ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第四百五十六話「プリキュア達の少し不思議な日常生活 2」

――ダイ・アナザー・デイでの活躍、みらいやめぐみなどの後輩の尽力もあり、のぞみはプリキュアのエース格と見なされるようになっていた。デザリアム戦役の後は全体のリーダー役を降りる意志を固めていたが、太平洋戦争前の段階では『最古参のピンクプリキュア』であるため、そうはいかなかった――

 

 

「そういえば、のぞみさん。みらいちゃんから聞いたんですけど、別の自分に会いに行ってるんですか?」

 

いちかが質問する。

 

「うん。かれんさんとこまちちゃんを強引に連れて行ったのは事実だし、そのために、ラブちゃんやはーちゃんがフルボッコにしちゃったから、そのお詫び代わり」

 

「でも、のぞみさん。自分で自分を助けるって、どんな気分ですか?」

 

「不思議な感じだよ?別の自分に色々と言われたし」

 

「でしょうね」

 

「向こうは正真正銘の中学生で、こっちは正規軍人だしねぇ。それも少佐。戦いでおまんま食ってるようなもんだから、教師を諦めたのかって言われたよ。なろうとはしたんだけどね…」

 

魔女世界に転生したのぞみも、ダイ・アナザー・デイ後に予備役に退くお墨付きを皇室からもらい、中島小鷹の手引で『地元の女学校の教員に転向する』はずであった。扶桑では絶対的な権威を持つ皇室から許しを得ていたので、普通はそのまま転向できるはずであった。だが、日本連邦化による『日本の文科省の一部勢力の横槍』が入り、のぞみ自身は面談した文科省の役人に『子供だましの商売してる身の上のくせに』とプリキュアとしての誇りを侮辱されるという屈辱を味わされた。のぞみはその日の内に、上官である圭子に相談。圭子はそれを聞くなり、烈火の如く猛った。『文科省に殴り込んでやるぜ!!』と息巻き、のぞみを宥め、自らはジャーナリストとしての副業とコネをフル活用して、日本の文科省を追い詰めていった。また、黒江の知り合いに農水省のSNS担当者がおり、圭子はその人物に話を流すところから始め、のぞみの受けた苦痛を倍返しする流れを作りはじめたのである。この話を聞き及んだ昭和天皇が予備士官制度の混乱を懸念した事から、山下奉文陸軍大将が文科省の事務次官のもとに面会しにやってくる事態にまで発展した。次いで、鈴木貫太郎枢密院議長(海軍大将)、岡田啓介元総理大臣、吉田茂首相(1945年当時)などの要人が相次いで、日本を電撃訪問するという大事に発展した。2020年代初めの日本の内閣は文科省の引き起こした事の次第を知り、震え上がった。昭和天皇からして、明治の偉大な軍人『乃木希典』の薫陶を受けたことはとうに周知の事実であるからで、文部科学相は総理大臣からの厳しい叱責を受ける羽目になり、彼が今度は事務次官を…という流れとなった。

 

「圭子先輩のおかげで、上に話が伝わってね。扶桑の長老級の重臣が次から次にやってくるから、日本の総理大臣は心労で倒れそうになったそうな。皇室の許しの出てた案件を官僚が独断で潰したからね、しかも人を散々に侮辱してくれて……。それで週刊誌に流してくれて、世論を煽ってくれたんだ」

 

「あの人、どんなコネあるんですか」

 

「一時、前線を退いてた時期に本出してて、それで出版社に知り合いが多いんだって」

 

圭子の巻き起こしたスキャンダラスな報道は『日本の役所がプリキュアの夢を阻んだ』というセンセーショナルな見出しでなされ、日本の世論は瞬く間に沸騰した。世間にバレないような方法で損害補償を探っていた文科省であったが、とうとうTVで報じられるまでになり、事件の存在を公に認めざるを得なかった。総理大臣が扶桑への謝罪を文科省、外務省、防衛省に求めるのに、時間はさほどかからなかった。扶桑の予備役制度が混乱を来たした上、文科省による軍事と教育現場の強引な関係の断ち切りが原因で、大量の魔女出身の士官/将校が軍事教練という職場を失う事態になったからだ。

 

「で、日本の厚生省や文科省、防衛省のお偉方から、『君がプリキュアのエース格とは知らなかった。文科省の一部勢力の暴走で、君に多大な精神的苦痛を与えたことをお詫びする』って謝られたよ。文科省の事務次官に言ってやったよ。『軍人上がりの人間が教育に関わっちゃいけないのか』って」

 

「で、扶桑の大蔵大臣も続いてくれてさ。彼女のみならず、予備士官、海軍予備員としての籍を持つ者は大勢いる。失業者を十万、百万単位で出して、政情不安を煽りたいのか』って。文科省の事務次官、何も言えなくなってた」

 

「で、言い訳がましく、彼は『軍上がりの人間が間を置かずに転向するべきじゃない』と言っている。間を置いていれば、文句を言わずに済んだ』と言ってきた。で、彼は私達を子供だましと言ったんですよ。私達は世界を必死に守ろうとしているのに!!って言ってやったよ。前世からこっち、必死に戦ってきたのに……」

 

のぞみはTVで知られているよりも遥かに長い期間、命がけで世界を脅かす相手と戦ってきた。故に、プリキュアを子供だましと宣った官僚が許せなかったのだ。扶桑の高官たちも『君らはいたいけな少女を言葉の暴力で追い込むのが仕事なのか?』と続けてくれ、直ちに日本の総理大臣、遂には日本国天皇への上奏を示唆した。この面談の報告が総理大臣を決断させ、文科省に人事上の『粛清の嵐』が吹き荒れ、文科相、厚生相、防衛相、外相は扶桑への謝罪行脚を行う羽目に陥った。文科省はナンバー3までが失脚、のぞみの損害補償は協議の末に『佐官までの人事で優遇措置を取り、すぐに少佐へ昇進させる。以後の危険手当は通常の倍額で計算、支給する。予備士官届けは出さなかったものと扱う』という内容で落ち着き、1948年までに少佐へ昇進するのだ。(プリキュアの増加を見込み、教官資格も与えられた)

 

「のぞみさん、前世でどれだけ…?」

 

「年取って、変身に無理が出てくるまで戦ってた。いや、それが職場や家庭でのストレス解消になってたようなものだよ。それに、教師って商売に夢を見られるのは……若いうちだけだよ、いちかちゃん」

 

と、前世での自分を自嘲して語るのぞみ。教師という職業の闇を味わい尽くし、多忙が原因で長子がひねくれてしまうなど、育児においても『上手くいかなかった』ため、哀しそうな表情になっていく。

 

「シャーリーが羨ましいよ、本当」

 

「よしてくれ。あたしも全部は肯定できる人生は送ってなかったしな。知ってんだろ、ルルーシュ・ランペルージのことを」

 

シャーリーも紅月カレンとしての前世を全肯定はできないことを自覚している。やったことの半分以上は『反体制テロリスト』だし、ルルーシュ・ランペルージの掌で踊らされ、体よく利用されていた(ルルーシュ・ランペルージは『重宝する』という形でカレンに報いてはいたが…)という事実、そのことを知ったショックでルルーシュ・ランペルージを一時は見限っていた事への罪悪感も残っている。『ゼロ』という偶像を盲信していた時期の記憶はシャーリーとして転生した後でも『悔い』として残っている。

 

「ゼロレクイエムで蚊帳の外だったことへの食いもある。あいつは……なんだかんだいって、結局はスザクに全てを話して……託して……死んでいった……あたしからすれば、お前のほうが羨ましいくらいだ」

 

ルルーシュ・ランペルージへ好意を持っていたこともあるので、そのルルーシュに利用されていたり、真意を明かすほどの関係に発展しなかったことへの悔しさからか、心から信頼できる友人を『本当に持てていた』のぞみのほうが『考えようによっては幸せ』と漏らす。こちらも前世であまり報われず、ルルーシュ・ランペルージの死後に『空虚感』すら感じていた関係か、自分を心から心配してくれる人間が何人もいたのぞみが羨ましいことを赤裸々に語る。

 

「二人共、重いですね……」

 

「あたしらは転生組だからな。人生の喜怒哀楽を味わった経験を持っちまうと……色々と考えちまうのさ」

 

いちかは現役時代からの転移組であるので、のぞみとシャーリーが重い背景を背負っている事に圧倒される。

 

「ところで、響さん。どうして、通り名を昔の名前で通してないんですか」

 

「ほれ、うちの部隊にフランチェスカ・ルッキーニってガキがいたろ?あいつが泣いちまってな。それに転生先がアメリカ人だったしよ」

 

通り名を北条響に統一しなかったのは、ルッキーニが泣いた事、転生してからはアメリカ人である事、既に自分が著名人であった事、複数の人物としての過去生の記憶が複合して目覚めていたなどの理由で、プリキュア変身者としての名は名義の一つにしたと語るシャーリー。キュアメロディの姿ではあるが、シャーロット・E・イェーガーを基本の名前にしているのは、ルッキーニのためでもある。ルッキーニは意外に頑固なところがあったので、基本の名義を変えるのは流石に気まずかったらしい。曰く、『どんな姿だって、シャーリーはシャーリーだもん~!』と拗ねたためである。

 

「やさしいんですね」

 

「あたしはのぞみと違って、元の人格に+αされる形だったからな。立ち話もなんだ、みらい達が助っ人してる草野球のグラウンド行こーぜ」

 

『へ!?』(ハモリ)

 

と、いうわけで、三人はノビスケが出ている草野球の試合を見に行った。三人がついた頃には四回表を迎えていた。ジャイアンが監督(保護者を兼任)を勤め、この時代には練馬区近隣のリトルリーグに正式に登録している『ジャイアンズ』。対戦相手はのび太らの時代からの永遠のライバル『チラノルズ』。ちょうど打順はみらい(キュアミラクル)であった。近所の友人たちとの付き合いで野球をしていたので、やれるのだが。

 

(うっそぉ~……軽く引き受けたら、本当にプリキュアの姿で試合に出るなんてぇ~!こうなったらやけくそだぁ~!)

 

と、羞恥心やなにやらで、頭がグルグル回るみらい。プリキュアの力の無駄遣いのような気がするが、そこは考えない事にした。だが、ススキヶ原はみらいの想像を超えていた。

 

「って……えぇーーー!?」

 

リトルリーグ。小学生向けのルールで行われる野球リーグである。そのため、球速なども相応の速さ……のはずである。しかし……。

 

『ストラーーイク!!』

 

審判のストライクを告げる声が響き、みらいは思わず瞠目する。

 

(?は、反応……できなかった?変身してる状態で!?)

 

変身している状態であるので、子供の投げるボールくらいは余裕で反応できる。たかをくくっていたみらいだが……。

 

(も、もう一回!!)

 

と、気を取り直すが……。

 

「な――ッ!?へ、変化!?」

 

今度はバットに当たる直前で微妙な変化をし、みらいのバットは空を切る。きりきり舞いというのがふさわしい。

 

「フフフ……この勝負はもらったよ、プリキュアのお姉さん」

 

相手ピッチャーはこの余裕である。みらいは『ムッキー!!』と言わんばかりの表情で三球目を打とうとするが、小学生のレベルとは思えない変化球で打ち取られ、三振という結果に終わる。

 

「嘘……」

 

呆然自失が似合う有様であった。『小学生のレベルじゃないだろー!?』と言わんばかりの悔し顔を見せる。みらいを打ち取ったピッチャーはその後、スネ樹(スネ夫の息子)、ジャイチビ(ヤサシ。ジャイアンの一人息子)を連続で三振に打ち取り、その回を完封する。ジャイアンズはチームのエースピッチャーでもあるノビスケが投球数の規定に達していたため、リコがプリキュアの姿で継投する事になった。

 

(これも修行と思えば。でも、変身した状態の玉、小学生にとれるの?)

 

些細なことながら、重要な事に気づくが、ススキヶ原という特殊な地では、常識は常識ではない事がある。キュアマジカルの姿で投げる玉は普通なら『甲子園優勝チームのキャッチャーでも捕れるか怪しい』くらいの速度が出ていたが、普通にキャッチャーはキャッチしていた。

 

(昔のドカ○ンじゃないんだから、も~!)

 

意外に日本の漫画の知識があるところを見せつつ、多少の後ろめたさ(変身している状態で投げる)を垣間見せるリコ。

 

(ここのところは仲介役ばっかりだったし、気分転換にはいいわね。マリア姉さんは私が『いなくなって』からシスコンが加速したようだし…。気持ちはわかるけれど)

 

前世では夭折してしまっているため、マリア・カデンツァヴナ・イヴは妹の転生体であるリコに過保護気味である。とはいえ、リコとしては『前世とは性格が違うから、昔と同じようには出来ない』というのも伝えている。とはいえ、仕事でのポジションの都合で『前世での自分(セレナ・カデンツァヴナ・イヴ)』に近い口調を使うことも多いので、気苦労も多いのだ。

 

「行くわよっ!!」

 

リコは意外に投球テクニックがあるのか、速球を好むノビスケと対照的に、変化球主体の投球であった。当然ながら、(通常は)小学生レベルを遥かに超えている変化球のはずだが、ススキヶ原の小学生らは『普通に対応してきた』ので、三振の山を築くというわけにはいかなかった。

 

 

「……あ!はーちゃん、いったわよ!」

 

変化球が甘く入ったところをつけこまれ、痛打を浴びるリコ(姿はキュアマジカル)。打球はちょうど、ことは(姿はキュアフェリーチェ)の守備する右中間に向けてライナー軌道でかっ飛ぶ。

 

「……はいっ!」

 

ことはは打球をキャッチすべく、走る。プリキュア状態で守備しているとはいえ、それだけで完璧な守備とはいかないのが現実である。

 

「たぁぁぁっ!」

 

ことははダイビングキャッチを行い、かろうじて打球をキャッチする。(もちろん、グローブは使っている)その瞬間にグラウンドに到着したのぞみ達。

 

「うっそぉ!こ、この街の子ども達って……どうなってるのぉ!?」

 

いちかは到着早々に、この感想である。

 

「この街の周辺一帯、ギャグ補正が昔から強いんだよ、いちかちゃん」

 

「ああ。この街、あたしらがプリキュアの姿でぶらついてても、特に問題になんないどころか、アイドルみたいにサインを求められるしな。まぁ、悪い気はしないけど」

 

「ぎ、ギャグ補正って……」

 

「あんま深く考えんな。気にしたら負けだぞ?」

 

シャーリーはこれである。ススキヶ原では過去にはパーマン(1980年代後半頃)が活動していたり、オバケのQ太郎などが目撃されていたので、街の住人も既に耐性がついたり、ギャグ補正が強くついたのか、2020年代の時点では『プリキュア(後にはウマ娘)がうろついていても、騒ぎにならない』のだ。更に言えば、アニメとしても自分達が存在している世界なので、正体もつるっと知られている。そのため、逆にそれを使い、色々と便利に過ごしたほうが得策であると続ける。

 

「そうですかね……?」

 

「あたしも現役時代は正体を隠してたけど、なんかバレてそうだって思った事あったしね。アニメが放映されてた世界なら、大っぴらにした方が楽だもん。仕事のトラブルもそれで解決できたしさ」

 

のぞみはキュアドリームとしての知名度を使う事を圭子に助言され、そうすることで転職を潰した文科省に意趣返しをする事に成功した。文科省は事務次官が直接、のぞみに謝罪する事になったり、『プリキュアの夢を潰したばかりか、扶桑の軍人の転職をめちゃくちゃにした』咎を受け、派閥ごと官僚が左遷させられる、文科省組織への世間の評価が地に落ちるなどの結果になった。のぞみは教職への転職は潰されたが、軍での立場は確固たるものにした。ガンダムダブルエックスのパイロットとしても名を馳せているので、この時点では『扶桑軍の次世代のホープ』という評価である。この出来事以降は『自分はアニメとは違う人生を歩んではいるが、夢原のぞみであり、キュアドリームである』と公言するようになり、それによる恩恵に預かるようになった。曰く、『プリキュアであることを隠してたことで、全部が上手くいかなかった前世の後半生の反省』との事。

 

「その代わりに、最前線に常に置かれるけどな。おーい~ジャイアン~!差し入れ持ってきたぞ~!」

 

シャーリーは少年ジャイアンと面識があったため、ジャイアンが成人した後もタメ口である。

 

「ジャイアンって、あだ名ですよね?由来はなんだろう?」

 

「のび太とスネ夫に聞いても、そこはわからねぇ。いつの間にか定着してたっていうしな」

 

ジャイアンというあだ名の由来だが、本人でさえも釈然としない。なお、この頃には加齢による声の変化で歌も『なんとか聞ける』程度に改善されているので、音痴No.1の地位はドラえもんに明け渡している。音波兵器の地位(?)はしずかのバイオリンが引き継ぐなどの変化が起きている。ジャイアンは元々、スネ夫の財力でユニフォームを少年時代から作ったり、正真正銘の草野球チームであった頃から野球を愛している。時代と共に、野球からサッカーに人気スポーツの花形が移る中でも、並行してジャイアンズでリーグ戦を行うなど、運営力の片鱗を見せていた。ある時に正式にジャイアンズをリトルリーグとシニアリーグに登録し、自らの子供の世代がチームを担っている。ただし、固定メンバーは少なく、ジャイアンズがこの時代でも弱小のままであるのは、ノビスケの能力に依存するところが大きいからである。ノビスケ一人が強くとも、集団全体が弱いのでは、試合には勝てない。ましてや、のび太らの子供たちの時代には野球の人気は総じて斜陽を迎えているので、当然のことだ。

 

「おー、サンキュー」

 

「試合はどう?」

 

「ノビスケ君のおかげでなんとか互角だが、連中はなかなかのピッチャーを揃えているよ」

 

試合はノビスケが徹底マークにより、全く活躍できない状況に追い込まれたため、敵がマークしていないと思われるみらい、ことはの打撃に期待していたが、敵は予想以上の強肩で、二人が変身状態でさえもきりきり舞いさせられている。

 

「ジャイアン、ヒゲ生やしたのかよ」

 

「おれももう34だぜ?ヒゲの一つ生やさないと、経営者の威厳がないぜ」

 

ジャイアンは30半ばにはちょび髭を蓄える様になっていた。妻から『あなたも30半ばですし、ヒゲの一つは生やさないと…』と言われたかららしい。妹のジャイ子はプリキュアのコミカライズに関わるようになって、もう数年であるが、コミカライズかしらぬ独自のSF巨編ぶりが評価され、プリキュアが『デリシャスパーティー』に代替わりした頃には、さらなるぶっ飛び具合に進化していた。

 

「ジャイ子のコミカライズは見てくれたか?」

 

「うん。ジャイ子ちゃんにロボの資料渡したの?」

 

「防衛省から、ダイ・アナザー・デイの大まかな漫画化の依頼があったんだ。多分、軍の広報の一環だろうけどな」

 

ジャイ子はダイ・アナザー・デイにプリキュアが関わっている事を示す事を日扶の双方で啓蒙するための軍の広報に起用された。ドリームが如何に扶桑で大変な立場であるか、歴代プリキュア達も瞠目せざるを得ない歴代の仮面ライダー達とスーパーロボット。その大まかな内容をコミカライズしていたのだ。

 

「君がプリキュアの中心だったろ?それで、君が他のプリキュアを実質的に率いていたも同然なことで不満の感想が来たそうだ」

 

「参加したあたしだって、ガチで拷問されて大変だったってのに……」

 

のぞみは大いに愚痴るが、ダイ・アナザー・デイの際は『現役時代の最強形態なのに、南斗鳳凰拳に手も足も出なかった』。そのことがコミカライズされ、物議を醸していると、ジャイアンは教える。

 

「南斗鳳凰拳に最強形態で手も足も出ないってことで、ジャイ子、編集と議論になってね。俺が写真を見せることで引き下がってくれたが……」

 

「あいつ、本当に強かったんだもんー!最強形態のプリキュアが束になっても敵わないって、現役時代のラスボスより強いんですけどー!」

 

主人公格のプリキュアが束になっても、南斗鳳凰拳は返り討ちにせしめた。しかも、飛行能力を持つ『現役時代の最強形態』を。コミカライズでは安易と批判されたが、実際に起こった出来事であり、のぞみは鞭で叩かれまくり、救出時には輸血が必要なまでに弱っていた。

 

「プリキュアになってて、コスチュームが破けるまで鞭で叩かれたし、輸血してもらったんだから。で、そいつと先輩は普通に戦えるから、『沽券に関わる』って思っちゃったよ」

 

プリキュア達はその当時は『現役時代に+αされている程度の強さ』であったので、既にエイトセンシズ以上の領域に到達済みの黒江とは大きな差が横たわっていた。更に言えば、良くも悪くも、『正規の戦闘訓練を受けていない』ために、動きが読まれやすかった。そのため、扶桑海七勇士は『聖闘士』の資格を持つ者が過半数であることの映像も扶桑のニュース映画で流されている。

 

「扶桑も大変だよ。君たちのような異能持ちがある世代までに集中しているから、綾香さん達をCMに起用できんと嘆いている」

 

「先輩達から芳佳の代までに、異能持ちが出まくってたのわかったし、江藤参謀の若い頃のミスが原因で、世代間対立になっちゃったからね。だから、あたしや調、芳佳を起用せざるを得なくてね」

 

「どの世代だね?仕事の扶桑での取引先の娘さんが海軍だが、君らに反発していた」

 

「だいたい、あの時の18~15くらい。今は半分くらいがMATに行ってる。海軍の魔女は撃墜王制度の創設に反対してたからなぁ」

 

ジャイアンは扶桑の商社とも取引を初めているが、土地柄、『商社の娘が魔女である』事も当たり前であった。元々、海軍航空隊は『撃墜王制度の公式化は隊員を天狗にさせるだけである。撃墜王の存在は認めるが、対外的に誇っていいものではない。遠征時に舐められないように撃墜数を大本営に申告するだけでいい』という独自の風土を持っていたため、日本に『自分たちのエゴ』と切り捨てられることが許せなかったのだ。更に言えば、扶桑海事変以来、陸軍航空隊に対外的な存在感を取られ続けてきたことは海軍航空のコンプレックスであった。故に、坂本や北郷は多数派から敵対意識を持たれたのである。

 

「でも、先輩達の一件で国際問題になったから、記録の残ってない海軍は一気に不利になった。先輩達が事変からトップエースのままになる計算だもんなぁ」

 

「そのことだが、海軍の最強は誰になる?」

 

「そうだねぇ。若本徹子かな。坂本先輩の同期で、正規の士官学校に入ってない叩き上げでね。どこかで士官になったって言ってたっけ。先輩曰く『ケンカっ早いタイプの第一世代』だっけ。あんま会ったことないんだよなー」

 

海軍の最強の魔女は若本徹子とされるが、芳佳の台頭により、霞んだ感が否めなくなった上、本人の加齢で『若齢期の荒々しさ』が失われた(指揮官になったため)ため、最近は看板倒れであり、空軍設立の直前には、飛行学校の二期後輩の西沢にお株を奪われつつあった。若本は士官への昇進後は偵察情報を重視する頭脳派に転じていたため、根っからのドッグファイターであった西沢とは折り合いが悪い。坂本曰く、「徹子は頭がいいが、義子は本能のままに暴れるからな。だが、それじゃいかんから、空軍に移籍させた。私の代わりに、宮藤の面倒を見させたい」とのこと。

 

「坂本先輩の親友ポジも西沢さんに取られてるし、事変中は先輩達に食ってかかる、今の直枝のポジションだったっていうからなぁ」

 

 

のぞみはダイ・アナザー・デイ以降は魔女として、既に古参になりつつあった錦のポジションを引き継いだため、たまにストライカーで出撃する事がある。そのため、黒江直率の中隊の三番機のポジションとなっていたが、ストライカーでの飛行は少ないために、他の魔女から怪訝な目で見られてもいる。とはいえ、素体の錦の戦歴は意外に激戦地を渡り歩いており、史実では504の一翼を担っていたほどの手練である。技能は失われたわけでは無いので、その気になれば、プリキュアの姿でシールドを張れるのである。

 

「魔女としての力も持ってるままでプリキュアに戻ったから、ストライカーで飛べるんだよね。今度、向こうのあたしに見せようかなぁ?」

 

魔女としての本懐も遂げられる状態で『別の異能が覚醒したも同然であったのだが、プリキュアとして戦った方が戦闘の自由度が高いのと、ストライカーで出ると、色々と制約も出てしまうので、『予備的な戦闘手段』になっているのが現状だ。

 

「監督!」

 

「どうした?」

 

「次のピッチャーが腹痛を起こして、トイレに籠っちゃいました!!」

 

「何だと!?」

 

ジャイアンがリコの次に考えていたピッチャーが腹痛を起こすという珍事をマネージャーが知らせてきた。控えピッチャーがあまりいないジャイアンズにとっては大惨事であった。

 

「確か、試合はあと三回くらいだね」

 

「あ、ああ。最後の二回、出てくれるかね」

 

「任せて」

 

リコは苦戦しているようで、変化球を捉えられ始めているのか、バットの快音が聞こえてくる。

 

「ウォーミングアップしていい?」

 

「俺がキャッチャー役をやろう。昔とった杵柄だ」

 

のぞみはこうして、リリーフピッチャーとしてマウンドに立つこととなる。プリキュアの姿ながら、本名で登板するのである。野球は錦が趣味でしていたり、夏木りん/キュアルージュがソフトボール部の要であったのと、前世で教師であった頃に、野球部の顧問をやらされていた事があるので、やれないことはないのである。

 

(前世で若い頃、顧問やらされたっけ。あの時は嫌だったけど……これはこれで……)

 

「いちか、のぞみに帽子とグローブをやれ。」

 

「わ、わかりましたー!」」

 

「お願い」

 

シャーリーはいちかにグローブと帽子を取ってこさせ、のぞみは渡された帽子を被る。プリキュアとしての特長的な髪型は隠れる形になるが、一応は野球選手らしくなる。(なお、キュアマジカルは髪型の都合上、普通の帽子が被れないので、そのまま参加した)のぞみは知る由もないが、現役時代のある時のオールスターズ戦の折、イエロープリキュア達は野球対決で敵と戦った事があるし、ラブリーは現役時代に野球で敵と戦った事があることはのぞみも知っていた。

 

「さて…と。やるよ!」

 

と、意気込む。のぞみがこうして、『現役時代』から15年以上の年月が経過しても、プリキュアとして活動している事が知れ渡ると、今度は『現役を終えた後、相応に年月を重ねていたら?』という仮想が捗る事になり、2023年度にそれを一つの形にした番組が出来上がる事になる。戦士である事を求められ、その生き様に殉ずる事になった事は『一つの世界における結果』である。プリキュアであった過去を糧に、その後の平穏を生きる世界線もあるはず。そのような『空想』くらいはしていいはずという考えで。ある種の皮肉だが、魔女の世界へ転生したのぞみは『戦士と平穏な生活の両立を目指し、それが現実の前に、脆くも破綻した』世界線にいた。現実は非情である事の表れとも言えるが、戦士に専念する事になろうと、相応の立場での幸せはあるのだ。いつの時代でも、英雄に人々が抱く『英雄は不滅である』という幻想に縛られているかもしれないが、のぞみは今の生活に間違いなく『幸せ』を感じていた。

 

 

 

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