――ダイ・アナザー・デイで海軍のシンボルとなったのが、大和型戦艦の血族である。戦艦の存在意義の再証明となる活躍をしたが、運用経費の高額化で中小国の手に余る兵器と化した。当時、対怪異装甲が各国で模索されていたが、日本連邦が超金属をふんだんに用いた装甲を用いたことが中小海軍をげんなりさせ、戦艦運用の放棄の一因になった。日本連邦の内、扶桑も当初は自国製の『対怪異装甲』で大和型戦艦をアップデートするつもりだったが、折しも、日本側が『戦艦廃止論』をぶちまけて議論になっていたことや未来世界の誘いで超金属が使えることになったため、超金属で既存艦を作り変えるほうに舵を切り、信濃と甲斐はアップデートを繰り返して強化する選択となった。その結果がダイ・アナザー・デイでの活躍であった。それに歯がゆい思いだったのがロマーニャとガリアの海軍だ。当時、タラント空襲でロマーニャ海軍は形骸化していたため、欧州が舞台でありながらもお呼びでなかった。ガリアも本国がズタボロの状態で海軍を参加させる余力がないため、ド・ゴールは地団駄を踏んで悔しがったが、アルザス級が鹵獲されていたことに泣いたという。時代は大和型戦艦を花形として押し上げ、それに満たない艦を淘汰し始める。以前のような建艦狂想曲にはならなかったが、連合軍の艦砲サイズの大口径化を推し進めた。むしろ、モンタナやアルザスといった『史実の未成艦』の存在が日本側で大勢を占めていたはずの戦艦不要論者を叩き潰す事になった。カタログスペックで大和型(史実)に肉薄する装甲厚を持つモンタナは特に脅威視された――
――呉で紀伊型戦艦がモンタナに為す術もなく轟沈させられた映像はポストユトランド型日本戦艦の陳腐化を妙実に示す材料であった。不運はあれど、長門の改良型が米軍最新鋭戦艦に為す術もなく倒される映像は日本側の危機感を煽った。八八艦隊以前の日本戦艦の特徴であるパゴタマストが砲撃で倒壊してしまう悲劇的最期も日本側の関係者を戦慄させた。正確には天城の改良型だが、紀伊型は長門の改良と見做されたため、扶桑以上に日本側がショックを受けたという。扶桑も計画から10年以上かけて作った『艦齢10年以内の一線艦が旧式の烙印を押された』ため、艦政本部は大パニックであったが、日本側の慌てようはただ事ではなかった。『大和以外は使い物にならない!!』とパニックを起こす政府関係者が生じ、宇垣纏を呆れさせたという。扶桑は大和型戦艦より安価な『手頃』な高速戦艦を45000トン級で揃える事を構想中だったが、日本側が大和型戦艦の増産を押し通したのである。M動乱でH級がライバルとして台頭したのも、増産の後押しとなった。その頃の扶桑の世論は紀伊の悲劇に憤激しており、空母不要論を唱え、戦艦での復讐を望んでいたが、現場は空母の増勢を志向していた。それは信濃の史実の処元が艦政本部で承認寸前になっていた時期と重なる。信濃は空母化が直前まで推されており、扶桑海軍の航空派は大鳳の増産頓挫の代替目的でも欲しがったという。甲斐共々、信濃型空母となる可能性はかなり強かった。当時としては大型の船体だからだ。とは言え、ドックでの建造が最終艤装にまで進みつつあり、空母にしても史実と大差ないものにしかなりえないと判定され、戦艦のままで近代化を施すことになり、M動乱中に二度の改装を受け、第三次改装で完成とされた。なお、信濃は横須賀工廠、甲斐は川滝神戸で造船された大和型で、M動乱のデータで近代化後の姿で『三河』が大神工廠で造船され、純正の大和型はそれで打ち止めとなった。1946年以降に三笠型に続く改良型の敷島型戦艦が完成すると、大和型は第三戦隊にも配置されるようになった。『手頃なサイズ』と見做された(290m級にはなったが)ためだ――
――太平洋戦争の頃になると、連合艦隊の第一線戦艦は大和型戦艦の血族で固められるようになっており、敷島型が第一戦隊に配置され、三笠と富士は第二戦隊の配属となっていた。敷島型は同型艦『秋津洲』、『八島』の1947年の竣工で定数を満たしたものの、大きさが800mに達している超兵器であるため、大きすぎるとブーイングを受けるのもお馴染みになっていた。とは言え、56cm砲を播磨型と同等以上に装備した上で安定するサイズとなると、800mはかなり余裕を持たせている。敷島型戦艦は当初、61cm45口径三連装砲の搭載で構想されたからだ。なんとも仮想戦記じみているが、扶桑は三笠型の運用で大口径化の限界を悟り、砲塔の搭載数を四基前後にしての速射化を志向したというのが実情だ――
――タイヤ戦艦と64Fが戦闘を繰り広げている頃、南洋軍港に投錨中の敷島では――
「敵艦隊に動きは?」
「タイヤ戦艦以外に動きはありません。本艦にブルってるそうです」
「だろうな」
山口多聞は長官室で大笑する。小沢治三郎に代わり、連合艦隊司令長官に任ぜられて三年目を迎えた彼、敷島へ『島でも動かしとるのか』とコメントしたという笑い話を持つ。
「本艦の出番はまだかと、将兵は」
「本艦は存在しとることに意義があるのだ。本艦が敵と事を構えるのは、ハワイを取る時だ」
「ハワイですか?」
「本艦の秘密はそこで披露する。ニューレインボープラン艦とパーツを共有したのはそのためだ」
「飛ぶのですか」
「そうだ。敵がラ級を、リバティを出してきたらな」
リバティ。ティターンズの秘匿する中では最大最強のラ級戦艦であり、建造にあたっては改モンタナをベースにしていると思われる。山口多聞はハワイ攻防戦でその秘匿機能を使うと明言する。敷島とその同型艦は実はラ級戦艦の一つであり、その第二期生産型なのであると。
「ラ號の改良型だというのですか、長官」
「64に轟天を与えたのは、本艦のためだよ。轟天の実戦データを洗い出し、偽装機能をつけたのが敷島型なのだ」
轟天は64Fの母艦として既に有名だが、艦長が武子な事には異論もあったのは事実だ。武子は元から海軍軍人ではないからだ。
「長官。64ですが、ザンスカール帝国残党と交戦中です。それと、501と502の同位体も帯同していると」
「来るべきものが来たようだ」
「長官は予期しておいでだったので?」
「いつまでもホテルにすし詰めでは、不満が噴出するだろう?特に使命感に燃える子供達はな。予測済みだよ」
山口多聞は501や502の同位体が戦闘に参加しようとする事を読んでいた。闘将とされつつも、ブル・ハルゼーと違い、理知的である山口ならばの読みである。
「それに、向こうの黒江くんが通報してきたからな。それで実戦を見せることにしたのだ」
「よろしいのですか。バグの姿も確認されておりますが」
「連中の通った街は全滅か?」
「50Fの足止めで免れましたが、四割は死傷したと」
「クロスボーン・バンガードの負の遺産か…。ザンスカールめ、どこから手に入れたのだ?」
「ブッホ・コンツェルンは解体が進んでいますから、その中の残党からでしょうな」
「亡霊、だな。カロッゾ・ロナの」
この時の攻撃に使われた『バグ』。人間を殺傷するための兵器であり、かつてのクロスボーン・バンガード戦役では数十万人を虐殺したともされる。ブッホ・コンツェルンはその責任を取らされる形で解体が進んでいるが、かつての残党は潜んでおり、ザンスカール残党に流したと思われる。山口多聞の机に置かれているファイルの表紙に描かれているのはかつてのロナ家(ブッホ家)の紋章で、クロスボーン・バンガードの記録が記されたものであるとわかる。
「鉄仮面、ですか?」
「彼は義父の期待に答えようとして狂った男だったというが、ジオンより恐ろしい事を考えついたものだよ、よく、な」
山口多聞の言う通り、バグは恐ろしい殺戮兵器である。501の同位体らはその凄惨さを目の当たりにすることになる。
「なん……なの……これは!?」
ミーナBは吐き気を催すほどの凄惨な光景を目の当たりにしてしまった。血の海になった街、転がる人の首、破壊された戦車。B世界ではありえない光景だ。
「バグ……無人の殺戮兵器の通った後よ」
「穴拭閣下……こんなものが戦争だと!?」
「そうよ。ある世界で人だけを殺すために使われた残虐な兵器。300万人は三日三晩で皆殺しにできるとされたわ」
ミーナBは吐いてしまう。凄まじすぎる光景だからだ。智子は淡々と話す。これ以上のものを見てしまった経験があるからだろう。
「虫(バグ)などと言うが、動いている物全てを切り刻む狂戦士(バーサーカー)とでも言うべき狂気の産物だな」
「美緒……」
坂本Aもやってきた。この時は501の同位体を心配したのか、紫電改を履いている。
「あなた、飛べるの…?」
「この世界では烈風斬は使わなかったからな。飛ぶくらいはできる」
これは嘘も方便である。実際にはGウィッチ化で戦闘に充分に耐えられる。引退したのは黒江への償いのため。そして、前世を引きずらないための決意表明でもある。
「魔力が残ったから眼帯もしてるし、髪形も変えておらん。それに私は飛行長だしな」
「隊を抜けなかったのね」
「色々と事情があってな」
自嘲気味だが、Bに起こるであろう『物語の終わり』が来なかった故か、bに比べると達観している物言いである。
「それに、子供達の面倒も見なくてはならんからな」
「ミオ、この区画は完全にバグに殲滅されてるわ」
「ご苦労、クロ。挨拶しとけ」
「クロエ・フォン・アインツベルン大尉であります」
ぬけぬけとそれらしい態度を取るクロ。中身はルッキーニであるが、ルッキーニであると全く悟らせない演技力はさすがだ。
「カールスラントの貴族なの、貴方は?」
「ユンカーです。本家に継承者がいなくなったので、従姉妹と私が継いだんですよ」
クロは一応、そういうプロフィールになっている。カールスラントの伯爵家を継承した一人。実際には、フランチェスカ・ルッキーニがサーニャに付き合って、その立場になったのだが。(最も、本人の意識が『寝たがった』ためでもある)これはサーニャが『イリヤスフィール・フォン・アインツベルン』を名乗っているのと同じで、他には、ハンナ・ユスティーナ・マルセイユが『ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト』としての二重生活となっている。マルセイユはGウィッチ化後、刺激を求めていたため、リーネの面倒を見るための二重生活を自分で選んでいる。ルヴィアとしての高飛車な態度はマルセイユなりの模索であるとのことだが、ケイからは素を疑われている。
「クロは弓の才能があってな。私の護衛をやってもらっている。宮藤は医務や兼業が忙しくてな」
「あの戦士の力を宮藤さんも…?」
「この世界ではな。シャーリー。『トゥルーデ』のお守りはどうだ?」
「ジェット相手に手間取ってるが、あたしが助ける必要はあまりなさそうだよ」
「よし、お前もドリームたちの援軍に行け。トゥルーデは大丈夫そうだ」
「だよな。了解」
坂本Aは区別のため、B世界のバルクホルンは愛称で呼んでいる。最も、A世界のバルクホルンは前世の晩年に自動車事故で車椅子生活になった経緯を経ているため、穏やかな表情がデフォルトであり、Bとの区別はしやすいが。
『レッツ・プレイ!!プリキュア・モジュレーション!!』
シャーリーの変身の掛け声が響く。現役時代と違い、単独での変身ができるため、任意にキュアメロディになれるというメリットが生まれている。ツインテールとピンク髪という見かけになるので、あざといとルッキーニBに言われたこともある。
「あの掛け声、必要なの?」
「一種の呪文と思え。古の魔女は呪文使ってただろう?」
一応は説明するが、かなり苦笑いの坂本A。容姿も大きく変化するのは説明できないからだ。(シャーリーは元の原型が無くなるに等しいため)
「プリキュアは場合によっては容姿も大きく変化するんですよ」
クロも言う。相田マナとシャーリーは特に原型が残っていない部類だからだ。のぞみやラブは比較的に残っているほうだ。
「何人かは別行動を取らせてある。思ったより広範囲にバグが使われたみたいでな」
「美緒、何を使ってるの?」
「実験中の端末だよ。これで指示を出せる。だから、小銃くらいしか持てなくてな。シャーリー、虫よけに持っていけ」
「お、サンキュー」
槍みたいな物をどこからか引き抜き、バグの規制マーカー(ルンバのエリア規制マーカーを大きくしたようなもの)をキュアメロディに手渡す。メロディは受け取ると、大きく跳躍し、姿が見えなくなる。
「嘘…なに、あのジャンプ力」
「プリキュアは皆、あんなものだ。シャーリーは割に戦闘向けではないそうだがな」
スイートプリキュアはハートキャッチプリキュア同様、『浄化メインになる過渡期』のプリキュアなので、技は戦闘向けではない。シャーリーが輻射波動を多用する理由の一つだ。戦闘メインのプリキュアは初期の四大プリキュアのみとも言えるが、第二期以降も偶に戦闘向けの資質が強いプリキュアが生まれることには変わりはない。キュアラブリーやキュアハートが浄化と戦闘を兼ね備えているように。
「こちらの宮藤さんが落ち込んでたわ。ウィッチでなくても世界を守れるなら、ウィッチは必要ないんじゃないかって」
「その手の悩みは多く出たよ。だが、ウィッチでなくても戦う術はいくらでもある。アフリカ戦線のようにな」
坂本はアフリカ戦線を引き合いに出し、ミーナが伝えた芳佳Bの悩みへ回答を提示する。
「ウィッチでなくても、戦いたい心があれば、願いがあるのなら、それは立派な理由になる。プリキュア達は女子のそんな願いの結晶だ」
「それに、ウィッチと違う形での魔法は存在しますからね」
「アルトリア。お前も出たのか」
「ええ。陸戦要員の制圧のためです」
アルトリアも姿を見せた。この時は毎度おなじみの青い騎士服と甲冑姿であり、元・円卓の騎士の中心であった風格も感じさせる。彼女こそがオリジナルのエクスカリバーの保有者であるのは言うまでもない。
「英霊のお前が出るほどのことか?」
「大飯食らいの腹ペコ王と言われては、円卓の騎士の沽券に関わりますので」
ハインリーケとしての506の残務処理で忙しく、最近は実戦に出ていないため、『腹ペコ王』と揶揄されており、それを沽券に関わるとする。なんともしょうもない理由だ。
「紹介しよう。このアルトリアは……なんと言おうか、アーサー王の生まれ変わりでな」
「なぁ!?」
多少の嘘を混ぜる。いくらなんでも、『現代にアーサー王が再臨する』のは荒唐無稽だからだ。とは言え、グンドュラ・ラルには本当の事を言っているために、態度としては矛盾するが、ミーナは悪童で名が売れるグンドュラより常識的だからと考えての事だろう。そこも坂本の気づかいだと言える。
「そういうことです、中佐」
「この世界ではアーサー王の生まれ変わりだというの、ハインリーケ少佐」
「この世界では大佐になりましたが、階級以外であれば、呼びやすい方で結構です。エクスカリバーも持っていますよ。ラル少佐には言ってあります。貴方とは会う機会が無かったので……」
そこそこの嘘を混ぜる。ミーナBはダイ・アナザー・デイの映像は見ているが、便宜上の説明がなされたのには理由がある。ジャンヌやアストルフォと違い、アルトリア・ペンドラゴンは転生の際に、この世界の人間を素体にしている。それがカールスラント最強の夜戦エースの一人であり、下位とは言え、皇位継承権も有していたハインリーケだったため、カールスラントとブリタリアで取り合いが起こったほどである。結局、カールスラントには残ったものの、カールスラント国民からは宝具がブリタリアの聖剣であることにブーイングが起こるなど、理不尽な批判にもあっている。とは言え、カールスラント皇室が解体の危機にあった時期であるため、彼女の存在は重要視されていた。共和論者からすれば政敵だが、ガリアが共和制の悪いところを煮詰めたような醜態を晒した末に早々に占領されたことから、人々は『共和体制』へ不信を抱いている。ガリア自身が貴族の権威に頼った(ノーブルウィッチーズ)ことも共和制への不信の表れだろう。そこもドイツ連邦共和国がカールスラントの連邦共和国化に失敗した理由である。結局、双方の納得する落とし所が立憲君主制しかなかったため、カールスラントとオラーシャの帝室はなんだかんだで(政治的実権は時代とともに喪失していっても)命脈を保ったわけだ。
「まぁ、かいつまんで言うと、アルトリアはこの世界におけるハインリーケ少佐だ。王位継承権を持つのも変わらん。違うのは、振る舞いだな。凛としているだろう?」
「ええ。話に聞くと、世間知らずの令嬢だもの、こちらでは」
ハインリーケはノブリス・オブリージュこそ意識していても、言動に子供っぽさが残る『世間知らずの深窓の令嬢』であり、指揮官・将校の器ではないとされ、カールスラント最強の一角でありながら、少佐で出世が止まっているなど、扱いに困る人物だった。だが、アルトリア・ペンドラゴンが実質的に成り代わった後は(王位経験者だったこともあって)『凛とした佇まい、騎士道の理想といえる高潔さ』を持つようになり、その方面のファンが増えた(当然ながら、エクスカリバーを用いての剣戟が主体になり、ハインリーケ本来のナイトウィッチとしての技能を維持していても使わなくなった)。ストライカーで空戦をすることは事実上無くなったため、ハインリーケ付の整備班が開店休業状態になってしまう結果となったが、振る舞いが常識的になり、凛としているため、上層部からはプロパガンダの観点から歓迎されている。
「そういえば、ハイデマリー大尉から話を聞いていた人物像と随分と違うような」
「彼女との交流は、この世界ではあまり。私自身、ナイトウィッチは引退状態ですから」
アルトリアは自身の能力の関係もあり、ナイトウィッチからは半ば引退している。(これはM粒子にナイトウィッチの探知魔法を阻害する効力があるのと、科学の力で生み出されたレーダーが探知魔法より広範囲を探知可能になった上、怪異と戦う事がそもそも減ったために運用意義が実質的に失われた)彼女の本領は当然ながら接近戦であり、黒江と調が持つ聖剣のオリジンの持ち主である。
「彼女こそ、聖剣のオリジンの持ち主だ。伝説の通りだよ。甲冑も先祖伝来のものだそうだ」
それらしく説明する坂本Aだが、アルトリアの甲冑はどう見ても、近世以降に生まれたプレートアーマーかプレートメイルのように見える。(アーサー王の時代にはチェインメイルはあっても、プレートアーマーのような全身を覆う甲冑は金属加工技術の都合で存在し得ない)
「先祖伝来のわりに、近世以降のものに見えるけれど」
「当然だろう?アーサー王は五世紀以前の人物だぞ。その子孫がいたとして、当時のものが残ってると思うか?扶桑でも、現代に残ってる鎧兜は室町か戦国期以降のものだ」
実際には魔力で構築し、実体化したものだが、ウィッチ世界の常識では、そんなことは不可能なので、坂本はそれらしく説明する。A世界では、そういうスキルを磨いてきたからだ。
「まぁ、そういうわけです」
苦笑しつつも、否定はしないアルトリア。一同は戦場となった街の様子を確認するが、見るも無残と言った様相だった。地ならしとバグで踏みにじられた街は郊外は完全に地ならしされ、避難を拒んでいた者たちの無残な遺体が放置されている。子供達が見たら吐いていたのは想像に難くない。
「これは……」
「別世界では、大量虐殺を行うのも手段が考えられた。これはその一つだ。私達の世界では、こんな光景に耐えられずに軍隊を去ったウィッチは数知れない」
「貴方達は……平気なの…?」
「不本意ながら、慣れたと言うべきだな…。いちいち吐いていては、この世界で仕事はできんようになったしな。それに、誰かがやらなければならんことだ」
坂本Aは吐き気に耐えるミーナBをよそに、慣れてしまったと自嘲しつつも、近代軍の兵士としての精神を持った事を明言する。ウィッチはそこも問題となったのがA世界だ。ステイタスを満たすために入った者、使命感だけで入隊した者は人同士の戦争に嫌悪を示す。それがサボタージュの要因だが、社会的にウィッチ排斥の空気を作ってしまったため、1946年からは人員補充の観点からは暗黒期であった。1949年まで現場に残っているウィッチはRウィッチかGウィッチ、あるいはダイ・アナザー・デイをくぐり抜けた部隊の在籍経験者であり、それ以外はダイ・アナザーデイ後の志願組、義勇兵、あるいは1945年に工科学校に入れられ、1948年に卒業した組であった。
「この世界は貴方方には残酷な世界です。ウィッチ信仰も薄れ、発達した兵器が主役になっている。ですが、その一方で英雄が求められているのです」
「英雄?」
「そうです。貴方方が元の世界で英雄視されるように、この世界では七勇士以来、そういった存在が求められるのです」
アルトリアはそう言うと、降下してきた敵兵士と戦闘に入る。エクスカリバーを用い、兵士を倒していく様は鮮やかの一言。伊達に英霊ではない。
「鎧を着て、あんな動きができるというの…?」
「言ったろ、彼女は円卓の騎士の一人だ。資格は引き継がれるからな」
ミーナBは圧倒されるが、突出した英雄が求められるのを良しとしない傾向があったはずの坂本が、この世界では『英雄』を肯定するのにも驚く。
「あなた、この世界では何があったの?」
「…フ、英雄は必要なのだ。人々を慰め、拠り所になるためにな。それがよくわかったんだよ」
坂本Aは七勇士の一人であったため、英雄の必要性をよく認識している。最も、リバウ航空隊の一翼を担っていたため、武子よりはプロパガンダに理解が元からあったが。
「扶桑でも集団主義の時代は終わりつつあるし、個人感状のハードルが下がった。武子さんを説得するのは骨だったよ。あの人は集団主義だからな」
坂本は武子を集団主義と評したが、武子も64隊長就任後はその傾向も和らぎ、個人戦果をそれなりに挙げている。(黒江から譲られた事を意識しているところもあるのは事実だが)
「精鋭は個人戦果も燦然と輝くものでなくてはならんからな。501はその条件に合致した。だから、統合が進められたのだ」
統合戦闘航空団はA世界では存在意義に疑問が持たれ、既に名声を持つ501以外を廃する動きが進んだが、統合戦闘航空団に配属されるほどの人材を浪費できない事、精鋭部隊は大規模かつ、数が少ないほうが費用対効果が高いと試算した日本連邦とアメリカ合衆国の主導で『501と他を統合する』案が進んだが、ミーナの起こした不祥事で、扶桑の64Fと更に一体化させる方向で固まり、最終的に武子が最高指揮官となり、黒江達三人は先任大隊長という地位についたのだ。
「だから、この世界では501以外の統合戦闘航空団がほとんど廃されたのね」
「506の設立理由が問題視されてな。それと、この世界でのお前がポカしたのだ」
「聞いたわ。凡ミスもいいところね…。書類の確認を怠るなんて」
「お前、こちらでは一時、本国で針のむしろだったからな。人種差別への目が厳しくなった時に、お前がやらかした。しかも、扶桑最高の英雄を人事書類も見ずに『使いものにならない』って決めつけた。危うく、国際問題になりかけたんだ。それでお前は全責任を取る形で指揮権の譲渡などをして、運営を黒江達に委ねた。それで扶桑の部隊が501を取り込む形になったのだ」
坂本AはミーナAの起こしたその経緯には自業自得と厳しく見ているが、『前の世代のエースが神通力をそのまま維持しているとは考えなかった』ことには同情した。特異すぎたとは言え、既に圭子や智子がその神通力健在なりと証明していた後にやらかしてしまったため、周囲からあまり同情されなかったミーナAの苦境を見てきたからだ。正に『軍人を目指していたわけではないためと、志願時期の都合で座学をロクにしなかった悲劇』と言えた。
「異例の降格処分になり、指揮官の地位も返上したから、お前は辛酸を嘗めた。だが、陸戦を勉強して、功を挙げることで再評価されてきているのさ」
まほの超人的努力もあり、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケの人物評はデザリアム戦役を経た後のこの時期には再評価が進み、階級も少佐へ戻っている。まほの得意分野が陸戦だったので、この時期では空中勤務者資格は維持していても、機甲部隊指揮官としての体裁が強い。
「だから、陸軍のタンクジャケットを着ていたのね?」
「そうだ。とは言え、統合軍編成が進んだから、書類上の所属は気にされんがな」
ミーナAは(人格の変化もあって)タンクジャケットか、黒森峰女学園の制服の改造服で過ごす事が常態である。それを知っている二人。二人は履いているユニットを吹かし、上空に上がって、戦場を俯瞰する。
「孤軍奮闘、か。貴方達も大変ね」
「連合艦隊の戦艦部隊に比べればマシさ。若い連中からは『海上海兵団』、『海上燃料タンク』だの陰口を叩かれていたからな。開戦後は第一戦隊以外は休みが殆どない状態で航海と戦闘と訓練の繰り返しだ。第一戦隊は動くだけで敵に決戦態勢を取らせてしまう。そこも苦しいところだ」
連合艦隊主力は実のところ、第一戦隊以外の戦艦は敵艦隊揺動などの目的で実は働き詰めであり、史実が嘘のように酷使されていた。そのため、大和型戦艦などは機関オーバーホールによるドック入りが二隻以上同時に生ずる始末だ。あくまで、連合艦隊全体は動いていないことを示すため、第一戦隊はよほどの緊急事態以外は動かないことになったのだ。これも主力艦隊の出動で敵の本格侵攻を誘発することを日本側が異常に恐れたためで、史実の連合艦隊を馬鹿にできなくなったことの表れである。とは言え、それは三笠型までの戦艦は自由行動が可能であることの裏返しであり、ドック入りの二隻を除いた大和型戦艦、播磨型戦艦、三笠型戦艦はこの時期より遊撃行動を開始している。予定を繰り上げてのゲリラ攻撃である。潜水艦の近代化などが遅れていた当時、ある程度の護衛艦隊を必要とする空母より、『単艦で高い戦闘能力を持つ』戦艦は超甲巡の護衛を伴い、史実のドイツ海軍じみたゲリラ攻撃を行うようになった。その関係で酷使される大和型戦艦は機関のオーバーホールが行われるに至っている。
「戦艦でゲリラ攻撃を?」
「敵もこうして行っているのだ。我々がやらんわけがないだろう?」
「でも、あれはやりすぎじゃ?」
「好きにやらせておくさ。ケイはこちらではぶっ飛んでいる人物だ。頭のネジが飛んでいる」
圭子はゲッターノワールGを操り、トマホークをブンブン振り回して敵を薙ぎ払う。三体のゲッターが更に一つになるため、ノアールGは通常のゲッターの倍以上の体躯がある。(ゲッターノワールは一機が38m級なので、それが合体した場合、ガンバスターに迫る巨躯になる。初代ゲッターの系列機がドラゴン号、ライガー号、ポセイドン号になるギミックも史上初で、敷島博士一流のアイデアらしい)
「だからって、あんなロボットを?」
「いいんだ。あいつらはパイロットも兼任できるんだから。黒江など、頼まれてテストしとるんだ」
圭子と黒江は機械いじりが得意だったため、智子と違い、すんなり機動兵器に慣れた。黒江など、その頑強さ故に、テストパイロットの引く手数多である。黒江は普段、スーパーロボットではゲッター乗りであったが、この時は炎ジュンの頼みと鉄也の気づかいもあり、グレートカイザーを駆っている。不遇の存在である同機を助けてほしいというジュンの懇願に折れた形だ。
「あれでテスト?」
「ああいう機体は暴れてナンボだ。私は戦闘機で精一杯だよ」
二人はいいところを見せようと奮起したのか、いつもより動きが良かった。芳佳Bはただ圧倒され、茫然自失の状態だ。芳佳Bは別の自分がプリキュア戦士になったことに腰をぬかしたものだが、黒江らのパイロットぶりには驚きぱなしだ。ちなみにマジンガーチームは女性陣との戦力差が大きくなっている事が不満点であるのも有名だ。ビューナスはせいぜい35万馬力。無限に等しい力がある皇帝達のパートナーには物足りない。地球製スペイザーはグレンダイザー支援用であるし、ミネルバXを友人仕様で再生産しようにも、肝心の設計図の状態が悪く、苦戦中である。その計画がマジンガーエンジェル計画に統合されその第一号となる、ビューナスAの後継機『アルテミスA』がロールアウトしたのはこの頃だ。それまでのパートナーロボと違い、マスタースレーブ式の操縦であるが、これはパイロットを引退していた弓さやかが再訓練の時間を短縮するために選び、ミネルバがパイロットスーのサイズを手直ししたという。(成長したさやかに現役時代のスーツを着せるのは、ビジュアル的に無理があるため)マスタースレーブ式は操縦者の動きを自然に反映できる反面、高度な機体設計が求められる。合体後のガンバスターに骨格があるのもそのためで、『操縦者の動きをトレースする』というのは高度な技術の証でもある。マシーン兵器とモビルファイターで実績がある技術であるため、地球連邦軍は機動兵器の操縦システムに導入を進めようとしたが、デザリアム戦役の混乱で遅延している。
「世の中には、操縦者の動きをトレースできる操縦系統のマシンもあるからな。コストが高いんで、普及には程遠いがな」
とは言え、ダイ・アナザー・デイでは『パイロットとしては二流でも、生身の戦闘者としては一流』の者達が活躍する上で助けになったのも事実である。キュアエースとガンダムスローネドライがその好例だろう。そのため、この方式はエース部隊には好意的に受け入れられていると言える。
「科学はそんな領域にまで」
「魔法の奇跡がないわけでもないぞ」
嘆息のミーナB。だが、次の瞬間、彼女は聖剣伝説の一端を垣間見る事になった。
「アルトリア、許可が出た。連中にあれを食らわせてやれ」
「オリジン・エクスカリバーの力をご覧に入れましょう。最近は閣下にお株を奪われてましたから」
アルトリアのエクスカリバーこそがオリジナルの聖剣であるが、最近は黒江が聖剣を撃ちまくるために、そのありがたみが薄れたと言われている。とは言え、本来の持ち主たるアルトリアの聖剣の威力は数ある派生系を含めても、上位の位置にあるのには変わりはない。
『俺の対軍レベルと本家の対軍団レベルの差が有るんだから、迂闊に撃てないのさ、陛下の『
「それはそうですが、エクスカリバーをホイホイ撃ちすぎです!私の沽券に関わります!!」
不満げなアルトリア。グレートカイザー越しに言われても説得力に欠けるからだろう。
『束ねるは星の息吹、輝ける命の奔流。受けるが良い!!』
アルトリアの膨大な魔力が一点に集中し、黄金の輝きとなって、聖剣を包む。それが臨界に達した瞬間。
『エクス………カリバァァァァッ!!』
――聖剣が満を持して放たれる。B世界のウィッチはその瞬間、言葉を失う。一人のウィッチが成し得ることを超越していたからだ。真・烈風斬すら遥かに凌ぐ剣技。坂本Bは遠目にそれを目の当たりにし、取り乱す。
「馬鹿な、あのような事が……できるものなのか!?」
戦場に立った魔力による光の柱は坂本Bを大きく揺さぶった。刀剣による奥義は東洋に多く伝わっていたが、西洋はせいぜいアンドラに『斬岩剣』が伝わる程度だとされていたからで、それを見事に覆された形である。坂本Bは禁じられた烈風斬へ未練があったのか、外聞関係なしに強く取り乱すというところを見せ、エーリカを呆れさせたという。