数的に日本からの義勇兵のほうが多くなってしまい、生え抜きの新規入隊組が少ない『暗黒期』にこの時期は入る。軍部のウィッチ組織の維持を七勇士とその弟子筋に頼り切りであることを憂慮する声が多く出ていたが、軍ウィッチの教育体制にメスが入り、根本的に存在の見直しの時期であった時代である以上、明確な答えは見いだせていない。これは坂本が行っていたように、徒弟制の名残り的な育成が主だった扶桑ウィッチ界隈を大きく変える事を意味する。その意味で言うなら、芳佳、ひかり、調の三名は徒弟制で育って立身した最後の世代になる。
「ばかな、サボタージュなど」
「人同士の戦争に加担したくないって奴ですよ。結果的には自分達の社会的評価を大きく落としただけに終わったんですけどね。その煽りで、あたし達はこの四年間、最前線勤務ですよ」
「その結果がこれか」
「ええ。別の世界じゃ、民主主義社会に嫌気が差した企業家が貴族趣味に走ったり、思想家の言うことを曲解した連中が何十年も紛争の火種になってるのを考えると、この世界は幾分かはマシですよ」
人同士の戦争はウィッチ達のすべてが受け入れたわけではない。64Fに集められた『選良』の意見がウィッチの総意ではないのは事実である。その他のウィッチの多くはMATに移籍し、従来通りの仕事をしている。軍部の誤算はMATの増長が予想を超える程になり、軍部をこの時期から圧迫していた事だろう。
「それでも、私達からみれば……」
「ナポレオン三世の時代までは普通に人同士の戦争してたでしょう?それを棚に上げるのはちょっと…」
「……」
坂本はどこの世界でも、宮藤一郎技師の薫陶を受けて精神的に成長した。そのため、ウィッチが人に向けて弓引くのを『異常』と形容しようとしたが、森蘭丸などは人同士の戦争で名を挙げたウィッチであるため、坂本Bは押し黙る。本当に、ナポレオン三世の時代まではウィッチは人同士の戦争に駆り出された記録があるからだ。キュアドリームも戦乱を潜り抜けた故か、坂本Bの青臭さを懐かしく思いつつも、『現実は厳しい』と教える。坂本には『1946年には五〇一を去る未来』が存在するが、中には『1944年に敢えなく戦死する』世界線も存在するからだ。
「あくまで可能性の一つですけど、怪異がいなくなれば、世界はいっぺんに戦争することもあり得る。それを思えば、人を一つにまとめるだけの敵がいることは歓迎するべきかもしれませんよ」
「それほど人は愚かなのか?」
「ええ。別の世界だと、三回以上も世界大戦した後に宇宙移民と地球居住者との間の戦争が起きてますからね」
「……」
坂本BはAと違い、怪異を倒せば平和が来ると思っているが、実際はそうではない。A世界では『戦後を見越した主導権争い』が水面下で行われていた。ティターンズの登場はその目論見を脆くも崩壊させ、扶桑主導の世界の構築の流れを作った。ウォーロックといらん子中隊の一件はブリタニアの軍事的権威を崩壊させ、ミーナの冷遇はカールスラントの『軍事強国』のブランドを叩き壊すという結果を招いた。それがA世界での結果である。
「だから、扶桑はそれを見越した軍事ドクトリンに転換したんです。異世界の来訪者が戦争を煽ったけど、欧州列強にその動きに対応できる力はもうないんで」
「だから、あのようなバケモノを使うのか?」
「あれはほんの一例ですよ。それに、大和型戦艦と戦える戦艦が現れてるんで、それを圧倒するための戦艦も必要になったし」
「すると、大和型を対艦任務に転用したのか?」
「逆ですよ。大和型は敵艦を倒すために造られたんですよ?浮き砲台はウィッチ閥を黙らせるための名目です」
坂本Bには信じられないが、A世界での大和型戦艦は『戦艦本来の任務にも耐えうる移動司令部』扱いで初期の二隻が建造され、その後に『主力戦艦』としての増産が決定されたものの、空母閥とウィッチ閥の巻き返しで改装空母化が内定していた。だが、大和型に匹敵するモンタナの登場で世論が空母不要論を叫び、それに応じて戦艦としての建造が続けられた結果、信濃と甲斐は生まれた。だが、大和型戦艦そのものがH43級には決定打を欠く事態に陥ったため、上位艦種である超大和型戦艦が造られたのである。A世界では、怪異への砲撃は副次的任務であり、あくまでも戦艦本来の任務に従事する事が主任務なのだ。
「そんな事言ってたら、この世界じゃ後ろ指を指されますよ?」
「……この世界は変わったのだな、何もかも」
「本来の姿に戻っただけですよ、本来のね」
A世界はティターンズのおかげで、すべてがナポレオン三世の時代以前に戻ったといえる。そして。
『そうだ。相応の手段は取らなくちゃならん。相応のな』
グレートマジンカイザーがショルダースライサーを取り出し、アインラッドを切り裂く。そして。
『対空砲火は破壊してやる。ギガントミサイル!!』
マジンカイザーのそれより大型のギガントミサイルが発射され、アドラステア級の対空砲群に大穴を空ける。
『グレートトルネード!!』
これまた竜巻を巻き起こし、護衛MSを蹴散らす。
「黒江、お前。この世界だと、パイロットを兼任しとるのか」
『まーな。今はこっちのほうが多くなったが。お前ら、今だぞ』
「わかりました」
プリキュア達へ突撃を促すと、自分はバグと護衛MSを蹴散らす。坂本は管野ら三人の面倒を見つつ、F3Hとの空戦を再開する。戦艦内部に殴り込んでの戦いは自分たちの領分ではないからだ。
「黒江、すまんな。子供達の引率をさせる真似をさせて」
『な~に、構わんさ』
坂本Bはグレートカイザーが如何なる攻撃にも揺るがない事に驚く。戦艦の砲撃にもびくともしない上、突撃してきたアインラッドが逆に壊れるほどの強度を見せたからだ。
『悪いな。超合金のこのボディに、そんなのは通用しねぇよ』
アインラッドがぶつかった途端、逆にアインラッドが砕ける。搭乗していたゲドラフは放り出され、次の瞬間にはショルダースライサーで細切れにされて倒される。残酷なようだが、これがお互いの戦力差である。
「お前のその機体、どういう強度だ…?」
『この世で有数に硬い超金属でできてるとだけ言っとく。説明しにくいし、世界によっては存在しないことも多いからな』
ジャパニウムは世界によって、その存在の有無が分かれる。ウィッチ世界(A)には存在するらしいが、この時代の技術では掘れない位置に鉱脈があるという。そのため、坂本Bへの説明をぼかしたのだ。
『これでガキ共が戦艦を制圧するだろう。あとは兵器を落とすだけだ。ガキ共もジェット時代の航空戦を味わったはずだ』
「武器の反動が大きいのと、タイミングが難しくて…。」
『何、反動は12.7ミリに比べれば大きいが、37ミリ砲ほどでもない。この世界の実戦にこれからも出たいのなら、撃つタイミングや射程を頭と体に叩き込んでおけ』
「この世界でもそこは変わらんな」
『教えることはどこでも同じだ。やることは結構変わったが』
芳佳Bは勝手が違う空戦に戸惑っているようだが、坂本Bは黒江の教え方は言い方のニュアンスは荒っぽくなってはいるが、B世界との差異はない事に関心する。
「違うのは、戦士としての自分を捨てなかったことか?」
『ああ』
黒江がB世界の同位体と異なる最大の違いは『戦士としての自分を捨てなかったか』。B世界では前線に復帰させられることはまずないが、A世界では、後方よりも前線に置いたほうが遥かに役に立つし、揉め事もないという上層部の判断もあり、後方のテストパイロットであった期間は短い。B世界ではそれに専念したため、A世界で持つような実戦での強さは維持できていない。そこもBがAの影武者を辞退した理由である。A世界では七勇士の筆頭格の扱いだったため、後方に行ったら逆にいじめられ、統合戦闘航空団でも人種差別を味わう辛酸を舐めた時期があるが、ダイ・アナザー・デイ以降は往年の威光が復活し、空軍の『権威』として名が知られているからだ。黒江はB世界では現役時代の武功は忘れ去られている前世代のウィッチという扱いだが、A世界では現役バリバリの『生ける伝説』扱いである。
「宮藤。よく見ておけ。私の先輩格の空戦戦技など、そう見られるものでもない」
「は、はい」
黒江の戦技はどこの世界でも、坂本が見本にするほど洗練されている。坂本Bは芳佳Bにそう促す。使うものは違えど、かつてのエース『魔のクロエ』の実力を見ておけと言うことだった。