ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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ウマ娘が主役です。


第三百三十三話「願った『IF』~タマモクロス編~」

――何故、マジンガーZEROが赦されたのか?それは、ZEROがマジンガーZ以外の存在を認める方向に考えを変え、謝罪したからである。マジンエンペラーGとゴッド・マジンガー、グレンダイザー、真ゲッタードラゴンの率いるスーパーロボット軍団の攻撃で、邪神としてのZEROは滅んだからである。その後におけるZEROは『良心を得た上で生まれ変わった』存在で、どこかの世界で兜十蔵が目指していた『真・マジンガー』本来の姿に近い存在といえる――

 

 

「それで、どうなったのです?」

 

「説明にかなりの時間を要しました。する事が多くて」

 

D世界の装者たちへ明かせる範囲の情報を明かした一同。A世界はフロンティア事変以降の歴史が変化したものの、二つの事変は中ボス戦やラスボス戦の流れ、事変の終結の仕方が変わったくらいであり、大まかな流れは変えていない(イグナイトモジュールの実装など)。忘れられがちだが、二つの事変の間には年単位の時間がある。その間の出来事などを勘定に入れる必要がある。その間に、風鳴翼の純粋な実力、心意気を評価する機会が何度かあった。そうでなければ、黒江が後継者になり得る子に『翼』と名づける理由がない。また、翼の平時における顔である『歌手』の事も考慮に入れなくてはならないだろう。

 

「まぁ、あーやは戻るまでに、向こうで年単位の時間を過ごしたそうだけど、そこも説明した?」

 

「ええ。もっとも苦労しました。ドラえもんのタイムテレビの映像が役に立ちました」

 

「だろうね。演技と素を両立させる苦労もあったっていうし、並大抵の苦労じゃないしね。最も、件のあの子は途中で正気に戻ってたそうだけど」

 

「でしょうね」

 

「どうして、演技に気づいてないふりを?」

 

キュアミューズ(アストルフォ)には、一つの疑問があった。それは切歌が何故、『途中で正気に戻っていた』ことを隠していたのか。愛ゆえに……というのが単純明快な答えだが、単純な愛情以外にも、何かの考えがあるのでは?そんな疑問があるのだ。それはジャンヌも、アルトリアもあるようだった。

 

 

 

 

 

 

――こちらはウマ娘達。オグリが歴史に影響のない範囲で、現役時代のレース結果を変えたことを聞かされたタマモクロスは、ゴルシに頼み込み、自分が負け、『燃え尽きる』きっかけになった『とある年のジャパンカップ』の結果を改変する事を選んだ。タマモクロスの現役時代における心残りだったからだ。それにオグリも乗ったため、二人がジャパンカップに勝ったとしても、『歴史への影響』は大きくないのだろうということだった。その事を知ったシンボリルドルフは――

 

「なるほど、あれはゴールドシップが仕込んだ事だったのか」

 

「すまない、ルドルフ。先に君に相談するべきだった」

 

「ウチも同じや」

 

謝罪する二人。改変前と改変後の記憶の両立が成立する時点で、色々とツッコみたいが、あいにく、シンボリルドルフにはその才能はない。なお、ルドルフは『実力を認めた相手』であれば、そのウマ娘が自分の後輩であっても、『タメ口を許す』鷹揚なところがある。オグリキャップとタマモクロスは自分の引退後のターフを盛り上げた功労者であるため、ルドルフも二人のやることへ寛容を見せた。

 

「帳尻合わせは行われるだろうから、存分に暴れてきてくれ。タマモ。君の心残りを晴らせ」

 

「そのつもりや」

 

ルドルフは自分も当事者となることで、オグリの時のような事を避け、どういう風に推移するかを見届けたいようだった。後輩らのおかげで、世界のラフプレーにも対応できるようになっている状態で臨むわけだ。

 

「当事者はゴールドシチーも含めて、ウチらが示し合わせてるは知らへん。それに全盛期の状態+後の時代に生まれた技能と知識なら、雪辱は果たせるやろ?」

 

「そうか、それで…。あの時のオグリの力に、ブライアンのそれと同じ気配があったわけか…。タマモ。君は誰の力を借りるつもりなのか?」

 

「怪我をした後のテイオーや。不死鳥は炎の中から蘇るっつーやろ?」

 

「……雷と炎は両立するのか?」

 

「そこかいな…。雷の焔を操れる聖闘士がいるご時勢や。焔と雷のビジョンを見せりゃ、外国のウマ娘もブルるやろ」

 

その中には、凱旋門賞を全盛期に制し、引退後の種牡馬時代、サンデーサイレンス旋風の中でも、一定の成果を種牡馬として残したトニービン(史実におけるウイニングチケット、エアグルーヴの父、トーセンジョーダンの祖父、カレンチャンの曽祖父)のウマ娘も出走していたが、レース中に致命傷となる骨折をしており、そのまま引退に追い込まれていた。むしろ、それ以外のウマ娘こそが敵である。炎の翼と雷のビジョンを見せれば、西洋のウマ娘は怯える事は悟っている。オグリキャップとタマモクロスの両名が現役の頃、世界の一流ウマ娘たちが到達していた『領域』に到達した日本の現役の一流ウマ娘はタマモクロスのみとされた。だが、それを更に極限まで研ぎ澄ました状態で臨めば?

 

「歴史にIFを起こす…。エアグルーヴが聞いたら、卒倒ものだよ」

 

「タイムマシンのおかげや。それを起こせるのは。ウチがあいつに……そうやな、『オベイユアマスター』に勝ったところで、次の年のジャパンカップは『ホーリックス』に日本勢は手も足も出ない結果になっとると思うで。そうでなきゃ、あんたのかわいいテイオーがジャパンカップを勝ち抜くことが大事にならへんやろ」

 

「そのあたりはタマに譲ったよ。私は一回目の有馬を勝てれば良かったからな」

 

オグリキャップはジャパンカップについては、タマモクロスを勝たす事を選んだようだ。ジャパンカップの国際競走としての権威と威光は史実では、香港競走の台頭に伴っての衰えを見せ始めるが、ウマ娘の世界では、幸いにも権威が保たれていく。トウカイテイオーらの世代と『黄金世代』がさほど離れていないからである。

 

「私も同行しよう。私なら、とっさの事にも対応できるからな」

 

「マルゼンはつれていくのか?」

 

「ああ、本人が乗ればの話だ。今から誘ってみるが……ああ、マルゼンか?面白い話が……なに、カイチョーから、トレーニングを課せられた?それは残念だ。何、後でゴールドシップから話を聞いてくれ」

 

ルドルフは既に会長職を退いているが、ここでいう『カイチョー』はトウショウボーイを指している。マルゼンスキーは、先輩のトウショウボーイ直々にトレーニングを課されているため、抜けられないとの事。この日の午前九時、三人はゴールドシップに連れられ、過去に行き、その時間軸における自分をドラえもんの持つ道具で眠らせて、しばらく入れ替わった(この時は砂男式さいみん機を使用。死後硬直を起こした死人の目も閉じさせる効果があるという)上で、オグリキャップとタマモクロスはジャパンカップのIFに臨む。それを見守るシンボリルドルフ。

 

(まさか、過去に遡れるとはな。……おそらく……この観客の中には、テイオーやマックイーン、ハヤヒデとブライアンも混じっているだろう。彼女達に光を見せてやれ、二人共)

 

過去の自分を眠らせた上で『監禁』するには、ゴールドシップの存在が不可欠であった。そのことに苦笑しつつ、レース開始時刻を告げるファンファーレが響き渡った。

 

 

――レースの展開そのものは史実と大差ないが、海外のウマ娘お得意のポジション争いを受け流すことに成功した二人はいい位置につけている。二人だけが後年の知識を持つ状態なため、徐々にレースは史実からは離れていった。トニビアンカ(史実でのトニービンに相当)の脚が全力疾走の負荷に耐えられずに疲労骨折を起こし、失速していくのを見届けたタマモクロスは微笑いながら、敢えて挑発した。

 

「ワレの策はお見通しやぞ、オベイユアマスター?」

 

「……!?」

 

「ウチの趣味じゃあらへんへど、アンタの策は見切ってるで」

 

「……!?」

 

「アンタにフロックはさせんで。うちかて、まったくの無策でなぁ、アンタらを迎え撃っとるわけやない」

 

「……何故、私の事を!?」

 

「フフフ、企業秘密や」

 

タマモクロスはオベイユアマスター(史実でのペイザバトラーに相当する存在)の策に揺さぶりをかけ、動揺を誘う。タマモクロスにとって、オグリへの罪の原因となったウマ娘が彼女であったため、情け容赦なく叩き潰すことを選び、アグネスタキオンから教わった『ささやき戦術』を活用し、領域の発動を阻む。領域にさえ突入させなければ、彼女は『本国では芽が出なかったウマ娘』なのだ。

 

 

「さーて、この場は……ウチとオグリの舞台や。あんたらの出る幕はないで!!」

 

敢えて、その台詞を大仰に口にしたタマモクロスは、この時代には『領域』と呼ばれている『技能』を一気に開放した。それと同時に、オグリキャップもそれを全開放。海外勢と観客、取材陣、トレーナーらに凄まじい光景を幻視させた。タマモクロスに鳳凰のような翼が生え、同時に炎を伴った『真紅の稲妻』が奔る。オグリキャップも、その身を黄金、次いで、紫のオーラが包み込み、拳で地面にクレーターを作る光景を全員に幻視させ、稲妻を纏いつつの凄まじい末脚を見せる。

 

「な…に…!?」

 

他のウマ娘達は一様に凍りつく。そのビジョンは世界一流のウマ娘でも、そうそう得られないものを意味するからであった。なお、時間軸の都合上、オグリキャップはこの時が『領域と呼ばれる力に、不完全ながらも届いた』最初のレースとされた。盟友であったベルノライト、中央に来てからのトレーナーである老人『六平銀次郎』にとっては『知らぬ間に、領域に覚醒めつつあった』という風に映ったからだ。

 

「驚いておいでのようですね、六平トレーナー」

 

「……お前さんがわざわざ、こんなところに来るとはな。オグリのレースを近くで見たくなったのか?」

 

「ええ、まぁ……そんなところです」

 

「か、会長が自ら!?」

 

「特別席で見るのは、味気ないものでね。ベルノライト」

 

史実ではこの日は観戦していないが、近くに立ち寄っていたということになったシンボリルドルフ。歴史への介入により、業務の合間を縫って、お忍びで見に来ていたという流れとなった。

 

 

 

 

 

――雷は西洋文明圏の者たちにとっては、『最高神ゼウスの絶対的な武器』を意味する。それを速力強化に用い、肉体の限界まで能力を引き出すのが、ウマ娘の中でも上位の者の特権である。それに別の要素を加え、更に効果を強化するというのが、サンデーサイレンスなどの血を受け継いでいる世代の競走馬の魂を持つウマ娘らの時代には当たり前であるので、ここからの数年後までのジャパンカップは、非サンデーサイレンス系のウマ娘が制した期間の後期にあたる。(その後も、散発的に、オペラオーなどが制覇するが、ある時期からはサンデーサイレンス系ウマ娘の制する機会が多くなる)――

 

「悪いが、君たちの出る幕はないんだ」

 

その一言と共に、外国のウマ娘らを置き去りにし、一騎打ちに持ち込むオグリキャップ。それがオグリキャップが引退後も望んでいた夢であった。

 

「嘘……オグリちゃん……いつの間に…!?」

 

オグリの当時における盟友『ベルノライト』は驚愕のあまりに呆然とする。オグリがどう見ても、『領域』に到達しているとしか思えない輝きを発していたからだ。

 

「ルドルフ、お前は知っているのか?」

 

「ええ。ですが、彼女からの頼みで、詳細は隠しておいてくれと」

 

「どういう事だ」

 

「知らなければ、嘘をつかずに済みますから。恐らく、彼女自身も、条件は分かってはいないでしょう」

 

六平銀次郎からの質問に嘘を混ぜて答えるシンボリルドルフ。実際に、オグリキャップがそれに覚醒めるのは、ここから先の時間軸での事だからだ。そして、あの状態はオグリキャップ本来のものに、後輩のナリタブライアンのそれを上乗せした状態であるからだ。その力は海外勢を寄せ付けぬ程のものであるのは見ての通り。同じ『怪物』の異名を取ったもの同士であったので、相性が良かったのだ。

 

「ふざけるな……主役は……私だぁあああ!!」

 

オベイユアマスターが英語でオグリとタマモに罵声を浴びせ、不完全ながら、領域に達するが、タマモは『主役はウチや!!』と返す。引退後の状態なら、さすがに英語がわかるからだ。

 

「どういう事だ、タマモクロス!!」

 

「見ときや。これが焔の雷や!!」

 

日本語でそう宣言し、真紅の稲妻となったタマモクロス、紫のオーラを発するオグリキャップにオベイユアマスターは作戦のために斜行に打って出た事もあり、徐々に追従しきれなくなる。最盛期の肉体に引退時の成長した精神力と後輩から得た能力を上乗せした状態の二人には、不完全な覚醒状態では太刀打ちできなかったのだ。

 

 

――この時、二人は確かに世界へ『届いていた』――

 

 

怒号じみた歓声がレース場を揺らす。ターフビジョンのタイム表示も当時の記録を大きく上回るもの。如何に、二人の成長後の限界能力が高かったかの証であった。

 

「そんなバカな……。私の作戦は確かに的中したはず!!」

 

「アホぬかせ、あんな斜行、普通は降着もんや。アンタの力じゃ、ウチやオグリに普通は勝てへん。だから、ノーマークをいいことに、奇策に打って出たんやろ?それを打ち砕いてやったまでや。『さっきの借り』は返したで、オベイユアマスター」

 

「確かに、君はマークされていなかった。だけど、私とタマの勝負の場に、無粋な事はやめさせたかった。だから、『全力』を出したまでだ」

 

二人は思い思いに、史実の意趣返しとばかりの言葉を返す。オベイユアマスターは策を破られ、藁にもすがる思いでやってきた極東の島国で無様を晒す(それでも三位だが…)結果となった。オベイユアマスターはこの年のジャパンカップ優勝を逃したことになったため、次の年にも参戦するが、その年は後年に『オセアニアの英雄』と呼ばれるウマ娘『ホーリックス』と日本勢の一騎打ち状態になり、ホーリックスが日本勢を下す結果となる。オベイユアマスターはその中に埋没してしまうのだ…。

 

 

 

――こうして、オベイユアマスターは史実と違い、花道を歩むことは叶わなかったが、昇り龍状態のオグリキャップとタマモクロスに食らいついた功績は高く評価されたという。

 

「これで、おっちゃんにいい報告ができる…。オグリ、あん時はすまんかったなぁ…。」

 

「タマ……」

 

「これで、見に来とる『後輩』共にいいところを見せられたで」

 

「テイオーとマックイーンの姿は見えたが…、他にもいたのか?」

 

「ハヤヒデとブライアンの姿も見えたで。まだガキンチョの頃のちっこい姿やけど」

 

 

「……本当だ。まだ小学生か?」

 

「ブライアンにも、かわいい頃はあったんやな」

 

「確かに」

 

当時、既にトレセン学園で地位を築いていたオグリキャップとタマモクロスと、ビワハヤヒデ、ナリタブライアン姉妹は年齢がそこそこ離れている。ウマ娘は成長期を迎えると、一気にレースに適した肉体に成長するが、能力面の衰えについては個人差にもよるが、突然やってくる。オグリやルドルフ、マルゼンでさえ、外見は最盛期と変わらないように見えても、能力の衰えは突然に顕現する。ミスターシービーがルドルフに太刀打ちできなかったのも、『衰え』がルドルフの台頭とぶつかったからで、その悲劇性もあり、殊更に強調された面はある。

 

「だから、ゴルシはあの力で限界を……いや、運命を超える事を?」

 

「サラブレッドは元々、生物としての寿命と、レースで走れる長さが反比例しとる種族やった。レースに勝つためだけに、人がに交配を繰り返したからなぁ。その宿命まで背負うことはない。ゴルシはそう信じて、ゲッター線に魅入られたんやろな」

 

「宿命を超えろ…か。私達はその端緒にたどり着いたのか?」

 

「さわりの部分だけや。それに、全員がこの選択を望んどるわけじゃ、あらへんやろ」

 

「確かに…」

 

「あんたら、何話してんの?」

 

ゴールドシチーが話しかけてきた。史実では悲運の最期を遂げてしまうわけで、その宿命が彼女に形を変えて顕現するのなら、『選手生命を喪う』事が予測されている。

 

「ああ、オグリと飯を食いに行く話やー。残念やったな、そっちは」

 

「あんたらが速すぎだっての」

 

ゴールドシチーは入着も叶わなかった。世界線によっては、オグリと同期になるゴールドシチーだが、少なくとも、ドラえもんらの介入のあった世界線では『タマモクロスの同期の古参』のポジションであった。

 

「シチー、良ければ、ライブの後に一緒に食べに行かないか?全力を出したから、腹ペコなんだ」

 

「ふぅん。なら、アタシがあんたらの面倒を見ないとね」

 

「恩に着るで~!」

 

二人がやけに親しそうにしているのが気になったゴールドシチーであるが、ここのところ、二人がお互いを意識していた事は知っていたし、レースで友情を深め合うのは、さほど不自然でもないため、その場は流した。だが、後年に『タネ明かし』をされた時には、大いにぶーたれたという。

 

 

 

 

 

 

(二人は心残りを果たした…。私は……なんだろうか……)

 

「浮かない顔だな、会長さん」

 

「ゴールドシップか。」

 

「あんたの願いも聞いておこうか?」

 

「レースの場での悔いはないさ。ただ、家族とあまり語らう場が無くなってしまったのがな。両親と、二番目の姉は厳格だったからな」

 

「電話で怒られたっていう、あんたの二番目の姉貴か」

 

「二番目の姉さんは……特に厳しくてな。子供の頃から苦手だったんだ。上の姉……フレンド姉さんのほうが好きだったんだ、実は」

 

ルドルフは一人になった観客席で、ゴールドシップへ自らの弱さをさらけ出した。ルドルフは二番目の姉『スイートコンコルド』と折り合いが良くない一方で、長姉の『シンボリフレンド』からは可愛がられていた。第三子でありながら、シンボリ一族の次期後継者を期待されたルドルフは、シンボリの名を持たぬ次姉からひどく疎まれた節があり、長姉のシンボリフレンドを悩ませた。ルドルフのトレセン学園入学時に会長であった『トウショウボーイ』に庇護を依頼したのは、ルドルフの母と噂されるが、実際には、レースからの引退間もない頃の長姉『シンボリフレンド』がトウショウボーイに頭を下げていたのである。長姉のシンボリフレンドは『秘めた素質』は三妹にも劣らなかったともされるが、レース時の気性がすこぶる荒く、そのせいで大成を阻まれた。シンボリ一族の中でも気性難が多い世代なため、比較的に冷静沈着なルドルフは突然変異的なものとされている。また、一族の気性難の血故か、シンボリ一族のウマ娘達の多くは大成できなかった。中には、メジロ家とシンボリ一族の双方の血を受け継ぐ『メジロリベーラ』のように、『期待はあった』が、虚弱体質に育ったために怪我をしやすく、レースするどころではなくなった者もいるなど、『ダメな時はダメ』がハッキリする血筋である。ルドルフとシリウスの他には、分家筋のシンボリクリスエスが大成するが、それは後年の事だ。

 

「まー、厳格な姉ってのは、憎まれ役さ。あんたとシリウスには、『シンボリクリスエス』って後輩ができるじゃないか。アメリカ生まれの」

 

「アメリカの分家にいる子か。そんなにすごいのか?」

 

「ああ。デビューの暁には、天皇賞・秋、有馬記念を連覇する。あんたほどじゃないが、シリウスよりはよっほど、偉い子に育つよ」

 

ゴールドシップはシンボリ一族最後の雄『シンボリクリスエス』の存在を教えた。代々に渡って、気性が荒い者が多い上、自身も嫌な思いをしたことも多い、シンボリ一族に嫌気が差していたルドルフに希望を与える。ミスターシンボリのように、大器晩成型であったのを見抜けずに、トレーニングで体を壊した結果、秘めた素質が開花せずに終わった例もあるなど、ルドルフとシリウスの後の世代の『シンボリ』はぱっとしない者が多い。件のシンボリクリスエスは『シンボリの分家の子』として、ウマ娘世界にいるようで、面識があるようだった。その子は長じた後、シンボリの名を持つウマ娘としては、ルドルフ、シリウス以来、久方ぶりの輝きとなるが、それはここからも、ルドルフらの来た時間軸からも、更に未来のこと…。

 

 

 


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