ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第百三十九話「1949年2」

――ミーナの失態はグレーテ・M・ゴロプの人種差別が露呈したのと同時期の事であり、カールスラントはせっかく得た501の運営権を手放す羽目になった。更にスコア認定の再調査ということで、カールスラント撃墜王の面目は丸つぶれ。ダイ・アナザー・デイ後期には日本連邦が完全に主導権を握った。1949年になると、多くの国の財政的疲弊は極限に達し、軍備の近代化どころでは無くなり、戦艦の運用を放棄する国も続出した。ロマーニャ海軍も財政的疲弊の都合で戦艦そのものの運用廃止が議論されたが、隣国がヴェネツィアであるために旧式戦艦の処分で済ませられた。(ウィッチ世界では戦艦は怪異への攻撃に必須の兵器と見做されていたためもある)とは言え、リットリオ級は当時には既に旧型扱いになっていた。主砲が38cm砲であったからだ。日米の超弩級戦艦対決にはお呼びでなかった上、より使用技術が上であるガリア最新鋭戦艦も大和型戦艦には歯が立たなかったからである。その大和型戦艦は基礎設計そのものは1930年代半ばだが、度重なる改装で外見含めて別物化しており、M動乱とダイ・アナザー・デイでは文字通りに主力戦艦の地位にあった。日本連邦は45年からその強化型を続々と登場させたが、他国からは『神経過敏じゃないのか?』と揶揄された――

 

 

 

 

 

――そもそも、ウィッチ世界でワシントン軍縮条約が結ばれたのは、今後の戦での戦艦の弾薬融通のためでもあったが、それは大和型戦艦の登場で形骸化した。連合軍の主要国の戦艦は尽くがモンタナ級の存在で旧態依然化。各国が研究していた対怪異装甲も対艦戦の増加でほぼ無意味と化した。大和型戦艦は46cm砲であったため、対艦戦闘での優位を1930年代から長く保てたが、それも怪しくなったので、遂には56cm砲に到達した。そこまでいくと、列車砲と同等の口径であるので、実効性に疑義が呈されたが、未来技術でとんでもない速射性を持つ事が判明。各国海軍を恐怖のどん底に陥れた。砲身命数も未来合金で長い事が判明したからだ。更に核兵器にさえ耐える構造である改大和型以降の戦艦はウィッチ世界の兵器では如何な攻撃でも『不沈』である事が示されてしまったため、戦艦の性能向上へ各国の興味が失われた。そこも日本連邦には思わぬ衝撃だった。日本連邦には戦艦削減/廃止派が多かったからだ――

 

 

 

 

――ある時(1946年頃)の評議会がまさにそれで、日本財務省は扶桑が戦艦を二桁も維持している事に疑義を呈している事が警察関係者から意見として出されたところから始まった。

 

「なぜあなた方は無駄に大きい戦艦を二桁も持つのか?いくら怪異の対応と言っても……大きすぎる」

 

「確かに戦艦は対艦兵器としては古臭い。ですが、怪異には重巡では対応しきれませんし、既に怪異は38cmまでの砲には耐性を有しています。他国の財政的疲弊で戦艦そのものの数が減っている以上、我が連合艦隊は最低でも12隻は維持せねばならんのです。それに艦艇に限らず、緊急に使える兵器は持っている1/3程度だから、たとえ12隻あっても四隻、二個戦隊しか対応出来ない計算になるからだ。そのために播磨、三笠、次期戦艦を矢継ぎ早に用意しとるのです」

 

「しかし、宇垣提督。大和型の性能的優位が危うくなってきただけで、砲の大口径化は安直では?」

 

「長砲身化で砲弾の初速を上げるよりも、弾頭重量を上げる方が威力向上には有効だから口径を大きくする。それが大口径化の理由だ。言っておくが、敷島は60cm砲で思案されたが、私や猪口君が止めたよ」

 

「なっ、列車砲より大口径では」

 

「そこまで行くと、さすがに色々と不都合が生ずるのでね。もっとも、56cm砲に耐えられる装甲など、宇宙戦艦に使われとる装甲材以外にはないから、安心したまえ」

 

56cm砲を艦載砲で使う事は三笠型の建造段階で異論があったが、仮想敵のバダン所属艦に同等の防御力を持つ大戦艦がいそうだったため、念には念を入れての採用となった。

 

「なあに、複線列車砲よりは小さい口径だ、しかし装填に時間がかかり過ぎても使い物にならんから、今後は技術供与も得られる51cm砲、もしくは56cmに収めようという話だ。念には念を入れての採用だったが、正解だったよ」

 

「なら、何故、従来の大和型に51cm砲を載っけなかったのです。こちら側の旧海軍の記録では、実際に検討…」

 

「武蔵を使って、実際に実験を行ったよ。だが、65000トン級の大和型では、51cm砲は連装三基がせいぜい。投射量は却って下がってしまう上に、射撃時の安定性が損なわれてしまうのでね。大和型の適正限界は48cmまで。そうなったために、新型を造る事になったのだ」

 

宇垣纏は大砲屋として有名な軍人である。その彼が言うことには説得力があった。

 

「新型は何と戦うのを想定しておいでです、宇垣提督。今の時点で既にモンタナに優越するのですぞ?」

 

「バダン。彼らが持つH級戦艦の後期型が仮想敵だ」

 

「H級?なんなのです、中将」

 

「君たちの記録にもあるだろう?ビスマルクの発達型だ。正確に言えば、ドイツの次世代戦艦の総称だ」

 

「馬鹿な。バダンはかつてのショッカー。ひいてはナチスのはず。彼らに大和を超える戦艦などが……あんな三流海軍に」

 

この場にエーリヒ・レーダー提督がいれば、顔を真赤にして怒鳴り散らす事間違いなしの言葉が海自の高官の口から飛び出す。

 

「彼らはヒンデンブルク号で信濃を幾度となく追い込んでいるのだがねぇ…。」

 

呆れ返る宇垣。

 

「カールスラントの連中にゃ聞かせられんな、こりゃ」

 

「然り」

 

山本五十六も海上幕僚長と共に苦笑する。

 

「見たまえ。ダイ・アナザー・デイの姿になる前の信濃が砲撃戦で追い込まれる映像だ」

 

M動乱の際の記録映像だが、信濃が第一、第二砲塔を使用不能にされたあげくに、大和型特有のマストも倒壊に追い込まれている無残な映像であった。

 

 

「君はこの報告書は読んでいないのかね?」

 

「い、いえ……」

 

「やれやれ。嘆かわしい。この評議会に出るのなら、必読だよ、君」

 

幕僚長が提示した報告書。日本連邦樹立後にまとめられたM動乱の海戦の報告書だ。映像はその時のものだ。Uボートによる追い打ちで隊列から落伍、あわや撃沈かというところまで追い込まれた信濃の断末魔。そこを救ったのが、当時に緊急で投入された三笠であったのだ。

 

「この時の損傷からの回復のため、本格的に改装を行ったのが現在の信濃だよ、君。あと二発でも魚雷が当たってれば転覆していたほどの重大な損傷だったのだ」

 

「敵を知り、己を知らば百戦危うからず、と言うが己の実力を半端に考えられては、一戦すら危ういな」

 

「申し訳ありません、皆さん。彼は任について日が浅く…」

 

陳謝する幕僚長。とは言え、敵海軍の実力を侮っていたところが扶桑にもあったのがM動乱だ。特にヒンデンブルクの攻防力は当時の大和型を遥かに凌いでおり、改装が進んでいない当時の大和型を瀕死に追い込むというのは扶桑軍も想定外だったのだ。その後に改装が行われたが、大和型三隻を相手にして対応できるヒンデンブルクの力は強大。扶桑が超大和型戦艦を増産するきっかけとなった。(ヒンデンブルクの攻防力では三笠にも引けを取らないものであり、大和型の単艦を通常の交戦距離で瀕死に追い込める)

 

「しかし、ヒンデンブルク号の砲口径は50cmとしか思えませんな。46cmを20発浴びても耐えられるというのは…」

 

大和型の長砲身化した砲はモンタナ級を貫けるはずだが、ヒンデンブルクはそれが10発当たろうとも、平気で打ち返した上、改装前の大和型の防御を軽く抜いてくる。映像を見ると、その巨大さは三笠型にも引けを取らない上、当時の連合艦隊主力を単艦で相手取り、撃退に追い込める強さを持っている。

 

「信じられん。連合艦隊主力が何十発と撃ち込んでも平然と撃ち返す上、一撃でポストユトランドタイプのバイタルパートを抜くなど」

 

「長門がよく戦えたものだと、小沢は関心しておったよ」

 

映像の海戦には長門、尾張、駿河、近江。当時に残存するポストユトランドタイプの艦が参戦していたが、ここで加賀型がいないことに気づく幕僚長。

 

「ん?加賀や土佐はどこに?」

 

「それがだね。あの二隻は参戦しておらん。ちょうど定期整備でな。いたとしても、戦力になれたか…」

 

宇垣はそういうが、加賀型は投射重量で紀伊型と長門を上回るもので、当時の第一戦隊では参加していない事が惜しまれたという。三笠とヒンデンブルクの実力は砲口径以外は拮抗しており、56cm砲の威力の前にヒンデンブルクも音を上げ、撤退する。映像は三笠の何度目かの咆哮で放たれた砲弾がヒンデンブルクのバイタルパートを遂に貫き、火災を起こし、撤退させるところで終わる。

 

「ヒンデンブルクはどこを貫かれたのです?」

 

「比較的に脆い箇所を一発が貫いたのだ。バイタルパートでも脆い箇所はどこかにある。そこに当たり、火災が起こって撤退していったのは事実だ」

 

扶桑海軍関係者も判断をしかねているが、ヒンデンブルクのバイタルパート内と思われる箇所に命中した56cm砲弾は何かの重要な箇所を貫き、破壊したのか、火災が起こった。

 

「おそらくは観測機の燃料庫に当たったと思われる。観測機の燃料庫が爆発すれば、内から破壊される危険もあるからな」

 

遠目からなのでよくわからないが、近代戦艦における危険箇所の一つにラッキーヒットしたと推測する扶桑海軍。だが、それまでに受けた損害も大きく、大和が小破、信濃、大破、甲斐、戦闘不能、ポストユトランド型も中破と、手痛いダメージを負い、数ヶ月以上も組織だっての動きを封じられた連合艦隊。対人戦での初陣はほろ苦いものになったのだ。評議会は続く。その次の議題は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

――ダイ・アナザー・デイでウィッチの存在の有無が戦局に何ら影響を及ぼす事がなかったのもあり、軍ウィッチの廃止論も熱を帯びたのが1945年秋から翌年の事。Gウィッチはプリキュア戦士も内包するため、意味合いが通常のウィッチと違うと見做されたからだ。とは言え、就職口を無くすわけにもいかないため、ウィッチの雇用は維持された。Gウィッチは『ウィッチであったが、その殻を超えた者』、あるいはウィッチ世界の常識を超える異能を持つ者』を便宜的に説明するための方便でもあったからだ――

 

 

 

 

 

 

――B世界の雁淵孝美は複雑な気持ちを抱えていた。自身の切り札『絶対魔眼』を遥かに超える力が存在する事、A世界の智子が絶対魔眼よりも上位の覚醒系固有魔法を有していながら、それに頼っていない事が原因であった――

 

 

 

 

 

――1949年に入ったばかりの頃――

 

「先輩の固有魔法は若本先輩と似たものですよね?」

 

「そうよ」

 

「なら、何故、それを使わないんです!私を舐めているのですか!?」

 

「あたしの本領はそれも超える領域のものだからよ」

 

その瞬間、孝美Bの真横を物凄い衝撃波が走り抜ける。孝美Bは冷や汗が流れるのを感じた。

 

「え……?」

 

「極超音速のパンチよ。普通のウィッチなら、シールドごと吹き飛ばされてるわ」

 

「き、極超音速!?」

 

「本気になれば、光速よ。怪異なんて物の数じゃないわ。この世界の私はウィッチそのものを超えたのよ」

 

そういった瞬間、覚醒を使用した姿を見せる。青い髪と銀の瞳。そして青い炎のようなオーラ。若本の覚醒よりも上位のものであるとビジュアル的にも理解できるものだ。ウィッチとしては究極の形態であると言えるが、それも限界があるため、智子は聖闘士になったのだ。

 

「この姿でも限界はあるわ。なら、それを超えるには、殻を破るしかない。この世界は科学が異能を超えだした世界なのよ、孝美」

 

智子は固有魔法を転生前は持っておらず、転生で覚醒系最高位の『変身』を得たが、それでもニュータイプの先読みや超能力にはねじ伏せられているため、ウィッチという殻を破るため、黒江同様に聖闘士の門戸を叩いた。オリンポス十二神に仕えるという条件はあれど、得られるものは大きい。

 

「科学が異能を?」

 

「そう。誘導ミサイルが普及して、レーダーも敵味方問わずに装備し始めて、ストライカーの世代交代どころか、宮藤理論の世代交代が必要になる時代なのよ」

 

「宮藤理論そのもの……?

 

「ええ。45年当時の宮藤理論じゃ、安定しての超音速飛行は不可能だったから、次世代理論が求められた。従来の欠点を是正して、安定しての超音速飛行を可能にした第二世代宮藤理論。これがこの時代の最新魔導理論」

 

第二世代宮藤理論は40年代後半から50年代後半までのストライカーに適応される理論だが、熟成と共に燃費の問題が生じたのと、シールド依存でない防御の模索がなされ、やがて装甲服型の第三世代宮藤理論へ世代交代を起こしていく。64Fはその第三世代ストライカーを有している。子孫達に持ってこさせたものだ。第二世代理論型は第一世代の区分でいう重ストライカーに分類され、総じて機動戦はあまり考慮されていないからだ。

 

「先輩方はそれを?」

 

「ええ。優遇措置を受けているから、持っているけれど、機動戦はあまり考慮されてない機種もあってね」

 

機動戦は第二世代ではF-4Eが辛うじて対応したが、それ以外で格闘戦可能なものは少ない。そのため、性能目標がISである第三世代のほうが扱いやすいと後世には評されている。

 

「一応、この姿になったことだし、技の一つでも見せてあげる」

 

智子は覚醒している姿で野球のボールを持つ。そして、大きく振りかぶってぶん投げる。

 

『真龍!!ハイドロブレイザー!!』

 

ハイドロブレイザーのパワーアップ版『真龍ハイドロブレイザー』である。本来はガイちゃんの技だが、この頃には野球、もしくはソフトボールの心得がある者に広まり、プリキュア達も使用する技となっている。その破壊力は超合金Zまでの金属を破壊できるという。智子も野球の心得はあるのと、サイコキネシスくらいは黄金聖闘士の通例通りに使えるため、使用可能。ハイドロブレイザーは最低でも、サイコキネシスか、それに匹敵するコントロールを持たないと再現できない技である。広場に放置されている、廃棄物の九七式中戦車改の残骸をハイドロブレイザーは粉砕せしめる。

 

「嘘……」

 

「これがこの世界で戦い抜くためのコツよ」

 

変身をそこで解く。実力の違いを見せるためのデモンストレーションは成功したと言える。

 

「あの、どうして九七式がこんなところに?」

 

「旧式になって余ったのは払い下げとかで廃棄されたのよ。今は中戦車で40トンいくような時代だから」

 

B世界では中戦車はせいぜい30トン級だが、A世界では40トン級も存在する。搭載火砲も90ミリ砲は当たり前、大口径だと100ミリ超えの時代である。そんな時代では、47ミリ砲の九七式は博物館の肥やしになるしかないのである。

 

「ついてらっしゃい。この世界での戦車の発達を見せてあげるわ」

 

智子は孝美Bをジープに乗せ、任地近くの戦争博物館に連れて行った。その博物館にはダイ・アナザー・デイまでに使われた兵器が収蔵されており、ダイ・アナザー・デイの際に使用された外国産戦車もあった。

 

 

 

 

「ブリタリアとカールスラントの戦車がなんで扶桑に?」

 

「四年前の作戦の時に緊急で購入したのよ。作戦後に余り物は博物館に入れられたわけ」

 

ティーガーⅠはこの時代では旧式化したため、多くは博物館の収蔵物になっている。とは言え、まともな重戦車がなかった扶桑陸軍の懐事情で現役を続けている車両も多いが。

 

「うちの機甲部隊はまともな重戦車もなかったけれど、四年前に大量にチヌ以前の形式が処分された時に決戦になってね。それで現地の判断で緊急購入されたのよ」

 

ティーガーⅠは扶桑陸軍に衝撃を与え、多くの機甲部隊要員を火力教徒に変えた。とは言え、ティーガーⅠはM26の登場で旧型になり、ケーニッヒティーガーもドイツの意向で扶桑陸軍に提供されている。とは言え、この頃にはそれも旧型に分類されるが。

 

「戦車は決戦で一気に主力兵器の座を射止めたけれど、空戦ウィッチは決定力に欠ける上、サボタージュが問題になってね。主から従に立場が落ちたのよ。折しも人員整理の最中でね。それもウィッチの立場低下に作用した」

 

ウィッチは空戦分野で決定力に欠けたため、空戦での主力の座から滑り落ち、それまでと真逆の立場に落ちたのがA世界である。また、他の世界と違い、501の面々もダイ・アナザー・デイでは小型機中心のスコアであり、大型機は主に機動兵器搭乗時に挙げているためにウィッチの万能性に疑義が呈され、1946年には空戦ウィッチの重装備化が採択された。それが第二世代理論の方向性を決めたと言っていい。とは言え、格闘戦が軽視されたわけではないのも微妙なラインである。

 

「第二世代理論の実現が成ったから、ウィッチは社会的排除を免れたようなものよ。あくまで、この世界での話だけど、科学が発達すれば、そうなり得るわ」

 

「それがこの重戦車たちなのですか?」

 

「そうよ。そして、空戦を変えたのがこいつよ」

 

「これは……奮進式の戦闘機?」

 

「リベリオンが完成させたF-86。ペットネームはセイバー。メッサーシャルフ、こちらでいうメッサーシュミットのMe262なんて、目じゃない機動性を持つ戦闘機よ」

 

ダイ・アナザー・デイ後期の主力戦闘機の一つになったF-86。塗装は史実空自のそれに準じるものであり、自衛隊出身義勇兵の部隊に配備されていた個体であるのがわかる。ダイ・アナザー・デイで胴体内蔵式ジェット機の旧来型ジェット機への優位性を敵のF-84Fと共に示した名機であるが、ダイ・アナザー・デイ以降はF-104Jやドラケンなどと世代交代が進められている。F-4EJ改が早期に配備されたのは格闘戦への配慮だが、『F-8のほうがいい』と言われる有様なので、F-14単座型の開発が急がれている。この不評の影響でF-4EJ改は戦闘爆撃機として用いられ、F-8が制空戦闘機として用いられる事が空母航空団では多かった。とは言え、当時の敵艦戦は良くて遷音速機であるため、優位を持つのには変わりはない。他国が良くて、戦後第一世代水準のジェット機を配備するのに精一杯なのに対し、日本連邦海軍空母航空団は超音速機を制空戦闘機として有しているのだから。

 

 

「これはレシプロと変わりない格闘戦を行えるとして、短期間に大量配備されたわ。扶桑にあったカールスラント製の劣化コピーを駆逐して、ね。それでカールスラントの権威はガタ落ち、以後はリベリオンが航空開発の主導権を握ったわ」

 

ドイツ領邦連邦が政治的理由で自主開発を取りやめたのを以て、カールスラント航空業界の栄光は終焉した。1946年以降の世界の航空業界の主導権は自由リベリオンの手に渡り、扶桑軍は基本的に(日米安全保障条約の兼ね合いもあり)旧西側諸国の機体のライセンス生産を主体に航空産業を維持していく。これに不満を持つ層がクーデターを起こしたので、技術者を宥めるために自主開発機の枠を設けることになった。その第一号が震電改二なのだ。

 

「今はこれ以上のものが出たから、退役し始めてるわ。音の壁は超えちゃえば、どうということはないしね」

 

「でも、急にそこまで技術が?」

 

「敵との技術開発競争の時代に入ったからよ。とは言え、ジェット機の時代を本当の意味で拓いたのはこいつよ」

 

F-86は扶桑にジェット時代の黎明をもたらした。この機体の軽快さで敵機と戦った者たちの意見で、扶桑の自主開発機は機動性重視傾向が強まることになる。とは言え、ダイ・アナザー・デイでの重爆との死闘で武装の充実は命題であり、比較的に早い段階でレーザー兵装の開発に血道を挙げる。これは史実より有視界戦闘の頻度が遥かに高いがためで、第二次世界大戦世代が現役の内にミサイルが生まれた故の経緯である。

 

「とは言え、やることはあまり変わらないわ。誘導ミサイルが選択肢に加わっただけ。万能でもなんでもないし、持てる火力が上がっただけよ」

 

と、智子はミサイルを手放しで賛美する風潮には冷淡であるところを見せた。元からドッグファイターである智子は、ミサイルをあまり信用しない。

 

「ん、リットリオ級の一隻の退役式典ね」

 

「え、リットリオ級って、作られて10年も経ってませんよ?」

 

「この世界じゃ、性能が急速に陳腐化したのよ。敵が46cm砲艦を量産しだしたからよ。遠距離砲戦に持ち込まれたら、あの船は持たないわ」

 

地中海の門番しかできないリットリオ級はその後継艦級『インペロ』級戦艦の登場で置き換えがされる事がダイ・アナザー・デイの際に決まり、この時期に一番艦が竣工した。元はリットリオ級三番艦の候補名であったが、この世界では、インペロ級戦艦という後継艦のネームシップになった。リットリオ級のネガを潰し、航続距離を伸ばすために大型化。砲もこの当時の第一線級である45cm砲を有する。タラント空襲で大打撃を受けたロマーニャ海軍の再建のシンボル。それに伴い、リットリオの退役式典が行われた。その中継映像が博物館のTV中継で流されている。退役後は記念艦が予定されている。ロマーニャはヴェネツィアがこの時期に内部クーデターで連合軍復帰を示唆したことで、イタリア半島統一に向けて希望が見えてきたため、気を良くしたのだが、些かの勇み足であった。ヴェネツィアはティターンズには与したくなくとも、ロマーニャに国が飲み込まれることは嫌だったのだ。そこがイタリア半島の統一が1990年代初頭となる最大の理由であった。

 

「だから、改良型が必要になったのよ。敵の巨大戦艦と戦えるフネをね。もっとも、それはウチもだけど」

 

「敵は怪異でないなら、どこなのです」

 

「四年前の戦いで戦ったのは、異世界の軍勢に中枢を乗っ取られたリベリオン合衆国。彼らが現在の敵なのよ。そして、その反抗の象徴がこの艦。実物は800mを超える大戦艦よ」

 

戦争博物館の船部門の展示室の中央に誇らしげに飾られている大模型のモデルの戦艦こそ、敷島型戦艦(二代)。大和型戦艦の究極発展型であり、60口径56cm砲を三連装で一二門を有する超弩級戦艦である。艦容は改大和型戦艦の構造物配置と塔楼デザインなどを受け継ぐものであり、宇宙戦艦ヤマトを海に浮かべたような印象を受ける。56cm砲を十二門持つのは、この艦が当初は61cm三連装九門で構想された名残りである。

 

「大和型に似てますね」

 

「大和型の後継艦で、強化型だもの。サイズはまるで違うけれど」

 

「こんなの、扶桑本国のドックには入りませんよ」

 

「浮きドックや地下ドックで整備してるわ。大型化したのは同盟国の要望もあるのよね」

 

智子は呆れ気味だが、三笠以降の超大和型戦艦は日本側の戦艦廃止論を黙らせるため、『ツァーリ・ボンバにも耐える』のを目標に造られたため、必然的に大型化した。敷島型戦艦が800m、未来世界のカイラム級の倍にもなる巨体になったのは、航空機運用も考慮されたからである。防御力を過剰に強化したため、ウィッチ世界の兵器では突破は不可能。望みのある唯一の手段は拿捕しかない。日本の財務と防衛官僚は『ミサイル兵装や高性能魚雷に耐えられるようにしろとは言ったが、そこまでやるとは思わなかった』と困惑している。とは言え、空母機動部隊が近代化してしまうと、アメリカでさえも正規空母は11隻が限度なので、それより財政的余裕のない日本連邦では、原子力動力の兵器が持てないこともあり、戦艦は抑止力として再注目され、大和型戦艦や播磨型の数隻を常駐させてもらっている。(日本が自前で戦艦を建造することは無理なため)とは言え、原子力空母をも上回る巨体の戦艦をほしがる心理も無理からぬことで、同情した扶桑軍がニミッツ級航空母艦をも超える規模の播磨型を送り込むことで応え、満足させている。大和型戦艦の血族が世界最大最強である事が日本国民の総意であるが、航空主兵論が航空機そのものの革新による高額化、ミサイル兵装の高額化、国民の意思などの理由で破綻を来たした扶桑軍は質を強化することで揃えにくくなり始めた数を補うしかないため、財政面では空軍装備が扶桑の財政を圧迫していた。そこもレシプロ戦闘機や爆撃機の退役が始まった理由である。

 

「呉はこの世界だと、敵の襲撃でメタメタに破壊されてね。紀伊がその時に砲撃戦の末に撃沈されたの。それで国民は仇討ちを望むようになって、空母不要論まで言い出した。その兼ね合いで巨大戦艦は生まれたのよ」

 

「極端では?」

 

「大衆なんてのはね、そんなものよ。乗組員の遺族が赤煉瓦の前で号泣して抗議すれば、たちまち軍部への強い圧力になるわ。空母は四年前の決戦で敵がエセックスをも凌ぐミッドウェイを出してしてね。翔鶴や大鳳も問題外の性能だったから、次期空母が構想されて、やっと承認されたわ」

 

この時に智子が言及した『次期空母』とは、45年のミッドウェイ級の登場で大鳳型すら陳腐化したため、海軍が信濃型の代替物としても期待して構想した大型空母だが、扶桑国民の空母懐疑論による圧力やジェット機の艦上機化による規模の策定の混乱で先送りにされていたものだが、紆余曲折を経て、船体規模を85000トン級に決められ、1948年冬に仕様策定。この年から建造開始されたものだ。完成は1952年前後を予定されている。

 

「こちらでもあります。45000トン級空母ですよね?たしかに大きいですけど……同じ規模で作れば…」

 

「招来発展性って奴よ。ジェットが艦上機になる時代を迎えたから、長く使えるフネが求められてるのよ。それで承認が得られなかったの」

 

85000トン級は史実のキティ・ホーク級最終形態に相当する大きさ。設計図もそれを元に起こされ、扶桑で建造される。扶桑はそれを5隻前後の数で整備し、大戦型空母の代替にしたい思惑があった。レシプロ機の退役開始で雲龍型の他用途転用や海上護衛総隊への配置換えが始まったためだ。また、カールスラントから返却された愛鷹(天城型四番艦)の状態が予想より悪く、戦列復帰が断念されたため、代艦は是が非でも欲しがられた。(カールスラントの管理不届きは厳しく糾弾され、結果的にカールスラント海軍への田舎海軍とのレッテルは覆せなくなった)だが、日本の財務官僚は『空軍の拡充でいいではないか』と冷淡であった。だが、空自の『空中給油を作戦の度にするなど、パイロットを過労死させたいのか』という提言が認められ、建造が1948年に認められ、49年に建艦が開始された。当初予定より四年の遅延であり、日本も流石に扶桑の置かれている世界情勢が史実と違うことに気がついたのだ。また、史実と違い、中国が既に滅亡しており、近代的装備を備えたアジア唯一無二の大国であるが故に『軍事的に縮小があまりできない』立場であるのが理解されたのである。

 

「それと、この世界は軍事教練が廃止されてね。軍隊の悪いところが宣伝されたから、志願者も減ったし、入る人数も絶望的に減った。だから、あたしみたいな『ベテラン』が重宝がられてるのよ」

 

「どうしてですか?」

 

「同盟国の文部科学省が強引に進めたのよ。後でウィッチへの迫害に繋がったのを理解して、工科学校を承認したけど、後手後手でね」

 

日本は扶桑の軍事教練を有無を言わせずに廃止したが、軍隊の少なからずの将校の職場を奪う形となった。また、ウィッチ候補生が学校から放逐されたため、地域で迫害されて自殺する事件も起こったため、工科学校でウィッチ候補生を囲い込んで保護する事、教官や参謀の前線配置が場当たり的に行われた。亡き八木大佐や明樂大佐の着任はその一環でもあった。だが、後者は上手くいかないケースが64Fでの二例のみならず、あちらこちらで頻発。結局、行き場の確保のため、教育部隊の再拡充に踏み切るしかなかった。とは言え、途中まで世代交代が進んでいたために実戦経験者の数が全体像に減っていたのも事実なため、扶桑海事変後期~大戦初期の経験がある者は優先的に前線に配置された。

 

「世代交代が色々な理由で堰き止められたから、この時代になっても扶桑海世代が軍の中核を担ってるのよ。坂本は引退したけど、あたし達は現役のまま」

 

「坂本さんが引退したのに、先輩が現役なのはどうしてですか?」

 

「言ったでしょ、特異体質なのよ。何万人に一人のね」

 

それが公の場におけるGウィッチ化した者達が現役を続ける上での説明だった。定期的に処置を受ける必要があるRウィッチと違い、転生で加齢による減衰を乗り越えたり、元からそうだった者は絶頂期の魔力値を維持できる。(芳佳はこの世界では、魔力の枯渇からの復活による魔法圧の異常は起こしていない)

 

「坂本は急激に減退してね。飛行長に任ぜられてからは現役を退いたわ。飛行はできる程度は保ったけれどね」

 

坂本は史実では501からも退くが、この世界では『飛行長』と言うことで隊に留まり、志賀の64F脱退の補償人事で結局、64Fでもそのまま飛行長になっている。坂本はこれを腐れ縁と称し、書類上は空母航空団に属しながら、実際は64Fで勤務している。この時期には20代の半ばに差し掛かっている。魔力が残っているため、他世界と違い、24歳近くになっても、往時の髪形のままである。智子は現役を続けている上、肉体の加齢が止まっているA世界では、戦闘服のままでいることも増えた。これは空軍の新制服が数年も決まらなかったためで、フライトジャケット姿がどうにも決まらなかった兼ね合いでもある。智子は戦闘服姿が映えたため、軍服姿やフライトジャケット姿を奇異に見られてしまうという本人涙目の状況になっているためだ。

 

「あたし達みたいな特異体質はいじめを受けやすくてね。四年前の決戦で常識や固定観念を覆してやったわ、清々しいくらいに。とは言え、戦局全体に影響は僅かしか与えられなかったけど」

 

ダイ・アナザー・デイは近代兵器を如何にして上手く用い、要地を抑えるかという戦争の基本に立ち返った戦であり、Gウィッチの活躍は局地的には影響が及ぶが、戦局そのものには影響はさほどない。のび太とゴルゴの破壊工作のほうがよほど影響を及ぼしている。とは言え、リベリオンの圧倒的生産量が現実問題になったのもダイ・アナザー・デイで、戦略爆撃にも関わらず、一日で1000単位の機体が生産できる工業力はブリタニアと扶桑の戦時生産数の合算よりも高い。そのため、1945年から太平洋戦争で取るべき戦略を議論しているが、日本側が推奨するものは『大量破壊、大量虐殺もやむ無し』の苛烈な戦略爆撃を含む戦術であり、史実米軍もかくやのものだったが、怪異との戦争を鑑み、五大湖工業地帯の破壊は避けたい扶桑とで対立が生じてしまい、答えが出ていなかった。64Fが防戦の要となっている裏では、戦争指導の対立によるグダグダや軍の人員育成の躓きが複合して起こっており、政治的には足並みが乱れまくりな事情がある。

 

「とは言え、政治的都合で若年での志願が規制された中じゃ、『あがりを克服したウィッチ』は重宝されるのよ。軍と別組織に行くほうが多くなったから、新規は殆ど入らないし」

 

「何故ですか。ウィッチはなるべく若齢のほうが…」

 

「異世界の超科学でウィッチの寿命のコントロールが可能になったのと、あまり若年すぎても、急激に発達した兵器の操作や教育の手間がかかる事が分かってね。同盟国の倫理の都合もあって、15歳からに志願が規制されたのよ。多分に向こうの都合だけど、多少は配慮してくれたわ。18歳だと、ウィッチは志願したがらないもの」

 

「ウィッチは元来、10代までが戦士としての寿命ですからね」

 

「発達した兵器を使うには、ある程度の基礎がいるようになったってのが大きいわね。あたしらは別の異能を特訓なりで身につけて、一騎当千と言われるようになったけれど、通常のウィッチはそうじゃないし、単に銃を撃って、刀を振るってれば戦えた時代は終わったのもあって、農村部が軍を忌避するようになったのよ」

 

孝美Bへ事情を説明しつつも、愚痴が入る智子。仕方がないが、これにはクーデター鎮圧時の扶桑国民の萎縮も入った事情であった。

 

 

――そもそも、軍隊は高等教育を受けられる絶好の機会のはずだが、農村部には『女に教育はいらない』という前時代的思考が未だ残っていたのと、ウィッチになることの社会的ステイタスが全体的に低下した結果、ウィッチ候補生が通常の学校から排斥される流れとなったのもあり、農村部では穀潰し扱いされる事も珍しくなくなり、社会問題となっていた。農業高校の登場などの教育制度の転換と師範学校の廃止はその対策と教育制度近代化のためだが、今度は授業料無料と在籍中の生活の保障などが担保されていたため、『優秀だが、貧困層に属する家庭の子供への救済策』的側面があった師範学校の在籍者の取り扱いで紛糾してしまい、結局、『予備士官』が平時に教職へつく事が規制されてしまったのと併せ、社会的混乱が発生。その煽りで、のぞみは以前から検討中であった『平時における教職への転職』を諦めざるを得なくなった。(その権利を軍が保証したのに、文部科学省がそれを嘲笑して、書類を突き返したために国際問題になりかけた。その対象者がプリキュアのその時点での筆頭格であったキュアドリームだったからで、日本側はこの議論で女性陣が中心になって紛糾。のぞみは自分達の都合を扶桑へ押し付ける日本の教育関係機関に深く失望し、クーデターで死亡した同僚(錦の元所属先で、だが)の台場大尉を弔う意味合いもあり、結局は職業軍人のままでいる事を選んだ。とは言え、今後の要員教育には携わっていく)また、日本の教育関係機関は扶桑の大学研究室などに自分達の『軍事研究忌避』の方針を押し付けようとし、扶桑の反発で揉めたのも1946年からの時期で、扶桑の研究開発に支障が生じていた。この一連の混乱を後世では『1946年政変』と称しているという。そんな状況なため、ニューレインボープランや第二世代宮藤理論が開発中は極秘にされたわけだ――

 

 

「そんなこんなで志願数は三年前から低迷、扶桑海事変の再映画化も持ち上がってるわ」

 

「そんな事情が……この世界に…」

 

「そう。複雑なのよ。だから、ウチの部隊は戦果を求められてるのよ。ウィッチが軍に今後も必要であり続けるための、ね。民主主義国家の軍隊の泣き所ね」

 

扶桑は元来、皇室の権限が強かったが、1947年以降は新憲法下で改革が進み、内閣と官僚が力をつけた。更に軍隊の予算も財務官僚の精査で決まるようになったため、ウィッチ兵科は人数の減少を理由に将来的解消の方向性で決まっていたが、昭和天皇の竹井少将への温情で『少将の生存中は維持する』となった。とは言え、第二世代理論の登場があったとは言え、ウィッチはダイ・アナザー・デイのサボタージュで白眼視される土壌が出来上がっており、社会的にはかなり苦しい立場である。Gウィッチはそんな時代に『模範』となる事を求められる立場であるため、求められるのは戦果。そこも泣き所なのは事実だった。智子の言葉からはそんな苦労が偲ばれ、孝美Bも先刻の反発はどこへやら、同情に至ったのだった。

 

 

 

 

 

 

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