第百三十八話「1949年」
――カールスラントへの抑え込みは警察組織などの官僚組織にも及び、史実の行いを理由にした粛清で大量の失職者を出し、現地経済を死に体にしかける失態を演じたドイツ。結局、現地救済に却って、自分達が出費する羽目に陥った挙句の果てに、カールスラントの技術立国化を支えてきた人材は国外脱出済みという散々たる結果を招いた。その人材は日本連邦とキングス・ユニオンが獲得。ドイツ連邦は優秀な科学者を他国に流出させる愚を犯し、カールスラントの地力を削いでしまったのだ――
――ダイ・アナザー・デイでアメリカが日本連邦に与えた戦闘機のライセンスは日本側の思惑もあり、戦後第四世代までの膨大なもの。それを武器に、日本連邦空軍の近代化は急速なものとなった。元々、1945年春の段階で橘花や火龍の実機生産にこぎつけていた扶桑の工業力と基礎技術力もあり、ダイ・アナザー・デイを名目にF-86の普及に成功。通常兵器主体に製造ラインを切り替えた。そして、1949年にはF-4Eも登場しているが、その次の世代の機体も生産開始も時期が決められる段階にあった。この矢継ぎ早の世代交代は現場から苦情が出るほどに迅速であったが、零戦からの世代交代に失敗したままで終戦したことに深いトラウマがある日本側が押し通した事でもある。実際にはF-4に早期に機種更新したことで航空戦力では格差が生じていたが、日本側は『早期に第四世代機へ切り替える』方針を通達。世代差による優位を絶対的にしたい思惑があるのだろうが、現実には機種更新速度が迅速すぎると、パイロットの育成が追いつかない問題がある。F-4Eさえ、まだ教導部隊にも定数がないのだ。(また、空中勤務者は少尉以上になるという規則ができたので、芳佳は空中勤務者としても、1949年では少佐となっている。)――
――1949年を迎えると、扶桑は一気に太平洋戦争の戦線構築ムード一色に染まった。日向咲、美翔舞の2人も軍務に慣れ、プリキュアコミュニティはひとまずの完成を見たのもこの頃だ。芳佳Bは別の自分が英雄と讃えられ、なおかつ軍医としても栄達していることに羨ましさを感じていた。しかも、1948年に父の弟子筋の技師と入籍済みで、この頃には産休であるというトンデモ情報に目を回す事態に陥った――
「わ、私が……けっこん……さんきゅ……」
芳佳Bはホテルでの部屋で目を回した。1949年の世界の自分はやることを終えた上で子供を儲けようとしていることが衝撃的だった。Aが送ってきた手紙には、妊娠した『19歳を迎える自分とその傍らで寄り添う夫』の写真が添えられており、別世界での選択とは言え、18歳で入籍し、19歳には子供を儲けようとする自分が信じられない。しかも、一族の通例通りに子を設けても魔力は微塵も衰えないオマケつき。(純潔でなければ、シールドは張れないというのは、時空管理局の調査で誤解と判明している)
「よ、芳佳ちゃん、しっかり!」
「うーん……」
強いショックで目を回す芳佳B。とは言え、別の道を辿った自分の姿がそこにはあった。
「入るぞー……って、何しとんだお前…」
「あ、シャーリーさん」
「オッス」
シャーリーが入ってきた。とは言え、容姿は見分けのために北条響のそれに変えているのと、口調がぶっきらぼうであるので、A世界のシャーリーである。
「黒江さんに言われて、様子を見に来た」
「シャーリーさん。この世界だと、姿を変えられるんですか?」
「一応な。この世界じゃエースパイロットで顔が売れてるから、姿変えねーとプライベートを楽しめねーんだ」
リーネBにそう教える。シャーリーは入隊時は原隊を追放されそうになった問題児扱いだったが、A世界ではすっかり、連合軍随一のエースパイロット(紅月カレンとしての記憶が覚醒めたのもあって)扱いである。元々、速度記録保持者だったので、それなりに顔が売れていたが、スイートプリキュアの中心戦士であり、紅月カレンの生まれ変わりということも知れ渡ったので余計に多忙になった上、容姿を変えないとプライベートがないともボヤく。
「ルッキーニちゃんはどうしたんですか。もういい加減に休暇は…。」
「それがなー。休暇は終わったんだけどよ、ロマーニャ軍の意向で本国勤務になってさ。本土防空の研修みたいだ」
ルッキーニがなぜ帰ってこないのか?それを誤魔化すのも一苦労である。ルッキーニは今、クロエ・フォン・アインツベルンになっているからだ。リーネ自身も美遊・エーデルフェルトになっているが、それについては感づいているようだ。
「そうですか。それと、あの美遊って子……もしかして、この世界の私自身が……」
「気づいてたのか?」
「名前と姿を変えた事情があるだろうから、気づいてることは誰にも。でも、聞いておきたいんです。なんでそうなったのか」
「わかった」
シャーリーはここでリーネBに『美遊・エーデルフェルトはリーネAの過去生での姿と名である』事、その記憶が覚醒めた事、ビショップ家の家名、その七光りと判断されそうな立場に重荷を感じていた事実を伝えた。その相克の末にビショップの名を捨て、美遊として生きる事を選んだ事も教えた。また、ビショップ家の現世代ウィッチとしての立場はリーネの妹が継いだとも言う。
「そうですか。やっぱり……。でも、表向きは特務だなんて」
「お前のかーちゃん向けの説明だよ」
「お母さんは気が荒いですから」
事実を知り、スッキリした顔のリーネB。薄々と気づいていたからだろう。
「私で良ければ協力します。お母さん達に顔見せないと、信憑性ないでしょう?」
「あたしの一存じゃきめらんねぇ。後で上に裁可仰いでおくよ」
リーネBはこうして、B世界のウィッチでは初めて、A世界側の事情に協力を選んだ。美遊になった自分が多忙な事を鑑みての事だろう。この後、シャーリーはショックから立ち直った芳佳Bから質問攻めに逢い、タジタジになるのだった。
――繰り返すが、A世界は太平洋戦争の最中である。兵器は史実戦後水準に発達し、1949年には紫電改やキ100も陳腐化を理由に引退し始めていた。そんな時代の第一線機はF-4EJ改やF-104Jといった超音速機に様変わりしていた。もっとも、これは史実の開発速度を懸念した日本の後押しによるもので、実際には敵機はまだレシプロ機も残存し、最新鋭艦載機がF4DスカイレイとF3Hデーモン、F7UがF9Fクーガーの代替機として出回り始めた頃。陸上ではセンチュリーシリーズが最新鋭である頃だ。それを凌ぐF-4EJ改は性能面では上々であるが、複座は扶桑海軍には不評で、F-14が単座にされた理由の一つとなった。とは言え、矢継ぎ早に戦闘機が超音速・ミサイル搭載機にまで更新されたため、要員教育がまったく追いつかない問題が露呈した。基本がそれほど変化がない機甲部隊と違い、ミサイル・レーダー・無線装備・M粒子で根本的に変化した空戦は扶桑の航空関係者を驚愕させ、教育課程の見直しを強いられたが、切り替え作業は何年にも及ぶ長期的なものに及び、空自の教官派遣も行われた。だが、人数が多すぎたためか、開戦までに切り替えは間に合わず、1949年時点でも、実戦に耐えられる練度の前線部隊は数える程度であった――
――64の一連の華々しい活躍はプロパガンダに多用されていたが、逆に言えば、全体の教育が行き渡らない内に開戦の運びとなった扶桑軍の窮状の表れであった。空軍近代化はまだ途中の段階であり、陸軍のほうが進捗状況は良かった。とは言え、そこをザンスカール帝国残党に突かれた感はある。ミーナBはAが失脚寸前に追い込まれた経緯を出撃から遡ること一週間前には聞かされていた。BはAが坂本への恋愛感情から、客観的な目で三人を見れなくなっており、そのせいで冷遇したことを知った。とは言え、一世代前のエースであるので、表向きは教官でもさせるつもりだったのだろうと推測した――
――出撃から一週間前 ホテルのロビー――
「私自身、恥ずかしい話ね。貴方への恋愛感情で司令部からの増員を冷遇したなんて」
「それがもとで、司令部の計画が一つ潰れてな。それがお前の立場を悪くした要因だ」
「つまり、本当は前世の記憶を持つウィッチを各統合戦闘航空団に教官として送り込んで、練度を底上げする計画だったのね?」
「うむ、当初はその予定だった。あの三人はその試金石も兼ねての派遣だったんだが…」
「私が結果的にそれを潰したのね?」
「ああ。ハルトマンにさえ危惧されるレベルで冷遇してな。司令部を信用しないのはわかるが、状況的に悪手だった」
「そちらの私は書類を見たの?」
「見たのは査問の前日。時すでに遅しだ。ハルトマンやバルクホルンにも忠告させたんだが…。恋は盲目だな。参ったよ」
坂本AがミーナAと口論になったのはその日のこと。ミーナは錯乱し、坂本に銃口を向け、ハルトマンに取り押さえられるという事態になった。それを査問の日にもやらかし、ロンメルの判断で隔離され、指揮はレイブンズと赤松の合議で決められた。ダイ・アナザー・デイの直前の事だ。
「それで、お前自身が隊内不和を招いたのと、あいつらの実力が統合戦闘航空団の現役世代の比ではない事を知らしめるを得なくなってな。その上、整備兵の一件が司令部にバレた。お前は二回も査問される羽目に陥った。見事に計画はパー。更に別の世界から宇宙戦艦が提供されたんで、統合戦闘航空団をいくつも維持する必要が無くなってな。それで501が他を吸収合併し、その501も実質的に64に吸収合併されたようなものだ」
この時に、おおよその経緯を聞かされたミーナB。Gウィッチの集中運用が決められた最大要因が自分の失敗にあることを聞かされ、表情を曇らせる。その失敗で自分は軍での出世コースから脱落し、カールスラントの政治的立場を悪化させてしまったというのは、負い目を感じさせるには充分だった。
「……そう。貴方は今、どういう役職に?」
「書類上は空母航空団の管制官だが、実際には64Fの飛行長だ。本当は海軍の後輩がやるはずだったんだが、その後輩が仕事を放り投げてな。その補償人事で64Fに関わることになった。腐れ縁だな」
志賀が後の時代に負い目として語り、民間軍事会社を興した後に政府系の仕事を多く引き受けていく理由もそれである。坂本は志賀を推薦して横空に転属したが、結局は自分が出戻る形になったからである。結果を見るなら、坂本が飛行長であることで、B世界側との接触がうまく行っているのも事実である。
「四年前の決戦はこの世界のウィッチの地位を変えた。確かに、黒江たちのような一騎当千の強者はいたが、戦況そのものを左右したのは通常兵器だよ」
と、ダイ・アナザー・デイでの状況を教えた。『一騎当千の強者だけではどうにもならない』規模であったため、事後にサボタージュを起こしたとして、ウィッチの地位が低下。そのバッシングに耐えられなかった者たちがクーデターを強行。余計に事態を悪化させてしまい、64Fの威光でどうにか雇用が守られたに過ぎない。その上で軍に残った者たちこそが勇者だと坂本Aは言う。
「確かにネウロイとの戦いに特化された私達では、通常兵器の相手はきつい。だからって、人々が求めている時に動かなかったのでは、侮蔑されて当たり前よ」
「そうだ。……おっと。もう、こんな時間か。すまんが、今日は他の部隊の教習に行かなくてはならんのでな。これ以上の詳しいことは入れ違いに来る後輩に聞いてくれ」
「わかったわ」
坂本Aは次の仕事のため、ホテルを去る。入れ違いに来たのが、この日はローテーションに入っていないのぞみであった。この時期には少佐に昇進している。服装は空軍の制服が前線にはまだ出回ってないため、以前の所属先の陸軍の軍服の上からフライトジャケットを羽織っている。
「あなたが…。久しぶりね」
「お久しぶりです、夢原のぞみです」
のぞみは敬礼しつつ、挨拶する。以前に会っていたため、面識はある。のぞみがA世界の錦のポジションを受け継いだ事も知っている。
「美緒から聞いたのだけど、四年前の出来事の詳しい経緯を教えてくれるかしら」
「わかりました」
この時に坂本から違う立場からのダイ・アナザー・デイの内幕を聞いたミーナB。のぞみは錦の立場を受け継いだため、その時点では黒江たちへの反発組に入っていたが、感服したという形で黒江たちの配下として活動するようになった事、自分を皮切りに、プリキュア戦士の過去生を持つ、あるいは死亡後にそのまま転生してきた者、現役時代からそのままやってきたなどの理由で、プリキュア戦士らが64Fの戦列に加わっていった事、自分はダイ・アナザー・デイで絶対無敵というわけにもいかず、苦い敗北も味わったことも赤裸々に語った。
「ヒロインだからって、絶対無敵ってわけじゃないのが世の中、いい塩梅っていうか…」
「往年の52JGもそうだったわ。だから、いくら質がいいって言っても、毎回勝てるとは限らない。あなたはそれをその時に学んだのね」
「ええ。恥ずかしながら。現役時代は勝たなきゃならなかったんで、明確に負けたのは……そうですね。現役時代は数回だけです」
「世の中、そうはうまくいかないものよ。この世界での私のように」
「ですね。人格の変化のことは?」
「彼女自身から聞かされたわ。別の世界のことだから、いくら同一人物といっても、私がどうこういう権利はないわ。音楽家になる事をどういう形でもいいから、実現してくれとは言ったけれどね」
そう言って、微笑むミーナB。Aは坂本への恋愛感情が坂本が慕う黒江たちへの嫉妬という形で表面化したのが問題の原因だったが、Bは基本的にAより精神的に成熟しており、別の自分を第三者の視点で見れている。ただし、注文はつけたとは明言する。
「私の家は、かの音楽家『バッハ』の係累にあたるの。だから、音楽家になるのは当然と思ってたわ。だから、軍のあれこれを知ったのは入隊した後。この世界の私が閣下らの武功を知らなかったのも無理もない。責任を取ったのは当然のことね」
「冷静ですね」
「第三者として見れば、この結論に達するわ。否応なしにね」
のぞみはこの時に『坂本が絡むことがなければ、ミーナは冷静沈着な将校である』事を改めて知った。A世界では既に人格は入れ替わっているが、実情を知ることがせめての『元の人格への鎮魂歌』だと考えるのだった。
――のぞみがそうであるように、プリキュア戦士たちは便宜上、航空部隊の要員として扱われている。これはパワーアップで飛行能力が付く場合が基本だからである。また、日本では有名人なので、ブロマイドも飛ぶように売れるので、プロパガンダにも駆り出されている。キュアドリーム、キュアフェリーチェ、キュアハート、キュアピーチの四名は特に人気があるため、ダイ・アナザー・デイの頃から駆り出されており、ドリームとピーチが捕虜になった際には敵の宣伝に利用されてしまうほどであった。未来でのデザリアム戦役で何人かが機動兵器パイロットも務めるようになり、戦後にそれが宣伝されると、搭乗機にツッコミが殺到した。キュアメロディが紅蓮系のナイトメアフレームというのはわかるが、キュアドリームがガンダムダブルエックスに落ち着いたというのは、ツッコミが殺到した――
――そのツッコミが始まったのは、札幌五輪の最中に日本向けに放映されたキュアブロッサムとキュアハッピー(産休前)のラジオ番組からだった――
「えー…。21世紀は神奈川の『タカくん』から質問です。どうして、キュアドリームがダブルエックスなのですか?ここはLFOじゃないんですか?です」
キュアハッピーが困った声で読み上げる。かなり困る類の質問だからだ。デザリアム戦役の顛末はウィッチ世界を通して、21世紀日本にも伝わっている。キュアドリームがシャイニングブレイク→ガンダムX→ダブルエックスと言う風に乗り継いだ事は反響が特に大きかった。声の妖精さん的意味では『ニルヴァーシュに乗るのが普通ではないのか?』とツッコミが相次いだ。当然ながら、未来世界にLFOは存在しないので、MSに乗るのは当然である。シャイニングブレイクは偶然に乗り込み、ガンダムXからはのび太が用意した新型機という体裁だ。
「LFOがないからねー。トラパー無くて再現出来ないんだよねー。……ほら、ドリームの知り合いにそのガンダムの本来のパイロットと似た声の人いるからさー」
かなり苦しい説明だ。アニメでの搭乗者『ガロード・ラン』は、のぞみがかつて戦っていた『ブンビー』と声がかなり似ている。そこからこじつけようとしている。(ちなみに、その事を知った、かれんとこまちの世界のブンビーは『それは私のガンダムだぞ!!』と怒り、事情を知る者からすればだが、コミカルな台詞を言い放ったとか)
「ハッピー、かなりこじつけですよ。それ」
「だってあれ、フラッシュシステムとサテライトキャノン付きのガンダムだよ。世界が世界なら、ニュータイプ専用機だし…」
ガンダムX系統の機体は世界が世界なら、ニュータイプ専用機にカテゴライズされる特殊なガンダムである。ブロッサムもこじつけとつっこむが、それしか言いようがないのも事実だ。ちなみに、りん(キュアルージュ)は記憶喪失からの回復後、のぞみの近況を伝えにB世界に来た際にブンビーと交戦し、その時にブンビーが『うおおおおお!!それは私のガンダムだぞー!!』と喚いた際、こう言い返した。
――『あんた、ガンダム手に入れたって、ジャンク屋に売っちゃうでしょ!!』――
…と。ガロード・ランは『ガンダム、売るよ!!』が後世に有名な台詞の主人公なため、ブンビーもりんもそれを意識した言い争いになったという。
「そういえば、りんさん。それでブンビーさんと口論になったとか?」
「あはは…。やっぱりー…。やると思ったんだよねー。サテライトキャノンとかを持つことの意味とか言い合うとか思ったら、そこかいな…」
呆れるキュアハッピー。とは言え、プリキュア5のB世界にいるブンビーはガロード・ランと関係がありそうな口ぶりであることは分かった。ブンビーはB世界でもA世界同様に更正し、零細企業を興す事になるが、ドリームがガンダムダブルエックスに乗った事には思う事があったのか、伝言として『過ちを繰り返させるな』という事を伝えている。それはデザリアム戦役の最中の事であり、のぞみがダブルエックスに乗り込んだ時には、りんは記憶喪失から回復していることがわかる。そして、ドリームはネオ・ジオンの行おうとした行為を『過ち』と断じた啖呵も有名だ。
――『あんた達の……一年戦争やデラーズ紛争、ネオ・ジオン戦争で負けたことの憂さ晴らしなんて、そんな勝手な理由で……!!何億人が死ぬなんて……そんな
その啖呵と共に最大パワーのツインサテライトキャノンを放った光景は日本側にも動画という形で伝わり、如何にもガンダムパイロットっぽいシリアスな言い回しだった事、なんとなくであるが、ガロード・ランを彷彿とさせるフレーズでツインサテライトキャノンを放ったからか、ウィッチ世界が太平洋戦争を迎える頃にはオタク界隈で話題になっていた。ジオンを崩壊へ追いやる最後のトドメがサテライトキャノンという『ガンダムの持つ力』という点で、23世紀のジオニストは『我々はガンダムを超えられなかったのか…』と涙を禁じ得なかった。だが、サテライトキャノンはとある世界を荒廃に追いやった元凶でもあるため、『ある世界を荒廃に追いやった力も使いようによっては、世界を守る光になれる』ということの証明でもある。また、ガンダムダブルエックスのアニメでの元々の製造目的である『地球連邦軍の象徴』を考えれば、目的を充分に果たしたと言える。
「ドリームはガンダムパイロットの責務を充分に果たしたと言えます。その引き金で一つの戦争を終結に導いた。サテライトキャノンはたしかにアフターウォー世界を荒廃に追いやった力です。だけど、使いようによっては世界を救うための力になれるんです」
ブロッサムはそう〆る。それは世界をいくつも焼き払ってきたマジンガーZEROの力も、使い方を正せば『可能性を拓くための光』になるという事でもあり、ドリームへの批判にある『マジンガーZEROを滅ぼさなかった』選択のブロッサムなりの肯定でもあった。かの波動砲とて、古代アケーリアス崩壊の引き金でもあり、地球連邦を滅亡から救った可能性の光でもある。力はいくつもの側面を持つ。それをブロッサムはよく知っている。アリシア・テスタロッサとして、実母のプレシア・テスタロッサが多くの世界で自分を蘇生させるためにアルハザードの力を欲するあまりに狂気に染まったのを知るからだろう。
「ドリームはダブルエックスの愛称というか、ペットネームといおうか…決めたってさ」
「どんなのです、ハッピー。」
「本人曰く、『決めたよ。ドリームエクスパンションにするからね。夢を広げ、明日に進む力、だから、ガンダム・ドリーム(D)・エクスパンション(X)!』だって」
「かなり無理ありません?」
「ま、単語が間違ってるわけでもないし、単にダブルエックスって呼ぶのも、アニメ通りでつまらないしね。こじつけだけど、自分を示すアイコンになる機体だから、ドリームの名前を入れたかったみたい」
「そ、そうですか」
ドリームは独自にダブルエックスの愛称として『ドリームエクスパンション』と名付けた。ダブルエックスはドリームとの受領した機体の他には数機の予備機が存在するが、それぞれに別の愛称がつけられるきっかけとなる。ハッピーがそれに言及すると、反響がものすごく、その日の深夜に武子の執務室に某大手玩具メーカーからプラモ化の依頼が舞い込み、武子を閉口させたという。また、機体開発の背景に、野比一族や骨川コンツェルンの資金提供があった事が公表されると、骨川コンツェルンとのぞみの関係でちょっとした憶測を呼んだという。
――ラジオ番組は続く。そのラジオはホテルに居るB世界のウィッチ達も聞いていた。キュアハッピーがA世界の自分の持つ姿の一つであると知らされた芳佳Bは大いに羨ましがったが、この数ヶ月後に先の手紙を受け取るのである。芳佳Aの妊娠が判明し、業務をキュアアクア/水無月かれんに託して産休に入るのはラジオ番組の収録と放送から一週間後の金曜日の事。ラジオ番組は当然ながら続くため、キュアラブリーが代打として登板したという。プリキュア達はこうした広報業務もこなさなければならないが、メンバーが揃ったプリキュアは5とスイート、スプラッシュスターのみ。あとは虫食いである。ブロッサムのハートキャッチ!もムーンライトとマリンが未だ不在であるが、サンシャインがノリの良い性格になっていたため、ラジオに喜々として出てくれ、ブロッサムは大助かりだった。また、ブロッサムは現在の立場での実妹がフェイト・T・ハラオウンであるため、フェイトにも出演を依頼する。フェイトは快諾したが、それを聞きつけたなのはが自分も出たいと駄々をこね、ヴィヴィオに呆れられる一幕もあった。また、フェイトはフェイトで、聖闘士叙任後は一人称が俺であったり、某ラグナメイル乗りのように『スイッチが入ると』ものすごく汚い言葉遣いになるという特徴を持つため、ヴィヴィオから逆に心配される有様。出演へは紆余曲折があったのは言うまでもない。太平洋戦争の頃には、ヴィヴィオがミッドチルダで格闘技を始めていたので、プリキュアから格闘技を習いたいと言い出していたためもある。なのははシェルブリットが荒すぎて、フェイトは光速で早すぎるので参考にならないとは、ヴィヴィオの談。フェイトはインターミドルで優勝経験があるが、当時には既に獅子座の黄金聖闘士だったので、ライトニングプラズマ一発で済んでしまい、まるで試合にならない試合も多かった。また、なのはも23歳時点では流派東方不敗を極めきれてはおらず、手伝いに来る調に遅れを取る始末である。ダイ・アナザー・デイ時点では19歳前後だったなのはやフェイトも、太平洋戦争の頃には20代。なのはもだいぶ落ち着いてきたが、他の世界より気が若く、やんちゃする点が違う。シェルブリットを得たことで戦う機会が史実より多くなった事、ダイ・アナザー・デイのポカで出世コースから外れているため、出世と外聞を気にする必要がなくなったためでもある。フェイトは将来の提督候補ともされ、出世コースに乗っているが、元が執務官であったため、管理局の軍隊機能と警察機能の分離の際に人事部が扱いに困った一人でもある。とは言え、フェイト個人は『提督なんて、単に肩のこる仕事ではないか』と興味ゼロである。フェイトは黄金聖闘士にもなり、時空管理局の敏腕執務官と呼び声高い。この頃は迷っていたが、『警察機構に残り、執務官の仕事を続ける』という表明は同じ執務官である義兄のクロノ・ハラオウンを安堵させたという。――
――フェイトはある日、家の手伝いに来た調がそれについて尋ねた際にこう答えた――
「そうだな…。捜査が一番おもしろいからな。それに、特警ウインスペクターや特捜エクシードラフト、機動刑事ジバンというヒーローが日本にいるだろう?彼らだって警察機構のヒーローだ。それに、どんな相手か考えながら追い詰めていく捜査は心を滾らせる。執務官として犯罪者を追い詰め、捕らえる。正に民を守る正義とは思わないか?昔、子供の頃に研修で銀河連邦警察に出向して、ギャバンさんに教えを請いた事があってな…」
フェイトはメカトピア戦争に関わった縁から、一貫して地球連邦軍の任務に協力していくものの、自身は少女時代に宇宙刑事ギャバンの薫陶を受けたため、執務官を続ける事を最終的に選び、やがて組織再編で成立した時空管理局の警察機構に所属し、そこで功績を挙げ、組織の幹部へ登りつめていく。また、ギャバンの紹介で特警ウインスペクターから特捜エクシードラフトまでの生みの親『正木俊介』元・警視総監(最終階級。エクシードラフト在りし日までは警視監であった)との面会が叶ったのも、彼女の進路を決めたのである。