――ウィッチ世界での戦艦は急速に主力兵器としての地位をミサイル艦へ譲り始めた。とは言え、ミサイルは怪異には必ずしも有効ではないため、儀礼的意味合いも含め、戦艦の保有は続けられた。日本連邦やキングス・ユニオンのように『改装、もしくは新造で近代装備てんこ盛り』にできる国はウィッチ世界では限られていたが、必要上、持つしかない国もあった――
――ロマーニャはイタリア共和国の勧めでミサイル艦への転換を始めたが、タラント空襲後の怪異の空襲でその艦が大破させられたため、戦艦の保有を続けることになった。その計画で1949年に生まれたのが、インペロである。リットリオの代艦であり、45cm砲を有する。ガリアに戦艦を新造できる余力がもはや失われたため、ダイ・アナザー・デイ後の地中海の抑止力が求められた結果である。とは言え、前型のプリエーゼ式水中防御隔壁は修理に時間がかかる上、タラントで醜態を晒したために採用はされなかったため、バルジを有する構造になっている。戦後イタリアの優秀な兵器を搭載したこと、機関の近代化や船体設計の変更で航続距離が延伸されたことで史実のネガが無くなった。これは史実のソビエツキー・ソユーズの元になった設計のさらなる改良型と言えるものだった。これを知ったカールスラント海軍は戦艦の新造を志向したが、ドイツがそれに反対した事、M動乱で何隻かの鹵獲戦艦を譲渡されていたため、政治的判断で鹵獲艦の再整備で充分と判断された。(当時のカールスラント海軍のトップであるカール・デーニッツが潜水艦主義だったのも不幸だった)とは言え、既に陳腐化が明らかであるビスマルク級よりは強力なH級を得られるのは僥倖であったと言える――
――ガリア海軍は最新最強と目されたアルザス級が鹵獲され、敵の手で完成された事、ダイ・アナザー・デイでそれが使われ、大和型戦艦の血族に退けられたために面目丸つぶれとなった。とは言え、46cm以上の艦砲を持つ大和型戦艦の血族相手に渡り合えた船は少なかったため、そこは溜飲を下げた点であった。残された三、四番艦の船体を完成させようとしたガリア海軍だが、ペリーヌ・クロステルマンが議会で反対し、海軍用の資材を復興に回させたため、ガリア海軍はズタボロになったままであった。とは言え、ペリーヌは『軍は国土が復興した後に再建するべし』とする信念を持っていたため、一概に責められるものではない。黒江たちの経験した過去生よりは希望はある結果だった――
――キングス・ユニオンは空母機動部隊の大拡張のために、『基地の肥やし』になって久しい予備艦のダイヤモンド級戦艦(金剛型戦艦の本国運用版)の船体の状態が良い余剰艦を空母へ改装し、今後の試金石とし、1948年末から49年春にかけて、三隻が完成した。空母機動部隊の先駆者の一つでありながら、本国での扱いは良くなかった空母機動部隊だが、ダイ・アナザー・デイでの活躍で一気に海軍主力へ躍り出た。日本連邦より質は劣るとは言え、自前でジェット艦上機を用意し、運用できるのは、自由リベリオンと日本連邦を除けば、彼らだけである。また、史実と違い、コモンウェルスが離れなかったため、財政は危ういが、本国が主戦場から外れたために安定基調になったために軍備そのものは近代化名目での純減傾向だが、史実よりは大英帝国の体裁は保てたと言える。――
――1949年のある日。シャーリーBは自分の速度記録がどうなったのかと、別の自分自身に問いただした。すると、A世界では世界情勢の急変でそれどころでなくなり、シャーリー自身の記録は皮肉なことに、それで保たれたと説明された。とは言え、シャーリーが速度記録を出した際に使った『ラピット号』はA世界ではなんと、21世紀のアメリカ合衆国のスミソニアン航空宇宙博物館に収蔵されてしまったため、シャーリーは新規に二号車を作った。仮面ライダー達から提供された改造サイクロン号のエンジンのパワーに耐える構造で作り、デザインも新サイクロンを思わせるスタイリッシュなものになった二号車はウィッチ世界では40年は塗り替えられないレベルの新記録を樹立。(見かけは250CC程度の排気量のマシンに見えるため、シャーリーがエントリーした1000CC以下のクラスで問題なしとされた)それを芳佳への結婚祝いにしたと説明した――
「嘘だろ……250マイルを超えたのかよ、お前!?」
「ダチが600馬力超えのエンジンを調達して、それを載っけたラピット号マークⅡでな」
「マークⅡ?ちょっと待て、ラピット号はどうしたんだよ?」
「博物館が買い取ったんだよ。リベリオンが分裂したと言ったろ?その時にな。断るわけにもいかなくてな。多分、50年は塗り替えられないと思うぜ」
時速400キロ。そこまでいくと、20世紀末期のスーパーマシン『ハヤブサ』を以ても不可能な領域であるため、実際には60年は安泰であった。新ラピット号は『マーク2』とも呼ばれ、外観は新サイクロン号に近い。エンジンは改造サイクロンのものを流用しているが、シャーリーのファインチューニングで新サイクロン並の速度を叩き出した。これは公式記録であるため、シャーリーAは『仮面ライダーを除けば、人類最速』である。なお、仮面ライダーのマシンは昭和ライダーで平均で時速550キロを超える(現役のマシン換算)驚異的速さだが、そこに並び立てる速度を打ち立てたため、シャーリーは本名でも著名人である。
「250って……。よくそんな速さ……」
「あんま速すぎても、車輪が浮いちまって、制御できなくなるからな。そこが限度なんだ」
「一般人に明るい話題を提供したくても、扶桑人は戦争になると、娯楽を顧みないからな。宮藤の結婚祝いにやったわけよ」
「結婚祝い、ねぇ」
シャーリーは扶桑人を『戦闘民族』と称する一方、日本人を『タガを外されると、何するかわからない』とも評した。それは特攻も辞さない自己犠牲精神を理解できず、ダイ・アナザー・デイで精神を病んだリベリオン人が多いからだ。
「扶桑人はなんなんだ?」
「本質は戦闘民族さ。そこを理解できなきゃ、扶桑人とはやっていけない。自分達の何かが侵されてブチ切れたら、敵を皆殺しにしかねないほどの苛烈さを隠し持ってる。元の世界に帰ったら、それを肝に銘じときな」
自分が過去にそうだったため、シャーリーAはBに忠告する。Aは麦野沈利の苛烈さも発現したため、完全にブチ切れた場合は麦野沈利の粗暴な口調に変化する。そこも含めて、である。(あまりに怖いため、ルッキーニBが号泣したほど)
「あのさ、数ヶ月前のルッキーニのことは侘びとく。それと、お前が怖すぎて、ルッキーニのやつ、やっちまったぞ?」
「こっちもブチ切れすぎたよ。お前には迷惑かけた」
「あれでルッキーニのやつ、あたしにしばらく近づかなかったんだぞ?なんなんだよ、あの光を撃ちまくる能力」
「スマン。ありゃ、あたしの持つ固有能力の一つ『原子崩し』。正式には粒機波形高速砲。要は生身でビーム撃てる能力なんだけどよ。そっちのルッキーニをブルらせちまったのは謝る」
「あの時のお前、ゴロツキみてぇな口調だったぞ?なーにが『ブ・チ・コ・ロ・シ・か・く・て・い・ね』だよ」
「……スマン。キレると自分でも危ないスイッチが入ってなぁ……」
繰り返すが、シャーリーAは完全にキレると前後の見境が無くなり、麦野沈利のように『完全に理性のタガが外れる』。ルッキーニBが騒動を起こした際に、シャーリーAはブチ切れ、そう発言して、原子崩しで追いかけ回した。シャーリーBはそれに思いっきり引いていたのは言うまでもない。(ちなみにその時、黒江が顔面蒼白になり、『バーロー!ルッキーニをフレ/ンダみてぇにする気か!』と殴り飛ばして止めている。シャーリーAが麦野沈利の転生でもある事を念頭に置いての発言だ)ルッキーニBは心の奥底から恐怖し、サーニャBと一緒に寝るなど、自業自得ではあるが、しばらく寄り付かなかった。
「ヤバ過ぎるだろ!!お前、本当にあたしなのかよ」
「うん。ほんとスマン……」
シャーリーAは『切れたら怖い』という評判も伝わっているため、キュアメロディでもある割には親御受けが悪い。プリキュア戦士でもある割に人気投票でネタ枠扱いにされているのは、麦野沈利の苛烈さ、紅月カレンのガサツさも併せ持つからだろう。(ただし、シャーリーや北条響としての面倒見が良いところも併せ持つため、人物像は複雑怪奇である)そのため、あくまで現役当時の人物像に+α程度に留まったのぞみが毎年の軍内の人気投票で上位なのだ。
「その割にスーパーヒロインしやがって!羨ましいじゃねーか~!」
「前世からの宿命だから、好きで始めたわけでもないけど、まぁ、楽しんでるぜ」
「あ、シャーリー。ここにいたんだ」
「どした、のぞみ。なんか用か?」
「パットン親父が呼んでるよ」
「あの親父が?今度はなんだよ」
「P-51H履いた姿をブロマイドにしたいんだってさ。ほら…」
「ああ、なるほど」
ジョージ・パットンからの呼び出しを伝えにやってきたのぞみ。この時には既にシャーリーAの親友であり、ヒロイン仲間でもあることや士官学校でシャーリーと同期にあたる『同期の桜』なことはB側にも知られている。そして、中島錦が転じた存在であるとも。
「ん、じゃな。後は任す」
「あーい。親父によろしく」
二人はプリキュアの戦友でもあるのと、軍で同期なので、生前よりかなり気安い関係なのがわかるやりとりだ。
「お前、この世界の中島なんだって?」
「元はね。今は前世での『夢原のぞみ』を名乗ってる。姿も前世のに戻ったから」
のぞみは錦の肉体を受け継ぐ際に、背丈は生前と錦本来のものより長身になっているためにシャーリーと並んでも、それほど大差なくなっている。錦であった頃の面影は体の運動神経くらいである。
「しっかし、本当に原型ないよなぁ。髪の色もマゼンタピンクだし」
「前世からさ、これは。その代わり、扶桑の実家には帰りづらくなったよ」
「確かになぁ」
のぞみの髪の色は父方の隔世遺伝で表れたとのことだが、遠い先祖の一人が欧州系の女性と結婚したらしきことしか知らされていない。髪の色も変化したため、扶桑の名家とされる中島家には帰りづらいと愚痴っており、姉が父から当主を継承する日を待っているとの事。
「お前、魔力は維持してるけど、活躍はもっぱらヒロインとしてだな?」
「ま、ウィッチとしては『統合戦闘航空団にはありふれてる能力』しか持ってないし、プリキュアになったほうが万能だしね」
錦は統合戦闘航空団のウィッチでは、ごくありふれた能力しか持っていなかったため、のぞみとしての自我とプリキュア能力覚醒後は『飛行資格の維持』のために飛ぶ程度に留まっている。また、プリキュアになっていれば、この時期には仮面ライダーに引けを取らない攻防力を有するため、活躍はもっぱら『キュアドリーム』としてであった。(加えて、ZEROとの融合でダイナミック系スーパーロボットの技を扱えるようになったため、単純なスペックと特性は戦闘向きになり、後輩で言えばキュアラブリー寄りになったと言える)
「で、なんだよ、その剣は」
「特訓で使ってるフルーレだよ。最近は変身前でも使える様になったからね」
プリキュア5は合体技用のフルーレを有しているが、自己意思での召喚は不可能だった。その一方で、ドリームの現役時代の究極形態でのフルーレは自己意思で召喚できるため、この時期には特訓用として使っていた。(実戦にはショルダースライサーやエンペラーソードなどの大剣を使う)この時期には先輩のキュアブルーム(キュアブライト)/日向咲にリーダー格を譲っているため、以前より素の天真爛漫な姿を見せている。
「一昨年よりなんか…アホな顔するの増えてないか?」
「あたしより上の先輩が来てくれたから、いい機会と思って、コミュニティの顔役を譲ったからね。柄じゃないんだ、リーダーって」
のぞみはリーダーの地位に執着はないが、なぎさがあまりにもリーダーとしては頼りないため、咲が先に現れたら、コミュニティの地位を譲る腹積もりだった。現役時代の共闘でなぎさは周りは引っ張れるが、指示を出せない事が判明。その時はえらい目にあったため、咲がやってきたら、咲にコミュニティの役職を譲ると決めていた。もし、なぎさが聞いたら、顔を真赤にするのは目に見えているが、事実である。
「あたし、序列が三番目だったから、顔役任せられてたけど、柄じゃなくて、困ってたんだ。そこに一つ上の先輩が来てくれたから、役職を押し付けちゃった」
「お前もやるなぁ」
プリキュアコミュニティは1948年のある時期からは、スプラッシュスターの二人が束ねている。のぞみは譲った後も補佐役としてはコミュニティの仕事をしてはいるが、以前よりは楽になっている。咲と舞が面倒なコミュニティ間の会議などを引き受けてくれたからで、そこも咲が役職の引き続きを引き受けてくれた恩恵と言える。
「前は忙しすぎたから、今くらいが丁度いいさ。軍内でのコミュニティの維持も大変さ」
「戦友会だか隊友会みたいなもんだからな」
軍隊内では部隊毎に相互扶助コミュニティがある。日本軍に属していた者の戦友会、戦後日本の自衛隊OBの隊友会がその例だ。他には在郷軍人会もあるが、現役軍人がコミュニティを持つ点では戦前日本の有志による集まりに近いが、あくまで『公職に奉職したプリキュア戦士の相互扶助』目的で運営されている。現役時代に生徒会役員(生徒会長)の経験者が運営面を取り仕切っており、ピンクでは相田マナが唯一、運営にタッチしている。(元・生徒会長であるので)
「そうでなくても忙しいさ。別世界じゃ、顔がめっちゃ売れてるから、プリキュア姿のほうが却って気楽に休日過ごせたりするよ」
「そーゆーもんかぁ?」
「うん。ヒロインも楽じゃないよ?サービスしないといけないしさ」
風来坊のような活動が公的に認められている歴代昭和ライダーと違い、公的機関に奉職した歴代プリキュア達はファンサービスも仕事の内である。のぞみは休日は息抜きも兼ねて、野比家にお邪魔するようになっていたが、キュアドリームに変身していたほうが却って気楽に過ごせたという逆転現象が起こっており、その時に同行していたキュアミント/秋元こまちも困惑していた。日本では変身前のほうが目立つからでもあるが、それも面白い逆転現象であった。
「でも、悪い気はしないだろ?」
「そりゃそうだけど、親子連れの親にさ、『子供の頃に見てました!!』って言われてみ?来るよ?」
「いーじゃん。野球で言えばさ、ベーブ・ルースみたいで」
「そりゃそーだけどさー…」
この時代のリベリオンのメジャリーグはルー・ゲーリックの時代も終わって、ディマジオ以降の世代になっているが、シャーリーはベーブ・ルースを引き合いに出した。親が見ていたというと、彼なのだろう。
「あたしの世界に来たドラえもんよりは良いんじゃない?孫連れたおじいさんに『子供時代からのファンです』とか言われてたし」
「ん、あんたは…たしか、時空管理局の」
「高町なのは三等空佐。フェイト執務官の元同僚さ」
「あれー、なのは。どうしたのさ」
「ちょうど、つぼみちゃんにお使い頼まれてさ」
なのはは珍しく、時空管理局の制服姿だった。ミッドチルダが地球連邦政府の傘下として組み入れられ、再編された後は軍事部門に属したため、この時点ではフェイトと仕事場は別れている。ダイ・アナザー・デイ後はのぞみと年齢が近い事、お互いに子育て経験がある事から、友人関係になったらしく、成人後にしては珍しいタメ口だ。
「つぼみちゃんに?」
「南洋島名産の花とか果実の資料を買ってって頼まれちゃって。ヴィヴィオを見てあげるからって言われて、つい、ね」
アリシア・テスタロッサ、別名義、花咲つぼみは生前は祖母同様の植物学者だったため、転生後も個人的に植物学の研究をしており、南洋島に行きたがっていた。キュアブロッサムであるので、コミュニティには名を連ねているものの、本職が研究職である都合、学会などで中々来れず、キュアブロッサムとしての活動も殆どできていないが、のぞみの一件ではカウンセリングで活躍しており、一応、プリキュア戦士としての本分は忘れていない。なのはの義娘『ヴィヴィオ』が格闘技を始めた後は歴代プリキュアが折を見て鍛えており、つぼみも経験則から仕込んでいた。義母の姉なので、アリシアはヴィヴィオから見れば『伯母』だが、本人は『そんな齢じゃないです!』と憤慨中だ。
「そういや、つぼみちゃんからみたら、あの子は」
「うん。姪なんだけど、歳的にまだ、つぼみちゃん――アリシアちゃん――は若いじゃん?」
「うん、言えてる。と、いうより、つぼみちゃんを3人目のママって思ってないかな。ノビスケくんもはーちゃんの事を自分のおねーちゃんって思ってるしさ」
「はーちゃん、そんな事言ってたなぁ。そろそろ本当の関係を教えるべきかなぁとか言ってたよ」
「あたし達、精神的はともかく、肉体は歳食わないからなぁ。Gウィッチになると」
「おい、ちっとまて!あんたら、なにげにすげえこと話してねーか」
「シャーリーだって、この世界に来てからは歳食ってないっしょ」
「あたしはこの世界のシャーロットじゃねーからいいんだよ。あんたらのことだよ!」
B世界のウィッチは違う世界線の存在であるため、A世界にいる場合は肉体に加齢が起きない。シャーリーBはツッコミたい点を突いたが、自分もそうである現状なので、論点をずらすことが精一杯だ。坂本Bは減衰期であったので、嬉しがったが。
「あたしらさ、転生で魂のポテンシャルが上がって、尚且つ今生のポテンシャルに上乗せだから、人間の枷がさ」
「二つ三つ飛んじゃってるみたいなんだよね。だから、ある一定から肉体的には歳取らないわけよ。止まる年齢は個人差だけど」
なのはとのぞみはお互いに頷く。肉体の加齢が止まった年齢は17歳前後。人間の肉体的には絶頂期にあたる。黒江達より二歳上だが、これは個人差である。
「その割に出世してなくね?」
「あたしは前線でドンパチするのが仕事だから。なのはは教導隊にいるんだけど、教導でミスをやらかしてね」
「バツがついて、エリートコースから外れたわけ。その分、気楽だけどね」
立花響の一件でエリートコースから外れたなのはは教導隊からの除籍は免れたが、アグレッサーとしての実務で食いつないでいる。これは教導隊では閑職とされる。口で教えることに適性がなければ、教導隊では冷や飯食いにされる。なのはは飛行技能のみが必要であるとされたので、教導隊を去る選択肢もあった。だが、通常部隊が減ってしまった動乱後では持て余される事が目に見えているので、籍だけ置いているに等しい。
「アグレッサーの仕事なんでしょ?」
「口下手なとこでケチついたから、上司に睨まれてさ。時空管理局の英雄扱いだから、パワハラ受けるようになってさ。酒開けるようになったよ」
この時期には19歳以前のように取り繕う事はやめており、勤務を終えると、居酒屋で飲む事も多くなったというなのは。エリートコースから外れ、周囲がチヤホヤしなくなった故に味わう中間管理職の悲哀である。
「大変だね」
「エリートコースから外れるってのは気楽だけど、周りからあることないこと言われるってことさ。子供の頃に魔導師としては苦労してなかったツケかもね」
愚痴が入るなのは。
「あ、なのは。前髪に白髪が…」
「え!?最近、上司に一日一回は嫌味言われてんからなー。それで、あれに覚醒めたから、ベルカ式に手出したよ。調ちゃんから教えてもらってさ」
「あの子は古代式だよ?」
「近代はスバルから教えてもらってる」
なのははこの時期にはベルカ式を身に着け、評価を持ち直し始めたという。調からは古代ベルカ式を、スバルからは近代ベルカ式を会得したからで、シェルブリットの突破力もあり、砲撃もできる近接寄りの魔導師として知られるようになった。砲撃の撃ちすぎは体を壊すということを早期に知った故の結果であった。なお、シェルブリットに覚醒めたため、指ぬきグローブをするようになっており、同位体が砲撃特化型なのに対し、オールラウンダーに成長した。(戦士としては優秀だが、教官としてはダメだったパターンだが)
「あれ?なのは、前に同位体にレイジングハートを見せたら、泣かれたとか言ってなかった?」
「今回は子供の時の同位体だったから、キラキラな目で見られたよ。泣いたのはフェイトちゃんのほう」
苦笑いするなのは。今回の転生では、闇の書事件当時の時間軸に飛ばされてしまい、前世と似た事をしたので、結局は前世同様に『戦艦大和の甲板掃除をやらされている』。とは言え、今回は迎えの援軍が真ゲッタードラゴンとダブル魔神皇帝であり、闇の書の闇をファイナル・ダイナミックスペシャルで容易く粉砕。その世界のクロノとリンディが固まったのはいうまでもない。
「見せたかったよー。ダブル皇帝のノヴァとブースターGと真シャインスパークのファイナルダイナミックスペシャル。あの三機だけで事が済んだよ」
「間に合えば、あたしも戦ったんだけどなー」
「向こうの子供クロノくんなんて、完全フリーズ。リンディさんも開いた口が塞がらない、子供のあたしとはやてちゃんだけが三機をスーパーロボットって認識できたけど」
史実ではトリプルAクラスの魔導師が轡を並べて戦って、ようやく倒せた闇の書の闇だが、その世界ではゲッター線と光子力の超パワーに粉砕された。特に真ゲッタードラゴンのシャインスパークは空間自体が歪むほどの高密度ゲッターエネルギーを纏ったため、その世界のアースラの能力ではエネルギー計測器が壊れたほどだ。なのはは見せたかったというように、真ドラゴンのゲッターシャインとマジンカイザーの神モード全開時のチャクラの光はまさに壮観。その世界のなのはは興奮気味だったという。
「アルハザードの遺産かって聞かれた時には、竜馬さん。笑い飛ばしてたよ」
「ああ、時空管理局って、自分を超える文明見ると、すぐに古代ベルカかアルハザードっていうからね」
時空管理局はどこの世界でも、自分を超える機械技術を見ると『アルハザード』か『古代ベルカ』を引き合いに出す。流竜馬が笑い飛ばすのも無理はない。とは言え、別世界の第97管理外世界が生み出す機械兵器ということに警戒を抱かれたが、なのはがM動乱の事を伝えることでそれを解いている。時空管理局は古代ベルカ亡き後は慢心していたのは事実だからだ。
『ゲッターは命の、魂の力だ!宇宙から集めたゲッター線が俺達の魂と響きあってこのパワーを出してるんだよ!』
と、竜馬は述べたという。M動乱はその世界では起こり得ない戦いだが、その際に時空管理局の救援に彼も貢献しているためだろう。去り際になのはは少女の自分に『あたしはあなたに誇れるような大人じゃないさ』と語りつつも、やり方は変わっても、根本は変わっていない事は示している。また、のぞみは戦いには参加できずとも、迎えには来ており、サービスでプリキュアに変身して、ちょうど、プリキュアの番組を見ていた子供なのはに感激されていた。(もっとも、その頃はスプラッシュスターが放映中だったと言うが)
「あの時のちっさいなのは、すっごく感激してたよねー」
「あ、あたしだって、子供の頃あるしー!」
なのはは子供の頃には本当に魔法少女に憧れていたが、別の世界の自分に希望を与えることは出来た事は嬉しがった。響の一件以降は仕事のミスを上司に責められ、嫌になる事が多かったからだ。それは一つの行いへの報いでもあり、なのはにとっては辛酸を嘗めるいい機会だったのも事実だ。
「あんたらも苦労してんな―…」
シャーリーはどこの世界でもそういった苦労にあまり縁がないからか、感想は簡潔かつ、同情するものだった。なのはとのぞみは顔を見合わせて、同時に言った。
『シャーリー(さん)も元の世界で本国勤務になったら味わうことになるかもしれない(しれません)よ?この手のあれこれ…』
――がっくりと肩を落とす二人。そんな二人の醸し出す中間管理職の悲哀にげんなりするシャーリーBであった――