ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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1949年~序章編です。


第四百四十五話「1949年~序章~7」

――扶桑はせっかくラインを設けていた双発爆撃機がジェット機の発達で無用の長物とされた事に憤慨したが、民間機に転用され、ひとまず費用は無駄にはならなかった。問題はその代替になるジェット機である『F-111』はレシプロ機に比して格段に大型であるため、基地の設備の大型化をせねばならないところである。(同機は第二次世界大戦当時の四発爆撃機相当の大きさであるので)扶桑はレシプロ機が役に立たなくなる時代を見越し、ジェット化を急いだが、機体規模がレシプロ時代より相当に大型化してしまう事に悩んでいたが、それは技術発展の上での必然である。橘花や火龍があくまで『シュワルベの劣化コピー』の範疇に留まったのに対し、戦後型ジェット機はアメリカ製のものが主流である。扶桑はそれも『一つの結果』と受け入れ、次第にリベリオンと共同で航空技術を発展させる役目を担う。亡命したカールスラントの技術者が研究成果を手土産に、扶桑にノウハウを提供したからだ――

 

 

 

 

 

 

 

 

――彼らの献身により、扶桑は航空技術を飛躍させた。カールスラントは技術立国の地位をこうして失っていき、代わりに扶桑が(不本意ながら)超大国への成長を始める。それは『アメリカ合衆国の役目を果たせる者を魔女の世界そのものが求めた』故の必然であった。扶桑はそうした事情でシンボリックなものを求めるようになり、部内の反発を押さえつけてでも『英雄』を演出するようになる。その最初期の事例が七勇士の実像の啓蒙活動であった。『沈黙は金なり』が通じない西洋の人間たちには、自分の実力を見せるほうが早いのだと、扶桑軍人が完全に理解するには、太平洋戦争を待たねばならなかった。特に、地球連邦の誇る最高のエース『アムロ・レイ』がカールスラントのエース(ルーデル含め)がなし得なかった『単騎で戦局を動かした』事から、シンボリックな存在に扶桑が傾倒を強める理由ができた。(七勇士の存在は、1945年当時にはおとぎ話とされたため)、七勇士の本人達が『往時と変わらぬ能力を保っている』事がダイ・アナザー・デイで示され、魔女の多数派の予想に反して孤軍奮闘すると、過度に集団主義に傾倒した海軍系の魔女たちは立場を失い、テロリズムに傾倒。ついには大佐になっていた者が(裏で未来世界の影響を排除しようとした誰かに唆された)クーデターを主導するのである――

 

 

 

――軍は魔女のおかげで、今日の国の繁栄がある事をよく認識しており、オラーシャでの惨劇も鑑み、魔女の取り扱いには慎重であった。坂本は生え抜きの魔女が絶えることを危惧した。年長者が自然と抜けていく社会が当たり前だと認識していたところに、『恒久的に魔力を維持できる者』が何人も現れれば、自分達は『現代人がそれ以外のヒト族を駆逐した』のと同じようになる(される側)のでは?』という恐怖を抱いた(ニュータイプへのクルスト・モーゼス博士と同じようなもの)故の使命感による暴走が起きると考えたからだ。坂本はその心境を理解していたが、種の進化の過程で生ずる必然であると割り切り、彼女らを『魔女の社会的地位を守るための生贄』にした――

 

 

――1949年――

 

「美緒、あなたはなぜ、生え抜きを重視しているの、こんな情勢で」

 

「戦時になる度にだな、いちいち兵を雇っていては、いくら金があっても足りない。生え抜きを少数でも育成していれば、いざという時に迅速な対応が取れるからだよ。黒江達が在籍しているうちは良いが、50年、60年後になってみろ。戸籍上の年齢の都合で、事変世代は軍を辞めている。私達に孫やひ孫がいるともかぎらんだろ?子供は軍に入るほうが少ないだろうし」

 

会食の席で、坂本はミーナBに言う。

 

「どうして、そんな事を?」

 

「前世ではそうだったからだ。子供は親と反対の道を行こうとするものだよ、ミーナ。その場合は孫が名跡を継ぐものさ」

 

「あなた、私の知ってるあなた自身から変わったわね」

 

「黄泉の国を見てくれば、な。数年前のクーデターには少なくない同期が同調していたが、私は彼女らと袂を分かった」

 

坂本はミーナBと時たま会食をするようになった。同僚から「なぜ、生え抜きを重要視するのか」と揶揄されているが、坂本は生え抜きの育成に信念がある。それは現時点で軍を支えている世代が去った後の時代のことを考えているからだ。自分達は1980年代半ば頃には、定年退職を迎える年頃となる。それを理解しているからこそ、育成ノウハウの維持が必要であると考えているからだ。

 

「今はいい。黄金世代がまだ若年だからな。だが、数十年後まで全員がいるとは限らん。私は数十年先の事を考えているのだ。大和民族は問題を先送りする傾向があるからな。誰かが手を打っておかんと、数十年後に大慌てして、その頃の現役世代や子どもたちにしわ寄せが来る事はありえるんだよ」

 

坂本は数十年後までを見据え、自分は育成ノウハウを後世に伝える役目があると熱弁を奮った。今回の歴史では、坂本は伝導者の役目も背負うと意気込んでおり、本職は管制官だが、軍の教本の作成にも携わる。坂本は前世での今際の際に『孫が手本なしに戦っていけるのか?』という心配をしていたので、今回の歴史では、孫の世代に『良い手本を残す』という思いも抱いているようだ。

 

「前世では、孫が飛ぶ姿は見られなかった。同時に、自分が隠棲生活だったせいで、先生……いや、諸先輩方から教わったものを伝えなかったせいで、子の世代に苦労を強いた。黒江達は戦時の英雄だが、平時を迎えれば邪魔者だ。故に、身内から後継者が出るのを待たなければならなかった。それはある意味で不幸だ」

 

坂本は黒江達が『自分の隠棲していた期間も、ずっと戦い続けていた』ことに強い罪悪感を感じていた。同時に、平時になれば、英雄うを疎んじる姿勢すら見せる『1960年代以降の政治家』に嫌悪を抱いていた。故に、黒江達の邪魔をするのであれば、同期や先輩であろうと冥府に叩き込む。坂本はそう決めていた。

 

「あなたは何を目指しているの」

 

「魔女が21世紀になっても、今のような暮らしができるようにするだけだ。今の魔女は『地位にあぐらをかいた自堕落者』が大半だ。これでは、大衆が他の異能を褒め称え、魔女へ厳しい目を見せるのは当然だ」

 

「四年前の作戦のことね?」

 

「そうだ。四年前、魔女達の多くは黒江達が異端だからと、最前線中の最前線で孤立無援にした。だが、あいつらはそのパワーで物量の差をひっくり返した。魔女としては『平均より上』程度の力だったあいつらが、『伝説通りの異能』で……」

 

扶桑の魔女閥の多数派には皮肉なことだが、黒江達は技を磨き続けていた。その成果は魔女としての力だけではなく、色々なものが混じり合ったものである。未来世界の支援は得ていたが、64Fの存在はダイ・アナザー・デイを勝利へ導く原動力であった。

 

「魔女である事自体が目的となった奴らに、あの戦いを審判する資格などないよ。未来世界の兵器すら平然と使われた、あの地獄を戦い抜いた者だけだ、意見を述べる資格があるのは」

 

ダイ・アナザー・デイで黒江達が『魔女』として戦わずに『聖闘士』、或いは『超エネルギーの使者』としての顔を前面に押し出していた事を非難する声は魔女のコミュニティにはそれなりにある。その出どころの多くは『志賀少佐を輩出した期の海軍の魔女達』。ダイ・アナザー・デイには参戦すらしていない者が多い。坂本としては『ダイ・アナザー・デイに意見を述べる資格を持つ当代の魔女は当事者のみ』と考えているので、参戦すらしていない者に後から言われるのは許せないようだ。

 

「意見は言うだけなら、タダだ。それは否定せんが、後から、外野にとやかく言われるのは、当事者としては気分のいいものではないよ」

 

「矛盾ね」

 

「あの戦場はある意味、未来世界の支援で以て初めて、成立していた。敵は正面兵力だけで、連合陸軍の総軍の倍を超えていた。おそらく、一国が単独で用意できた兵力としては史上最大だったはずだ」

 

「どの位?」

 

「恐らく、リベリオンの軍隊の過半数を動員していただろう。兵士は100万を有に超えていた。航空隊と海軍、海兵隊を合わせれば、恐らく、連合軍が欧州全体に置いていた全軍を数の暴力で呑み込める数がいただろう。あいつらはそれを撃退した。未来世界の支援を得てな」

 

 

ダイ・アナザー・デイの敵兵力は史実のノルマンディーを更に上回る規模であり、連合軍は未来世界の支援を以ても、敗北は必至と考えていた。だが、64Fが大方の予想に反して孤軍奮闘。単独で地域を支え、地球連邦やヒーローユニオンの支援で陸軍も士気を立ち直し、逆に戦線を押し返し始めると、連合軍は反攻の中心を扶桑の空・海軍と定めた。未来世界の装備を有する扶桑の空・海軍はまさに一騎当千。大和型が海の王者として君臨し、日の丸の後退翼ジェット戦闘機は『新時代の象徴』とされた。逆に言えば、それ以外の部隊は形だけ整えておけば良い。少なくとも、日本の大衆はそう判断した。これにより、日本側による陸軍への冷遇は(史実の大敗の記録もあり)拍車がかかったが、カールスラントの有能な人材がそれを阻止した。

 

 

 

「日本……21世紀の世界の別の道を辿った我が国だが……はその後に我が国に強く出て、陸軍の予算を削ったからな。慌てて増やしているが、陸軍は予算を増やしたくらいでは強くできんよ」

 

日本連邦は以後、伝統的に陸軍を削り、空海を重視する傾向が続くが、冷戦を迎えた後は歯止めがかかり(核兵器がないため)、太平洋戦争当時の兵数を基準に、定数が定められる。こうして、大陸領奪還は実質的に棚上げされたが、ハワイ諸島の獲得は(実務者の間で)目標となり、ハワイ攻略は太平洋戦争の遂行で一つの目標となる。

 

「先方はこの世界で無人機が使えないことに苛ついているが、有人機でさえ、怪異と間違えられた事があるのに、無人機などはな。それで揉めたのだ、四年前に」

 

「私達は無線操縦の機械も見慣れてないもの。本を見たけれど、21世紀の最新世代の飛行機は怪異と遠目には見分けられない。それでしょ?」

 

「うむ。その時代の戦闘機は低視認性や対レーダー技術の関係で、従来の飛行機とはかけ離れている形をしている。それで、誤射が頻発したんだ。それで魔女達から要請が出されてな……」

 

ダイ・アナザー・デイで第五世代機があまり用いられる事がなかったのは、『姿が怪異によく似ているから』という理由で誤射が頻発し、少なくとも数機がお釈迦にされたからである。史実第二次世界大戦中の連合軍機のように『視認塗装をすべきだ』という意見もあったが、日本も少数しか保有しない『F-35』をインベイジョンストライプに塗り直すことに反対論が大きく、結局はそれ以前の第四世代機が主体になり、様相もM粒子の存在で、第四世代以前に想定された『目視での空中戦』が主体であるとわかると、空自のF-35は早期に引き上げられ、現地部隊では黒江が調達したF-20やF-14、ドラケン、クフィールが消耗品として使用された。

 

「私の後輩に志賀という奴がいるんだが、こいつがカタブツでな。四年前の戦の時、部隊を勝手に離れた。それで私の原隊変更の話はなかったことにされた。それで私はそいつが投げ出した仕事を引き受け、64Fに居残った。海軍には『エースといった称号はなく、全て共同戦果として考えるのが伝統』というのが後輩らに拡大解釈されていてな。それで、海軍航空隊の存廃にまで話が大きくなった。志賀は重臣らに『部内で隊員が撃墜数の優劣を言い合う分には、士気の維持のために構いませんし、戦闘詳報を見れば、誰が戦果を挙げたかがわかるはずです!』と宣ったそうだが、軍令部に個人戦果の記録は残っていない。それで銃後へ活動を啓蒙するのに、不都合が出たんだ」

 

志賀は戦闘詳報への国民の信頼度が低下し、軍令部に記録が残っていない事に考えが及ばなかった。結局、彼女は重臣らに批判され、罷免を免れないと思われたが、臨席していた天皇の慈悲で処分をなんとか免れた。だが、海軍航空隊の二枚舌の運営方針は天皇自ら、それを批判するに及び、海軍航空隊自体が政治的に窮地に陥ったのである。

 

「不文律が国際的な活動の足かせになったわけね」

 

「そうだ。既に、リバウ時代の私らを三羽烏と報じた後だったし、陸軍魔女の三羽烏は外国で『レイブンズ』と呼ばれ、扶桑の武威を示していた。志賀は駐在武官の経験もない、典型的な『戦中に任官された士官』でな。組織を間接的に辱めた。陸軍航空隊が空軍の母体に選ばれたのは当然の流れだった」

 

数の上では海軍航空隊のほうが規模が上であった。それは空母航空隊が陸に上がっていた『空地分離方式』によるものだが、同形式には日本的な『血の通わない編成』という批判が(日本軍出身の義勇兵など)あった。とはいえ、米軍などでは太平洋戦争当時の時点で当たり前の方式である。日本軍で機能しなかったのは、日本特有の書類や通達の不備によるものである。結局、その手の批判に萎縮した統合参謀本部の判断で、大規模な部隊の移動が避けられるようになったため、部隊の人員の増員などに現場が苦労する羽目に陥り、空軍は64Fへの依存を強めてしまう。(ミーナの不祥事がそれを増強する効果を生んでしまった)その緩和を進めていたはずが、日本軍義勇兵の源田への批判により、その作業が停滞する有様に陥ってしまった。日本軍義勇兵も流石に、自分たちの上層部への批判が、64Fに負担が過剰にかかる状況の助長になってしまった事を後悔し、彼らは自ら志願し、南洋に赴き、戦うことになった。

 

「結局、空地分離は軍事的な理由で続けられたが、海軍出身者の空軍での立場は限定的になった。上に文句ばかり言って、目の前の敵を軽んじたからな。志賀はその状況を決定づける一打を担った。結果として、な。あの期の連中には悪いが、罪を償うために、死んでもらう」

 

「あなた、冷酷になったわね」

 

「冷静になったと言ってほしいな。あの期は結果として、魔女の立場を悪くしたんだ。相応の報いを受けさせるだけさ」

 

坂本Aは政治的な働きはあまりしないが、志賀の期の意固地さのせいで、魔女全体を見る目が一気に冷却化したことへの報いを受けさせると述べた。実際、魔女として普通の辞め方が『根性なし』と農村部を中心に誹謗中傷されるようになってしまい、魔女は軍を自らの意思で去ることも難しくなり、一般の中・高等教育を受けていないという理由で『一般社会の一員になれない穀潰し』と見なされてしまう風潮が生まれてきており、通信課程での大学の卒業が推奨されるに至った。当たり前だが、1940年代の時点で大卒という学歴を持つというのは、社会的エリートの資格を持つ。華族の当主でさえ、そう簡単には得られない『ステータス』だった。(大学院は戦後に定着したので、扶桑には存在しない)時代的に『高い学歴は都会人や豪商・豪農などの富裕層の子弟が持つもの』という認識が強いため、農村部にとっては『いらん知識をつけてくる』という事で、高学歴者は嫌われていた。だが、それが却って、農村の衰退を加速させていくのである。

 

「未来世界のような学歴社会が根づけば、農村の思想は自然に淘汰されていく。それも分からんのが、今の20から22歳位の連中だ。社会が変われば、軍隊での経歴などは一段下に見られるというのに」

 

日本などでは軍の最高教育機関であった『陸軍大学校』と『海軍大学校』卒業という経歴は逆に『頭でっかち』と揶揄されるものであり、1940年代時点で将軍/提督である者であろうと、日本の官僚からは(影で)小馬鹿にされるくらいのものだった。これは双方の大学校は後世には『人事の硬直の理由』とされているからだった。

 

「扶桑ではそうなるの?」

 

「価値観がガラッと変わる出来事があった場合はな。だから、後輩たちには通信課程を薦めている。他の世界と交流が進んでいけば、中学校も出てない者など、相手にもされんよ。制度が変わって、新制の中学、高校、大学を出た者が増えていけば、小卒で雇ってくれるところはなくなる。子供でもわかるぞ」

 

坂本Aは後の学歴社会の訪れを予期していた。戦争がやがて終わり、平和が根づけば、新制度のもとで育った者がそれ以前の世代を『追い抜いて』社会の中枢に着くであろう光景も起こる。似た例に、文化大革命後の中国で『文革で紅衛兵だった者達が壮・老年期を迎えた後、高等教育を受けた若い世代にこき使われ、自らは社会の中枢にはつけない』事例があるが、そのようなこともありえるのだ。

 

「だから、彼女らは阿呆なんだ。新制度で育った者達が多数派になる時代を迎えれば、小卒も怪しいような学歴では、どこも雇ってくれん。要求される知識も飛躍的に多くなるし、ましてや、国内勤務しか経験していない者は語学もさっぱりだろう?」

 

日本連邦では、この時代に扶桑の学制改革で新制中・高・大学が生まれた事による混乱への対処に資金を必要にしたため、軍事予算は削られていた。だが、扶桑は現在進行形で戦争中であるため、特別予算という形で、軍事的に必要なものが賄われていた。

 

「確かに」

 

「戦争だからと、無制限に金を使えるわけではない。銃後の生活を守らんと、軍の怠慢だと叩かれる。民主主義と言うのは、一歩間違えれば、衆愚政治に落ちるし、厄介ですらある。世襲を批判していた者も、いざ自分が病気になると、子に地盤を継がせたりするだろう?そういう事があるから、民主主義はある意味では専制政治よりも腐りやすいものだ。ガリアがそうだったろう?」

 

坂本は民主主義の難点をガリアで見てきたため、民主共和制を嫌っている。その事は隠してはいない。拠り所がない民主共和制は実に脆い。扶桑は有史以来の皇室という拠り所のおかげで、国が乱れても、一定のところで踏み留まれたというのは、扶桑全体の意識として存在する。ガリアは開戦当時の政府と軍部の無能がいけないのである。マジノ線を迂回されることで狼狽し、対応が後手後手に回り、組織だった疎開に失敗し、世界四位の海軍力は失われた。ド・ゴールはその早期再建を目指していたが、ペリーヌの猛反対で予算が通らないという事態になっていた。ペリーヌは純朴に『国民自らの手での再建』を望んでいたが、さすがに国民の不満が蓄積していたため、資源援助を渋々であるが、受け入れた。これはガリアきっての名馬が日本連邦の馬主に買い取られる事件が起こり、その内の数頭をガリア国家が緊急でその倍の値段で買い戻すという(その子を無条件で日本連邦に引き渡すという条件で)案件が起こり、問題になっていたからだ。遊興費すら出さないのかと批判を浴びたペリーヌは『遊興は国家が口出すものではないのです!!』と反論したが、国家の援助なしには立ちいかなくなったものは多く、結局は彼女が折れる形で、イベントの開催などを補助する予算が付くことになった。ペリーヌは自力での国家再建を理想としていたが、ガリアには『自力で国家を立て直す』気力は残っておらず、現実路線に切り替えざるを得なかった。無論、ペリーヌも『自力で今のガリアを恒久的に賄える資源は確保できない』事は知っていたが、旧式や放置されている兵器を解体し、資材をリサイクルすれば『数年は持つ』と見込んでいたからだが、実際には軍の反対などで上手くいかず、地球連邦の援助を数年越しに受け入れた――

 

 

「ペリーヌは政治で苦労しているよ。日本の復興の事例を知った故に、『同じような事がガリアにもできるはず』と思ったんだろうが、国民は目先の暮らしの方が大事だからな。あいつの志は理解されんよ」

 

ペリーヌは後世、この時期(1945年からの数年)の行動を指して『世間に無知な元貴族の令嬢の戯言』と批判されることになったが、ペリーヌは『国家再建の苦しみを味わってこそ、真の国家再建になりますのに』と嘆いたという。とはいえ、現実には『国家秩序の維持すらおぼつかない』という問題があり、ガリアの地位低下を国民が認めないのも、ペリーヌの誤算であった。要は国民の意志が『国家再建に手段を選ぶな』となったので、ペリーヌは妥協せざるをえなかったのである。日本の成し得た『不死鳥のような、自力での復興』は鉱物資源の貯蔵量が減っていたガリアの国民には荷が重かったのである。ガリアは資源援助が始まった事により、精神的余裕を取り戻し始める。しかし、軍事研究の遅れは否めず、非合法手段を含めた諜報活動で史実で戦後に於ける仏の戦闘機であった『ウーラガン』、『ミステールシリーズ』、『ミラージュⅢ』の基礎設計や概念図を入手できたものの、それらを現実にできる耐熱合金を持つジェットエンジン、機体を構成する素材の開発に手間取っていた。それを最も支援すべき立場にあったはずの仏と同国政府は同位国に冷淡であったが、彼ら自身も財政的に苦しいからであった。

 

「軍事的な復興を優先させる事を、ペリーヌは危惧していた。植民地への示威に再利用するのでは?とな。だが、かの国のプライドはペリーヌが思う以上に高い。扶桑が世界一にのし上がる事を認めはすまい。だが、彼らには『ペーパープランになっていた』何種かの超弩級戦艦を早期に完成させる力は残ってはいないよ。43cm砲がようやく実験段階に入ったそうだが、こちらは既に、56cm砲の量産段階だよ」

 

「56cm砲……」

 

ミーナBは息を呑む。艦載砲としては、カールスラントは戦前に40cm砲の実験段階であったところであった。列車砲では80cm砲の例があるが、艦載砲はハードルが普通の砲より高い(プラットフォームになる船体の設計もある上、大洋艦隊の悲劇以降、ここ二代の皇帝の方針で陸軍と空軍に力を入れていたため)ため、カールスラントにはそんな巨砲を船に積む力はない。ナチスは『大戦に勝てた』世界で作ったものを持ち込んでいるが、その内の一隻の調査で『カールスラントより20年分は造船技術で先んじている』という衝撃がもたらされている。扶桑は未来世界の技術でそれに対抗。敵の旗艦と互角に戦うために『56cm砲』に行き着いた。艦載砲としては、その辺りが実用上の限界点なのだ。

 

 

「56cm砲は弾丸も相応に強化されている。恐らく、この世界の装甲板では防げまい。炸薬も超高性能だからな」

 

「別の世界の技術を?」

 

「そうだ。そうでないと、敵には対抗できんかったからな。造艦競争の終着点だな」

 

56cm砲は実体弾の艦砲としての機能の他、プラズマショックカノン砲塔の機能も備えており、あの宇宙戦艦ヤマトやアンドロメダを上回る攻撃力を持つ。その理由は、三笠型以降の新戦艦は動力にハーロックのもたらした『小型改良化された波動エンジン』が存在しており、合成鋼Gを用いた変形機構で艦尾構造を偽装し、普段は補助機関で稼働している。これは播磨~三笠型の当時は宇宙戦艦の取得を通せるか不透明だったからで、実際には宇宙戦艦ヤマトのノウハウを用いて造られた『宇宙戦艦』である。

 

「他の国は?」

 

「流石についてこなかったよ。戦艦にそこまでリソースをつぎ込む必要はないからな。大和型と同等クラスを作れた国でさえ、数える程度だ。我が国とブリタニア、リベリオンが大規模な戦艦部隊を維持しているからこそ、他国も戦艦を持ち続けているに過ぎん」

 

戦艦の価値は本来、ミサイル装備の実用化で完全に無くなったはずであったが、M粒子の軍事利用で『ミサイルの命中率がグンと低下した』事、怪異には『高速回転運動する砲弾が最適な対処手段である』という研究結果などで生きながらえた。また、装甲技術の飛躍でミサイルに耐えられるようになったこと、空母の高額化による負担は『並の国では耐えられない』という事実の判明が決定打であった。日本連邦はジェット戦闘機を載せられる空母の自国生産を急いだが、300m超えの巨艦を護衛艦隊ごと生産するのは骨であり、結局、大戦型のような量産と大規模運用は夢物語であった。そのため、扶桑も空母の全刷新は諦め、比較的に艦齢の若い大戦型を使い倒す方針を取った。

 

「もう一つはジェット戦闘機を艦上機として、大規模に運用するには、300mを超える規模が必要になるということだ。ジェット戦闘機はレシプロ機とは比較にならんくらいに大型化していく。20m超えはざらだ」

 

「嘘……」

 

ミーナBは絶句する。レシプロの双発爆撃機相当の大きさがジェット機ではざらになり、14mで小型扱いである。カールスラントが想定していたことなどは児戯に等しいと悟った。

 

「太平洋の大海原で戦う事を想定している我々と、お前達の国は想定していた任務が違うだろうが、空母はショーケースの見世物とは違う。恐らく、この世界では持てるだろうが、我々のような運用はできんよ」

 

カールスラントは疎開後の地政学的都合もあり、空母の保有が認められたが、色々な柵もあって『まともな運用はできない』だろうと見積もられている。カールスラントは空母を『戦闘機と急降下爆撃機を洋上で運用できるようにするためのプラットフォーム』と考えていたが、それは日本連邦やリベリオンに比して旧態依然とした思想である。急降下爆撃そのものが廃れ始めたためもあり、カールスラントは空母艦載機の選定で混乱する事になる。そのため、小国は空母の保有を次々と諦めていく事になり、ブリタニアも財政難で空母機動部隊の拡充を諦めていくので、扶桑は否応なしに超弩級空母の保有をせねばならなくなった。その事でブリタニアの駐在武官と日本の財務官僚が口論になったという。ブリタニアは戦艦部隊の縮小と空母機動部隊の拡大を進めたものの、結局は財政上の理由で多くの計画が放棄されていき、ブリタニアは超大国から次第に転落していく。日本連邦は魔女世界の他国の衰退により、相対的に超大国にならざるを得なかった。

 

「今後、ブリタニアは経済から衰退をし始める。我が国はその代わりにならざるを得ない。お前達の世界でも、遅かれ早かれ訪れる。こちらは『連合軍で健全な財政状況なのが扶桑しか無くなった』から、扶桑を世界が神輿にし始めた。お前たちの世界のリベリオンも、近いうちに次代の超大国となるだろう。あの国は本来、そういう宿命を持つ」

 

「カールスラントは転落するの?」

 

「地盤が脆すぎるからな。この世界では別の世界の介入で軍人の多くがクビにされたが、彼の国の皇室はカールスラント国民の拠り所とは言い切れなかった。それが運の尽きだ」

 

カールスラントはA世界では、未来世界へ反発したカールスラント海軍将校の反乱をきっかに全土での内乱になった。その結果、多くの失業軍人が街に溢れ、治安は崩壊している。NATOはカールスラントに『失業軍人への失業手当』の支給を指令したが、カールスラントには資金がなく、結局はM動乱で押収した組織の軍資金が充てられる有様である。結局、カールスラントの軍組織が有名無実化してしまった後の再建の規模での議論が終わらず、多くの軍人が暇を囲う有様となっている。

 

「あれがこの世界の扶桑の力の象徴なの?」

 

「そうだ。技術力の象徴だ」

 

扶桑海軍最新鋭の艦上戦闘機『F-14』。コンピュータ制御の可変翼を持つ流麗な機体である。カールスラントが実験段階にあった可変翼を完璧な形で実現するなど、隔絶した差を見せつけている。ミーナBはホテルのレストランの窓越しに見えた航跡と機影に、カールスラントの衰退した世界での航空機の発達を垣間見、自分の世界でのメッサー社とフラック社の近い将来の落日を予見するのだった。

 

 

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