ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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今回は話の補完になります。


第三百四十四話「ウィッチ世界の21世紀とのび太の『死』」

――扶桑軍はダイ・アナザー・デイ以降、一部の精鋭部隊のみが実働状態にあった。これは多くのウィッチ部隊、それに同調した部隊が解体され、多くの人員が日本の新領(極東ロシア)の警備に駆り出されたからで、ジェット機への技術革新で高齢のパイロットをリストラしたこともあり、人員不足が航空部隊で顕現化。一部の精鋭部隊に制空権確保を依存している。皇室に忠誠を誓っている者を優先して皇宮警察に転職させたりした事もあり、人員不足が空軍と海軍航空隊で特に顕著に現れた。そのため、自衛隊の部隊がGフォースの枠で関わっている。流石に、F-4EJ改は老朽化しきっていたため、F-15J、F-35などの現用機が配備された。とはいえ、F-15Jも個体によっては、製造後30年以上を経ているため、こっそりとタイムふろしきでリフレッシュしている。軍用機は戦後の時代では数十年にわたって使用するため、F-15とF-2の代替が2022年で問題化している。そのため、F-35をテストも兼ねてのメインにするはずだったが、ダイ・アナザー・デイで誤射事故が頻発したため、F-15Jをメインにした。別のところでは、金鵄勲章は政治的都合で、クーデター後も存続。『戦役の終了後に一斉に授与する』、『瑞宝章と同等の扱いにする』ということで妥協され、扶桑の財源での年金受給も存続した。また、従軍記章もミーナの一件の教訓で新設がされたのが契機になり、一転して存続となり、軍人傷痍記章も表立っての社会的特権は廃止されたが、年金は福利厚生の観点からの慈悲で存続した。ミーナの犯したミスは、人事書類を確認せず(黒江と智子は軍服での勤務はあまりせず、事変の従軍記章も存在していなかった事、着任時は金鵄勲章以外の略綬をしていなかったこともあり、ミーナは先入観を抱いてしまった。扶桑軍は軍功を誇らないことが金とされていたからだ)にいたことだろう。実際は扶桑海七勇士が筆頭であったので、上層部のほうが大荒れであった――

 

 

 

――1945年から60年後、戦史研究者となった黒江の甥御が1945年頃の資料を取り寄せた際に、ミーナ関連の書類が組織的に改竄されていたことを察し、おばである綾香本人に聞いたところ……

 

「その時にミーナの人格が変貌したのが判明してな。前の人格の罪は別の人格に適応はできないってことになったんだ。まぁ、ロンメルが日本の懲罰的な人事案に反対したんだけど」

 

と、回答している。ミーナは査問が行われる直前、懲罰的意味で「北方戦線へ異動」、『我が国の英雄を辱めたのだから、下士官まで降格させて、不名誉除隊させるべき』、『飛行資格の恒久的剥奪』が有力視されていた。だが、パットンの裏での擁護、ミーナの人格の変貌の報告、エディタ・ノイマンの『政治的理由での更迭』が前線を混乱させていたことで、二階級降格(戦時階級の剥奪)、将官への昇進はさせないことを人事考査に加えることに加え、『始末書の提出、数ヶ月の給与返納』で済んだのである。

 

「おばさん。何故、その時期に相次いで、従軍記章が新設されたのです?」

 

「その一件で、扶桑でカールスラントへの非難が起こったが、欧州で、功を語らない扶桑軍人の態度が問題視されたんだ。で、日本もそれを利用して、カールスラントを追い詰めすぎてな。その結果がカールスラントの内乱期だ」

 

カールスラントの内乱の一因は、空母愛鷹の修繕費をカールスラント負担にした事、軍用機ライセンスのボッタクリの賠償金という名目で、かなりの資金と物品を日本連邦が要求していたことにある。また、ドイツが軍人の多くを強引にリストラしたり、装備を破棄、あるいは払い下げした事で、軍人たちに不満が蓄積されていたのもあり、カールスラントの暗黒時代と後世に記録される内乱になり、その後も、カールスラント人の心に深い傷を残した。その象徴が、記念公園に安置されているラーテ(反乱軍に持ち出されたもの)の残骸である。

 

「見返りはちゃんと与えていたんだが、政府が技術立国のプライドで公表しなかったんだ。それで、市民が軍隊を煽った。そこにカールスラントの悲劇があるんだ。ビスマルクの姉妹艦の建造中止が直接的な反乱の狼煙だった」

 

「ああ、資料にある艦ですね?工程が40%を超えていたという」

 

甥が綾香に見せる資料に記されていたのは、カール・デーニッツの偏った艦政の犠牲にされたビスマルクの三番艦と四番艦。実際には空母として完成したものだ。

 

「ああ、内乱がNATOの手で鎮圧された後に空母にされた。せざるを得なかった。反乱軍が納入されるはずの武装を破壊してたからな。それで、工期が遅れに遅れて、50年代の末にずれ込んだんだ」

 

ドイツ連邦共和国が外洋用の砲熕型艦艇の整備に無関心に等しかったこともあり、戦艦は鹵獲艦の修繕で済ませられた。新造はドイツ側の情勢変化を待たねばならなかったが、その頃には、そんな資金的余裕はなかった。

 

「戦艦として生まれていれば、フリードリヒ・デア・グローセとプロイセンが予定されていたって聞いた」

 

ビスマルクの同型艦は無事に生まれていれば、それ相応の名がつけられる予定であったが、船体は空母にされたため、新造艦としてはつけられず、M動乱で鹵獲されていた『ウルリヒ・フォン・フッテン』(H41級)、『アーダルベルト・フォン・プロイセン』(H42級)を自国軍の艦として再利用することになった際に、その改名案として取り沙汰された。ウルリヒ・フォン・フッテンはフリードリヒ・デア・グローセに改名されたが、結局はすぐに『グローサー・クルフュルスト』へ改名。それで落ち着き、1953年にカールスラント海軍に就役している。

 

「何故、ドイツは鹵獲艦の再利用を?」

 

「軍艦の新造にかかる期間と費用を惜しんだのと、新しい艦載砲を作ればいいって考えてたのさ。ドイツは伝統的に潜水艦好きだ。水上艦隊はあまり重視しない。戦後はな」

 

黒江はその頃には、戸籍上は90歳代。当主の座も義娘へ譲り、隠居中だった。甥は40代半ばほどであるので、見かけは甥のほうが年上に見える。

 

「おばさん、もう90なんですから、服装は…」

 

「バーロー。年食ってないんだぞ、肉体的には」

 

黒江は引退後も現役時代と変わらずに若々しい服装を通しているため、親族からは服装について苦言を呈されている。戸籍年齢ではちゃんちゃんこを着て、杖をついていても不思議でないくらいになっているからで、長兄からも晩年に『服装を変えたらどうだ』と釘を差されていた。引退後は和装が多くなった武子と対照的だ。武子が和装になった一方で、黒江やナカヤマフェスタのおかげか、智子は洋装を通している。引退後、家を継いだりしたので、和装になるウィッチは1950年代までは多くいたが、洋装化の進展で数を減らし、事実上、現役期間が限度一杯であった武子がその最後の例であった。黒江はこの時、甥に呼ばれて実家に戻っていたのと、夏であるので、ホットパンツとさらし姿。往時以上にだらしない。なお、さらしをつけるようになったのは、友人のナリタブライアンの影響もあり、南洋勤務が長かったのもあり、本土では夏季にしている。

 

「そりゃそうですが、親父はいい顔しませんでしたよ」

 

「お前の親父達はそりゃ、いい顔しなかったさ。扶桑撫子がだらしないとかいってな。まぁ、お前のじいさんの教育のせいだが」

 

苦笑交じりの黒江。この頃には、兄達は三兄のみが存命。次兄や長兄は亡くなっている。三兄は理解のあるほうだが、妹がいつまでも若い服装を続ける事は反対らしい。

 

「で、部下の方達とは?」

 

「末端は時代が進むと、入れ替わりが激しかったからなぁ。まぁ、幹部だった連中とは定期的に会ってる」

 

64Fの黎明期の幹部達は80年代まで現役であったため、末端の隊員を全員は把握できていない。末期は現場を離れていたからでもある。隊の戦友会に顔を出すのは、戦乱期に在籍していた者が中心であるからだ。

 

「戦乱期が終わると、ウチは『在籍したら、経歴に泊がつく』扱いになったからな。俺たちも、晩年は現場にタッチしなくなっていったから、在籍経験者の全員が戦友会にいるわけでもないさ」

 

64Fは戦乱期のメンバーの引退後、二代目レイブンズのデビューまでは『往年の威光で維持されている』と揶揄されていたため、隊史でいう二度目の不遇期は『平和が定着し、中東で動乱の起こるまで』とされる。

 

「ウチも冷戦が終わって、平和になると、規模を縮小せざるを得なかった。そこから十数年以上は『惰性で維持されてた』。中東での動乱で再編成されて、中興したがな」

 

64Fは冷戦終結時に縮小したが、中東での動乱で往時の規模に戻された。その時期に抜擢されたのが『二代目』たち。このインタビューはそのデビューから数年後の頃だ。

 

 

「それで、どうして、日本は扶桑の軍事勲章などを廃止しなかったのです?」

 

「廃止させようと喚き散らしたら、俺たちがドイツ人に舐められたって一報が入ったんだ。政治が奴さんに猛抗議したんだが、ミーナは人事考査表を見てなかった。これが擁護が出た理由だ。坂本が咎め、ケイがシャインスパークを撃ったことで、事の重大性を認識した。で、国内でも問題になってな。あいつはドイツの政治に『スケープ・ゴート』にされ、俺たちが隊の実権を握った。それ以降のカールスラントは軍事的に『坂を転げ落ちるような』感じで凋落していった。言うなら、統合戦闘航空団は欧州がその権威を誇示するための場だったからな」

 

 

ウィッチA世界での半世紀後以降の世界観では、カールスラントから扶桑への軍事的覇権の交替は坂を転げ落ちるという表現でなされていた。七勇士の過半数が現場に戻り、そこでプリキュアと同等以上の力を発揮したという経緯は『後世』からも不思議と捉えられている。

 

「人事考査表を見た後の彼女は?」

 

「ハルトマンとシャーリーの証言だと、青ざめてたそうだ。扶桑最高の英雄で、先帝(この時代では、昭和天皇のことを指す)のお気に入り。『自分が入隊する前から将校だった』ってのも効いたようだ。カールスラントの士官教育はどうなってるってことになったんで、あいつはスケープ・ゴートにされたんだ」

 

カールスラント軍は実力主義的風潮が強すぎたのが災いし、年長者への経緯を払うことを誉とするアジア文明圏の力が強まり、ドイツ連邦共和国が旧西側地域の住民主体でカールスラント軍を再構築しようと目論んだ事も重なり、急速に権威と実力を喪失。そこからの立て直しは2010年代になろうと完了はしていない。

 

「結果、アルジェリアでガリアの権威が失墜するのと併せて、欧州の影響力は減退。扶桑一強の時代へ入る。ブリタニアも経済が傾いたからな。扶桑は向こうの世界のアメリカの役目を担わされたわけだ」

 

「それでも、軍用機や戦車の購入が多かったのは?」

 

「財務的都合だよ。国産の新規開発よりも、他国から買ったほうが手っ取り早いっていう。クーデターの後、技術者の少なからずが民需に転換していったから、軍需の開発速度も低下してな。戦車や航空機は購入の方が多くなった。国産派と兵器購入派のせめぎあいが、ここ半世紀の扶桑だ」

 

この頃には、月面基地の建設などが進み、宇宙開発もドラえもん世界の10倍の速度で進んでいる。全ては鉱物資源を得るため。地球の貯蔵量に見切りをつけた扶桑は宇宙開発に巨額をつぎ込み、M式核融合炉のコピーの製造、波動エンジンの製造にも目処が立っている。波動エンジンの構成材であるコスモナイト合金の製造が成ったからで、扶桑主導で宇宙進出が始まろうとしている。戦争で技術が発展した結果であるのは言うまでもないが、怪異の脅威が散発化し、人同士のにらみ合いが続いたため、未来世界と同じように、国連主導での『地球連邦政府』の樹立も視野に入っていた。結局、何かを一つにするには、力が必要なのである。

 

「何故、リベリオンとブリタニア製の兵器が主流に?」

 

「運命だ。多くの世界では、高性能化する兵器を戦後も全ての分野で国産化できた国は世界ナンバーワンとナンバーツーだけ。日本も購入派が主流になりつつある。世界トップの他国の兵器を買ったほうが手っ取り早い。戦後はそういう風潮なんだ」

 

黒江は兵器開発が一本化されていくのを運命とした。扶桑も例外なく、多くの分野で兵器の独自開発を取り止めて久しい。多くは史実で高性能とされた物のライセンス生産なのだ。リベリオンが再統一後に兵器の輸出でトップになれた理由は『アメリカが史実での超大国だったから』であるなど、身も蓋もない理由である。現に、未来世界の地球連邦軍の兵器も多くが米国産兵器が先祖にあたる。

 

「だから、戦艦のように、独自色が強い兵器が残ったのは奇跡なんだよ。たとえ、各国が数隻づつしか持っていなくとも」

 

大和型の系譜を持ち続け、定期的に後継艦に入れ変えた扶桑は例外で、各国は大戦中、もしくはそれに近い時代に建造した戦艦を改修しつつ、五十年ほど使い続けてきている。それはミサイルの普及、バックス・ジャポニカのもとでの数十年の平和で、戦艦という兵器を持つことの意義が低下しつつも、怪異にミサイル兵器は有効ではないという戦訓で維持している(核兵器に準じる破壊力のものが扶桑以外にない事もあって)維持しているに過ぎないからだ。兵器としての地位も、半ば儀仗用の飾り同然と化している。核兵器が本格的に普及せず、ミサイル万能論が本格化しなかった世界では、戦艦が原潜とミサイル潜水艦の役目を吸収しつつ生き残ったというわけだ。

 

「本当なら、ミサイル原潜と空母に駆逐されたはずが、ミサイル兵器と空母機動部隊、原潜が高額になる事が早期にわかったから、戦艦が生き延びた。金がかかる新ジャンルの兵器を中小国は欲しがらんよ」

 

 

空母機動部隊は結局、日米英が往時と同様の規模を維持している以外は、地域大国らがささやかな規模のものを細々と維持しているにすぎない。戦艦も地域大国以上の国々が数隻づつを有しているだけだ。

 

「もっとも、日本連邦とその友好国である大国と元の敵国だけだがね。戦艦を実戦に使えるようにしてあるのは」

 

戦艦は生き延びたものの、多くは王室専用ヨット扱いであったりするなど、儀仗的な目的の維持であり、実戦兵器として運用できる国は、21世紀のウィッチ世界では一握りである。日本がダイ・アナザー・デイで予測したような『潜水艦の発達』は『怪異への有効性』の都合で起こらず、日本連邦他の数ヶ国を例外に、平均レベルは『時代を考えると低い』水準のままだ。怪異は『人類をまとめるための舞台装置である』説は結果的に正しかったのだ。

 

「『怪異は人類をまとめるための舞台装置である』と、第一次怪異大戦(第一次世界大戦相当)の後に誰かが言っていたそうだが、それは文明に歪な進化をもたらした。それを是正するために、あいつら(ティターンズ残党)は呼ばれたかもしれん」

 

黒江は甥に、『同族だが、敵である』というティターンズとの長い闘争は結果的に文明の進化を促し、ウィッチに蔓延りつつあった『ウィッチ至上主義』を打破する役目があったという見解を述べた。実際、ウィッチに寄与しない装備の発展を切り捨てる風潮が部内できつつあった中、M動乱とダイ・アナザー・デイでの平均的なウィッチの近代兵器への微力さが示された(統合戦闘航空団に入れないレベルのウィッチは生涯に30機も撃墜できれば良い方で、すぐにトップエースに追従できた芳佳は類稀なケースである)ことで、次第にウィッチの高慢な態度が消え失せたのは『良かった』とした。

 

「俺達の事変での活躍がウィッチをつけあがらせたのなら、ダイ・アナザー・デイの超兵器達が錯覚による高慢を打ち破ったってことだ。俺達は例外的な存在だ。『転生者』だということは、戦乱期の最初の頃は国家と軍の首脳しか知らなかったが、現場責任者のミーナがポカしたから、うちの部隊が生まれた。半分は扶桑の軍首脳の希望的観測のせいだが」

 

「つまり、半分は当時の軍首脳のポカだと?」

 

「沈黙は金なりが馬鹿正直に、外国でも通じると思ったんだ。人事考査表を確認しなかったミスもあって、俺たちは冷遇された。たぶん、司令部付きの査察官か何かと思ったんだろう」

 

「事態が判明した後は?」

 

「青ざめたそうだ。着任から程なくして、俺は事故で異世界にしばらく飛ばされたから、半分はケイと智子から聞いた。当時、ロンメル将軍がミーナを電話で叱責したんだが、元から上層部不信だったから、まるで聞き入れなかった。だから、ケイに指示をした。本気を出していいと」

 

結局、ミーナは上層部不信が悪い方に作用してしまう形で立場を失い、統合戦闘航空団という枠組みにも『復活に数十年かかった』ほどの政治的打撃を与えた形になり、カールスラント本国でも疎まれ、最終階級は大佐(引退後に准将へ名誉昇進)であった。一時はガランドの後継者筆頭候補と言われていた彼女が、『ほんのちょっとしたミス』で出世コースから外れたことは、後世の軍人たちへの教訓になり、後の世代にも大きな影響を及ぼした。七勇士の過半数が現場に戻り、その後も扶桑軍隊の屋台骨を担い続けた事から、相対的に評価が下がってしまうが、事態の把握後は『若手の教官として遇しようとしていた』形跡があったりする。(戦闘能力が想像以上に高かったのも誤算であった)

 

「それがご活躍の本格化と?」

 

「対外的にはな。国内的には、事変の時点で英雄扱いだったよ。多分、年齢への先入観だろうが、その当時でも、ガランド閣下やルーデル大佐とか、20超えで戦う例はなかったわけじゃないんだが」

 

黒江もそこは苦言を呈する。ミーナ(本来の人格)のミスは『20超えでも戦う事例はある』のを軽視したことである。しかも、その内の一人は自分の上官。世界線にもよるが、自分の愛した坂本もそうなるのだ。

 

「坂本も異なる世界線じゃ、烈風斬を多用してまで、戦うのに固執するからな。俺はまだいいほうだよ。平時での生き方を知ってるから。坂本みてぇなのが露頭に迷いやすいんだよ。ああいう手合は根っからの武人気取りが多いからな」

 

とはいえ、坂本本人は引退後、北郷家の剣術道場の師範となり、映画会社の軍事アドバイザーも行っていたなど、引退後もそれなりな生活を送り、この頃には住まいを南洋に移している。いわく、孫に家督を譲ったという。

 

「あいつは孫に家督を譲って、悠々自適。成功したほうだよ。武人気取りだった連中は年取ると、何やればいいかわからなくなるからな。ジオン残党みたいに、忠義を口でいいつつ、裏では戦争を食い物にしてた連中もいるんだ。俺たちみたいに、平和に順応できれば、それに越したこたぁない」

 

ジオンは戦後の平和を受け入れず、自分たちの理想を他者に強要していたが、地球連邦政府の穏健派内部でも派閥抗争は存在しているし、ジオン残党を謳う者の数割は実際には、ジオンMSを使う『連邦軍の脱走兵』であった。

 

「連邦軍の脱走兵がジオン残党を騙ってた例もあるとか?」

 

「ああ。あれは49年のことだったな。ちょうど。俺たちの機体の大規模整備とアップデートのために、未来世界のトリントン基地に立ち寄った時だったな」

 

64Fが1949年のある時に、機体のアップデートと大規模整備のために未来世界に赴いていた日、ちょうどジオン残党が襲ってきた。その時に応戦できたのが自分、キュアドリーム(夢原のぞみ)、キュアフェリーチェ(花海ことは)の三名のみであり、その際にイフリート・シュナイドと遭遇し、撃退したことを語る。イフリート・シュナイドのパイロットは元連邦兵であり、結果的に『かつての友軍に牙を抜いている』ことを後悔はしていないようだが、連邦が真に変わりつつある中で、尚もテロ活動を続ける事に引け目を感じ始めていたようだが、宇宙開拓時代最新鋭のガンダムタイプ相手に、一年戦争中の機体の改修機でしかないイフリート・シュナイドでは流石に対抗しきれず、キュアドリームがMS(ガンダムXディバイダー)越しに『プリキュア・シューティングスター』を発動させ、戦闘不能に追い込んで撤退させている。その時に、彼は『連邦にお前たちのような若者が出できたのなら……連邦軍も……芯から腐ってはなかったみたいだな』と漏らしており、元・連邦兵だった故の心境を漏らし、以後は義賊に転じたらしい。だが、『残党として』トリントン基地のMSの6割を稼働不能に追い込んでおり、結果的にはトリントン基地の部隊が機能不全となってしまったため、64Fは地球連邦軍本部がトリントンへ兵器と人員の補充を行うまでの間、同地域を守護した。この事例以外にも、ジオン残党を騙ってのテロ活動をする脱走兵は意外と多く、よりによって高練度であるので、その鎮圧にロンド・ベルとその傘下が充てられるのは必然であった。

 

「ネオ・ジオンも解散したのに、ジオン残党が?」

 

「残党の大半はジオン公国として戦ったんだが、ティターンズ残党と組んだりして、戦争屋に成り下がった。俺たちはあくどい事しても、一定の倫理は守ってたが、連中は悪びれねぇからな。デラーズ紛争にしても、穀倉地帯を消し飛ばした。で、コスモリバースで地球が復活したからって、月を爆破しようとするんだからな。ネオ・ジオンがなくなった後のジオン残党はジオンの看板を掲げる『戦争屋』にすぎない」

 

結局、ジオン残党はムーンクライシス事変を内包するデザリアム戦役の結果、組織的な統制力を喪失し、オールズモビルという存在が中心になり、次第に『ジオン公国』の残党から変質していった事が語られる。

 

「その後はどうなるのです、おばさん」

 

「皇帝だ」

 

「皇帝?」

 

「最大最強のゲッターロボ……ゲッターエンペラーが覚醒めるんだ。有無を言わさずに敵をねじ伏せる絶対的なパワーだ。エンペラーを視覚したら、何をしようと生まれる定めになるという空間と時間の支配能力すら持つ。それを30世紀の侵略者は覚醒めさせてしまう」

 

イルミダスという軍事国家に地球連邦軍は艦隊戦で敗れてしまうが、ゲッターエンペラーの覚醒ですべてがひっくり返り、イルミダスはゲッターエンペラーの前には赤子同然。アンドロメダ流国もイルミダスと組み、ゲッターエンペラーに挑んだが、ゲッターエンペラーの強大さはその二大国家のあらゆる努力を無にする威力であった。合体だけで小銀河を消し飛ばすゲッターエネルギーを叩き出し、合体してしまえば、ワームホールだろうが、惑星だろうが握り潰す。ゲッターエンペラー自体が太陽系より大きいため、途方もないスケールである。

 

「ゲッターエンペラーは何かに対抗するために進化を?」

 

「神をも超える存在を更に倒すための進化だろう。ケイがそんなことを言ってたな」

 

 

 

――地球連邦が恒星間国家に変質してゆく中でも、地球を重要視し続けたのは『人類発祥の地であり、プロトカルチャーが自分たちの後継者として創造を目論み、ゲッター線が完成させた』という経緯、銀河英雄伝説における『地球統一政府』と違い、侵略者には苛烈でありつつも、良民には寛容であった事、父祖の地である地球に郷愁を抱く者が地球圏に多かった事、地球に地形に至るまで酷似しつつも、年齢は逆に若い『ビックアース』に29世紀頃から植民を行うに至るなど、地球への愛が行動の根底にあった。エレズムも元々の意味は地球聖地論である。また、地球から独立を謳うにしても、その文明は地球の派生でしかない事、独力では宇宙怪獣には立ち向かえないという事情もあり、戦乱期後の地球連邦を襲うシリウス恒星系などでの反乱は空中分解し、やがて、第二戦乱期『銀河百年戦争』に突入する。その更に後の停滞期を経た第三の戦乱期に『ゲッターエンペラー』が覚醒めるのである。ゲッターエンペラーはゲッターロボGが長い年月の間に変質・進化を重ねた姿であるので、少なくとも、数回の進化は経ている。その内の一つが『真ゲッタードラゴン』、『ゲッター天』である。黒江はその双方を引退までに目にしていると、甥に言う。このインタビューは2000年代頃に、甥が出版した戦史本の巻末インタビューとして掲載され、史料としての高価値が評価され、同年代の扶桑の歴史分野でベストセラーとなる。黒江の身内ということで、機密指定が解除されたばかりの裏話も多数載せたのが高ポイントであった。それまでの回想録などは軍の公式発表と矛盾しないように、当たり障りない内容のものが多く(坂本の回想録は例外)、軍の英雄であった人間が、軍の当時の施策のミスを指摘する赤裸々な内容が含まれているのが、当の軍にも容認されるのは、扶桑が平和を保っている証拠でもあった――

 

 

 

 

 

――そして、その年、黒江は久しぶりに公の場に姿を見せたが、往時から容姿が老けていないことが話題になったが、大戦の従軍経験者であれば、珍しくはない(Rウィッチが多い世代でもあった)ため、戦乱期に従軍経験のある者にとっては当たり前であった。実際、2000年代に入っても、後代の者が『だらしない』ために怪異を鎮圧できず、大戦世代を若返らせ、討伐させるケースがあるくらいである。ましてや、七勇士は全員が21世紀に入っても『健在』であるのだ。(そこが『一つ前の世界』とは異なる。)――

 

 

「久しぶりだな、ドラえもん。俺だ。会えるか?久しぶりに話したいし、のぞみも孫が生まれたって言うしよ」

 

 

甥が帰宅した後、黒江は久しぶりにドラえもんに連絡を取る。ドラえもんとのび太とは、引退後しばらくは、自身の後継者の育成が忙しかった兼ね合いで、しばらくドラえもんらと連絡を取っていなかった。この時は知る由もないが、更に後年、シャーリーからのび太の訃報(享年:93歳)が知らされることになり、『野比のび太を偲ぶ会』を64Fの主要メンバー有志が主催して開かれた。最期を看取った調とことはからのび太の今際の際の遺言が参加者(世界を問わない)に伝えられ、のび太として死しても、ノビタダとして再会できる旨を明言し、安らかに逝ったという。最期を看取った中には、彼のひ孫ののび三(セワシの父)もいたという…。

 

 


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