――ウィッチ・クーデターの失敗の後、追求を恐れた技術者の複数が自主的に非軍事分野へ転出したので、自主的な軍事開発能力が思わぬところで低下する結果となった扶桑。戦闘機の大規模な独自開発は1947年までには諦め、気骨のある技術陣の自尊心を満たすため、『震電シリーズ』を手慰みとして、細々と造る程度で落ち着く。とはいえ、この経験が『地球連邦軍製兵器の数十年越しのコピー』に役立つこととなる。大戦世代の技術者には、信濃の空母化改造が撤回され、結局は戦艦となったことを惜しむ声が強かったが、戦艦としての船体が完成しかけた状態からの空母化は空母としての完成度の低下を招く事、そもそも、改造空母が『時代遅れ』となった事で、空母信濃に需要がなかった事、日本にとっての信濃は『軍艦史上ワーストの不幸艦』でしかない事が複合した結果、戦艦としてそのまま完成し、大和に次ぐ『無敵の戦艦』となった。その運命の皮肉は、空母化の図面を大急ぎで作成し、意気揚々と提出した造船官たちを嘆かせたという。また、戦艦の速力が32ノット以上をキープできるように求められるようになった事も、扶桑が志向した『中速の重戦艦』という存在が霧散した理由である。また、史実の坊ノ岬沖海戦とレイテ沖海戦の戦訓で『戦艦は大きい・タフネス・韋駄天の三要素を備えていなければ、ただの玩具』とされている事も、造船官を愕然とさせた。また、対怪異戦への対策が『耐ビームコーティング装甲と波動防壁展開能力の保持』というハード面の防御力の進化が起こったことで、従来ほど『ウィッチを戦艦に乗艦させる』メリットが無くなったのも、海軍ウィッチの仕事が減った理由だった――
――未来世界の地球連邦軍はフリゲート艦の一年戦争での陳腐化もあり、駆逐艦と護衛艦が最小の艦種となった。戦艦と空母は大型が望ましいとされたため、400mから600m前後が平均サイズとして落ち着いた。MSやVFが艦載機の主流となり、フリゲート艦の耐久性の無さがルウム戦役で明らかとなり、一年戦争後は廃れた。だが、元々はマゼランとサラミスの護衛艦として多くのフリゲート艦が作られていたため、扶桑へ『巡視艇』代わりとして、モスボール保存されていたものが輸出された。他国への軍事的抑止力である。エンジンと装甲、武装を最新規格に変えた上で。これが扶桑が21世紀に設立する『宇宙軍』への伏線となった。空軍の一部隊とするには、あまりに強大化していくからだ。その始まりとなったのが、64Fが1949年次に保有していた宇宙艦隊である。扶桑の強大化を抑えるための軍縮を目論んだ日本の左派の行動は、扶桑の軍部にそれを掻い潜るための『宇宙軍』設立の意志を持たせることとなった。しかし、色々な都合もあり、正式な組織設立はウィッチ世界が2020年を過ぎる頃となる。ただし、軍備そのものは1949年から購入しており、巡視艦隊ということで、払い下げされた『マゼラン改級戦艦』、『サラミス改級巡洋艦』が『ガンシップ』名目で調達され、既に巡視態勢に入っていた。この時に大量に購入された艦載機が『RGM-89』ジェガンである――
――ウィッチ世界の『他国』はその財政面の問題の顕現化で、長年の戦時動員を解き、扶桑へ義勇兵と兵器を非公式に送り込む支援に留め始めた。扶桑はこれらの動きを把握していたので、日本のご機嫌取りをしつつ、裏で安価に未来兵器を導入している。だが、人手不足はどうにもならないため、未来兵器は戦線の火消しに使われ、全体的な攻勢は棚上げ状態であった。64Fの留守番部隊は敵の各所での攻勢の沈静化を命じられており、その主力に使われたのがZ系のMS群であった――
「64Fの活躍により、敵の目論見は打ち砕かれ……」
ホテルのフロントに設置されている『大型の液晶ディスプレイ』に表示されるTVニュース。Zプラス(末期生産型であるので、C1型ベースである)を年式のより新しいリ・ガズィ・カスタムが率い、敵のMSを制圧し、投降させている様子が映し出されている。自分達の知る扶桑そのもののはずなのに、用いる兵器に差がありすぎることに複雑な心境のB世界のウィッチ達。怪異は散発的にしか現れず、人同士の戦争が起こるのが当たり前。ブラウン管より次の世代の技術でのTV、搭乗型のロボットでの戦闘。世界が違うだけで、こうも違うのか。
「こうも差があるのですか、大先輩」
「うむ。小僧らにはカルチャーショックが大きすぎると思うが、これがこの世界における戦闘の一端だ」
赤松はこの頃には大尉になっている。海軍の特務士官出身では、異例の出世を果たしている。(扶桑海軍では、兵学校至上主義が強かったため)この頃には、全軍で兵科間の序列も廃止されているため、階級、勤務年数が物を言う。従って、史実の芳佳のように『士官教育を受けていないので、通常の兵科部隊においては、下士官として遇する』ことは無くなっている。ミーナは史実でのその点を日本軍出身の義勇兵から強く責められたのも、失脚の理由だ。
「どうして、軍医が兵科将校へ指揮権を?」
「小僧。この世界では、その問題に首を突っ込まないほうが賢明じゃぞ」
「何故です」
「お前がこの世界の将校なら、下士官連中に殴打され、司令部に独房に入れられた挙句に、最後は僻地に飛ばされるぞ」
「脅かさないでくださいよ」
坂本Bは『軍令承行令』がA世界では廃止され、階級と勤務年数が全ての世界になったため、正規の兵科将校よりも古参の特務士官のほうが現場で偉いという状態が固定化してしまう。兵科将校の面子のため、仕方なく『階級と勤務年数が物を言う』という風に軍規そのものを改定し、明文化した。そのため、軍医だろうが、なんだろうが、士官は士官ということになった。ミーナが失脚した原因は、日本軍出身の下士官らから、非士官学校出身者への差別を疑われたからである。(連合軍の人事局は当初、『正規の兵科将校としての教育を受けていない以上……』との見解を出していたが、自分たちが更迭されそうになったため、掌返しをした。ミーナが指揮権を喪失した背景には、政治的都合も絡んでいる)
「ミーナはそれが仇になり、指揮権を停止させられ、しばらくは療養扱いにされたぞ」
「……政治ですか?」
「政治だ」
坂本Bは軍事に政治が絡むことを嫌う傾向が強いが、A世界は『政治に軍事が追従する』民主主義の世の中なのだ。
「元の世界に戻っても、特務士官を見下すな。彼らの方がエキスパートな事が多いからな」
「あなたを見れば、充分にわかりますよ」
B世界のウィッチは、赤松一人で全員の相手ができる。Gウィッチでの『正面戦闘力で最強』の称号は赤松が欲しいままにしているため、ハルトマンとバルクホルン、マルセイユの三人を『赤子の手をひねる如し』と一蹴できるほどだ。B世界の坂本は接点がなかったためと、『鬼教官』という元の世界での評判を聞いていたため、怖がっている節があり、A世界の坂本自身と違い、よそよそしい態度である。戦闘能力でも格が違うからだ。
「それと……宮藤の娘っ子だが、お前のところは教育が足りんな」
「申し訳ありません…」
芳佳Bは強情過ぎる面があり、その結果、周囲がどうなるかも考えない負の側面が表面化した。魔力値そのものは高いが、A世界ではそれを攻撃魔法として恒常的に応用できる術があるのに対し、B世界ではそれが存在しない。その不幸もあり、個人の想いの暴走が不和を招いた。悪くいえば、芳佳のわがままが周囲を振り回したわけだ。芳佳Aは基本的に、人格の変化後はビジネスライクに物事を進めつつ、誰かを嵌めることを『事と次第によっては行う狸』であるが、B世界の芳佳はよくも悪くも『元のまま』である。故に、物事を楽しみつつも、遠大な策略を立てた上で動くようになった自分(夢を叶えたとはいえ)に強い反感を持ち、自分の感情のままに行動してしまう。
「威勢はいい。だが、周囲がどうなるかを考えられず、周囲の声を意に介さんところは欠点でもある。だから、そちらのお嬢(智子)を泣かせるのだ。引退し、力を失った人間にできる事はない。お前がいずれそうなるように」
「ええ…」
坂本Bは、A世界にいる間だけは肉体の加齢が止まっている現象の恩恵を受けている。これは『この世界線の存在』でないからだろうとされているが、詳しい理由は判明していない。最近は部隊の訓練の許可が下りたこともあり、厳しい訓練を課している。坂本個人の戦闘力も個体差があり、引退から二年ほど経った状態のAに劣勢に追い込まれるなど、A世界での『洗練された空戦戦術』に舌を巻いている。これはA世界では『ズームアンドダイブを早い内から模索していた一人』であった事、熟練した弓術の使い手であるという『個体差』が作用してのものだが、A世界では『オールラウンダー』として完成され、有終の美を飾ったため、接近戦に特化しているBでの間に『微妙な戦術眼の差』があったためだ。
「部下達は、貴方形の戦術のみならず、大胆不敵さに圧倒されています。何故、あそこまで大胆に?」
「三次元的に動かなければ、生き残れん。ルーデル大佐でさえ、片足を喪われた」
「大佐の片足は義足なのですか?」
「高度な機械技術によるものだ。だから、そこは治癒魔法の適応外だ。娘っ子クラスのものだろうと。戦闘で負傷なされたのだ」
ルーデルさえ、旧来型の爆撃ストライカーでは作戦行動が不可能となるほどの急激な技術発展。芳佳は魔力のみであれば、時空管理局のエース魔導師級だが、それを防御と治癒にしか活かせないため、装備が史実通りの状態では、A世界の苛烈な戦闘に耐えられないのだ。
「そちらのストライカーでは、高度13000mでの作戦行動はできんだろう?だが、敵は衛星軌道にも届く攻撃が可能。高高度性能を誇る時代は終わったし、スピードも素材の耐熱限界がわかり、技術発展が顕著に起こらない限り、マッハ3で頭打ちになる。残されたのは火力と機動力の両立だ」
B世界のウィッチ達が直面したのは、元の世界のドクトリンが通用しない状況。重装甲の重爆撃機には、12.7ミリ機銃では『豆てっぽう』であるし、ジェット機の機動力は『元の世界におけるMe262』とは比較にならない。更に、新式ジェットストライカーは旧来と設計思想が異なり、陸戦用の重装甲脚に近い。しかも、オグメンダー(アフターバーナー)という再燃焼装置の実用化で加速力が改善されている。
「何故、そこまで急激に」
「仕方がない事だが、持てるかぎりの技術、支援で得られた新理論を適応した結果なのだ」
「敵は未来兵器も使ってきおる。だから、歩兵装備でさえ、こんなものになりつつある。
「それが新式の?」
「うむ。カールスラントの考案していた突撃銃の完成形のような世代だ」
64Fは1949年時点で、各国から火器を購入したり、鹵獲していた。ティターンズは歩兵火器の備蓄がなかったのか、M1ガーランドやM1カービンなどの『骨董品』さえ、自分たちでも使う始末だ。(元々、母体の地球連邦軍が旧西側諸国の軍隊を祖にしている関係で、扱いに不自由はないが)
「カールスラントでも少数しか出回っていないというのに。こちらでは軍事的に没落を?」
「うむ。坊主(黒江)たちへの扱いの問題が世間に知られて以降、急激に衰えた。将官の世代交代も始まりつつある」
ノイエ・カールスラントは懲罰的にドイツによって衰弱させられたあげくに内戦となり、軍事的影響力を喪失した。その代わりに扶桑が台頭したが、扶桑も兵器の独自開発が縮小されたため、世界の兵器市場はブリタニアとリベリオン設計のもので大半が占められることになった。これに猛反発したガリアの政治が暴走をゆっくりと初めており、資源確保の名目で、日本連邦と後年に戦火を交えるに至る芽が育ち始めている。自由リベリオンはアメリカ合衆国の援助もあり、死の商人としての顔を持ち始める。日本連邦との蜜月により、亡命政権としての立場を得た彼らは、ティターンズ傘下で形だけの民主主義を行い、内実は監視社会化してゆく本国と袂を分かつ。ティターンズは自分たちが敢えて、『ソビエト連邦の役』を演ずることで『アメリカ合衆国相当の国家の繁栄を抑える』思惑を果たしたわけだ。亡命政権である自由リベリオンを認めない者は大勢おり、それが『ミリシャの乱立』という形で表れ、再統一後も国土を荒らすため、リベリオン国内は戦禍からの復興が遅れるのである。扶桑がリベリオンの代わりになるしかなかったのは、そうした事情もある。
「液冷機がないようですが?」
「液冷機は淘汰されたよ。現場での平均的な整備力では手に余ったのでな。空冷エンジンが3000馬力に到達し、速度性能もレシプロの限界に突き当たったので、液冷にこだわる理由は消えたよ」
この頃には、レシプロ戦闘機は退役間近である。数合わせで少なからずは残っているが、爆撃機や攻撃機はA-1がその場に収まっており、流星、天山、彗星などの旧来の機種は駆逐されている。
「稼働率の問題もあり、リベリオンのA-1が最終的に万能攻撃機として残った。あれが最後の雷撃機であり、急降下爆撃機になるだろう」
急降下爆撃はこの頃には、ミサイル兵装の普及で『好事的な選択』となり、ほとんど古参兵の行う攻撃と同義であった。その兼ね合いか、急降下爆撃機は開発が止まり、国産の急降下爆撃機は流星改が掉尾を飾ったことになる。また、この頃にはプロパガンダ的意味合いが大きいが、空軍の全部隊でノーズアートが推進されている。坂本Bはノーズアートを『軍隊らしくない、ふしだらな行為』としているようだが、シャーリーのこともあり、士気高揚のための策としては認めている。
「大先輩はノーズアートをお認めに?」
「隊の士気高揚のためだ。貴様も、シャーリーが部下にいる以上はわかると思ったが」
「ハ、ハッ……」
坂本Bは坂本本来の生真面目な気質のため、シャーリーを例外に、隊でのノーズアートは認めていない。だが、Aはユーモアを解するため、積極的にノーズアートを推進する側にあった。赤松にそう言われただけで、すぐに萎縮してしまうあたり、かなり後ろめたいらしい。別の自分がノーズアートを推進している側だからだろう。
「別の貴様が連絡用に用いている飛行機がこれだ」
「雷撃機ですか?」
「A7M 烈風。零式艦上戦闘機の正統な後継機種だ。戦闘任務からは退役していっているが、娘っ子の父上が最後に設計なされた戦闘機という点で記念碑だ」
烈風はB世界では存在しない、ないしは開発途上にあるようだ。A世界では、紫電シリーズの補助という形で投入され、ダイ・アナザー・デイ後半では爆戦(戦闘爆撃機)として使われた。その事から『和製コルセア』という渾名を得ている。
「ジェット機ほどでないにしても、大きいですね」
「これでも艦上機じゃぞ」
「……中・小型には載らんでしょう?」
「小型は、艦上機の大型化で使い物にならなくなってのぉ。最低限度の大きさでさえ、加賀ほどの大きさじゃぞ」
「……」
「ジェット機用は300m超えになるぞ?」
「……信じられませんな」
ダイ・アナザー・デイは史実あ号作戦よりも洋上航空戦力の数的格差があったため、潜水艦による空母狩り及び、特攻も含めての飛行甲板への猛攻が行われ、複数が鹵獲されている。扶桑も保有を検討していたが、その更に上位艦種である『ミッドウェイ』級を優先したため、断念。扶桑の実働空母は増えていない。同級の近代化が大変だからだ。そのため、空軍を酷使していると言ってもよく、空軍部は海軍の空母機動部隊の実働再開を強く要望しているが、日本はあ号作戦の戦訓から、飛行時間800時間以上の精鋭を育成する事に躍起になっており、扶桑での旧基準である400時間での投入は『特攻兵と変わらん』と当たり散らすのである。しかし、空軍の一部部隊に戦功が集中しがちな現状に不満を持つ海軍航空隊の部隊は多く、錬成に目処が立つ部隊だけでも、海上哨戒くらいはさせてくれという声が出ている。それが64F主力の遠征中のウィッチ世界の状況であった。
「こちらのお前は子供の産休を取ったから、外に出かける時は髪を解いた上で、サングラスをかけろ。それだけでも、印象は変わる」
「分かりました」
「若い連中はどうしてる?」
「貴方方がTVやラジオの娯楽番組に積極的に出演なさることに不満の声があります。こちらでは、歌手志望だったミーナが、ラジオで歌を赤城向けに流すのが精一杯でしたから」
「慰問専門部隊の設立が流れたから、その代わりでもある。銃後のご機嫌を取らなければ、次の年の軍の予算が減るから、手抜きはご法度だが」
苦笑交じりの赤松。A世界では、銃後のご機嫌取りも重要な任務である。その関係上、他国軍からの義勇兵であろうが、日本語をネイティブレベルで解する事が必要とされ、この時期にもなると、日本語で歌が歌える者も増えている。また、ゴールドシップやシンボリルドルフを介し、ウマ娘たちがウイニングライブで歌唱する曲をカバーする許可を協会に問い合わせ、許可を得ている。協会としても、宣伝になるからである。ルミナスウィッチーズが活動する事のなかった世界における一つの回答であるが、戦闘部隊に『そこまでの万能性を付与する必要があるのか?』という時代相応の疑問も浮かび上がる。
「何故、最前線の戦闘部隊にそこまでの仕事を?」
「この世界では、銃後がうんと言わなければ、新兵器の開発は愚か、弾薬の備蓄も覚束ないようになったのでな。儂らは常に最大の成果が求められる。部隊の一存で、最高の人材と機材を集められる代わりの代価というものだ」
64Fの権限はかつての統合戦闘航空団のそれすらも凌駕するが、その代価として、常に最大の成果を求められる。それが日本連邦の総意でもある。ただし、激務の対価という形で隊員の自由勤務権も定められており、普段はだらけた生活の者も多い。のぞみも、普段は現役時代に近い天真爛漫な生活を送るようになり、世帯持ちながらも、軍役に就いている事を除けば、外見通りの少女のように振る舞っている。その一方で、精神年齢に戸籍上の年齢が追いついた水無月かれん(キュアアクア)の例もある。
「そういえば、そちらのシャーリーは扶桑の国籍は取っていないのですか?」
「プリキュアであった時代の日本名は芸名のような扱いにすることで落ち着いた。自由リベリオンが正式に亡命政権と認められたので、敢えて帰化する必要もなくなった。政情不安定のカールスラント勢は、扶桑の永住権を取得済みだが」
そこまで言い終えた時、TVニュースが、カールスラントの政情についてのものとなる。政情はまったくの不安定で、暗殺防止のため、皇室が事実上、ヘルウェティア連邦(スイス連邦にあたる国家)に逃れ、軍部の人員の削減、軍備削減はNATOの指導と監視下で行われる事、建造継続の難しくなった戦艦は空母化、戦艦は鹵獲艦の修繕で確保する事となったと報じられ、内乱で荒れたノイエス・ベルリンの市街地、反乱に使用されたが、自身を超越する『陸上戦艦』にあえなく大破させられたラーテ戦車の残骸の映像が映る。その相手である『へビーフォーク級陸上戦艦』の艦影も映る。ラーテはウィッチ世界での決戦兵器であったが、第一線級の戦艦に準ずる火力を誇るヘビーフォーク級の前では、『ポケット戦艦が戦艦大和とサシで打ち合うようなもの』。結果は火を見るよりも明らかであった。残骸が回収されていく映像は『カールスラント技術陣の血の涙』と、ニュースで例えられている。
「大先輩。あの戦車だったらしい、車台らしいものは?」
「カールスラントが決戦兵器として用意していたものの残骸だ。シャルンホルスト級戦艦の砲塔を走らせたものだが、1000トンを軽く超えるため、欧州での運用性は期待できないとして、数両が完成した段階で破棄された。それが内乱で使われた。だが、最後にそれ以上の火力で『目には目を、歯には歯を』をされたが」
「目には目を歯には歯を…ですか…」
ラーテは時代相応の陸戦兵器としての最強と言えたが、シャルンホルスト級戦艦を一撃で轟沈させられる実体弾火力が機動力を伴った『ホバークラフト陸戦艇』で提供され、ラーテを一撃で撃破するとはと、技術陣は理不尽な現実に泣いた。ウィッチ世界で実現可能な限度の陸戦兵器が、それをも超越するモノに、あえなく破壊されたのだ。カールスラントのニュースキャスターは泣いており、カールスラントの叡智が日本連邦の手配した『バケモノ』に粉砕され、同位国のドイツには『陸軍が金をかけた玩具』と馬鹿にされ、悔しいという声明も発表され、カールスラントの軍事面の落日を妙実に報じる。近代の扶桑が模範にしてきた陸軍大国の一つが、内乱と政情不安で没落した。あくまで、一つの世界での結果であるが、同国に戦友が多い坂本Bにとっては、信じがたいものだった。
――このカールスラントの混迷は『第三者によって、日々の目標を奪われた軍事主体国家の末路』ではあるが、カールスラントが不完全な立憲君主制国家であったことでの悲劇ともいえ、皇室が国民と国家の精神的支柱たり得なかったカールスラントの混迷、その逆に、皇室さえあれば、その代行である施政者が誰に変わろうが、一向に構わない扶桑の安定性の優位が示されたと言って良かった――